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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X2930
管理番号 1315721 
審判番号 取消2015-300511 
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-07-10 
確定日 2016-05-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第5344204号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5344204号商標(以下「本件商標」という。)は、「山賊焼」の文字を横書きしてなり、平成21年8月12日に登録出願、第29類「肉製品,加工水産物,とり肉を主材料とする惣菜,豚肉を主材料とする惣菜,牛肉を主材料とする惣菜,魚介類を主材料とする惣菜,野菜又は加工野菜を主材料とする惣菜」及び第30類「焼肉のたれ,焼鳥のたれ,香辛料,べんとう,穀物又は穀物の加工品を主材料とする惣菜」を指定商品として、同22年8月6日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求は、その登録が平成27年7月23日にされているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第29類「肉製品,加工水産物,とり肉を主材料とする惣菜,豚肉を主材料とする惣菜,牛肉を主材料とする惣菜,魚介類を主材料とする惣菜,野菜又は加工野菜を主材料とする惣菜」及び第30類「べんとう,穀物又は穀物の加工品を主材料とする惣菜」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のとおり述べ、その証拠方法として、甲第1号証を提出した。
請求人が主張する理由は、本件商標について、継続して3年以上、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが、その指定商品中の上記請求に係る指定商品ついて使用されていないとするものである。
なお、当審においては、請求人に対し、被請求人による要旨後記第3のとおりの答弁及び回答ついての意見の提出を求めたが、何ら意見の提出はなかったものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、審判事件答弁書及び審判事件回答書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第45号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 審判事件答弁書における主張
本件商標の商標権者及び通常使用権者は、本件審判請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)に我が国において、その請求に係る指定商品中の「肉製品」及び「焼肉のたれ」について、本件商標の使用をしている。
(1)商標権者の事業と商標の使用
商標権者は、焼肉のたれやステーキソース等の調味料及び食材の加工食品を製造・販売している。売上高構成は、業務用90%、小売用10%であり、多くが業務用商品である。
「山賊焼のたれ」(乙第1号証)(以下「商標権者商品」という。)は、商標権者が販売する商品群の中で主力商品である。包装形態は2kgの業務用であり、主な販売先はスーパーマーケットや食品製造メーカーである。販売先では、肉、魚、野菜などの食材の味付けに商標権者商品を使用し調味の施された加工食品(以下「製品」という。)を製造する。販売先がスーパーマーケットの精肉部である場合、店舗のバックヤードにて生鮮肉に商標権者商品で味付けし、例えば、精肉部で通常販売される生鮮肉と同じようにトレーに載せ、透明なラップで封をして製品とし、売場に陳列して販売する。販売先が精肉部以外の鮮魚部や惣菜部である場合、上記精肉部における生鮮肉に代えて、鮮魚部においては鮮魚、惣菜部においては肉、魚、野菜及びそれらの加工食品を食材として用い、商標権者商品を使用して調味の施された製品とし、売場に陳列して販売する。
製品の販売において、ラベルシール1(乙第2号証のラベルシールをいう。以下同じ。)は、製品に貼付することで需要者である消費者の目に留まりやすくし、本件商標を認識させ、購買意欲を促進するために使用されるものである。また、商標権者は、製品にラベルシール1を貼付して販売することについて、販売先に配布するカタログ(乙第3号証)や商品紹介資料(乙第4号証)にて紹介している。
なお、カタログは、カタログの印刷メーカーに委託して印刷したものを商標権者が購入しており、納品書(乙第5号証)は、印刷メーカーから商標権者に送付されたものである。そして、商標権者は、商標権者商品を販売する活動に付随し、ラベルシール1を販売先に有償又は無償で提供している。
また、ラベルシール1は、ラベルを製造するメーカー(以下「ラベルメーカー」という。)に委託して製造したものを商標権者が購入しており、納品書(乙第6号証ないし乙第12号証)及び請求書(乙第13号証ないし乙第27号証)は、ラベルメーカーから商標権者に送付されたものである。
続いて、ラベルシール2(乙第28号証のラベルシールをいう。以下同じ。)は、特定の販売先(以下「販売先A」という。)の要望を受け、販売先A専用のラベルシールを商標権者が作成し、有償又は無償で提供するものである。この場合も、ラベルシール2は、商標権者がラベルメーカーに委託して製造したものを購入しており、納品書(乙第29号証)は、ラベルメーカーから商標権者に送付されたものである。
さらに、販売先が本件商標を表示した資材(製品の包装材)を製造し、製品の販売に使用する場合、当社と販売先との間で商標使用許諾契約書(乙第30号証ないし乙第32号証)又は誓約書(乙第33号証及び乙第34号証)を締結した上で実施させる場合がある。
(2)乙各号証の説明
乙第1号証は、商標権者の販売する商標権者商品の外観写真である。
乙第1号証の2は、商標権者商品に貼付される商品ラベルである。販売者欄に「日本食研株式会社」と記載されている。日本食研株式会社(以下「日本食研」という。)は、商標権者の100%子会社である。
乙第2号証は、商標権者がラベルメーカーに依頼して製造し、販売先に有償又は無償で提供されるラベルシールである。ラベルシール1が10枚綴りのシートになっており、販売先は、1つの製品にラベルシール1を1枚貼付して使用する。
乙第3号証は、商標権者が販売先に商品を紹介する際に用いるカタログから抜粋した表紙、目次、商標権者商品紹介箇所、裏表紙の計4枚であり、3枚目の商標権者商品紹介箇所(18ページの下側。ページ番号は、カタログ各ページの左下又は右下に記載)に商標権者商品が掲載されている。また、製品にラベルシール1を貼付した例を示し、販売先にラベルシール1の使用方法を紹介している。なお、カタログの裏表紙には発行者として「日本食研ホールディングス株式会社」(商標権者)が記載されている。
乙第4号証は、商標権者が販売先に商標権者商品を紹介する際に用いる資料であり、商標権者商品とともに販売先の製品に貼付するラベルシール1の使用例が掲載されている。
乙第5号証は、カタログ(乙第3号証)の納品書であり、カタログの印刷メーカーから商標権者に送付されたものである。数量の46,300はカタログの冊数であり、納品後商標権者から日本全国の販売先に向けて配布されている。
乙第6号証ないし乙第12号証は、ラベルシール1の納品書であり、ラベルメーカーから商標権者に送付されたものである。
乙第13号証ないし乙第27号証は、ラベルシール1の請求書であり、ラベルメーカーから日本食研製造株式会社(以下「日本食研製造」という。)に送付されたものである。日本食研製造は商標権者の100%子会社である。請求書に納品日(日付と記載された行に年月日が「○/○/○」で記載)が記載されている。ここで、乙第6号証ないし乙第12号証の納品書及び乙第13号証ないし乙第27号証の請求書に記載された数量について説明すると、乙第2号証で示すラベルシール1が10枚綴りのシートになった状態の1シートを1枚として記載している。つまり、数量50,000枚とは、ラベルシールに換算すれば500,000枚である。請求書の納品日で確認できるとおり、2014年7月17日から2015年7月16日までの間に納品された回数は16回であり、各回に数量50,000枚が納品されており、この間の約1年間でラベルシールの枚数に換算すると合計8,000,000枚が製造され、その後、商標権者から全国の販売先へ提供され、最終的に販売先はラベルシール1を貼付した製品をその数量だけ販売し得るといえる。
乙第28号証は、販売先A専用に製造したラベルシール2である。ラベルシール2が8枚綴りのシートになっており、数量10,000枚が製造され、商標権者から販売先Aに提供される。販売先Aは1つの製品にラベルシール2を1枚貼付して使用する。
乙第29号証は、ラベルシール2の納品書であり、ラベルメーカーから商標権者に送付されたものである。
乙第30号証ないし乙第32号証は、当社とある販売先とで結んだ商標使用許諾契約書の写しである。
乙第33号証及び乙第34号証は、当社とある販売先とで結んだ誓約書の写しである。
(3)使用に係る商標、時期及び使用者
ア 使用に係る商標
乙第1号証(枝番号を含む。)、乙第2号証、乙第6号証ないし乙第29号証には、本件商標が記載されており、また、乙第3号証及び乙第4号証には、商標権者商品及びラベルシール1が記載され、商標権者商品及びラベルシール1には本件商標が記載されている。
イ 使用時期
乙第3号証には裏表紙にカタログの発行日が、乙第5号証にはカタログの納品日が、乙第6号証ないし乙第12号証には納品日(売上年月日と記載)が、乙第13号証ないし乙第27号証には請求日(年月日に続き「締切」と記載される)及び納品日(日付と記載された行に年月日が「○/○/○」で記載)が、乙第29号証には納品日(売上年月日と記載)が、乙第30号証ないし乙第34号証には契約日が記載されている。
ウ 商標の使用者
乙第1号証は、日本食研が販売する当社商品であり、商標の使用者は日本食研である。日本食研は当社の100%子会社であり、黙示で商標の使用許諾を受けた通常使用権者である。
乙第2号証は、商標権者が販売先に提供し、販売先が製品に貼付し使用するため、商標の使用者は販売先である。商標権者が販売先に商標権者商品の販売に係り本件商標が記載されたラベルを提供していることより、黙示で商標の使用を許諾しているといえ、販売先は通常使用権者である。
乙第28号証は、商標権者が販売先Aに提供し、販売先Aが製品に貼付し使用するため、商標の使用者は販売先Aである。商標権者が販売先Aに商標権者商品の販売に係り本件商標が記載されたラベルを提供していることより、黙示で商標の使用を許諾しているといえ、販売先Aは通常使用権者である。
2 審判事件回答書における主張
本件商標の商標権者及び通常使用権者は、乙第35号証以降の証拠が示すとおり、要証期間内に我が国において、本件審判請求に係る指定商品中の「肉製品」について、本件商標の使用をしている。
(1)乙各号証の説明
ア 乙第35号証は、被請求人が税務署に提出した確定申告の会社事業概況書(子会社の状況)に記載のとおり、日本食研及び日本食研製造は被請求人が100%出資する子会社であるので、乙第1号証の2や乙第13号証などに記載されている当該会社は、被請求人より黙示で商標の使用許諾を受けた通常使用権者であり、その権限で本件商標に係る商品等の製造・販売活動を行っている。
イ 乙第36号証及び乙第37号証は、スーパーマーケットで販売された肉製品を購入当時に撮影した写真である。当該肉製品は、食肉の味付けに乙第1号証に示した「山賊焼のたれ」を使用したものであり、乙第3号証や乙第4号証で示した「山賊焼のたれ」を使用した肉製品の販売方法を販売先で実施したものであり、両者ともに、乙第2号証のラベルシール1を貼付して販売されている。
乙第2号証のラベルシール1は、上部に記載の「山賊焼」により需要者である消費者に本件商標を認識させ購買意欲を促進させるとともに、下部の「調味料原材料名」の表示により食品衛生法に則した表示とする2つの機能を併せ持つものであり、食品衛生法の観点からみて、乙第1号証を味付けに使用した肉製品のみに貼付できる専用品である。
乙第13号証ないし乙第27号証が示すとおり、ラベルシール1は、印刷会社から被請求人の子会社である日本食研製造に納品されており、被請求人及びその子会社を介してのみ人手できるラベルシール1が乙第36号証及び乙第37号証の肉製品に使用されている事実は、ラベルシール1を貼付した当該肉製品の販売に当たって、本件商標の使用許諾があったと考えるのが自然である。
ウ 乙第38号証は、乙第39号証ないし乙第45号証の関係性を示した概要図であり、食品加工事業者に本件商標の通常実施権を設定し実施した事例によって商標使用を証明するものである。
エ 乙第39号証は、加工食品の商標使用に関し、販売先(食品加工事業者)である米久株式会社(以下「米久」という。)と被請求人の間で取り交した誓約書(商標使用許諾書)であり、米久が同社のブランドとして複数社の小売販売事業者向けに販売する加工食品である「マザーシェフ鶏もも山賊焼き」(以下「米久製品」とい。)及び小売販売事業者である株式会社ヤオコー(以下「ヤオコー」という。)向けに専用に販売する加工食品である「ヤオコー鶏もも山賊焼き」(以下「ヤオコー専用製品」という。)の2品について通常実施権を設定することを契約したものである。誓約書に添付の別紙1には、ヤオコー専用商品のパッケージ案が記載されている。
オ 乙第40号証は、加工食品の製造に使用する「山賊焼のたれ」が日本食研からカヌキフーズ株式会社(以下「カヌキフーズ」という。)に販売されたことを示す請求書である。請求先であるカヌキフーズは、米久より委託を受けた加工食品の製造先であり、このような両者の関係については米久製品の外観写真(乙第43号証)に記載されている「加工者:カヌキフーズ株式会社」、「販売元:米久株式会社」で理解できる。
カ 乙第41号証は、ヤオコー専用製品が米久からヤオコーに納品・販売されたことを示す伝票であり、左上に記載の「仕入先コード・仕入先名ヨネキユウー(カブ)シヨクニク」は米久、右下の「ヤオコーグループ」(当該記載の左側はヤオコーのCIロゴ)はヤオコーを示す。
キ 乙第42号証は、ヤオコー専用製品の外観画像であり、当該製品の上部の記載内容が乙第39号証の別紙1と同一であること、製品下部の製品内容物確認窓は味付けされた鶏肉の外観であり肉製品であることが確認できる。
なお、右上の賞味期限欄が空欄であるのは、本画像が製品紹介用の見本写真のためである。
ク 乙第43号証は、小売販売事業者であるマックスバリュ東海株式会社の店舗で販売された米久製品「鶏もも山賊焼き」を撮影した外観写真であり、表面には左上に「マザーシェフ鶏もも山賊焼き」、右上に「yonekyu」、裏面には上部に「鶏もも山賊焼き」、中央部に「名称:味付け鶏もも肉」、「加工者:カヌキフーズ株式会社」、「販売元:米久株式会社」と記載がある。
ケ 乙第44号証は、乙第38号証の米久製品「鶏もも山賊焼き」がマックスバリュ東海株式会社(小売販売事業者)の店舗で販売されたものであることを示す領収証である。
コ 乙第45号証は、米久株式会社のホームページ上で紹介された米久製品である。
(2)使用に係る商標
乙第36号証、乙第37号証、乙第42号証ないし乙第45号証には、本件商標が記載されている。また、乙第41号証には、本件商標と称呼及び観念を同一とする「サンゾクヤキ」が記載されている。
(3)使用時期
乙第36号証には、「消費期限13.7.3」(2013年7月3日)が記載されている。
乙第37号証には、「消費期限14.6.11」(2014年6月11日)及び「加工日14.6.9」(2014年6月9日)が記載されている。
乙第39号証には、誓約書の中央に本権利の使用期間「2015年4月1日から2015年9月30日」及び下部に契約締結日「平成27年3月30日」が記載されている。
乙第40号証には、「お買上明細日付」の欄に当該商品の納品日「03/31」(2015年3月31日)が記載されている。
乙第41号証には、右上のセンター納品日及び店納品日にヤオコー専用商品の納品日「15/04/07」(2015年4月7日)が記載されている。
乙第43号証には、表面の右上の賞味期限の欄に「15.06.14」(2015年6月14日)が記載されている。
乙第44号証には、中央に「015/06/03(水曜日)」(2015年6月3日。先頭の「2」の印刷文字が消えている。)及び「お取扱日15年06月03日」(2015年6月3日)が記載されている。
(4)商標の使用者
乙第36号証及び乙第37号証には、前者には「加工者(株)イズミゆめタウン博多」と記載があり、後者には「加工者 サミット(株)石神井公園店」と記載があり(当該記載の左側はサミット株式会社のCIロゴがある。)、商標の使用者は当該事業者である。乙第36号証及び乙第37号証について説明したとおり、当該事業者は各々、被請求人から乙第1号証の「山賊焼のたれ」及び乙第2号証のラベルシールの提供を受け肉製品を販売しているのであり、被請求人から黙示で商標の使用許諾を受けた通常使用権者といえる。
乙第41号証は、米久がヤオコーにヤオコー専用製品「トリモモサンソクヤキ」を納品・販売したことを示しており、商標の使用者は米久である。また、この時、納品・販売されたヤオコー専用製品は、乙第42号証で示した肉製品である。
なお、当該使用者は、乙第34号証が示す事実より、被請求人から商標の使用許諾を受けた通常使用権者といえる。
乙第43号証は、米久の米久製品であり、商標の使用者は米久である。
なお、当該使用者は、乙第39号証が示す事実より、被請求人から商標の使用許諾を受けた通常使用権者といえる。

第4 審尋の内容
当審において、平成27年11月17日付けをもって、商標法第50条第2項の規定による被請求人の証明について、要旨以下のとおり、暫定的見解を示したうえで、審尋を行った。
1 被請求人提出に係る乙号証に関する暫定的な見解について
被請求人は、通常使用権者が要証期間内に「肉製品」及び「焼肉のたれ」について本件商標を使用している旨主張し、乙第1号証ないし乙第34号証を提出している。
しかしながら、本件審判の請求に係る商品は、上記第1のとおり、第29類「肉製品,加工水産物,とり肉を主材料とする惣菜,豚肉を主材料とする惣菜,牛肉を主材料とする惣菜,魚介類を主材料とする惣菜,野菜又は加工野菜を主材料とする惣菜」及び第30類「べんとう,穀物又は穀物の加工品を主材料とする惣菜」であり、被請求人が本件商標を使用しているとする商品のうち、「焼肉のたれ」は本件審判の請求に係る商品に含まれていない。
また、被請求人が本件商標を使用しているとする商品のうち、「肉製品」(以下「本件商品」という。)については、被請求人が提出した乙各号証をもってしては、以下の(1)ないし(4)の理由により、要証期間内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商品について本件商標の使用をしていたと認めることができないから、被請求人は、商標法第50条第2項に定める登録商標の使用を証明したということができない。
(1)乙第1号証はラベルが貼付された容器入りの商品(商標権者商品)の写真、乙第1号証の2は商標権者商品のラベルとされている。
しかしながら、同ラベルには「山賊焼のたれ」と表示され、「名称」の欄には「焼鳥のたれ」と、「販売元」の欄には「日本食研株式会社」とあり、「使用方法」の欄には「肉、魚介類に対し、20?30%量のたれで漬込んで焼くか、または、素焼き、素揚げにした素材にからめてご使用ください。」とあることを踏まえると、商標権者商品は、第30類「調味料」の「うま味調味料」の範ちゅうに含まれる「焼鳥のたれ」とみるのが相当であり、同商品が「肉製品」であるとは認めることができない。加えて、被請求人は日本食研株式会社を100%子会社と主張しているが、それを証明する証拠方法の提出もない。
なお、被請求人も、答弁書において「販売先では、肉、魚、野菜などの食材の味付けに当社商品を使用し調味の施された加工食品(以後、製品)を製造する。販売先がスーパーマーケットの精肉部である場合、店舗のバックヤードにて生鮮肉に当社商品で味付けし、例えば精肉部で通常販売される生鮮肉と同じようにトレーに載せ、透明なラップで封をして製品とし、売場に陳列して販売する。」と述べており、商標権者商品が肉などを味付けする調味用の商品であることを認めている。
(2)乙第3号証は、被請求人が販売先に商品を紹介するために用いるカタログ(抜粋)、乙第5号証は、同カタログの印刷メーカーから被請求人に宛てた納品書とされている。
しかしながら、同カタログには、商標権者商品の写真が「山賊焼のたれ」の文字とともに掲載されており、しかも、商標権者商品は、上記(1)のとおり、「焼鳥のたれ」であって、その他の鶏肉と思しき写真は、商標権者商品で調味する際の注意点や、調味した鶏肉の状態、さらに、調理後の鶏肉の状態を表したものであることを踏まえると、結局、商標権者商品の広告といえるものであって、「肉製品」の広告とはいうことができない。
また、乙第4号証も、被請求人が販売先に商品を紹介するために用いる資料とされる。
しかしながら、同資料には、「調味料別 部位別アイテム集〈山賊焼のたれ〉」の見出しの下に、乙第1号証と同一の商標権者商品の写真が「山賊焼のたれ」の文字とともに掲載され、「商品特長」として「・・・旨辛てり焼きのたれです。」と記載されており、その他のトレー入りの食材の写真は、そのたれで調味した食材の状態を表したものといえるものであることを踏まえると、結局、商標権者商品の広告といえるものであって、「肉製品」の広告とはいうことができない。
(3)乙第2号証及び乙第28号証は、被請求人がラベルメーカーに依頼して製造し、販売先に有償又は無償で提供されるラベルシート、乙第6号証ないし乙第12号証及び乙第29号証は、ラベルメーカーから被請求人に宛てた該ラベルシートの納品書、乙第13号証ないし乙第27号証は、ラベルメーカーが被請求人の100%子会社に宛てた該ラベルシートの請求書とされている。
しかしながら、該ラベルシートが、商標権者商品の販売先が該商品を使用して調味した食材に付して使用するように意図したものであるとしても、商標法第2条第3項に定める商標法上の「使用」とは、商品又は商品の包装に付する行為や、商品又は商品の包装に商標を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡又は引渡しのために展示する行為等であって、商品や商品の包装に商標を付するためのラベルシート等の表示物を作成しただけでは、商標法上の「使用」には該当しない。
そして、被請求人が提出した乙各号証に、販売先が要証期間内に商標権者商品を使用して調味した食材に該ラベルシートを貼付したことや、該ラベルシートを貼付した食材を譲渡、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために展示する行為等を行ったことを証明する証拠方法を見い出すことはできない。
(4)被請求人は、販売先を通常使用権者であると主張して、乙第30号証ないし乙第32号証として商標使用許諾契約書の写しを、乙第33号証及び乙第34号証として誓約書の写しを提出している。
しかしながら、乙第30号証ないし乙第34号証をもってしては、以下のアないしウの理由により、通常使用権者である販売先によって本件商標の使用がされていると被請求人が主張している第29類の「肉製品」について、通常使用権の許諾があったとは認めることができない。
ア 乙第30号証ないし乙第34号証の商標使用許諾契約書及び誓約書は、被請求人以外の当事者が明らかにされていないため、乙第6号証ないし乙第27号証及び乙第29号証のラベルシートを受領した販売先に通常使用権が許諾されていたことを確認することができない。
イ 乙第30号証ないし乙第32号証の商標使用許諾契約書は、通常使用権の許諾の範囲が第30類とされており、被請求人が本件商標の使用をしていると主張している第29類の「肉製品」は対象となっていない。
ウ 乙第30号証の商標使用許諾契約書は、本件商標の使用を許諾する販売先の使用商品が「山賊焼カレー」となっており、「肉製品」ということができない。さらに、乙第31号証ないし乙第34号証の商標使用許諾契約書及び誓約書は、本件商標の使用を許諾する販売先の使用商品が明らかにされていないため、「肉製品」に通常使用権が許諾されていたことを確認することができない。
2 回答書の内容について
(1)被請求人に対して
ア 下記(ア)及び(イ)を証明する証拠方法がある場合は、それを提出し、説明されたい。
(ア)販売先が要証期間内に乙第2号証又は乙第28号証のラベルシートを本件商標の指定商品のいずれかに貼付していたこと、または、該ラベルシートを貼付した本件商標の指定商品を譲渡、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために展示していたこと。
(イ)被請求人が上記(ア)の販売先に対して、要証期間内に本件商標をその指定商品のいずれかについて使用することを許諾していたこと。
イ 上記2で示した暫定的な見解に対し、意見があれば、その意見を裏付ける証拠方法とともに、その意見を述べられたい。
ウ 既に提出した乙各号証のほかに、商標法第50条第2項に規定する本件商標の使用をした事実を示す新たな証拠があれば、それを提出、説明されたい。
(2)請求人に対して
この審尋に対して、回答する必要はない。

第5 当審の判断
1 被請求人が提出した乙各号証には、以下の記載があることが認められる。
(1)乙第42号証は、商品の写真(以下、同号証に係る商品を「本件使用商品」という。)であるところ、その包装袋の上部には、「鶏もも」の小さ目の文字の下に、「山賊焼き」の大き目の文字からなる商標(以下「本件使用商標」という。)が表示されているほか、「簡単便利炒めるだけ!」、「やわらか仕上げ」及び「ブラックペッパーが効いた、スパイシーな味わい。ざく切りキャベツを添えて!」の文字が記載されており、その下部は内容物である肉製品がみえる態様となっている。そして、被請求人は、該商品についてヤオコー専用製品である旨主張している。
(2)乙第41号証は、ヤオコーの「センター仕入伝票3」(審決注:「3」の数字は丸数字となっている。)という伝票であり、「仕入先コード・仕入先名」の欄には「ヨネキュー(カブ)ショクニク」の記載、「品名・規格」の欄には「トリモモサンゾクヤキ」の記載、「発注日」の欄には「15/04/05」の記載、「店納品日」の欄には「15/04/07」の記載がある。
(3)乙第39号証は、米久から商標権者に宛てた誓約書であるところ、「弊社は、貴社が保有する以下の商標を弊社商品に付すこと(以下「本権利」という)につき、下記事項を遵守いたします。」とし、その商標として、「商標 山賊焼(商標登録第5344204号)」の記載があり、下記事項の1として「1.貴社販売商品『山賊焼のたれ No.B52H62』を使用して弊社で製造される以下製品に対してのみ本権利を使用するものとします。※製品名 ヤオコー 鶏もも山賊焼き、マザーシェフ 鶏もも山賊焼き」の記載、また、下記事項の2として「2.上記対象製品の商品専用ラベルデザインは別紙1のとおりとし、デザインを変更する場合には、事前に貴社に連絡し、承諾を得るものとします。」の記載、下記事項の4として「4.本権利の使用期間は2015年4月1日から2015年9月30日とし、それ以降に継続して使用する場合には、事前に貴社に連絡し、承諾を得るものとします。」の記載がある。そして、別紙1として乙第42号証の包装袋の上部のデザインと同一のラベルデザインが添付されている。
2 事実認定及び判断
(1)上記1の記載及び被請求人の主張を総合勘案すれば、以下の事実を認めることができる。
ア 本件使用商品は、鶏もも肉の肉製品と認められ、その包装袋には、本件使用商標が表示されているところ、米久は、2015年(平成27年)4月7日に、本件使用商品をヤオコーに譲渡又は引渡したものと認められる。
そして、平成27年4月7日は、要証期間内に当たるものである。
イ 本件商標は「山賊焼」の文字からなり、本件使用商標は「山賊焼き」の文字からなるところ、送り仮名の「き」の平仮名の有無が異なるとしても、看者が認識する意味合いに異なるところはなく、その称呼も「サンゾクヤキ」で同一といえるものであるから、両者は、社会通念上同一の商標と認められるものである。
ウ 商標権者は、少なくとも、2015年(平成27年)4月1日から同年9月30日までの間、米久がヤオコー向けの商品である本件使用商品に本件使用商標を使用することについて許諾していたものと認められる。
そうすると、上記(1)の譲渡又は引渡しの日である平成27年4月7日には、商標権者は、米久による本件使用商標の使用を許諾していたといえる。
(2)小括
上記(1)によれば、本件商標の通常使用権者は、要証期間内に、日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品中の「肉製品」の範ちゅうに含まれる「鶏もも肉の肉製品」について、その包装に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付したものを譲渡又は引渡しをしたものであり、その行為は、商標法第2条第3項第2号にいう「商品の包装に標章を付したものを譲渡又は引き渡しをする行為」に該当するものと認められる。
3 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の通常使用権者が、その請求に係る指定商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、その取消請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-03-04 
結審通知日 2016-03-08 
審決日 2016-03-28 
出願番号 商願2009-61724(T2009-61724) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X2930)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 薩摩 純一石塚 文子 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 林 栄二
田中 亨子
登録日 2010-08-06 
登録番号 商標登録第5344204号(T5344204) 
商標の称呼 サンゾクヤキ、サンゾク 

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