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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y25
管理番号 1314467 
審判番号 取消2015-300571 
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-07-31 
確定日 2016-04-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第4995700号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4995700号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲に示すとおりの構成よりなり,平成17年6月24日に登録出願,第14類及び第24類に属する商標登録原簿に記載の商品並びに第25類「和服・足袋・足袋カバーその他の被服,げた・草履類その他の履物,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,同18年10月13日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録(予告登録)は,平成27年8月17日である。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項により,本件商標の指定商品中,第25類「和服・足袋・足袋カバーその他の被服,げた・草履類その他の履物,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」についての登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品中,第25類「和服・足袋・足袋カバーその他の被服,げた・草履類その他の履物,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,商標法第50条第1項の規定により,取り消されるべきものである。
2 弁駁
請求人は,被請求人の答弁に対して,何ら弁駁していない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。
1 被請求人について
被請求人(商標権者)は,昭和42年3月30日に成立した法人である。その事業目的は,履歴事項全部証明書にも記載されているように,「5 著作権,著作隣接権の取得,管理,及び譲渡」「6 商標権,商品化権,肖像権の取得,管理,販売」にある。そして,役員に「花井幸子」が表示されているように,ファッションデザイナーである花井幸子及び社員がデザインした著作物の被服等ファッション製品の製造・販売とそれらのライセンスを業務とする法人である。
花井幸子がトップクラスのファションデザイナーであることは,その取引先,公的職務,例えば,福井県顧問デザイナー,経済産業省〈輸出検査及びデザイン奨励審議会〉〈グッドデザイン商品選定〉等の各委員であることからもいえる。
2 本件商標の使用について
本件商標は,漢字「幸」の字が白抜きされた角形印影の文字商標である。デザイナーの花井幸子は,この漢字「幸」の字が白抜きされた角形印影の文字(標章)を自らがデザインした証拠として,商品「きもの」の通常「落款」が表示される部分に表示している。この標章は,商品「きもの」との関係では,サブブランドの表示となり,伝統的な「落款」の機能と商標の出所表示機能とを奏している。
3 実施契約書について
実施契約書の柱書にあるとおり,「有限会社アトリエ花井(以下「甲」と称する)と,市田株式会社(以下「乙」と称する)とは,甲が乙に提供する甲所有のデザイン及び情報によって以下に定義する本製品を製造,販売する独占的実施権を乙に許諾するにつき以下のとおり契約する。」と定める実施契約を締結した。
第1条(定義)において,「3.」には,「本製品とは,本デザインを使用して製造した訪問着,振袖,帯地,留袖,小紋,襦袢,和装小物,草履,和装バッグ類をいう。尚,乙の申し入れにより,甲は本デザインアイテムの見直しを協議する事に応じる。許諾商標とは,別表1に記載された商標を言う。」と規定し,本製品の範囲,許諾商標について定めた。
また,第3条(製造)において,「2.」には,「乙は,本製品の商品としての製造を開始する前に,甲の提供する本デザイン等に関し正確さをきす為,及び営業の保護の為,本製品の見本又は見本に代るものを甲に提供し,それぞれの製造につき甲の承認を得るものとする。この場合,甲はその判断により製品見本が本デザイン及びそれに関連する情報並びに甲の指定する配色及び規格に相違すると認めるときは,承認を拒否し又は乙にその改良を指示することができるものとし,乙はその指示に従わなければならないものとする。」と規定する。
そこで,本製品「和服」の見本において,本件商標が表示されているものは甲に承認,すなわち使用が承諾されたことになるのである。その花井幸子と「幸」の使用は同一人を表示するものであるから,取引者,需要者に出所をあざむくものでもない。
なお,市田株式会社とのライセンス提携は昭和57年(1982年)以来である。
4 本件商標のインターネット上の使用
(1)市田株式会社のホームページでは,「花井幸子きものギャラリー」の見出しの下,「ブランドコンセプト」として,「織りのきものを中心としたシンプルで,かつモダンな美しさを表現しました。」のキャッチコピーとともに,著作者「落款」(本件商標)を掲載して周知性を図っている。
(2)同じく,同ホームページでは,「花井幸子 KIMONO BOUTIQUE」の見出しの下,「ブランドコンセプト」として,「古典模様の雅な美しさを現代感覚の色彩で新しい美の世界を演出します。優雅にはんなりと,そして,ときにクラシックな華やかさを提案します。」のキャッチコピーとともに,著作者「落款」(本件商標)を掲載して周知性を図っている。
5 本件商標の使用商品の販売証明
本件商標の通常使用権者である市田株式会社は,本件商標を使用した商品(訪問着)を平成27年(2015年)3月27日に販売した(乙9)。
6 通常使用権者である市田株式会社のホームページにおいて,平成27年(2015年)2月13日,大規模に開催する展示販売会「第34回/2015 きものナンバーワン」の案内予告を掲載した。そして,市田株式会社の盛況な販売会場では,本件商標の使用商品が展示された。
7 本件商標と使用商標の同一性について
本件商標は,漢字「幸」の字が白抜きされた角形印影の文字商標である。本件商標の登録出願は,ライセンス商品業務の拡大に対応するためであり,本件商標のデザインは,従来,きもので使用されてきた「落款」と同一と認められる範囲でなされたものである。
したがって,白抜き文字の書体に関しても,デザイナー花井幸子のデザインが反映されているものである。
本件商標が使用される「きもの」において,被請求人のように著名な作家やデザイナーの製品には,落款を入れることがある。その場合に落款を入れる場所は,下前衽(おくみ)(審決注:衽(おくみ)とは,「和服で,前の左右にあって,上は襟えりにつづき下は褄(つま)に至る半幅の布。」(広辞苑第六版))の裾から一尺五寸,幅位置は衽の真ん中とされている。
乙第9号証で使用を立証した「きもの」においても,この位置に本件商標を使用していることが明らかである。
8 以上のように,本件商標は,本件審判の予告登録日(平成27年8月17日)前3年以内に,日本国内において通常使用権者によって指定商品「和服」について使用されているから,商標法第50条第1項に該当しないものである。

第5 当審の判断
1 認定事実
証拠及び被請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)被請求人(商標権者)は,昭和42年3月30日に設立された法人である。商標権者の役員であり,かつ,ファッションデザイナーである花井幸子及び社員がデザインした著作物に係る被服等ファッション製品の製造,販売及びそのライセンス業務も主たる事業の一である(乙3)。
(2)商標権者は,平成26年(2014年)4月1日,東京都に所在する市田株式会社(以下「市田社」という。)との間で,「実施契約書(きもの・風呂敷)」(以下「本件実施契約書」という。)により,商標権者がデザインした製品を製造,販売する独占的実施権を市田社に許諾する契約を締結した(乙5)。
本件実施契約書には,以下の記載がある。
ア 柱書において,「有限会社アトリエ花井(以下「甲」と称する)と,市田株式会社(以下「乙」と称する)とは,甲が乙に提供する甲所有のデザイン及び情報によって以下に定義する本製品を製造,販売する独占的実施権を乙に許諾するにつき以下のとおり契約する。」との記載がある。
第1条(定義)において,「1.本地域とは,日本国内及び今後甲が承諾するその他の地域をいう。」,「2.本デザインとは,本契約締結前後を問わず,本製品の為に甲が制作したデザインをいう。」,「3.本製品とは,本デザインを使用して製造した訪問着,振袖,帯地,留袖,小紋,襦袢,和装小物,草履,和装バッグ類をいう。……許諾商標とは,別表1に記載された商標を言う。」及び「4.本契約期間とは,2014年4月1日から2015年3月末日までの期間(第一契約年),2015年4月1日から2016年3月末日までの期間(第二契約年),の2ツの期間を言う。」との記載がある。なお,別表1に記載されている許諾商標は,「花井幸子」の漢字を筆書き風の書体で横書きしたものであって,本件商標ではない。
第2条(実施許諾)において,「1.甲は,本契約期間中に本地域内で本製品を製造,販売する独占的実施権を乙が本契約条項を遵守する限り許諾する。……」との記載がある。
第3条(製造)において,「2.乙は,本製品の商品としての製造を開始する前に,甲の提供する本デザイン等に関し正確さをきす為,及び営業の保護の為,本製品の見本又は見本に代るものを甲に提供し,それぞれの製造につき甲の承認を得るものとする。この場合,甲はその判断により製品見本が本デザイン及びそれに関連する情報並びに甲の指定する配色及び規格に相違すると認めるときは,承認を拒否し又は乙にその改良を指示することができるものとし,乙はその指示に従わなければならないものとする。……」との記載がある。
(3)乙第9号証の売上証明書に添付された写真には,本件商標が付された商品「訪問着」が示されており,同号証において市田社の代表者が証明した「商品コード・品番・品名等(5601-3549)60」の商品「花井幸子 訪問着」(1枚)は,同号証に添付された売上伝票の写しに照らし,本件審判の請求の登録前3年以内である2015年(平成27)年3月27日に,国内の取引先である顧客に販売された。
(4)以上によれば,商標権者がデザインした製品を製造,販売する独占的実施権を許諾された市田社は,本件審判の請求の登録前3年以内である平成27年3月27日に,国内の取引先である顧客に対し,本件商標が付された商品「訪問着」を販売したものと認められる。
2 本件商標の通常使用権者について
前記1によれば,市田社は,商標権者のデザインによる,本件商標が付された商品「訪問着」(乙9)を製造するに際して,事前に同商品の見本又は見本に代わるものを商標権者に示し,承認を得ていた(乙5)と解されるから,本件商標を使用することについても,商標権者から黙示の使用許諾を得ていたものといえる。
したがって,市田社は,本件商標の通常使用権者であると推認できる。
3 本件商標の通常使用権者による使用について
前記1によれば,本件商標の通常使用権者である市田社は,本件審判の請求の登録前3年以内である平成27年3月27日に,国内の取引先である顧客に対し,本件商標が付された商品「訪問着」を販売(譲渡)したものと認められる。そして,商品「訪問着」は,「和装で,女性の略式礼服」(広辞苑第六版)であるから,本件審判の請求に係る指定商品中「和服」に含まれる商品である。
上記使用行為は,商標法第2条第3項第2号に定める標章の「使用」に該当する。
4 まとめ
以上によれば,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内である平成27年3月27日に,日本国内において,通常使用権者が本件審判の請求に係る指定商品中「和服」に含まれる商品「訪問着」について,本件商標の使用を証明したということができる。
したがって,本件商標の登録は,本件審判の請求に係る指定商品について,商標法第50条により,取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標




審理終結日 2016-02-29 
結審通知日 2016-03-03 
審決日 2016-03-15 
出願番号 商願2005-57701(T2005-57701) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池田 佐代子 
特許庁審判長 田中 幸一
特許庁審判官 早川 文宏
田村 正明
登録日 2006-10-13 
登録番号 商標登録第4995700号(T4995700) 
商標の称呼 サチ、サイワイ、コー 
代理人 増田 政義 

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