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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W39
審判 全部申立て  登録を維持 W39
管理番号 1313275 
異議申立番号 異議2015-900265 
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-08-14 
確定日 2016-04-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第5763706号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5763706号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5763706号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成よりなり,平成27年1月26日に登録出願,同27年4月7日に登録査定がされ,第39類「航空券の予約・発券の媒介又は取次ぎ,航空機の運行ダイヤ・運賃・座席予約情報の提供」を指定役務として,同27年5月15日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する商標は,申立人の業務に係る役務「航空券・ホテル・鉄道等の旅行に関するオンライン予約代理業務,旅行代理店業務」を表示する別掲2ないし同4のとおりの標章からなるものである。
なお,以下,別掲2の標章を「引用商標1」,別掲3の標章を「引用商標2」,別掲4の標章を「引用商標3」といい,これらをまとめていうときは「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同第15号に該当するから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第37号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第15号に該当する理由
ア 引用商標の周知著名性について
申立人である「シートリップ・ドット・コム・インターナショナル・リミテッド」は,中国・上海に拠点を置く航空券・ホテル・鉄道等の旅行に関するオンライン予約代理業やオンラインによる旅行代理店業を営む事業者である。1999年に設立され,現在ではオンライン旅行予約業の中国最大手であり,中国内外に9つのグループ会社を有している(甲2)。
申立人は,設立以来引用商標1をハウスマークとして所有・使用している。また引用商標2のように当該ハウスマークに関連する語「携程」又は「CTRIP」について使用している。また,引用商標3のように英語表記「CTRIP」の片仮名表音訳として「シートリップ」の語が使用されている。一般に用いられるインターネット検索エンジンを用いて「CTRIP」及び「携程」の語をキーワードにして検索及び画像検索すれば,引用商標1ないし同3が多数検出される(甲3,甲4)。これらのことから引用商標が申立人に係る商標として広く使用されていることが裏付けられる。
「CTRIP」の語は,一般に使用される辞書には掲載されていない申立人の創作に係る造語である。創作の由来は,企業理念を表す語Customer,Teamwork,Respect,Integrity,Partnerの頭文字を集めたものである(甲5)。「携程」は申立人の漢字による中国語社名である。
申立人は中国でのオンライン旅行予約サイトとして最大事業者に成長し,引用商標を広く使用した結果,中国を中心とした外国はもとより我が国においても周知・著名となっている(甲6?甲17)。
特に中国馳名商標に認定されていることや,数々の受賞歴については,申立人に係る商標「CTRIP」や「携程」が著名となっていることの確固たる裏付けとなる。少なくとも中国を中心とした世界において引用商標が周知・著名となっていることは疑いようがない。
このように近隣国である中国での著名度合いに鑑みれば,その評判や名声は知れ渡って我が国の取引者・需要者にも広く浸透するであろうことは予想される。加えて近年,中国から我が国への旅行客が急増し,その利用者のうちの多くが申立人に係る予約サイトを直接的に又は間接的に利用しているという事実がある。我が国を訪れる中国人旅行者の約25%が申立人に係るサービスを利用している(甲25)との情報や昨年の訪日中国人旅行者の約50%が利用しているとの情報(甲28)がある。
そうすると,申立人の「携程/CTRIP」に関する事業やその名称は日本各地の国内旅行業者やホテル旅館等の宿泊施設のみならず,観光地の施設,名所,飲食店,物販店等ともかかわりが深くなって,我が国の取引市場や一般国民の間においても周知・著名となっていることが容易に理解される。我が国でも「携程/CTRIP」についての関心が高く,広く知られるようになっている(甲18,甲19)。中国資本で成長著しい旅行事業者として我が国においても新聞や雑誌にて多く取り上げられている(甲20?甲37)。
以上より,申立人に係る引用商標が中国では極めて著名となっていることは明白である。
イ 商標の関連性について
本件商標は,甲第1号証に見られるように山を模したと思われる図形に「Ctrip japan」の欧文字を横に並べ,更にその右横に「携程日本」と「シートリップジャパン」とを2段表記したものを据えてなる。
引用商標は,「Ctrip」の欧文字と「携程」の漢字表記,又はその表音の片仮名表記「シートリップ」を構成要素とする。
本件商標は,引用商標の構成要素である「Ctrip」,「携程」,「シートリップ」のいずれをもそっくりそのまま含んでいる。本件商標におけるその他の文字要素である「japan」,「日本」,及び「ジャパン」は単に国名をあらわしたにすぎない文字と考えられることから,識別力が弱い部分である。図形部分は「山」であることを示す程度にしか意味を持たない。
そうすると,本件商標にあって識別力を有する部分は「CTRIP」,「携程」及び「シートリップ」の部分とみるのが自然である。したがって,本件商標は識別力の発揮を期待する語として,著名な引用商標を構成する文字要素のすべてを用いている。
よって,本件商標と引用商標とは関連性が極めて高い。
ウ 役務の関連性について
事業上の関連性について見てみると,本件商標の指定役務が「航空券の予約・発券の媒介又は取次ぎ,航空機の運行ダイヤ・運賃・座席予約情報の提供」であるのに対して,申立人に係る事業が「航空券・ホテル・鉄道等の旅行に関するオンライン予約代理業務,旅行代理店業務」であることを考えれば,事業の内容はほぼ同一であるか,または大半が重複して競合することで相互に極めて密接な関係があるといえる。
エ 小括
そうすると,引用商標は上記アで述べたように周知・著名商標であって,かつ,上記イ及びウで述べたように本件商標と引用商標とは関連性が高く,役務の関連性も高い。
そうすると,本件商標を指定役務について使用した場合に,申立人の業務に係る役務であると誤認されるおそれがあるか,もしくは本件商標の商標権者と申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は関連する表示による事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務であると誤認されるおそれがある。
したがって,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第7号に該当する理由
本件商標が使用されれば,申立人が長年努力して引用商標に化体させた信用にただ乗りし,また,その信用を希釈し,汚す行為となるのみならず,実際に需要者の間に誤認混同が生じているから,健全な商取引を実現することにより産業の発達に寄与し,併せて需要者の利益を保護することを目指す商標法の目的に反するものであって,本件商標は公序良俗を害する登録商標であることは明らかである。
また,我が国の旅行代理業者である本件商標の商標権者が,その出願時に,世界的に著名な引用商標「CTRIP」,「携程」及び「シートリップ」の語について,申立人の事業を著名な引用商標の存在を知らずに偶然に使用・採択したとは到底考えられない。むしろ識別機能を強く発揮し大きな信用が化体された「CTRIP」,「携程」及び「シートリップ」の語に簡単な図形や「japan」,「日本」,及び「ジャパン」等の語を組み合わせることで拒絶理由を回避して登録を受けて使用する意図をもって出願,登録されたものである。
よって,本件商標は,信義則に反する不正の目的で出願されたものであって,社会一般道徳に反するとともに国際信義にも反する商標である。
以上より,本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 本件商標と引用商標の類似性
(ア)本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,赤色の円形内に白抜きで山形風の図形とその右側に「Ctrip japan」の欧文字を横書きし,さらにその右側に「携程日本」「シートリップジャパン」の文字を上下二段に書してなるところ,外観上該図形部分と文字部分との結びつきは,それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとまではいえないものであって,該図形部分より直ちに特定の称呼及び観念は生じないというべきであるから,その構成中の文字部分から生ずる称呼によって取引に資する場合も決して少なくないものというべきである。
そして,その構成中の文字部分については,該「Ctrip japan」,「携程日本」及び「シートリップジャパン」の文字部分中の「Ctrip」,「携程」及び「シートリップ」の文字が辞書類等に載録された成語とも認められず,かつ,特定の意味合いを有する語として一般に知られたものとも認められないものであるから,「japan」,「日本」及び「ジャパン」の文字とそれぞれ組み合わせた各文字部分は,特定の意味合いを有するものとして認識されないものである。
また,該「Ctrip japan」の文字部分は,本件商標の「シートリップジャパン」の文字部分の欧文字表記としてみることができるから,その称呼は,「シートリップジャパン」と認められるものであり,該「携程日本」の文字部分は,「携程」の文字が「ケイテイ」と読むことが不自然でないことから,「ケイテイニホン」と称呼される場合も否定できない。
してみれば,本件商標は,その構成中の各文字部分に相応して,「シートリップジャパン」及び「ケイテイニホン」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものとみるのが相当である。
(イ)引用商標
引用商標1は,「Ctrip」の欧文字と「携程」の文字の間を線で区切って上下二段に,引用商標2は,「携程」と「CTRIP」の文字からなる「携 程 CTRIP」の文字を,引用商標3は,「シートリップ」の片仮名を,それぞれ書してなるものであるところ,引用商標は,それぞれの構成文字に相応して,「シートリップ」,「ケイテイ」,「シートリップケイテイ」及び「ケイテイシートリップ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものとみるのが相当である。
(ウ)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標を比較すると,外観においては,それぞれ前記のとおりの構成よりなるものであって,引用商標は,文字を要部とするものであるのに対し,本件商標は図形と文字との結合商標であること,その文字部分の比較においても,「japan」,「日本」,「ジャパン」の文字の有無の差異を有するものであるから,外観上,明確に区別できるものである。
称呼においては,本件商標より生ずる「シートリップジャパン」の称呼と,引用商標より生ずる「シートリップ」,「シートリップケイテイ」及び「ケイテイシートリップ」の称呼とは,「シートリップ」の音において共通するとしても,「ジャパン」又は「ケイテイ」の音の有無に差異を有するものであり,また,引用商標より生ずる「ケイテイ」の称呼とは,構成音が明らかに相違するものであるから,両者は,明瞭に聴別し得るものであって,互いに相紛れるおそれはないものである。
また,本件商標より生ずる「ケイテイニホン」の称呼と,引用商標より生ずる「ケイテイ」,「シートリップケイテイ」及び「ケイテイシートリップ」の称呼とは,「ケイテイ」の音において共通するとしても,「ニホン」又は「シートリップ」の音の有無に差異を有するものであり,また,引用商標より生ずる「シートリップ」の称呼とは,構成音が明らかに相違するものであるから,両者は,明瞭に聴別し得るものであって,互いに相紛れるおそれはないものである。
観念においては,本件商標と引用商標は,ともに特定の観念を生じないものであるから,観念において比較することができないものである。
したがって,本件商標と引用商標とは,観念において比較することができないとしても,外観及び称呼において互いに相紛れるおそれのないものであるから,両商標は,非類似の商標というべきである。
イ 引用商標の著名性について
(ア)申立人の提出する証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。
a 申立人は,中国・上海に拠点を置く航空券・ホテル・鉄道等の旅行に関するオンライン予約代理業やオンラインによる旅行代理店業を営む事業者であり,1999年に設立され,現在ではオンライン旅行予約業の中国最大手であり,中国内外に9つのグループ会社を有している(甲2)。
b 申立人は,引用商標1をハウスマークとして使用し,また引用商標2及び引用商標3が申立人に係る商標として広く使用されている(甲3,甲4)。
c 「CTRIP」の語は,一般に使用される辞書には掲載されていない申立人の創作に係る造語であり,創作の由来は,企業理念を表す語Customer,Teamwork,Respect,Integrity,Partnerの頭文字を集めたものである(甲5)。また,「携程」は申立人の漢字による中国語社名である。
d 「携程 CTRIP」は,中国商標局より馳名商標として(甲6),「携程/CTRIP」や「携程 CTRIP」は,上海市から有名商標として証明され(甲7),その他各種業界団体,事業者,地公体等より数多の賞を受けている(甲11)。
e 申立人は毎年多額の広告宣伝費を投じ(甲8),新聞や雑誌の広告(甲9)を行っている。また,中国旅行研究院において,中国の20大旅行代理店業者の第1位に掲載されている(甲10)。
f 申立人は,台湾,香港,米国,日本において「携程/CTRIP」について登録商標を有している(甲12?甲16)。
g 2014年5月には日本にも事業所を設置し(甲18),わが国を訪れる中国人旅行者が申立人のサービスを使用している(甲19)。また,我が国においても新聞や雑誌で多く取り上げられている(甲20?甲37)。
(イ)上記(ア)で認定した事実によれば,申立人は,中国・上海に拠点を置く航空券・ホテル・鉄道等の旅行に関するオンライン予約代理業やオンラインによる旅行代理店業を営む事業者であり,1999年に設立され,オンライン旅行予約業の中国最大手であり,引用商標1(ハウスマーク)ないし引用商標3を申立人に係る商標として使用していることが認められ,引用商標は申立人の業務に係る役務を表示するものとして,本件登録出願時及び登録査定時には,主に中国の旅行業者や中国の需要者の間において,広く認識されていたことは推認し得るところである。
我が国においては,上記「(ア)g」のとおり,2014年5月に事業所を設置しサービスを行っているが,引用商標に係る申立人役務の本件商標の登録査定時前の我が国における広告,宣伝等の証拠の提出はなく,売上額等も不明である。また,甲第20号証?甲第37号証によれば,2004年6月,2007年2月,同年8月,2011年8月?2015年10月にかけて,申立人に関する記事が掲載されたことは認められるものの,その内容も,訪日中国人向けの旅行に関する内容とともに紹介されているものであり,かつ,2015年の紹介記事が大部分であって,ごくわずかな期間であるといえることからすると,提出された証拠によっては,引用商標の著名性を推し量ることができない。
その他,引用商標が,申立人役務を表示するものとして,本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたと認めるに足りる証拠の提出もない。
以上を総合勘案すると,引用商標の周知・著名性は,提出された甲各号証をもってしては,主に中国の旅行業者及び中国の需要者など限られた範囲にとどまるものといわなければならず,引用商標は,申立人に係る役務「航空券・ホテル・鉄道等の旅行に関するオンライン予約代理業務,旅行代理店業務」を表示するものとして,本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において,我が国において,需要者間に広く認識されているということができない。
ウ 出所の混同について
上記イのとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る役務を表示するものとして,我が国の需要者に広く認識されていたとはいえないものであり,また,本件商標は,前記アのとおり,引用商標とは別異のものとして認識,把握されるものであることからすれば,本件商標が,その構成中に「Ctrip」,「携程」及び「シートリップ」の文字を有してなるものであるとしても,本件商標をその指定役務に使用した場合,これに接する取引者,需要者が引用商標を連想,想起するようなことはないというべきであり,該役務が申立人又は同人と経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのごとく,その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は,前記(1)ア及びイのとおり,我が国において,需要者に広く認識されていたものとはいうことができず,また,本件商標は,たとえ,その構成中に「Ctrip」,「携程」及び「シートリップ」の文字を含んでいても,本件商標と引用商標とは別異のものであるから,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力にただ乗りしたものとはいえず,かつ,本件商標を商標権者が使用することが引用商標の信用にフリーライドしようとするものであるとする証左はないから,社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反するものとはいえず,不正の目的をもって出願されたものとはいうことができない。
そうとすれば,本件商標について商標権者がその使用をしても,国際的取引秩序を乱すものとはいえず,国際信義に反するものではないから,本件商標が,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(3)まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標:色彩は原本を参照されたい。)


別掲2(引用商標1:色彩は原本を参照されたい。)


別掲3(引用商標2)


別掲4(引用商標3)



異議決定日 2016-03-14 
出願番号 商願2015-6294(T2015-6294) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W39)
T 1 651・ 22- Y (W39)
最終処分 維持  
前審関与審査官 齋藤 貴博 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 榎本 政実
井出 英一郎
登録日 2015-05-15 
登録番号 商標登録第5763706号(T5763706) 
権利者 株式会社中海航運
商標の称呼 シートリップジャパン、シイトリップジャパン、ケーテーニッポン、シートリップ、シイトリップ、ケーテー 
代理人 竹内 耕三 
代理人 深見 久郎 

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