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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W16 審判 全部申立て 登録を維持 W16 審判 全部申立て 登録を維持 W16 |
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管理番号 | 1312076 |
異議申立番号 | 異議2015-900115 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-04-09 |
確定日 | 2016-02-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5742052号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5742052号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5742052号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成26年10月1日に登録出願,第16類「書籍,雑誌,新聞,その他の印刷物,書画,写真,文房具類」を指定商品として,同27年1月16日に登録査定され,同年2月20日に設定登録されたものである。 第2 申立人の引用する標章 映画「007」シリーズにおいて主人公である「ジェームズ・ボンド」の「Bond」又は「ボンド」の文字からなる標章(以下,これらをまとめて「使用標章」という場合がある。)。 第3 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同第15号及び同第19号に該当し,同法第43条の2第1号によって商標登録は取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。 1 申立人について 申立人「ダンジャック・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー」(以下「ダンジャック」という。)は,イアン・フレミングの007(ダブルオーセブン)シリーズの映画化権を保有していたハリー・サルツマンとともに007シリーズの映画を製作するためのプロダクション「イーオン・プロダクション」を設立し,第1作「ドクター・ノオ」から最新作「スカイフォール」に至るまでその制作を行っている(甲2)。 2 「ジェームズ・ボンド」の周知著名性について インターネットの検索エンジン「Google」により検索ワードを「ジェームズ・ボンド」にして検索してみると,およそ29万1千件がヒット。その検索結果の多くが007シリーズにおける登場人物を示している(甲3)。「ジェームズ・ボンド」について検索してみると,フリー百科事典「ウィキベディア」の結果が最上段にあり,その内容は,「ジェームズ・ボンド(James Bond)は,イギリスの作家イアン・フレミング(1908-1964)のスパイ小説,およびこれを原作とする映画の主人公である。」とある(甲4)。ジェームズ・ボンドの名セリフとして「『アメリカ映画の名セリフベスト100』で彼のセリフ『Bond.James Bond』が22位にランク入りしている」という記述があるが,このことは使用標章という英語名の姓が「ジェームズ・ボンド」のことを表していることが需要者にも著名であることが看取できるものである。 3 商標法第4条第1項第7号について 上述のとおり,使用標章は007シリーズの映画のキャラクターとして周知著名であるのみならず,強い顧客吸引力を獲得した非常に商業的価値の高いものである。このような名称及び標章と何らの関係も有しない者が,これを一部に採用した商標である本件商標「ボンド・ジュニアの冒険/Adventure of Bond Jr.」を自己の商標に採択使用することは,その周知著名な名称・標章に化体した名声や信用に故なく便乗するものといわざるを得ない。まして,007シリーズの映画はジェームズ・ボンドの冒険物語を主題にしているので,本件商標「ボンド・ジュニアの冒険/Adventure of Bond Jr.」は「ジェームズ・ボンドの息子の冒険」を意味するとも取られかねない。かかる商標を登録することは,指定商品について商標権者にその独占的使用を認めることとなり,公正な取引秩序を乱し,ひいては国際信義にも反するものといわざるを得ないから,本件商標は公序良俗を害するおそれがある商標に該当すると判断すべきものである。 したがって,本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものであり,登録されるべきものではない。 4 商標法第4条第1項第15号について 上述のとおり,使用標章は,需要者の間に広く認識されている商標である。 したがって,本件商標が指定商品について使用されれば,これに接する取引者・需要者は,申立人の業務に係る商品,又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し,商品の出所について混同する蓋然性が極めて高い。なお,使用標章の名称は現在のみならず,本件商標が出願された時点においても広く知られていたことはいうまでもない。 したがって,本件商標は出願時より商標法第4条第1項第15号に該当するものであり,登録されるべきものではない。 5 商標法第4条第1項第19号について 上述のとおり,「ジェームズ・ボンド」ないし使用標章は,「ダンジャック」の制作に係る映画の登場人物として,需要者の間に広く認識されている商標である。ところで,商標権者は,他にも,我が国でも著名な児童書「ピーターラビット」の名声にフリーライドするような登録第5742051号「わんぱくうさぎ/ピーターの冒険/Peter‘S Adventure」なる登録商標がある(甲5)。また,ウォルト・ディズニー・カンパニーの著作に係る「バンビ」のパロディ版のような登録第4574629号も登録している(甲7)。すなわち,商標権者は,著名なキャラクターにフリーライドして不正の目的をもって使用をする意思が明確に看取できるものである。 したがって,本件商標は周知著名な使用標章ないし007シリーズの映画の価値に乗じようとする意図又は使用標章ないし007シリーズの映画の価値を希釈化させる意図を以って出願されたとみるのが相当である。 また,使用標章の名称・標章は,現在のみならず,本件商標が出願された時点においても広く知られていたことは上述のとおりである。 したがって,本件商標は出願時より商標法第4条第1項第19号に規定する商標に該当するものであり,登録されるべきものではない。 6 むすび 以上の理由及び各証拠(甲1ないし甲10)から明らかなように,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同第15号,同第19号により,同法第43条の2第1号によって商標登録が取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1 使用標章の周知性について 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,次のとおり判断できる。 (1)インターネットの検索エンジン「Google」により検索ワードを「ジェームズ・ボンド」にして検索してみると,およそ29万1千件がヒットし,その検索結果の多くが007シリーズにおける登場人物を示している旨,主張する(甲3)。 (2)「ジェームズ・ボンド」について,フリー百科事典「ウィキベディア」によると,「ジェームズ・ボンド(James Bond)は,イギリスの作家イアン・フレミング(1908-1964)のスパイ小説,およびこれを原作とする映画の主人公である。」の記載がある(甲4)。 (3)ジェームズ・ボンドの名セリフとして「『アメリカ映画の名セリフベスト100』で彼のセリフ『Bond.James Bond』が22位にランク入りしている」の記載がある(甲4)。 (4)以上のとおり,申立人が提出した証拠及び主張によれば,その証拠数はわずか2件と極めて少なく,インターネット情報によるウェブサイトのみで,日付は,本件商標の登録出願時より以降の2015年4月6日に印刷されたものと推認できるものであり,これらの証拠のみからは,使用標章が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,007シリーズの映画に登場する主人公であるで「ジェームズ・ボンド(James Bond)」の「Bond」又は「ボンド」の文字が,需要者の間に広く知られていたものであることを認めることができない。 また,申立人は,007シリーズの映画に登場する主人公である「ジェームズ・ボンド(James Bond)」の文字が周知であることは主張しているが,使用標章の使用についての主張及び具体的な証拠は見当たらず,使用標章がいかなる商品又は役務に使用されているかを明らかにしていない。 2 商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について 商標法は、同法第4条第1項第10号「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって,その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用するもの」,同第15号「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当する商標について,商標登録を受けることができないと規定しているところ,上記1のとおり,申立人の使用標章は,需要者の間に広く知られているものではなく,また,申立人は,使用標章が申立人の業務に係るいかなる商品又は役務を表示するものであるかを明らかにしていないから,申立人の主張は,その前提を欠くものといわざるを得ないものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するものとはいえない。 3 商標法第4条第1項第19号該当性について 商標法は、同法第4条第1項第19号「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的(不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用するもの」に該当する商標について,商標登録を受けることができないと規定している。 そして,申立人は,商標権者が不正の目的をもって本件商標を使用していることについて,甲第5号証ないし甲第9号証を提出して,不正の目的をもって使用する意思が明確にあったと主張するが,これらの証拠は,登録商標の情報,児童書及びアニメーション映画の記事であって,どのような不正の目的があるのか具体的な記載はなされていない。 また,上記1のとおり,申立人は,使用標章が申立人の業務に係るいかなる商品又は役務を表示するものであるかを明らかにしていないから,申立人の主張は,その前提を欠くものといわざるを得ないものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。 4 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)商標法は、同法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する商標について,商標登録を受けることができないと規定しているところ,これに該当する商標は,「(a)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,(c)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである。」と判示されているところである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決参照)。 以下,これについて検討する。 (2)本件商標は,前記第1の構成態様からなるものであるから,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様ではないことは明らかである。 また,本件商標の指定商品について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するということもできない。 さらに,申立人が提出した証拠及び主張からは,特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合に当たるということはいえない。 加えて,申立人が提出した証拠及び主張からは,本件商標の登録出願の経緯が,社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合当たるということもいえない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しないものである。 5 むすび 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第第7号,同第10号,同第15号及び同第19号のいずれにも違反して登録されたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 本件商標![]() |
異議決定日 | 2016-02-09 |
出願番号 | 商願2014-86393(T2014-86393) |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W16)
T 1 651・ 271- Y (W16) T 1 651・ 222- Y (W16) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 浦崎 直之 |
特許庁審判長 |
金子 尚人 |
特許庁審判官 |
榎本 政実 中束 としえ |
登録日 | 2015-02-20 |
登録番号 | 商標登録第5742052号(T5742052) |
権利者 | トランスメディア株式会社 |
商標の称呼 | ボンドジュニアノボーケン、アドベンチャーオブボンドジュニア |
代理人 | 山崎 行造 |