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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W05
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W05
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W05
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W05
審判 全部無効 商品(役務)の類否 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W05
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W05
管理番号 1311968 
審判番号 無効2015-890014 
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-02-09 
確定日 2016-02-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第5695037号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5695037号の指定商品中、第5類「青汁を主原料とするサプリメント,サプリメント,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とし青汁を含有するサプリメント,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とするサプリメント,動物エキスを主原料とし青汁を含有するサプリメント,動物エキスを主原料とするサプリメント,青汁を主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とし青汁を含有する粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,動物エキスを主原料とし青汁を含有する粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,動物エキスを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食,青汁を含有する栄養補助食品,栄養補助食品」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5695037号商標(以下「本件商標」という。)は、「毛髪力」の文字を標準文字により表してなり、平成26年3月13日に登録出願、第5類「青汁を含有する乳幼児用粉乳,乳幼児用粉乳,青汁を主原料とするサプリメント,サプリメント,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とし青汁を含有するサプリメント,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とするサプリメント,動物エキスを主原料とし青汁を含有するサプリメント,動物エキスを主原料とするサプリメント,青汁を主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とし青汁を含有する粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,動物エキスを主原料とし青汁を含有する粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,動物エキスを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,青汁を含有する栄養補助食品,栄養補助食品,青汁を含有する食餌療法用飲料,食餌療法用飲料,青汁を含有する食餌療法用食品,食餌療法用食品,青汁を含有する乳幼児用飲料,乳幼児用飲料,青汁を含有する乳幼児用食品,乳幼児用食品,青汁を含有する栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。),栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。)」を指定商品として、同年7月23日に登録査定、同年8月15日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する登録第4788402号商標(以下「引用商標」という。)は、「毛髪力」の文字を標準文字で表してなり、平成15年11月13日に登録出願、第3類「シャンプー,頭髪用化粧品」及び第5類「毛髪用剤,日本薬局方の毛髪用薬用せっけん」を指定商品として、同16年7月23日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、本件の登録、又は、指定商品中「青汁を主原料とするサプリメント,サプリメント,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とし青汁を含有するサプリメント,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とするサプリメント,動物エキスを主原料とし青汁を含有するサプリメント,動物エキスを主原料とするサプリメント,青汁を主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とし青汁を含有する粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,動物エキスを主原料とし青汁を含有する粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・グリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,動物エキスを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品」についての登録は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第24号証(枝番を含む。)を提出した。

2 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア はじめに
本件商標は、引用商標と外観、称呼及び観念のいずれの観点からも同一又は少なくとも互いに類似するものであり、また、その指定商品も互いに類似するものである。そのため、本件商標は、商標法第4条第1項第11号により登録を受けることができないものである。
したがって、本件商標は、商標法第46条第1項の規定に基づいて、その登録は前述した指定商品(以下「本件指定商品」という場合がある。)につき無効とされるべきものである。
イ 本件商標と引用商標とが同一又は類似であること
本件商標と引用商標は、各々「毛髪力」の文字よりなるところ、これらの商標は、同一と認められるものであるか、少なくとも互いに類似することは明らかである。
ウ 本件商標と引用商標との商品の類似性について
本件指定商品と引用商標に係る指定商品中の第3類「頭髪用化粧品」と第5類「毛髪用剤」(以下「引用各指定商品」という場合がある。)とは互いに類似するものである。
(ア)「類似商品・役務審査基準」の記載について
特許庁商標課編「類似商品・役務審査基準」によれば、確かに、本件指定商品であるいわゆる「サプリメント」(32F15)は、引用各指定商品である第3類「頭髪用化粧品」(04C01)及び同第5類「毛髪用剤」(01B01)と異なる類似群コードが付されているため、これらの商品は形式上互いに類似しないものとして取り扱われている。
しかしながら、この「類似商品・役務審査基準」は、審査上の類否判断のために全審査官の統一的基準を図るものであるため、各商品間の具体的な取引の実情を考慮した場合には、結果として本審査基準とは異なる取り扱いがされることもありうる。
事実、本審査基準においても「原則として、互いに類似商品又は類似役務であると『推定』するもの」(1-11頁)であって、「具体的、個別的に商品又は役務の類否を審査する際において、あるいは商取引、経済界等の実情の推移から、本基準で『類似』と推定したものでも『非類似』と認められる場合又はその逆の場合もあり得ます。」(同頁)との記述が認められる(甲5)。換言すると、本審査基準上では「非類似」と推定したものでも「類似」と認められる場合もある、ということである。
そこで、特許庁商標課編商標審査基準によれば、商品の類否を判断する際には、a.生産部門が一致するかどうか、b.販売部門が一致するかどうか、c.原材料及び品質が一致するかどうか、d.需要者の範囲が一致するかどうかなどの基準を総合的に考慮するものとしているため(甲6)、これらの基準に沿って本件指定商品と引用各指定商品とが互いに類似するものであることを述べる。その上で、本件指定商品と引用各指定商品とが互いに類似する証左として裁判例を提出し、これについて述べる。
(イ)生産部門が一致する点について
近年の健康食品ブームに伴って、健康食品業界には食品製造を業とする事業会社のみならず、他業種の事業会社による参入も後を絶たず、実に様々な企業が健康食品の代表的製品であるサプリメントの製造販売を行っている。
ここで、引用各指定商品である「頭髪用化粧品」及び「毛髪用剤」とは、いわゆる「育毛剤」のことを指し示すものである。
この育毛剤を製造販売する事業会社が、育毛剤の製造販売を行うと同時にサプリメントの製造販売を行っている事実が見受けられる(甲7ないし甲9)。
この点、請求人においても、平成6年4月に「薬用毛髪力」シリーズの製造販売を開始して以来20年以上の年月を経ているが(甲10)、それと並行して以下のようなサプリメントの製造販売を行っている。
「グッスミン」、「グッスミン 酵母のちから」、「トマト酢生活」、「トマト酢+ミルクペプチド生活」、「ナイスリムエッセンス ラクトフェリン」、「田七人参習慣」 、「キュプルン」
したがって、本件指定商品と引用各指定商品とは、生産部門(生産主体)が一致するものといえる。
(ウ)販売部門が一致する点について
サプリメントを始めとする健康食品の多くはドラッグストア、薬局、薬品店等の一般の小売店舗、並びに、インターネット上での店舗において、育毛剤と共に販売されている事実が多数認められる(甲11ないし甲13)。
したがって、本件指定商品と引用各指定商品とは、販売部門(販売場所)が一致するものということができる。
(エ)原材料及び品質が一致する点について
ここで、育毛剤とは、抜け毛を予防し発毛を促すために用いる頭髪用の育毛料をいい、ふけ、かゆみを抑え、毛根に活力を与えて血行をよくし、養毛促進に効果がある。有効成分として、ビタミンBやE、生薬などが配合されている、と定義されている(甲14)。一方で、サプリメント(栄養補助食品)とは、栄養成分を補給し、特定の保健の用途に適する食品。健康補助食品、サプリメントともいう。錠剤やカプセル剤など、通常の食品とは異なった形態のものをさす。範囲はビタミン、ミネラル、ハーブその他の栄養成分に及ぶ、と定義されている(甲15)。
このように、両者は、主な有効成分あるいは栄養成分としてビタミンが配合されていることが通例であるから、原材料の一部が共通しているものといえ、また、近年では、育毛剤の有効成分である生薬を配合したサプリメントなども製造販売されていることから(甲16)、この場合も原材料の一部が共通しているものといえる。
さらに、近時育毛効果をうたったサプリメントが雨後の竹の子のように製造販売されている事実がある(甲17)。この場合効果の程度差はあれ、抜け毛を予防し発毛を促す効果は育毛剤の場合と変わらず、育毛剤とサプリメント、とりわけ育毛効果を有するサプリメントとは効能、品質は共通するものといわなければならない。
したがって、本件指定商品と引用各指定商品とは、原材料及び品質(効能)が一致するものである。
(オ)需要者の範囲が一致する点について
育毛剤の製造販売が開始された当時は、育毛剤のターゲットは主に20歳代以上の男性であった。しかし、近年、男性と同様に抜け毛、育毛に注意を払う女性が増加する傾向がみられていることから、近時では女性用の育毛剤が多数販売されている(甲18)から、育毛剤の顧客ターゲットは20歳代以上の男女ということになり、極めて幅広い層が需要者となるものである。
他方、サプリメントに代表される健康食品は、その栄養補助機能を有する食品として、一般需要者に広く、かつ、深く浸透しているものであるから、、サプリメントは、特定の需要者層に偏ることなく、一般的な需要者層が顧客ターゲットとなり得る。
このように、育毛剤とサプリメントの需要者の範囲は大部分において一致するものである。
したがって、本件指定商品と引用各指定商品は、需要者の範囲が大部分において共通するものといえる。
(カ)裁判例
東京高裁平成14年(行ケ)第555号審決取消請求事件においても、これらの商品は類似するとの判断がなされている(甲19)。すなわち、裁判所は「・・しかし、食品メーカーだけでなく、多数の有力な製薬会社が健康食品あるいは栄養補助食品の分野に進出してきていることは前記のとおりであり、実際の取引の場においても、薬局、薬品店、ドラッグストア等の経営者やその従業員は、医薬部外品と健康食品とを区別して、これらを貯蔵し、陳列しているとしても、一般の需要者は、医薬品、医薬部外品、健康食品から化粧品及び洗剤その他の種々雑多な生活用品を陳列し販売している薬品店、ドラッグストア等において、例えば、同一又は類似の商標を付したビタミン剤とビタミン補給用の栄養補助食品、あるいは、同一又は類似の商標を付した育毛剤と育毛関連の栄養補助食品とがあったときに、ビタミン剤とビタミン補給用の栄養補助食品との区別を正確に把握しないままに、あるいは、育毛剤と育毛関連の栄養補助食品との区別はしつつも、同一又は類似の商標の付されたこれらを出所を同じくする姉妹商品であるかのように理解したままに購入に至るおそれがあることは、明らかである。・・・」、「・・・以上のとおり、医薬品ないし医薬部外品中のビタミン剤、滋養強壮変質剤あるいは育毛剤と、健康食品ないし栄養補助食品(サプリメント)とは、商品の内容が類似し、あるいは関連性を有し、また、その販売店ないし販売方法も同種のものであるということができるのであるから、類似の商品であるというべきである。被告の上記主張は、理由がない。」旨判示し、育毛剤と健康食品ないし栄養補助食品(サプリメント)との類似性を積極的に是認する判断を行っている。
(キ)小括
以上述べたとおり、本件指定商品であるサプリメントと引用各指定商品である「頭髪用化粧品」及び「毛髪用剤」とが、生産部門、販売部門、原材料及び品質、需要者の範囲において一致し、さらには、これらの商品を互いに類似するものと積極的に判旨する裁判例の存在に鑑みれば、本件指定商品と引用各指定商品とが互いに類似するものであるものといわなければならない。
エ まとめ
以上より、本件商標と引用商標は、同一又は少なくとも互いに類似するものであり、また、指定商品についても互いに類似することは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号により登録を受けることができないものに対して登録されたものであって、商標法第46条第1項の規定に基づいて、その登録の一部は無効とされるべきものである。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 引用商標の周知・著名性
引用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国において既に周知・著名性を獲得し、その周知・著名性は現在においても継続しているものである。
すなわち、請求人は、洗剤、石鹸、歯みがき等のトイレタリー用品や医薬品、化学品など多岐にわたる製品の製造販売を業とし、国内外に数十社のグループ会社を擁する総合化学メーカーであり、その歴史は1891年(明治24年)10月の設立に端を発し、現在に至るまで実に120年以上の歴史を誇る我が国有数の総合化学メーカーの一つであるといえる。
請求人が取り扱う製品群(ブランド)は50近くに昇り(甲20)、前述のように多岐にわたる商品分野をカバーしている。そのため、我が国におけるごく一般的な需要者又は取引者は日常的に請求人が提供する商品を使用しているということができる。その結果、請求人ブランドは我が国のごく一般的な需要者又は取引者の間に深く浸透しているものといって差し支えない。
その数々の請求人ブランドの中で育毛剤の分野を担当するのが「薬用毛髪力」シリーズである。この「薬用毛髪力」シリーズについては、前述のように、平成6年4月に製造販売を開始して以来20年以上の歴史を誇るものであり(甲10)、育毛剤を取り扱う分野においては、「薬用毛髪力」シリーズは最も育毛効果の高い育毛剤の一つとして需要者又は取引者の高い評判、名声を得ており、我が国の育毛剤製品のトップブランドの一角を今なお占めている。その結果、引用商標は、需要者又は取引者の間に請求人の業務に係る商品を表示するものとして広く知られるところとなり、もはや周知著名性を獲得しているものといえる。
また、請求人は、その高い評判、名声をさらに拡大すべく、「薬用毛髪力」シリーズの姉妹商品として「薬用毛髪力シャンプー」の製造販売を開始し、育毛剤たる「薬用毛髪力」シリーズと同様の高い評判、名声を需要者又は取引者から獲得している。このように請求人は「薬用毛髪力」シリーズから派生する姉妹商品を展開した実績があり、今後も他の商品分野における姉妹商品(当然「サプリメント」を含む。)を展開する可能性を十分に有するものである。
ここで、請求人は「医薬部外品マーケティング要覧」(甲21)を提出する。該要覧は、消費財、生産財など広範な商品群にわたるマーケティングリサーチを業とする株式会社富士経済により報告されたものであり、各商品の売上高、業界シェア、市場動向などが内容として記載されており、その利用価値は極めて高いものとして広く知られている。甲第21号証によれば、「薬用毛髪力」シリーズ商品の売上高(概算)、市場シェア及び順位は共に減少傾向にあるものの、売上げについては、直近10年(2012年ないし2003年)だけでも、単年で数十億の売上げがあり、累計270億円以上もの売上を計上している。さらに、シェアについては常時4%後半ないし9%後半の間を維持し続け、その順位においても、少なくともこの10年の間は3位又は4位を常時維持している。
さらに、「売上伝票」(甲22)によれば、請求人の「薬用毛髪力」シリーズが直近においても取引されている事実を把握することが可能である。
このように、請求人の「薬用毛髪力」シリーズは、日本国内で発売されている育毛剤のトップブランドの一つとして業界に君臨している。そのため、「薬用毛髪力」シリーズについて使用されている引用商標は、需要者又は取引者の間においては、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、広く一般に知られており既に周知著名性をゆうに獲得しているものといわなければならない
したがって、引用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国において周知・著名性を獲得し、その周知・著名性は現在においても継続しているものである。
イ 商標及び商品の(同一又は)類似性
上記(1)においても述べたように、本件商標と引用商標は、同一又は少なくとも互いに類似するものであり、また、指定商品についても互いに類似することは明らかである。
ウ まとめ
以上より、引用商標は、請求人の業務に係る商品の分野においては周知・著名性を獲得しており、さらに、本件商標と引用商標は、同一又は少なくとも類似するものであり、また、指定商品についても互いに類似することは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号により登録を受けることができないものであって、商標法第46条第1項の規定に基づいて、その登録の一部は無効とされるべきものである。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標が周知・著名性を獲得していること
上記(2)で述べたとおり、引用商標は、請求人の業務に係る商品、とりわけ「育毛剤」を表示するものとして、我が国において周知・著名性を獲得し、その周知・著名性は現在においても継続しているものである。
イ 本件商標と引用商標が同一又は互いに類似すること
上記(1)で述べたとおり、本件商標と引用商標とは同一であるか、又は、少なくとも互いに類似することは明らかである。
ウ 出所の混同が生じる可能性があること
このように、引用商標が周知・著名性を獲得している点、引用商標と本件商標とが同一又は少なくとも互いに類似する点、さらには、「毛髪力」の語が請求人による造語である点、及び、請求人が極めて広範な商品を取り扱う企業体であることを考慮すれば、本件商標に接する需要者又は取引者は、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品と誤認し、その商品の出所の混同を生ずる蓋然性が極めて高いものといわなければならない。
すなわち、「毛髪力」の語は、請求人が商品の製造販売を開始した平成6年当時、同業他社に先駆けて採択し使用を開始したいわゆる造語であり、請求人が継続して「毛髪力」シリーズの育毛剤やシャンプーを積極的に製造販売してきた実績から、「毛髪力」の語には、すでに請求人の高い名声やグッドウィルが表彰されている。
さらに、請求人は、トイレタリー用品、医薬品、化学品、健康食品などを取り扱う我が国有数のメーカーであり(甲10)、加えて、上記(2)で述べたとおり、請求人は「薬用毛髪力」シリーズから派生する姉妹商品(シャンプー)を展開した実績があり、今後も他の商品分野における姉妹商品を展開する可能性を十分に想定できる。そのため、これらのことを考慮すれば、請求人が姉妹商品としてサプリメントを製造販売することについては何ら不自然な点はないし、そればかりか近時のサプリメントの多機能化の流れを汲むと、請求人が育毛効果をうたったサプリメントを製造販売することについては、むしろ自然な流れといわなければならない。
その上で、上記(1)ウ(ウ)でも述べたように、本件指定商品である「サプリメント」と「育毛剤」とは、ドラッグストア、薬局、薬品店等の一般の小売店舗、並びに、インターネット上での店舗において、共に販売されていることは明らかである。さらに、上記(1)ウ(エ)でも述べたように、近時では、育毛効果をうたったサプリメントが雨後の竹の子のように製造販売されている事実を考慮すれば、その効能、品質の共通性に起因してこれらの商品が商品棚において肩を並べる可能性も極めて高い。
そうすると、需要者又は取引者は、被請求人が製造販売する「サプリメント」を、請求人が製造販売する「毛髪力」シリーズの姉妹商品であるかの如く認識、把握し、その上で購入に至る可能性が極めて高いものといわなければならない。このように、需要者又は取引者は、請求人が製造販売する商品と被請求人が製造販売する商品とで出所の混同を生じるおそれがあることは明らかである。
エ まとめ
以上より、本件商標は、請求人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号により登録を受けることができないものであって、商標法第46条第1項の規定に基づいて、その登録の全部又は一部は無効とされるべきものである。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 引用商標が周知・著名性を獲得していること
上記(2)で述べたとおり、引用商標は、請求人の業務に係る商品、とりわけ「育毛剤」を表示するものとして、我が国において周知・著名性を獲得し、その周知・著名性は現在においても継続しているものである。
イ 本件商標と引用商標が同一又は互いに類似すること
上記(1)で述べたとおり、本件商標と引用商標とは同一であるか、又は、少なくとも互いに類似することは明らかである。
ウ 被請求人が不正の目的を有していること
このように、引用商標が周知・著名性を獲得している点、引用商標と本件商標とが同一又は少なくとも互いに類似する点、さらには、「毛髪力」の語が請求人による造語である点、及び、請求人が極めて広範な商品を取り扱う企業体であることを考慮すれば、被請求人が請求人の高い名声、グッドウィルにフリーライドする意思があることは明らかである。
すなわち、請求人の製造販売に係る「毛髪力」シリーズは20年以上もの販売実績があり、その間にも雑誌、新聞、TVCMなど膨大な広告が出稿されている現実を勘案すると、被請求人のみが請求人の「毛髪力」シリーズ商品(以下「請求人商品」という。)を知り得なかったとする合理的な理由はないし、被請求人が一企業体であることから、一般の需要者又は取引者と比較して当然に高度な注意力を有する被請求人の立場からは、仮に上記事実を知り得なかったとの主張がなされたとしても、そのような主張は被請求人による単なる注意力の欠如に起因するものであり、到底まかり通らない。むしろ、被請求人は、請求人商品を知った上で、その高い名声、グッドウィルをフリーライドすることにより不当な利益を得る目的で本件商標を登録出願したものと理解するのが自然であり、また相当である。
このように、被請求人が本件商標を登録出願するに際して、不正の目的があったことは極めて容易に推認できる。
エ まとめ
以上より、本件商標は、既に周知著名性を獲得した引用商標と同一又は少なくとも互いに類似する商標であって、不正の目的をもって使用するものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号により登録を受けることができないものであって、商標法第46条第1項の規定に基づいて、その登録は無効とされるべきものである。
(5)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 被請求人が登録出願時に悪意であったこと
請求人商品は、本件商標に係る登録出願(以下「本件登録出願」という。)の日より20年も以前から製造販売が開始された結果、請求人商品に付された引用商標は、その販売実績、広告実績から、既に平成7年当時には周知著名性を獲得したものといえ、その周知著名性は現在まで継続している。換言すれば、引用商標は、我が国の一般的な需要者又は取引者の間で広く認知され、深く浸透しているものといい得る。そうであるにもかかわらず、被請求人のみが引用商標を知り得ないとする特別な事情は全く存在しない。
このように、被請求人が引用商標の存在を十分に認識し得る状況下において、被請求人は、引用商標と同一の文字構成よりなる「毛髪力」の文字について登録出願を行っている。そうすると、被請求人は、少なくとも本件登録出願時には請求人商品である「毛髪力」シリーズ商品の存在については悪意であったものと容易に推認し得る。
イ 本件商標が剽窃的な出願であること
本件商標と引用商標とは同一の文字構成よりなるものであるところ、かかる「毛髪力」の語は請求人が独自に採択した独創的な造語であり、さらに、被請求人が本件商標を採択する必然的な理由が見出だせないことからすれば、被請求人が本件商標の採択において引用商標と偶然に一致したとするのは、極めて不自然であるものといわなければならない。
そのため、被請求人は、前記意思を持って剽窃的に本件商標を登録出願し、請求人に無断で登録を得たものと考えざるを得ない。
ウ まとめ
以上より、本件商標は、登録に至る出願の経緯において著しく社会的妥当性を欠くものであり、この登録を認めることは、商標法の予定する秩序を害するおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号により登録を受けることができないものであって、商標法第46条第1項の規定に基づいて、その登録は無効とされるべきものである。
(6)結語
以上より、本件商標について、その登録、又は、本件指定商品についての登録は無効とする、との審決を求める。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対して何ら答弁していない。

第5 当審の判断
1 請求人の主張に係る指定商品と本件商標の指定商品について
本件商標は、第5類に属する前記第1のとおりの商品を指定商品とするものである。
請求人は、本件商標の登録無効又は本件商標の指定商品中の一部の商品である本件指定商品についての登録無効を主張しているところ、本件商標の指定商品中、「青汁を含有する栄養補助食品,栄養補助食品」についてみると、「栄養補助食品」に関して、広辞苑第六版の「サプリメント」の項によれば、「2.栄養補助食品。体に欠乏しやすいビタミン・ミネラル・アミノ酸・不飽和脂肪酸などを、錠剤・カプセル・飲料などの形にしたもの。サプリ。」と記載され、「【栄養補助食品】日常生活で不足しやすい栄養成分の補給や特別の保健の用途に適する食品のうち,錠剤・カプセルなど通常の食品の形態でないもの。サプリメント。」(weblio辞書 三省堂大辞林)と記載され、また、甲第15号証によれば、「栄養成分を補給し,特定の保健の用途に適する食品。健康補助食品,サプリメントともいう。錠剤やカプセル剤など,通常の食品とは異なった形態のものをさす。」との説明がされ、加えて、甲第19号証の判決においては「本件商標の指定商品に属する旧別表第32類『加工食料品』に含まれる健康食品や栄養補助食品(サプリメント)と,引用商標の指定商品である旧別表第1類『薬剤』中のビタミン剤や滋養強壮変質剤とは,本件登録審決日当時,既に,その商品の内容,用途,及び,販売店舗,販売方法が共通しており,商品として類似しているものであった,ということができる。」との判示がされている。
これらによれば、「栄養補助食品」とは、「栄養成分を補給し、特定の保健の用途に適する食品」等であって、日常的には、「サプリメント」と同義語として扱われているといえるものである。
したがって、本件審判においては、本件商標の指定商品中の「青汁を含有する栄養補助食品」及び「栄養補助食品」については、請求人が、無効とすべきと主張している本件指定商品と同種の商品といえるから、本件指定商品と同じ観点から、その無効理由の有無を検討することとする(以下、「本件指定商品」と「青汁を含有する栄養補助食品」及び「栄養補助食品」をまとめて「請求に係るサプリメント」という場合がある。)。

2 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について
(1)請求人は、本件指定商品と、引用商標の指定商品中の引用各指定商品(第3類「頭髪用化粧品」及び第5類「毛髪用剤」)とは互いに類似すると主張しているので、この点について検討する。
請求人は、「商標審査基準によれば、商品の類否を判断する際には、a.生産部門が一致するかどうか、b.販売部門が一致するかどうか、c.原材料及び品質が一致するかどうか、d.需要者の範囲が一致するかどうかなどの基準を総合的に考慮する」と述べているところ、商品の類否を判断するに際しては、更に「用途や目的が一致するかどうか」も重要な判断要素といえるものである。
しかして、本件商標の指定商品中、請求に係るサプリメントは、人体に欠乏しやすいビタミン・ミネラル・アミノ酸・不飽和脂肪酸などを、錠剤・カプセル・飲料などの形により栄養補助を用途とする商品であり、また、人の成長及び健康を維持・改善することを目的に食する食品類である。
他方、引用商標の指定商品中「頭髪用化粧品」は、頭髪を健やかに保つために使用する「化粧品」としての用途・目的を有するものであり、また、「毛髪用剤」は、「外皮用薬剤」に属し、毛髪用医薬品という「薬剤」としての用途・目的を有するものである。
そして、請求人が主張するように、引用各指定商品のうち、育毛剤、すなわち、抜け毛を予防し、発毛を促進するために用いる毛髪用剤と育毛効果を有するサプリメントの効能が共通する場合や原材料の一部が共通する場合があるとしても、両者の原材料や品質が一致するとまではいえず、需要者においても、抜け毛、育毛に注意を払う需要者については一致する場合があるとしても、育毛剤とサプリメントの需要者の範囲の大部分が一致するとまではいえない。
そうとすれば、本件商標の指定商品中、請求に係るサプリメントと、引用商標の引用各指定商品とは、販売場所を同じくする場合があるとしても、その用途・目的を著しく異にするものであって、生産部門や原材料を異にし、需要者の範囲が一致するとまではいえないものであるから、互いに類似しないとみるのが相当である。
なお、請求人が挙げる甲第19号証の裁判例においては、「健康食品あるいは栄養補助食品(サプリメント)」と、「医薬品としてのビタミン剤あるいは滋養強壮変質剤」については取引の実情を精査した上で、これら商品の類否判断がされているところであるが、「育毛剤」と「健康食品ないし栄養補助食品(サプリメント)」との類否については、取引の実情等の認定がされないまま、これらの商品が互いに類似するとの結論のみが示されており、本件においては、この裁判例における両商品の類否判断の結論を参照するのは相当ではないと判断した。
(2)本件商標の指定商品中、「請求に係るサプリメント」以外の商品と引用商標の指定商品との類否については、請求人は証拠を示しておらず、また、当審の職権による調査によっても、これらが互いに類似するとの実情は認められない。
(3)したがって、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、類似するものであるということはできない。

3 商標法第4条第1項第10号及び同項第11号該当性について
本件商標と引用商標とは、前記第1及び第2のとおり、ともに「毛髪力」の文字を標準文字により表してなるものであるが、上記2のとおり、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは互いに類似しないから、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項第11号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)請求人の使用に係る「毛髪力」の商標の周知性について
ア 証拠及び請求の全趣旨によれば以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、1891年(明治24年)10月に設立され、洗剤、石鹸、歯みがき等のトイレタリー用品や医薬品、化学品など多岐にわたる製品の製造販売を業とするする総合化学メーカーであること(請求の趣旨)。
(イ)請求人が取り扱う商品群は50近くに昇ること(甲20)。
(ウ)請求人は、引用商標ないし「毛髪力」の文字よりなる商標を使用した請求人の商品「育毛剤」を平成6年4月に製造販売を開始し、平成9年からは「毛髪力」の文字よりなる商標を使用した「薬用シャンプー」を販売し、その後も両商品を継続して販売していること(請求の趣旨及び甲10)。
(エ)「毛髪力」の文字よりなる商標を使用した請求人の商品「育毛剤」は、2003年ないし2012年の間において、単年で数十億の売上げがあり、累計270億円以上の売上を計上し、シェアについては常時4%後半ないし9%後半の間を維持し続け、その順位においても、少なくともこの10年の間は3位又は4位を常時維持していること(甲21)。
(オ)請求人の使用に係る「毛髪力」の商標は、現在においても継続して使用されていると推認できること(甲22)。
イ 以上によれば、引用商標ないし「毛髪力」の文字よりなる商標は、遅くとも平成7年9月以降(甲10の20)、継続して請求人の業務に係る商品「育毛剤」に使用された結果、本件商標登録出願時において我が国において周知性を獲得しており、これが本件商標の登録査定時においても継続しているというのが相当である。
(2)本件商標と請求人が使用している商標の類似性の程度
標準文字よりなる本件商標と、請求人が商品「育毛剤」に使用している商標(標準文字よりなる引用商標を含む)とは、ともに、「毛髪力」よりなるものであるから、両者は同一又は類似の商標というべきである。
(3)引用商標の採択について
商標「毛髪力」は、請求人が、平成6年4月に商品「育毛剤」を発売するに際して採択した造語ということができるものである(請求の趣旨及び甲10)。
(4)本件商標の指定商品中「請求に係るサプリメント」と請求人の商品「育毛剤」の関連性及び取引の実情について
サプリメントの多くは、ドラッグストア、薬局、薬品店等の一般の小売店舗及びインターネット上での店舗において、育毛剤と共に販売されている(甲11ないし甲13)から、サプリメントと育毛剤は、販売場所が一致する場合が少なくないといえる。また、育毛効果をうたったサプリメントが取引されている(甲17)ことからすれば、サプリメントと育毛剤は、商品間の関連性が少なからずあり、需要者の範囲においてもある程度の共通性を有するといえる。加えて、育毛剤を製造販売する事業会社が、同時にサプリメントの製造販売を行っている事実があり(甲7ないし甲9)、請求人においても育毛剤とサプリメントの製造販売を行っている。
これらのことからすれば、請求に係るサプリメントと育毛剤とは、商品間の関連性があり、また、これらの商品について企業の多角経営による事業化の可能性もあるものと認められる。
(5)出所の混同のおそれ
ア 本件商標を、その指定商品中「請求に係るサプリメント」に使用する場合
上記(1)ないし(3)のとおり、本件商標と請求人が商品「育毛剤」に使用している商標(引用商標を含む)は、ともに「毛髪力」の文字からなるものであって、請求人の商標「毛髪力」は、請求人により採択された造語であり、請求人の商品「育毛剤」に使用されて本件商標登録出願時において周知となっており、それは本件商標登録時においても継続しているといえる。そして、上記(4)のとおり、本件商標の指定商品中「請求に係るサプリメント」と請求人の商品「育毛剤」は、商品間の関連性があり、また、これらの商品について企業の多角経営による事業化の可能性もあることなどの取引の実情を考慮すると、本件商標をその指定商品中「請求に係るサプリメント」に使用するときには、需要者は、請求人が「育毛剤」に使用して著名となっている「毛髪力」の商標ないし引用商標を連想・想起し、それが、あたかも請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認することで、その出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
イ 本件商標を、その指定商品中「請求に係るサプリメント」以外の商品に使用する場合
本件商標の指定商品中「請求に係るサプリメント」以外の商品と請求人の商品「育毛剤」については、取引の実情等を考慮してもそれらの関連性の程度は高いものとはいえないから、本件商標をその指定商品中「請求に係るサプリメント」以外の商品について使用しても、これに接する取引者・需要者が、該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することはなく、その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
(6)小括
したがって、本件商標は、これを、その指定商品中「請求に係るサプリメント」に使用するときには、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
他方、本件商標は、「請求に係るサプリメント」以外の指定商品との関係においては商標法第4条第1項第15号に該当しないというべきである。

5 商標法第4条第1項第19号該当性について
提出された証拠からは、本件商標が、不正の目的(不正の利益を得る目的、請求人に損害を加える目的その他の不正の目的。)をもつて使用をするものというべき事実及び事情は認められない。
そうとすれば、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものということはできない。

6 商標法第4条第1項第7号該当性について
請求人は、本件商標は、登録に至る出願の経緯において著しく社会的妥当性を欠くものであり、この登録を認めることは、商標法の予定する秩序を害するおそれがあることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号により登録を受けることができない旨主張している。
しかしながら、我が国の商標法は先願登録主義を旨としており、他人の先出願や登録商標があることを知っていて登録出願をしたからといって、直ちにその出願行為について、社会的妥当性を欠き、あるいは、不正の目的による出願とすることはできず、請求人もその事情や同人の主張を認め得る証拠を提出していない。
してみれば、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできないから、商標法第4条第1項第7号に該当するということはできない。

7 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中「青汁を主原料とするサプリメント,サプリメント,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とし青汁を含有するサプリメント,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とするサプリメント,動物エキスを主原料とし青汁を含有するサプリメント,動物エキスを主原料とするサプリメント,青汁を主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とし青汁を含有する粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,植物・植物エキス又は植物発酵エキスを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,動物エキスを主原料とし青汁を含有する粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・グリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,動物エキスを主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状の加工食品,青汁を含有する栄養補助食品,栄養補助食品」については、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項により、無効とすべきである。
しかしながら、本件商標は、上記以外の指定商品については、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当しないものであるから、その登録は、同法第46条第1項により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-11-27 
結審通知日 2015-12-01 
審決日 2016-01-08 
出願番号 商願2014-19360(T2014-19360) 
審決分類 T 1 11・ 25- ZC (W05)
T 1 11・ 271- ZC (W05)
T 1 11・ 26- ZC (W05)
T 1 11・ 222- ZC (W05)
T 1 11・ 22- ZC (W05)
T 1 11・ 264- ZC (W05)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 箕輪 秀人 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 土井 敬子
原田 信彦
登録日 2014-08-15 
登録番号 商標登録第5695037号(T5695037) 
商標の称呼 モーハツリョク、モーハツリキ 
代理人 橘 哲男 

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