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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1310887 |
異議申立番号 | 異議2013-900391 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2013-11-18 |
確定日 | 2016-01-23 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5608449号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5608449号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5608449号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなるものであり、平成25年4月26日に登録出願され、第25類「洋服,コート,和服,バンド,ベルト,靴類」を指定商品として、同年8月1日に登録査定、同月16日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録第4868551号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成13年10月24日に登録出願され、「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,和服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類,靴あわせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を含む第25類、「靴飾り(貴金属製のものを除く。),靴はとめ,靴ひも,靴ひも代用金具」を含む第26類及び第24類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、平成17年6月3日に設定登録がなされ、その商標権は、現に有効に存続しているものである。 また、申立人が、平成14年から日本を含む世界中で使用を開始した商標と主張して引用する商標は、別掲3(以下「引用商標2」という。)及び別掲4(以下「引用商標3」という。)のとおりの構成からなるものである。 なお、引用商標1ないし3をまとめていうときは、「引用商標」という。 3 登録異議の申立ての理由(要旨) (1)商標法第4条第1項第7号に該当することについて ア ラコステブランドについて 申立人は、史上最も偉大なテニスプレーヤーの一人と称されるルネ・ラコステ氏によって1933年に設立されたフランスのファッションデザイン会社である。申立人のブランド「ラコステ」は、とりわけ、「ワニ」のワンポイントマークを付したポロシャツが有名であるが、現在は、アパレル分野にとどまらず、靴、鞄、香水、時計、アイウェア等を取り扱い、世界113か国に1122店のブティックを展開している(甲3、4)。なお、「ラコステ」は、1964年に我が国に初めて進出し、現在、国内の「ラコステ」店舗は約160に上る(甲5、6)。 「ラコステ」の歴史は80年を越え、今やアパレル界を代表する老舗ブランドであるが、近年は、ブランド刷新に取り組み、その事業領域と客層を広げた結果、ブランドの総売上高は2011年には約1700億円(16億ユーロ)、2012年には約1900億円(18億ユーロ)を記録した。同売上の60%以上はアパレル、15?20%が靴類であり、また、日本の売上は同ブランド全体の約5%を占める(甲7、8)。また、我が国における2011年の年間広告費(雑誌及び街頭の看板)は約1億8500万円(175万ユーロ)に上る(甲9、10)。 イ 引用商標1ないし3の周知性について 申立人は、創業以来、一貫して「ワニ」のロゴマークを使用し、今や「ラコステ」といえば「ワニ」を、「ワニ」といえば「ラコステ」を想起するほど、その繋がりは強い。これは、ブランド名を扱った数多くの書籍やウェブサイトが「ラコステ」を紹介する中で、「ワニ」がその商標であることを明示していることからも明らかである(甲11?17)。 引用商標1は、申立人が1970年代から使用しているロゴであり、世界各地で出願・登録されている(甲18、19)。引用商標2及び3は、2002年春から我が国を含む全世界で使用しているロゴである(甲20)。 申立人は、あらゆる機会を利用して引用商標の訴求を図っている(甲21?38)。さらに、上述した広告物のほか、カタログ、ホームページ等にも引用商標が表示されている(甲39?43)。 このような申立人の引用商標の使用状況と、上述した売上高、店舗数、広告費、商標の使用期間等を考慮すれば、引用商標は、遅くとも、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の「ラコステ」ブランドを表示する商標として、全世界及び日本において、極めて著名になっていたことは明らかである。 ウ 本件商標と引用商標の構成について (ア)基本的構成の共通性 引用商標は、尾を振り上げて口を開いた右向きのワニの図形で構成されている。これに対し、本件商標は、尾を振り上げて口を開いた右向きのワニの図形に、サングラスを掛け、アロハシャツと思しき衣服を着せて、スケートボードの上に配置してなる。両者を比較すると、サングラス、衣服及びスケートボードの有無において差異を有するものの、右斜め上方(略20度)に尾を振り上げて口を略40度に開いた右向きのワニをモチーフとしていることに加え、ワニの縦横の比を略5:9に構成し、中心からやや左寄りに前足を配している点で構成の軌を一にし、両者を重ね合わせてみるとワニ図形の輪郭の共通性は一目瞭然である。 なお、本件商標と引用商標ではワニの頭部の角度がやや異なるが、頭部のみ角度を修正して重ね合わせると、頭部の輪郭・形状もほぼ一致している。 (イ)細部の共通性 さらに、両者は種々の微細な点においても一致する。例えば、尾の凹凸を三角形で表現する様子や、前足の形状及び尾の付け根にある突起の形状は、引用商標をそのまま書き写したといえるほど酷似している。また、両足の描出方法においても、引用商標が足と胴体の間を白抜きにして足の形を表現しているのに対し、本件商標も同様の隙間がそっくりそのまま再現されている。このような一致が偶然生じるとは考えられず、本件商標が、引用商標に依拠して創作されたものであることに疑う余地はない。 (ウ)両商標が外観上酷似していること 本件商標が引用商標と最も異なる点は「スケートボード」の有無であるが、当該部分がコンピュータグラフィックス風の図形であるのに対し、「ワニ」部分は色鉛筆で描いたような手書き風の図形であり、描出方法が全く異なっている。また、「サングラス」についても同様である。このことから、本件商標は、明らかに引用商標を模した手書きの「ワニ」に、「サングラス」及び「スケートボード」のグラフィック素材を付加して作成したものであり、その手法は強引かつ稚拙なものであって一体性が無く、容易に「ワニ」を分離して認識し得る。そして、これらの付加された「サングラス」及び「スケートボード」並びにワニに着せた「アロハシャツ」は、「スケーターファッション」「サーファーファッション」などのストリート系ファッションにおいて好んで使用されるアイテムであって指定商品と密接に関連しており、出所識別標識として強い印象を与えるものではない(甲44、45)。 よって、本件商標に接した需要者等は自然と「ワニ」部分に着目するのであり、当該部分は独立して自他商品の識別標識として機能するといえるから、引用商標と本件商標とは要部というべきワニ図形を共通としており、全体としても酷似している。 (エ)不正の目的 上述のとおり、本件商標と引用商標は酷似しており、本件商標に接した需要者等は、本件商標から申立人の著名な引用商標である「ワニ」を容易に想起する。さらに、本件商標の指定商品には、申立人の代表的な商品「ポロシャツ」を包含する「洋服」のほか、「コート」「バンド」「ベルト」「靴類」など、申立人が取り扱う種々の商品を含んでいる(甲41ないし43)。 以上を総合すれば、商標権者は、著名な引用商標に酷似した商標を意図的に申立人の業務に係る商品に使用することで、需要者等をして申立人の著名な引用商標である「ワニ」を想起させ、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力に、フリーライドする不正な目的で本件商標を採択、出願し登録を受けたものといわざるを得ない。 ところで、申立人は、本件異議申立を行う前に、商標権者に本件商標と引用商標の類似性が極めて高いことを指摘し、自主的な放棄を依頼する旨の通知書を送付した。仮に商標権者が上記のような不正な意図をもっていなかったとすれば、当該通知に対し、何らかの弁明があるものと思われるが、商標権者は、当該通知に対して、一切、回答をしていない。それどころか、その直後に、商標権者は本件商標とほぼ同一の構成の商標を第25類等の商品・役務を指定して出願している(甲46、47)。当該状況に照らせば、商標権者が引用商標の存在を熟知した上で一連の出願を行っていることは明らかであり、その行為は悪質である。 (オ)小括 以上に述べたとおり、本件商標は、引用商標の粗雑な模倣であり、このような商標が商品に付されて流通すれば、出所の誤認・混同が生じるばかりでなく、引用商標の出所表示機能が希釈化され、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力、ひいては申立人の業務上の信用を毀損させることは明らかである。よって、本件商標は、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法第1条)に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものというべきである。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。 (2)商標法第4条第1項第10号及び第11号に該当することについて 上述のとおり、本件商標と引用商標は、外観上、酷似している。また、本件商標に接した需要者等は、申立人の著名商標を容易に想起し、本件商標から「ラコステのワニ」または「サングラスと衣服を身に着け、スケートボードに乗ったラコステのワニ」との観念を生じるものであり、引用商標1からは「ラコステのワニ」との観念が生じる。してみれば、本件商標と引用商標は観念上も酷似している。 したがって、本件商標は、引用商標と外観、観念において酷似しており、引用商標の著名性を考慮すれば、本件商標をその指定商品について使用した場合、引用商標との間で出所の混同が生ずるおそれがあることから、引用商標と類似することは明らかであり、本件商標の指定商品は引用商標1の指定商品に包含されていることから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 また、本件商標は申立人が使用し、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標1ないし3に類似し、その商品と同一の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。 (3)商標法第4条第1項第15号に該当することについて 引用商標のデザインは「ワニ」の持つ力強さを感じさせつつも、決して獰猛ではなくむしろユーモラスなイメージを想起させるものであり、その独創性は極めて高い。これは1933年以来、申立人が改良を重ねてきたデザインであって、一朝一タにして完成するものではない。ありふれた単純な図形であればともかく、このような独創性の高いワニ図形と同一の図形が、偶然に創作されることはありえないのであって、引用商標と酷似した本件商標を見れば、引用商標と何らかの関係があると考えるのが自然である。まして、本件商標の指定商品は申立人が取り扱う主要商品を含んでいる。 したがって、本件商標をその指定商品に使用した場合、本件商標に接した需要者等は、これを申立人又は申立人から許諾を受けた者が、引用商標を変形して使用していると認識するおそれが高い。実際、申立人は、他の会社やアーティストとのコラボレーションによる限定品などの形で、引用商標を変形して使用することがある(甲50、51)。かかる事情から、本件商標も、同様に、申立人から何らかの許諾を受けて、引用商標に「サングラス」と「スケートボード」を付加して変形したものと容易に認識され得るといえる。 さらに、被服等を取り扱う業界において、図形商標をワンポイントマークとして使用することは普通に行われている。このような場合、商標はかなり小さく表示されるのが通常であり、まして、刺繍により表示する場合は微細な差異を認識しにくいことがあることは、取引における一般的な実情というべきである。このような状況においては、本件商標に接した需要者等は、その基本的モチーフである「ワニ」に着目し、これに強く印象付けられることから、実際の取引において本件商標と引用商標とは一層相紛らわしいものとなる。 しかして、上述した引用商標の著名性を鑑みれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接した需要者等は、当該商品が申立人又は申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所につき誤認、混同を生じさせることは明らかである。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 (4)商標法第4条第1項第19号に該当することについて 上述のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において引用商標が日本を含む世界中で著名であったこと、本件商標が引用商標と酷似していること、本件商標は引用商標に化体した顧客吸引力にフリーライドすることで不正な利益を得、又は、申立人の業務上の信用を棄損する不正の目的をもって使用されるものであることは、明らかである。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものでもある。 (5)結論 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、第10号、第11号、第15号及び第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は商標法第43条の2第1号により取り消されるべきである。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について 申立人の提出した甲各号証によれば、申立人は、1933年に設立されたフランスのアパレルメーカーであり、欧米を中心として、世界113か国に進出、我が国においては、1964年に事業展開を開始し、そのブランドは、主にポロシャツに使用されて「緑色のワニ」として知られている(甲3?6、11、12等)。2007年及び2008年の製品カタログ(甲39?42)並びに2009年から2013年発行の「VERY」や「Men’s NON-NO」等の多数の雑誌における広告には、主に、「緑色のワニ」のワンポイントマークがついたポロシャツが表示されて、また、引用商標3及び数種の色彩による引用商標2が使用されている(甲10(枝番号を含む。))。 そして、申立人は、世界各国において、その事業を展開し、全体として、2011年に約1700億円、2012年には約1900億円を売上げ、その約6割がアパレルであり、我が国における売上げは全体の5%を占めるものであって(甲7、8)、我が国における広告費は、2011年において、約1億8500万円に上る(甲9)。 そうすると、引用商標2及び3は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る被服を表示するものとして、我が国及び外国における取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認められる。 (2)商標法第4条第1項第10号及び同第11号の該当性について ア 本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、開いた口、振り上げた尾及び足の形状から右向きのワニを理解させる図形であり、そのワニにサングラス及びピンクの花柄シャツを着用させ、スケートボードに乗せて、全体として擬人化したものとして看取される構成であって、特定の称呼及び観念を生じないものである。 イ 引用商標2及び3について 引用商標2及び3は、別掲3及び4のとおり、その胴体及び口の色彩が異なるものの、いずれも、白抜きで背面の鱗板を明確に描き、開いた口、振り上げた尾、足の形状等から、その全体が右向きのワニを忠実に描いたものとして看取される。そして、引用商標2及び3は、上記(1)のとおり、被服の取引者、需要者に広く認識されているものであることからすると、「ラコステのワニ」又は「緑のワニ」としての観念及び称呼を生じる場合も少なくないといえる。 ウ 引用商標1について 引用商標1は、別掲2のとおり、白抜きで背面の鱗板を明確に描き、大きく開いた口、振り上げた尾、足の形状等から、その全体が右向きのワニを忠実に描いたものとして看取されるところ、申立人の提出に係る甲各号証により、その使用を確認できないが、これが、被服の分野において、その需要者の間に広く知られている引用商標2及び3と極めて近似する商標であることを考慮すると、「ラコステのワニ」の観念及び称呼を生じるとみることができる。 エ 本件商標と引用商標の類否について 本件商標と引用商標は、いずれも、開いた口、振り上げた尾及び右向きのワニを看取させる図形であるが、本件商標は、ワニをスケートボードに乗せてサングラス及びピンクの花柄シャツを着用させ、擬人化した、極めて特色のあるキャラクターを認識させるものであり、引用商標は、上記のとおり、ワニの特徴を忠実に描いた点において、明らかに異なる印象を与えるものであるから、外観上、見誤ることはない。 そして、本件商標は特定の観念及び称呼を生じないものであるのに対して、引用商標は「ラコステのワニ」又は「緑のワニ」の観念及び称呼を生じることから、本件商標と引用商標とは、観念及び称呼において、相紛れるおそれはないものである。 そうすると、本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品並びに申立人が引用商標2及び3について使用する商品と同一又は類似するものであるが、本件商標と引用商標とは非類似の商標である。 したがって、引用商標が、その取引者、需要者の間に広く認識されているものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び第11号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第15号の該当性について 申立人は、需要者が引用商標に酷似した本件商標をみれば、引用商標と何らかの関係があると考えるのが自然であり、引用商標の著名性に鑑みれば、本件商標を、その指定商品に使用した場合、その出所について、誤認混同を生じさせるおそれがあると主張している。 しかしながら、引用商標が使用されている商品と本件商標の指定商品とは、同一の商品又はその取引者、需要者を共通にする商品であり、かつ、引用商標は、上記(1)のとおり、その取引者、需要者の間に広く認識されていることを認めることができるものの、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、外観において、非類似の商標であり、「酷似している」ということはできないものであって、全体としての視覚的印象、記憶において全く別異のものとして認識されるものというべきである。 また、本件商標と引用商標とは、観念、称呼においても相紛れるおそれのあるものと認められる点はない。 そうすると、商標権者が本件商標をその指定商品に使用したとしても、これに接する需要者をして、申立人又は引用商標を想起させるものとは認められず、当該商品を申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。 なお、申立人は、被服等を取り扱う業界において、図形商標をワンポイントマークとして使用することは普通に行われている状況があるから、本件商標に接した需要者等は、その基本的モチーフである「ワニ」に着目し、これに強く印象付けられるものであり、その他の細部の構成も共通することから、需要者等が、申立人の業務に係る著名な「ワニ」がサングラス等を着用したものとイメージし、申立人又はこれと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあると主張し、また、合議体は同趣旨の取消理由を商権権者に通知した。 しかしながら、本件商標と引用商標とは、看者が、いずれも「ワニ」がモチーフであることを認識するものといえるが、別掲1のとおりの構成からなる本件商標は、商標権者が意見書で述べているように、着衣等を除いた「ワニ」をもって引用商標と比較すべき特段の事情はないというべきであり、また、被服の主な需要者である一般の消費者の通常の注意力を基準とすれば、需要者が、両商標について、口や尾の角度、縦横の比率などを仔細に観察するものとは考え難く、上記(2)のとおり、本件商標は全体として「スケートボードに乗りサングラス及びピンクの花柄シャツを着ている特徴的なワニ」として把握されるものであり、「ワニ」の特徴を忠実に描いた、又は「緑色のワニ」である引用商標とは異なるものとして印象づけられて、記憶されるというのが相当である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。 (4)商標法第4条第1項第19号の該当性について 引用商標は、上記(1)のとおり、被服において、我が国及び外国の取引者、需要者の間に広く認識されているものであるが、本件商標と引用商標とは、上記(2)のとおり、非類似の商標であり、さらに、本件商標が引用商標の顧客吸引力にただ乗りしたり、申立人の業務上の信用を棄損する等の不正の目的をもって使用されるものであることを具体的に示す証拠の提出はない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するということはできない。 (5)商標法第4条第1項第7号の該当性について 本件商標は、上記のとおり、引用商標と酷似した印象を与えるものではなく、これに接する取引者、需要者に引用商標を連想、想起させるものではないから、これをその指定商品に使用しても、引用商標に係る商品とその出所について混同を生ずるおそれはなく、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力、ひいては申立人の業務上の信用を毀損させるものでもない。 なお、申立人は、本件異議申立を行う前に、商標権者に本件商標と引用商標との類似性が極めて高いことを指摘し、自主的な放棄を依頼する旨の通知書を送付したが、商標権者は、一切、回答しないばかりでなく、その直後に、本件商標とほぼ同一の構成の商標を出願していることに照らせば(甲46、47)、商標権者が引用商標の存在を熟知した上で一連の出願を行っていることは明らかであり、その行為は悪質である旨述べているが、上述のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、上記事実のみにより、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものとはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。 (6)申立人の主な主張について 申立人は、本件商標は、ワニの部分とそれに付加されたサングラス等の部分の描出方法が異なるから、一体性が無く、容易に「ワニ」を分離して認識し得るものであり、これらの付加されたサングラス等は、指定商品と密接に関連しており、出所識別標識として強い印象を与えるものではない旨主張するが、図形からなる商標の構成において、異なる描出方法による構成要素が直ちに分離されるとはいい難いものであり、本件商標は、その構成全体として、着衣等により擬人化されたキャラクターとして認識されるものであるから、その指定商品との関係を踏まえても、本件商標から着衣等が捨象されて商品の出所識別標識として認識されると判断すべき特段の事情はないというべきである。 よって、申立人のいずれの主張も妥当ではない。 (7)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、第10号、第11号、第15号及び第19号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) (色彩は原本参照) 別掲2(引用商標1) 別掲3(引用商標2) 別掲4(引用商標3) (色彩は原本参照) |
異議決定日 | 2016-01-14 |
出願番号 | 商願2013-31851(T2013-31851) |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W25)
T 1 651・ 222- Y (W25) T 1 651・ 261- Y (W25) T 1 651・ 271- Y (W25) T 1 651・ 25- Y (W25) T 1 651・ 263- Y (W25) T 1 651・ 262- Y (W25) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小田 明 |
特許庁審判長 |
酒井 福造 |
特許庁審判官 |
堀内 仁子 藤田 和美 |
登録日 | 2013-08-16 |
登録番号 | 商標登録第5608449号(T5608449) |
権利者 | 服部貴金属工業株式会社 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 工藤 莞司 |
代理人 | 小暮 君平 |
代理人 | 河野 修 |
代理人 | 加藤 あい |