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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 025 |
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管理番号 | 1310870 |
審判番号 | 取消2015-300085 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2015-02-10 |
確定日 | 2016-02-05 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4008198号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4008198号商標(以下「本件商標」という。)は,「スフィーダ」の片仮名と「SFIDA」の欧文字とを上下二段に書してなり,平成7年8月10日に登録出願され,第25類「履物」を指定商品として,同9年6月6日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。 そして,本件審判の請求の登録は,平成27年2月23日である。 第2 請求人の主張 請求人は,商標法第50条第1項により,本件商標の登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由,答弁に対する弁駁及び口頭審理における陳述において,要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は,その指定商品について,継続して過去3年以上,日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は,商標法第50条の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁及び口頭審理における陳述 (1)社会通念上同一の商標について 本件商標は,上記第1に記載のとおりの構成よりなるものである。 一方,乙第1号証には欧文字「SFIDA」が,商品「靴」の舌片部,つま先部,踵部の3カ所に付されていること及び「靴」の箱に添付されるラベルに「スフィーダK」の文字が表示されている。乙第2号証は,靴のカタログであり,商品名称として「アサヒG スフィーダK」の文字が表示されている。乙第3号証の1及び乙第3号証の3は「売上伝票(1)」と題された書類で有り,「商品コード・品名」の欄の「G.スフィーダK」の部分が商品名としての表示と認識される。 以上より,被請求人が使用を主張している商標は,「SFIDA」,「スフィーダK」,「アサヒG スフィーダK」及び「G.スフィーダK」であるが,これらはいずれも本件商標と同一の商標ではない。 次に,商標法第50条第1項は,「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって,同一の称呼及び観念を生ずる商標,外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」を使用した場合も登録商標の使用と認める旨規定しているから,被請求人の使用が上記「社会通念上同一の商標」の使用に該当するか否か検討する。 まず,「SFIDA」の欧文字は,我が国で親しまれた英語に照らしても成語を表すものではないから,この欧文字のみに接した需要者・取引者に特定の観念を生じさせるものとは認められず,造語であると理解させる。また,その称呼は,親しまれた英語読みあるいはローマ字読みに従って,「スファイダ」の称呼を生じる。 一方,本件商標は,上段の「SFIDA」の称呼が下段の「スフィーダ」であることを想起させ,さらに,「スフィーダ」の称呼によれば「SFIDA」の欧文字が我が国では慣れ親しまれているとはいえないまでもイタリア語で「挑戦」の意味を有することは需要者・取引者が認識し得る。そうすると本件商標からは「スフィーダ」の称呼及び「挑戦」の観念を生じさせるものであるから,「SFIDA」のみを書した使用商標は本件商標とはその称呼及び観念を同一にするものではないから,社会通念上同一とはいえない。 次に「スフィーダK」,「アサヒG スフィーダK」及び「G.スフィーダK」の文字の表示は全て「スフィーダK」のごとく「K」の文字が付されて取引されている。これらの文字は同じ大きさで常に一体として表示されており,容易に分離できると認識し得るものではない。そうすると,「スフィーダK」の文字は,全体として造語であり,「スフィーダケイ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものであるから,本件商標と社会通念上同一の範囲にある商標を使用したものということはできない。 (2)乙第2号証及び乙第3号証について 乙第2号証は,被請求人が発行した靴のカタログであり,表紙左下に「学校指定店専用」と表示されている。そうすると,学校に全く関係の無い者は,被請求人が使用する「SFIDA」又は「スフィーダK」の表示がされた商品の購入をし得ない。 登録商標は,これを使用した商品が流通過程におかれ,商標としても機能を果たしてこそ,保護されるべきものである。しかるに,学校関係者に限定した登録商標の使用は,商標としても機能を果たすことができる状態とはいえず,当該使用が商標法第50条で定める「登録商標の使用」とはいえない。 (3)口頭審理陳述要領書 請求人は,被請求人から提出された平成27年10月29日付け及び同年11月11日付け口頭審理陳述要領書に対する意見を提出していない。 (4)口頭審理における陳述 請求人は,口頭審理における陳述により,乙第1号証及び乙第5号証の写真に掲載された商品に付された「SFIDA」の標章は,本件商標と社会通念上同一と認められない旨の主張を撤回した。 第3 被請求人の答弁 被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,審判事件答弁書,口頭審理陳述要領書及び口頭審理における陳述において,本件審判の登録前3年以内に日本国内で取消請求に係る指定商品について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用しているとして,その理由を要旨以下のように述べ,乙第1号証ないし乙第9号証(枝番を含む。)を提出した。 1 本件商標(社会通念上同一の商標を含む)の使用の事実 被請求人は,大正7年の設立以来,ゴム履物・革靴の製造,販売を事業内容とし,現在では,従業員数660名,年商は116億円(2014年12月期)に達している。 本件商標を付した商品履物(スニーカー,運動靴)について,少なくとも平成24年は,170,035足,42,356,622円,平成25年は,18,327足,45,586,632円,平成26年は,21,485足,52,554,652円を製造販売している(乙4)。 (1)乙第1号証及び乙第5号証について 乙第1号証及び乙第5号証の「本件商標を付した製品の写真」に掲載された商品には,靴の舌片(タング)上部,外御側のつま先部及び踵部に,本件商標「SFIDA」を英文字でそれぞれ付している。さらに,当該商品の箱に貼付されているラベルには商品の名称,色,サイズ,製品番号が明記されており,このうち商品の名称として「スフィーダK」が明記され,その製品番号としてラベル下側左端に「KD72003」及び「KD72001」が記載されている。この製品番号は,乙第2号証の商品カタログ並びに乙第3号証の3及び乙第9号証の売上伝票に記載されている製品番号と一致する。 (2)乙第2号証について 乙第2号証の「The Shoes of Japan/ASAHI/SCHOOL SHOES COLLECTION」のカタログは,被請求人が2014年6月に発行したカタログで,営業活動及び販売促進に際し,各取引先などへ配布するために作成し,頒布したものである。このカタログ中,5ページ中段付近に本件商標を付した商品「アサヒG スフィーダK」の見本写真が,色別及び製品番号(KD72001 レッド,KD72003 グリーン,KD72004 ブルー)となる記載がなされており,乙第1号証に示した商品に関するカタログであることが判る。 (3)乙第3号証,乙第8号証及び乙第9号証(枝番を含む。)について 乙第3号証,乙第8号証及び乙第9号証(枝番を含む。)の「売上伝票」及び「請求書」は,被請求人が取引先の注文を受け,本件商標「スフィーダ」を付した商品を含む商品を販売(納品)した際の売上明細が記載された売上伝票及び請求書で,2015年2月6日,2014年9月5日,2013年11月21日及び2014年4月1日の出荷になることが示されている。この伝票には,作成者,作成日,出荷日,本件商品番号が記載されていて,本件商標をその対象となる期間内において継続して使用している事実を証明するものである。 (4)乙第6号証について 乙第6号証は,本件商標を付した商品「アサヒG スフィーダK」が掲載されている被請求人のホームページの写しである。この写しは,今回の必要に応じて印刷したものであるが,当該商品は,本件審判請求の予告登録日以前から掲載されていた。当該被請求人のホームページには,被請求人の商品「SFIDA」「スフィーダ」の詳細,形状,各色の種類が掲載されているから,当該商品が,一般向けに広く販売されていることが判る。 (5)乙第7号証 乙第7号証は,本件商標が付された靴を,東京の小売店が,被請求人より,平成26年9月5日に仕入れ,同年9月10日までに販売したこと消費者に販売したことを示す当該小売店の代表者作成の証明書である。この靴には,本件商標「SFIDA」が表され,その箱には本件商標「スフィーダ」が表された靴が,売上伝票の商品コード・品名に「スフィーダ」が付された商品が,流通に付されていたことが証明されている。 (6)むすび 以上,乙第1号証ないし乙第9号証(枝番を含む。)の各証拠により,被請求人が商品履物(スニーカー,運動靴)について本件審判の請求の登録前3年間以内に,本件商標を,商品,商品の包装に付し(商標法第2条第3項第1号),当該商品を販売し,展示し(同項第2号),商品に関する広告,取引書類に付して展示,頒布し,電磁的方法により提供していたものであって(同項第8号),商標権者が本件商標を,継続的に使用している事実は明らかである。 2 本件商標と本件使用商標の同一性について 請求人は,被請求人の「SFIDA」,「スフィーダK」,「アサヒ スフィーダK」及び「G.スフィーダK」の使用について,これらは本件商標の使用ではないと反論している。 しかしながら,英語としてみても欧文字「SFIDA」を「スフィーダ」と音訳することは自然であり,イタリア語「SFIDA」を「スフィーダ」ということは多くのスポーツクラブ名,企業名,店舗名としても確立されている我が国における当然,自然な音訳である。被請求人が「SFIDA」を「スフィーダ」と使用していて,認識されていることからしても,「SFIDA」,「スフィーダ」のいずれかの要素の使用のみでも,商標法第50条の規定により,本件商標と社会通念上同一商標の使用とされることは当然である。 そもそも,上記欧文字「SFIDA」のみならず上記片仮名文字「スフィーダ」が使用されているのであって,本件商標が使用されていることは当然である。 「アサヒG スフィーダK」は,「アサヒG」と「スフィーダK」の間に1文字程度空白があり,それぞれ分離して判別できること,また,「G.スフィーダK」においては,その語頭「G.」は,商品シリーズ名「グリッパー(GRIPPER)」の頭文字を表すものであり,これは「グリッパー」シリーズの商品のひとつとして,それと分かるように「G.」と表示した記号である。 「G.」のうち「.」については,他商品と区別するために付された記号である。また,「BL」は青色(BLUE)の商品を示す単なる記号であり,「スフィーダK」の語尾「K」の文字についても抗菌その他制菌,防かび機能をもつ「コーキンマスター(KOKINMASTER)」の頭文字「K」であって,単なる記号にすぎない。これら「アサヒG」,「G.」,「K」を本件商標に付加したとしても,それぞれ単独で識別力及び出所表示機能を有するものではなく,本件商標「スフィーダ/SFIDA」(本件商標と社会通念上同一と認められる使用態様の「SFIDA」又は「スフィーダ」)を被請求人が使用していることは,商標の審査基準や従来からの判例等に照らしても明らかである。 欧文字,その発音を表した片仮名文字の二段で構成されている商標について,それが社会通念上,自然な音訳であって,そのいずれかが使用されていれば,当該商標と同一性を有するとされる判断は,多くの審決例,判決例によって確立されている。 3 請求人の主張について 請求人は,学校経由の取引例があっても,登録商標の使用となされないと主張するが,あらゆる商品は,おのずから特有の流通経路を通じ販売されるが,販売経路によって商標の使用がないとの議論はありえない。 第4 当審の判断 1 使用の事実について 証拠及び被請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。 (1)乙第1号証は,平成27年4月に撮影されたとする被請求人の商品「靴」(以下「使用商品」という。)の写真であり,使用商品の舌片(タング)上部,外御側のつま先部及び踵部には,白抜きで表された「SFIDA」の英文字が(以下これを「本件使用商標」という。)表示されている。また,使用商品とともに掲載されている靴の箱の側面のラベルには「アサヒG」,「スフィーダK」,「グリーン」及び「KD72003」の表示がある。 (2)乙第2号証は,被請求人が2014年6月に,営業活動及び販売促進に際し,各取引先などへ配布するために作成し,頒布したとする「The Shoes of Japan/ASAHI/SCHOOL SHOES COLLECTION」のカタログであるが,当該カタログの5ページ中段に,「アサヒG スフィーダK」の表示,乙第1号証及び乙第5号証に表された靴と同一デザインの靴の見本写真,色別及び製品番号「KD72001 レッド」,「KD72003 グリーン」及び「KD72004 ブルー」の記載がある。 (3)乙第3号証の3及び乙第3号証の4について 乙第3号証の3は,納入者名の欄に記載の「(株)アサヒコーポレーション」の記載,得意先コードを「50308」とする「---(マスキング)靴店」に宛てた売上伝票の写しであり,当該伝票には,伝票番号欄に「192060」の記載及び出荷日付欄に「14年9月5日」の記載がある。また,商品の細目欄の3行目には商品コード・品名として「G.スフィーダK GR」の記載が,「C」として「KD72003-1」の記載が,数量として「2」の記載が,伝票下段の合計欄に「11450」の記載が,消費税等の欄に「916」の記載がある。 乙第3号証の4は,請求書の写しであり,請求書の右上には「(株)アサヒコーポレーション」と住所の記載,宛先欄には「---(マスキング)靴店」と,その下段に「50308」の記載,中央上段には「14年8月26日?14年9月25日」の記載,請求書中央の請求細目の4行目には,年月日欄に「14」「9」「5」の記載,伝票No.の欄に「192060」の記載,買上区分欄に「売上」の記載,御買上金額の欄には「11450」の記載及び消費税等の欄には「916」の記載がある。 2 判断 上記1の事実によれば,以下を認めることができる。 (1)使用商品及び本件使用商標について 使用商品は,上記1(1)のとおり,「靴」であるところ,当該使用商品は,本件請求に係る第25類「履物」の範ちゅうに属する商品であることが認められる。 また,上記1の(1)及び(2)によれば,乙第1号証の写真には使用商品とともに,「アサヒG」,「スフィーダK」,「グリーン」及び「KD72003」が記載されたラベルが貼付されている箱が掲載されており,乙第2号証の2014年6月に作成された被請求人の「The Shoes of Japan/ASAHI/SCHOOL SHOES COLLECTION」のカタログには「アサヒG スフィーダK」及び「KD72003 グリーン」の記載とともに,乙第1号証の使用商品と同一デザインとみえる靴が,商品の見本写真として掲載されていることから,乙第1号証の使用商品と,乙第2号証に表された製品番号「KD72003」の靴は,実質的に同一の商品であり,使用商品が2014年6月頃には既に存在していたことが認められる。 そして,上記1(1)のとおり,使用商品には,靴の舌片(タング)上部,外御側のつま先部及び踵部に本件使用商標が表示されている。 これより,本件請求に係る第25類「履物」の範ちゅうに属する「靴」に,本件使用商標を付した使用商品が,2014年6月頃には既に存在していたことが認められる。 (2)本件使用商標の使用者及び使用時期について 上記1(3)によれば,乙第3号証の3の売上伝票の納入者名の欄には「(株)アサヒコーポレーション」の名称が記載され,乙第3号証の4の請求書の右上には「(株)アサヒコーポレーション」の名称及び住所が記載されているところ,この記載は被請求人の名称又は住所と同じといえることから,これらの伝票類はいずれも被請求人による取引書類と認められる。 そして,これらの伝票類によれば,被請求人は,得意先コード「50308」の取引店(以下「被請求人取引店」という。)に対し,商品コード・品名「G.スフィーダK GR」及び「KD72003-1」と記載された商品2足を,2014年9月5日に出荷したことを,乙第3号証の3の伝票番号「192060」の売上伝票に記録し,その商品の代金「11450」円及び消費税「916」円を,乙第3号証の4の請求書により2014年8月26日?2014年9月25日の期間に,被請求人と被請求人取引店との間で行われた他の取引の代金とともに請求したことが確認できる。 そして,被請求人による乙第3号証の1の売上伝票における記載事項の説明によれば,その様式を同じくする乙第3号証の3の売上伝票に記載された「G.スフィーダK GR」及び「KD72003-1」の記載も同様に,「G.スフィーダK」は伝票処理システムの字数制限のため「アサヒG スフィーダK」の「アサヒ」の部分を省略したもの,「GR」は商品の色の略語を表すもの,「KD72003-1」は「-1」の前の「KD72003」の部分が製造番号を表すものとなることから,乙第3号証の3及び乙第3号証の4の売上伝票,請求書に「G.スフィーダK GR」及び「KD72003-1」と記載され取引した商品は,乙第1号証の写真に掲載された使用商品と推認できる。 これより,被請求人は,乙第1号証の写真に掲載された使用商品を,本件審判の登録前3年以内である2014年9月5日に顧客に出荷し,その代金を2014年9月25日以降に請求していることから,2014年9月頃,被請求人と顧客との間において商品「靴」の譲渡および,代金の請求が行われたものと認めることができることから,本件使用商標の使用者は被請求人であり,その使用時期は本件審判の登録前3年以内である2014年9月頃であることが認められる。 (3)本件商標と本件使用商標の同一性について 本件商標と本件使用商標が社会通念上同一の商標に当たるかについて判断する。 ア 本件使用商標は,上記第1のとおり,片仮名と欧文字から構成されていることから,「スフィーダ」の片仮名部分と「SFIDA」の欧文字部分に視覚的に容易に分離可能である。 イ 「SFIDA」の語は,「挑戦」の意味を有する伊語である。そして,我が国における伊語の普及率はそれほど高いとはいえないものの,当該「SFIDA」の文字をインターネットで検索してみると,なでしこリーグに所属するサッカーチーム「スフィーダ世田谷FC(Sfida Setagaya FC」を始め,数多くのスポーツクラブ,企業,店舗の名称又は名称の一部に使用されていることから,我が国においても比較的目にする機会の多い語であるといえる。 そうすると,当該語の有する意味までは知られていなくとも,「スフィーダ」と自然に称呼し得るものと認められるから,本件使用商標からは「スフィーダ」の称呼を生じ,特定の観念については生じないものと認める。 ウ 他方,本件商標については,その構成中の「SFIDA」の欧文字部分については,上記イの本件使用商標と同一文字よりなるものであるから,本件使用商標と同じく「スフィーダ」称呼を生じ,特定の観念については生じない。また,「スフィーダ」の片仮名部分については,これより「スフィーダ」の称呼が生じることは明かであり,当該称呼から想起される親しまれた語も無いことから,特定の観念は生じないというべきである。そして,本件商標全体からも他の称呼,観念を生じることがないことから,本件商標からは,「スフィーダ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものと認める。 エ そうすると,本件使用商標である「SFIDA」は,本件商標構成中の欧文字部分とはそのつづりを同一とし,片仮名部分とは片仮名とローマ字を相互に変換するもので,その称呼を同じくし,観念における相違はないものであるから,本件使用商標と本件商標とは,社会通念上同一の商標といえる。 (4)小括 以上によれば,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内である2014年(平成26年)9月頃に,日本国内において,本件請求に係る指定商品「履物」に含まれる商品「靴」について,本件商標と社会通念上同一と認められる本件使用商標を付し,その商品を譲渡したものと認めるのが相当である。 そして,商標権者の上記使用行為は,商標法第2条第3項第2号に該当するものと認められる。 3 請求人の主張について 請求人は,被請求人の発行した靴のカタログ(乙2)には,「学校指定店専用」と表示されていることから,学校に全く関係の無い者は,被請求人が使用する「SFIDA」又は「スフィーダK」の表示がされた商品の購入をし得ないことから,学校関係者に限定した登録商標の使用は,商標としても機能を果たすことができる状態とはいえず,当該使用が商標法第50条で定める「登録商標の使用」とはいえない旨主張する。 しかしながら,被請求人の発行したカタログ(乙2)の「学校指定店専用」の表示は,単に当該カタログの用途を表示しているに過ぎないし,学校指定店を介した取引であっても,当該カタログに掲載された「靴」が,流通性を有する商標法上の商品であることは明かである。 そして,上記2(2)のとおり,被請求人は,本件審判の登録前3年以内に,使用商品を,顧客に対しその代金の請求をともなって譲渡を行う商取引を行っているのであるから,本件商標と社会通念上同一の商標を使用商品に付して譲渡する行為は,商標法第50条で定める登録商標の使用にほかならない。 したがって,請求人の上記主張は採用できない。 4 まとめ 以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件請求に係る指定商品「履物」に含まれる商品「靴」について,本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことを証明したと認め得る。 したがって,本件商標の登録は,商標法第50条により,取り消すことはできない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2015-12-21 |
出願番号 | 商願平7-83427 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(025)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
早川 文宏 |
特許庁審判官 |
田中 幸一 前山 るり子 |
登録日 | 1997-06-06 |
登録番号 | 商標登録第4008198号(T4008198) |
商標の称呼 | スフィーダ |
代理人 | 高橋 康夫 |
代理人 | 特許業務法人太田特許事務所 |