• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X38
管理番号 1310869 
審判番号 取消2014-300919 
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-11-17 
確定日 2016-02-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第5329212号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5329212号商標の指定役務中,第38類「ラジオ放送,テレビジョン放送,ケーブルテレビジョン放送,インターネットによる映像及びそれに伴う音声その他の音響を送る放送,携帯情報端末を用いたインターネットによる映像及びそれに伴う音声その他の音響を送る放送,その他の放送」については,その登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5329212号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,平成21年7月24日に登録出願,第38類「衛星通信,衛星通信回線の時間単位での提供,通信回線のリセール,通信事業者への衛星通信回線の提供,コンピュータネットワーク(インターネット)を利用した電子計算機端末による通信,インターネットへの接続の提供,移動体電話による通信,携帯情報端末による情報通信ネットワークへの接続の提供,携帯情報端末によるインターネットへの接続の提供,その他の電気通信(放送を除く。),ラジオ放送,テレビジョン放送,ケーブルテレビジョン放送,インターネットによる映像及びそれに伴う音声その他の音響を送る放送,携帯情報端末を用いたインターネットによる映像及びそれに伴う音声その他の音響を送る放送,その他の放送」を指定役務として,平成22年6月11日に設定登録されたものである。
なお,本件の審判請求の登録日は,平成26年12月5日である。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務中「ラジオ放送,テレビジョン放送,ケーブルテレビジョン放送,インターネットによる映像及びそれに伴う音声その他の音響を送る放送,携帯情報端末を用いたインターネットによる映像及びそれに伴う音声その他の音響を送る放送,その他の放送」(以下「取消請求役務」という場合がある。)について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)放送の業務について
商品及び役務の区分解説(平成24年7月31日 改訂第6版 特許庁商標課編集 一般社団法人発明推進協会 発行)によれば,「放送」について,「このサービスは,公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信・有線電気通信の送信を例示したものです。」とされている(甲1)。
一方,放送法第2条第1号によれば,「『放送』とは,公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第2条第1号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)をいう。」とされている。
両者の定義内容は同一であるから,本件審判事件においては,放送法上の条文及び解釈を参酌しながら,本件商標が本件取消対象役務,すなわち「放送の業務」について使用されたか否か判断されるべきである。
そこで,平成23年6月現在の放送法及び関係法令について解説されている放送法逐条解説(平成24年1月5日 改訂第2版 金澤薫 編著者 一般財団法人情報通信 振興会発行)を参酌する(甲2)。
放送法逐条解説には,「平成22年改正による旧放送関連四法の統合に伴い,各法において規律の対象としていた放送事業者を統一的に捉える必要が生じた。本法は旧法とその性格が変わるものではないことから,番組の編集を行うことを前提とする『送り伝える意図』に基づき『送信』する行為を社会生活上の地位に基づき継続して行う事業が『放送の業務』であり,それを行う者が放送事業者であるとされた。一方,旧法において放送事業者とされていた受託放送事業者は,番組編集を行っていないことから,本法では放送事業者の定義に含まれず,『基幹放送局提供事業者』とされた。」と記載されている。
また,放送法逐条解説には,平成22年改正前についても,「旧法では,番組の編集を行わずに無線局を設置して,他人の編集した番組を物理的な電気信号として発射する行為を行う受託放送について,『受託放送業務』として規律の対象とされていなかったことから,放送設備の設置だけでは放送の業務とはされていなかったものといえよう。したがって,有線の放送の場合と同様,無線の放送の場合も,放送の業務の中核は,番組の編集を行うことであったといえよう。委託放送事業者については,放送番組の編集等に関する通則の規定が適用され,受託放送事業者にはこれが適用されていなかったこと(旧法第52条の12)から,受託放送事業者は,放送番組の編集を行わないことが前提とされており,委託放送事業者は放送の業務を行う者であるが,受託放送事業者は放送の業務を行っていないこととされていた。」と記載されている(甲2)。
以上から,平成22年改正の前後に関わらず,「放送の業務」は,番組の編集を行うことを前提とする送り伝える意図に基づき送信する行為を社会生活上の地位に基づき継続して行う事業であり,それを行う者が「放送事業者」と解釈されている。
そうすると,被請求人が,日本国内の公衆によって直接受信可能な衛星を有しているとしても,他人の編集した番組を送信するだけであれば,「放送の業務」を行っているとはいえない。
(2)放送法に基づく衛星放送の業務の認定及び登録について
放送法第2条第26号によれば,「『放送事業者』とは,基幹放送事業者及び一般放送事業者をいう。」とされている。そして,基幹放送の業務を行おうとする者は,特定地上基幹放送局の免許を受けようとする者又は受けた者を除き,総務大臣の認定を受けなければならない。衛星基幹放送にあっては,総務大臣の認定が必要である。また,一般放送の業務を行おうとする者は,一部の放送を除き,総務大臣の登録を受けなければならない。衛星一般放送にあっては,総務大臣の登録を受けなければならない(甲2)。
一方,総務省のホームページに掲載されている「衛星放送の現状〔平成26年度第1四半期版〕」(平成26年4月1日 平成26年度第1四半期版 総務省情報流通行政局 衛星・地域放送課 編集・発行)と題する資料によれば,平成26年4月1日現在,被請求人は,衛星基幹放送事業者及び衛星一般放送事業者のいずれにも含まれていない(甲3)。また,総務省のホームページに掲載されている「衛星放送の現状〔平成26年度第4四半期版〕」(平成27年1月1日 平成26年度第4四半期版 総務省 情報流通行政局 衛星・地域放送課 編集・発行)と題する資料によれば,平成27年1月1日現在,被請求人は,放送中の事業者として,衛星基幹放送事業者及び衛星一般放送事業者のいずれにも含まれていない(甲4)。さらに,被請求人は,電気通信事業法に基づく電気通信事業の登録に関する証拠を提出しているが(乙9),放送法に基づく衛星基幹放送事業者の認定及び衛星一般放送事業者の登録に関する証拠を提出していないのであるから,衛星放送の業務を行うことについて,総務大臣の認定及び登録のいずれも受けていないと強く推測される。
そうすると,被請求人は,放送法上の制限によって,日本国内において衛星放送の業務を行うことができない。すなわち,被請求人は,本件商標に係る標章を,日本国内において業として衛星放送の役務について使用をすることはできない。
(3)「本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)に日本国内において衛星放送の業務を行っている」旨の主張に対する反論
ア 乙第4号証について
乙第4号証の2(抄訳)には,「ABSは,メディア,放送局及び電気通信会社に対し,衛星(ABS-1A,ABS-2,ABS-3,ABS-6及びABS-7)を利用して放送するためのCバンド及びKuバンド両方の中継器を提供しています。」と記載されている。これは,被請求人が,放送事業者等に対して放送に用いられる設備を提供することを示しているだけであり,「放送の業務」を行っていることを示すものではない。
乙第4号証の3(抄訳)には,「ABS衛星は,ケーブルシステムに固定された有線以外の方法でテレビやラジオチャネルを提供するための,優れたDHTプラットフォームを提供します。」と記載されている。これも,被請求人が所有する衛星が,放送に用いられる設備であることを示しているだけであり,被請求人が「放送の業務」を行っていることを示すものではない。
乙第4号証の4(抄訳)には,「ABS衛星は,アジア太平洋地域全体のケーブルシステム事業者に対して,テレビチャンネルを提供するための理想的なプラットフォームを提供します。」と記載されている。これも,被請求人が所有する衛星が,放送に用いられる設備であることを示しているだけであり,被請求人が「放送の業務」を行っていることを示すものではない。
乙第4号証の5(抄訳)には,「DHTプラットフォームの顧客は,手頃な価格で,かつ確実にコンテンツを転送するためにABSのCバンド容量を使用することができます。」と記載されている。これも,被請求人が,顧客に対して通信設備を提供することを示しているだけであり,被請求人が「放送の業務」を行っていることを示すものではない。
乙第4号証の6(抄訳)には,「ABSは,地域全体に高精細なチャンネルを浸透させ,配給するための解決手段となります。」と記載されている。これも,被請求人が,放送に用いられる設備を提供することを示しているだけであり,被請求人が「放送の業務」を行っていることを示すものではない。
乙第4号証の7(抄訳)には,「世界規模で,強力な電波及び優れた報道範囲を有するABS衛星は,アジア太平洋,中東,ロシア及びアフリカの何れで起きたニュースをカバーすることができます。」と記載されている。これも,被請求人が所有する衛星を用いて世界のニュースを収集できることを示しているだけであり,被請求人が「放送の業務」を行っていることを示すものではない。
イ 乙第5号証について
乙第5号証には,被請求人が所有する衛星によって配信されるチャンネルの一覧が記載されている。しかしながら,いずれのチャンネルも,被請求人によって番組の編集が行われているか否か不明である。被請求人は,日本国内において衛星基幹放送事業者の認定及び衛星一般放送事業者の登録のいずれも受けていないのであるから,放送法上の制限によって,日本国内において衛星放送の業務を行うことはできない。したがって,少なくとも,日本国内の公衆によって直接受信されることを意図した番組については,被請求人によって編集されていないことが強く推測される。そうすると,乙第5号証は,被請求人が日本国内において衛星放送の業務を行っていることを示すものではない。
ウ 乙第22号証及び乙第23号証について
乙第22号証の90頁には,「ABS offers a complete range of tailored solutions including broadcasting, data and telecommunication services to media, enterprises and government organizations. Over 200 channels are delivered on ABS-1 serving Asia Pacific, Africa, Europe, the Middle East and CIS/Russia.」と記載されている。また,乙第23号証の92頁にも同様の内容が記載されている。これらは,乙第4号証の2と同様,被請求人が,放送事業者等に対して放送等に用いられる設備を提供することを示しているだけであり,「放送の業務」を行っていることを示すものではない。また,乙第22号証の目次(“CONTENTS”)や乙第23号証の目次(“CONTENTS”)には,「SATELLITES&SERVICES」の項において,被請求人を示す「Asia Broadcast Satellite」の他,「Asia Satellite Telecommunications Co,Ltd.」,「Eutelsat」,「MEASAT Global Berhad」,「SES」が記載されている。これらは,全て衛星の運用を行う会社又は衛星の名前であるから(甲5?甲8),乙第22号証及び乙第23号証に関する月刊誌「television Asia plus」においては,被請求人が,放送事業者ではなく,衛星運用業者であると認識しているものと強く推測される。
また,被請求人は,乙第22号証及び乙第23号証に関する月刊誌が日本にも配布されていると主張しているが,その事実を立証する証拠は提出されていない。
そうすると,乙第22号証及び乙第23号証は,被請求人が日本国内において「放送の業務」を行っていることを示すものではない。
エ 小括
以上のとおり,上記乙各号証に基づいて,被請求人が要証期間内に日本国内において衛星放送の業務を行っている旨の主張は,誤りである。
(4)「被請求人が本件商標に係る標章を要証期間内に日本国内において業として衛星放送の役務について使用した」旨の主張に対する反論
ア 乙第4号証及び乙第5号証について
乙第4号証及び乙第5号証は,(3)にて前述したとおり,被請求人が日本国内において衛星放送の業務を行っていることを示すものではない。したがって,これらは,被請求人が本件商標に係る標章を業として衛星放送の役務について使用したことを示すものではない。
イ 乙第18号証について
乙第18号証(抄訳)には,「○○(プレゼンの相手方)は,衛星の設計,調達,運営の専門知識を提供でき,かつ,日本とその周辺の島々をカバーできる衛星の軌道位置に権限を持つパートナーを探している。」と記載されている。これは,衛星の運用に関する取引内容を示しているだけであり,被請求人が「放送の業務」を行っていることを示すものではない。したがって,乙第18号証は,被請求人が本件商標に係る標章を業として衛星放送の役務について使用したことを示すものではない。
ウ 乙第19号証について
乙第19号証(抄訳)には,「Re:エイジア ブロードキャスト サテライト リミテッド(ABS)と○○(相手方の日本企業)の間で交わされた,2012年4月25日締結の合意書の解約及び2011年7月8日締結の守秘義務契約の基づく意見交換の停止の通知並びに当該秘密義務契約の基に得た秘密情報の廃棄を求める通知」と記載されている。これは,合意書や守秘義務契約の対象となった取引内容が不明である。しかも,合意書の解約,意見交換の停止及び秘密情報の廃棄を求める通知であるから,合意書や守秘義務契約の対象となった取引について何ら進展していないことが強く推測される。そうすると,乙第19号証は,被請求人が本件商標に係る標章を要証期間内に業として衛星放送の役務について使用したことを示すものではない。
エ 乙第20号証について
乙第20号証(抄訳)には,「この守秘義務契約書(the”Agreement”)は,東京の○○○所在の,日本の法律に基づいて組織された法人である○○○(本契約の相手方日本企業)と,セントラル香港 ウィンダム ストリート 8 アジアパシフィックセンター 22Fに本部を設け,バミューダ ハミルトン エッチエム 11 レイド ストリート 7 ワシントン モール ウエスト セカンドフロアーに登記上の事務所を設ける,バミューダの法律に基づいて組織された法人であるエイジア ブロードキャスト サテライト リミテッド(ABS)の間で,2009年5月12日(the”Effective Date”)に作成され締結されたものである。」と記載されている。これは,守秘義務契約書の対象となった取引内容が不明である。しかも,2009年5月12日に作成され締結された後,要証期間内まで契約が維持されているか否か不明である。そうすると,乙第20号証は,被請求人が本件商標に係る標章を要証期間内に業として衛星放送の役務について使用したことを示すものではない。
オ 乙第21号証について
乙第21号証からは,被請求人の業務に関する記事について,「ABS:Staying ahead of the competition」という文字しか判別することができず,被請求人の業務内容が不明である。また,被請求人は,乙第21号証に関する月刊誌が日本にも配布されていると主張しているが,その事実を立証する証拠は提出されていない。そうすると,乙第21号証は,被請求人が本件商標に係る標章を日本国内において業として衛星放送の役務について使用したことを示すものではない。
カ 乙第22号証及び乙第23号証について
乙第22号証及び乙第23号証は,(3)にて前述したとおり,被請求人が日本国内において「放送の業務」を行っていることを示すものではない。そうすると,これらは,被請求人が本件商標に係る標章を日本国内において業として衛星放送の役務について使用したことを示すものではない。
キ 小括
以上のとおり,上記乙各号証に基づいて,被請求人が本件商標に係る標章を要証期間内に日本国内において業として衛星放送の役務について使用した旨の主張は,誤りである。
(5)その他の理由に対する反論
被請求人が本件商標の使用に係る証拠資料をさらに追加で提出したとしても,放送法に基づく衛星基幹放送事業者の認定及び衛星一般放送事業者の登録のいずれかに関する証拠を提出しない限り,被請求人が本件商標に係る標章を要証期間内に日本国内において業として衛星放送の役務について使用した旨の主張は,認められない。
また,被請求人は,(ア)衛星放送以外の本件取消対象役務について,本件商標に係る標章を要証期間内に日本国内において業として使用した旨の主張,(イ)本件商標に係る専用使用権者または通常使用権者が存在する旨の主張,及び(ウ)取消対象役務について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由がある旨の主張,のいずれも行っていない。
したがって,本件商標は,取消対象役務について,被請求人,専用使用権者及び通常使用権者のいずれによっても要証期間内に日本国内で使用されておらず,使用をしていないことについて正当な理由もないものと強く推測される。
(6)まとめ
以上のことから,本件商標は,その指定役務中,取消請求役務について,商標法第50条第1項の規定により,その登録を取り消すべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め,答弁の理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第30号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 被請求人について
(1)被請求人の事業概要
被請求人であるAsia Broadcast Satellite,Ltd.は,2005年に設立された衛星通信事業者であり,中国やフィリピン,ベトナムなどの東南アジア諸国の他,アメリカ合衆国や欧州,アフリカ大陸等にも市場を広げて全世界的に事業を展開している大企業である。
現在では,計8つの衛星(ABS-1A,ABS-2,ABS-3,ABS-4/Mobisat-1,ABS-6,ABS-7,ABS-3A,ABS-2A)を有しており,これらの衛星を運営して世界の約80%に衛星通信を提供している(乙1,乙2)。
また,被請求人は,衛星通信事業の他に,自社が保有する衛星を通じたデータサービスに加えて衛星放送も提供している(乙4)。
前述したように,被請求人の衛星は全世界的に通信が可能であるため,衛星放送も同様に全世界的に配信可能であり,受信可能である。配信されているコンテンツは幅広く,Animal Planet,Disney,Eurosports2,TNTなどの人気番組も視聴することができる(乙5)。
(2)日本における事業
被請求人の所有する衛星通信が可能な範囲には,日本が当然含まれている。例えば,2014年2月打ち上げのABS-2は,日本をカバーしている(乙2,乙30)。
また,被請求人の有する衛星の通信エリアを紹介するカタログには,ABS-2及びABS-6の通信エリアに日本が含まれていることが示されている(乙6)。
また,本件ホームページ以外からでも,被請求人の衛星が日本にも及んでいることが確認できる(乙7,乙8)。
さらに,被請求人は,実際に日本でも衛星通信事業を行うべく,平成23年12月20日に登録番号349号として日本の総務省に登録され,平成24年3月19日に変更登録されている(乙9)。また,衛星通信事業者として平成24年2月27日に日本で登記されている(乙10)。
上記の事実によれば,被請求人が提供する衛星放送は,本件審判の予告登録前に,日本国内において受信し,視聴することができたと考えるのが相当である。
(3)小括
以上のことから,被請求人は,世界規模で衛星通信及び衛星放送を業としている企業であって,その衛星通信及び衛星放送を提供する対象に日本が含まれていることは明らかである。
2 本件商標の使用について
(1)本件ホームページ上の商標の使用
ア インターネット上の標識の使用について
インターネット上の標識の使用を特定国における使用と認めるか否かについては,その使用が「商業的効果(commercial effect)」を有しているか否かで判断されるべきである。
そうすると,本件ホームページ上に標章を表示することが,日本の需要者等に対して商業的効果を有していると認められる場合は,当該標章は日本の需要者に向けて表示されているということができる。
イ 本件ホームページの日本における商業的効果(本件ホームページが日本で使用されたといえるか)
本件ホームページのトップページでは,衛星が大きく表示されていることから,被請求人が衛星関連の事業をしていることは一目瞭然であり(乙1),また,トップページ上の「SERVICES」のバナーをクリックすれば,被請求人が衛星放送を提供していることが簡単にわかる(乙4の1?7)。そして,本件ホームページは,特にアクセス制限なども設けておらず,日本国内の需要者及び取引者(以下「需要者等」という。)も閲覧可能な状態にあるため,日本の需要者等も対象として,被請求人の業務に係る衛星通信又は衛星放送に関する情報を提供するサイトであるといえる。
この点,本件ホームページは英語で表示されているため,これが日本の需要者を対象としたサイトではないと考えられる余地もあるが,英語で表示しているからといって直ちに日本の需要者等を対象としていないということにはならない。
以上のように,被請求人の衛星放送は,日本在住の需要者により視聴されていたのであり,その役務の広告媒体たる本件ホームページも日本の需要者等に対して商業的効果を有していることは明らかである。よって,本件ホームページに本件商標を使用することにより,日本国内でも本件商標が使用されたと考えるのが相当である。
ウ 本件商標と使用標章の同一性
(ア)現在の使用態様
乙第1号証ないし乙第5号証から明らかなように,現在の被請求人の本件ホームページ上では,本件商標と同様に角の丸い略四角形状の内に図案化された「ABS」の文字が配された標章(以下「使用標章」という)が,常にサイトの左上に表示されている。
使用標章と本件商標の違いは,図案化された「ABS」の下に「Asia Broadcast Satellite」の文字があるか否かである。
本件商標の構成中,需要者等の注意を惹き,要部として認識されるのは,図案化された「ABS」であるといえる。そうすると,図案化された「ABS」に注目して出所が識別されることは明らかであるから,使用標章が,本件商標から「Asia Broadcast Satellite」の文字を外した構成であるとしても,使用標章と本件商標は社会通念上同一の商標として認識されると考えるのが自然である。
(イ)過去の使用態様
過去のウェブページを保管しているウェブサイト「WaybackMachine」(乙24の1,2)で調べると,例えば,2012年4月16日,2012年9月19日,2013年3月25日及び2013年12月30日に,それぞれ本件商標と同一の態様の標章が本件ホームページ上に表示されていたことが確認できる(乙25?乙28)。
そうすると,現在の本件ホームページ上では,本件商標と社会通念上同一の,使用標章が表示されているものの,要証期間内には,本件商標が本件ホームページ上に表示されていたことは明らかである。
なお,それぞれのトップページの「Latest News」の下に,当時の記事が掲載された年月日が記載されていることから,これら過去のアーカイブの信憑性は担保されているものと思料する。
エ 使用標章の使用について
上記1及び2(1)イで述べたように,被請求人が,世界規模で衛星通信,衛星放送等を業としている会社であることは,本件ホームページにアクセスすれば容易に把握できるものである(乙1?乙5)。
また,被請求人の衛星を受信可能な装置が日本で流通し,被請求人の衛星放送を日本で受信し視聴している需要者等が現に存在しているという事実は,被請求人が,日本国内でコンテンツを提供していることに他ならない。したがって,被請求人は,日本で業として「放送」していることが認められる。
そうすると,本件ホームページに表示された使用標章は,被請求人が,日本において,本件商標の指定役務に係る「ラジオ放送,テレビジョン放送,ケーブルテレビジョン放送,インターネットによる映像及びそれに伴う音声その他の音響を送る放送,携帯情報端末を用いたインターネットによる映像及びそれに伴う音声その他の音響を送る放送,その他の放送」について宣伝・広告をするために表示したものと考えることができる。
したがって,以上に鑑みれば,使用標章を本件ホームページに表示する行為は,商標法第2条第3項第8号の使用に該当するものというべきである。
(2)日本の企業との取引
被請求人は,2012年2月15日に,日本の企業を相手に,被請求人の所有する衛星及びこれに関連する自社の事業についてプレゼンテーションを行っている(乙18)。相手方の名称は非公開としているが,乙第18号証の第6頁1行目の記載から相手方が日本の企業であることは明らかである。
そして,当該プレゼン資料の表紙には本件商標が表示され,第2頁以降は常に資料の右上に使用標章が付されていることから,商標法第2条第3項第8号の使用に該当するものである。
また,被請求人は,2012年8月17日に,日本の企業と,2012年4月25日に締結した合意書及び2011年7月8日に締結した守秘義務契約について,解約通知を送付している(乙19)。相手方の名称は非公開としているが,その宛名から,相手方が日本の企業であることは明らかである。そして,その通知書の左上には,本件商標が表示されていることから,商標法第2条第3項第8号の使用に該当するものである。
さらに,被請求人は,2009年5月に,日本の企業と,将来的な衛星の売買に関する守秘義務契約を交わしている(乙20)。そして,本契約書の最終頁には,本件商標の構成中,図案化された「ABS」が付されていることから,商標法第2条第3項第8号の使用に該当するものである。
(3)日本での刊行物の発行
2012年6月/7月に発行された,アジア圏のテレビ放送に関する情報が掲載されている月刊誌であって,日本へも配布されている「television Asia plus」に,被請求人の業務に関する記事が掲載されている(乙21)。
雑誌のタイトルからしてテレビ放送に関連する内容であることは容易に推測できる。そして,記事が掲載されている頁の右上には本件商標が表示されており,商標法第2条第3項第8号の使用に該当するものである。
2013年に発行された「television Asia plus」には,被請求人の業務及び所有する衛星「ABS-2」を宣伝広告する記事が掲載されている(乙22)。
当該記事には,被請求人が衛星放送を提供していることが記載されており(90頁 Facilities and Services),記事内容及びエリアマップを見れば日本も衛星通信の対象に含まれていることが認められる。そして,当該雑誌の90頁及び91頁にはそれぞれ本件商標が表示されており,商標法第2条第3項第8号の使用に該当するものである。
2014年に発行された「television Asia plus」には,被請求人の業務を宣伝広告する記事が掲載されている(乙23)。
当該記事には,被請求人が日本において衛星放送を提供していることが記載されており(93頁 ABS-2でJapanの記載),記事内容及びエリアマップを見れば日本も衛星通信の対象に含まれていることが認められる。そして,当該雑誌の92頁及び93頁にはそれぞれ本件商標が表示されており,商標法第2条第3項第8号の使用に該当するものである。
3 まとめ
以上のことから,被請求人は,本件審判の要証期間内に日本国内において,本件商標の指定役務中,取消請求役務について継続して本件商標を使用していたことは明らかである。

第4 当審の判断
1 不使用取消審判について
商標法第50条に規定する商標登録の取消しの審判にあっては,その第2項において,「その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り,使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにした場合を除いて,商標権者は,その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」旨規定されている。
2 被請求人の提出した証拠について
(1)乙第1号証ないし乙第5号証について
乙第1号証ないし乙第5号証は,英語による被請求人のホームページ(2015年3月13日印刷)である。
そして,これらのウェブサイトには,その左上部に,本件商標を構成する「Asia Broadcast Satellite」の文字部分を省略した図案化された「ABS」の文字及び衛星の図形が組み合わされた標章(使用標章)が表示されている。
加えて,これらのウェブサイトの抄訳(乙2)には,「会社概要」として,「ABSは,創造的なビジネスアプローチをもつ,若くて急成長中のグローバルな衛星事業者です。バミューダに本社があり,米国,ドバイ,南アフリカ,ドイツ,フィリピン,インドネシア,マレーシア,シンガポール,香港にもオフィスがあります。(中略)ABSは6つの衛星を管理・運営し,また,世界の80%に提供が可能な2つの衛星をもっています。」の記載がある。
乙第4号証の1の抄訳には,「放送サービス(Broadcast Services)」として,「・放送(Broadcasting)/・Direct to Home(DTH)/・ケーブルの分配(Cable Distribution)/・動画の貢献(Video Contribution)/・高精度(High Definition(HDTV))/・衛星によるニュースの収集(Satellite News Gathering(SNG))」の記載がある。
乙第4号証の2の抄訳には,「放送(Broadcasting)」として,「ABSは,地域的,非地域的,及び大陸的な流通のために,他には類をみないような市場への介入を実現します。ABSは,メディア,放送局及び電気通信会社に対し,衛星(ABS-IA,ABS-2,ABS-3,ABS-6及びABS-7)を利用して放送するためのCバンド及びKuバンド両方の中継器を提供しています。」の記載がある。
乙第4号証の3の抄訳には,「Direct to Home(DTH)」として,「ABS衛星は,ケーブルシステムに固定された有線以外の方法でテレビやラジオチャンネルを提供するための,優れたDHTプラットフォームを提供します。」の記載がある。
乙第4号証の4の抄訳には,「ケーブルの分配(Cable Distribution)」として,「ABS衛星は,アジア太平洋地域全体のケーブルシステム事業者に対して,テレビチャンネルを提供するための理想的なプラットフォームを提供します。」の記載がある。
乙第4号証の5の抄訳には,「動画の貢献(Video Contribution)」として,「DHTプラットフォームの顧客は,手頃な価格で,かつ確実にコンテンツを転送するためにABSのCバンド容量を使用することができます。」の記載がある。
乙第4号証の6の抄訳には,「高精度(High Definition (HDTV))」として,「ABSは,地域全体に高精細なチャンネルを浸透させ,配給するための解決手段となります。」の記載がある。
乙第4号証の7の抄訳には,「衛星によるニュースの収集(Satellite News Gathering(SNG))」として,「世界規模で,強力な電波及び優れた報道範囲を有するABS衛星は,アジア太平洋,中東,ロシア及びアフリカの何れで起きたニュースをカバーすることができます。」の記載がある。
(2)乙第7号証について
乙第7号証は,「おもしろ家電通販サイト匠ワールド」のウェブサイトであり,その内容は,「世界の衛星番組の調べ方」に関するものである。
(3)乙第9号証について
乙第9号証は,被請求人に対する総務大臣名による「電気通信事業の登録について(通知)」(平成23年12月20日付け)及び「電気通信事業の変更登録について(通知)」(平成24年3月19日付け)の通知である。
(4)乙第10号証について
乙第10号証は,「履歴事項全部証明書」である。これには,「本店」として,「英領バミューダ,ハミルトン市HM08パーラビレ通り8番地ミントフラワープレイス4階」,「目的」として,「衛星通信事業」,「支店」として,「和歌山市園部1581番地の8」等の記載がある。
(5)乙第18号証について
乙第18号証は,被請求人が,日本の企業を相手に,同人の所有する衛星及びこれに関連する自社の事業についてプレゼンテーションした際の資料である。
その表紙には,本件商標が表示されており,また,「HTS Condosat Presentation」及び「February 15,2012」の記載がある。
そして,資料の6枚目の抄訳には,「(表紙乃至第5頁は省略)/(第6頁)/提案の概要及び要約(Proposal Overview and Summary)/(省略)/OO(プレゼンの相手方)は,衛星の設計,調達,運営の専門知識を提供でき,かつ,日本とその周辺の島々をカバーできる衛星の軌道位置に権限を持つパートナーを探している。/(以下,省略)」の記載がある。
(6)乙第19号証について
乙第19号証は,被請求人によれば,同人が日本の企業と締結した「合意書及び守秘義務契約についての解約通知」である。
そして,左上部には,本件商標が表示されており,また,その抄訳には,「2012年8月17日/(省略)/Re:エイジア ブロードキャスト サテライト リミテッド(ABS)と○○(相手方の日本企業)の間で交わされた,2012年4月25日締結の合意書の解約及び2011年7月8日締結の守秘義務契約の基づく意見交換の停止の通知並びに当該秘密義務契約の基に得た秘密情報の廃棄を求める通知/(以下,省略)」の記載がある。
(7)乙第20号証について
乙第20号証は,被請求人によれば,同人が日本の企業と将来的な衛星の売買について交わした「守秘義務契約書」である。
そして,その抄訳には,「守秘義務契約書/(MUTUAL NON-DISCLOSURE AGREMENT)/この守秘義務契約書(the“Agreement”)は,東京の○○○所在の,日本の法律に基づいて組織された法人である○○○(本契約の相手方日本企業)と,セントラル香港 ウィンダム ストリート 8 アジアパシフィックセンター 22Fに本部を設け,バミューダ ハミルトン エッチエム 11 レイド ストリート 7 ワシントン モール ウェスト セカンドフロアーに登記上の事務所を設ける,バミューダの法律に基づいて組織された法人であるエイジア ブロードキャスト サテライト リミテッド(ABS)の間で,2009年5月12日(the“Effective Date”)に作成され締結されたものである。/(以下,省略)」の記載がある。
(8)乙第21号証ないし乙第23号証について
乙第21号証ないし乙第23号証は,被請求人によれば,アジア圏のテレビ放送に関する情報が掲載されている月刊誌「television Asia plus」であり,英語の雑誌である。
(9)乙第25号証ないし乙第29号証について
乙第25号証ないし乙第29号証は,被請求人が「Wayback Machine」で調べた,2012年4月16日,同年9月19日,2013年3月25日,同年12月30日及び2014年2月7日における同人のホームページである。
そして,これらのウェブサイトには,その左上部に,使用標章が表示されている。
3 本件商標の使用について,上記2によれば,以下のとおりである。
(1)被請求人による取消請求役務の提供について
被請求人は,衛星通信事業の他に,自社が保有する衛星を通じたデータサービスに加えて衛星放送も提供しており,被請求人の衛星は,全世界的に通信が可能であるため,衛星放送も同様に全世界的に配信可能であり,受信可能である,旨の主張をしている。
確かに,被請求人は,総務大臣名による「電気通信事業の登録について(通知)」及び「電気通信事業の変更登録について(通知)」の通知(乙9)を受けており,海外においては,衛星事業者として,バミューダに本社があり,数カ国においてオフィスを有し,6つの衛星を管理,運営しているものである(乙2,乙4)。
しかしながら,上記2の乙各号証によっては,「衛星放送」の役務の提供について,日本国内において,被請求人がその業務を行っている事実や同人と日本国内の需要者との間で,衛星放送の役務の提供について契約を行っている等の事実,及びその契約に基づいて実際に衛星放送が視聴されている事実についての具体的な証拠は,認められない。
その他,被請求人が「衛星放送」以外の取消請求役務を提供していたとする証拠は提出されていない。
なお,乙第18号証は,その抄訳からして,「衛星放送」の役務の提供についての資料であるか不明である。また,乙第19号証及び乙第20号証は,被請求人が日本の企業と締結した「合意書及び守秘義務契約についての解約通知」,及び日本の企業と将来的な衛星の売買について交わした「守秘義務契約書」とされるものであって,これが「衛星放送」の役務の提供についての取引書類であるか不明である。
そうとすれば,被請求人が日本国内において,「衛星放送」を含む取消請求役務を提供していたとは認められないものである。
(2)本件商標の使用の行為等について
ア 被請求人のホームページにおける標章の使用について
被請求人のホームページにおいて,「本件商標」及び「使用標章」が表示されている(乙1?乙5,乙25?乙29)。
そして,被請求人は,本件ホームページに表示された使用標章は,同人が,日本において,本件商標の指定役務に係る「ラジオ放送,テレビジョン放送,ケーブルテレビジョン放送,インターネットによる映像及びそれに伴う音声その他の音響を送る放送,携帯情報端末を用いたインターネットによる映像及びそれに伴う音声その他の音響を送る放送,その他の放送」について宣伝,広告をするために表示したものである,旨の主張をしている。
しかしながら,被請求人のホームページの内容はすべて英語で表示されており,直接的に我が国の需要者を対象としたものでないことは一目瞭然であるが,このように当該ウェブサイトが日本からのアクセスが可能であるとしても,インターネットの性格上,世界各地からアクセスが可能であるのは当然のことであって,当該ウェブサイトの存在のみを以って日本国内における商業的活動をしているものとは認められないものである。
したがって,被請求人のホームページによっては,日本国内において本件商標を使用したものとは認められない。
イ 日本の企業との取引における標章の使用について
被請求人は,「日本の企業を相手に,同人の所有する衛星及びこれに関連する自社の事業についてプレゼンテーションを行っており,その資料の表紙には本件商標が表示され,第2頁以降は常に資料の右上に使用標章が付されている(乙18)。また,被請求人は,日本の企業と締結した合意書及び守秘義務契約について,解約通知を送付している。そして,その通知書の左上には,本件商標が表示されている(乙19)。さらに,被請求人は,日本の企業と,将来的な衛星の売買に関する守秘義務契約を交わしており,その契約書の最終頁には,本件商標の構成中,図案化された『ABS』が付されている(乙20)ことから,商標法第2条第3項第8号の使用に該当するものである。」旨の主張をしている。
しかしながら,上記3(1)のとおり,乙第18号証は,その抄訳からして,「衛星放送」の役務の提供についての資料であるか不明であり,また,乙第19号証及び乙第20号証は,これが「衛星放送」の役務の提供についての取引書類であるか不明であるから,たとえ,これらの書類に本件商標が使用されたとしても,「衛星放送」の役務の提供について,本件商標が使用されものということができない。
ウ 雑誌における本件商標の使用について
被請求人は,日本へも配布されている雑誌「television Asia plus」に,被請求人の業務及び所有する衛星を宣伝広告する記事が掲載されて,本件商標の使用をしたものである,旨の主張をしている。
しかしながら,その雑誌は,英語の内容である上に,我が国で配布等されている事実も証明されていないものであるから,これによって,被請求人が日本国内において本件商標を使用したものとは認められない。
エ その他の乙号証について
上記2の乙号証以外の証拠については,被請求人が本件商標を自ら使用したものと認められる証左はない。
オ 以上のとおり,被請求人の提出に係る乙各号証によれば,被請求人が要証期間内に本件商標を取消請求役務に使用した事実を確認できないことから,これらの証拠によっては,商標法第2条第3項各号における本件商標の使用の行為を認めることができない。
4 むすび
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に,日本国内において,本件商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,本件取消請求に係る指定役務のいずれかについて,本件商標を使用していることを証明したものということができない。
また,被請求人は,取消請求役務について,本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標は,商標法第50条の規定により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)




特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2015-09-03 
結審通知日 2015-09-08 
審決日 2015-09-25 
出願番号 商願2009-56179(T2009-56179) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X38)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池田 光治浦崎 直之平澤 芳行 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 井出 英一郎
田中 亨子
登録日 2010-06-11 
登録番号 商標登録第5329212号(T5329212) 
商標の称呼 エイビイエスアジアブロードキャストサテライト、エイビイエス、アジアブロードキャストサテライト、ブロードキャストサテライト 
代理人 土生 真之 
代理人 中村 仁 
代理人 大谷 寛 
代理人 齋藤 博子 
代理人 大塚 啓生 
代理人 齋藤 昭彦 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ