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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2015900124 審決 商標

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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W25
管理番号 1309824 
異議申立番号 異議2013-900396 
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-02-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-11-27 
確定日 2015-12-28 
異議申立件数
事件の表示 登録第5610796号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5610796号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5610796号商標(以下「本件商標」という。)は,「PYREXVISION」の欧文字と「パイレックスヴィジョン」の片仮名とを二段に横書きしてなり,平成25年4月9日に登録出願され,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,同年7月17日に登録査定,同年8月30日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,登録異議の申立ての理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第212号証(枝番を含む。)を提出している。
1 申立人使用及び商標に係る「PYREX」「パイレックス」の著名性
申立人の引用する登録第111082号商標,登録第498553号商標,登録第948590号商標,登録第972082号商標,登録第1246265号商標,登録第1738178号商標及び登録第2001259号商標は,それぞれ「PYREX」又は「パイレックス」の文字からなる商標である。同じく,申立人の引用する,登録第2549849号商標及び登録第2434660号商標は,それぞれ「VISION/ビジョン」又は「VISIONS」の文字からなるからなる商標である。
「PYREX」は,本件商標の申立人が1915年に発明した耐熱性,化学耐久性の理化学用のホウケイ酸硝子の名称として採択され,理化学用ガラス製品に加えて,一般消費者を需要者とする台所用ガラス製品の名称として1915年から現在に至るまでの約100年間にわたり継続使用されている申立人を代表する最も重要なブランドのひとつである。
そして,「PYREX」及び「パイレックス」は,本件商標の登録出願日のはるか以前から,申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本を含む世界で広く認識されていたものであり,また,「PYREX」及び「パイレックス」は申立人の商標として我が国の一般消費者の間でも広く認識理解されていたものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は,構成文字の冒頭部分に「PYREX」「パイレックス」の文字を包含し,当該構成文字全体が何らかの既成の意味,観念を生じるものではなく,造語「PYREX」「パイレックス」と,既成語「VISION」「ビジョン」を結合させてなることが極めて容易に認識理解されるものであるから,明らかに看者は,申立人の著名商標である「PYREX」及び「パイレックス」に相当する文字部分に注目し,惹きつけられる。
したがって,本件商標がその指定商品に使用されれば,申立人の業務係るガラス及びガラス製品の出所識別標識として世界中で広く認識されている「PYREX」及び「パイレックス」の出所表示力が希釈化することは明白である。また,本件商標権者による本件商標の使用は申立人の永年の継続使用によって著名商標「PYREX」及び「パイレックス」に化体する名声,信用力,顧客吸引力にフリーライドする行為と言わざるを得ない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されている「PYREX」及び「パイレックス」に類似する。本件商標の登録出願時において,本件商標権者が申立人の商標として世界中に広く認識されている「PYREX」及び「パイレックス」について不知で,偶然に本件商標を採択したとは考え難い。
したがって,本件商標は,その構成中に申立人の著名商標「PYREX」及び「パイレックス」を採り込み,申立人の業務に係る製品と異なる分野の商品に登録出願することにより,申立人のブランドの名声,信用力,顧客吸引力にフリーライドして不正な利益を得る目的をもって使用するものであると認識せざるを得ない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は,構成中に申立人の創造標章である「PYREX」及び「パイレックス」の文字を包含するものとして容易に認識理解されるものであり,申立人のブランドの世界的な著名性と顧客吸引力にフリーライドする意図をもって採択されたものといわざるを得ない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

第3 本件商標の取消理由
1 審判長は,平成27年8月10日付けで商標権者に対し,理由を示して本件商標を取り消すべき旨の通知をした。その理由は,要旨次のとおりである。
2 「PYREX」等商標の著名性
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る証拠及び申立ての理由によれば,以下の事実が認められる。
(1)申立人及び「PYREX」等商標について
ア 申立人は,1851年に創業した米国ニューヨーク州を本拠とする世界的なガラス会社であり,日本市場進出は1960年代半ばであり,現在は申立人100%出資子会社のコーニングジャパン株式会社,コーニングインターナショナル株式会社,コーニングホールディングジャパン合同会社及び研究所のコーニングテクノロジーセンターが存在することが認められる(甲14)。
イ 「PYREX」は,申立人が1915年に発明した耐熱性,化学的耐久性の高い理化学用ホウケイ酸硝子の名称として採択され,以後,この名称は現在に至るまで,ボトル,ビーカー,三角フラスコ,メスシリンダー及びメスフラスコを始めとした理化学用ガラス製品(甲13,18)に加えて,調理器具,食器類及び食品保存容器といった家庭の一般消費者を需要者とする台所用ガラス製品(以下「PYREX製品」という。)にも使用されていることが認められる(甲19?27,29?33,35,36,39,41,42,44,45,47,51?88)。
ウ PYREX製品の日本での製造は,1964年に,申立人,「旭硝子株式会社」及び「岩城硝子株式会社」(現在「AGCテクノグラス株式会社」)の3社間でホウケイ酸硝子製造技術援助に関わる契約が締結され,1966年に「岩城硝子株式会社」を通じて製造が開始されたことが認められる(甲91)。調理器具,食器類,食品保存容器等の台所用ガラス製品の販売については,2012年頃まで「岩城硝子株式会社」又はその子会社の「岩城ハウスウェア」を通じて(甲92?114),2012年から現在までは,新たに「PYREX」商標の使用許諾を受けた米国のメーカーの,「ワールドキッチン・エルエルシー」の子会社である「ワールドキッチン・アジアパシフィック・プライベート・リミテッド」の日本支店「ワールドキッチン・ジャパン」により行われていることが認められる(甲120?136)。
エ 上記イ及びウにおけるPYREX製品には,「PYREX」及び「pyrex」の欧文字の表記並びに「パイレックス」の片仮名の表記(以下これらを「申立人使用商標」という。)が使用されていることが認められる。
(2)辞書等における記載
申立人使用商標は,「小学館ランダムハウス英和辞典」(第2版 1999年 株式会社小学館),「研究社新英和大辞典」(第4版 1960年 株式会社研究社),「新英和中辞典」(第5版 1987年 株式会社研究社),「ライトハウス英和辞典」(1985年 株式会社研究社),「リーダーズ英和辞典」(1986年 株式会社研究社),「デイリーコンサイス英和和英辞典」(1983年 株式会社三省堂),「研究社新和英大辞典」(1982年 株式会社研究社),「広辞苑 第5版」(1998年 株式会社岩波書店),「日本語になった外国語辞典」(昭和62年 株式会社集英社),「商品大辞典」(昭和51年 東洋経済新報社),「窯業辞典」(1963年 丸善株式会社),「ガラスの事典」(1995年 株式会社朝倉書店)等,多数の辞書類に商品名ないし商標名として記載されているほか(甲137?154),「光学の知識」(昭和58年 東京電機大学出版部),「食品加工学実験書」(2003年 株式会社化学同人),「もっと化学を楽しくする5分間」(2003年 株式会社化学同人)等の書籍や雑誌にも申立人が製造するガラス(商品名),ホウケイ酸ガラス又は耐熱ガラスの代表的な製品名として「pyrex」,「PYREX」及び「パイレックス」等の文字の記載が確認できる(甲167?184)。
(3)小括
以上よりすれば,申立人使用商標は,本件商標の登録出願日にはすでに,我が国のみならず世界的にも,申立人の業務に係る理化学用ガラス製品及び台所用ガラス製品の出所を表示するものとして広く認識されており,その著名性は,本件商標の登録査定がなされた当時においても継続していたものと認められる。
3 出所の混同
本件商標は,上記1のとおり,「PYREXVISION」の欧文字と「パイレックスヴィジョン」の片仮名とを二段に横書きしてなるものであるところ,構成全体をもって,我が国において親しまれた観念を生じさせるものとは認め難いところである。そして,本件商標中の「PYREX」及び「パイレックス」の文字部分は,上記2認定のとおり,申立人の業務に係る理化学用ガラス製品及び台所用ガラス製品の商標として,本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において,我が国のみならず世界的にも取引者,需要者の間に広く認識されていた「PYREX」及び「パイレックス」の表示と同一の綴り文字よりなるものであり,同一の称呼を生ずるものである。してみると,本件商標に接する取引者,需要者は,その構成中の「PYREX」及び「パイレックス」の文字部分に強く印象付けられ,これを記憶するとみるのが相当である。
また,本件商標の指定商品は,上記1のとおり,「被服」を含むものであるが,これと,申立人の業務に係る台所用ガラス製品とは,共に一般の需要者が日常の生活の場において目にし,使用する商品であるとともに,「被服」には,専らその使用場所を厨房,台所とする「調理人用作業服,エプロン,割烹着,コック帽,調理用三角巾」をも含まれる。
したがって,本件商標の指定商品と申立人使用商標が使用される商品との間には関連性があるといえる。
以上を総合勘案すると,本件商標をその指定商品に使用した場合は,これに接する取引者,需要者は,直ちに申立人の著名な「PYREX」及び「パイレックス」の表示を想起又は連想し,該商品が申立人又はこれと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生ずるおそれが高いというべきである。
4 むすび
以上のとおり,本件商標は,他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標というべきものであるから,その登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといわなければならない。

第4 商標権者の意見
審判長は,上記第3の取消理由に対して,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,商標権者は,何ら意見を述べていない。

第5 当審の判断
本件商標についてした上記第3の取消理由は,妥当なものと認められるものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから,他の申立の理由について判断するまでもなく,同法第43条の3第2項により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2015-11-16 
出願番号 商願2013-26201(T2013-26201) 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (W25)
最終処分 取消  
前審関与審査官 神前 博斗椎名 実 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田中 幸一
前山 るり子
登録日 2013-08-30 
登録番号 商標登録第5610796号(T5610796) 
権利者 株式会社WEST
商標の称呼 パイレックスビジョン、ピレックスビジョン 
代理人 木村 浩幸 
代理人 佐久間 剛 
代理人 竹内 裕 
代理人 中熊 眞由美 
代理人 柳田 征史 

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