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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1309810 
異議申立番号 異議2015-900085 
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-02-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-03-13 
確定日 2016-01-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第5724177号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5724177号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5724177号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成24年12月4日に登録出願,同26年11月18日に登録査定,第9類「無線電話機,電話機械器具,テレビ電話,携帯電話機,衛星ナビゲーション装置,全地球測位装置(GPS),ヘッドホン」を指定商品として同年12月5日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標について,商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第33号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人について
申立人は,現在,多数の国に,別掲2のとおりの標章(以下「引用商標」という。)について商標登録(甲2)又は商標登録出願(甲3)を所有し,複数の使用許諾者(以下「使用許諾された者」という。)が現実に使用している。
申立人は,中国広東省のBBKエレクトロニクス有限公司(以下「BBK」という。)から,2006年2月20日に,引用商標及び一般的な書体の標章(以下「oppo商標」という。)に関する多数の国における商標登録及び商標登録出願中の権利を譲渡契約により取得した(甲4)。
BBKは,商標「oppo」を使用するに際して,実際の使用やCI(コーポレートアイデンティティ)を考慮して「oppo」の創作的なデザインを企画し,2005年2月にデザイン会社である広州市千里馬広告有限公司に美的観点から魅力のあるロゴの制作を依頼し,複数回の協議を行ったうえで修正を重ね,引用商標が完成された(甲9)。「oppo」のデザインを検討する過程では,そのうちの一部に本件商標と完全に同一の標章の態様も含まれている(甲10の2,甲30)。
申立人は,引用商標について,世界的に営業を展開することを意図して,漏れがないように,さらに別の国についても商標登録出願を行い,日本についても権利として安定することを企図し,商標登録出願を行い,第9類「バッテリーチャージャー,電池」を指定商品として商標権を取得した(甲12)。
(2)日本における引用商標の使用状況
申立人は,日本における引用商標の使用許諾を行い,本件商標の出願日には既に日本において相当数の商品について使用を行っていた。
申立人は,2008年7月15日に米国カリフォルニア州在のオッポ デジタル インコーポレイテッド(以下「オッポデジタル」という。)との間で使用許諾契約を締結し,使用許諾された者に対し,第2条において日本を含む複数国で使用許諾された者が契約商標を付した製品の推進,宣伝,及び販売を拡大することを許諾している(甲14)。
そして,当該契約を受けて,使用許諾された者は,その関連会社であるオッポデジタルジャパン株式会社(以下「オッポデジタルジャパン」という。)を総輸入元,販売元として使用許諾された者の製品の販売をしている。オッポデジタルジャパンが最初に輸入した引用商標が附された製品,DV981HD(DVDプレーヤー)の発注日は2007年4月12日である(甲15)。そして,その販売金額は,2013年に80万ドル,2014年には190万ドルと順調に増えている。
引用商標が付された商品ブルーレイディスクプレーヤー(青紫色レーザーを用いた大容量光ディスクプレーヤー,以下「使用商品」という。)は,株式会社エミライも販売元として取り扱っており,2012年8月2日,同9月13日にはそのウェブサイトにおいて宣伝されている(甲16,甲17)。
さらに,株式会社ステレオサウンドが発行する月刊誌「ハイヴィ」の2011年11月号,同12月号及び2012年12月号においても申立人の引用商標が付された使用商品が優れた品質の製品であるとの紹介記事が掲載されている(甲18ないし甲20)。
(3)世界における引用商標の使用状況
「oppo」商標が付された商品は,その製造者であるオッポデジタルをオッポグループの頂点として,世界中の多数の国で販売されている。
そして,グループを構成する各社が販売テリトリー内においてオッポデジタルが提供する商品を始めとして,「oppo」商標が付された商品について宣伝販売している。
現在の販売地域は,中国,米国,ロシア,インドネシア,インド,バングラデシュ,ベトナム,タイ,マレーシア,ミャンマー,フィリピン,シンガポール,メキシコ,台湾,及びパキスタンである。2009年から2013年の5年間でこれらの国において総額約15億ドル(現在の為替では,約1800億円)の売り上げを行っている。さらに,世界中における「oppo」商標を付した製品の宣伝には,2013年だけで7千万ドル(現在の為替では84億円)の出費をしている。
取扱商品は,オッポデジタルジャパンのウェブサイトで説明すると,甲第21号証に示したように,使用商品,ヘッドホン,ヘッドホン用のアンプであるが,本件商標の出願日前にはDVDプレーヤーを製造販売していた。つまり,このように数少ない取扱商品で多額の販売実績を持っており,しかもこれらの商品には引用商標が付されているのであるから,当該商標は少なくとも使用商品,ヘッドホンについては「外国における需要者の間に広く認識されている商標」である。
さらに,申立人は,グアンドン オッポ モバイル テレコミュニケーションズ コーポレイション株式会社に対しても,MP3/MP4プレーヤー,スマートフォン等や,将来的に展開される着用インテリジェント装置について,引用商標を商標として使用することを許諾しており,その子会社が少なくとも現在,数多くの国で実際に商標として現実に使用している。
なお,オッポデジタルの使用商品(品番:BDP-95)は,2011年に米国のアブソリュートサウンド誌で今年の製品賞を受賞し,同様に2013年にPCマガジンにおいて読者が選ぶ製品賞を受賞し,品番BDP-103EUTがヨーロッパイメージングアンドサウンド協会によるEISA賞を2013?2014年に受賞した実績がある。
(4)本件商標の権利者について
本件商標権者は,申立人とは何ら関係がない香港籍の法人であるが,2012年12月26日に「HONGKONG OPPO LIMITED」の名称で商業登記を申請し,2013年1月4日付けで登記されたが,この登記された商号について,申立人が不服申立を行った結果,2013年8月5日に現在の出願人名に名称変更された経緯がある(甲22,甲23)。
本件商標の出願当初の出願人は朱 孔チンであったが,譲渡により平成25年2月8日に出願人名義変更届が提出され,「ホンコン オッポ リミテッド」(創設者 朱 孔チン)に変更され,その後さらに,現在の名称に変更された。
なお,当該朱 孔チンも,現在の出願人であるホンコン アリケ リミテッドも,少なくとも国籍の所在する香港において,本件商標をその指定商品のいずれについても使用している事実を確認することはできず,インターネットのウェブサイトを検索しても本件商標が現実に使用されているという事実を確認することはできない。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標と引用商標の態様とは,黒で書されたものと白抜きという違いはあるが,実質的には完全に同一である。しかも,甲第10号証の2に明らかなように,黒地に白抜きの態様は,申立人の引用商標を使用する際の一態様として決定されていたものであり,かつ,従来から広く使用されていた態様である。
引用商標の態様は,申立人が複数の外国において商標権を取得する前に,当初の権利者であるBBKが千里馬広告有限公司に依頼し,そのデザイナーであるフ チ ハン氏が創作したものと同一である。
すなわち,引用商標そのものには著作物性があり,少なくとも著作権的見地からは,これを無断で複製するなどの行為は許されないことは当然である。
そして,この著作物と全く同一の物が第三者をして偶然に重複して創作されるというのは,通常の概念では考えられない。
本件商標は,申立人が正当に所有していた引用商標を,法律的根拠なく無断で借用し,しかも,申立人に引用商標の使用許諾された者が,現実に商標を使用していた商品を指定商品とするものである。
そうすると,本件商標は,「他人の業務に係る商品を表示するものとして外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一の商標」に該当し,これを本件商標権者が使用する場合には,申立人あるいはその使用許諾された者の商品と出所の混同を生じるおそれは極めて高く,「不正の目的」という要件に合致することは明らかである。
なお,出願時の「不正の目的」の有無は出願人の意識の問題であるが,当該判断は客観的にされるべきものであり,「不正の目的」の有無については,以上のとおり,本件商標の態様は申立人が正当に所有する引用商標と完全に一致すること(言い換えれば本件商標態様は,申立人の引用商標の盗用に相当すると判断することができる。),本件商標の出願時には既に申立人の商標は外国において周知であったこと,及び本件商標登録の出願人が変遷した経緯に鑑みると,本件商標の当初出願人である朱 孔チンは,本件商標が他人の創作に係るデザインを施した態様であることを知悉し,あえてこれを無断で,しかも申立人に係る使用許諾された者の業務に係る商品を指定商品として出願したことが明らかである。
まさしく,当初の出願人である朱 孔チンは,商標法第3条第1項柱書に規定されるように,少なくとも出願時には近い将来にこれを使用する意思があったのであるから,その指定商品に関連する他社の製品の存在を知悉していたと考えるのが自然であり,従来から申立人の引用商標が付された商品が香港において広く販売されていたのであるから,これを知らなかったということがむしろ不自然である。
これらの事実に鑑みると,本件商標は,「不正の目的」をもって出願し,登録されたと理解するのが相当である。
本件商標は,申立人,あるいは使用許諾された者である他人の業務に係る商品を表示するものとして外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一商標であって,不正の目的をもって使用をするものであるから,商標法第4条第1項第19号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第10号該当性について
同号については,日本における周知性を要件としており,日本における申立人の引用商標の使用の事実については,既に主張したとおりである。
そして,甲第31号証は,オッポデジタルジャパンのウェブサイトの一部を示したもので,複数の音楽・オーディオ装置の雑誌においてグランプリ金賞,ベストバイ賞,オーディオ銘機賞などの受賞歴を示している。受賞時期については,本件商標の出願日である平成24年(2012年)には遅れているが,これらのような受賞は,市場において過去に需要者の一定の高い評価を受けた製品に対して行われるものであるから,受賞年度が当該出願日より後であるという事実はなんら引用商標の周知性の判断時期を遅くらしめるものではない。
さらに,甲第16号証ないし甲第20号証に明らかなように,本件商標の登録出願日前には,オッポデジタルジャパンが国内で販売していた使用商品(製品番号:BDP-95)が優れた製品であるとのいう月刊誌における紹介記事も存在する。また,株式会社インプレスが経営するウェブサイトの2014年6月19日の記事に紹介されており,少なくとも記事の掲載時には「oppo」商標が付された使用商品が人気を博していたことを客観的に確認することができる(甲32)。
これらの商品は,いわゆるハイレゾ製品であり,一般的に高額商品であるので,需要者層は限られるが,これらの高額商品に興味がある需要者は月刊誌の講評を参考にすることが通常である。
そうすると,日本においても本件商標の登録出願日には,申立人所有の「oppo」商標は,本件商標の指定商品に類似する使用商品について既に周知の地位を獲得していたと理解するのが相当である。
さらに,本件商標の登録出願日前においても,アイティメディア株式会社が運営するウェブサイトにおいて,「oppo」商標が付された使用商品が製品として高く評価されており(甲33の1?5),2011年4月13日の紹介記事(甲33の1)では,「わが国でも昨今急激に人気を伸ばしているブランドだ。」との客観的評価が記載されている。
このように,「oppo」商標が付された商品の歴史は短いが,専門誌や専門ウェブサイトなどで繰り返して高い評価を受けているが,宣伝広告やウェブサイトにおける多数の好評な紹介記事が短期間で商標を周知化することは近年においてしばしば見られるところである。
しかも,インターネットが非常に広範囲に普及し,家庭でも,携帯電話でも検索システムが普通に,かつ簡易に利用できる状態であり,外国のウェブサイトと国内のウェブサイトを何ら区別なく検索することが可能であるから,需要者が,自己の希望する情報を,検索システムを利用して日本に居ながらにして入手することはきわめて容易であり,仮に日本で販売されていない商品ですら,外国のサイトが運営するネット販売を通じて購入することも可能であるから,少なくとも宣伝などの行為については,インターネットを利用すれば国内・外国の差異はないということができる。
そうすると,前記証拠に示したように申立人の引用商標が附された商品は複数国のウェブサイトにおいて宣伝されているのであるから,国内における販売量はともかく,本件商標と同一の引用商標が付された使用商品やヘッドホンなどは既に需要者に周知であったというべきである。
これらの事実に鑑みると,本件商標は,他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって,その商品又はこれらに類似する商品について使用をするものであるから,商標法第4条第1項第10号に該当する。

3 当審の判断
(1)引用商標の周知性について,申立人が提出した証拠及びその主張によれば,以下のとおりである。
ア 申立人は,中国広東省に所在するBBKと平成18年(2006年)2月20日に商標譲渡契約を締結し,BBKが世界70か国又は地域に有する「oppo」商標を取得した(甲4)。
イ 引用商標は,BBKが中国広州市に所在するデザイン会社にロゴの制作を依頼して,2005年3月に作成されたものである(甲9及び甲30)。
そして,申立人は,米国カリフォルニア州に所在するオッポデジタルと2008(平成20)年7月15日にライセンス合意書を締結した(甲14)。
ウ ITMediaのウェブサイトにおいて,オッポデジタルの商品であるユニバーサルプレーヤーに「OPPO」の欧文字が表示され(甲33),オッポデジタルが製造する製品を取り扱う株式会社エミライのウェブサイトにおいて,使用商品に「OPPO」の欧文字が表示されている(甲16及び甲17)。
また,月刊雑誌「HiVi」(2011(平成23)年11月号,同年12月号,2012(同24)年12月号)に,「OPPO BDP-95」,「オッポ BDP-93NuForce Edition」,「オッポ BDP-95」の記載と引用商標が表示された使用商品の写真が掲載されている(甲18ないし甲20)。
エ 上記ウからすれば,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,引用商標が表示されたオッポデジタルの商品は,インターネット等に掲載され紹介されたものであるが,その商品の広告宣伝については,ITMedia及び株式会社エミライのウェブサイトに数回,月刊雑誌「HiVi」に3回掲載されたにすぎない。
そして,申立人は,オッポデジタルジャパンの引用商標が付された商品「ユニバーサルDVDプレーヤー」の販売金額について,2013年には80万ドル,2014年には190万ドルであること,また,「現在の販売地域は,中国,米国,ロシア,インドネシア,インド,バングラデシュ,ベトナム,タイ,マレーシア,ミャンマー,フィリピン,シンガポール,メキシコ,台湾,及びパキスタンである。2009年から2013年の5年間でこれらの国において総額約15億ドル(現在の為替では,約1800億円)の売り上げを行っている。さらに,世界中における当該商標を付した製品の宣伝には,2013年だけで7千万ドル(現在の為替では84億円)の出費をしている。」旨を主張するが,それらを証する書面の提出はない。
したがって,申立人が提出した証拠からは,引用商標が,本件商標の登録録出願時及び登録査定時に,申立人又はオッポデジタルの業務に係る商品を表示するものとして,外国及び我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同項第19号該当性について
本件商標は,別掲1のとおり,デザイン化した「OPPO」の欧文字を黒塗り長方形の中に白抜きで表した構成態様からなり,引用商標は,別掲2のとおり,「OPPO」の欧文字を本件商標と同一の構成態様にデザイン化して表したものであるから,両者は,「OPPO」の欧文字を同じくする類似の商標と認められ,本件商標の指定商品と引用商標が使用される使用商品は,類似の商品である。
しかしながら,前記(1)のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人又はオッポデジタルの業務に係る商品を表示するものとして,我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
そうとすると,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同項第19号該当性の前提を欠くものといわなければならない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当しない。
(3)まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第10号及び同項第19号の規定に違反してされたものでないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)




別掲2(引用標章)





異議決定日 2015-12-22 
出願番号 商願2012-98347(T2012-98347) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W09)
T 1 651・ 25- Y (W09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 光大橋 良成 
特許庁審判長 堀内 仁子
特許庁審判官 田中 亨子
田村 正明
登録日 2014-12-05 
登録番号 商標登録第5724177号(T5724177) 
権利者 ホンコン アリケ リミテッド
商標の称呼 オッポ 
代理人 濱田 俊明 
代理人 河原 純一 
代理人 大槻 聡 

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