ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 |
---|---|
管理番号 | 1308519 |
異議申立番号 | 異議2015-900210 |
総通号数 | 193 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2016-01-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-06-23 |
確定日 | 2015-12-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5752759号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5752759号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5752759号商標(以下「本件商標」という。)は、「MATUSALEM THE SPIRIT OF CUBA LIBRE」の欧文字を横書きしてなり、平成25年8月9日に登録出願、第33類「ラムのコーラ割りスピリッツ(飲料)」を指定商品として、同27年2月24日に登録審決、同年3月27日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、その申立ての理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第76号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)商標法第4条第1項第16号該当性 ア 商標法第4条第1項第16号は、「商標の構成要素とその指定商品等との不実関係(deceptiveness)、すなわち、商標が表す観念と使用商品等とが符合しないために、需要者が誤った商品を購入し又は役務の提供を受けるなどの錯誤を防止するために、商品の品質等について誤認を生ずるおそれのある商標は登録できないとして、需要者の保護を図ったものである」と説明されている(甲4)。 また、過去の裁判例でも、商標法第4条第1項第16号については、「商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標とは、指定商品に係る取引の実情の下で、取引者又は需要者において、当該商標が表示していると通常理解される品質と指定商品が有する品質とが異なるため、商標を付した商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある商標を指すものというべきである」(甲5)、「たとえ商標としての特別顕著性が認められるとしても、その商標の使用により商品の需要者らに商品の誤認混同を生じさせるおそれがあるときは、当該商標は、旧商標法第2条第1項第十一号の規定により登録を受けることができないといわなければならない」(甲6)と説示され、また、「商標中に用いられた語の意味は、商標の使用する者の主観的意図にかかわりなく、取引者・需要者によってどのような意味を有するものとして認識、理解されるかによって決せられるべきである」(甲7)と説示されている。 そうすると、ある商標が商標法第4条第1項第16号に該当するか否かは、需要者等に品質の誤認を生じさせるおそれがあるか否かによるから、被申立人の主観的意図には関わりなく、本件商標は同号に該当するとすべきである。 イ 本件商標は、「MATUSALEM THE SPIRIT OF CUBA LIBRE」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成中の「MATUSALEM」の語は、少なくとも我が国の一般的需要者には理解できないものである。 他方、本件商標の構成中の「CUBA」の語は、我が国において、「キューバ(共和国)」を意味する語として一般的に使用されているものであるから、需要者をして、その商品の生産地が同国であると誤認するおそれがある。特に、キューバがラム酒の産地であることは、我が国でも広く一般に知られており、該ラム酒は、市場において広く流通している(甲8ないし甲31)から、「CUBA」の語をラム酒やそれを使用したアルコール飲料にした場合、一般的な需要者は、これをキューバ産と認識する。 そして、特許庁における審査及び審判では、国名・地名は、産地表示と判断されており(甲32ないし甲45)、裁判においても同様の判断がなされている(甲46ないし甲49)。 したがって、本件商標をキューバ産ではない商品に使用すれば、品質(産地)について不実を表示することとなり、需要者に誤認を生じさせる。 なお、本件商標の構成中の「THE SPIRIT OF」の語は、「○○産の蒸留酒」という意味を容易に感得させるものであるから、本件商標に接する需要者がその商品を「キューバ産」と認識する可能性は極めて高い。 (2)商標法第4条第1項第7号該当性 ア 本件商標は、上記(1)において述べたとおり、その構成中に「CUBA」の語を含むものであって、商品の品質について不実を表示するものである上、国家を挙げてラム酒に関する厳格な基準を設け、品質の向上を図り、「ライト・ラム(Light Rum)の代表」としての名声を獲得しているキューバの産地表示にフリーライドするものである。 なお、「『CUBA』の文字が先ず第一に西インド諸島の『キューバ国』を直感せしめ」、「本願商標全体として『自由キューバのMATUSALEMスピリット』ほどの意味合いを看取するのが自然」であることは、被申立人も自認している(甲76)。 イ 商標法第4条第1項第7号は、過去の審判決例によれば、「その商標の構成自体が矯激、卑猥な文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、その時代に応じた社会通念に従って検討した場合に、当該商標を採択し使用することが社会公共の利益に反し、または社会の一般的道徳観念に反する場合、あるいは他の法律によってその使用が禁止されている商標、若しくは国際信義に反するような商標である場合も含まれるものとみるのが相当」と解されており(甲51)、産地表示を含む商標について、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあるものであるなどと認定した審決等は、多数あり(甲52ないし甲67の1)、かかる判断は、裁判所においても同様になされている(甲67の2)。 ウ キューバ政府は、国際市場において自国産ラムを保護するために、産地保証印を設け(甲68の1ないし甲69の3)、厳格な基準を定めている(甲70の1ないし甲71の2)ところ、本件商標は、上記基準に全く準拠しない商品(被申立人は、キューバ国内にいかなる事業所、倉庫、蒸留酒製造所、発酵所、熟成所も所有又は賃貸しておらず、自己名義で輸出されたキューバ原産の原料又は商品の記録もない。)に、「CUBA」の原産地表示を含む商標を使用するものである。 かかる行為は、国際商取引におけるキューバ産ラム酒の流通秩序を慮ったキューバ政府の方針に反するものであり、不正競争行為の一類型である品質誤認惹起行為(不正競争防止法第2条第1項第13号)にも該当するものであって、罰則(同法第21条)の対象ともなり得る。 (3)むすび 以上のとおり、本件商標は、その構成中にキューバを表す「CUBA」の語を含むから、これをキューバ産の指定商品以外の指定商品について使用した場合には、取引者及び需要者が、その商品があたかもキューバ産の商品であるかのように、産地について誤認するおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。 また、本件商標は、不実を表示することで国際信義にも反するから、商標法第4条第1項第7号に該当する。 したがって、本件商標は、商標法第43条の2第1号により、その登録を取り消されるべきである。 3 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第16号該当性について ア 本件商標は、前記1のとおり、「MATUSALEM THE SPIRIT OF CUBA LIBRE」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成中の「MATUSALEM」の欧文字は、辞書類に載録された既成の語ではなく、特定の意味合いを想起させる語とはいえないから、造語の一種として看取、把握されるものとみるのが相当である。 また、本件商標の構成中、「SPIRIT」の欧文字は、本件商標の指定商品との関係においては、「蒸留酒(スピリッツ)」の意味を、同じく、「CUBA LIBRE」の欧文字は、「ラム酒とコーラで作った飲み物」の意味を、それぞれ有する英語である(「小学館ランダムハウス英和大辞典」、株式会社小学館発行)。 イ 次に示すインターネット上の情報においては、「CUBA LIBRE」の英語の読みを片仮名表記した「キューバリブレ」の語が、「ラム酒とコーラで作った飲み物」の意味を表すものとして、一般に広く用いられている。 (ア)「菜菜 梅田店」に係るドリンクメニュー中に、「キューバリブレ(ラム+コーラ)」の記載がある(http://tabelog.com/osaka/A2701/A270101/27082515/dtlmenu/drink/)。 (イ)「魔法の国のアリス」に係るドリンクメニュー中に、「キューバリブレ ラム+コーラ」の記載がある(http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13119220/dtlmenu/drink/)。 (ウ)「マトリ」に係るドリンクメニュー中に、「キューバリブレ(ラム・コーラ)」の記載がある(http://tabelog.com/tokyo/A1306/A130602/13138386/dtlmenu/drink/)。 (エ)「デリー 銀座店」に係るドリンクメニュー中に、「キューバリブレ(ラム&コーク)」の記載がある(http://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13002616/dtlmenu/drink/)。 (オ)「BAR & Dining Courage Villa」に係るドリンクメニュー中に、「キューバリブレ(ラム+コーラ)」の記載がある(http://tabelog.com/tokyo/A1301/A130102/13185054/dtlmenu/drink/)。 ウ 上記ア及びイによれば、本件商標は、これに接する者をして、特定の意味を有しない造語である「MATUSALEM」と、本件商標の指定商品である「ラムのコーラ割りスピリッツ(飲料)」程の意味合いを想起させる「THE SPIRIT OF CUBA LIBRE」との2語を組み合わせてなるものとみるのが相当である。 そうすると、本件商標は、その構成中に「CUBA」の欧文字を含んでなるものであるとしても、該欧文字部分が商品の産地(キューバ産であること)を表したものと認識されるとはいい難い。 してみれば、本件商標をその指定商品について使用しても、その商品の品質について誤認を生ずるおそれはないものと認められるから、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するものではない。 (2)商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は、上記(1)のとおり、たとえ、その構成中に「CUBA」の欧文字を含んでいても、「THE SPIRIT OF CUBA LIBRE」の語をもって「ラムのコーラ割りスピリッツ(飲料)」程の意味合いを想起させるのであって、「CUBA」の欧文字部分が商品の産地表示として認識されることはないものである。 そうすると、本件商標の構成中の「CUBA」の欧文字部分が商品の産地(キューバ産であること)を表したものと認識されることを前提として、本件商標が、商品の品質について不実を表示するものである上、国家を挙げてラム酒に関する厳格な基準を設け、品質の向上を図り、「ライト・ラム(Light Rum)の代表」としての名声を獲得しているキューバの産地表示にフリーライドするものであるとする申立人の主張は、その前提において失当であり、採用することができない。 その他、本件商標をその指定商品に使用することが、社会公共の利益、一般的道徳観念に反する、あるいは、国際信義に反するなどと認めるに足る事実も見いだせない。 してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。 (3)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第16号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものとする。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2015-12-10 |
出願番号 | 商願2013-62271(T2013-62271) |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W33)
T 1 651・ 272- Y (W33) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 清川 恵子 |
特許庁審判長 |
林 栄二 |
特許庁審判官 |
田中 敬規 高橋 幸志 |
登録日 | 2015-03-27 |
登録番号 | 商標登録第5752759号(T5752759) |
権利者 | 1872 ホールディングス,ブイ.オー.エフ. |
商標の称呼 | マツサレムザスピリットオブキューバリブレ、マツサレム、ザスピリットオブキューバリブレ、ザスピリットオブキューバリーブル、スピリットオブキューバリブレ、スピリットオブキューバリーブル、キューバリブレ、キューバリーブル、リブレ、リーブル |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 佐藤 俊司 |
代理人 | 佐藤 俊司 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 池田 万美 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 池田 万美 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |