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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1308512 |
異議申立番号 | 異議2015-900032 |
総通号数 | 193 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2016-01-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-01-23 |
確定日 | 2015-11-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5713599号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5713599号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5713599号商標(以下「本件商標」という。)は,「DEOX」の欧文字を標準文字で表してなり,平成26年6月24日に登録出願,同年10月10日に登録査定,第25類「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,同月24日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は,以下の3件であり,いずれも現に有効に存続しているものである。 1 登録第2623424号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成4年2月20日に登録出願,第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品および附属品」を指定商品として,同6年2月28日に設定登録され,その後,同16年9月22日に,第25類「履物」,並びに,第14類,第21類及び第26類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がなされたものである。 2 国際登録第790352号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,2002年1月22日にItalyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,同年(平成14年)7月16日に国際商標登録出願,第25類「Clothing, overcoats, jackets, vests, trousers, coats, skirts, shirts, tracksuits, hosiery, bathing suits, underwear, neckties, scarves, hats, berets, gloves, footwear, footwear parts, silks, stockings, socks, belts, dressing gowns.」及び第18類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成15年12月12日に設定登録されたものである。 3 国際登録第837071号商標(以下「引用商標3」という。)は,「GEOX」の欧文字を横書きしてなり,2004年2月23日にItalyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,同年(平成16年)6月7日に国際商標登録出願,第25類「Clothing, garters, sock suspenders, suspenders (braces), waistbands, belts for clothing, footwear including work shoes, work boots and footwear parts, masquerade costumes, clothes for sports, shoes and boots for sports and horse-riding boots.」,並びに,第3類,第9類,第10類,第14類,第16類,第18類,第20類,第21類,第24類,第26類,第28類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成18年12月15日に設定登録されたものである。 以下,引用商標1ないし引用商標3をまとめて「引用商標」という場合がある。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号,同項第15号,同項第19号又は同項第7号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)両商標の類否について 本件商標と,引用商標の「GEOX」とを比較した場合,相違点は,語頭の1文字「D」,「G」のみであり,構成全体として近似した印象を看者に与える。 甲第3号証に示すように,「●EOX」なる語は,4文字と少ない文字構成ながら,申立人以外の者によって,本件商標に係る指定商品の業界においてありふれて採択されていないことから,文字数(4文字),及び,そのうち3文字「EOX」の一致をもって,一般消費者を含む指定商品の需要者が両商標に係る商品の出所を誤認混同する蓋然性は,相当程度高いと推測することができる。 よって,両商標は,外観上,相紛らわしいというべきである。 次いで,本件商標は,通常の英語風の発音方法に従えば,「デオックス」と発音される。 他方,引用商標からは,「ゲオックス」,「ジェ(ジ)オックス」などの称呼が生じ得る。 両商標から生じ得る称呼を比較した場合,構成音数は,5音と一致し,そのうち4音「オックス」を共通にしている。すなわち,相違点は,語頭の1音のみである。 引用商標が「ゲオックス」と称呼される場合,語頭音「ゲ」と「デ」とは,母音が一致し,かつ,子音は,共に有声破裂音である点で調音方法が共通する。また,調音位置は,舌後部を軟口蓋に接して発音するか,舌先部を前硬口蓋に接して発音するかの微差にすぎない。 また,引用商標が「ジェ(ジ)オックス」と称呼される場合,語頭音「ジェ(ジ)」と「デ」とは,母音が一致するか,あるいはごく近似しており,かつ,子音は,舌先部を前硬口蓋に寄せるか,接して発音する有声音である点で調音位置・方法が近似する。 特に,両称呼ともに,第2音「オ」が促音「ッ」を伴っていることから,むしろ第2音「オ」にアクセントが置かれる。その結果,語頭音の相違とはいえども,その相違が全体の語調,語感に影響を与えないおそれがあり,必ずしも明瞭に聴別されるとは限らない。 よって,一般消費者を含む本件商標に係る指定商品の需要者が両称呼を耳にしたとき,聞き誤るおそれがある。 以上のことから,両商標は,称呼上,相紛らわしいというべきである。 (2)両商標に係る指定商品の類否について 本件商標に係る指定商品のいずれもが,引用商標に係る指定商品のいずれかと同一又は類似するものであることは自明である。 (3)小括 以上のことから,本件商標は,引用商標との関係で,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知・著名性について 申立人は,1995年に創業者であるマリオ・モレッティ・ポレガートによってイタリア国にて設立された世界有数のアパレルブランドである。特に,申立人の製造する靴類は,そのゴム底がミクロの通気孔を有しており,これが,一定の通気性を有しながら高い防水性を有する点で高い注目を受け,いわゆる「呼吸する靴」のキャッチフレーズで全世界において高い名声を獲得し,人気を博している。 申立人は,代表的出所識別標識(ハウスマーク)として,引用商標を,自らの商品に,世界中で長年に亘って継続的に使用している(甲5及び甲6)。 申立人は,前身であるPOLスカルペ・スポルティーバ・エス・アール・エル当時の1993年に,日本市場向けに商品を販売して以来,これまで継続的に商品を広告,販売してきた。 申立人の商品の日本市場への3つの販売ルートにおける売上高を合計すると,2006年から2014年までの間に,合計で約168万足,約154億円,多い年で,年間約23万足,約21億円を売上げた(甲7及び甲8)。 申立人の商品の日本市場における広告実績は,甲第9号証及び甲第10号証のとおりである。 申立人は,2008年から2013年に至るまで,総計約4億5000万円の広告費を支出しており,申立人自ら,又は子会社である「ジェオックスジャパン株式会社」を通じて,日本において大規模な広告活動を行ってきた。 甲第11号証は,申立人の商品が採り上げられた新聞記事情報,甲第12号証は,「レッドブル・レーシング」の公式ウェブサイトにおけるスポンサー紹介ページ,甲第13号証は,「レッドブル・レーシング」を説明するウェブサイト,甲第14号証は,日本グランプリ(2011ないし2014年開催)で撮影された写真である。 以上のように,引用商標は,申立人の業務に係る商品の出所を示す,代表的な商標として広く使用されており,その販売規模,広告規模を考慮すれば,少なくとも我が国のアパレル関連商品の需要者・取引者の間で,引用商標が申立人の業務に係る商品を示す表示として,広く知られていることは明らかである。 よって,引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,遅くとも本件商標の出願日である平成26年6月24日には,関連する需要者及び取引者の間で周知・著名に至っていたというべきであり,その周知・著名性は,現在に至るまで維持されている。 (2)引用商標が創造標章ないしハウスマークであるかについて 引用商標は,当該業界において,ありふれて採択されていない,申立人によって独自に創作,採択された商標であって,また,申立人の代表的出所識別標識,すなわち,ハウスマークとして長年に亘り使用されているものである。 (3)商品間の関連性について 引用商標は,アパレル商品,特に,靴類について使用されている。 本件商標に係る指定商品は,「履物」や「運動用特殊靴」を含むほか,「被服」や「運動用特殊衣服」についても,いずれもアパレルメーカーが取り扱う商品である。 事実,申立人は,靴類以外にも,ジャケットなどの被服類を販売している(甲5の2)。 (4)両商標の類似度について 本件商標と,引用商標とは,称呼,外観ともに相紛らわしく,相当程度高い類似度を有する。 特に,本件商標の構成中の「DEO」は,「deodorant」の略語として商標の構成中にしばしば用いられることがあり,その意味合いである「防臭」が,通気性のある,足のムレを防ぐ靴として高い評価を受けている申立人の商品の特徴との関連性を示唆する可能性がある。 (5)小括 以上のとおり,本件商標をその指定商品に使用した場合,これに接した需要者及び取引者は,申立人又は同人と資本関係又は業務提携関係を有する者の業務に係る商品であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれは十分にあるというべきである。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 3 商標法第4条第1項第19号該当性について (1)引用商標の周知・著名性及び顧客吸引力について 甲第15号証の1ないし6は,申立人が2009年から2014年まで発行したアニュアルレポート(年次報告書)の抜粋である。 甲第15号証の6(2014年度版)第4頁によれば,2014年現在における全世界の店舗数は,1,225店舗に達しており,そのうち477店舗が直営店である。 甲第15号証の3(2011年度版)第7頁には,2004年から2011年に至るまでの店舗数の推移を示す棒グラフが掲載されており,申立人の全世界における店舗数は,十数年来,飛躍的に増加してきたことがわかる。 申立人は,世界各国において,引用商標を用いて,これまで甚大な数量の商品を販売し,かつ,広告活動を行ってきた。 すなわち,申立人の引用商標が,同人の業務に係る商品を示すものとして,国内外における需要者及び取引者の間で,広く知られているということは容易に推測可能である。 (2)引用商標と本件商標の類似性について 本件商標と引用商標とは,その外観,称呼において相紛れるおそれがあり,よって,互いに類似するというべきである。 (3)不正の目的について 本件商標権者は,その事業内容をアウトドア用品ないしアウトドアウェア等の製造販売とする法人であり,取扱商品には,申立人の主力商品である靴類も含まれる(甲16)。特に,本件商標権者の取り扱うシューズブランド「OLANG」は,申立人と同じイタリア由来のブランドであり,靴底が防水透湿素材を備えていることを特徴としている。 申立人は,日本を含む世界規模でビジネスを展開するアパレルブランドであり,同様の商品を取り扱う本件商標権者は,引用商標が申立人によって長年に亘り大規模に使用されており,高い名声を博していることは知悉していたはずである。すなわち,本件商標権者は,申立人に何ら依拠することなく,偶然に「DEOX」の文字を採択したとは考えられない。 よって,本件商標権者は,本件商標の出願時点において,世界規模で周知著名な引用商標の存在を知りながら,その顧客吸引力にフリーライドする目的で,引用商標と酷似する本件商標を登録出願しようとしたものである。 (4)小括 以上のとおり,本件商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている引用商標と類似し,また,不正の目的をもって使用するものであるから,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。 4 商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標権者は,引用商標が,申立人の業務に係る商品を示す商標として使用されていることを知りながら,それと酷似する本件商標を,引用商標の有する顧客吸引力にフリーライドする目的で,登録出願したものと推測することができる。かかる本件商標の独占使用を認めることは,社会公共の秩序を著しく混乱させるおそれがあり,取引秩序の維持を目的とする商標法の予定するところではなく,保護に値しないというべきである。 また,かかる使用によって,本件商標権者と申立人との関係が誤認され,申立人のこれまで築き上げてきた名声・信用が希釈化するおそれがあるばかりでなく,また,誤認した需要者及び取引者にまで損害が生じる可能性も否定できない。 以上のとおり,本件商標の登録出願は,その経緯において社会的相当性を欠くものであって,また,本件商標の指定商品についての本件商標の使用は,社会公共の利益に反するというべきである。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知著名性について,申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,以下のとおりである。 (1)外国における周知性について 申立人は,1995年にイタリア国にて設立されたアパレルメーカーであり,世界における申立人の店舗数は,1,225店舗であること,売上高は,例えば,2009年は約1125億円,2014年は約1071億円であること,広告費用は,例えば,2009年は56億5千万円,2014年は約40億7千万円であること,及び申立人の主な営業活動は,イタリア,欧州を中心とすることが窺える(甲15(枝番を含む。))。 また,申立人に係る「GEOX/BREATHES」(引用商標2)の欧文字又は「GEOX」の文字(引用商標3)を表示した2011年ないし2014年の秋冬用の英語による商品カタログには,スニーカー,婦人靴,紳士靴,アパレル,かばん等の商品情報及び商品写真が掲載された(甲6の1ないし7,9ないし12)。 しかしながら,提出された証拠によっては,引用商標2及び3に係る各商品の市場のおけるシェア,上記商品カタログの頒布の状況,その他の広告宣伝の方法,回数及び内容等,雑誌,新聞,インターネットにおける記事掲載の回数及び内容等を具体的に把握することができないものであるから,引用商標2及び3が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,外国の需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができない。 (2)我が国における周知性について ア 申立人の主張によれば,同人は,その前身であるPOLスカルペ・スポルティーバ・エス・アール・エル当時の1993年に,日本市場向けに商品の販売を開始した。 イ 申立人は,引用商標2及び3が使用された申立人の商品「婦人靴,紳士靴,スニーカー,子供靴,幼児用靴」について,我が国で発行されている女性向け雑誌,男性向け雑誌,経済誌,週刊誌,月刊誌及び日刊新聞等に掲載される等の宣伝広告を行った。 (ア)本件商標の登録出願前である,2006年4月以降2013年10月にかけて,主に引用商標2又は3を使用して,商品「靴類」について,「BAILA」,「FIGARO JAPON」,「LEE」,「日経ビジネス」,「日経ビジネススタイルマガジン」,「VERY」,「ちびVERY」,「Oggi」,「AERA」,「月刊シー」,「GOETHE」,「Grazia」,「家庭画報」,「LEON」,「MAINICHI STYLE EDITION」,「MEN’S X」,「pen」,「saita」,「STORY」,「日経マガジン」,「日経スタイルマガジン」,「ZINO」,「GOETHE」,「Looks」,「日経ヴェリタス」,「GINGER」,「mono」の各種の雑誌,及び,「日本経済新聞」,「朝日新聞」,「読売新聞」の各種新聞において宣伝広告を行った(甲9(枝番号を含む。))。 (イ)申立人は,2013年春から2014年秋にかけて,主に引用商標2又は3を使用して,三越伊勢丹,松坂屋名古屋店,大阪高島屋,そごう横浜店,伊勢丹,銀座三越,小田急新宿店,岩田屋の国内百貨店において,商品「婦人靴」を中心にした「靴類」の販売会等を行った(甲10(枝番号を含む。))。 (ウ)2003年11月19日から2014年6月17日の約10年半の間に発行された,全国紙(読売新聞及び朝日新聞),地方紙(中国新聞,沖縄タイムス,西日本新聞,岩手日報及び東京新聞),専門誌(NNAアジア経済情報,日刊工業新聞,繊研新聞及び時事通信アジアビジネス情報),雑誌(プレジデント)に,「GEOX(ジオックス)」,「GEOX」,「GEOX(ジェオックス)」,「ジェオックス」と記載された申立人の商品「靴類」について,計19回の紹介記事が掲載された(甲11)。 ウ 申立人のウェブサイト(日本語版)には,引用商標2が表示された,スニーカー,婦人靴,紳士靴,アパレル等の商品の情報が掲載され(甲5),また,引用商標3が表示された2014年ないし2015年の秋冬用の女性向けの商品カタログには,靴類の商品写真及びその価格が掲載され,その最終頁には,「SHOP LIST」として,「直営店」8店舗,「百貨店」15店舗の情報が掲載され(甲6の8),2015年の春夏用の女性向けの商品カタログには,靴類の商品写真及びその価格が掲載され,その最終頁には,「SHOP LIST」として,「直営店」9店舗,「百貨店」14店舗の情報が掲載され(甲6の13),申立人の直営店等には,引用商標3が表示されている(甲7)。 しかしながら,我が国向けのものといえる商品カタログと確認できるものは,甲第6号証の8及び同号証の13の2件であり,これらのカタログの作成日,配布地域,配布部数が明らかではない。 エ 申立人は,2006年から2014年までの間に,日本市場向け,合計約168万足,約154億円,多い年で,年間約23万足,約21億円を売上げたと主張するが,約9年間の売上高における約154億円は,「靴類」の商品の取引全体の売上としては決して高いものということができない。 また,申立人は,2008年から2013年に至るまで,総計約4億5000万円の広告費を支出し,広告活動を行ったと主張するが,これを裏付ける証拠の提出はない。 オ 以上からすれば,引用商標2及び3が使用された申立人の商品「婦人靴,紳士靴,スニーカー,子供靴,幼児用靴」は,我が国で発行されている女性向け雑誌,男性向け雑誌,経済誌,週刊誌,月刊誌及び日刊新聞等において,2006年春頃から2013年秋にかけて継続して掲載され,また,主要な百貨店において,商品「婦人靴」を中心にした「靴類」の販売会が行われたものである。 しかしながら,申立人の商品を取り扱う店は,全国で23店舗にすぎず,百貨店における販売は,2013年及び2014年のみである。また,申立人の売上高は決して高いものということができないものであって,広告費の支出については,これを裏付ける証拠の提出がないものであるから,引用商標2及び3が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,一定程度知られていたものと認められるとしても,申立人のウェブサイト,上記雑誌,新聞等の広告宣伝の事実によっては,申立人の業務に係る商品「靴類」を表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものということはできない。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は,「DEOX」の欧文字を標準文字で表してなり,これからは「デオックス」の称呼を生ずるものである。 そして,該文字は,特定の語義を有しない一種の造語といえるものであるから,本件商標は,特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標1は,別掲1のとおり,「GEOX」の欧文字を図案化し黒い縁取りを施して一体的に表した構成からなり,引用商標2は,別掲2のとおり,上段に黒塗りの長方形に「GEOX」の欧文字を白抜きで表し,その下段に「BREATHES」の欧文字を表した構成からなり,引用商標3は,「GEOX」の欧文字を表してなるものである。 そして,引用商標1及び3,並びに,引用商標2の構成中の「GEOX」の欧文字からは,「世代。また,同世代の人々。」の意味を有する「generation」の英語が「ジェネレーション」と発音され,「一般の,全般の」の意味を有する「general」の英語が「ジェネラル」と発音されること等からすれば,「ジェオックス」の称呼を生じ,また,「地質学」の意味を有する「geology」の英語が「ジオロギー」と発音されること等からすれば,「ジオックス」の称呼をも生ずるものといえる。 引用商標2は,「GEOX」及び「BREATHES」の構成各文字から,「ジェオックスブレス」又は「ジオックスブレス」の称呼を生ずるものである。 また,「GEOX」の文字は,特定の語義を有しない一種の造語といえるものであるから,引用商標は,特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標との類否について検討するに,外観においては,本件商標は,「DEOX」の欧文字を標準文字で表してなるのに対し,引用商標1は,「GEOX」の欧文字を図案化し黒い縁取りを施して表した構成からなり,また,引用商標2は,黒塗りの長方形に白抜きで「GEOX」の欧文字を表し,その下段に「BREATHES」の欧文字を表した構成からなるものであるから,本件商標と引用商標1及び2とは,構成文字及び態様において相違し,外観上,相紛れるおそれはない。 そして,本件商標と引用商標3とは,語頭部分において「D」の欧文字と「G」の欧文字という顕著な差があり,両商標が,共に4文字という短い文字数からなる構成においては,かかる差異により,外観上,十分に区別できるものである。 次に,称呼においては,本件商標から生ずる「デオックス」の称呼と,引用商標から生ずる「ジェオックス」又は「ジオックス」の各称呼とは,語頭部分において,「デ」の音と,「ジェ」又は「ジ」の音の差異を有するものであるから,語調,語感が異なり,十分に聴別できるものである。 また,本件商標から生ずる「デオックス」の称呼と,引用商標2から生ずる「ジェオックスブレス」又は「ジオックスブレス」の称呼とは,その構成音及び構成音数に明らかな差異を有するものであるから,判然と聴別できるものである。 さらに,観念においては,本件商標と引用商標は,いずれも特定の観念を生じないものであるから,観念においては,比較することができない。 してみれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれからみても相紛れるおそれはないから,非類似の商標というべきである。 なお,申立人は,引用商標からは「ゲオックス」の称呼が生じ得る旨主張する。 そこで,本件商標から生ずる「デオックス」の称呼と,引用商標から生ずる「ゲオックス」の称呼とを比較するに,両称呼は,舌尖を上前歯のもとに密着して発音される「デ」の音と,後舌面を軟口蓋に接して発音される「ゲ」の音との差異にすぎず,比較的近似するものといえるが,両称呼が,共に4音節という短い音数であって,該差異が,称呼における識別上,重要な語頭部分であることからすれば,これらの差異が,称呼に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず,互いに聞き誤られるおそれはないものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号及び同項第19号該当性について 引用商標2及び3は,前記1のとおり,申立人の業務に係る商品「靴類」を表すものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国及び外国の取引者,需要者の間に広く知られていたものということができず,本件商標と引用商標とは,前記2(3)に記載のとおり,非類似の商標というべきであるから,本件商標は,引用商標とは別異の商標といえる。 そうとすれば,本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても,これに接する需要者が,申立人又は同人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかと誤認し,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。 また,申立人の提出に係る全証拠を勘案しても,本件商標権者が,本件商標の出願時点において引用商標の顧客吸引力にフリーライドするなどの不正の目的をもって本件商標を使用すると認めるに足る具体的事実を見いだすことができない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)商標法第4条第1項第7号でいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,(a)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,(c)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである(知的財産高等裁判所,平成17年(行ケ)第10349号)。 (2)これを本件についてみると,本件商標は,「DEOX」の文字を標準文字で表してなるものであるから,前記(a)に該当しないものであり,(b)ないし(d)に該当するものとすべき事情も見当たらない。 申立人は,「本件商標権者は,引用商標が,申立人の業務に係る商品を示す商標として使用されていることを知りながら,それと酷似する本件商標を,引用商標の有する顧客吸引力にフリーライドする目的で,登録出願したものと推測できる。かかる本件商標の独占使用を認めることは,社会公共の秩序を著しく混乱させるおそれがある」旨主張している。 しかしながら,引用商標は,前記1に記載のとおり,申立人の業務に係る商品「靴類」を表示するものとして,我が国の取引者,需要者の間に広く知られていたものということができず,本件商標と引用商標とは,前記2のとおり,非類似であって,さらに,申立人が提出した全証拠を勘案しても,本件商標権者が,引用商標の使用を知りながら,その顧客吸引力にフリーライドする目的で本件商標を登録出願したこと,その他に,本件商標をその指定商品について使用することが,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものとすべき具体的事情を示す証拠は見当たらない。 その他,本件商標が公序良俗に反するものというべき事情もない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。 5 まとめ 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号,同項第15号,同項第19号及び同項第7号に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項に基づき,維持すべきものである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 (引用商標1) 別掲2 (引用商標2) |
異議決定日 | 2015-11-18 |
出願番号 | 商願2014-52399(T2014-52399) |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W25)
T 1 651・ 22- Y (W25) T 1 651・ 262- Y (W25) T 1 651・ 222- Y (W25) T 1 651・ 263- Y (W25) T 1 651・ 271- Y (W25) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 齋藤 貴博 |
特許庁審判長 |
堀内 仁子 |
特許庁審判官 |
田村 正明 田中 亨子 |
登録日 | 2014-10-24 |
登録番号 | 商標登録第5713599号(T5713599) |
権利者 | 株式会社ロゴスコーポレーション |
商標の称呼 | デオックス |
代理人 | 鮫島 睦 |
代理人 | 大西 正夫 |
代理人 | 勝見 元博 |