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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2015900128 審決 商標

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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W03
審判 一部申立て  登録を維持 W03
審判 一部申立て  登録を維持 W03
審判 一部申立て  登録を維持 W03
管理番号 1306634 
異議申立番号 異議2015-900039 
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-01-29 
確定日 2015-09-19 
異議申立件数
事件の表示 登録第5714536号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5714536号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5714536号商標(以下「本件商標」という。)は、「GUMPEACE」の欧文字と「ガムピース」の片仮名を二段に横書きしてなり、平成26年5月26日に登録出願、第3類「口臭用消臭剤,動物用防臭剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料」を指定商品として、同年9月10日に登録査定、同年10月31日に設定登録されたものである。

第2 申立人らが引用する商標
申立人ら(本件登録異議申立人の「サンスター株式会社」と「サンスター スイス エスエー」の双方をいう。以下同じ。そのうち、本件登録異議申立人「サンスター株式会社」を以下「申立人サンスター」、「サンスター スイス エスエー」を以下「申立人サンスタースイス」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の8件の登録商標(以下、これら商標をまとめて「引用商標」という。)であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第4908848号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
登録出願日:平成15年7月31日
設定登録日:平成17年11月18日
指定商品 :第3類、第10類、第29類及び第32類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
2 登録第5201307号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成20年6月12日
設定登録日:平成21年1月30日
指定商品 :第3類、第5類、第10類、第21類及び第29類に属する商標登録原簿に記載の商品
3 登録第5308710号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:平成21年7月3日
設定登録日:平成22年3月12日
指定商品 :第3類、第5類、第10類、第21類及び第29類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
4 登録第5477022号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲4とおり
登録出願日:平成23年4月21日
設定登録日:平成24年3月9日
指定商品 :第3類及び第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
5 登録第5493994号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲5のとおり
登録出願日:平成22年7月26日
設定登録日:平成24年5月18日
指定商品 :第3類、第5類、第10類、第21類及び第29類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
6 登録第2234175号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲6のとおり
登録出願日:昭和63年2月3日
設定登録日:平成2年5月31日
書換登録日:平成22年10月27日
指定商品 :第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
7 登録第2234176号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:別掲7のとおり
登録出願日:昭和63年2月3日
設定登録日:平成2年5月31日
書換登録日:平成22年10月27日
指定商品 :第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
8 登録第5085072号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
登録出願日:平成18年2月20日
設定登録日:平成19年10月19日
指定商品 :第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品

第3 登録異議の申立ての理由
申立人らは、本件商標について、商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その指定商品中、第3類「口臭用消臭剤,歯磨き」についての登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第34号証(枝番を含む。ただし、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)及び参考資料1ないし7を提出した。
1 申立人らについて
申立人である申立人サンスタースイス及び申立人サンスターは、いずれもサンスターグループに属する企業である。
申立人サンスターは、1989年に、当時、引用商標1等の商標権者であった米国法人「John O. Butler Company」(現Sunstar Americas, Inc.)から独占的通常実施権を許諾され、「G・U・M HOME DENTIST SERIES/ガム・ホームデンティストシリーズ」として、歯周病予防を目的とした歯磨き等のオーラルケア製品の製造販売を開始して以来、現在に至るまで、我が国において、引用商標に係る「G・U・M」及び「ガム」商標を付した歯磨き、洗口液、歯ブラシ等各種オーラルケア製品(以下「G・U・M製品」という。)を製造販売している。
2 引用商標の周知・著名性について
(1)広告宣伝活動
ア 新聞広告
申立人サンスターは、定期的に全国紙(読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日経新聞)、地方紙(徳島新聞、河北新報、西日本新聞、中国新聞、北海道新聞等)並びにスポーツ紙(スポーツ報知)に「G・U・M製品」に関する広告を掲載している(甲6)。
イ 雑誌広告
申立人サンスターは、定期的に、女性誌、経済誌、医療関係誌等、様々なジャンルの雑誌に「G・U・M製品」に関する広告を掲載している。2010年ないし2014年の間に、セブン&アイ出版発行の「saita /咲いた」(甲7)、株式会社ダイヤモンド・フリードマン社発行の「Chain Store Age」(甲8)、生活協同組合コープこうべ発行の「CO・OP ステーション」(甲9)、歯科衛生士を対象とした医歯薬出版株式会社発行の「デンタルハイジーン」(甲10)、株式会社日経BP発行の「日経ヘルス」(甲11)及び祥伝社発行の「からだにいいこと」(甲12)の各雑誌に広告を掲載した。
ウ テレビCM
申立人サンスターは、定期的に、各種テレビ番組にて、「G・U・M製品」に関するテレビCMを放送している。テレビCMにおいては、「G・U・M」は「ガム」と発音され、「G・U・M製品」は「ガム製品」として視聴者に強い印象を与えている(甲13)。
エ 広告出稿量及び広告費用について
2006年ないし2012年までの間に、申立人サンスターの宣伝広告を主に担当している広告代理店「株式会社マッキャンエリクソン」が出稿を担当したテレビ、ラジオ、雑誌、新聞の各広告について、テレビについてはGRP(「Gross Rating Point」(延べ視聴率)の略)を、ラジオについては放送したコマーシャルの秒数を、雑誌については件数(雑誌数)を、新聞については段数を、それぞれ証明している該会社の代表取締役社長による、広告出稿量に関する証明書(写)を提出する(甲14)。
テレビ広告に関する1GPRあたりの単価は、在京キー局でおよそ10万円といわれているところ、2006年ないし2012年までのGRPの数値から推測される、申立人サンスターのテレビCMに関する各年の広告費用は、2006年(13,968.7GRP、13億9687万円)、2007年(17,680GRP、17億6800万円)、2008年(23,298.4GRP、23億2984万円)、2009年(17,044.8GRP、17億448万円)、2010年(14,904.1GRP、14億9041万円)、2011年(24,813GRP、24億8130万円)及び2012年(21,305.8GRP、21億3058万円)であり、これらの数値から明らかなとおり、申立人サンスターは、テレビCMをはじめとする「G・U・M製品」の広告宣伝に多額の費用を投下してきた。
オ 上記アないしエのとおり、申立人サンスターは、永年にわたり多額の宣伝広告費を投じて、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞等の媒体で、コンスタントに「G・U・M製品」の宣伝広告を行ってきた。このような永年の宣伝広告と、「G・U・M製品」の高い品質から、申立人サンスターが引用商標を付して展開しているオーラルケア製品は、取引者、需要者の支持を集め、当該分野では有数の市場シェアを誇るブランドとなっている。その結果、引用商標は、取引者、需要者の間に広く知られた周知・著名な商標となっている。
(2)商品の販売実績
「G・U・M製品」の売上は、発売以来、年々増加しており、1989年の発売から7年後の1996年度には売上高100億円を突破、2010年度には200億円を突破し、2013年度の売上は237億円を超えた。直近6年間の販売実績は、2008年度(199億9千万円)、2009年度(196億7千万円)、2010年度(205億5千万円)、2011年度(221億5千万円)、2012年度(226億6千万円)及び2013年度(237億9千万円)である(甲17)。
このような販売実績からも明らかなとおり、「G・U・M製品」は、我が国需要者に高く支持されてきた。
(3)市場占有率
ア 歯磨き(デンタルペースト)
歯磨きの市場規模は、2012年で約711億円(販売額)であり、このうち歯周病予防を謳った歯磨きの市場規模は、2012年で約238億円であるところ、申立人サンスターの「G・U・M」ブランドの歯磨きの2012年の販売実績は61億円(甲18)であるから、申立人サンスターは歯周病予防の歯磨きに関する市場においては、約25%(4分の1)のシェアを有していた。さらに、2013年及び2014年(見込)の、歯周病予防を目的とした歯磨きにおける「G・U・M」のブランドシェアは、2013年(25.7%、第1位)、2014年(見込)(24.7%、第1位)であり、両年とも、シェア約13%台の第2位を大きく引き離している(甲19)。また、申立人サンスターの「G・U・M」ブランドは、「『ガム』(サンスター)は歯周病予防訴求の代表ブランドであり(以下、省略)」(甲18)、「歯周病予防歯磨の代表的なブランドとして流通および生活者からの認知度も高いサンスターの『GUM』がトップシェアを維持しており(以下、省略)」(甲19)等と紹介されている。
加えて、歯磨き全体の中の申立人サンスターに係る「G・U・M」ブランドのシェアは、2011年(8.2%、第4位)、2012年(8.6%、第4位)、2013年(9.5%、第3位)及び2014年(見込)(9.3%、第3位)である(甲18及び甲19)。
このように、「歯周病予防」に限定しない「歯磨き」全体の市場でも、申立人サンスターの「G・U・M」ブランドの歯磨きは、10%近いシェアを有しており、全ての歯磨きの中で3番目に売れている歯磨きである。
イ 歯ブラシ
2011年ないし2014年(見込)の「G・U・M」ブランドの歯ブラシのシェアは、2011年(14%、第1位)、2012年(14%、第2位)、2013年(10.1%、第2位)及び2014年(見込)(9.9%、第2位)である(甲18及び甲19)。一般的に、歯ブラシは、各メーカーが複数ブランドから製品を出しているのが現状であり、多数のメーカーの多数ブランドの中で、「G・U・M」ブランドが第1位又は第2位のシェアを獲得していることからも、申立人サンスターに係る「G・U・M」ブランドが、当該商品分野で取引者、需要者の高い支持を集めており、周知・著名であることがわかる。
ウ 洗口剤(洗口液・液体歯磨き)
2011年ないし2014年(見込)の、「G・U・M」ブランドの洗口剤全体のシェアは、2011年(28.4%、第1位)、2012年(28.3%、第1位)、2013年(27.2%、第1位)及び2014年(見込)(27.4%、第1位)である。「G・U・M」ブランドの洗口剤は、販売実績においても、シェア第2位のブランドを10億円以上引き離しており、当該商品分野で圧倒的な人気を誇っている(甲18及び甲19)。
さらに、「洗口剤」に含まれる「液体歯磨き」というカテゴリーの商品に関する「G・U・M」ブランドのシェアは、2013年(41.2%、第1位)及び2014年(見込)(41.6%、第1位)であり、いずれも40%台のシェアを獲得しており、シェア第2位(16%前後)を大きく引き離している(甲19)。
エ デンタルフロス及び歯間ブラシ
2013年及び2014年(見込)の「G・U・M」ブランドのデンタルフロスのシェアはそれぞれ12.4%と12.3%であり、いずれも第3位であり、また、2013年及び2014年(見込)の「G・U・M」ブランドの歯間ブラシのシェアはそれぞれ18.8%と18.1%であり、いずれも第2位である(甲19)。
オ 上記アないしエの各商品分野における「G・U・M製品」の高い市場占有率からも、これらオーラルケア製品について、引用商標が周知・著名性を獲得していることがわかる。
(4)雑誌や新聞への紹介記事
申立人サンスターの「G・U・M製品」は、高い販売実績と市場占有率を誇っていることから、雑誌や新聞のオーラルケアに関する記事の中で、「G・U・M製品」やブランドが紹介・言及されている(甲20ないし甲23)。
このような「G・U・M製品」に関する記事からも、「G・U・M」ブランドが需要者から高い支持を受けており、引用商標がオーラルケア製品の分野において、周知・著名性を獲得していることがわかる。
(5)その他
申立人サンスタースイスは、2010年に、第16類、第35類及び第44類の商品・役務に関し、引用商標2の防護標章登録を受けており(甲24)、このことも、引用商標2が、オーラルケアの商品分野において周知・著名性を獲得していることの証左になる。
(6)小括
以上のとおりであるから、引用商標は、本件商標の登録出願日である平成26年5月26日以前に、第3類「歯磨き」及び第21類「歯ブラシ」等のオーラルケア製品の分野において、周知・著名であったことは明らかである。
3 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
ア 本件商標は、その構成中「GUM」及び「ガム」の文字部分が強く支配的な印象を与える点について
引用商標は、上記2のとおり、本件商標の登録出願日以前に、第3類「歯磨き」及び第21類「歯ブラシ」等のオーラルケア製品の分野において、周知・著名であったことは明らかである。
そして、本件商標は、前記第1のとおり、「GUMPEACE」の欧文字と「ガムピース」の片仮名を二段に横書きしてなるものであるところ、本件商標に接した取引者、需要者は、前半部「GUM」及び「ガム」の文字部分から、申立人サンスターの製造販売するオーラルケア製品を表示するものとして周知・著名な引用商標を容易に想起するから、本件商標の構成中「GUM」及び「ガム」の文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
イ 「PEACE」及び「ピース」の語の識別力について
本件商標の構成中、後半部の「PEACE」及び「ピース」の文字は、「平和、治安、平穏」等の意を有する英単語であり(甲25)、我が国においては「平和。講和」等の意を有する語として広辞苑にも掲載され、広く親しまれ定着している(甲26)。
そうとすれば、本件商標の構成中の「PEACE」及び「ピース」の文字部分は、我が国の一般的な需要者の通常の英語力や知識を基準とすれば、「平和」等を意味する語であると容易に理解されるものであることは明らかである。
そして、「歯磨き」の分野において、このように極めてよく知られている「平和」等を意味する英単語の「PEACE」を、その構成の一部として使用したものについて、多数の商標登録あるいは商標登録出願がなされている状況がある(甲27及び甲28)。このように、本件商標の構成中の「PEACE」及び「ピース」の文字部分は、我が国において広く親しまれている極めて簡単でありふれた文字であり、多数の登録・出願商標の例を考慮すれば、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、「PEACE」及び「ピース」の語は、「歯磨き」について単独では自他商品識別機能を発揮しないか、或いは商品の出所を示すものとして強い印象を与える言葉ではなくなっていた。さらに、「歯磨き,化粧品」等の商品分野においては、「PEACE」の語は「安全で安心な製品」を暗示させる語として好んで商標に採択される語として使用されているから、商品の出所を示すものとして強い印象を与える言葉ではない。
したがって、本件商標の構成中「PEACE」及び「ピース」の文字部分は、指定商品「歯磨き」や、オーラルケア製品の一種である「口臭用消臭剤」との関係では、自他商品識別機能を発揮しない部分、或いは自他商品識別機能が極めて弱い付記的な部分と捉えるべきであり、当該部分からは出所識別標識としての称呼や観念が生じない、あるいは生じるとしても極めて弱いものである。
ウ 小括
以上のとおり、本件商標は、「GUM」及び「ガム」の文字部分が、取引者、需要者に対し、申立人サンスターのオーラルケア製品の周知・著名な出所識別標識「G・U・M」、「ガム」を連想させる語として強く支配的な印象を与えると共に、それ以外の「PEACE」及び「ピース」の文字部分からは出所識別標識としての称呼、観念が生じない(或いは、生じるとしても極めて弱い)から、本件商標の構成中の「GUM」及び「ガム」の文字部分を要部として抽出し、この部分だけを申立人の引用商標と比較して商標の類否判断を行うことが認められる。
(3)引用商標ついて
引用商標1ないし引用商標6及び引用商標8は、別掲1ないし6に示したとおり、欧文字「G・U・M」からなるか、或いは該文字を含む商標である。また、引用商標7は、別掲7に示したとおり、「ガム」の片仮名からなるものである。
そして、「G・U・M」の書体は、1989年から現在までの間に、マイナーチェンジされている。申立人サンスターの引用商標1ないし引用商標6及び引用商標8は、1989年から現在までに、書体が若干変更されたものの、欧文字と中黒からなる「G・U・M」という基本形は変わっていない。また、製品パッケージ上にカラーで表示される場合には、引用商標2ないし引用商標5のように、左縦線が曲線の緑地の略長方形の枠の中に、「G・U・M」の欧文字を白字で書す態様において使用されている。
そして、申立人サンスターの永年の使用により、引用商標1ないし引用商標6及び引用商標8の「G・U・M」の文字から「ガム」の称呼が生じることは、需要者間で広く認識されており、かかる称呼に基づいて引用商標は周知・著名になっている。
(4)本件商標と引用商標の類否
以上のとおり、本件商標の要部である「GUM」及び「ガム」の文字部分と引用商標は、「ガム」の称呼を共通にする。また、本件商標の要部である「GUM」及び「ガム」の文字部分と引用商標7を除く引用商標との外観は、「GUM」の欧文字を共通にするから類似し、また、当該文字からは、申立人サンスターの製造販売するオーラルケア商品を表示するものとして周知・著名な引用商標「G・U・M」及び「ガム」が容易に想起されるため、両者は観念においても共通する。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念を共通にする類似の商標である。
(5)指定商品の類否について
本件商標の指定商品中「口臭用消臭剤,歯磨き」は、引用商標1ないし引用商標5の第3類の指定商品「口臭消臭スプレー,歯磨き」とは、同一又は類似である。
また、引用商標6及び引用商標7は、第21類「歯ブラシ」を、引用商標8は、第21類「デンタルフロス,歯間清掃用ようじ,歯間ブラシ,歯と歯科用補綴物又は歯科矯正用器具の間の清掃用ブラシ,歯間ブラシホルダー,デンタルフロス用支持柄,歯ブラシ,電気式歯ブラシ」を指定商品としており、これらの商品はいずれも、歯磨きの際に「歯磨き」と共に使用される道具であるから、両者はその用途並びに需要者を共通にする。
一般的に、両者は、ドラッグストアやスーパー等の小売店において販売されるから、販売場所も共通する。さらに、申立人サンスターは、「G・U・M」ブランドのオーラルケア製品全般(歯磨き、歯ブラシ、歯間清掃具等)を、売り場の1ヵ所にまとめて販売をする方式を採用しているが、少なくともドラッグストアやスーパー等において、歯磨きや歯ブラシは同一の棚にて販売されることが一般的であるから、これらの商品は販売場所のみならず陳列スペースも共通するものである。
加えて、「歯磨き」を製造販売するメーカーは、多くの場合、「歯ブラシ」も製造販売している(甲18)から、両者は製造販売者も共通する。
以上のとおり、本件商標の指定商品「歯磨き」は、引用商標6ないし引用商標8の指定商品とも類似する。
(6)小括
以上のとおり、本件商標は、申立人サンスタースイスの登録商標であって、申立人サンスターが使用する引用商標に類似する商標であり、引用商標の指定商品と同一又は類似する指定商品「口臭用消臭剤,歯磨き」について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、取り消されるべきである。
4 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標とは、上記3(4)で述べたとおり、外観、称呼及び観念上、相紛らわしい類似の商標であり、両者の類似性の程度は極めて高い。
また、申立人サンスターに係る引用商標の周知・著名性に関しては、上記2で述べたとおりである。
さらに、申立人サンスターは、「G・U・M」ブランドのシリーズとして、1997年の「ガムケア」(甲5の7)、2006年の「ガムアドバンス」(甲5の15)、2011年の「ガムアドバンスケア」(甲5の21)等、「G・U・M」及び「ガム」の文字に他の語を結合した商標を使用してきたことから、このような実情に鑑みれば、同様に「GUM」及び「ガム」の後ろに他の語、特に識別力の弱い語を結合して成る本件商標は、あたかも申立人らの業務に係る新しい「G・U・M」ブランドのシリーズ名であるかの如く、需要者等が誤認を生ずるおそれが高い。
(2)商品の関連性について
本件商標の指定商品である「歯磨き」と、引用商標が周知・著名となっているオーラルケア製品である第3類「洗口液,その他の歯磨き」や第21類「歯ブラシ,歯間清掃具」とは、歯をきれいにするという目的及び用途が共通する他、需要者、販売場所、製造販売者も共通することから、両者の関連性は極めて高い。そして、本件商標の指定商品中「口臭用消臭剤」は、口臭を消臭するための商品であり、オーラルケア製品である。
したがって、本件商標の指定商品である「歯磨き」と、引用商標が周知・著名となっているオーラルケア製品である第3類「洗口液,その他の歯磨き」や第21類「歯ブラシ,歯間清掃具」とは、口腔内を清潔にするという意味での目的及び用途が共通する他、需要者、販売場所、製造販売者も共通することから、両者の関連性は極めて高く、実際の販売においても、「口臭消臭スプレー(マウススプレー)」は「オーラルケア」製品の一種として販売されている(甲34)。
(3)その他
本件商標や引用商標が使用されるオーラルケア製品は、日常的に消費される比較的安価な価格帯のものであり、出所識別標識に対する需要者の注意力は高いとはいえないという事情がある。
(4)小括
以上の事情を総合的に判断すると、本件商標が、その指定商品中「口臭用消臭剤,歯磨き」に使用された場合、需要者等は、本件商標の構成中、強く支配的な印象を与える「GUM」及び「ガム」の文字部分に着目して、当該商品が申立人サンスターの製造販売するオーラルケア製品である、或いは申立人サンスターと緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると、誤信されるおそれがあるから、本件商標は「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当する。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に違反して登録されたものであるから、本件商標の登録は取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標は、前記第1のとおり、「GUMPEACE」の欧文字と「ガムピース」の片仮名とを二段に横書きしてなるところ、その欧文字部分と片仮名部分はそれぞれ、同書、同大、同間隔でまとまりよく一連に書された構成からなるものであって、これより生じる「ガムピース」の称呼も5音という簡潔な音構成であって、よどみなく一連に称呼することができるものである。そして、かかる構成においては、本件商標を「GUM」及び「ガム」の文字部分と「PEACE」及び「ピース」の文字部分とに分離して看取されるとすべき理由は見いだし得ない。
この点に関し、申立人は、本件商標の構成中の「GUM」及び「ガム」の部分が、引用商標に係る「G・U・m」及び「ガム」を連想させる語として強く支配的な印象を与えると共に、「PEACE」及び「ピース」の文字部分が識別機能を有しないことから、「GUM」及び「ガム」の文字部分が要部として抽出される旨主張している。
しかしながら、本件商標は、その構成中の「PEACE」及び「ピース」の文字が、「平和、講和」を意味する語として知られ、また、多数の登録例等があるとしても、本件指定商品中の「口臭用消臭剤」及び「歯磨き」との関係において、該文字が商品の品質、用途等を表示するために普通に用いられている事実も認められないし、他に本件商標から上記文字部分を捨象して考察しなければならない理由も見出すことができない。
そうすると、本件商標は、後述の引用商標の周知性を考慮したとしても、「GUMPEACE」の欧文字及び「ガムピース」の片仮名が一体不可分のものとして認識、把握されるとみるのが相当であるから、申立人の主張は採用することができない。
したがって、本件商標は、欧文字部分と片仮名部分がそれぞれ一体不可分のものであり、「ガムピース」の一連の称呼のみを生じ、親しまれた既成の観念を有しない一種の造語からなるものとして認識し把握されるというのが自然である。
(2)引用商標
引用商標は、別掲1ないし別掲7に示したとおりの構成からなるところ、引用商標1ないし引用商標6及び引用商標8は、「G・U・m」の欧文字を顕著に含むものであり、その構成文字部分に相応して「ガム」の称呼を生じ、「ガム(チューインガムの略)、ゴム」等の観念を生じるものである。 また、引用商標7は、「ガム」の片仮名からなるものであり、その構成文字に相応して、「ガム」の称呼を生じ、「ガム(チューインガムの略)、ゴム」等の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを対比するに、本件商標と引用商標とは、それぞれの構成に照らし、外観においては、判然と区別し得る差異を有するものである。次に、称呼においては、本件商標から生じる「ガムピース」の称呼と引用商標から生じる「ガム」の称呼とは、構成音数が異なるばかりでなく、語尾の「ピース」の有無という顕著な差異により、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語調、語感が著しく相違し、明瞭に区別することができるものである。
さらに、観念においては、本件商標は、親しまれた既成の観念を有しないものであるから、本件商標と引用商標とを比較することはできない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、その指定商品が引用商標の指定商品と同一又は類似のものであるとしても、商標法第4条第1項第11号に該当するということはできない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人の提出に係る証拠によれば、引用商標は、1989年の使用開始以来、商品「歯磨き」を含むオーラルケア製品に使用され、申立人サンスターにより新聞、雑誌やテレビなどのマスコミにおいて多岐広範囲にわたる宣伝広告が継続的に行われ、その結果、該オーラルケア製品は、1989年の発売以来売上を伸ばし続け、最近の年間の売上額では200億円を超える売上げがあり、その市場占有率も、洗口液が国内1位、歯ブラシが国内2位など、上位を維持しており、その状況が雑誌や新聞において紹介記事にされていることなどを総合して考察するならば、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「歯磨き」を含むオーラルケア製品の取引者、需要者の間において周知著名になっていたということができる。
(2)しかしながら、上記(1)の引用商標の周知性を考慮したとしても、本件商標は、上記1のとおり、欧文字部分と片仮名部分が一体不可分のものと認識されるものであって、「PEACE」及び「ピース」の文字部分を捨象し、「GUM」及び「ガム」の文字部分のみが分離独立して看取されることはないものであるから、引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(3)そうとすれば、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異のものであるから、引用商標が申立人らの業務に係る商品を表示する商標として取引者、需要者間に広く認識されているとしても、本件商標をその指定商品について使用した場合に、これに接する取引者、需要者が引用商標ないしは申立人らを連想、想起するようなことはないというべきである。
したがって、本件商標は、申立人らと経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきでものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(引用商標1及び引用商標8)



別掲2(引用商標2)
(色彩については原本参照)



別掲3(引用商標3)
(色彩については原本参照)



別掲4(引用商標4)
(色彩については原本参照)



別掲5(引用商標5)
(色彩については原本参照)



別掲6(引用商標6)



別掲7(引用商標7)



異議決定日 2015-09-11 
出願番号 商願2014-42120(T2014-42120) 
審決分類 T 1 652・ 263- Y (W03)
T 1 652・ 261- Y (W03)
T 1 652・ 271- Y (W03)
T 1 652・ 262- Y (W03)
最終処分 維持  
前審関与審査官 箕輪 秀人北口 雄基 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 梶原 良子
中束 としえ
登録日 2014-10-31 
登録番号 商標登録第5714536号(T5714536) 
権利者 三宝製薬株式会社
商標の称呼 ガムピース、ピース 
代理人 青木 博通 
代理人 富所 英子 
代理人 中田 和博 
代理人 牧野 利秋 
代理人 中田 和博 
代理人 牧野 利秋 
代理人 磯田 直也 
代理人 柳生 征男 
代理人 柳生 征男 
代理人 青木 博通 
代理人 富所 英子 
代理人 磯田 直也 

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