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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W33
審判 全部申立て  登録を維持 W33
管理番号 1305199 
異議申立番号 異議2014-900316 
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2015-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-11-11 
確定日 2015-09-03 
異議申立件数
事件の表示 登録第5696008号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5696008号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5696008号商標(以下「本件商標」という。)は、「EARLY TIMES YELLOW LABEL」の欧文字を標準文字で表してなり、平成26年3月4日に登録出願され、第33類「蒸留酒,その他のアルコール飲料(ビールを除く。)」を指定商品として、同年7月29日に登録査定、同年8月22日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由として引用する登録第5700796号商標は、「YELLOW LABEL」の欧文字を横書きしてなり、2010年11月8日に域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、商標法第68条の32第1項の規定による商標登録出願(議定書第6条(4)の規定により取り消された国際登録:国際登録第1080267号、国際登録日:2011年4月18日)として、平成26年3月13日に商標登録出願され、第33類「シャンパーニュの原産地名称付きの発泡性ぶどう酒,発泡性ぶどう酒」を指定商品として、同年7月31日に登録査定、同年9月12日に設定登録されたものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第8条第1項に違反し、同法第4条第1項第15号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第82号証(枝番を含む。)を提出した。

1 商標法第8条第1項違反について
(1)本件商標について
本件商標は、「アーリータイムス イエローラベル」との称呼が生じるのみならず、長い称呼を有する商標であって、その一部に簡略化して称呼される可能性がある商標であるから、「アーリータイムス」、「イエローラベル」の各称呼も生じるものである。また、本件商標からは、上記構成文字に照応して、「“アーリータイムス”と“イエローラベル”」との観念のほか、「“アーリータイムス”の“イエローラベル”」といった観念が生じる。
本件商標における類否判断の対象となる要部は、その構成全体の「EARLY TIMES YELLOW LABEL」だけでなく、「YELLOW LABEL」部分にもあるというべきである。
また、「EARLY TIMES」は日本においてもバーボン・ウイスキーの銘柄として比較的知られているものであることを考えると(甲72)、「EARLY TIMES」部分を権利者のハウスマークあるいは主要ブランド名として、「YELLOW LABEL」部分は、商品の種類を個別化して特定するための個別商標であるペットマークと捉えて取引に資されることが考えられ、「YELLOW LABEL」の文字部分のみで、独立して、自他商品の識別標識としての機能を果たすものというべきである。
実際の商取引の場にあっては、代表的な出所表示(ハウスマーク)とともに、個別商標(ペットマーク)が一般的に使用されている実情がある。申立人の引用商標である「YELLOW LABEL」もその一類型であり、「VEUVE CLICQOUT」のハウスマークとともに、「YELLOW LABEL」をペットマークとして使用している事実がある(甲30、甲43、甲55、甲60、甲65)。
申立人が使用する引用商標「YELLOW LABEL」は、シャンパン等のアルコール飲料の分野において周知著名な商標となっており、本件商標は周知著名な引用商標と相紛らわしいほど類似する商標というべきである。
さらに、本件商標は15音(長音含む)と非常に冗長に亘る音構成からなるため、簡易迅速を尊ぶ取引の場においては個別商標である「YELLOW LABEL」を捉えて該文字より生じる称呼「イエローラベル」をもって略称し、この略称によって取り引きされうるものと思料する。
したがって、本件商標の場合は、その構成全体だけでなく、「YELLOW LABEL」部分も、類否判断における要部となるものというべきであり、「YELLOW LABEL」部分からは「イエローラベル」の称呼が生じ、かつ、周知著名な申立人の引用商標の観念を生じるとみるのが相当である。
(2)引用商標
ア 引用商標の商標登録に至る経緯
引用商標は、もともとは、国際登録第1080267号として、第33類を指定して、国際事務局に、日本国を指定して2011年4月18日に国際登録された商標である。
当該国際登録第1080267号にかかる出願に対しては、「『YELLOW』は『バターや卵の黄身の色を有すること』を意味し、『LABEL』は『あるものに付けた紙片』を意味するところ、本願商標にかかる指定商品は飲料物であり、それらは通常、輸送や販売の際には容器に包装され、その容器にはラベルやタグが貼られ、そのラベルやタグの色は白色だけではなく多様な色があることから、本願商標は『黄色いラベル(タグ)をつけた商品』であることを認識させるにとどまり、単に指定商品の品質を表すに過ぎないものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する」との拒絶理由が通知された。
出願人(申立人)は、2013年7月18日付で意見書を提出し、本件商標はその構成全体をもって一つの商標として自他商品識別力を有する商標であり、出願人(申立人)にかかる商標として広く知られるに至っている旨を主張したところ、審査官は、出願人(申立人)の本件商標は出願人(申立人)にかかる商標として自他商品識別力を有する意見を認定し、本件商標は、2013年12月12日付で登録査定がされたものである。
その後、2014年1月15日付にて、基礎登録の効力の終了の通報(セントラルアタック)がされたため、2014年3月13日付にて、商標法第68条の32第1項の規定による商標登録出願を行い、登録査定がされ商標登録第5700796号に係る商標権として設定登録されたものである。
イ 引用商標の周知著名性
引用商標は、遅くとも、本件商標の出願時である平成26(2014)年3月4日までには、我が国の取引者・需要者の間で周知著名となっていたものである。
(ア)申立人が製造販売する高級シャンパン「YELLOW LABEL」(イエローラベル)の著名性について
「YELLOW LABEL」(イエローラベル)は、申立人が製造・販売する伝統高きヴーヴ・クリコ・ポンサルダン(VEUVE CLICQUOT PONSARDIN)のシャンパンの名称として、140年以上も前に申立人により名づけられた造語商標として周知著名となっているものである。
申立人の一員であるヴーヴ・クリコ・ポンサルダン(以下「ヴーヴ・クリコ」という。)は、1987年には、有名なブランドであるルイ・ヴィトンと合併し、LVMHグループの傘下で、世界120力国以上で販売するまでになった。現在では、LVMHグループの中核ブランドとして位置づけられている。
引用商標「YELLOW LABEL」を付したシャンパンは、「まさに、ヴーヴ・クリコ社の味とスタイルを代表するもの」と評されている(甲40、甲53)。
この「YELLOW LABEL(イエローラベル)」が初めて書面に記載されたのは、約140年前の1874年のことであり、ヴーヴ・クリコの代理人が英国に向けた1844年7月17日付手紙の中で、972本の注文書の余白部分に「イエローラベル」との書き込みがされている(甲3)。以後、現在に至るまで、「YELLOW LABEL」は、ヴーヴ・クリコのシャンパンの代名詞的役割を担っている。
ヴーヴ・クリコの代名詞たる引用商標「YELLOW LABEL」にかかるシャンパンボトルには、デザイン性の高い非常に看者の印象に残るラベルが貼られている。その色彩は、「黄色(YELLOW イエロー)」の一言では言い表せない独特の色合いをしており、刊行物等にも、単なる「黄色」ではなく、「印象的な黄色いラベルが世界中で知られている『ヴーヴ・クリコ』」(甲24)と評され、「YELLOW LABEL」のシャンパンボトルに付されたラベルの色彩は、「黄色(イエロー)」ではなく、「クリコイエロー」と呼ばれ(甲21)、現在では、3秒半に1本の割合で開けられているほどの人気である(甲68)。その結果、「クリコイエロー」の色彩ラベルが貼られたシャンパン「YELLOW LABEL」は、このクリコイエローのラベルによって、「VEUVE CLlCQOUT」とその他のシャンパン等のアルコール飲料を区別するための印となっている(甲69)。また、このようなクリコイエローのラベルは、シャンパンのラベルが白地のラベルが多いブルゴーニュやボルドーワインと比べて色鮮やかなラベルが多くなった原因の一つとして、シャンパンのラベルデザインに与えた影響が多いと言われている(甲69)。
(イ)申立人の宣伝広告活動
申立人は、引用商標にかかる「YELLOW LABEL」の商品につき、発売当初から一世紀以上に亘り継続的に宣伝活動を行い、日本においても、書籍や雑誌等の各種刊行物やインターネットを通じた宣伝・広告活動を積極的に行っている(甲3ないし甲71)。
(ウ)小括
以上のとおり、申立人は永年、引用商標「YELLOW LABEL」にかかる商品につき、一貫して、「クリコイエロー」を中心とした宣伝活動を行っており、高品質で優れた香りをもつ商品を提供し続けており、その結果、日本における取引者・需要者層においては、引用商標にかかる「YELLOW LABEL」に対して、「ヴーヴ・クリコといえばYELLOW LABEL(イエローラベル)」、「YELLOW LABEL(イエローラベル)といえばヴーヴ・クリコ」との認識が広く世間一般にすでに確立されているものと思料する。
申立人商品は、1873年に始めて発売されて以降、我が国でもその後発売が開始され、現在は、日本をはじめとする世界各国において、遅くとも、本件商標の登録出願時である平成26(2014)年3月4日までには、我が国で周知著名となっていたものである。
(3)指定商品の類否
本件商標に係る第33類の指定商品「蒸留酒,その他のアルコール飲料(ビールを除く。)」は、引用商標の指定商品「シャンパーニュの原産地名称付きの発泡性ぶどう酒,発泡性ぶどう酒」と同一又は類似する商品である。
(4)両商標の先後願関係
本件商標は、平成26年3月4日出願に登録出願されたのに対し、引用商標は、平成22年11月8日に域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)においてした商標登録出願に基づいて国際事務局に、日本国を指定して2011年4月8日に国際登録されたものであるから、引用商標に係る商標登録出願は、本件商標の商標登録出願日前の他人の登録商標出願に該当する。
(5)本件商標と引用商標の類否
本件において、引用商標が、商品「シャンパン」等に関して高度な著名性を有していることから、本件商標と引用商標の類否判断の際には、引用商標が有するこの著名性を取引の実情として考慮すべきである。
本件商標は、「EARLY TIMES」と「YELLOW LABEL」を横一連に単に結合させた構成よりなり、「EARLY TIMES YELLOW LABEL」なる語は特定の意味合いを有するものとして存在せず、また、「EARLY TIMES」と「YELLOW LABEL」の間には、これを一体のものとしてことさら結合させるべき特別な理由はないことから、「EARLY TIMES」と「YELLOW LABEL」との結合の程度は弱いというべきである。
本件商標は、その要部たりうる「YELLOW LABEL」から「イエローラベル」の称呼をも生じるものであり、かつ、申立人の周知著名な引用商標の観念を生じるものとみるのが相当である。
本件商標の要部を構成する「YELLOW LABEL」と引用商標を対比すると、本件商標において、「YELLOW LABEL」の部分は、周知著名な引用商標と同一綴り字にあることから外観上同一であり、両商標からは、いずれも「イエローラベル」の同一称呼及び申立人の周知著名な引用商標との同一観念が生じる。したがって、本件商標は、引用商標とは、要部から生じる称呼及び観念が同一であり、外観上相紛らわしいほど類似する類似商標である。
(6)結び
引用商標は本件商標の商標登録出願日前の商標登録出願に係る他人の登録商標であり、本件商標は、引用商標とは要部たりうる「YELLOW LABEL」と外観・称呼及び観念が同一である類似商標であり、引用商標に係る指定商品と同一又は類似する商品を指定商品とするものであるから、商標法第8条第1項に違反して登録されたものである。

2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)出所の混同のおそれ
本件商標は、「EARLY TIMES」と「YELLOW LABEL」を横一連に表した構成からなるところ、「シャンパン」等について周知著名な引用商標と全く同一の綴り字からなる「YELLOW LABEL」の文字をそっくりそのまま含んでいる。このため、本件商標に接した取引者及び需要者は、その構成全体としてだけでなく、「YELLOW LABEL」の部分にも注目し、「YELLOW LABEL」を分離抽出して取引にあたると考えられ、さらに、本件商標は、全体として15音と非常に冗長に亘る音構成からなるため、簡易迅速を尊ぶ取引の場においては、個別商標である「YELLOW LABEL」を捉えて該文字より生じる称呼「イエローラベル」をもって略称し、この略称によって取り引きされうるものである。このため、「YELLOW LABEL」部分が本件商標に接する取引者・需要者の注意を特に強く引くであろうことは容易に想定でき、当該「YELLOW LABEL」部分が要部として認識され、ここから「イエローラベル」の称呼及び「申立人の周知著名な引用商標」の観念が生じる。
したがって、本件商標は、引用商標との関連性を容易に想起させ、全体として、引用商標との類似性は非常に高いものである。
引用商標は、1874年に「シャンパン」に使用されたのを皮切りに現在まで一貫して使用されており、我が国においても、取引者・需要者の間に広く認識されていることから、遅くとも本願商標の出願日(平成26(2014)年3月4日)前には既に周知著名となっているものである。
異議申立てに係る指定商品「蒸留酒、その他のアルコール飲料(ビールを除く。)」は、申立人の「YELLOW LABEL」が著名性を獲得した商品とは、極めて強い商品間の関連性を有するといえるから、当然にその需要者及び取引者の範囲は一致するものである。
引用商標は、申立人の企業イメージに直結するほど人々の記憶に深く刷り込まれたものであることからすれば、需要者において普通に払われる注意力としては、本件商標に接した需要者は、「YELLOW LABEL」の部分に着目して、「イエローラベル」の称呼及び「申立人にかかるイエローラベル」の商品の意味合いを想起し、当該商品が申立人の業務に係るものと認識するであろうことは容易に想像される。
(2)出所の混同の有無
周知著名な引用商標を構成する文字である「YELLOW LABEL」と同一の文字をその構成中に含む本件商標を、その指定商品について使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、周知著名な引用商標と関連のある商品であるかのごとく、その商品の出所について誤認・混同するおそれが極めて高いと考える。
以上より、本件商標に接した取引者、需要者の間で、申立人に係る商品であるかのような誤認・混同が起きるおそれは非常に高いといわねばならない。
(3)結び
したがって、本件商標は、申立人の業務に係る商品と出所の混同を生じるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

第4 当審の判断
申立人は、本件商標が商標法第8条第1項及び同法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであると主張しているので、以下、検討する。
1 商標法第8条第1項について
(1)本件商標について
ア 本件商標は、「EARLY TIMES YELLOW LABEL」の欧文字を標準文字で表してなるものである。
イ 本件商標構成中の「YELLOW LABEL」の文字について
職権に基づく調査によれば、ウイスキーなどの洋酒やワインの表示に関して以下の事実が認められる。
(ア)「サンフェステ楽天市場店」のウェブサイトに、「バーボンの定番。 四輪のバラのラベルの通り、花の香りを思わすやさしいウイスキーです。フォアローゼズ イエローラベル」の記載とともに、「イエロー」の色彩のラベルが貼付された商品の写真が掲載されている(http://item.rakuten.co.jp/sunfeste/45022/)、また、「Amazon」のウェブサイトに、「フォアローゼス ブラックラベル 700ml 40度」の記載とともに、「ブラック」の色彩のラベルが貼付された商品の写真が掲載されている(http://www.amazon.co.jp/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%82%A2%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BC%E3%82%B9-%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%99%E3%83%AB-700ml-40%E5%BA%A6/dp/B005TEY44K)。
(イ)「酒類の総合専門店 フェリシティー」のウェブサイトに、「Johnnie Walker」の見出しの下、「世界中で愛される大人気ウイスキー 35種類のモルト原酒をブレンドした豊かなコクと香りの一本 JOHNNIE WALKER RED LABEL ジョニー ウォーカー レッド・ラベル」の記載とともに、「レッド」の色彩のラベルが貼付された商品が掲載されている(http://item.rakuten.co.jp/ledled/3-johnnie-walker-red-nb/)、また、「JOHNNIE WALKER BLACK LABEL ジョニーウォーカー ブラック・ラベル」(http://item.rakuten.co.jp/ledled/3-johnnie-walker-black-nb/)、「JOHNNIE WALKER BLUE LABEL ジョニーウォーカー ブルー・ラベル」(http://item.rakuten.co.jp/ledled/3-johnnie-walker-blue-s/)などの記載とともに、それぞれの色彩のラベルが貼付された商品が掲載されている。
(ウ)「お酒のプロショップ お酒通販.com」のウェブサイトに、「エヴァン・ウィリアムス ブラックラベル」として「エヴァンウイリアムス ブラックラベル 43度 750ml」、「【カテゴリー】バーボンウイスキー」、「エヴァンウィリアムスは、世界第4位の販売量を誇るバーボン・ウィスキーです。ケンタッキー・ストレート・バーボン・ウィスキーとしては、第2位のビッグブランドです。」の記載とともに、「ブラック」のラベルが貼付された商品が掲載されている(http://www.racknet.jp/cathand/detail-348668.html)、また、「酒のやまや 楽天市場店」のウェブサイトに、「エヴァンウィリアムス グリーンラベル40%1000ml 40度 12本入り」、「アルコール度40度のスッキリした味わいが特徴のケンタッキーウィスキーです。」の記載とともに、「グリーン」のラベルが貼付された商品が掲載されている(http://item.rakuten.co.jp/yamaya-shop/10096749021229/)。
(エ)「Asahi」のウェブサイトに、「ランソン」の見出しの下、「ランソン社は、シャンパーニュ地方の中心地ランスに1760年に創業して以来、約250年にわたって世界中で愛され続けている、最も著名なシャンパンメーカーのひとつです。」の記載、「ランソン・ゴールドラベル・ヴィンテージ・ブリュット」として「乾燥させたイチジクやアンズ、洋梨のアロマに加えビスケットのニュアンスがあります。繊細で豊かさに溢れ、いきいきとしたフィニッシュが持続します。魚やさっぱりとした肉料理とよく合います。」の記載、「ランソン・アイボリーラベル・ドミ・セック」として「熟した果実やシナモン、蜂蜜のアロマがあります。円熟感があり、官能的な味わいがします。フルーツやデザートとよく合います。」の記載、「ランソン・ブラックラベル・ブリュット」として「いきいきとした春の香りが広がり、トーストのニュアンスに加え、さまざまな花の蜜の香りがあります。余韻が長く、あらゆる機会に楽しませてくれます。」の記載とともに、それぞれ「ゴールド」、「アイボリー」、「ブラック」の色彩のラベルが貼付された商品の写真が掲載されている(http://www.asahibeer.co.jp/products/wine/brand/lanson/)。
(オ)「三菱食品 商品情報」のウェブサイトに、「WOLF BLASS」として、ウルフブラス社のワインについて、「ブラックラベル Black Label」、「グレーラベル Gray Label」、「イエローラベル Yellow Label」などの記載とともに、それぞれ「ブラック」、「グレイ」、「イエロー」などの色彩のラベルが貼付された商品が掲載され、商品の説明が記載されている(http://www.mitsubishi-shokuhin.com/liquor/brand/wolfblass.html)。
(カ)「山梨のワイン、地酒専門店のリカーショップながさわ」のウェブサイトに、「シャトレーゼ勝沼 スパークリングワイン シャルドネ イエローラベル 2009」として、「始めの香りは、イースト香(パンにある香り)がやや目立ちますが、・・・全体としてはまとまりがあり、飲みごたえのある“正統派”のブラン・ド・ブランです。」の記載とともに、「イエロー」の色彩のラベルが貼付された商品が掲載されている(http://www.wine-nagasawa.co.jp/products/detail.php?product_id=332)、また、「シャトレーゼ勝沼 スパークリングワイン シャルドネ ホワイトラベル 2009」として、「キリッとした味わいというより、おおらかで個性的な味わいです。正統派の「イエローラベル」と飲み比べても面白いと思います。」の記載とともに、「ホワイト」の色彩のラベルが貼付された商品が掲載されている(http://www.wine-nagasawa.co.jp/products/detail.php?product_id=331)。
(キ)「京橋ワイン」のウェブサイトに、「TOP>> スペイン >> CAVA」として、「英国向け限定で造られた特別醸造品ながら日本限定入荷!!・・・『豊富な酸と旨み・・・造り手の情熱が伝わる物凄いプレミアム・スパーク!!』・・・[パルチェット・カヴァ・ブリュット・キュヴェ21・イエローラベル]」の記載とともに、「イエロー」の色彩のラベルが貼付された商品が掲載されている(http://www.kbwine.com/item/157.html)。
(ク)商標権者の商品について
「Asahi」のウェブサイトに、「商品ラインアップ イエローラベルとブラウンラベル」の見出しの下、「何世代もの時を超え、人々に愛されてきたアーリータイムズ。イエローとブラウンの2つのラベルは、それぞれ個性的な香りと味わいを持ち、ロングセラーバーボンとして今も生き続けています。」の記載がされ、「イエローラベル」として「伝統を守り続けるクラシックなバーボンウイスキー」、「ライトな口当たり、甘い香り、キレのいい後味を持つロングセラーバーボンです。活性炭で濾過することで、熟成中にできた不純物を除去し、より磨かれたスムースな味わいを楽しめます。」の記載、「ブラウンラベル」として「オークの香りとコクが際立つ繊細なバーボンウイスキー」、「マスターブレンダーが厳選した原酒をブレンド、濾過の工程を2度行うことで香りは強く、味はまろやかに。オークの香りとコクの深みが際立つ、華やかで繊細な味わいのバーボンです。」の記載とともに、それぞれ「イエロー」、「ブラウン」の色彩のラベルが貼付された商品の写真が掲載されている(http://asahibeer.co.jp/enjoy/liquorworld/brand/earlytimes/product/index.html)。
(ケ)以上によれば、ウイスキーなどの洋酒やワインについて、「YELLOW LABEL」、「RED LABEL」、「BLACK LABEL」、「BLUE LABEL」、「イエローラベル」、「レッド・ラベル」、「ブラック・ラベル」、「ブルー・ラベル」などのように、色彩を表す語と「LABEL」又は「ラベル」の文字が商品に使用され、その色彩のラベルが商品の容器に貼付されているという実情が認められる。そして、その多くは、同一銘柄の商品の品質・等級・種別などが相違する複数の商品を区別するために複数の色彩のラベルが使用され、「○○LABEL」又は「○○ラベル」(○○は色彩)の表示が使用されているといえる。
そうすると、色彩を表す語に「LABEL」又は「ラベル」の文字が表示された商品に接する需要者は、これらの色彩を表す語と「LABEL」又は「ラベル」」の文字からなる部分については、当該商品の品質・等級・種別などを表すためのものとの認識することが少なくないとみるのが相当であるから、本件商標は、その構成中の「YELLOW LABEL」の文字部分が、商品の品質・等級・種別などを表すものと理解、認識されるものである。
ウ 上記イからすると、本件商標は、その構成中の前半部分の「EARLY TIMES」の文字部分をもって取引に資されることも決して少なくないというべきである。
そうすると、本件商標は、構成全体から「アーリータイムズイエローラベル」の称呼を生じ、また、構成中の「EARLY TIMES」の文字部分から、「アーリータイムズ」の称呼をも生じるものである。そして、「EARLY TIMES」は、日本においてもバーボン・ウイスキーの銘柄として広く一般に知られているものであることからすると、「(ブランドとしての)アーリータイムズ」及び「(ブランドとしての)アーリータイムズのイエローラベル」の観念を生じるものである。
(2)引用商標について
引用商標は、「YELLOW LABEL」の欧文字からなるものであるから、「イエローラベル」の称呼及び「黄色の札(貼り紙)」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とは、本件商標の全体の構成又は「EARLY TIMES」の文字部分と引用商標を比較すると、これらは文字構成が明らかに相違するから、外観上、相紛れるおそれはなく、また、本件商標から生じる「アーリータイムズイエローラベル」又は「アーリータイムズ」の称呼と、引用商標から生じる「イエローラベル」の称呼も顕著な差を有し、称呼上も相紛れるおそれはない。さらに、本件商標から生じる「(ブランドとしての)アーリータイムズ」及び「(ブランドとしての)アーリータイムズのイエローラベル」の観念と引用商標から生じる「黄色の札(貼り紙)」の観念も明らかに相違するから、観念においても相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標といえる。
(4)小活
以上からすると、本件商標は、引用商標と同一又は類似する商標ではないから、商標法第8条第1項に違反して登録されたということはできないものである。

2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知、著名性について
ア 申立人は、引用商標「YELLOW LABEL」は、申立人が指定商品「発泡性ぶどう酒」(以下「申立人商品」という。)について永年使用してきた結果、周知著名となっている旨主張し、その証拠として雑誌やウェブサイトの写しを提出しているところ、申立人の提出した雑誌やウェブサイトの情報によれば、以下の事実が認められる。
(ア)申立人のホームページにおいて「YELLOW LABEL」、「Yellow Label」、「Yellow Label Brut」、「イエローラベル」の文字が使用されて申立人商品が掲載され、また、9枚目において「VEUVE CLICQUOT YELLOW LABEL CLICQ’UP」及び「ヴーヴ・クリコ イエローラベル クリップアップ」の文字により申立人商品が紹介されている(甲4)。
(イ)申立人商品について、「ヴーヴ・クリコ イエローラベル」又は「ヴーヴ クリコ イエローラベル」の文字が使用されている(甲6、甲7、甲9、甲11、甲15、甲17ないし甲20、甲24、甲25、甲27、甲29ないし甲31、甲33、甲36、甲39ないし甲50、甲52、甲55、甲57ないし甲60及び甲62ないし甲68)。
(ウ)申立人商品について、「Veuve Clinquot Yellow Label」の文字が使用されている(甲3、甲4、甲9、甲11、甲16、甲19、甲30、甲31、甲33及び甲42)。
(エ)申立人商品について、「VeuveCliquot(ヴーヴ・クリコ)社」、「Veuve Cliquot」「ヴーヴ・クリコ」の文字と共に「Yellow Label」又は「イエローラベル」の文字が使用されている(甲5、甲13、甲14、甲24、甲28、甲35、甲37、甲51、甲53、甲54、甲61、甲69及び甲71)。
(オ)申立人商品について、「ヴーヴ・クリコ・ポンサルダン」の文字と共に「Yellow Label」又は「イエローラベル」の文字が使用されている(甲28、甲37、甲50、甲61及び甲68)。
(カ)申立人商品について、「Yellow Label」又は「イエローラベル」の文字が、「Veuve Clinquot」や「ヴーヴ・クリコ」などの表示との関連性を想起させることなく、それ単独で使用されているといえるものは次のとおりである。
(a)「THE WINE KINGDOM No.66」の抜粋に、「イエローラベル」、「Yellow Label Brut」の文字により申立人商品の宣伝がされている(甲8)。
(b)「関心空間」のウェブサイトには、「イエローラベル ブリュット」、「Yellow Label Brut」の文字が使用されて、「シャンパンなんてあまり飲む機会がないけど、友達が好きでよく買って来てくれました。シャンパンは比べるほど種類を飲んだことがありませんが、これはスッキリしていて美味しい。友達曰くドンペリより美味しいとか。」と記載されている(甲32)。
(c)「岐阜シャンパン倶楽部」のウェブサイトには、「イエローラベルは世界的に有名」、「Yellow Label Brut NV」と記載されている(甲34)。
(d)「KITAGAWA WonderStruck」のウェブサイトには、「ミニバー」の見出しのもと、「輸入品だから致し方なしですが、高めのミニバーです。シャンパンがイエローラベルとは、うれしいですね。」と記載されている(甲70)。
イ 上記アによれば、甲各号証には、引用商標ないし「イエローラベル」の文字又はこれらと同一視できる文字が使用ないし表示されているといえるものの、その多くには、「Veuve Clinquot」や「ヴーヴ・クリコ」の文字(これらと同一視できる態様のものを含む)が併記して使用ないし表示されており、引用商標及び「イエローラベル」の文字並びにこれらと同一視できる文字が、申立人商品の商標として、「Veuve Clinquot」や「ヴーヴ・クリコ」などの文字との関連性を想起させることなく、それ単独で使用されているといえるのは、甲第8号証及び甲第34号証における「イエローラベル」及び「Yellow Label Brut」の文字の使用、甲第70号証における「イエローラベル」の文字の使用にとどまるものである。
しかも、これらの甲各号証によっては、引用商標及び「イエローラベル」の文字が、申立人の商品「発泡性ぶどう酒」について、どの期間、どの地域で、どのような規模で使用され、どの程度宣伝広告されたのかを把握することができず、また同種商品間における引用商標を使用した商品のシェアを把握することもできないものである。
ウ 以上を総合して検討すれば、申立人商品は、Veuve Clinquotの「Yellow Label」又はヴーヴ・クリコの「イエローラベル」として、ある程度知られているということはできても、引用商標である「YELLOW LABEL」の文字のみが、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、独立して申立人商品の出所を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く知られているということはできないというべきである。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間で広く認識されて著名になっていたと認めることはできず、また、上記1のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標といえるものであるから、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することはなく、その出所について混同を生じるおそれはないというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたということはできないものである。

3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第8条第1項、同法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、商標法第43条の3第4項により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2015-08-25 
出願番号 商願2014-16127(T2014-16127) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W33)
T 1 651・ 4- Y (W33)
最終処分 維持  
前審関与審査官 清川 恵子 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 土井 敬子
原田 信彦
登録日 2014-08-22 
登録番号 商標登録第5696008号(T5696008) 
権利者 アーリー タイムス デイステイラーズ カンパニー
商標の称呼 アーリータイムズイエローラベル、アーリータイムズ、アーリータイムス、イエローラベル、イエローレーベル、ラベル、レーベル 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 小沢 慶之輔 
代理人 池田 万美 
代理人 田中 克郎 
代理人 佐藤 俊司 

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