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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 009
管理番号 1305128 
審判番号 取消2013-301088 
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-12-13 
確定日 2015-08-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4160411号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第4160411号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4160411号商標(以下「本件商標」という。)は,「Centric」の欧文字と「セントリック」の片仮名とを上下二段に書してなり,平成8年6月19日に登録出願,第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として,同10年6月26日に設定登録され,その後,同20年6月10日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。
なお,本件審判の請求の登録日は,平成26年1月7日である。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,審判請求書,弁駁書及び口頭審理陳述要領書及び上申書において,その理由及び答弁に対する弁駁等を要旨次のように述べ,甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において使用した事実が存しないから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙各号証の記載について
ア 乙第1号証ないし乙第4号証及び乙第10号証には,「Systemwalker Centric Manager」との記載が各所に存在する。
また,乙第1号証ないし乙第4号証の各表紙には,「システムウォーカー セントリック マネージャー」との記載が存在するところ,これは,「Systemwalker Centric Manager」の称呼を片仮名表記したものと解される。
イ 他方,乙各号証において,「Centric」ないし「セントリック」の語が単独で使用されている例は見あたらない。
乙各号証において「Centric(セントリック)」の語が使用される場合,それは必ず「Systemwalker Centric Manager(システムウォーカー セントリック マネージャー)」の一部として使用されており,そこでは,その全体が同一の書体,同じ大きさの文字で表示されている。
なお,乙各号証において「Systemwalker」の語が単独で使用されている例は散見される(例えば,乙1ないし乙4の各表紙など)が,単なる「Centric(セントリック)」の記載は見あたらない。
ウ 乙第1号証ないし乙第4号証及び乙第10号証の記載からは,「Systemwalker Centric Manager(システムウォーカー セントリック マネージャー)」とは,システムの導入・監視・トラブル復旧・評価を支援する統合管理用のシステム又はソフトウェアの名称であると解される(乙2及び乙3の表紙を参照)。
(2)乙各号証において,本件商標と社会通念上同一の商標は使用されていないこと
ア 乙各号証には,システムの導入・監視・トラブル復旧・評価を支援する統合管理用のシステムまたはソフトウェアの名称として,「Systemwalker Centric Manager(システムウォーカー セントリック マネージャー)」の語が使用されており,これは商標として使用されているものと解される。
イ 他方で,前述のとおり,乙各号証において,「Centric(セントリック)」の語が単独で使用されている例は見あたらない。
ウ 以上を考慮すれば,「Sytemwalker Centric Manager(システムウォーカー セントリック マネージャー)」は,その全体が一つの商標であって,「Centric(セントリック)」の部分のみを捉えて商標であるということはできない。
また,「Centric」は「中心の,中央の」を意味する英語の形容詞であり,「Manager」は「管理者」を意味する英語の名詞であるから,「Centric Manager」では「中央の管理者」といった意味合いになる。
これは,「Systemwalker Centric Manager(システムウォーカー セントリック マネージャー)」の名称を有するシステム又はソフトウェアが,管理対象のシステム全体を中央から管理するものであることに鑑みて,そのように命名されたものであると解される(乙2の2頁)。
ここで,「Centric」が,これに続く名詞を修飾する語であることに鑑みれば,「Centric(セントリック)」と「Manager(マネージャー)」とを分離して把握するのは不自然である。
また,称呼に着目しても,「Centric Manager(セントリック マネージャー)」からは「セントリックマネージャー」の称呼が生じるところ,これは特段冗長ではなく,その全体を一連のものとして把握するのが自然である。
したがって,少なくとも,「Centric Manager(セントリック マネージャー)」は,その全体が一連のものとして把握されるものであり,「Centric(セントリック)」の部分のみを捉えて商標であるということはできない。
以上より,乙各号証において,「Centric」ないし「セントリック」の語は,商標として使用されていないから,かかる記載の存在をもって,本件商標と社会通念上同一の商標が使用された事実を認めることはできない。
(3)被請求人は,乙各号証において本件商標が単独で使用されていない事実を自認した上で,登録商標の使用に際しては多少の付記・付飾を施す場合が決して少なくない事情を考慮すれば,他の登録商標及び語と組み合わせた態様での使用であったとしても,本件商標が使用されているものと理解するのが相当である,と主張する。
しかしながら,他の商標や語と組み合わせた態様での使用が,なお本件商標の使用であるといえるかどうかは,実際の使用態様に鑑み判断されるべき事項であって,かかる組合せが当然に本件商標の使用であると評価できる訳ではない。
なお,被請求人は,その主張の根拠として,他の登録商標の使用実態を挙げるが(乙6ないし乙9),これらは,「Centric」ないし「セントリック」の語の使用態様と同様であるとはいえないし,また,不使用取消審判において登録商標と社会通念上同一の商標使用の有無が問題となった事例でもない。
3 口頭審理陳述要領書(平成27年3月25日付け)
(1)乙各号証から読み取れる事実は,「Systemwalker Centric Manager(システムウォーカー セントリック マネージャー)」がシステムないしソフトウェアの名称として使用されている事実にすぎない。
乙各号証には,「Centric(セントリック)」のみが単独で使用されている例は一切見あたらない。
(2)乙第18号証には,「Systemwalker Centric Manager」以外にも,「Systemwalker Service Quality Coordinator」や「Systemwalker Operation Manager」など,「Systemwalker」の語を冠する商品が存在する旨の記載がある。
したがって,乙第18号証からは,「Systemwalker」とは,被請求人が取り扱う,ある商品グループに属する商品の名称に冠せられる語であり,それに続く部分(上記の例でいえば「Centric Manager」「Service Quality Coordinator」「Operation Manager」)は,当該グループに属する個々の商品を区別・特定するために付された名称であると,一応は解することができる。
しかし,そのように解したとしても,「Centric Manager(セントリック マネージャー)」は依然として一体として把握され,「Centric(セントリック)」と「Manager(マネージャー)」を分離して把握することはできない。
以上のとおり,「Systemwalker Centric Manage「(システムウォーカー セントリック マネージャー)」のうち,少なくとも「Centric Manager(セントリック マネージャー)」は一体として把握されるものであり,「Centric(セントリック)」はその一部分にすぎず,「Centric(セントリック)」の部分のみを取り出して,この部分が単独で独立した商標として使用されていたということはできない。
(3)これに対し,被請求人は,「Manager」の語は「管理用ソフトウェア」を意味する普通名称である,と主張する。
しかしながら,「Manager(マネージャー)」の語が,「管理用ソフトウェア」を意味する普通名称として需要者に認識されているという事実は,そもそも存在しない。この点,辞書には「マネージャー」の意味として「管理用ソフトウェア」ないしこれに類する意味は挙げられておらず(甲3及び甲4),そもそも,被請求人自身,上記の主張を裏付ける辞書等の証拠を一切提出していない。
なお,前述のとおり,「Manager(マネージャー)」の語は「管理者」を意味する英単語であることから,「電子計算機用プログラム」との関係では,管理機能を有するプログラムの名称の一部,あるいはプログラムが有する管理機能の名称の一部として「Manager(マネージャー)」の語が使用される例が多いことは事実である(例えば,「Windowsタスク マネージャー」は,Windows上で実行されているプログラム等(タスク)を管理するプログラムの名称である)。
しかしながら,そのことと,「Manager(マネージャー)」の語が,それ自体が単独で使用された場合に「管理用ソフトウェア」を意味する普通名称として需要者に認識されるものであるか否かは,全く次元の異なる話である。
また,被請求人は,「管理用ソフトウェア」を意味する「Manager」と「Systemwalker」を組み合わせたものも使用しており,他社も「Manager」と他の商標を組み合わせて使用していると主張する。
しかしながら,乙第18号証及び乙第19号証を見ても,「Manager」の語が商品の名称の一部として使用されている例がいくつか記載されているにすぎず,これらの証拠は,「Manager」の語が「管理用ソフトウェア」を意味する普通名称として需要者に認識されていることを,何ら示すものではない。
したがって,「Centric Manager(セントリック マネージャー)」の語に接した需要者は,「Centric(セントリック)」の部分を商標,「Manager(マネージャー)」の部分を商品の普通名称として把握するものではない。
(4)商標法第2条第3項第8号の使用について
乙第11号証には,「Systemwalker Centric Manager」のカタログの掲載日として「2013年2月12日」との記載が存在する。
しかしながら,乙第11号証は,右下に記載された日付から分かるとおり,平成27年3月6日の時点における被請求人のウェブサイトの状況を示したものにすぎず,2013年(平成25年)2月12日当時のものではない。
また,乙第12号証及び乙第13号証には,カタログの作成日として,それぞれ「2012年9月」及び「2013年2月」との記載が存在する。
しかしながら,これらのカタログが,本当に2012年(平成24年)9月ないし2013年(平成25年)2月当時に作成され,被請求人のウェブサイトに掲載されたものであるか否かについては,かかる事実を裏付ける,第三者の作成にかかる書類等の証拠は存在しない。
なお,被請求人は,これらのカタログについて,印刷業者に対する発注書,印刷業者からの納品書・請求書等の取引書類が存在しないことを自認している。
(5)商標法第2条第3項第1号の使用について
被請求人は,CD-ROM及び包装の写真,並びに,パソコン画面を印刷したものを提出する(乙14)が,CD-ROMの写真から,CD-ROM上に「Copyright(c)FUJITSU LIMITED 2013-2014」との記載があることが読み取れる。
しかしながら,この記載は単なる著作権表示にすぎず,ここに記載されている時期に当該CD-ROMが作成されたことを意味するものではない。
なお,当該CD-ROM上には「Systemwalker Centric Manager\Standard Editionメディアパック(64bit)V15.1.0」との記載があるが,被請求人のウェブサイト(甲5)には,「Systemwalker Centric Manager」の「V15.1.0」の販売が開始されたのは早くとも2014年(平成26年)11月10日であるとの記載があり,これは,平成23年1月7日から平成26年1月6日までの3年間(以下「要証期間」という。)の後である。
したがって,要証期間に上記CD-ROMに商標が付されたとの被請求人の主張は,被請求人自身のウェブサイトの記載と矛盾する。
また,パソコン画面を印刷したものについては,被請求人は,これが購入申し込みのためのウェブサイトを印刷したものであると主張するが,これを見る限りでは,何らかのログイン画面であるということしか分からず,これが購入申し込みのためのウェブサイトであるといった事実を読み取ることはできない。
また,画面の下の方に著作権表示らしきものが見え,極めて不鮮明ではあるものの「Copyright1995-2013 FUJITSU LIMITED」と記載されているとすれば,上記CD-ROMの著作権表示と合致しない。
(6)商標法第2条第3項第2号の使用について
乙第16号証及び乙第17号証は,被請求人の内部システムに保存されている情報を印刷したものと解されるところ,そこに記載されている取引が当時,実際に行われたことを裏付ける,第三者の作成にかかる書類等の証拠(例えば,被請求人の取引先が作成した発注書・受領書等)は存在しない。
なお,乙第16号証及び乙第17号証は,注文・受注日,納期等の情報は一致しているものの,商品及び数量は異なっており,両者がどのような関係にあるのかは不明である。
また,乙第15号証は,被請求人がその取引先に対して商品を納品する際に発行した書類であると解されるが,表題は「受取書」となっている。「受取書」は,通常は商品を受領した側が納品した側に対して発行するものであるところ,かかる書類を,商品を納品した側である被請求人が発行するというのは不自然である。
乙第15号証において取引されている商品のバージョンは「11.X」と記載されているところ,乙第10号証によれば,「Systemwalker Centric Manager」の「11.X」の販売が開始されたのは,遅くとも2004年(平成16年)である。しかも,その直後にはより新しいバージョンの商品の販売が開始され,その後も繰り返しバージョンアップが行われている。
このように,乙第15号証に記載されている2012年(平成24年)になって,古いバージョンの商品について取引が行われるのは,不自然であるといわざるを得ない。
したがって,乙第15号証の内容はにわかに信用することはできず,乙第15号証に記載されているような取引が当時,実際に行われたことを十分に裏付けるものとはいえない。
4 上申書(平成27年5月27日付け)
被請求人が提出したいずれの証拠によっても,本件商標の使用は認められず,「Systemwalker Centric Manager」又は「Centric Manager」と表示されており,これらは,本件商標と,社会通念においても同一とはいえないものである(甲6ないし甲8)。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める,と答弁し,その理由を答弁書,口頭審理陳述要領書及び上申書において要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第23号証を提出した。
1 答弁の理由
本件商標の権利者は,要証期間に我が国においてその請求に係る指定商品中「電子計算機用プログラム」について,本件商標を使用している。
(1)商標の使用者
乙第1号証ないし乙第4号証の「製品カタログ」には,被請求人である「富士通株式会社」,本社所在地である「〒105-7123 東京都港区新橋1-5-2汐留シティセンター」,商品の取扱窓口の表示である「富士通コンタクトライン」及び「0120-933-200」が表示されている。
(2)使用に係る商品
乙第1号証ないし乙第4号証の「製品カタログ」には,請求に係る指定商品「電子計算機用プログラム」の商品名が記載されている。
(3)使用に係る商標
乙第1号証ないし乙第4号証の「製品カタログ」には,本件商標を構成している「Centric」及びその読み仮名の「セントリック」が二段にて併記されている。
また,乙第1号証ないし乙第4号証の「製品カタログ」においては,本件商標は,被請求人が商標登録している“FUJITSU”及び“Systemwalker”並びに,指定商品「電子計算機用プログラム」の分野において通常,商品の種類を指すものとして併記される場合の多い「Software」の語,及び管理機能を有するソフトウェアの名称に付記されることの多い「Manager」等の語と組み合わされた態様で掲載されており,本件商標が単独で使用されていることを示すものではないが,乙第5号証の昭和58年審判第15367号の審決理由に記載の「登録商標の使用に際しては多少の付記,付飾を施す場合が決して少なくない事情」を考慮すれば,上記のように他の登録商標及び語と組み合わせた態様での使用であったとしても,本件商標が使用されているものと理解することが相当であるといえる。
なお,乙第6号証及び乙第7号証が示すとおり,同業の他者が同様に登録商標を他の複数の登録商標や複数の語と組み合わせた態様にて使用していることが現状であるところ,当該態様での使用が登録商標の使用に該当しないとするのであれば,乙第8号証及び乙第9号証の登録商標は不使用を理由として取り消される結果となり,妥当でないものと考える。
(4)使用時期
乙第1号証には発行日として「2013年2月」,乙第2号証には発行日として「2012年3月」,乙第3号証には「2012年9月」,及び乙第4号証には「2013年11月」が記載され,乙第10号証の被請求人のWebページには本件商標を使用した製品の販売開始時期が2003年から2013年に至るまで記載されている。
2 口頭審理陳述要領書(平成27年3月11日付け)
(1)商標法第2条第3項第8号の使用
本件商標権者である被請求人は,2010年以降,本件商標が使用された電子計算機用プログラムについては紙媒体による製品カタログ等を頒布せず,自身のウェブサイトで公開し需要者がこれらを閲覧ないしはダウンロードするという電磁的方法によって提供している。
したがって,印刷業者に対する発注書,印刷業者からの納品書及び請求書等の取引書類は存在しない。
一方,被請求人はウェブサイトで公開するにあたり,その製品カタログがいつの時期のものであるかを需要者に周知徹底させるために掲載日を明示している。
本件商標が使用された電子計算機用プログラムのカタログが掲載されたウェブサイトのURLは「http://systemwalker.fujitsu.com/cgi-bin/mksearch.cgi?fmt=%2Fjp%2Fcatalog%2Fcatalog&itype=catalog-systemwalker&ice11010=Systemwalker」である(乙11)。
このウェブサイトに掲載されているカタログの掲載日には,要証期間である2013年2月12日のものがある。
請求人は2013年2月12日に掲載された「カタログ番号:CZ4231-16/発行日:2012年9月」(乙12)及び「カタログ番号:CZ4288/発行日:2013年2月」(乙13)の最後の頁の右下欄外に「CZ4231-16」及び「CZ4288」があることから,乙第12号証及び乙第13号証のカタログが,乙第11号証のウェブサイトにおいて掲載日2013年2月12日の「Systemwalker Centric Manager」なるタイトルのものであることが確認できる。
そして,このカタログに掲載された商品が,取消請求に係る商品「電子計算機用プログラム」であることは明らかであり,この点について請求人も争っていない。
以上のことからして,要証期間に商品に関する広告に本件商標を付して展示ないしは商品に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供する行為があったことは明らかである。
(2)商標法第2条第3項第1号の使用
本件商標が使用された「電子計算機用プログラム」を記憶媒体に記憶させて販売しており,その記憶媒体の写真及びその包装の写真並びに購入申し込みのためのウェブサイト(乙14)の写真から,記憶媒体及び包装容器にカタログと同じ商標が表示されていることが判る。
この記憶媒体上には,「Microsoft*Windows Server*2012」なる表示があり,これは,本件商標が使用された「電子計算機用プログラム」が「Microsoft*Windows 2012年版」に対応したものであることを示すものである。
また,「Copylight*FUJITSU LIMITED 2013-2014」の記述がある。
このことから,本件商標が要証期間に商品又は商品の包装に付されたことは明らかである。
(3)商標法第2条第3項第2号の使用
要証期間に本件商標が使用された「電子計算機用プログラム」を販売したことを立証する,受取書(写し),注文(新規)・基本情報(打ち出し)及び検収情報・基本情報(打ち出し)を提出する(乙15ないし乙17)。
受取書には,「Systemwalker Centric Manager Enterprise Editionサーバライセンス(マネージャ用)11.x」,「Systemwalker Centric Manager Enterprise Edition 追加プロセッサライセンス(マネージャ用)11.x」,「物品供給者企業名富士通株式会社」及び「注文年月日2012.09.03 納期2012.09.30」の記述がある。
注文(新規)・基本情報には,「Systemwalker Centric Manager Enterprise Editionメディアパック(64bit)VI3(13.4) Systemwalker Centric Manager standard Edition 1プロセッサライセンス(エージェント用)V13」,「受注企業名 富士通株式会社」及び「注文年月日2013/09/25 受注日年月日2013/09/26 納期2013/09/30」の記述がある。
検収情報・基本情報には,「Systemwalker Centric Manager Enterprise Editionプロセッサライセンス(エージェント用)V13」,「受注企業名富士通株式会社」及び「検収日2013/09/30 注文年月日2013/09/25 受注日年月日2013/09/26 納期2013/09/30」の記述がある。
注文(新規)・基本情報及び検収情報・基本情報は,ウェブサイト上でやり取りされているため,署名又は捺印が出来なかった。
以上のことから,要証期間に本件商標が使用された「電子計算機用プログラム」が譲渡ないしは引き渡しされていたことは明らかである。
(4)弁駁書に対する答弁
請求人は,本件商標が「Systemwalker Centric Manager(システムウォーカー セントリック マネージャー)」の一部として使用されているにすぎず,本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていた事実を認めることができないと主張している。
しかるに,「Systemwalker」という被請求人の三大ミドルウェアと一つであり,「Centric」はこの「Systemwalker」の導入・監視・トラブル復旧・評価をするための管理用ソフトウェアであるが故に「Systemwalker Centric」と表示されるものであり,「Manager」は「管理用ソフトウェア」を意味する普通名称であるから,需要者は「Systemwalker Centric Manager」に接した場合には,「Systemwalker」の商品群の一つである管理用ソフトウェアの商標「Centric」が使用されていると理解する。
したがって,「Systemwalker Centric Manager」の使用であっても本件商標が使用されていたと解される。
被請求人は,「Systemwalker Centric Manager」以外にも「Systemwalker Runbook Automation」,「Systemwalker Desktop Patrol」及び「Systemwalker Desktop Patrol」を使用し,また,「管理用ソフトウェア」を意味する「Manager」と「Systemwalker」を組み合わせたものも使用している(乙18)。
さらに,被請求人以外のエレクトロニクス企業も「Manager」と他の商標を組み合わせて使用している(乙19)。
これらの事実から,本件商標が「Systemwalker」と「管理用ソフトウェア」を意味する普通名称である「Manager」と組み合わせて使用されていることは取引上一般に行なわれていることが判る。
そうであるとすれば,需要者は,「Systemwalker Centric Manager」の中で本件商標が使用されているとごく自然に理解する。
したがって,「Systemwalker Centric Manager」の使用を示すカタログ等は,本件商標の使用を立証できる。
4 上申書(平成27年5月7日付け)
(1)乙第13号証の最後の頁の下方に「商品体系/価格(標準価格,税別)Systemwalker Centric Manager Lite Edition V13 メディアパック 10,000円 サーバライセンス 250,000円 メディアパックとサーバライセンスをご購入ください。1つのサーバライセンスで,管理サーバ,30サーバ以内の非管理サーバの管理,監視コンソール(Webコンソール)を利用できます。」の記載がある。
商品「電子計算機用プログラム」は著作物でもあるので,著作権法によって守られており,電子計算機用プログラムのインストールを行うには,著作権者の許諾が必要である。この許諾のことをライセンスと一般に呼び,購入された電子計算機用プログラムはライセンスで定められた数を超えてインストールすることはできない。
被請求人より本件商標が使用された「電子計算機用プログラム」の購入に当たっては,「電子計算機用プログラム」がインストールされた記憶媒体であるメディアパックと必要となるランセンスの数とを購入することになる(乙20)。
この乙第20号証のURLは,「http://systemwalker.fujitsu.com/jp/centricmgr/price/#comment」である。
本件商標が使用された「電子計算機用プログラム」のライセンスの体系は乙第21号証で示されているコアライセンスとサーバライセンスであり,このURLは「http://software.fujitsu.com/jp/license/」である。
このように,「メディアパック 10,000円 サーバライセンス 250,000円 メディアパックとサーバライセンスをご購入ください。」の記述から,乙第12号証及び乙第13号証中の「電子計算機用プログラム」が「商品」であることは明らかである。
さらに,本件商標が使用された「電子計算機用プログラム」が商品であることを示すものとして,当該電子計算機用プログラムが要証期間である2013年国内イベント管理ツール市場ベンダー別売上シェアの一位を獲得した記事が掲載されたウェブサイト(乙22),並びに本件商標が使用された「電子計算機用プログラム」を購入した株式会社バンダイナムコホールディングス,南海電鉄株式会社及び株式会社読売新聞東京本社の事例が掲載されたウェブサイト(乙23)を提出する。
以上述べたことからして,乙第12号証及び乙第13号証中の「電子計算機用プログラム」が「商品」であるので,要証期間に商品に関する広告に本件商標を付して展示ないしは商品に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供する行為があったことは明らかである。
また,本件商標が使用された「電子計算機用プログラム」が商品である以上,受取書,注文(新規)・基本情報及び検収情報・基本情報から,要証期間に商標法第2条第3項第2号の使用がされていたことは明らかである。
(2)この点に関して,請求人は,乙第16号証と乙第17号証とは注文・受注日,納期等の情報は一致するものの,商品及び数量は異なっており,両者がどのような関係にあるか不明であると述べている。
しかしながら,被請求人をはじめとする電子計算機用プログラムを販売する者は注文をした者と相談・検討し,最終的に注文者のシステムに合った数を納入するものであり,そのため,往々にして注文した数と納入した数とが相違することが起こる。
また,請求人は「受領書」を被請求人側で作成するのは不自然であると主張されている。
しかしながら,電子計算機用プログラムの取引分野では注文者である顧客の事務作業負担を軽減するため,納入者(販売者)の側で受領書を作成し,注文者は単に受領印ないしは署名をするだけで足りるようにしている。
さらにまた,請求人は2004年の販売が開始されたものが2012年になっても販売されるのは不自然であると主張されている。
しかしながら,電子計算機用プログラムは購入者の電子計算機システムに合わないと作動しないものである。
したがって,購入者の側の電子計算機システムが古いと,古いバージョンの電子計算機用プログラムを販売する必要があり,被請求人の側で購入者に対して多額の費用がかかる電子計算機システム自体の更新を求めることはできない。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び提出に係る証拠によれば,本件商標の使用について,以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は,被請求人に係る「製品カタログ」であり,その表紙の右上部分には,図形及び「FUJITSU」の文字が表示され,左上部分には,図形と「Systemwalker」,「システムウォーカー セントリック マネージャー」,「Systemwalker Cenric Manager」及び「V13.5データシート(機能紹介資料)」の文字が表示され,中央に表された図形の下には,「システムの導入/監視/トラブル復旧/評価を支援する統合管理」の記載がある。
その3頁目は,「業務の監視」についての業務を構成するシステム,ネットワーク,アプリケーションなどに関する記載であり,「エージェントのインストール形態」の説明に「運用管理サーバ,および部門管理サーバからは,Systemwalker Cenric Managerのエージェントをインストールしているサーバとインストールしていないサーバの両方を監視することができます。」の記載及び関連を示す図が掲載されている。
そして,その最終ページには,「商品体系/価格(標準価格,税別)」の「商品名称」には,「Systemwalker Cenric Manager Standard Edition V13」及び「Systemwalker Cenric Manager Enterprise Editon V13」についての記載があり,左下部分には,「富士通株式会社」及びその所在地と,右下部分には,「CZ4270-5-2013年2月」の記載がある。
(2)乙第2号証は,被請求人に係る「製品カタログ」であり,その表紙の右上部分及び左上部分には,乙第1号証と同様の表示があり,「Systemwalker Cenric Manager」の表示の下には「システムの導入/監視/トラブル復旧/評価を支援する統合管理」の記載がある。
その3頁目は,「安定稼働『わかりやすい監視と復旧支援』」について記載され,右下部分には,「Systemwalker Cenric Manager」について連携を示す図が掲載されている。
そして,その最終ページには,「製品体系」が記載され,左下部分には,「富士通株式会社」及びその所在地と,右下部分には,「CZ4231-15-2012年3月M」の記載がある。
(3)乙第3号証は,乙第2号証と同様の内容の被請求人に係る「製品カタログ」であり,最終ページには,「製品体系」が記載され,「富士通株式会社」及びその所在地と,「CZ4231-16-2012年9月M」の記載がある。
(4)乙第4号証は,被請求人に係る「製品カタログ」であり,その1葉目の右上部分には,図形及び「FUJITSU」の文字が表示され,左上部分には,「製品カタログ FUJITSU Software Systemwalker Centric Manager」,「FUJITSU Software」,「システムウォーカー セントリック マネージャー」,「Systemwalker Cenric Manager V15」及び「『システム運用』と『ICT資産』の統合管理」の文字が表示されている。
そして,「FUJITSU Software Systemwalker Cenric Manager V15は,新たに『ICT資産管理』をサポートし,センター全体のシステム運用とICT資産を一元管理します。」の記載があり,その説明図が掲載されている。
また,2葉目の「標準価格」には,製品名が「Systemwaker Centric Manager Standard Edition V15.1.1プロセッサライセンス」について「標準価格(税別)300,000円より」の記載,「*製品ご購入の際,メディアパック(10,000円(税別))というインストール媒体のみの商品が必要です。」の記載があり,「富士通株式会社」及びその所在地と,「CZ4295-2013年11月」の記載がある。
(5)乙第11号証は,「FIJITSU Software Systemwalker カタログ・資料」が掲載された被請求人のウェブサイト(写し)であり,その1葉目の「Systemwalkerに関連するカタログ・資料の一覧表」において,「資料名」が「Systemwalker Cenric Manager(カタログ番号:CZ4231-16/発行日:2012年9月)」について,「掲載日」が「2013年2月12日」であること,その3葉目には,「資料名」が「Systemwalker Cenric Manager(LiteEdition)(カタログ番号:CZ4288/発行日:2013年2月)」について,「掲載日」が「2013年2月12日」であることが記載されている。
(6)乙第12号証は,被請求人のウェブサイトに掲載された「FUJITSU Software」の「製品カタログ」であり,その表紙の右上部分には,図形及び「FUJITSU」の文字が表示され,左上部分には,「FUJITSU Software」,「システムウォーカー セントリック マネージャー」,「Systemwalker Cenric Manager」及び「システムの導入/監視/トラブル復旧/評価を支援する統合管理」の文字が表示されている。
表紙の図形や色彩は異なるものの,その内容は,乙第2号証及び乙第3号証と同様であり,最終ページには,「製品体系」が記載され,左下部分には,「富士通株式会社」及びその所在地と,「CZ4231-16-2012年9月M」の記載がある。
(7)乙第13号証は,被請求人のウェブサイトに掲載された「FUJITSU Software」の「製品カタログ」であり,その1葉目の右上部分には,図形及び「FUJITSU」の文字が表示され,左上部分には,「製品カタログ FUJITSU Software Systemwalker Centric Manager Lite Edition」,「FUJITSU Software」,「システムウォーカー セントリック マネージャー ライト Edition V13.5」,「Systemwalker Cenric Manager Lite Edition V13.5」及び「小規模システムに必要な運用管理機能をパッケージ」の文字が表示され,その下には,「本商品は,小規模システムでの運用管理作業を支援します。」の記載があり,その2葉目には,「商品体系/価格(標準価格,税別)」として「メディアパック 10,000円」及び「サーバライセンス 250,000円」の記載,「富士通株式会社」及びその所在地と,「CZ4288-2013年2月」の記載がある。
(8)乙第14号証は,「電子計算機用プログラム」が記憶された記憶媒体の写真及びその包装の写真(1葉目ないし3葉目)及び購入申し込みのためのウェブサイト(写し,4葉目)であり,該記録媒体の表面には,図形及び「FUJITSU」,「Systemwalker Cenric Manager」,「Standard Edition メディアパック(64bit)V15.1.0」,「サーバプログラム(64bit)Disc」の各文字が表示され,また,包装にも同様の記載がある。
そして,これらの記載からすれば,該商品は,2013年11月の商品カタログに掲載されたものと推認される(乙4)。
(9)乙第15号証は,2012年9月11日付けの「受取書」(写し)であり,「Systemwalker Centric Manager Enterprise Editon サーバライセンス(マネージャ用)11.X」とその「追加」についてのものである。
(10)乙第16号証は,「注文(新規)・基本情報」(写し)であり,「受注年月日」を「2013年9月26日」,「納期」を「2013年9月30日」とし,「製品名」を「Systemwalker Centric Manager Enterprise Edition メディアパック(64bit)V13(13.4)」及び「Systemwalker Centric Manager Standard Edition1 プロセッサライセンス(エージェント用)V13」とするものである。
(11)乙第17号証は,「検収情報・基本情報」(写し)であり,「受注年月日」を「2013年9月26日」,「納期」を「2013年9月30日」とし,「製品名」を「Systemwalker Centric Manager Enterprise Edition プロセッサライセンス(エージェント用)V13」とするものである。
2 上記1によれば,以下のとおり判断できる。
(1)商標法第2条第3項第8号の使用について
本件商標権者である「富士通株式会社」は,要証期間である2012年(平成24年)9月に,「Systemwalker Cenric Manager」(乙3及び乙12)と表示した商品「電子計算機用プログラム」に関する広告である製品カタログ(カタログ番号:CZ4231-16-2012年9月M)を,2013年(平成25年)2月に,「Systemwalker Cenric Manager(LiteEditon)」(乙13)と表示した商品「電子計算機用プログラム」に関する広告である製品カタログ(カタログ番号:CZ4288-2013年2月)を,自身のウェブサイトに掲載し頒布したものと認められる(乙11)。
なお,乙第1号証,乙第2号証及び乙第4号証の製品カタログは,ウェブサイトに掲載された事実を確認することができず,要証期間に頒布等をされたものということができない。
(2)商標法第2条第3項第1号の使用について
本件商標権者の「Systemwalker Cenric Manager」,「Standard Edition メディアパック(64bit)V15.1.0」と表示された「電子計算機用プログラム」が記憶された記憶媒体(乙14)は,上記乙第4号証の記載からすれば,要証期間である2013年(平成25年)11月の製品カタログに掲載された商品ということができる。
(3)商標法第2条第3項第2号の使用について
本件商標権者による「注文(新規)・基本情報」及び「検収情報・基本情報」に記載された,「納期」を「2013年9月30日」とする,「Systemwalker Centric Manager Enterprise Edition メディアパック(64bit)V13(13.4)」及び「Systemwalker Centric Manager Standard Edition1 プロセッサライセンス(エージェント用)V13」(乙16及び乙17)は,上記乙第1号証の記載からすれば,要証期間である2013年(平成25年)2月の「電子計算機用プログラム」の製品カタログに掲載された商品に関するものということができる。
なお,乙第15号証については,提出に係る他の証拠をみても,いかなる商品に関するものであるかを確認することができない。
3 「Systemwalker Cenric Manager」(以下「使用商標」という。)が本件商標と社会通念上同一であるかについて
本件商標は,「Centric」の欧文字と「セントリック」の片仮名とを上下二段に書してなるのに対し,上記1において,本件商標権者が,要証期間にウェブサイトに掲載した「製品カタログ」,「記憶媒体」等に表示された使用商標は,「Systemwalker Cenric Manager」の欧文字からなるものであるから,使用商標は,本件商標の書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するものということができない。
そして,本件商標からは,「セントリック」の称呼が生ずるのに対し,使用商標からは,「システムウォーカーセントリックマネージャー」の称呼が生じるものであるから,同一の称呼を生ずるものとはいえない。
また,本件商標は,「中心の[にある]」等の意味を有する英語であることから,「中心の」程の観念を生ずるのに対し,使用商標からは,直ちには特定の観念を生じないものであるから,同一の観念を生ずるものとはいえない。
したがって,使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標ということができない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人が提出した証拠からは,使用商標が本件商標と社会通念上同一の商標ということができず,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,その指定商品のいずれかについて,本件商標を使用していることを証明したものということができない。
また,被請求人は,本件指定商品について,本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-06-25 
結審通知日 2015-06-29 
審決日 2015-07-10 
出願番号 商願平8-67901 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (009)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高野 義三日向野 浩志富田 領一郎 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 井出 英一郎
田中 亨子
登録日 1998-06-26 
登録番号 商標登録第4160411号(T4160411) 
商標の称呼 セントリック 
代理人 橋本 千賀子 
代理人 塚田 美佳子 
復代理人 外川 奈美 
代理人 横山 淳一 
代理人 長谷 玲子 
代理人 青木 篤 
復代理人 田島 壽 

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