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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y08
管理番号 1304061 
審判番号 取消2014-300424 
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-06-06 
確定日 2015-05-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第67374号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第67374号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第67374号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、大正3年6月4日に登録出願、第19類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年8月15日に設定登録され、その後、平成17年5月25日に指定商品を第8類「鋤,くわ,まぐわ,くぎ抜き,鉄つい,縄墨,ねじ回し,スコップ,ショベル,つるはし」とする指定商品の書換登録がされ、また、7回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。
なお、本件審判の請求の登録日は、平成26年6月25日である。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁(平成27年2月27日付け口頭審理陳述要領書を含む。)を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、本件審判の請求日現在において既に登録後3年以上経過しており、しかもこの間、被請求人は、本件商標をその指定商品について使用した事実は存在しない。
したがって、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内(以下「本件要証期間内」という。)に日本国内において、その指定商品について使用していないものであるから、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)使用標章と本件商標との同一性について
乙第3号証及び乙第5号証に示される使用標章は、本件商標と構成を異にし、社会通念上同一の商標とはいえない。
(なお、乙5のショベルの柄に貼付されたラベルに表示された熊の図形及びその下に書された「BEAR」の文字に係る商標、及び乙15の別紙3のラベルに表示された熊の図形及びその下に書された「BEAR」の文字に係る商標を、以下「使用商標」という場合がある。別掲2)
ア 本件商標について
本件商標は、主として、以下の特徴によって構成される。
(ア)黄土色の円形の枠を有し、枠内をより淡い黄土色とし、全ての文字、図形要素は該円形の枠内に配されている。
(イ)前記円形枠の中央部に、黒色の熊の図形が描かれている。
(ウ)前記熊の図形の下方に、「BEAR」の文字を有し、該文字は、両側辺が曲線の略矩形図形に囲まれ、該略矩形図形の下方には、草木模様が施されている。
(エ)前記熊の図形の直左方に、緑色の1本の樹木が描かれている。
(オ)前記熊の図形の右方に、遠方に樹立する3本の樹木が描かれている。
(カ)前記熊は、右方やや手前方向に鼻を向け、凸凹のある岩場のような地面の上に前足を掛け、後足をやや折り曲げており、両前足はほぼ重なって見える。全体的に黒く、目鼻立ちははっきりせず、毛並みも明確に描かれていない。
(キ)前記熊の図形の頭部付近に、「TRADE MARK」の文字が表されている。
イ 使用標章について
使用標章は、主として、以下の特徴によって構成される。
(ア)青色の熊の図形が描かれている。
(イ)前記熊の図形の下方に、「BEAR」の文字を有する。
(ウ)前記熊の図形の周囲及び脚部付近には、青色の陰のような背景が描かれている。
(エ)前記熊は、手前方向に鼻先を向け、いずれの足も曲げずに直立しており、両前足及び後足はそれぞれ重なり合うことなく描かれている。目鼻立ちを認識できる程に描かれており、熊の顔面部及び背部には、毛並みがはっきりと描かれている。
ウ 使用標章と本件商標の対比
上記のとおり、使用標章と本件商標とは、熊の図形及び「BEAR」の文字を有するという点では共通するものの、使用標章には、本件商標に含まれる多くの構成要素が欠落しており、特に、主たる要素である熊の図形については、具体的な外観が異なる結果、もはや同一の商標とは思えない程に構成全体として異なる印象を与える。
そうとすれば、上記使用標章に含まれない本件商標の構成要素はいずれも、本件商標の構成において、視覚的に重要な位置を占めており、また、中心部に描かれる熊の図形は、具体的な態様において明らかに異なる特徴を有する。
これらの重要な構成要素の有無、及び中心部にある熊の図形の特徴の相違によって、使用標章全体から生じる印象は、本件商標とは明らかに異なるものである。
なお、被請求人は、乙第14号証によって、昭和59年2月17日付商標権存続期間更新登録出願が登録された旨の事実をもって、使用標章が、本件商標と「同一の、図形と文字の結合商標である」と述べているが、当時の更新登録出願制度における登録商標との同一性の判断基準は、必ずしも、50条1項におけるそれと相同するものではなく、当該更新登録出願の登録が許可されたことの一事をもって、50条1項における「社会通念上同一と認められる商標」に該当することの証左とはならない。また、上記更新登録出願に添付された使用説明書中のスコップ写真に示される標章は、乙第3号証及び乙第5号証に示される使用標章と一致していないようである(不鮮明であるため詳細に確認することができない。)。
(2)使用標章の継続的使用事実について
乙第3号証ないし乙第13号証は、使用標章を「スコップ,ショベル」について継続的に使用している事実を証するに不十分である。
ア 乙第3号証及び乙第4号証
被請求人(浅香工業株式会社、以下「浅香工業」という場合がある。)は、乙第3号証の「社内規格」及び乙第4号証の「製品生産高集計表」をもって、遅くとも昭和53年頃から、現在においても、本件商標を使用していると述べる。もっとも、乙第3号証は、その表紙の記載事項から、昭和53年から昭和62年までの間に有効とされていたものであることが推測され、現在より27年余り前に作成された資料である。かかる乙第3号証は、該証拠に示すラベルが現在に至るまで使用継続されていることを証明するものではない。
また、乙第4号証は、「熊 ショベル 丸 A柄」「熊 スコップ #2 A柄」と品名が記載されているのみであり、仮に、それらの商品が本件審判の予告登録日である平成26年6月23日前3年以内に販売されたとしても、それらが乙第3号証または乙第5号証に示される使用標章と同一の標章を付したものであることを証するものではない。
また、同社内規格及び製品生産高集計表は、被請求人における内部的な指示により、予告登録日以降に作成された恣意的な内部資料であって、客観性を有しないものであり、その真正性が裏付けられる客観的な証拠は提出されていない。
イ 乙第5号証及び乙第6号証
まず、乙第5号証及び乙第6号証は、被請求人が平成26年8月5日付で作成、撮影されたものであり、これは、本件審判の予告登録日以降であって、本件審判の請求内容を被請求人が知った後に作成されたものであることから、本件審判における要証期間内の本件商標の使用事実を裏付ける証拠として、そもそも考慮することは妥当ではない。
また、被請求人は、乙第5号証の写真に示されるラベルに印字されたJANコードが、乙第6号証の「品名照会データ」をもって、同データ記載の品名「熊 ショベル 丸 A柄」(品コード「000437」)に使用されることを証する旨述べるが、乙第6号証は、被請求人における内部的な指示により、本件審判の予告登録日以降に作成された恣意的な内部資料にすぎず、客観性を有しないものであり、その真正性が裏付けられる客観的な証拠は提出されていない。
ウ 乙第7号証ないし乙第13号証
乙第7号証の株式会社ジュンテンドー(以下「ジュンテンドー」という。)の「発注伝票」には、乙第5号証の写真に示されるラベルに印字されたJANコードが記載されており、「クマ ショベル アカエ マル」の記載があるものの、乙第7号証に示される取引対象の商品に、乙第5号証の写真に示されるラベルが貼付されていたかは明らかではない。すなわち、仮に、同伝票をもって、同JANコードに対応する商品の注文を受けた事実が証明できるとしても、当該商品に、乙第5号証の写真に示されるラベルが貼付されていたとは限らないからである。乙第7号証は、乙第5号証が、被請求人が本件審判の請求を知った後に、同一のJANコードと乙第3号証に示される標章を表示したラベルを作成して、取引先のホームセンターに陳列している商品に貼付し、これを撮影したものであるという可能性を否定するものではない。
乙第8号証、乙第9号証、乙第11号証及び乙第12号証は、品コード「000437」品名「熊 ショベル 丸 A柄」なる商品5丁の販売を証明しようとするものではあるが、いずれも、被請求人における内部的な指示により、本件審判の予告登録日以降に作成された恣意的な内部資料であって、客観性を有しないものであり、その真正性が裏付けられる客観的な証拠は提出されていない。
乙第10号証は、被請求人を荷送人とする送り状であるが、単に荷物の数量が示されているのみで、乙第7号証にて受注した商品を発送したものであるかは明らかではない。
乙第13号証は、乙第5号証の写真に示されるラベルに印字されたJANコードが記載されており、「クマ ショベル アカエ マル」の記載があるものの、乙第7号証と同様、乙第5号証の写真に示されるラベルが貼付されていたかは明らかではなく、これのみをもって、ホームセンター「ジュンテンドー」が平成26年5月6日に受領した商品が、本件商標または乙第5号証に示される使用標章を使用したものであることを証明することはできない。
エ いわゆる「熊印」商品の販売事実について
上記証拠資料に基づいて、被請求人は、本件商標を、ホームセンター「ジュンテンドー」1社に対して、平成26年5月6日に、「熊 ショベル 丸 A柄」なる製品を販売したことを証明しようとするものであり、単に1回のみの取引に過ぎない。これをもって、継続的に使用してきたことを立証できるものではなく、もし乙第4号証に記載のとおり、本件商標を使用したシャベル、スコップを継続的に製造してきたのであれば、複数の一定期間に亘る取引事実を示す証拠書類を提出できたはずである。
(3)以上の理由から、被請求人の提出した乙各号証は、本件審判の請求の予告登録前3年以内の本件商標の日本国内における指定商品についての使用事実を立証するものではない。
3 平成27年2月27日付け口頭審理陳述要領書
(1)乙第15号証ないし乙第19号証について
被請求人提出に係る乙第15号証ないし乙第19号証についての証拠書類は、いずれも使用標章が付されたショベルが要証期間内において取引された事実を客観的に証明するものではなく、それ以外の取引が存在した事実を証明するものではない。
(2)本件商標と使用標章との社会通念上同一性について
被請求人は、本件商標が、乙第3号証等に示される使用標章と社会通念上同一である旨主張するが、併記してみても明らかなように、使用標章は、本件商標と、その外観において顕著に相違するものである。
被請求人は、口頭審理陳述要領書第6頁において、「使用商標が有しない本件商標の構成として指摘しているのは、いずれも当該図形部分における背景部分である」と述べるが、本件商標は、一頭の熊が林間の凹凸のある大地を歩行する自然風景を丁寧かつ仔細なタッチで描写するものであって、「BEAR」の文字要素を含めた全ての要素を円形の枠内で不可分一体に構成してなるものであり、使用標章に含まれない本件商標における図形要素はいずれも、直ちにそこから分離、捨象可能な背景図形ではない。
被請求人は、「使用商標においては、前記背景部分は省略されておらず、斜線にて簡易に表現されていると共に、前記斜線に構成されている背景部分の外縁は略円形を呈しており、本件商標と共通している」と述べるが、本件商標における熊図形の周囲に配された各図形要素と、使用標章において表現されている斜線部分とは、顕著に相違しており、上記斜線部分の外縁もまた、本件商標の外縁(真円)と明らかに相違し、この部分が共通しているとはいい難い。また、使用標章における本件商標の構成要素の欠落は、有色から無色といった単純な色彩の変更でも、単純かつありふれた図形要素を省略するものでもなく、上述のとおり丁寧かつ仔細に各図形要素が描写された本件商標と比較するとき、使用標章は、社会通念上同一の範躊として認められる抽象化の域をもはや逸脱しているというべきである。すなわち、これらの要素の欠落は、本件商標における本質的かつ具体的な形態的特徴の欠如であって、本件商標全体の識別性に十分影響するものである。
よって、使用標章は、本件商標との関係において、第50条第1項に定める「外観において同視される図形からなる商標」にも「社会通念上同一と認められる商標」にも該当しないというべきである。
(3)その他、被請求人から本件商標の使用を示すような新たな証拠は、提出されていない。
(4)以上より、被請求人によって提出された乙各号証はいずれも、本件請求に係る指定商品に関する本件商標の使用を十分に示すものではないため、被請求人が要証期間内に本件請求にかかる指定商品に本件商標を使用していたとはいえない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由(平成27年2月16日付け口頭審理陳述要領書を含む。)を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第19号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標について
本件商標は、円状に縁取られた図形の略中心に、黒色に彩られ、4本の脚で横向きで立ち、頭部を若干正面側に向けた熊の図形を配すると共に、略円状に木影を若干配した図形と、前記図形の下部に欧文字の「BEAR」を同大同書かつ一連に横書きしてなる、図形と文字の結合商標である。
(2)商標権者について
商標権者である浅香工業は、トップブランドである「金象」を始めとする、多数の登録商標を有しており、商品の種類、等級、販売手法、販売地域等に適宜合わせて、登録商標を使用している。これらの多数の商品展開のうちには、いわゆる「熊」印シリーズとして商品展開している商品群があり、主として「スコップ,ショベル」に、一貫して本件商標を使用している。
(3)使用事実の立証について
ア 浅香工業は、「熊」印シリーズの主要商標として、主に商品「スコップ,ショベル」について、その使用開始時期は明確ではないが、乙第3号証の「社内規格」(同社生産部作成)に示すように、遅くとも、昭和53年頃から使用しており、現在においても、乙第4号証の「製品生産高集計表」(平成26年8月29日付、同社商品部商品課 城雅夫の指示により入力担当者が作成)に示すように、使用商標を商品「スコップ,ショベル」について継続的に使用している。
イ 熊印ショベルは、例えば、ジュンテンドーに継続的に販売しており、そのジュンテンドーが経営するホームセンター「ジュンテンドー」の主要店舗において継続して販売されている。乙第5号証は、「ホームセンター『ジュンテンドー』の倉敷茶屋町店の店舗写真、店内写真及び展示商品写真」であり、浅香工業の坂上氏が平成26年8月5日に撮影したものである。同号証に写されているショベルの柄の拡大写真には、ショベルの柄に、使用商標が上部に印刷されたラベルが貼付されており、前記ラベルの下部にはJANコードで「4960517000435」と印刷されている。
そして、乙第6号証の「品名照会データ」(平成26年8月5日付、浅香工業の城氏の指示により入力担当者が作成)より、前記JANコード「4960517000435」は、品名「熊ショベル丸A柄」であり(「A柄」は赤柄の略)、品コードは「000437」(又は省略して「437」と記載される場合もある)の商品に使用されるものである。
ウ 以下、本件審判の予告登録日である平成26年(2014年)6月23日より前3年以内である2014年(平成26年)5月5日に使用商標を貼付したショベルを販売した事例を時系列に説明する。
(ア)乙第7号証は、ジュンテンドーから浅香工業に向けた「発注伝票」(平成26年5月4日付、ジュンテンドー入力担当者が作成)であり、同号証により、JANコード「4960517000435」の品名「クマ ショベル アカエ マル」が、発注日2014年5月4日付けで、ジュンテンドー三木配送センターより、5丁発注されていることが立証される。
(イ)乙第8号証は、浅香工業の「品コード 000437」の「熊 ショベル 丸 A柄」についての、倉庫の「入出庫状況データ」(平成26年8月29日付、同社の城雅夫の指示により入力担当者が作成)であり、ジュンテンドーに向けて5丁出荷していることが立証される。なお、浅香工業からジュンテンドーへの出荷業務は富士物流株式会社(以下「富士物流」という。)に委託しているため、生産した本商品は全て富士物流の倉庫に預けている。前記「入出庫状況データ」は浅香工業の倉庫の入出庫状況を表すもので、ジュンテンドーから発注された数量だけ富士物流の倉庫から浅香工業の倉庫に戻し(マイナスの売上げ)、ジュンテンドーへ売り上げ(プラス)を上げている。したがって、ジュンテンドーに販売した数量は、富士物流の在庫より減少している。
(ウ)乙第9号証は、富士物流の「浅香コード:437」の「熊 ショベル 丸 A柄」についての「入出庫明細リスト」(平成26年7月31日付、富士物流の音揃氏が作成)である。同号証によると、2014年5月5日付けで、「浅香コード:437」の「熊 ショベル 丸 A柄」が5丁、ジュンテンドー三木配送センターに向けて出荷されている(富士物流の出荷担当者草刈氏)ことが立証される。
(エ)乙第10号証は、出荷時の「送り状」(平成26年5月5日付、富士物流の音揃氏作成)であり、乙第11号証は、前記送り状に同封の「店別受注明細リスト」(平成26年5月5日付、富士物流の出荷担当者作成)である。前記各号証から、「品コード:437」の「熊 ショベル 丸 A柄」を、ジュンテンドー三木配送センターに向けて出荷した事実が立証される。
(オ)乙第12号証は、浅香工業のジュンテンドーに対する「売上伝票照会」(平成26年5月5日付入力、同社の城雅夫作成)であり、同号証により、2014年5月5日付けで、ジュンテンドー三木配送センターから発注された、品コード「000437」の「熊 ショベル 丸 A柄」が「5丁」は、同年5月5日付けで受注され、同日付で出荷、売上げ処理された事実を立証する。
(カ)乙第13号証は、ジュンテンドーの商品の「受領データ」(平成26年5月6日付、同社の入力担当者作成)であり、ジュンテンドーが荷物受取時に数量をチェックして、そのチェック数をデータで、出荷元(浅香工業)へ送ったものであり、JANコード「4960517000435」の品名「クマ ショベル アカエ マル」を5丁、ジュンテンドーが受領した事実を立証する。
(キ)乙第14号証は、昭和59年2月17日付けで、本件商標を更新登録出願したときの控書類である。同号証において、使用説明書に添付された写真は「角形ショベル」の柄に本件商標を上部に掲載したラベルを貼付したものが撮影されている。
この写真において撮影された商標をもって、同一の商標として特許庁にて認定され、本件商標が更新された事実を立証する。すなわち、同号証によって、乙第3号証及び乙第5号証に掲載されている使用商標は、乙第1号証に掲載される本件商標と同一の図形と文字の結合商標であることを立証する。
2 平成27年2月16日付け口頭審理陳述要領書
(1)補強証拠の提出
乙第15号証は、ジュンテンドーの証明書であり、これにより、乙第7号証の発注伝票は、ジュンテンドーの発注伝票であり、2014年5月4日に浅香工業に向けて発注したものであり、発注内容は真正のものである点、乙第15号証の受領データは、商品の「受領データ」であり、平成26年5月6日付で、ジュンテンドーが荷物受取時に数量をチェックし、そのチェック数をデータで、出荷元(浅香工業)へ送ったものであり、JANコード「4960517000435」の品名「クマショベルアカエマル」を5丁、ジュンテンドーが受領したことを示すデータであり、データの内容は真正のものである点及び乙第17号証の商品ラベルは、乙第7号証及び乙第15号証に記載された品名「クマショベルアカエマル」のショベルの柄に貼付されていたラベルと同一のものである点を証明する。
乙第16号証は、富士物流の証明書であり、これにより、浅香工業からジュンテンドーへの商品の出荷業務は富士物流に委託しており、ジュンテンドーへ向けた商品は富士物流の倉庫に一旦預け、そして、ジュンテンドーから発注された数量だけ富士物流の倉庫から浅香工業の倉庫に戻して(マイナスの売上げ)いる点、乙第9号証の入出庫明細リストは、平成26年7月31日付で富士物流が作製したものであり、その記載内容は真正なものである点、乙第9号証の入出庫明細リストの伝票番号欄の「261705」(入出庫日2014/5/5)は、乙第7号証のジュンテンドーの発注伝票の伝票番号であり、乙第9号証の入出庫明細リストの伝票番号欄の「261705」の該当商品は、乙第7号証のジュンテンドーの発注伝票のJANコード「4960517000435」の品名「クマ ショベル アカエ マル」である点及び乙第16号証の別紙3に貼付のラベルは、乙第7号証に記載された伝票番号欄の「261705」の該当商品「クマ ショベル アカエ マル」のショベルの柄に貼付されていたラベルと同一のものである点を証明する。
乙第17号証は、乙第5号証において表示される商品ラベル、乙第15号証の別紙3に貼付したラベル及び乙第16号証の別紙3に貼付したラベルと同一の商品ラベルであり、乙第17号証により、乙第5号証において表示される商品ラベルをより明確に表示する。
乙第18号証は、被請求人である浅香工業の証明書であり、これによって、平成26年9月2日付けで提出した答弁書に添付した乙第1号証ないし乙第14号証について、正しく複写している点、乙第3号証ないし乙第14号証については、その記載内容は真正である点、乙第15号証の証明書に添付の別紙1は乙第7号証の原本を正しく複写したものであり、別紙2は乙第13号証の原本を正しく複写したものである点、乙第16号証の証明書に添付の別紙1は乙第9号証を正しく複写したものであり、別紙2は乙第7号証の原本を正しく複写したものである点、乙第17号証は、乙第4号証、乙第6号証、乙第8号証、乙第11号証及び乙第12号証に記載の「熊 ショベル 丸 A柄」と記載されたショベル、乙第5号証の写真の丸型ショベル、乙第7号証及び乙第13号証に「クマ ショベル アカエ マル」と記載されたショベル、乙第9号証に記載の伝票番号「291705」及び乙第10号証の記載の商品の夫々の柄に貼付されていたラベルと同一のものである点を証明する。
乙第19号証は、被請求人代理人である弁理士中尾真一が平成27年2月16日に作成した商標対比表でである。
以上のとおり、乙第15号証ないし乙第19号証の提出によって、使用商標の付された使用商品が要証期間内に被請求人により取引されていた事実の立証をより明確に行った。
(2)弁駁書(使用標章の継続的使用事実について)に対する反論
請求人は、使用商標について『継続的に』使用していないので、『継続的に』使用している事実を証するに不十分であると主張するが、使用の事実がないとの主張はされていない。
乙第4号証及び乙第18号証からも、使用商標を継続的に使用している事実に相違はないが、全ての使用を一つ一つ立証する必要はない。使用商標の使用の事実は乙第5号証ないし乙第13号証並びに乙第15号証ないし乙第18号証により裏付けられており、少なくとも、商標登録の取消を免れる使用については十分に立証を行っている。
請求人が提出する甲第1号証及び甲第2号証については、作成者等が不明であり、株式会社ニッショーについては所在地さえも不明であり、私文書として真正なものと認めることはできない。
先ず、甲第1号証の「調査報告書」については、その報告内容のうち、2009年に製造を終了、又は廃盤にしたという記載部分については否認する。少なくとも昭和53年頃から、現在に至るまで使用をしている。一方、本件調査対象商標(調査報告書表紙No1に表示されている)が(少なくとも2009年迄は)使用されていたとしている点についてはこれを認める。乙第3号証に示すように、現在使用している使用商標は昭和62年頃から使用されているものと同一である。
(3)弁駁書(使用商標と本件商標の同一性について)に対する反論
ア 使用商標の構成について
請求人が主張する使用商標の構成については事実誤認がある。今般提出する乙第17号証の商品ラベルに示すように、使用商標の図形部分の熊は黒色である。また背景部分についても同様に黒色である。乙第5号証で当該部分が青色に見えるのは光線又は画像データを出力するときのインク等の関係から、そのように見えるだけである。
イ 弁駁書に対する反論
請求人が、使用商標が有しない本件商標の構成として指摘しているのは、いずれも当該図形部分における背景部分であるか、または「TRADEMARK」のような識別力とは無関係な付記部分である。
使用商標においては、背景部分は省略はされておらず、斜線にて簡易に表現されていると共に、前記斜線に構成されている背景部分の外縁は略円形を呈しており、本件商標と共通している。
また、本件商標の図形部分(本件商標は図形と文字の結合商標であることを改めて指摘しておく)のみの相違として挙げている点については、事実と異なる主張である。
すなわち、使用商標の熊の図形及び背景部分は黒色であるので、本件商標と使用商標とは共通する。熊の顔部分は、両耳が見える程度に右側(正面方向)に向けており、本件商標と使用商標とは略同様の角度に顔部分が観察される。使用商標の図形中の熊は四肢で右を向いた状態で立っており、本件商標と使用商標とは共通する。本件商標も目鼻立ちは観察され(乙19)、本件商標と使用商標とは共通する。
請求人は、本件商標と使用商標における図形部分につき、詳細に事細かに比較し社会通念上同一でないと結論づけているが、請求人の比較手法は、社会通念上同一というよりは、物理的同一性の相違を述べているものであり、社会通念上同一の判断に資するものではない。
ウ 外観において同視される図形からなる商標と社会通念上同一と認められる商標
審判便覧53-01の記載等を参照しつつ、本件商標と使用商標との比較を行う。
使用商標は、答弁書に記載したとおり、円状に縁取られた図形の略中心に、黒色に彩られ、4本の脚で横向きで立ち、頭部を若干正面側に向けた熊の図形を配すると共に、略円状に木影を若干配した図形と、前記図形の下部に欧文字の「BEAR」を同大同書かつ一連に横書きしてなる、図形と文字の結合商標である。詳細には図形中の熊は四肢で右を向いた状態で立っており、熊の顔部分は、両耳が見える程度に右側(正面方向)に向けており、背景部分として、斜線にて木影等を簡易に表現すると共に、前記斜線の外縁は略円形に構成されている。前記図形の直下には欧文字で「BEAR」と同大同書かつ一連に横書きされてなるものである。
そして、本件商標(更新商標、乙14に表示)も同一の構成からなる結合商標であり、「BEAR」は図形中の熊部分を意味することでもあり、これらの共通する図形と文字との結合による構成は商標の要部を構成しており、使用商標及び本件商標からは、熊が強く印象づけられ、両者は外観において同視される商標であると社会通念上認められるものである。
なお、背景部分を省略しても外観において同視される図形であるとする事例が、審判便覧53-01 3.(2)a.ウに外観において同視される図形からなる商標として記載されている。この事例からも、使用商標は本件商標の使用である。
エ 取引の実情及び個々具体的な事例
さらに、使用商標は、100余年の間、その同一性を保持し自他識別力を発揮した状態で、継続して使用されているものであり、このことは、商標更新出願制度が存続している期間において、全て存続期間が更新されていることからも明かである。
使用商標は結合商標であり、「BEAR」は図形中の熊部分であることから、使用商標からは、熊が強く印象づけられる結果、熊(クマ)ショベル等として取引者から愛称されている事実からも、商標の要部が熊の図形と欧文字「BEAR」の組合せであることに相違はない。
一方、使用されている商品は、昔から存在しているシャベル(スコップ)であり、農作業者を中心に継続的かつ固定的な取引者需要者が存在している。また、この種商品には包装はなく、商標の使用態様として、シャベル(スコップ)の柄の部分に商標を表示したラベルを貼付するという手法が古くから採用されており、その結果、前記柄の形状大きさより、商標の図形部分は直径20mm程度の大きさで使用されている。このような大きさで表示される場合は、取引者需要者にとって、詳細な相違は区別できない。
以上のように、長期に亘る使用期間、商標の要部を共通とする図形と文字との結合商標の使用、継続的かつ固定的な取引者需要者の存在、使用商品における商標の使用状況、使用商標の大きさの限界等々の取引の実情及び個々具体的な事情からも、使用商標は本件商標と外観において同視される図形からなる商標として社会通念上同一であると判断されて然るべきものである。
(4)結び
以上の立証事実から明らかなように、本件商標は、その指定商品中「ショベル」について、被請求人が100余年にわたり使用してきたものであり、少なくとも、立証されるように、四十数年来使用しているものであり、さらに、2014年5月5日には、使用していた事実は明らかである。
第4 当審の判断
1 被請求人提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 乙第5号証は、ホームセンター「ジュンテンドー」の倉敷茶屋町店の店舗写真、店内写真及び展示商品写真であり、浅香工業の坂上氏によって平成26年8月5日に撮影されたものである。
そして、同号証の写真の1枚は、ショベルの柄の拡大写真であって、そこには、使用商標が上部に表示されたラベルが貼付されている。また、そのラベルには、「4960517000435」のJANコードが印刷されている。
イ 乙第7号証は、ジュンテンドーから浅香工業に向けた平成26年5月4日を発注日とする「発注伝票」である。
そして、これには、伝票番号として「261705」、お取引先として「アサカコウギョウ カブシキカイシャ」、JANコード「4960517000435」の「品名・規格」欄に「クマ ショベル アカエ マル」の記載があり、また、同商品について、「ケース数」(単位 1ホン)として、合計5本が記載されている。
ウ 乙第13号証は、ジュンテンドーが浅香工業から平成26年5月6日に商品を納入した「受領データ」である。
そして、これには、伝票番号として「261705」、お取引先として「アサカコウギョウ カブシキガイシャ」、JANコード「4960517000435」の「品名・規格」欄に「クマ ショベル アカエ マル」の記載があり、また、同商品について、「ケース数」及び「検収数」(単位 1ホン)として、合計5本が記載されている。
エ 乙第15号証は、浅香工業がジュンテンドーに証明を依頼し、ジュンテンドーの長谷川氏が証明した平成27年2月4日付けの「証明書」である。
そして、その証明内容としては、乙第7号証の「発注伝票」及び乙第13号証の「受領データ」が同社によって作成されたこと、及び別紙3のラベル(乙5の写真のショベルの柄に貼付された使用商標の表示されたラベルと同様のもの。)が、上記「発注伝票」及び「受領データ」に記載の「クマ ショベル アカエ マル」のショベルの柄に貼付されていたラベルと同一のものであること等、を旨とするものである。
2 使用商標の本件要証期間内における使用について
上記1によれば、浅香工業は、平成26年5月4日にジュンテンドーより、使用商標の表示されたラベルが貼付されたショベルを5本発注されたものであり、同月6日にその商品をジュンテンドーに納品したものと認めることができる。
そうとすれば、本件商標権者である浅香工業は、本件要証期間内に使用商標をその指定商品中「ショベル」について、使用したものである。
3 使用商標が本件商標と社会通念上同一であるかについて
(1)本件商標
本件商標は、以下のとおりの構成よりなるものである。
ア 黄土色の円形の枠を有し、枠内をより淡い黄土色で彩色している。
イ 円形枠の中央部に、黒色の熊の図形が描かれている。
ウ 熊の図形の下に、両側辺が曲線の二重線による略矩形の枠内に、「BEAR」の文字を有し、さらに、その枠の下には、草木模様の図形が施されている。
エ 熊の図形の左側には、緑色の樹木が描かれている。
オ 熊の図形の右側には、地面と遠方に樹立する3本の樹木が描かれている。
カ 熊の図形は、右方やや手前方向に鼻を向け、凸凹のある岩場のような地面の上に前足を掛け、後足をやや折り曲げており、両前足はほぼ重なって見える。そして、熊は、全体的に黒く、目鼻立ちははっきりせず、毛並みも明確に描かれていない。
キ その他、熊の図形の頭部付近に、「TRADE/MARK」の文字が表示されている。
(2)使用商標
使用商標は、乙第5号証の写真のショベルの柄に貼付されたラベルに表示された熊の図形に係る商標の部分、及び乙第15号証の別紙3に表示された前記乙第5号証のラベルと同様のラベルに表示された熊の図形に係る商標の部分である。
なお、上記写真に見られる使用商標は、光った状態の写りをしていることから、上記別紙3における使用商標の色彩を本来のものとする。
そして、使用商標は、以下のとおりの構成よりなるものである。
ア 黒色の熊の図形が描かれている。
イ 熊の図形の下に、「BEAR」の文字を有する。
ウ 熊の図形の周囲は、黒の斜線が描かれ、熊の足下も、黒の横線が描かれている。
エ 熊の図形は、手前方向に鼻先を向け、いずれの足も曲げずに直立しており、両前足及び後足はそれぞれ重なり合うことなく描かれている。熊は、全体的に黒く、目鼻立ちははっきりせず、毛並みも明確に描かれていない。
(3)両商標の比較
上記のとおり、本件商標と使用商標とは、熊の図形及び「BEAR」の文字を有するという点では共通するものの、使用商標には、本件商標を構成する多くの要素が変更及び省略されており、特に、構成の基本ともいえる円形の輪郭及び明瞭に描かれた背景やその基調となる色彩など、本件商標の特徴的な部分が相当に省略されており、主たる要素である熊の図形についても、その具体的な外観が異なる結果、構成全体としてもはや同一の商標とは思えない程に異なる印象を与えるものである。
そうとすれば、上記使用商標は、本件商標の構成要素を実質的に欠くとともに変更したものであるということができる。
してみれば、使用商標は、本件商標と、「社会通念上同一と認められる商標」ということはできない。
4 被請求人の主張について
被請求人は、「乙第14号証は、昭和59年2月17日付けで、本件商標を更新登録出願したときの控書類である。同号証において、使用説明書に添付された写真は『角形ショベル』の柄に本件商標を上部に掲載したラベルを貼付したものが撮影されている。この写真において撮影された商標をもって、同一の商標として特許庁にて認定され、本件商標が更新された事実を立証する。すなわち、同号証によって、乙第3号証及び乙第5号証に掲載されている使用商標は、乙第1号証に掲載される本件商標と同一の図形と文字の結合商標であることを立証する。以上から明らかなように、使用商標は、その指定商品中『ショベル』について、被請求人が数十年来使用しているものである。」旨を主張している。
しかしながら、乙第14号証は、昭和59年当時の商標権の存続期間の更新登録出願制度における登録商標との同一性の判断といえるものではあるが、同制度における登録商標との同一性の判断基準は、必ずしも、現行法の商標法第50条第1項におけるものと全く同じであるとはいえないものである。
よって、本件商標について、当該更新登録出願の登録がなされた経緯があるとしても、その事をもって、商標法第50条1項における「社会通念上同一と認められる商標」に該当するということはできない。なお、上記更新登録出願に添付された使用説明書中のスコップ写真に示された商標は、乙第5号証及び第13号証の使用商標と一致していないものと思われる。
5 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件要証期間内に、取消し請求に係る指定商品中の「ショベル」について、使用商標を使用したものであるとしても、その使用商標は、本件商標と「社会通念上同一と認められる商標」ということはできないものである。
してみれば、本件商標は、本件要証期間内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、請求に係る指定商品について使用されていなかったものといわざるを得ない。また、その使用をしていないことについて正当な理由があるものとも認められない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定に基づき、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別記】


審決日 2015-04-07 
出願番号 商願大3-21728 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y08)
最終処分 成立  
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 井出 英一郎
田中 亨子
登録日 1914-08-15 
登録番号 商標登録第67374号(T67374) 
商標の称呼 ベアー 
代理人 田中 光雄 
代理人 佐々木 美紀 
代理人 鮫島 睦 
代理人 勝見 元博 
代理人 中尾 真一 

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