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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない W05
審判 全部無効 観念類似 無効としない W05
審判 全部無効 外観類似 無効としない W05
管理番号 1301732 
審判番号 無効2013-890087 
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-11-27 
確定日 2015-06-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第5582270号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5582270号商標(以下「本件商標」という。)は、「醗酵玄米菜食ギャバ」の文字を標準文字で書してなり、平成24年11月12日に登録出願、第5類「玄米又は米ぬかと野菜・大麦若葉又はクロレラを主原料とするサプリメント,その他のサプリメント」を指定商品として、同25年3月19日登録査定、同年5月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4007111号商標(以下「引用商標」という。)は、「玄米菜食」の文字を横書きしてなり、平成6年3月30日に登録出願、第30類「米糠と野菜を原材料とする粉末状の加工食品」を指定商品として、同9年6月6日に設定登録され、その後、同19年5月29日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第52号証を提出した。
1 請求の原因
本件商標の登録は、以下のとおり、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項により無効とされるべきである。
2 請求の理由及び答弁に対する弁駁
(1)本件商標と引用商標と構成
ア 本件商標の構成は「醗酵玄米菜食ギャバ」であるのに対して、引用商標の構成は「玄米菜食」であって、本件商標は、両商標に共通する「玄米菜食」の文字の前後に、「醗酵」と「ギャバ」の文字が付加された構成からなっている。なお、「醗」の字は「発」の常用外漢字であり、「醗酵」は「発酵」と実質的に同一である。
イ 本件商標と「醗酵(発酵)」の関係
本件商標及び引用商標に係る指定商品は、玄米や米糠をその原材料とする健康食品である(甲1及び甲2)。玄米が栄養豊富な食物であることは、オンライン百科事典Wikipediaにおいても「玄米は、白米よりビタミン・ミネラル・食物繊維を豊富に含むため、健康食品として用いられている。」(甲3)とあり、一般によく知られている。しかし、玄米は、消化が悪いことが難点であった。
請求人が製造販売する「玄米菜食」(以下「請求人商品」という。)は、玄米の表皮や胚芽に大豆のおから粉末を加え、麹菌で発酵させたものを錠剤又は顆粒にしたものである(甲4)。玄米も大豆もそれ自体で栄養価の高い食品であるが、それらを発酵させることで、素材が本来持っていない有効成分が生成され、栄養価が格段に高まり、さらに、発酵の結果、消化吸収力に優れた商品となっていることも、大きな特徴である。この点について、前出Wikipediaの「発芽玄米」において、「発芽玄米はさらに発芽時の酵素の働きで(中略)玄米にもともと含まれていた栄養成分が増え、玄米の状態では十分に消化吸収しきれない成分や、新しく有効な成分が発生する。」(甲5)と説明しているが、この発芽と同様の効果を得るために、人工的に発酵の工程を取り入れている。
このように、玄米に酵素を添加することで栄養価が高まり消化吸収がよくなることは当業界ではよく知られており、請求人商品だけでなく、類似商品も同様の工程を経て製造されているものが多い。例えば、玄米からなる健康食品を製造販売している株式会社万成酵素のインターネットショッピングサイト「玄米酵素のお店 おくわき」(甲6)には、「玄米酵素は、玄米の米ぬか、胚芽を麹菌によって醗酵させた自然のままの食品で、酵素、ビタミン、ミネラル、食物繊維などがバランスよく含まれています。醗酵させることで、多くの酵素をつくり出すとともに米ぬか胚芽の栄養素を吸収しやすくしています。」とあり、玄米の栄養価を高め、かつ、吸収をよくするために発酵を取り入れており、請求人商品と同様の工程を経て製造が行われていることが確認できる。また、株式会社玄米酵素が製造販売する健康食品「ハイ・ゲンキ」の商品紹介ページ(甲7)にも、「無農薬有機農法の玄米及び栄養価の高い安心・安全な玄米胚芽・表皮を麹菌で発酵。健康に必要な栄養素が40種類以上含まれています!」と、麹菌で発酵させる工程が紹介されている。
また、請求人商品のパッケージには大きく「発酵」の文字と、その下に「発酵玄米粉末+発酵大豆粉末」と記載されており(甲4)、請求人の取引先の一つであるサプリファクトリー株式会社が販売する「玄米菜食」のパッケージには、大きく「発酵」の文字が表示され(甲8)、さらに、別の取引先である日本食品工業株式会社が販売する「玄米菜食 発酵 ぬかア美ノ」のパッケージ正面中段の独自ブランド表示である「ぬかア美ノ」の左側に「発酵」の文字が表示されており(甲9)、当業界において「発酵」により玄米の消化吸収を高めるという工程は、玄米を用いた健康食品を製造する際に必須のものとなっており、同時に、取引者・需要者に対する大きなアピールポイントとなっている。
本件商標中の「醗酵」部分についてみるに、発酵(又は醗酵)は、日本酒、納豆、醤油、味噌等の発酵食品を見ても明らかなとおり、我が国の食生活に深く根付いており、一般需要者等の誰もが認識している概念である。サプリメントのパッケージ等に「発酵」又は「醗酵」の表示がある場合、その表示に接しか需要者等は、それが付された商品が発酵(醗酵)という工程を経て生産されたものであると無理なく認識するものである。
以上のとおり、玄米に関する健康食品において、「醗酵(発酵)」の文字は、その内容を説明するものにすぎず、商品の出所識別標識として機能することはあり得ないから、本件商標において、「醗酵」の文字が商標の要部として認識されることはない。
ウ 本件商標と「ギャバ」の関係
「ギャバ」とは、アミノ酸の一種である「γ-アミノ酪酸」の英語表記「γ(gamma)-aminobutyric acid」の頭文字「g」「a」「b」「a」からなる略称である(甲10)。人間を含む脊椎動物の脳や脊髄などに存在し、神経伝達物質として、鎮静、抗痙攣、抗不安作用を有する。
健康食品業界において、「ギャバ」はよく知られており、独立行政法人国立健康・栄養研究所のウェブサイト中の「『健康食品』の素材情報データベース」(甲11)にも、「γ-アミノ酪酸(ギャバ)」に関し、「玄米には天然ギャバが多く含まれ、さらに発芽することによって増加し、発芽玄米には白米の約10倍のギャバが含まれるともいわれている」と記載されている。また、DHCやファンケルといった業界の大手企業もこれに関する商品を製造販売している(甲12及び甲13)。さらに、健康食品業界以外でも、例えば、菓子メーカーの江崎グリコ株式会社は、「メンタルバランスチョコレートギャバ」と称するチョコレートを販売している(甲14)。これは、「ギャバ」の持つ鎮静、抗痙攣、抗不安作用に着目した商品である。
このように、「ギャバ」は、本件商標の指定商品の主原料である玄米又は米ぬかに多く含まれている成分であり、健康食品その他に配合されているものと一般に理解されている。そうとすれば、本件商標における「ギャバ」の文字は、その指定商品に含有される有効成分を表すものと認識され、指定商品との関係で出所識別標識として機能することはあり得ず、「ギャバ」の文字が商標の要部として認識されることはない。
エ 実際、被請求人も答弁書において、自身の商品(サプリメント)について「独自技術で発酵させてギャバ等の成分を高めた」「醗酵玄米ギャバ」という商品に「健康食品としてよく知られている青汁(大麦若葉)を加えて一緒に摂取できるようにした商品」と説明しているとおり、「発酵(醗酵)」が生産工程に含まれていること、及び、その結果、ギャバをはじめとする栄養成分が多く含まれていることを認めている。その上で商標に「醗酵」及び「ギャバ」の文字を採用していることからすれば、被請求人自身もそれらの表示が商品の内容(=品質)を表示するものと認識しており、かつ、それらを表示することが、需要者等に対して「この商品が含有している栄養素」を具体的に知らせる役割を果たすと理解していたことを意味している。
(2)両商標の類否判断
前記(1)を考慮して本件商標の称呼及び観念についてみるに、(a)本件商標全体の称呼「ハッコウゲンマイサイショクギャバ」は16音と冗長であること、(b)「醗酵玄米菜食」部分が漢字からなり、「ギャバ」部分が片仮名からなるため、両者が分離して看取されやすいこと、(c)「ギャバ」はアミノ酸の一種の名称であり、健康食品の分野でよく用いられているものであること、などからすれば、「醗酵玄米菜食」部分と「ギャバ」部分とが一体不可分として認識される特段の理由はなく、両部分は分離して認識されるものと考えられる。さらに、「醗酵玄米菜食」部分についても、(d)当該分野において、「玄米」を「醗酵」(発酵)させる加工法が一般に用いられていること、(e)同様の玄米に関する健康食品において「発酵」が強くアピールされていること、などからすれば、本件商標中の「醗酵」の文字が自他商品識別標識として機能し得ないものである。
そうとすれば、本件商標は、「ハッコウゲンマイサイショクギャバ」の称呼だけでなく、その要部である「ゲンマイサイショク」との称呼も生ずるものである。その結果、本件商標は、「玄米菜食」が意味する「玄米や野菜を食べる」という観念も想起されることとなり、引用商標と称呼及び観念において類似する。
(3)実際の使用状況からみる混同のおそれ
ここで、本件商標及び引用商標に係る商品は、いずれも既に販売されているため、実際の取引の場面において、出所混同のおそれが生じているのかをみるに、これらの商品が属する健康食品業界の大多数を占める中小企業(甲18)は、自社で開発した商品を製造販売している企業もあるが、自社で多様な製造設備を確保することが難しいことや自社商品の販路拡大のため、他社に商品を販売している企業も多いところ、請求人は、請求人商品を自ら販売するだけでなく、平成20年頃より現在に至るまで多数の業者を介して販売を行っており(甲19ないし甲49)、その販売業者の多くは、請求人が納品した独自のパッケージを用いている(甲8、甲9、甲20ないし甲51)。
このように、市場に流通している「玄米菜食」の商標を付した商品は、中身のサプリメントは請求人商品と同一であるが、販売業者によって異なるパッケージで販売されている。その結果、本件商標を付した商品が販売されたことにより、これまで「玄米菜食」ブランドの下で統一された品質で販売されていたものが、異なる出所及び品質の商品が紛れ込んでしまい、需要者等が混同するおそれが高くなっている。例えば、オンライン通販サイト「Amazon.co.jp」で検索語「玄米菜食」とした場合の検索結果(甲52)によれば、合計10件が検出されているが、これらのうち、「アミノ酸/米ぬか『玄米菜食 発酵 ぬかア美ノ』1箱(2gX30包入り)」、「玄米菜食2.5gX60包」、「国産有機『玄米ぬか』×国産『大豆おから』パワー!【発酵ぬかア美ノ】2gX30包×2箱セット」、「玄米菜食60包」、「〔ビオネ〕玄米菜食60包入り(乳酸菌清算物質、ビートオリゴ入り)」、「〔ビオネ〕玄米菜食30包入り(乳酸菌清算物質、ビートオリゴ入り)」の6件は、いずれも請求人の取引先販売業者によるものである。これらの中に混ざって、商標権者の「醗酵玄米菜食ギャバ」、「発酵玄米菜食ギャバ22」の2件が検出され、請求人の委託業者に係る商品の中に、本件商標に係る商品が混在している。
健康食品について、引用商標を正当に使用しているのは請求人及びその取引先のみであり、需要者等は、請求人商品に対する品質を信頼してこれを購入してきた。しかし、現状は、商標権者の商品を請求人の取引先の一つであるかのように誤認して購入するおそれが高まっている。取引先による正規の商品か、商標権者の商品かを区別する方法はなく、需要者等が商品の最終的な出所が請求人であるか否かを判断することは不可能であり、このことが混同の可能性をさらに高めている。
商標法第4条第1項第11号がいう商標の「類似」とは、その商標をある商品に使用した場合に、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあると認められるものであるかどうかにより判定すべき、とされている(昭和36年6月27日:最高裁昭和33年(オ)第1104号)。
そうとすれば、商標の類否を判断するにあたり、実際的に混同を生ずるおそれがあるか否かについても考慮に入れる必要があることは言うまでもない。上述の取引実情にある両商標は、需要者等が誤認混同するおそれがより高いのであるから、現実的な観点からも、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するという判断が求められる。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、その「玄米菜食」部分が要部として認識され、引用商標と称呼及び観念において類似するから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。
1 「醗酵(発酵)」について
請求人は、健康食品としての玄米は、消化吸収を高めるために発酵させることが必須である旨主張する。
しかし、玄米の栄養価を高めると共に消化吸収を良くするために玄米を発芽させた「発芽玄米」が広く流通している。ここで、請求人は、「発芽と同様の効果を得るために、人工的に発酵の工程を取り入れる」とも述べて、発酵と発芽を同様の概念であるかのように主張する。
しかし、発酵とは「一般に、酵母・細菌などの微生物が、有機化合物を分解してアルコール・有機酸・炭酸ガスなどを生ずる過程」をいうのに対して、発芽とは「成熟した種子・珠芽、胞子などが適当な温度と水分とを得て芽を出すこと」をいい、全く別の概念である。通販サイト「Amazon.co.jp」のヘルス&ビューティストアにおける栄養補助食品内サプリメント・ビタミンカテゴリーで検索すると、「発芽玄米」34件ヒット(乙1)するのに対して、「発酵玄米」は39件(乙2)である(「醗酵玄米」としても同じ39件。両者は重複している。)。
さらに、DHCやファンケルといった大手健康食品企業は、発芽玄米を採用している。ファンケルにおいては、発芽玄米を独立したカテゴリーとして注力している(乙3及び乙4)。すなわち、玄米の消化吸収を良くする方法として醗酵(発酵)と共に発芽も一般的な方法と需要者に認識されている。発酵させることが必須であるとはいえない。
加えて、玄米を麹菌等の働きで発酵させるタイプの商品であっても、発酵過程に対して触媒として作用する酵素に着目して「玄米酵素」という商品名を採用しているケースも多い。発酵とは、上述のとおりであり、酵素とは、「生体内で営まれる化学反応に触媒として作用する高分子物質」をいうが、一般の需要者がその相違を正確に認識しているわけではない。よって、「醗酵(発酵)」の語が消化吸収力を高める工程であると直ちに認識されるわけでもないし、「酵素」の語が使用されるケースも多いから、「醗酵(発酵)」の語が出所を問わず使用されるわけでもない。
したがって、請求人の「玄米に関する健康商品において、『醗酵(発酵)』の文字が出所識別標識として機能することはあり得ず、本件商標において、『醗酵』」の文字が商標の要部として認識されることはあり得ない。」の主張は妥当ではない。
2 「ギャバ」について
請求人は、ギャバは玄米又は米ぬかに多く含まれている成分であり、健康食品その他によく配合されているものと一般に理解されている旨主張する。
しかし、玄米や米ぬかは代表的な健康食品であり、多くの有効成分が含まれている。「玄米発酵食の魅力」(PHP研究所発行:乙5)には、「玄米は、ビタミンB1、B2、B6、E、K、パントテン酸、イノシトール、ミネラル、リノール酸やリノレン酸、食物繊維、酵素などの栄養素を含んだ『完全食』」、それ以外にも機能性成分として、「フィチン、フィチン酸、γ-オリザノール、フェルラ酸、γアミノ酪酸(ギャバ)、トコトリエノール、アラビノキシラン、ヒドロキシ酸」等が含まれていると記載されている。ギャバは、このように多数ある有効成分の1つにすぎない。
また、ギャバの含有量は、通常の玄米よりも発芽玄米の方が数倍多い。このため、インターネット等では、発芽玄米の特徴としてギャバが多く含まれていることが表示・宣伝されている。上記「玄米発酵食の魅力」(乙5)でも、ギャバの説明として「玄米を発芽させるか、あるいは、米糠に水分を加えて、酵素を活性化させることにより発生」(28頁)と記載されている。また、上記ファンケルのオンラインショップの「発芽米の栄養」において、GABAが豊富に含まれていると記載されている(乙6)。
このことから、単なる玄米ではなく、発芽玄米における有効成分としてギャバが認識されていることがむしろ多いと考えられる。玄米以外の米ぬか、野菜、大麦若葉、クロレラにおいても、同様に多数の有効成分を有しており、ギャバは多数ある有効成分の1つにすぎない。
したがって、「ギャバ」は、請求人が主張するように、玄米又は米ぬかにおける多数の有効成分の中からその主要な有効成分として一般に認識されるものとはいえないから、本件商標の指定商品において、請求人が主張する「その指定商品に含有される有効成分を表すもの」と認識されるものとはいえない。
3 類否判断について
結合商標の類否について、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないとされる。
請求人は、本件商標が冗長であり、「ギャバ」は片仮名であり、かつ、本件商標の指定商品について識別力がないことから、「醗酵玄米菜食」と分離して認識されるべきであり、さらに「醗酵」は、本件商標の指定商品について識別力がないので分離して認識されるべきであるので、残った要部から「玄米菜食」という称呼が生じ、「玄米や野菜を食べる」という観念も生じ、両商標は称呼及び観念において類似する旨主張する。
しかし、本件商標は、「醗酵玄米菜食ギャバ」の文字を標準文字よりなるものであり、各文字の大きさ、色彩及び書体は同一であって、その全体が等間隔に1行にまとまりよく表されているものであるから、真ん中の「玄米菜食」の文字部分だけが独立して見る者の注意を引くように構成されているということはできない。
また、本件商標は、拗音を除き13音であり、語呂語調が良く十分に称呼可能な長さであり、かつ、全体の構成から健康食という統一したイメージ、観念を生じる。
さらに、上述のように、「ギャバ」は、玄米における多数の有効成分の中からその主要な有効成分として一般に認識されるものともいえず、また、「醗酵」は、その必須の加工ではないので、「ギャバ」や「醗酵」を除いて分離観察されるべきという主張は妥当ではない。「ギャバ」及び「醗酵」は、いずれも本件商標の中で出所識別部分となり、本件商標全体が一体となった要部である。すなわち、請求人の主張する「玄米菜食」部分以外からも出所識別標識としての称呼、観念が生じている。
また、「玄米菜食」は、出所識別機能を有する「醗酵」及び「ギャバ」との関係から、「玄米菜食」それのみで取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるとはいえない。すなわち、「玄米菜食」の語は、健康を保つ食生活法であり、フリー百科事典『ウイキペディア(Wikipedia)』では、玄米を主食、野菜や漬物や乾物などを副食とすることを基本とする「マクロビオティック」の別称としており(乙7)、野菜と玄米を中心とした食事を紹介する刊行物として、「玄米菜食」(講談社発行:乙8)や「はじめてのマクロバイオディックおいしい玄米菜食レシピ」(成美堂出版発行:乙9)が出版されている。インターネット上でも異なる多数のサイトで同様の意味で用いられている。
したがって、「玄米菜食」の語は、現在広く実践されている玄米と野菜を中心とした健康食分野において、その原材料又は品質を示すものであるから、引用商標は、特定の者の出所識別標識であるとはいえない。
以上により、本件商標は、引用商標と類似するとはいえない。
4 出所混同について
請求人は、請求人の多数の販売先が異なるパッケージで販売していることから、需要者が商標権者の商品を請求人の取引先の一つであるかのように誤認して商品を購入するおそれが高まっているとして、商品の出所の誤認混同のおそれを理由に、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当すると主張し、当該主張について、請求人は、インターネット検索で、検索語を「玄米菜食」とすると、請求人の取引先販売業者による商品と商標権者の商品が混在して抽出されることをもって、出所混同が生じるおそれがあるとしている。
しかし、インターネット検索は、その名称が含まれる名称を機械的にすべて抽出するものである。それのみをもって出所混同が生じるおそれがあるとするのであれば、検索語の数倍長い名称も該当することとなり、付加した名称を語頭に位置づける場合も、語尾に位置づける場合も、語頭と語尾に位置づける場合も、同じ扱いとなる。これらについての内容の吟味がなされていない。
また、出所混同のおそれを類否判断の基準に用いる場合であっても、出所混同のおそれは具体的に示す必要があると考える。実際に、商標権者の商品を請求人商品と誤認して購入するところであったとの多数の報告が示されている等の状況であればともかく、機械的な検索によって単に可能性の1を示したのみで出所混同のおそれがあるから類似であると主張するのは安易であり、適切ではない。
なお、請求人は、商品の販売先がそれぞれ異なるパッケージで販売していることをもって出所混同を生じやすいと述べている。しかし、販売先に登録商標の使用を許諾しているのであれば、できるだけ登録商標を認識しやすいような態様でパッケージ等に統一感をもって表示することを求め、出所混同を生じないようにすることがむしろ筋である。販売先がまちまちな態様で使用するから出所混同が生じる範囲が拡大するかのような主張は適切ではない。
5 商標権者について
商標権者は、独自技術で発酵させてギャバ等の成分を高めた「醗酵アガリクスGABA」及び「醗酵玄米ギャバ」を開発した。「醗酵アガリクスGABA」は、2003年に兵庫県知事賞を受賞、「醗酵玄米ギャバ」は、2005年に兵庫県経営革新計画の認証を受けた(乙10及び乙11)。
「醗酵玄米ギャバ」の発酵技術については、2件の特許出願がなされ、うち1件は特許第4346266号に係る特許権が発生している(乙12)。商標権者は、現在「醗酵玄米ギャバ」と「醗酵玄米菜食ギャバ」を主力製品として製造販売を継続中である。「醗酵玄米菜食ギャバ」は、「醗酵玄米ギャバ」に健康食品としてよく知られている青汁(大麦若葉)を加えて一緒に摂取できるようにした商品である。「醗酵玄米ギャバ」と同一の効果を維持しつつ青汁の効果が付加されている。青汁のイメージを表すために「醗酵玄米ギャバ」に菜食をプラスし、語呂語調良く称呼しうるように「醗酵玄米菜食ギャバ」とネーミングした。
6 むすび
以上のように、本件商標は、引用商標と類似しない商標であるから、指定商品の類否に関わらず、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否は、同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決参照)、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号昭和38年12月5日第一小法廷判決、最高裁平成3年(行ツ)第103号平成5年9月10日第二小法廷判決、最高裁平成19年(行ヒ)第223号平成20年9月8日第二小法廷判決参照)。
2 前記1の判決の説示を踏まえ、本件商標と引用商標との類似性について検討する。
(1)本件商標
ア 本件商標は、前記第1のとおり、「醗酵玄米菜食ギャバ」の文字を標準文字で書してなるものであるところ、該文字は、同一の書体をもって一連に横書きされ、片仮名部分の「ャ」が小さいほかは、同一の大きさで表されているものであって、外観上、構成全体がまとまりよく一体性を有するものとして印象づけられるといえる。
イ 本件商標に関し、請求人は、その構成中の「醗酵」の文字部分は、健康食品の原材料である玄米についての製造(加工)方法であり、また、「ギャバ」の文字部分は、他の文字部分と文字の種類を異にするばかりか、γ-アミノ酪酸の略称であり、健康食品の原材料に使用されるものであるから、本件商標の要部は、「玄米菜食」の文字部分にある旨主張するので、この点について検討する。
ウ まず、いわゆる健康食品と呼ばれる商品分野において、「醗酵(発酵)」の語ないし「ギャバ」の語が、「玄米」との関係において、どのように使用されているかについてみるに、各項の括弧内に掲記した証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)引用商標を付した請求人の業務に係る健康食品(請求人商品)に関するチラシ(甲4)の表面には、「玄米の表皮と胚芽に、大豆を加えて発酵、酵素のチカラで栄養価をパワーアップ。」、「玄米菜食/発芽玄米粉末+発酵大豆粉末」などと記載され、同裏面には、「玄米菜食/発酵玄米粉末+発酵大豆粉末」などの文字と「栄養成分」として「食物繊維・ナトリウム・ビタミン・ミネラル・アミノ酸」等が記載されている。
(イ)フリー百科事典Wikipediaの「発芽玄米」の項目(甲5)には、「概要:玄米を約1?2日程度、摂氏32度前後のぬるま湯に浸し、1mmほどの芽が出た状態のもの。・・・玄米は白米より栄養豊富で、玄米の米糠には美白・美容効果のある成分が含まれている。発芽玄米はさらに発芽時の酵素の働きで、モヤシと同様に、玄米にもともと含まれていた栄養成分が増え、玄米の状態では十分に消化吸収しきれない成分や、新しく有効な成分が発生する。」、「白米・玄米との比較:・・・ミネラルの消化吸収が、従来の玄米ではフィチン酸によって抑制されがちであったが、発芽玄米では、フィチン酸が抑えられ、効率よく行われると言われている。血圧上昇を抑制する働きを持つガンマアミノ酪酸(通称:ギャバ)が玄米より多く、白米の約10倍程度含有される。」、「主な成分:ビタミンB1、ビタミンE、脂質、炭水化物、ナトリウム、食物繊維、カルシウム、γ-アミノ酪酸、γ-オリザノール、IP6、総イノシトール、総フェルラ酸、マグネシウム、カリウム、亜鉛」などと記載されている。
(ウ)「玄米酵素のお店 おくわき」のホームページ(甲6)には、「玄米酵素は、玄米の米ぬか、胚芽を麹菌によって醗酵させた自然のままの食品で、酵素、ビタミン、ミネラル、食物繊維などがバランスよく含まれています。醗酵させることで、多くの酵素をつくり出すとともに米ぬか胚芽の栄養素を吸収しやすくしています。」、「玄米の表皮(ぬか)と胚芽を麹菌によって発酵させた食品で、・・・吸収しにくい玄米の栄養素を発酵によって吸収しやすくし、栄養素も増やしているのです。」などと記載されている。
(エ)「玄米酵素・ハイゲンキの公式オンラインショップ」(甲7)には、「無農薬有機農法の玄米及び栄養価の高い安心・安全な玄米胚芽・表皮を麹菌で発酵。健康に必要な栄養素が40種類以上含まれています!」、「玄米を消化・吸収しやすくするために、麹菌を加えて発酵させる。発酵により、各種酵素が生まれ、アミノ酸やビタミンB群等が増える。」などと記載され、「分析表」には、含まれる各種栄養素等として、「無機質、ビタミン」等が記載されている。
(オ)独立行政法人「国立健康・栄養研究所」のホームページにおける「『健康食品』の安全性・有効性情報」(甲11)には、「ギャバ(GABA)は、甲殻類の神経筋接合部、哺乳類の小脳、脊髄、大脳などに多く存在する抑制性神経伝達物質と考えられているアミノ酸である。玄米には天然ギャバが多く含まれ、さらに発芽することによって増加し、発芽玄米には白米の約10倍のギャバが含まれるともいわれている。その他、緑茶葉を窒素ガス下で処理したギャバロン茶や、ぬか漬けなどにも含まれている。GABAを関与成分とする特定保健用食品が許可されている。」などと記載されている。
(カ)「発芽玄米」の語で、インターネット検索すると(乙1)、「発芽玄米粥」、「発芽玄米炊込飯」のほか、発芽玄米を原材料とした健康食品も検索される。
(キ)「玄米発酵食の魅力」(PHP研究所発行:乙5)の「健康維持に役立つ、米糠の機能性成分」の項目(26頁?)には、米糠の機能性成分の一つに「ギャバ」が挙げられ、「玄米を発芽させるか、あるいは、米糠に水分を加えて、酵素を活性化させることにより発生。・・・米糠に含まれるギャバは血圧上昇抑制、不眠、抑うつに効果があり、脳血流改善、酸素供給量増加、脳卒中、頭痛、耳鳴り、意欲低下などの治療に応用されている。」などと記載されている。
(ク)「ファンケルオンラインショップ」の「おいしい発芽玄米の通販」(乙6)には、「発芽米には、健康に欠かせない栄養成分が、たっぷり含まれています。・・・健康で元気な毎日を応援するGABA(ギャバ)、腸内環境を整える食物繊維、・・・も豊富に含まれています。」などと記載されている。
(ケ)平成19年1月20日付け工業技術新聞(乙11)には、「GABAが発芽玄米の22倍!」、「『醗酵玄米ギャバ』が話題/(株)マルセイ」の見出しのもと、「(株)マルセイは、・・・独自の醗酵技術を駆使し新商品開発に積極的に取り組んでいる。・・・玄米はそれ自体が完全な栄養素を含む食品であり、玄米を主食にすることで、多くの食品を食べる必要がなくなる。しかし、硬い、まずい、消化吸収しにくい上、残留農薬の懸念もあり、日本人の玄米食人口は2%といわれている。『醗酵玄米ギャバ』は、無農薬玄米を発酵させたもの・・・醗酵させたことで消化吸収力はアップ。・・・また、独自の醗酵技術により、“脳の癒しのアミノ酸ギャバ”が発芽玄米の22倍。」などと記載されている。
エ 前記ウで認定した事実によれば、以下のとおり認定するのが相当である。
(ア)「醗酵(発酵)」の語について
健康食品の分野において、玄米を主原料にした商品が市場に多数出回っているところ、玄米を主原料にした商品は、玄米の表皮(ぬか)と胚芽を使用した商品と発芽玄米を使用した商品とがあり、これらの商品のうち、表皮(ぬか)と胚芽を主原料に使用した商品は、その製造工程において、これら原材料を麹菌などで醗酵することにより、その栄養素が増えるとともに、消化吸収されやすくなるなどの理由から、当該商品分野においては、製造工程において原材料を醗酵(発酵)することは一般的に行われていることが認められる。
したがって、玄米の表皮(ぬか)と胚芽を原材料に用いた健康食品の分野において、「醗酵(発酵)」の語は、原材料たる玄米の加工方法、品質を表示するものであるということができる。
(イ)「ギャバ」の語について
玄米には、その表皮(ぬか)に機能性成分の一つである「ギャバ」が含まれているが、発芽玄米においては、これが増加することから、商品「発芽玄米」の通信販売においては、その栄養素としての「ギャバ」の語を大きく取り上げている事例があること、「ギャバ」は、血圧上昇抑制、不眠、抑うつに効果があり、健康食品その他の食品に配合される原材料として一般に使用されていること、などを認めることができる。
オ 次に、前記エで認定した健康食品の分野における「醗酵(発酵)」、「ギャバ」の各語と「玄米」との関係から、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者が、本件商標をどのように称呼、観念するかについて検討する。
本件商標中の「醗酵」の文字部分と「玄米」の文字部分は、健康食品の原材料とその加工方法を表す語であることから、その結びつきは極めて強いといえる。
そうすると、本件商標中の「醗酵玄米」の文字部分において、「醗酵」の文字部分のみを抽出して商品の品質表示とみるというより、むしろ、「発酵した玄米」の意味をもって、「醗酵玄米」の文字全体を一体のものとして把握、認識する場合が多いというべきである。
しかし、上記のとおり、これらの文字は、商品の原材料とその加工方法を組み合わせたものであるから、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない部分である。
また、本件商標中の「菜食」の文字部分は、「肉類をとらず、穀物・野菜の類のみを食べること」(広辞苑第六版)を意味するものとしてよく知られている語であり、その指定商品との関係からみると、自他商品の識別機能を全く有しないともいえないが、仮に有するとしても、極めて弱いものというべきである。
さらに、本件商標中の「ギャバ」の文字部分は、玄米、特に発芽玄米に多く含まれる栄養素の一つとして知られているばかりでなく、「ギャバ」を含有した健康食品等が市場に流通している(甲12ないし甲14)ことからすれば、その指定商品との関係からみると、これに接する取引者、需要者は、商品に含有された栄養素であると認識するといえるから、自他商品の識別機能を有しないものである。
以上によれば、本件商標は、「醗酵玄米」、「菜食」、「ギャバ」の各文字を結合したものということができる。そして、前記アで認定したとおり、本件商標は、外観上まとまりよく一体的に表され、いずれかの文字に特徴的な部分は認められないものであり、また、上記のとおり、いずれの文字部分も自他商品の識別標識としての機能を有しないものであるか、有するとして極めて弱いものというべきであって、いずれの文字部分にも独立した出所識別機能があるとは認められず、識別力の点において、軽重の差は見いだせない。
そうとすれば、本件商標は、構成全体をもって、一体不可分の商標を表したと認識されるものとみるのが相当であるから、その構成文字全体に相応して、「ハッコウゲンマイサイショクギャバ」の一連の称呼のみを生ずるものである。また、本件商標は、健康食品に使用される商標として、健康に良いとされる「醗酵玄米」、「菜食」、「ギャバ」の3語を結合したとの印象を与えるものといえるが、構成全体としては、特定の観念は生じないものといわなければならない。
したがって、本件商標において、その要部が「玄米菜食」の文字部分にあるとする請求人の主張は、理由がなく、他に、前記構成よりなる本件商標において、その中間部に位置する「玄米菜食」の文字部分のみを分離・抽出して観察すべき特別の事情は見当たらない。
(2)引用商標
引用商標は、前記第2のとおり、「玄米菜食」の文字を横書きしてなるものであるところ、該文字は、同一の書体をもって、同一の大きさ、同一の間隔で表されているものであるから、構成全体をもって一体不可分の商標を表したものと認識されるものといえる。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「ゲンマイサイショク」の一連の称呼のみを生ずるものである。また、観念については、「玄米菜食」の語は、一般によく知られた語ではないが、これを文字通りに捉えれば、「玄米と野菜などを食べること」なる意味合いを理解させるものといえる。
(3)本件商標と引用商標との対比
本件商標と引用商標は、構成する文字の差異等により、外観上明らかに区別し得るものである。
また、本件商標より生ずる「ハッコウゲンマイサイショクギャバ」の称呼と引用商標より生ずる「ゲンマイサイショク」の称呼は、構成する音数において著しい差異を有するものであるから、それぞれの称呼を全体として称呼した場合においても、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、本件商標は、構成全体をもって、特定の観念を生じない造語よりなるものであるから、引用商標とは、観念上相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点についても非類似の商標といわなければならない。
(4)取引の実情に関する請求人の主張について
請求人は、実際の取引の場において、本件商標を付した商品と引用商標を付した商品とが、その需要者により誤認混同を生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する商標である旨を主張し、オンライン通販サイトの「Amazon.co.jp」において、「玄米菜食」の語で検索した結果(甲52)を提出する。
しかし、商標の使用によって商品の出所に混同を生ずるおそれがあるか否かを判断するに当たっては、当該商品の需要者を基準として判断すべきであるところ、市場に極めて多数の健康食品と呼ばれる商品が出回っている今日の状況において、健康食品の主たる需要者である一般の消費者は、自らの意思に基づいて、多数の商品の中から自己の健康の保持増進に効果がある思われる原材料を使用した商品を選択し、購入するのが一般的であるから、実際の取引現場においても、商標の外観や観念などを意識して取引がされるとみるのが相当である。そして、本件商標と引用商標とが、外観、称呼及び観念において非類似の商標であることは前記認定のとおりであるから、本件商標を付した商品と引用商標を付した商品とを取り違えることは極めて少ないとみるべきである。
してみると、単に、検索サイトにおいて、任意的に検索用語を設定し、機械的に検索された結果をもとに、本件商標を付した商品と引用商標を付した商品とが、その出所につき誤認混同するおそれが高いとみるべき根拠とすることはできず、他に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれをうかがわせるような取引の実情を認めるに足りる証拠はない。
したがって、検索サイトにおける検索結果をもってして、前記認定の本件商標と引用商標との類否判断が左右されるものではないから、上記請求人の主張は理由がないといわざるを得ない。
(5)以上を総合すると、本件商標と引用商標とは、外観及び称呼において明らかに区別し得るものであり、かつ、観念及び両商標がその需要者に与える印象において明確に相違することに加え、本件商標及び引用商標が使用される健康食品の分野の取引の実情を考慮すると、健康食品の主たる需要者である一般の消費者が通常有する注意力をもってすれば、本件商標と引用商標とを同一又は類似の商品について使用しても、その需要者が、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれは低いというべきである。
したがって、本件商標と引用商標は、その外観、称呼、観念等によって需要者に与える印象等を総合して全体的に考察し、その使用に係る商品の取引の実情を併せ考えると、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2014-06-10 
結審通知日 2014-06-12 
審決日 2014-06-25 
出願番号 商願2012-91448(T2012-91448) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (W05)
T 1 11・ 263- Y (W05)
T 1 11・ 261- Y (W05)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中束 としえ 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 前山 るり子
渡邉 健司
登録日 2013-05-17 
登録番号 商標登録第5582270号(T5582270) 
商標の称呼 ハッコーゲンマイサイショクギャバ、ハッコーゲンマイ、サイショクギャバ、ギャバ 
代理人 伊東 美穂 
代理人 長谷川 綱樹 
代理人 上西 敏文 
代理人 小谷 武 
代理人 木村 吉宏 
代理人 永露 祥生 
代理人 本間 政憲 

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