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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) W03 |
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管理番号 | 1300773 |
異議申立番号 | 異議2014-900076 |
総通号数 | 186 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2015-06-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2014-03-13 |
確定日 | 2015-05-07 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5635710号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5635710号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5635710号商標(以下「本件商標」という。)は、「Gumserum」の欧文字を標準文字で横書きしてなり、平成25年7月17日に登録出願され、第3類「歯磨き」を指定商品として、同年10月25日に登録査定、同年12月6日に設定登録されたものである。 第2 申立人らが引用する商標 申立人ら(本件登録異議申立人の「サンスター株式会社」と「サンスター スイス エスエー」の双方をいう。以下同じ。そのうち、本件登録異議申立人「サンスター株式会社」を以下「申立人サンスター」という。)が、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同15号に該当するとして引用する商標は、以下の登録商標である。 1 登録第4908848号 登録第4908848号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成15年7月31日に登録出願、第3類「洗口液,口臭消臭スプレー,義歯洗浄剤,その他の歯磨き,せっけん類,化粧品,香料類」、第10類「歯科用バー,歯科用鏡,その他の歯科用機械器具,手術用機械器具,生体吸収性縫合糸,歯科組織再生促進膜,歯科組織再生促進膜を固定するための生体吸収性ピン,歯科用インプラント,人工歯,人工歯肉,人工粘膜,培養歯,培養粘膜,その他の医療用機械器具」、第29類「植物エキスを主原料とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・粉末状・液状・ゼリー状・ブロック状の加工食品」及び第32類「清涼飲料,果実飲料,乳清飲料,飲料用野菜ジュース」を指定商品として、同17年11月18日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 2 登録第5201307号 登録第5201307号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2に示すとおりの構成からなり、平成20年6月12日に登録出願、第3類「歯磨き,洗口液,口臭消臭スプレー,石けん類,化粧水」、第5類「歯科用薬剤,医療用あめ,その他の薬剤,歯科用材料,食餌療法用食品」、第10類「歯科用機械器具,その他の医療用機械器具」、第21類「歯ブラシ,歯間ブラシ,その他の化粧用具,電気式歯ブラシ,デンタルフロス」及び第29類「植物エキスを主原料とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・粉末状・液状・ゼリー状又は飴状の加工食品,乳酸菌を主原料とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・粉末状・液状・ゼリー状又は飴状の加工食品」を指定商品として、同21年1月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 3 登録第5308710号 登録第5308710号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲3に示すとおりの構成からなり、平成21年7月3日に登録出願、第3類「歯磨き,洗口液,口臭消臭スプレー,義歯洗浄剤,石けん類,化粧水」、第5類「歯科用薬剤,医療用あめ,その他の薬剤,歯科用材料,食餌療法用食品,ガーゼ,脱脂綿,ばんそうこう,衛生マスク」、第10類「歯科用機械器具,その他の医療用機械器具,医療用手袋」、第21類「歯ブラシ,歯間ブラシ,その他の化粧用具,電気式歯ブラシ,デンタルフロス」及び第29類「植物エキスを主原料とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・粉末状・液状・ゼリー状又は飴状の加工食品,乳酸菌を主原料とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・粉末状・液状・ゼリー状又は飴状の加工食品」を指定商品として、同22年3月12日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 4 登録第5477022号 登録第5477022号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲4に示すとおりの構成からなり、平成23年4月21日に登録出願、第3類「歯磨き,洗口液,口臭消臭スプレー,化粧品,せっけん類」及び第21類「歯ブラシ,歯間ブラシ,電気式歯ブラシ,その他の化粧用具,デンタルフロス,歯間清掃用デンタルピック」を指定商品として、同24年3月9日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 5 登録第5493994号 登録第5493994号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲5に示すとおりの構成からなり、平成22年7月26日に登録出願、第3類「洗口液,その他の歯磨き,口臭消臭スプレー,化粧品,せっけん類」、第5類「歯科用薬剤,医療用あめ,その他の薬剤,歯科用材料」、第10類「歯科用機械器具,その他の医療用機械器具」、第21類「歯ブラシ,歯間ブラシ,電気式歯ブラシ,その他の化粧用具,デンタルフロス」及び第29類「植物エキスを主原料とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・粉末状・液状・ゼリー状又は飴状の加工食品,乳酸菌を主原料とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・粉末状・液状・ゼリー状又は飴状の加工食品」を指定商品として、同24年5月18日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 6 登録第2234175号 登録第2234175号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲6に示すとおりの構成からなり、昭和63年2月3日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、平成2年5月31日に設定登録され、その後、同22年10月27日に、指定商品を第21類「歯ブラシ,その他の化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。 7 登録第5085072号 登録第5085072号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成18年2月20日に登録出願、第21類「デンタルフロス,歯間清掃用ようじ,歯間ブラシ,歯と歯科用補綴物又は歯科矯正用器具の間の清掃用ブラシ,歯間ブラシホルダー,デンタルフロス用支持柄,歯ブラシ,電気式歯ブラシ,その他の化粧用具,ようじ」を指定商品として、同19年10月19日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 8 登録第2234176号 登録第2234176号商標(以下「引用商標8」という。)は、「ガム」の片仮名を横書きしてなり、昭和63年2月3日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、平成2年5月31日に設定登録され、その後、同22年10月27日に、指定商品を第21類「歯ブラシ,その他の化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人らは、本件商標について、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第60号証(枝番を含む。)及び参考資料1ないし7を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号 本件商標である「Gumserum」の要部は「Gum」の文字部分と認められ、この要部である「Gum」の文字部分からは「ガム」の称呼が生ずる。これに対し、申立人らが引用する商標は、「G・U・M」(引用商標1ないし7)、「ガム」(引用商標8)の部分より「ガム」の称呼を生ずるものである。 したがって、本件商標と引用商標1ないし8とは、「ガム」の称呼を共通にする類似のものである。また、本件商標の要部である「Gum」の文字部分は、引用商標1ないし7の「G・U・M」よりなる商標とその外観、観念において類似するものであるから、本件商標と引用商標1ないし7とは、全体として外観・観念においても類似する。 そして、本件商標と、引用商標1ないし8とは、その指定商品も同一又は類似のものである。 2 商標法第4条第1項第15号 引用商標1ないし8は、申立人サンスターが使用するオーラルケアブランドの商標として、広く一般に知られている(甲第3号証ないし甲第44号証)から、これと類似する本件商標がその指定商品に使用された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。 第4 本件商標の取消理由 当審においては、平成26年11月17日付けをもって、商標権者に対して、本件商標の取消理由を通知したところ、その取消理由の要旨は、引用商標1ないし7(以下、これら7件の商標をまとめて「引用商標」という。)を引用し、本件商標について、以下のとおり、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録を取り消すべきであるとしたものである。 1 申立人らの主張及び甲号証等による事実認定 申立人らの主張及び提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。 (1)引用商標を使用した商品の製造販売 ア 商品の製造販売の期間 申立人サンスターは、1989年に、歯周病予防を目的とした歯磨き、歯ブラシ、洗口液(デンタルリンス)(以下、これらを「オーラルケア製品」という。)を、「G・U・m HOME DENTIST SERIES/ガム・ホームデンティストシリーズ」として発売を開始し(甲第4号証、甲43号証の1など)、現在に至るまで、申立人サンスターは引用商標を使用したオーラルケア製品の製造販売を行っている(甲第3号証及び甲第5号証ないし甲第26号証)ことが認められる。 そして、これらの使用商標における「G・U・m」の文字は、「m」の文字と「G」及び「U」の文字とが同じ太さ、同じ高さをもって表されているものであり、引用商標における「G・U・m」の文字と同様である。 また、申立人サンスターによる販売の態様ついて、甲第4号証では、「オーラルケアの総合ブランド 商品別の売り場構成が当たり前だった時代に、1ブランドだけのコーナーを作り、歯周病についての情報発信機能を持たせるという、当時としては画期的なマーケティングを実施・・・現在は・・・電動歯ブラシやメディカルドロップ(口腔咽喉薬)などもラインアップする・・・」とされている。 イ 商品の販売実績 甲第38号証(GUM(ガム)ブランド売上推移(供給ベース))によれば、申立人サンスターの引用商標を使用したオーラルケア製品の売上は、2008年が199億9千万円、2009年が196億7千万円、2010年が205億5千万円、2011年が221億5千万円及び2012年が226億5千万円であることが、また、甲第4号証(日経BP社発行「NIKKEI DESIGN 2013年11月号の66頁)には、「ブランド全体の売上高は1年間に約200億円」との記事があるから、当時1年間で約200億円の売上があることが認められる。 また、その売上げを具体的商品ごとにみてみると、甲第39号証(トイレタリーグッヅマーケティング要覧2013No.2(株式会社冨士経済))によれば、歯磨きが2011年に57億5千万円(シェア8.2%)、2012年に61億円(シェア8.6%)と国内4位、歯ブラシが2011年に40億円(シェア14%)と国内1位、2012年に40億円(シェア14%)と国内2位、洗口液が2011年に58億5千万円(シェア28.4%)、2012年に59億5千万円(シェア28.3%)と国内1位であることが認められる。 (2)引用商標を使用した商品の宣伝広告 ア 新聞、雑誌による広告 (ア)申立人サンスターは、新聞の全国紙(読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日経新聞)から地方紙(徳島新聞、河北新報、西日本新聞、中国新聞、北海道新聞等)に至るまで、引用商標5を始めとする引用商標を使用したオーラルケア製品に関する広告を、少なくとも、2010年10月から間欠的(2010年10月ないし12月、2011年9月、同年12月、2012年3月、同年6月、同年8月、同年9月、同年11月、2013年3月、同年5月)ではあるものの、継続して掲載している(甲第27号証の1ないし133)ことが認められる。 (イ)申立人サンスターは、2010年ないし2013年の間において、例えば、セブン&アイ出版発行の30代女性向けのファッション月刊雑誌「saita(咲いた)」(職権による調査によれば発行部数は約13万部である。甲第28号証の1ないし6)、株式会社ダイヤモンド・フリードマン社発行の量販店・スーパーマーケット・コンビニエンスストア・ドラッグストア向けの経営情報誌「ChainStoreAge」(職権による調査によれば月2回の発行で、1回約1万3千部の発行である。甲第29号証の1ないし9)、生活協同組合コープこうべ発行の「co・op ステーション」(職権による調査によれば阪神地域を中心に発行され、発行部数は約22万部である。甲第30号証の1ないし5)、歯科衛生士や歯科助手を対象とした医歯薬出版株式会社発行の月刊誌「デンタルハイジーン」(職権による調査によれば発行部数は約1万6千部である。甲第31号証の1ないし3)、株式会社日経BP発行の月刊誌「日経ヘルス」(職権による調査によれば発行部数は約8万部である。甲第32号証の1ないし4)、祥伝社発行の女性向けの健康生活情報誌「からだにいいこと」(職権による調査によれば発行部数は約11万部である。甲第33号証)に、引用商標5を始めとする引用商標を使用したオーラルケア製品に関する広告を掲載していることが認められる。 (ウ)申立人サンスターによる引用商標を使用したオーラルケア製品について、雑誌や新聞においては、例えば、「ブランド全体の売上高は1年間に約200億円で、オーラルケア製品市場ではトップシェアを誇る。」との記載(甲第4号証)、「ハミガキ全体で30%のシェアを持つサンスター。そのG・U・Mシリーズは、『液体』市場で約38%とダントツ。」との記載(甲第43号証の7)、「『G・U・M』シリーズが好調な伸び」「同シリーズは、上市後5年を経過した昨年10月時点で売上高100億円を突破、現在も好調な伸びを示している。オーラルケア市場の歯磨き部門の総売り上げが約680億円。その中で約7%のシェアを持つのが同商品である」との記載(甲第43号証の8)、「『ガム』は、89年の発売以来一貫して“歯周病予防”をコンセプトに掲げる同社の核ブランド。歯周病という言葉の認知率は同ブランドの出現で飛躍的に高まったといっても過言ではない。」との記載(甲第43号証の11)、「1989年に『G・U・M』ブランドで歯周病予防という新たな市場を創出したサンスターは、・・・」との記載(甲第43号証の16)、「(洗口剤市場について)現在33%という圧倒的なシェアを維持しているのがサンスター『GUM』だ。」との記載(甲第43号証の26)及び「サンスターの口腔ケアブランド『GUM』が登場して20年を迎えた。発売当時、一般消費者にはなじみの薄かった『歯周病』予防をうたって急速にシェアを拡大し、現在では年間200億円を売り上げる国内トップブランドの地位を確立した」との記載(甲第43号証の27)などの紹介・言及がされていることが認められる。 イ テレビCM 申立人サンスターは、引用商標を使用したオーラルケア製品に関するテレビCMを放送していることが認められる(甲第34号証)。なお、申立人らの主張によれば、このテレビCMは、2011年3月ないし2013年2月までの間になされたものとされている。 ウ 広告出稿量及び広告費用 甲第35号証(申立人サンスターの宣伝広告を主に担当している広告代理店の代表取締役社長による証明書)によれば、引用商標を使用したオーラルケア製品に関するGRP(延べ視聴率)は、2006年は13968.7GRP、2007年は17680GRP、2008年は23298.4GRP、2009年は17044.8GRP、2010年は14904.1GRP、2011年は24813GRP、2012年は21305.8GRPであることが認められる。 そして、甲第37号証によれば、「1GRPの単価は、在京キー局でおよそ10万円と言われ」とあることから、仮に、この単価を前提にするならば、引用商標を使用したオーラルケア製品に関して申立人サンスターが費やした広告費用は、2006年は13億9687万円、2007年は17億6800万円、2008年は23億2984万円、2009年は17億448万円、2010年は14億9041万円、2011年は24億8130万円、2012年は21億3058万円との計算になることが認められる。 2 引用商標の周知著名性について 上記1において認定した事実によれば、引用商標は、1989年の使用開始以来、商品「歯磨き」を含むオーラルケア製品に使用され、申立人サンスターにより新聞、雑誌やテレビなどのマスコミにおいて多岐広範囲にわたる宣伝広告が継続的に行われ、その結果、該オーラルケア製品は、1989年の発売以来売上を伸ばし続け、最近の年間の売上額では200億円を超える売上げがあり、その市場占有率も、洗口液が国内1位、歯ブラシが国内2位など、上位を維持しており、その状況が雑誌や新聞において紹介記事にされていることなどを総合して考察するならば、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「歯磨き」を含むオーラルケア製品の取引者、需要者の間において周知著名になっていたということができる。 3 出所の混同のおそれについて 本件商標は、「Gumserum」の欧文字を表してなり、第3類「歯磨き」を指定商品とするものである。 そして、本件商標の構成中の前半部の「Gum」の文字部分は、引用商標の構成文字(又は要部の構成文字)である「G・U・m」と同じ綴りであり、しかも、本件商標の指定商品である「歯磨き」は、引用商標が使用されているオーラルケア製品の一つであって、引用商標が広く認識されている分野の商品である。 他方、本件商標の構成中の後半部の「serum」の文字部分は、「血清」を意味する英語であり(甲第45号証、ほか英和辞典)、近時、美容や化粧品との関係で「美容液」を意味する旨の説明がされているもの(甲第46号証ないし甲第48号証)であって、職権による調査によれば、「serum(美容液)」とのタイトルをもって「美容液」が紹介されていることが認められるものである(http://www.imashiro.com/shop/serum.html)及び(https://www.google.co.jp//#q=美容液+serum&tbm=shop)。 加えて、本件商標の指定商品である「歯磨き」と美容については、「極上の泡で美白ケア」とのタイトルのもと商品「歯磨き」が紹介され(甲第51号証)、「輝く、美しい歯を目指し、歯の『ビューティエイジングケア』を提案」として、商品「歯磨き」が紹介され(甲第52号証)、「『美容ハミガキ』という新しい市場を創造」として、商品「歯磨き」が紹介され(甲第53号証)、「歯の美容ステップケア」「歯の美容クリーナー」「歯の美容液」との語を使用して、商品「歯磨き」が紹介され(甲第54号証)、「口腔化粧品」として「オーラルケアクリーム」が紹介され(甲第55号証)、「歯の美容液」として「液状の歯磨き」が紹介され(甲第56号証)、「美容薬用ハミガキ」との語をもって、商品「歯磨き」が紹介され(甲第57号証)、「美容歯磨き」との語をもって、商品「歯磨き」が紹介されている(甲第58号証)など、密接な関係にあることが認められるところである。 そうすると、本件商標は、その指定商品に使用された場合、取引者、需要者をして、「Gum」の文字と「serum」の文字によって構成されるものと容易に認識され得るものであり、その商品が申立人サンスター又は申立人らと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し、その出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわなければならない。 第5 本件商標の商標権者の意見 本件商標権者は、前記第4の取消理由の通知に対し、平成27年1月8日付けの意見書において、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反しておらず、その登録を取り消すべき理由はないと意見し、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第25号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 本件商標と引用商標との類似性について (1)外観について 引用商標の「G・U・m」の文字は、同じ太さ、同じ高さをもって表され、各文字の間には中黒が挿入されているものであり、引用商標は、「G・U・m」の3文字だけで完結しており、その後ろにいかなる文字も付されるものではない。 他方、本件商標は、その構成中の前半部にある「Gum」の文字部分は、綴りが引用商標と同じであるが、アルファベットの大文字である「G」の文字と、アルファベットの小文字である「u」及び「m」の文字の組み合わせであり、各文字の間に中黒も挿入されていないし、その構成中の後半部にある「serum」の文字部分と不可分一体となっており、その一部のみを分離・抽出することはできない。 したがって、本件商標は、その一部に引用商標を含んではいるものの、構成上一連一体となっていることから、その外観は引用商標と明らかに異なる。 (2)観念について 引用商標は、その構成文字である「G・U・m」(又は要部の構成文字)は、歯と密接に関連する「歯ぐき」、「歯肉」などを意味する英語であり(乙第2号証)、商標の観念としては「デンタルケア」に力点が置かれている。 他方、本件商標も、その指定商品を「歯みがき」としており、その構成中の前半部に、引用商標と同様に、歯と密接に関連する「歯ぐき」、「歯肉」などを意味する「Gum」の文字を含んでいるが、本件商標が使用される商品は、天然素材を使用した「美容液歯みがき」であり(乙第3号証の1ないし3)、本件商標の構成中の後半部にある「serum」の文字は「美容液」を意味する英語であり(甲第46号証及び甲第47号証)、前半部と後半部が不可分一体となって「美容液歯みがき」という商品の性質を表示し、商標の観念としては「美容」に力点が置かれている。 さらに、本件商標は、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)による造語であり、本件商標が使用される商品と引用商標が使用される商品は、対象とする取引者及び需要者層も異なっている。 したがって、本件商標は、観念としては「美容」に力点が置かれており、申立人らとは対象とする取引者及び需要者層が異なるため、その観念も引用商標とは異なっている。 (3)称呼について 引用商標は、「ガム」と称呼されるのに対し、本件商標は、その商品の特質が天然素材を使用した「美容液歯みがき」であり、観念上、「美容」(serum)に力点が置かれていることから、「ガムセラム」と一連称呼され、「ガム」と略称される可能性はない。 したがって、本件商標と引用商標の称呼は、全く異なる。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件商標は、引用商標が対象とする「歯みがき」を指定商品としているものの、その外観、観念及び称呼のいずれをとっても類似しているとはいえず、出所の誤認混同を生ずるおそれはない。 2 取引の実情について 引用商標は、申立人らのハウスマークには当たらないものの、その売上や認知度を考慮すると、申立人ら自身を表示し、代表する商標のひとつであって、申立人らが扱うオーラルケア製品を代表するハウスマーク類似の性格を有している(乙第5号証)。 一方、本件商標は、本件商標権者が扱うオーラルケア製品のうち、「美容液歯みがき」のみに付されるペットマークにすぎず(乙第3号証の1)、オーガニック製品というカテゴリーの中でブランドを設定し、商品展開を行っている(乙第6号証)。本件商標権者は、本件商標を、単なる「歯みがき」ではなく、「美容液歯みがき」という美容分野の新ジャンルの商品表示として想定しているものである。本件商標権者は、オーラルケア製品の宣伝広告に当たっては、本件商標ではなく、「Made of Organics」を前面に押し出している(乙第3号証の1ないし3)。 したがって、引用商標と対比されるのは、本件商標ではなく、「Made of Organics」であって、本件商標と引用商標とが同一の概念レベルで並んで取り上げられることはない。 また、本件商標が、取引者、需要者によって、「Gum」の文字と「serum」の文字に分離して理解することがあり得るとしても、「Gum」の文字から認識されるのは、引用商標「G・U・m」ではなく、単なる「歯ぐき」、「歯肉」を意味する一般名詞の「gum」であって、商品名の一部に「Gum」という単語が含まれるだけでは、引用商標との関係性を認識する可能性はない。 3 引用商標の信用や需要者の利益について 本件商標と引用商標は、商品の性質、コンセプトが異なる。本件商標は、オーガニックのスペシャリティブランド」を標榜し(乙第8号証)、消費者全般ではなく、天然素材の有する安全性・使い心地等の特性に付加価値を見出す一定の範囲の消費者を販売ターゲットとしている。これに対して、引用商標は、オーラルケア製品の中でも、歯周病予防に特化した商品を表示の対象とし(乙第20号証)、広く一般の消費者全体を販売ターゲットとしている。このように、本件商標が使用される商品と引用商標が使用される商品とは、性質やコンセプトという点ではまったく異なっており、関連性が希薄といえる。 また、本件商標が使用される商品は、通信販売サイトで扱われているほか(乙第21号証)、主に百貨店や生活雑貨を扱うチェーンストア、美容品やオーガニック商品を扱う販売店舗等で扱われている(乙第22号証)が、「歯みがき」製品が入手しやすいといえるドラッグストアやスーパーマーケット等では取り扱いがなく、広く一般消費者向けのものではなく、美容や天然素材に対する意識の高い特定の需要者層を対象としている。基本的に割引販売も想定していない。これに対して、引用商標が使用される商品は、本件商標が使用された商品と同様、通信販売サイトでも扱われてはいるものの(乙第23号証)、基本的には、広く一般消費者に向けて販売するため、スーパーマーケットやドラッグストアなどの量販店で取り扱われている(甲第41号証及び乙第24号証)。このように、本件商標が使用される商品と、引用商標が使用される商品とは、取引者及び需要者層が全く異なっている。 さらに、本件商標の付された商品の販売価格は、最大で、引用商標のブランドのもとに販売されている商品の価格の11倍程も高額であるから、本件商標が使用される商品は、価格帯の点においても引用商標が使用される商品とは明らかに異なり、対象とする取引者及び需要者層が異なっている。 すなわち、本件商標が使用される商品は、申立人の扱う「歯みがき」と比較して、商品のコンセプトや性質が異なり、また、商品取扱店舗や価格帯の点でも、対象とする取引者及び需要者層が異なっており、本件商標の付される商品と引用商標をブランドとする製品群の方向性が全く異なっているため、歯みがき製品の中でも、ある種の住み分けができている。 したがって、本件商標は、いわゆる、ただ乗り(フリーライド)や、希釈化(ダイリューション)などにより、引用商標権者の信用(顧客吸引力)を利用したり、又は、損なわせたりすることがあり得ないのであって、本件商標と引用商標とが混同するおそれは生じ得ない。 4 まとめ 本件商標は、外観、称呼及び観念の点から、引用商標との間に類似性はない。 また、引用商標がハウスマーク類似の性格を有するのに対して、本件商標はペットマークとしての性格しか有しておらず、本件商標が使用される商品について引用商標と対比されうる商標としては、すでに「Made of Organics」が登録されており、商品「Gumserum」からは、引用商標との関連性を想起、認識することはできないし、両商標が付されている実際の商品の外観も全く異なっているから、本件商標は、引用商標の自他識別機能を害してもいない。 さらに、商品の性質、コンセプト、商品取扱店舗や価格帯の点からも対象としている取引者及び需要者層が異なっているから、本件商標は、引用商標へのただ乗り(フリーライド)や、引用商標の希釈化(ダイリューション)を生じさせることはなく、引用商標の信用を害することがなく、需要者の利益を損なうこともない。 これらの事情に照らして、本件商標を使用された商品を、申立人らの商品であるかのように誤認し、その出所について混同を生ずるおそれは全くない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反しておらず、商標登録を取り消すべき理由はない。 第6 当審の判断 1 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について 本件商標について先に通知した取消理由は,妥当なものと認められる。 2 商標権者の意見について (1)本件商標について 本件商標権者は、本件商標について、その構成中の「Gum」の文字部分が歯と密接に関連する「歯ぐき」、「歯肉」などを意味し、その商品が天然素材を使用した「美容液歯みがき」であって、観念上、「美容液」を意味する「serum」の文字部分に力点が置かれるものであるから、「Gum」の文字部分と「serum」の文字部分とが不可分一体である旨主張している。 しかし、本件商標の構成中の「Gum」の文字部分は、「歯ぐき」、「歯肉」などの意味合いを有する語であるとしても、それが取引者、需要者に広く認識されているということはできないものであり、むしろ、前記第4の1及び2のとおり、申立人サンスターの商品を表示するものとして、取引者、需要者の間で周知、著名となっているものである。また、本件商標を使用する商品が、本件商標権者が述べるとおり「美容液歯みがき」であるならば、本件商標は、前記第4の3のとおり、その構成中の「serum」の文字部分が「美容液」を表すものとして使用されている実情もあり、その商品の出所の識別標識としては強力に機能するとはいえないものといえる。 そうすると、本件商標は、「Gum」の文字部分に看者の注意が惹かれることも少なくないから、本件商標権者の主張は採用することができない。 (2)本件商標と引用商標との識別機能について 本件商標権者は、引用商標がハウスマーク類似の性格を有するのに対して、本件商標はペットマークとしての性格しか有しておらず、商品の性質、コンセプト、商品取扱店舗や価格帯の点からも対象としている取引者及び需要者層が異なっており、本件商標が、引用商標にただ乗り(フリーライド)したり、希釈化(ダイリューション)を生じさせることはなく、引用商標の信用を害したり、需要者の利益を損なうこともないと主張している。 しかし、ハウスマークとペットマークの間で出所の混同を生じないというべき理由はない。引用商標には、前記第4の1のとおり、歯磨き、歯ブラシ、洗口液等のオーラルケア製品に広く使用されている実情があり、本件商標が「美容液歯みがき」に使用されるものであっても、結局、オーラルケア製品の範ちゅうの商品について使用されるのであるから、本件商標の使用商品と引用商標の使用商品との関係も密接なものといえる。加えて、本件商標の指定商品は、前記第1のとおり「歯磨き」であり、引用商標が使用されているような品質やコンセプトの「歯磨き」をも含むものであるから、かかる観点からも、商品について密接な関係があるものである。 そうすると、本件商標と引用商標との間には、その商品においても密接な関係を有するといえるから、本件商標権者の主張は採用することができない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、同法第43条の2第1号により、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり、決定する。 |
別掲 |
別掲1(引用商標1及び引用商標7) 別掲2(引用商標2) (色彩については原本参照。) 別掲3(引用商標3) (色彩については原本参照。) 別掲4(引用商標4) (色彩については原本参照。) 別掲5(引用商標5) (色彩については原本参照。) 別掲6(引用商標6) |
異議決定日 | 2015-03-25 |
出願番号 | 商願2013-55220(T2013-55220) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Z
(W03)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 小林 裕子 |
特許庁審判長 |
土井 敬子 |
特許庁審判官 |
林 栄二 中束 としえ |
登録日 | 2013-12-06 |
登録番号 | 商標登録第5635710号(T5635710) |
権利者 | 株式会社たかくら新産業 |
商標の称呼 | ガムセラム |
代理人 | 飯塚 予始子 |
代理人 | 青木 博通 |
代理人 | 中田 和博 |
代理人 | 磯田 直也 |
代理人 | 千屋 全由 |
代理人 | 牧野 利秋 |
代理人 | 富所 英子 |
代理人 | 柳生 征男 |
代理人 | 富所 英子 |
代理人 | 磯田 直也 |
代理人 | 中里 妃沙子 |
代理人 | 青木 博通 |
代理人 | 中田 和博 |
代理人 | 柳生 征男 |
代理人 | 牧野 利秋 |