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審決分類 |
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W06 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W06 審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W06 |
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管理番号 | 1300717 |
審判番号 | 無効2014-890065 |
総通号数 | 186 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2015-06-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2014-09-26 |
確定日 | 2015-04-27 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5677015号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5677015号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5677015号商標(以下「本件商標」という。)は、「おもいやり手すり」の文字を標準文字で表してなり、平成26年1月21日に登録出願、第6類「手すり」を指定商品として、同年5月19日に登録査定、同年6月13日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する商標は、以下に示したものである。 1 商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標 登録第5624566号商標(以下「引用商標1」という。)は、「おもいやり」の文字を標準文字で表してなり、平成25年6月12日に登録出願、第6類「建築用又は構築用の金属製専用材料,金属製建造物組立てセット,金属製金具,金属製のきゃたつ及びはしご,金属製建具」を指定商品として、同年9月20日に登録査定、同年10月18日に設定登録されたものである。 2 商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当するとして引用する商標 (1)登録第5335084号商標 登録第5335084号商標は、「おもいやり」の文字を標準文字で表してなり、平成20年8月26日に登録出願、第19類「建築材料(金属製のものを除く。),リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,建造物組立てセット(金属製のものを除く。),階段及びその部材(金属製のものを除く。),木材,建具(金属製のものを除く。),鉱物性基礎材料」及び第20類「カーテン金具,金属代用のプラスチック製締め金具,くぎ・くさび・ナット・ねじくぎ・びょう・ボルト・リベット及びキャスター(金属製のものを除く。),座金及びワッシャー(金属製・ゴム製又はバルカンファイバー製のものを除く。),錠(電気式又は金属製のものを除く。),家具,屋内用ブラインド,すだれ,つい立て,びょうぶ,ベンチ」を指定商品として、同22年6月10日に登録査定、同年7月2日に設定登録されたものである。 (2)請求人は、高齢者住宅・施設向け商品(ドア/収納/手摺/階段/床など)に使用している商標として「おもいやり」、「おもいやりフロア」、「おもいやりドア」及び「おもいやり収納」の文字からなるものを挙げている(以下、これらをまとめて「おもいやり商標」という。)。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第28号証(枝番を含む。)を提出した。 1 本件商標登録を無効とすべき理由 (1)「おもいやり商標」の周知、著名性について 「おもいやり商標」は、請求人の大々的な使用により、本件商標の出願日及び登録査定日において、請求人の製造販売する建築材料の出所を表示するものとして、我が国の需要者等に広く知られている。 ア 請求人について 請求人は、住宅・建築資材関連事業を業とし、1945年の設立以来、長年にわたって、種々の建築材料を製造販売してきた。 請求人の2012年度の売上高は1,581億円を超え(甲第8号証)、請求人の商品は高い市場占有率を誇っている(甲第9号証)。また、請求人の製造販売する建築材料は需要者等から高い評価を得ている(甲第10号証)。 請求人は、総合カタログをはじめとする種々の商品カタログを作成し、全国の設計事務所や施工会社等に広く配布している(甲第11号証)。また、同カタログを請求人のウェブサイトにも掲載し閲覧できるようにしている(甲第12号証)。 イ 請求人による「おもいやり商標」の使用 請求人は、2012年1月に、「おもいやり商標」を、高齢者住宅・施設向け商品のブランド名として採用し、同商標を付した種々の建築材料を製造販売してきた(甲第7号証(枝番を含む。)ないし甲第9号証。以下、「おもいやり商標」を付した商品を「請求人使用商品」という。)。 請求人は、「おもいやり」の語を、商品群全体の商標として使用するとともに、当該商品群下で販売される個別商品について、「おもいやり」の語を冠した「おもいやりフロア」、「おもいやりドア」、「おもいやり収納」等の商標を使用してきた(甲第7号証(枝番を含む。))。これらの商標は、何れも「おもいやり」の語に商品の一般名称を結合した商標であり、出所識別標識としての機能を果たす部分は、前段に共通している「おもいやり」の部分である。このことからも、請求人が一貫して「おもいやり」を識別標識として使用してきたことは明らかである。そして、「おもいやり」を含む商標が他人に使用された場合は、請求人使用商品と出所混同が生じるおそれが十分に存在するため、そのような使用に対しては、請求人は厳しい対応を行っている(甲第13号証)。 ウ 請求人使用商品の売上げ 請求人使用商品の売り上げは、2012年度は約10億円、2013年度は約15億円となった。2014年のカタログ改訂に伴ってさらに商品を拡充し、種々の商品を組み合わせた空間全体の提案力を強化するなどし、2015年度に60億円の売上げを目指している(甲第14号証の1及び2他)。 エ カタログの配布 請求人使用商品は、一般的な床材や建具等と同じく、設計事務所や施工会社等を通じて流通、販売されるものである。請求人は、請求人使用商品のカタログ(甲第7号証(枝番を含む。))を、総合カタログ等とともに、全国の設計事務所や施工会社等に配布しており、同カタログの出荷数は、2012年1月から2013年12月までの2年間だけで、44,480部にのぼる(甲第15号証)。 オ 展示会での出展 請求人は、請求人使用商品を、建築材料の分野における主要な展示会に出展してきた(甲第16号証ないし甲第21号証(枝番を含む。))。 カ ショールームでの展示 請求人は、全国にショールームを有しており(甲第8号証)、特に、新宿、秋葉原、名古屋、金沢、大阪、岡山の各ショールームでは、請求人使用商品の専用スペースを設け、訪れた需要者等が実際の商品を体験できる展示をしている(甲第22号証及び甲第23号証(枝番を含む。))。また、2012年7月には大阪ショールームと秋葉原ショールームで、取引先や設計事務所等を対象に、請求人使用商品の提案会を開催したり(甲第8号証)、大阪ショールームでの新製品提案会でも、請求人使用商品を紹介したりするなど(甲第23号証の12)、需要者等に対し、積極的に情報発信をしてきた。 キ 広告の掲載 請求人は、2012年1月、8月及び2013年6月、8月に介護サービス事業者や不動産・建設事業者が購読する専門紙「高齢者住宅新聞」(発行部数:3万部)において、請求人使用商品の広告を掲載した(甲第24号証(枝番を含む。))。 ク 新聞・雑誌等への掲載 請求人使用商品は、2012年1月のシリーズ展開開始以来、非常に注目され、現在に至るまで多数の新聞記事、雑誌記事等に掲載されている(甲第9号証、甲第18号証の2ないし4、甲第19号証の2、甲第20号証の4、甲第23号証(枝番を含む。)、甲第25号証(枝番を含む。)及び甲第26号証(枝番を含む。))。 ケ まとめ 以上のことから、「おもいやり商標」が、本件商標の出願時及び登録査定時において、建築材料の分野の需要者等に広く知られていたことは明らかである。 (2)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する理由 本件商標中、「おもいやり」の語が、出所識別標識として強く支配的な印象を与えること、「手すり」の語が、指定商品との関係で、出所識別標識として機能しないことから、本件商標は「おもいやり」の部分を抽出して商標の類否を判断すべきものである。 したがって、本件商標は、「おもいやり」の語からなる引用商標1と類似する。 本件商標の指定商品である第6類「手すり」は、引用商標1の指定商品の第6類「建築用又は構築用の金属製専用材料」に含まれる同一の商品である。 そして、本件商標と引用商標1は、出所識別標識として強く支配的な印象を与える、「おもいやり」の部分において、称呼・観念が共通する。また、両者は、識別標識として機能しない「手すり」の語の有無のみに差異を有するものであるから、外観も類似する。 よって、両商標は、全体として類似する商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 (3)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由 本件商標は、請求人の出所識別標識として需要者等に広く知られた「おもいやり商標」と類似し、独創性の程度も高い。さらに、本件商標の指定商品は、請求人使用商品(甲第7号証(枝番を含む。)、甲第25号証の2ないし5及び同号証の11ないし25他)と同一又は類似であり、商品の性質、用途が共通し、需要者等も共通する。そして、「手すり」については、高齢社住宅用やバリアフリー改修工事用の需要が高まっていて、需要者(施主)の多くが、専門知識のない一般需要者であるため、出所識別の際に払われる注意力は高くない。 本件商標がその指定商品に使用された場合、需要者等は、「おもいやり」の文字部分に着目して、当該商品が請求人、あるいは、請求人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務にかかる商品であると、混同する可能性が極めて高い。 よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 (4)本件商標の商標法商標法第4条第1項第19号に該当する理由 上述のとおり、本件商標は需要者等に広く知られた「おもいやり商標」と類似する。 本件商標の権利者である片山工業株式会社は、建築用部品の製造販売を業とする企業であり(甲第28号証)、請求人とは同業者である。そして、請求人の「おもいやり商標」の大々的な使用を考慮すれば、「おもいやり商標」を当然知っていたと考えるのが自然である。 したがって、本件商標は、「おもいやり商標」の顧客吸引力へのただ乗りや希釈化といった、不正の目的をもって出願されたものである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。 2 結語 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同15号又は同19号に違反して登録されたものである。 よって、本件商標の登録は無効とされるべきものである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、請求人の主張に対して何ら答弁していない。 第5 当審の判断 事案に鑑み、まず、本件商標の商標法第4条第1項第11号の該当性について検討する。 本件商標は、上記第1のとおり、「おもいやり手すり」の文字を標準文字で表してなるものである。 しかして、本件商標中の「手すり」の文字は、「階段・橋・廊下などの縁に、腰の高さに渡した横木」(広辞苑第六版)のことであり、その指定商品「手すり」との関係においては、商品の普通名称又は用途を表示する語であり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。 そうすると、本件商標中の「手すり」の文字は商品の出所識別標識としての機能を有しないものであるから、本件商標中の「おもいやり」の文字が、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。 よって、本件商標中の「おもいやり」の文字を抽出し、他人の商標と比較することが許されるというべきである。 してみれば、本件商標は、その構成中の「おもいやり」の部分が自他商品の識別機能を果たす部分というのが相当であるから、これより、「オモイヤリ」の称呼及び「思いやり」の観念を生ずるものである。 他方、引用商標1は、上記第2の1のとおり、「おもいやり」の文字を標準文字で表してなるものであるから、これより、「オモイヤリ」の称呼及び「思いやり」の観念を生ずるものである。 以上よりすれば、本件商標中の「おもいやり」の文字と引用商標とは、文字のつづりを共通にするから、外観上、近似するというのが相当である。 加えて、本件商標と引用商標1とは、その称呼及び観念を同じくするものである。 してみれば、本件商標と引用商標1とは、相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。 また、本件商標の指定商品「手すり」は、引用商標1の指定商品中、「建築用又は構築用の金属製専用材料」と同一又は類似の商品である。 してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものというべきである。 したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、請求人が主張する他の理由について判断するまでもなく、同法第46条第1項により、無効とすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-03-03 |
結審通知日 | 2015-03-05 |
審決日 | 2015-03-18 |
出願番号 | 商願2014-3568(T2014-3568) |
審決分類 |
T
1
11・
262-
Z
(W06)
T 1 11・ 261- Z (W06) T 1 11・ 263- Z (W06) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 矢代 達雄 |
特許庁審判長 |
早川 文宏 |
特許庁審判官 |
渡邉 健司 前山 るり子 |
登録日 | 2014-06-13 |
登録番号 | 商標登録第5677015号(T5677015) |
商標の称呼 | オモイヤリテスリ、オモイヤリ |
代理人 | 川本 真由美 |
代理人 | 大谷 嘉一 |
代理人 | 鮫島 睦 |
代理人 | 市川 久美子 |