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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z0510
管理番号 1298391 
審判番号 取消2013-300011 
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-01-09 
確定日 2015-02-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第4472545号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4472545号商標(以下「本件商標」という。)は,「MICROHALER」の欧文字を標準文字で表してなり,平成12年4月4日に登録出願,第5類「薬剤」及び第10類「医療用機械器具」を指定商品として,同13年5月11日に設定登録され,その後,同23年2月22日に商標権の存続期間の更新登録がされ,現に有効に存続しているものである。
なお,本件の審判請求の登録は,平成25年1月31日である。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の登録を取消す,審判費用は,被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,甲第1号証ないし甲第18号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,全指定商品について,過去3年間商標権者によって使用された形跡がない。また,専用使用権者及び通常使用権者の設定登録もない。
2 答弁に対する弁駁
(1)取消請求に係る商品の輸入行為の有無
ア 乙第10号証によってインボイスが送付されたこと及び乙第11号証によって包装明細書が送付されたことが認められるとしても,我が国に輸入された事実を裏付けるような,例えば,商品代金の支払いを証明する書面,通関料,配達料,関税,輸入消費税又は航空運賃料等の支払いを証明する書面等の証拠が提出されていない以上,このインボイスに記載された「MICROHALER WITH MASK」が,現実に我が国に輸入されたという事実についてまでは確認することはできない。
イ 乙第12号証の出荷案内書は,たしかに,「MicroHaler」なる「物」が,出荷されたであろうという事実を間接的に示すものではあるが,それにとどまるものであり,これがいったいどのような商品であるのかが明らかではない点,また,これらの単価や金額が一切表わされていない点を考慮すれば,これによって独立した商取引が成立していることまでを証明できるものではない。
ウ 乙第20号証のパッケージ(写し)を見ると,パッケージ全体が日本語によるものであり,また,乙第6号証の「ご使用方法・お手入れ方法」等に掲載されている吸入補助器具(以下「吸入器」という場合がある。)本体の写真を見ると,ここにも日本語で「インタールエアロゾル専用吸入補助具/マイクロヘラー」と印字(又はラベル貼付)がなされている。
一方,これまでに被請求人から提出された証拠(乙14ないし乙16,乙28ないし乙33)により明らかなように,サノフィ・アベンティス株式会社が,様々な国の様々な企業から「マイクロヘラー」に係る製品を取り寄せていることを考慮すれば,各国から輸出される段階で吸入器本体やパッケージの箱について,上記のような日本語の表示がなされているとは考え難いものである。
したがって,サノフィ・アベンティス株式会社が海外より輸入しているのはあくまで「何も印字等されていない」吸入器の「本体だけ」であり,日本国内において,これに印字(又はラベルの貼付)を行った上で,パッケージに詰めているものと考えられる。
エ 乙第34号証ないし乙第46号証(マイクロヘラー製品の輸入許可書等)によれば,たしかに,Shipper(荷送り人)であるカナダの「TRUDELL MEDICAL INTERNATIONAL」より,Consignee(商品の引受人)であるサノフィ・アベンティス株式会社に対して,何らかの物品が配送されたことが推認できるものである。
しかしながら,これらのいずれの証拠からも,当該配送された商品がいったいどのような物品であるかについては明らかではない。
すなわち,乙第34号証,乙第39号証及び乙第43号証の「輸入許可通知書」には,品名として「THERAPEUTIC RESPIRATION APPARATUS」(呼吸作用治療機器)と記載があることを確認できるものの,これらは広い概念での表記であり,たとえば,人工呼吸器,ネブライザー,気道粘液除去装置等,幅広い治療機器を含むものである。そして,その他の上記証拠を見ても,輸入行為のあった具体的な物品を特定できるものではない。
なお,乙第38号証,乙第42号証及び乙第46号証のインボイスにおいては,書面上に「MICROHALER WITH MASK」の文字が見受けられるものの,これがいかなる商品であるかが依然として不明である。
オ 乙第47号証及び乙第48号証(「TRUDELL MEDICAL INTERNATIONAL」社宛ての商品パッケージ等の作成依頼メール)について,これらの通信記録を見る限りでは,カナダのTRUDELL MEDICAL INTERNATIONALに対して,「マイクロヘラー(Microhaler)」に係るアートワークが依頼されたとの事実については,推認できるといえる。
しかしながら,ここで作成・修正されたパッケージや吸入器本体等が,実際にTRUDELL MEDICAL INTERNATIONALによって輸出されたといった事実については,提出された全証拠から明らかではない。
(2)取消請求に係る商品の我が国における流通行為の有無
ア 乙第13号証ないし乙第16号証をみると,たしかに宛先として「サノフィ・アベンティス(株)受注センター(COP)御中」と記載されており,出荷先名には「ヤマトロジスティクス(株)三郷販売」との記載を確認することができる。
しかしながら,サノフィ・アベンティス株式会社が取り扱う「マイクロヘラー」は,吸入補助器具という「医療器具」であると理解しているところ,これを取り扱う医療機関や薬局であればともかく,全く業務分野が異なる流通業者であるヤマトロジスティクス株式会社の営業所の一つ「三郷販売」が,数千個の単位でこのような性質を有する商品を発注することは極めて不自然といわざるを得ない。
ヤマトホールディングス株式会社が,平成20年10月1日付けで「ヤマトロジスティクス埼玉県三郷市に拠点を開設」との表題で告知を行なったウェブページ(甲17)によれば,この「三郷販売物流センター」は,企業等が取り扱っている商品について一時的に保管しておき,需要者から注文があった際にはここから発送するという,いわゆる「倉庫代わり」として機能しているものと考えられる。
そうであれば,発注依頼書の内容が意味するものは,「サノフィ・アベンティス株式会社」の担当者と思われる者が,関連組織である「サノフィ・アベンティス(株)受注センター(COP)」に対して,「マイクロヘラー マスクツキ」等の物を,「倉庫代わり」として利用している「三郷販売物流センター」に在庫補充のため出荷することを発注したと考えるのが自然である。
イ 乙第53号証として,複数の薬局の署名による『吸入器具「マイクロヘラー」マスク付き(「Microhaler」with mask)製品の受領書』を提出するが,上記受領書の日付を見ると,いずれも2014年1月又は2月という,ごく最近になって新たに作成されたものであり,過去に製品の受領があったことを現在になって確認したにすぎない「受領確認書」である。
しかも,ここで確認されている製品の受領については,2011年から2013年の間に納品されたものとなっており,また,記載されている製品の提供数についても百個もしくは十個単位と,あまりに大雑把な内容となっているといわざるを得ない。
ウ 被請求人は,新たな証拠(乙54)を提出した上で種々述べているが,いずれも請求人又は被請求人により提出された書面において既に述べられた事項を繰り返し述べているにすぎず,何ら新たな事実や証拠を明らかにしたものではない。
(3)通常使用権契約の存否
ア 被請求人により提出された答弁書の内容及び証拠からは,「サノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社)」が本件商標の通常使用権者であることについては一切立証されていない。
通常使用権は,特許法第98条を準用する商標法第30条専用使用権とは異なり,特許庁への登録がその効力発生要件ではなく,当事者間のいわゆる使用許諾契約によって発生し得るものである。請求人の提出した本件商標の商標登録原簿の写し(甲1)によれば,本件商標について設定登録された通常使用権は存在していない。
したがって,「サノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社)」が本件商標の通常使用権者であると認められるためには,権利者である「フィソンス リミテッド」との間に,少なくとも,本件商標の使用を許諾する旨の契約や,本件商標の使用について権利者が黙示の許諾を与えていることを信じるに値するような特別な関係があることを立証することが必要である。
イ 「サノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社)」及び「フィソンス リミテッド」が,ともにSanofi SA(サノフィ エスアー)の系列子会社であることは確認できるものの,ここでいう「系列子会社」の意味については曖昧であり,両者がどのような関係にあるかといった内容についても全く不明である。
ウ 被請求人は,乙第17号証として商標ライセンス契約書の写しを提出するが,その翻訳文によれば,「西暦2009年3月1日に契約が締結された」とあるものの,サノフィ・アベンティス株式会社及びフィソンス リミテッド相互の代表者のサインについてその日付(サイン日)が記載されておらず,また,契約書の作成日も不明であることから,契約書の体裁としてきわめて不自然である。しかも,契約書原文では「made effective on March 1,2009」(西暦2009年3月1日に効力が生じた)と記載されており,上記の「西暦2009年3月1日に契約が締結された」という訳文の内容とは意味を異とするものである。
ライセンス契約書内には,ライセンス対象商標として片仮名で「マイクロヘラー」と表示されている点,また,「Japanese Trademark Registration」といった表現が一切出ていない点についても,不自然さを感じるものである。日本法人であるサノフィ株式会社側が当該契約書を作成したということであるが,そうであっても,英国法人の相手方には片仮名が理解できないと考えるのが普通であるから,契約書内では「MICROHALER(in katakana characters)」や「MICROHALER(in Japanese characters)」などと表示するのが自然である。
エ 乙第27号証の証明書をみると,当該証明書には2014年1月14日付けでSANOFI SAのアソシェイト副社長によってサインがなされていることから,これが本事件に係る口頭審理の準備段階において作成・用意されたものであろうことがわかる。
そして,この点とこれまでの被請求人による対応の経緯を考慮すれば,当該商標ライセンス契約書についても同様に,同段階で作成・用意がなされた可能性が高いことが考えられる。
当該商標ライセンス契約書の「フィソンス リミテッド」のサイン者と,上記乙第27号証の証明書の「SANOFI SA」のサイン者が,ともに「Emmanuelle RAGON」という同一人物であること,また,両書類の作成時期は数年も異なっているはずであるにもかかわらず,そのサインが極めて酷似している点も明らかに不自然である。
依然として,子会社同士である「フィソンス リミテッド」及び「サノフィ株式会社」の関係性については何ら説明がなされていない。
(4)使用に係る商品の商標法上の商品該当性
ア 乙第3号証及び乙第4号証は,インターネットブラウザで表示されたウェブアプリケーションの実行画面であると推測できる。
インターネットブラウザの上部にも,「Sales Assist System」と表示されていることからも,おそらくサノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社)が社内的に利用している営業支援ツールの一部であると考えて間違いなく,このような社内向けのシステムにおける情報は当然ながら社外秘となっており,外部からアクセスできないのが一般的である。
したがって,当該画面は,本件商標の表示が商標法上の「使用」に該当することはないものである。
イ 乙第5号証として提出された製品マニュアルの右上部又は左上部には,いずれも「禁コピー・禁配布」の記載があることから,これが一般的に商品の需要者や取引者に配布されるものでない。
また,乙第5号証ないし乙第7号証によれば,「サノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社)」が取り扱う吸入補助器具「マイクロヘラー」は,喘息治療薬である「インタール」の付属品として無償で提供されるものであって,この製品マニュアルは当該治療薬を服用する患者の便宜のために「使用方法」や「手入れ方法」を紹介しているにすぎない。
被請求人の取り扱う「マイクロヘラー」という吸入補助器具は,あくまで被請求人に係る喘息治療薬である「インタール」を服用する際に用いられる一種の「付属品」であって,当該吸入補助器具単独では独立した商取引の対象となっていない。仮に,被請求人が当該吸入補助器具を単独で販売し,独立した商取引の対象としているのであれば,本件商標の使用事実を示す証拠としては,当該吸入補助器具を販売・宣伝広告しているウェブサイトやカタログの写しを提出すれば済むにもかかわらず,このような「使用方法や手入れ方法」の説明書を不自然に提出していることからも,被請求人が当該吸入補助器具を単独では取引に資していないことが裏付けられる。
したがって,当該吸入補助器具は,少なくとも商標法上の「商品」たり得るための「独立性」及び「有償性」の要件を満たしていないものである。
ウ 乙第8号証は,商品の実際の販売態様を示したパッケージ写真であり,
この写真からは,撮影日,撮影場所,商品流通の有無等,当該吸入補助器具に関する情報が一切理解できない。
3 むすび
以上述べたように,被請求人により主張・提出された事実・全証拠からは,商標法第50条第1項において登録の取消が免れる要件を満たすことはできないものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第61号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)取消請求に係る商品の輸入行為の有無
ア サノフィ・アベンティス株式会社は,「MICROHALER」に係る製品を,サノフィ・グループのSANOFI WINTHROP INDUSTRIE(仏国)から購入し,2010年10月8日付けでインボイスが出され,サノフィ・アベンティス株式会社には,日本円で10,950,000円が請求されている(乙10)。
PACKING LIST(パッキングリスト)によれば,MICROHALER」に係る製品が,Fisons LtdからSANOFI AVENTIS JAPAN COに出荷され,インボイス番号EX27067,インボイス発行日2010年10月7日が示されている(乙11)。
Trudell Medical InternationalのPacking Slip(パッキング・スリップ)によれば,「MicroHaler」に係る製品が,Sanofi-Aventis K.K.に出荷され,Packing Slipとして第269418が,印刷日として2011年9月20日が,Req.Ship Date(要求された発送日)として2011年9月9日が示されている(乙12)。
これらの行為は,通常使用権者であるサノフィ・アベンティス株式会社による,商標法第2条第3項第2号及び第8号の商標の使用行為があるものと考える。
イ 乙第10号証について,「SANOFI WINTHROP INDUSTIRE」は,「SANOFI WINTHROP INDUSTRIE(SA)」のことであって,SANOFI(SA)の系列会社でサノフィ・グループに属する会社である(乙1)。
SANOFI WINTHROP INDUSTRIE(SA)もサノフィ・グループに属する会社として「マイクロヘラー」製品を扱っているため,「MICROHALER WITH MASK」(マスク付きのマイクロヘラー)をSANOFI-AVENTIS KK(サノフィ・アベンティス株式会社)が輸入したものである。
ウ カナダ国オンタリオ州所在のTrudell Medical Internationalは,商標権者のMicrohaler(マイクロヘラー)製品の製造委託を受けた会社である。
Trudell Medical Internationalは,フィソンス リミテッドにより,Microhaler(マイクロヘラー)製品の製造を委託されているため,乙第37号証のHOUSE OF LADING(ハウス船荷証券),乙第41号証のARRIVAL NOTICE(着荷通知),乙第41号証の1,乙第45号証のArrival Notice(着荷通知)及び乙第45号証の1に,Shipper(船積人会社)として示されている。
Microhaler(マイクロヘラー)製品は,サノフィ・アベンティス株式会社によって,商標権者及びこれに関係のあるサノフィ・グループの会社から輸入されているものである。
エ サノフィ・アベンティス株式会社のパッケージ,Microhaler(マイクロヘラー)本体への印刷及び当該商品説明書,さらにはサノフィ株式会社のパッケージ・Microhaler(マイクロヘラー)本体への印刷及び当該商品説明書は,カナダ国のTrudell Medical Internationalで製造(作成)されたものである。
サノフィ株式会社(以前はサノフィ・アベンティス株式会社)はこのように日本語で作成されたマイクロヘラー製品のパッケージ・Microhaler(マイクロヘラー)本体への印刷されたもの及び商品説明書を輸入している。
このような次第で,サノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社)の輸入は,明らかに商標法第2条第3項第2号の「商品又は商品の包装に標章を付したものを輸入する行為」に該当し,商標の使用をしてきたことは明らかである。
オ MICROHALER WITH MASK(マスク付きマイクロヘラー)製品について,請求人は,当該配送された商品がいったいどのような物品であるかについては明らかではないと主張するが,「THERAPEUTIC RESPIRATION APPARATUS」を素直に訳せば「治療用吸入器具」というほどの意味であり,輸入許可通知書などで厳密に正確な表現は必ずしもとられるところではない。
乙第35号証の請求書/INVOICEは,乙第34号証と同一の輸入申告番号11387375521が用いられ,品名「MICROHALER」と特定されていることからも,THERAPEUTIC RESPIRATION APPARATUSと同一の意味で用いられていることは明らかである。
カ サノフィ・アベンティス株式会社がフィソンス リミテッドからマイクロヘラーのマスク付き製品を輸入していた事実を示す,2010年10月15日,2011年9月26日及び2012年7月10日付けの請求書の写しを提出する(乙29ないし乙31)。さらに,サノフィ・アベンティス株式会社がSANOFI WINTHROP INDUSTRIEからMICROHALER WITH MASK(マイクロヘラーのマスク付き製品)を購入(輸入)した際の2011年9月16日及び2012年7月10日付けのINVOICE(請求書)を提出する(乙32及び乙33)。
郵船ロジスティクス株式会社(YusenLogisticsCo.,Ltd.)は,デリバリー・エージェントとしてマイクロヘラー製品(THERAPEUTIC RESPIRATION APPARATUS)について,2010年11月4日に,申告番号113 8737 5521をもって,輸入許可の申請を行い,2010年11月4日に東京税関大井出張所長より「輸入許可通知書」を取得した(乙34)。
これに伴って,郵船ロジスティクス株式会社(YusenLogistics Co.,Ltd.)は,通関に係る一連の費用(運賃等立替金,取扱手数料・内貨,通関料等)として,SANOFI-AVENTIS K.K.に請求書/INVOICEを2010年11月5日付けで品名「MICROHALER」として請求している。この請求書が輸入許可通知書に係るものであることは,共に申告番号113 8737 5521及び輸入許可日「2010年11月4日」が示されていることから特定されている(乙35)。
また,Sanofi-Aventis K.K.には,株式会社エクスプレスから,2010年10月29日に,貨物到着案内(ARRAIVAL NOTICE/FRIGHT BILL)として「MICROHALER」が到着した旨送付されている。これが同じ商品を示していることは,「OCEANB/L No.COSU8000468840」が「輸入許可通知書」においても特定されていることから明らかである(乙36)。
さらに,「HOUSEBILL OF LADING」(ハウス船荷証券)[NVOCC業者(フォワーダー)が発行する船荷証券(B/L)]によれば,MICROHALER製品が,Shipper(荷送り人)である「TRUDELL MEDICAL INTERNATIONAL」から,Consignee(商品の引受人)である SANOFI-AVNTIS K.K.に,NANKAI EXPRESS CO.,LTD.[(株)南海エクスプレス]を配送先として送られたことを示している。同じ商品に係るものであることは,乙第36号証の「OCEANB/LNo.COSU8000468840」と,この書類の「S.S.ContractNo.8000468840」から特定される(乙37)。
そして,「SANOFI WINTHROP INDUSTRIE SA」は,「SANOFI-AVENTIS K.K.」に,輸入許可通知書に示された金額10,950,000円を,「MICROHALER WITH MASK」について請求している(乙38)。
(2)取消請求に係る商品の我が国における流通行為の有無
ア ヤマトロジスティクス株式会社(本社:東京都中央区銀座2丁目12番18号 ヤマト銀座ビル5F)の営業所「三郷販売」(埼玉県三郷市新三郷ららシティ3-2-1所在)は,「サノフィ・アベンティス(株)受注センター(COP)」宛てに製品名「マイクロヘラー」に係る商品を発注し承認された旨が,それぞれの「発注依頼書」に示されている(乙13ないし乙16)。
なお,乙第10号証のINVOICE(請求書)については明確なものを提出する(乙28)。
イ 「マイクロヘラー(Microhaler)」製品は,カナダ国のTrudell Medical International(フィソンス リミテッドの依頼を受けて「マイクロヘラー(Microhaler)」製品を製造している会社である。)から,「sanofi-aventis K.K.,East Japan Distribution Center,3-3-1 Shin-Misato LaLaCity,Misato,SAITAMA 341-0009 JAPAN」(サノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社))の東日本物流センターに送られ,サノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社)は,埼玉県三郷市新三郷ららシティにあるヤマトロジスティクス株式会社の三郷販売物流センターに,日本国内にあるサノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社)の各営業所等への「マイクロヘラー(Microhaler)」製品の配送を委託している。
サノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社)の日本国内にあるそれぞれの営業所の担当者は,直接「マイクロヘラー(Microhaler)」製品を医療機関や薬局等に届けるというシステムをとっている。
ウ サノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社)の日本国内にあるそれぞれの営業所は,吸入器「マイクロヘラー」マスク付き(「Microhaler」with mask)製品を,医療機関・薬局・その他に提供してきたので,マイクロヘラー製品の提供について医療機関や薬局からの証明を提出する(乙53)。
Microhaler(マイクロヘラー)製品は,サノフィ株式会社の販売にかかる「インタール(「R」の文字を○で囲んだ記号,以下同じ)エアロゾルlmg」との関係で具体的にどのようなシステムの下で医療機関,薬局及び患者に無料で引き渡されているのか詳細を示したものが,新たにサノフィ株式会社の代表取締役社長により準備された添付の文書(公証付き)である(乙54)。
(3)通常使用権契約の存否
ア フィソンス リミテッド(Fisons Ltd)は,仏国の企業Sanofi SA(サノフィ エスアー)の英国における系列子会社である。また,わが国におけるサノフィ株式会社(Sanofi K.K.)もSanofi SA(サノフィ エスアー)の系列子会社でありサノフィ・グループを形成している。
サノフィ株式会社は,2012年10月1日にサノフィ・アベンティス株式会社から社名が変更になったものである(乙1等)。
サノフィ株式会社は,フィソンス リミテッドの日本国内における通常使用権者として,薬剤及び吸引器具について本件商標を使用してきた。
本件商標の商標権者も,「サノフィ株式会社」も,共に,仏国の法人「Sanofi SA」(サノフィ エスアー)の支配を受ける会社であり,サノフィ・グループに属する企業であることからすれば,「サノフィ株式会社」が「フィソンス リミテッド」の所有する本件商標について,わが国における通常使用権者であることが推認できる。
イ 商標権者は,「英国 ME19 4AH ケント,ウェストマリング,キングスヒル,キングスヒルアベニュー 50,アールピーアールハウス」に営業所を構えていたため,わが国ではこのような住所で登録されている。
そして,アベンティスファーマとして取引を行っている商標権者の住所は,「72 LONDON ROAD, HOLMES CHAPEL, CREWE,CHESHIRE,CW4 8BE,UNITED KINDGOM」であって,法律上登記された住所は,「ONE ONSLOW STREET,GUILDFORD,SURREY,GUI 4YS,UNITED KINGDOM」である(乙24及び乙25)。
ウ 私人の契約による法律関係については,私人自らの自由な意思に任されるべきとするのが近代私法の原則としての契約自由の原則であり,契約締結の自由,相手先選択の自由,契約内容の自由,方式の自由がその内容とされている(有斐閣 法律用語辞典における「契約の自由の原則」の説明)(乙56)。
したがって,契約書の内容や方式は問われる必要はなく,文書にせよ口頭にせよ当事者間で契約があると了解していればそれで足りるものである。
当事者間で商品の販売の客観的事実が存在し,共にサノフィ・グループに属する多国籍企業であり,国内ではサノフィ株式会社のみがMICROHALER(マイクロヘラー製品)を輸入している以上,仮に先の契約書が存在しない場合を前提とした場合においても,サノフィ株式会社には通常使用権者があると推認することができると考える(乙57ないし乙60)。
(4)使用に係る商標と本件商標との同一性
「マイクロヘラー」は,本件商標と社会通念上同一の範囲内の商標である。
(5)使用に係る商品の商標法上の商品該当性
ア サノフィ株式会社の所有する「注文照会」の一部によれば,「マイクロヘラー」の商品が,2011年5月12日から2012年12月5日までに販売されてきたか明確に示され,その販売内容については,「注文照会・詳細」でさらに明確にできる(乙3及び乙4)。
イ サノフィ エスアーの日本における法人「サノフィ・アベンティス株式会社」が,2010年8月に作成した製品マニュアルの第95ページ(審決注:「第97ページ」の誤記と思料)から第102ページにかけて,インタールエアロゾル(薬剤)の入った吸入補助器具(以下「薬剤吸入補助器具」という。)の使用方法が説明され,そこに,商標「マイクロヘラー」が表示された薬剤吸入補助器具が明確に示されている(乙5)。
ウ サノフィ株式会社が,2012年10月1日に最終更新したウェブサイトにおいて,薬剤吸入補助器具である「マイクロヘラー」についての「ご使用方法・お手入れ方法」が,薬剤吸入補助器具とともに示されている(乙6)。
エ 2012年10月作成のサノフィ株式会社による「マイクロヘラーマスク付きのご使用方法・お手入れ方法」の説明書において,薬剤吸入補助器具である「マイクロヘラー」が明確に示されている(乙7)。
オ 「マイクロヘラー」商品のパッケージ及びパッケージに入った商品は,乙第8号証のとおりである。
カ 「MICROHALER(マイクロヘラー)」製品は,薬剤の吸入を補助する商品であり,「吸入器」という独立した商取引の対象となっている商品である。また,「譲渡」行為には,有償,無償を問わず,所有権を移転する法律行為である(乙21)。本製品を病院に無償で配布する行為も当然に「MICROHALER(マイクロヘラー)」製品の譲渡になるものである。
キ 「商品」については商標法上定義されることなく,一般に「商取引の目的に沿うべき物,特に動産をいう」と説明されている(乙22)。
2 まとめ
以上のとおり,サノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社)が商品の輸入行為(商標法第2条第3項第2号)においても,また商品に標章を付したものの譲渡行為(商標法第2条第3項第2号)においても,本件商標の使用をしてきたことは明らかである。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用について,被請求人の主張及び提出に係る証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1)乙第28号証(乙第10号証が不鮮明であるとの請求人の主張により提出された)は,「INVOICE」であり,該INVOICEは,フランスの「SANOFI WINTHROP INDUSTRIE」が,日本の「SANOFI-AVENTIS KK」(サノフィ・アベンティス株式会社)に宛てた,2010年10月8日付けのものである(乙28の上部の「registered office:20, Avenue Raymond Aron-92160 Antony」との記載は,フランス国パリの住居表示であることが確認できる。)。
そして,その内容によれば,カナダで製作された(Customs country of origin:Canada)「MICROHALER WITH MASK」の商品が,10,000個,単価1,095円で取引されたこと,請求書の送付先は,日本の「SANOFI-AVENTIS KK」であること及び荷受先は,「sanofi-aventis K.K.」の「East Japan Distribution Center」(3-3-1 Shin-Misato LaLaCity,Misato,Saitama)」であることが確認できる。
また,乙第1号証及び乙第2号証によれば,被請求人,フランスの「Sanofi Winthrop Industrie SA」及び日本の「Sanofi K.K.」は,「Sanofi SA」を親会社とする関連企業と認められる。
(2)乙第37号証は,港から現地指定場所まで発行できる「HOUSE BILL OF LANDING」(ハウス出荷証券:乙37の2葉目)であり,「Bill of Landing No.」を「431-069546」及び「S.S.Contract No.」を「8000468840」とするものである。
そして,その記載内容によれば,カナダの「TRUDELL MEDICAL INTERNATIONAL」は,「MICROHALER」の商品を,10,000個,2010年10月22日に,CANADAの「ONTARIO」から,JAPANの「SANOFI-AVENTIS K.K.」の「East Japan Distribution Center」宛てに,出荷したことが確認でき,その配達は,「NANKAI EXPRESS CO.,LTD.」によるものである。
(3)乙第36号証は,2010年10月29日付けの「NANKAI EXPRESS CO.,LTD.」(株式会社南海エクスプレス)の「ARRIVAL NOTICE/FREIGHT BILL」(貨物到着案内:乙36の2葉目)であり,その記載内容によれば,「SANOFI-AVENTIS K.K.」宛ての「MICROHALER」の商品が,10,000個,到着する予定である旨であり,「OCEAN B/L NO.」を「COSU8000468840」とするものであり,該番号は,乙第37号証の「S.S.Contract No.」と一致する。
(4)乙第34号証は,「申告年月日」を「2010/11/4」及び「申告番号」を「113 8737 5521」とする「輸入許可通知書」であり,その記載内容によれば,「輸入者」は「SANOFI-AVENTIS K.K.」であること,「仕出人」は「SANOFI WINTHROP INDUSTRIE S.A.」であること,「代理人」は「YUSEN LOGISTICS CO.,LTD」であり,「貨物個数/10,000PS」,「品名/THERAPEUTIC RESPIRATION APPARATUS」,「申告価格/¥10,950,000」が,同日付で,東京税関大井出張所長により,貨物の輸入が許可されたものである。
そして,「B/L番号」の「COSU8000468840」は,乙第37号証の「S.S.Contract No.」及び乙第36号証の「OCEAN B/L No.」と一致する。
(5)乙第35号証は,「請求年月日」を「2010-11-05」とする「郵船ロジスティクス株式会社」の「サノフィ・アベンティス株」宛ての「請求書/INVOICE」であり,その記載内容によれば,「2010-11-4」に許可された「MICROHALER」の商品,10,000個について,その運賃等の立替金,取扱手数料,通関料等を請求するものである。
そして,「BL#:431-069546」は,乙第37号証の「Bill of Landing No.」と,「申告#:11387375521」は,乙第34号証の「申告番号」と一致する。
(6)乙第53号証の4/6に示された,「あけぼの薬局 東店」による「吸入器具『マイクロヘラー』マスク付き製品の受領書」には,2011年5月から2013年1月までに該製品が150個提供された旨の証明がされている。
そして,乙第54号証は,サノフィ株式会社の代表取締役名による「Microhaler(マイクロヘラー)」製品が医療機関,薬局等にどのように届けられるかについて詳細に説明された書面等であり,同号証(D)のコールセンターから各営業担当者への連絡事項の記載によれば,以下の事実が確認できる。
「マイクロヘラーマスク付き」について,「問い合わせ施設名/あけぼの薬局 東店」から,2011年6月7日に1個,同年6月15日に20個,同年9月1日に10個,同年10月6日に10個,同年11月7日に20個,2012年1月6日に20個,同年5月9日に20個,同年9月7日に20個,同年11月20日に20個,同年12月13日に10個の注文があり,この総数は,151個であり,乙第53号証の4/6の「あけぼの薬局 東店」の「吸入器具『マイクロヘラー』マスク付き(『Microhaler』with mask)」製品の受領書に記載された提供数150個とほぼ一致している。
(7)乙第5号証は,サノフィ・アベンティス株式会社が,2010年8月に作成した「製品マニュアル」であるところ,その3/5には,「インタールエアロゾル1mg」の「アダプター(専用器具)と吸入補助器具の使用方法」として,「マイクロヘラー」及び「マイクロヘラーマスク付き」との薬剤吸入補助器具が,その写真とともに5/5にかけて示され,使用方法の説明がされている。
(8)乙第20号証は,「マイクロヘラー」製品の包装用箱(写し)であり,「インタールエアロゾル1mg専用吸入補助具」,「マイクロヘラー」及び「マスク付き」の文字と共に,「Spacer device for Intal 1mg Aerosol」,「Microhaler」及び「with mask」の欧文字が表示され,併せて乙第5号証の製品マニュアルに示された製品と同様の製品の図が表示されている。
(9)乙第17号証の「TRADEMARK LICENSE AGREEMENT」(商標ライセンス契約書及びその翻訳文)は,「March 1,2009」に,商標権者である「Fisons Limited」(フィソンス リミテッド)と「Sanofi-Aventis Kabushiki Kaisha」(サノフィ・アベンティス株式会社)との間で締結された書面であり,両者は,共に「Sanofi group」を親会社とする旨,「MICROHALER」及び「マイクロヘラー」商標について,ライセンシーである「サノフィ・アベンティス株式会社」は,日本での「薬剤」及び「医療用機械器具」の通常使用権者である旨,本契約は,現商標権の存続期間が終了するまで・・・有効であり続ける旨等が記載されている。
2 前記1によれば,以下のとおり判断できる。
(1)「MICROHALER WITH MASK」の商品(10,000個,単価¥1,095)は,要証期間である2010年11月4日に,「SANOFI-AVENTIS K.K.(サノフィ・アベンティス株式会社)」によって,我が国に輸入されたものということができる。
そして,「MICROHALER WITH MASK(マイクロヘラー マスク付き)の商品は,要証期間に,サノフィ・アベンティス株式会社から,「あけぼの薬局 東店」に引き渡されたものと認められ,我が国において流通に供されたものということができる。
(2)要証期間に,我が国に輸入され,国内において流通に供された薬剤吸入補助器具の包装箱には,「Microhaler」の欧文字と「with mask」とを二段に表示した商標が付されているところ,「with mask」(マスク付き)との表示は,乙第20号証の1/2や乙第5号証の3/5及び4/5に示されているように,薬剤吸入補助器具を口に当てて使用する際の用具(マスク部分)が付属していることを示すものであるから,自他商品識別標識としての機能を果たすのは「Microhaler」の文字部分であり,該文字は,本件商標と社会通念上同一のものと認められる。
(3)包装箱に「Microhaler」及び「with mask」の文字が付された「薬剤吸入補助器具」は,喘息治療用薬剤「インタールエアロゾル」を吸入するための専用の器具であり,本件取消請求に係る商品である「医療用機械器具」の範疇に含まれるものと認められる。
そして,該薬剤吸入補助器具は,「サノフィ・アベンティス株式会社」が有償で輸入しており,これが,国内において,需要者である医療機関,薬局,患者に無償で頒布されているとしても,喘息治療用薬剤「インタールエアロゾル」を吸入するための専用器具として,当該薬剤とセットないし医療機関や薬局等の注文により,それ自体が単独で頒布されていることが確認できることからすれば,取引流通過程に供される,商標法上の商品とみて差し支えないものと判断される。
(4)上記(1)の取引の実情及び「TRADEMARK LICENSE AGREEMENT」の内容を勘案すれば,「サノフィ・アベンティス株式会社」は,本件商標について,日本における通常使用権者と認められる。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,「『サノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社)』及び『フィソンス リミテッド』が,ともにSanofi SA(サノフィー エスアー)の系列子会社であることをもって,互いが当然に通常使用権を有する関係であると認識しているようにも見受けられる。しかしながら,・・・ここでいう『系列子会社』の意味については曖昧であり,両者がどのような関係にあるかといった内容についても全く不明である。・・・単に親会社が共通しているというだけであって,子会社同士である両者の間に当然に支配関係があるとは考えられないものであり,両者の間には黙示の使用許諾すらなされていないと考えるのが自然である。」旨主張している。
しかしながら,サノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社)と商標権者は,親会社を共通にする関連企業であり,この両者間の薬剤吸入補助器具の商取引は,本件商標の使用を前提としていたとみるのが取引の条理に照らし相当というべきであって,このことは,すなわち,本件商標の使用について,商標権者による,サノフィ株式会社(サノフィ・アベンティス株式会社)に対する許諾があったうえでのことと解することができるものである。
さらに,「TRADEMARK LICENSE AGREEMENT」(商標ライセンス契約書及びその翻訳文)により,かかる事実が裏付けられるものであるから,請求人の主張は,採用することができない。
(2)請求人は,「乙第34号証等の『輸入許可通知書』には,品名として『THERAPEUTIC RESPIRATION APPARATUS』(呼吸作用治療機器)と記載があることを確認できるものの,これらは広い概念での表記であり,たとえば,人工呼吸器,ネブライザー,気道粘液除去装置等,幅広い治療機器を含むものである。そして,その他の上記証拠を見ても,輸入行為のあった具体的な物品を特定できるものではない。」旨主張している。
しかしながら,「MICROHALER(マイクロヘラー)」は,喘息治療用薬剤「インタールエアロゾル」を吸入するための専用器具であって,該商品は,「呼吸作用治療機器」の一種といえるものであり,「THERAPEUTIC RESPIRATION APPARATUS」に相当する商品が我が国に輸入され,その後,該商品が,「MICROHALER(マイクロヘラー)」との商品名により,輸入者から国内に流通された事実が確認できることからすれば,乙第34号証等の輸入許可通知書に,品名として記載された「THERAPEUTIC RESPIRATION APPARATUS」(呼吸作用治療機器)は,「MICROHALER(マイクロヘラー)」を指すものということができる。
よって,請求人のかかる主張は,採用することができない。
(3)請求人は,「被請求人の取り扱う吸入補助器具は,あくまで被請求人に係る喘息治療薬である『インタール』を服用する際に用いられる一種の『付属品』であって,当該吸入補助器具単独では独立した商取引の対象となっていない」,「被請求人の取り扱う吸入補助器具は,『インタール』を服用する患者のための『付属品』として無償で提供されてきたものであり,過去も現在においても,これが単独で販売等されることによって商取引の対象となった事実はない・・・。したがって,当該吸入補助器具は,少なくとも商標法上の『商品』たり得るための『独立性』及び『有償性』の要件を満たしていない」旨主張している。
しかしながら,前記2(1)のとおり,当該薬剤吸入補助器具は,医療機関や薬局の注文によりそれ自体,単独で頒布されているものである。
そして,「商取引」は,契約の種類が売買契約である場合に限られるものではなく,対価と引き替えに取引されなければ,商標法上の「商品」ではないということはできない(要旨,知財高裁 平成19年9月27日判決 平成19年(行ケ)第10008号)ものであるから,たとえ,無償であるとしても,当該薬剤吸入補助器具が取引されている事実があることからすれば,被請求人の取り扱う「吸入補助器具」は,「商品」として単独で商取引の対象とされているものということができる。
よって,請求人の主張は,採用することができない。
4 むすび
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,通常使用権者が,請求に係る指定商品に含まれる「薬剤吸入補助器具」の包装箱に,本件商標と社会通念上同一の商標の使用していたことを証明したものと認められる。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する
審理終結日 2014-09-26 
結審通知日 2014-10-01 
審決日 2014-10-16 
出願番号 商願2000-34201(T2000-34201) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z0510)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 酒井 福造
田中 亨子
登録日 2001-05-11 
登録番号 商標登録第4472545号(T4472545) 
商標の称呼 マイクロハラー、ミクロハラー、ハラー、ヘーラー 
代理人 伊東 美穂 
代理人 長谷川 綱樹 
代理人 木村 吉宏 
代理人 永露 祥生 
代理人 小谷 武 
代理人 福田 秀幸 

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