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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W11
管理番号 1293823 
審判番号 無効2014-890009 
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-02-18 
確定日 2014-11-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5633086号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5633086号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5633086号商標(以下「本件商標」という。)は、「microbub」の欧文字(標準文字による。)を横書きしてなり、平成25年1月28日に登録出願、第11類「シャワーヘッド用微細気泡発生器,給水栓用微細気泡発生器,便器用微細気泡発生器」を指定商品として、同年10月9日に登録査定、同年11月29日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由として引用しているのは、以下の商標である。
(1)登録第1807901号商標(以下「引用商標1」という。)は、「バブ」の片仮名を横書きしてなり、昭和57年8月30日に登録出願、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同60年9月27日に設定登録され、その後、平成18年11月22日に、指定商品を第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
(2)登録第4227930号商標(以下「引用商標2」という。)は、「BUB」の欧文字(標準文字による。)を横書きしてなり、平成9年6月16日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同11年1月8日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求めるとし、その理由を要旨次のように述べ、その証拠方法として、甲第1号証ないし甲第29号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)「バブ」の周知著名性について
ア 請求人は、「炭酸ガスが血行を促進する」というキャッチフレーズの下に、薬用入浴剤「バブ」を1983年に発売して以来、今日まで継続して製造、販売してきているとともに、その広告宣伝に力を入れてきた(甲第4号証(枝番を含む。))。その結果、「バブ」の名は、請求人の製造、販売に係る薬用入浴剤を表示するものとして、現在においてはもちろん、本件商標の登録出願前から、取引者や需要者の間に広く認識されるに至っている。特許庁においても、登録異議申立の異議決定(甲第5号証及び甲第6号証)において、「バブ」が取引者や需要者の間で広く知られていたとしている。
イ 「バブ」が需要者の間に広く知られていることは、以下の多くの広告宣伝の実績によって証明される。
(ア)本件商標の出願前5年前から直近までに株式会社博報堂一社による広告取扱だけでも9億円以上という多額の金員を投人している(甲第7号証)。薬用入浴剤「バブ」の広告宣伝は、主としてテレビを通じて行っており(甲第8号証ないし甲第14号証)、その映像のいずれにも「バブ」の文字が入浴剤の包装容器に明瞭に写し出され、「バブ」の音声が視聴者に届けられるようになっている。
(イ)請求人は、そのほか、雑誌・新聞などにも広告を掲載(甲第15号証及び甲第16号証)したり、交通広告(甲第17号証及び甲第18号証)なども行ってきた。そして、具体的には、販売の際には商談用資料(甲第19号証及び甲第20号証)を用いて販売に努めてきている。
(ウ)薬用入浴剤「バブ」が取引者や需要者に広く知られていることは、株式会社マーケティング・リサーチ・サービスが行った入浴剤についてのベンチマーク調査の説明書及び調査結果表(甲第21号証ないし甲第23号証)によっても証明される。その調査において、「バブ」の助成知名率は、2009年において96.3%、2011年において95.3%、2013年において96.6%となっている。このような周知著名性を裏付けるように、日経トレンディ2012年12月号(甲第24号証)では、ヒット商品として「バブ」が取り上げられ、日経産業新聞2012年10月23日号(甲第25号証)では、「バブ」について「花王、疲労回復高める」と評価され、朝日新聞(be)2012年11月3日号(甲第26号証)では、売れ筋の入浴剤として「バブ」が紹介されている。
ウ 以上のような事実から、「バブ」は、取引者や需要者の間に広く認識されていることは疑う余地がないのである。
(2)商標法第4条第1項第7号について
ア 本件商標に係る指定商品「シャワーヘッド用微細気泡発生器,給水栓用微細気泡発生器,便器用微細気泡発生器」は、いずれも薬用入浴剤と密接に関連する。
イ 「シャワーヘッド用微細気泡発生器」や「給水栓用微細気泡発生器」は、薬用入浴剤が投入される浴槽への水を注ぐ手段として用いられるものであり、また、最近では、浴室に便器が据えられることも多い。商標権者が、薬用入浴剤の直接の取引者や需要者ではないとしても、薬用入浴剤「バブ」を知らないはずはなく、本件商標を採択するに当たり、識別力の薄い「micro」の文字と「bub」の文字とを結合させる偶然性は皆無に等しい。
「micro」の文字が識別標識としての機能の薄いことは、商標権者が本件商標の登録出願に当って願書に最初に記載した「マイクロバブル発生器」とする指定商品の表示(甲第27号証の1)、願書に添付したパンフレットの説明(甲第27号証の2)、手続補正書に記載した「シャワーヘッド用微細気泡発生器,給水栓用微細気泡発生器,便器用微細気泡発生器」とする指定商品の表示(甲第27号証の3)から、商標権者自身、充分に熟知していたということができる。
ウ そうすると、商標権者は、「バブ」が取引者や需要者の間に広く知られていることを承知のうえで、「バブ」が使用される場所に用いられる商品に識別力の薄い語を結合して使用しようとして、「microbub」の商標について登録出願をしたと考えるのが自然である。商標権者の行為は、本件商標の構成中に「バブ」の称呼を有する「bub」の文字を含ませて使用することにより、薬用入浴剤と薬用入浴剤に密接に関連する本件商標の指定商品との間を「バブ」の称呼をもって結び付け、薬用入浴剤「バブ」の名声に便乗しようとするものである。
してみると、本件商標は、公の秩序、善良の風俗を害するものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標は、請求人が薬用入浴剤に使用して取引者や需要者の間に広く知られている「バブ」の称呼を含むものであり、かつ、薬用入浴剤と密接な関連を有する商品に使用されるものである。
本件商標に係る指定商品は、浴槽のそばに取り付けられ、薬用入浴剤は、浴槽に投入して使用される。しかも、請求人の薬用入浴剤は、発売当初から炭酸ガスの気泡が売りであり、本件商標の指定商品も、気泡を発生させるという共通点を有する。このようなとき、本件商標が使用される商品に接した需要者は、薬用入浴剤「バブ」の周知・著名性と「バブ」の称呼の共通性に鑑み、本件商標が使用されている商品の出所について、請求人又はその関係者の如く誤認・混同することとなる。
イ 本件商標の構成は、「bub」ではなく、「microbub」であるが、本件商標は、「微細」又は「極小」という商品の形状の属性を示すものであって、識別標識としての機能の薄い「micro」の文字と周知・著名な「バブ」の称呼を有する「bub」の文字の結合商標であるから、「バブ」の周知・著名性に引きずられて「bub」の文字と「バブ」の称呼に注意が向けられる。
「MICROTEC」対「TEC」事件(平成2年(行ケ)第99号の審決取消請求事件)の判決(甲第29号証)でも、「MICRO」についての識別標識としての機能を否定している。本件商標においても、願書における指定商品の「マイクロバブル発生器」という記載、手続補正書の指定商品の「シャワーヘッド用微細気泡発生器,給水栓用微細気泡発生器,便器用微細気泡発生器」との記載(甲第27号証(枝番を含む。))における「バブル」及び「微細」の文字を踏まえれば、「micro」の文字部分に、識別標識としての機能はない。これら一連の手続の経緯からすれば、商標権者自身も「micro」の文字が商品の品質等を表示するものであることを知っていたと理解するのが自然である。
そうすると、仮に、本件商標が全体で称呼及び観念されるものであったとしても、薬用入浴剤と本件指定商品に同時に接する需要者は、薬用入浴剤「バブ」の周知著名性に鑑み、「bub」の文字又は「バブ」の称呼が識別標識としての重要な意味合を有していると理解するといえる。
そして、特許庁における「バブ」を含む商標の実務でも、例えば、上記(1)で述べた登録異議申立の「異議決定書」(甲第5号証及び甲第6号証)のほかにも、同様の結論のなされている審査結果、審決等が多数存在することによって裏付けられている。
ウ 本件において、薬用入浴剤と本件商標に係る指定商品とをみると、前者は、浴槽の中に投じて使用され、後者は、浴槽に水を注ぎ込む手段として使用され、いずれも気泡によって身体に何らかの作用を与えるという関連性の高い、共通性を有する商品同士であるところ、取引者、需要者も、その構成中の「bub」の文字やその称呼に着目して、周知著名となっている「バブ」を連想、想起するといえるから、該商品が請求人又は同人と経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じるおそれがあるものである。
したがって、本件商標は、その指定商品に使用した場合、他人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがあるといえるものであるから、商標法第4条第1項第15号定に該当する。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に該当するものであって、その登録は、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。

4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めるとし、その理由を要旨次のように述べ、その証拠方法として、乙第1号証ないし乙第18号証を提出した。
(1)出所の混同について
ア 請求人の長年の努力によって、請求人の浴用入浴剤である商品名「バブ」の知名度は上がり、今では、浴用入浴剤といえば、「バブ」か「バスクリン」を連想するほどに有名であるから、かえって、被請求人のシャワーヘッドや水栓金具に「bub」や「バブ」という文字があっても、これを浴用入浴剤として混同する日本人はいない。
また、請求人では、TOTOやINAX(LIXIL)のようにシャワーヘッドや水栓金具などの住宅設備用器具の製造及び販売はしていないので、需要者がシャワーヘッドや水栓金具を請求人の商品であるかの如く出所を混同することはありえない。
このため、被請求人は、請求人の商標(乙第1号証ないし乙第3号証)を把握していたが、商品の区分が第11類で、キャビテーションという物理的作用を利用して水道水の中に含まれている空気を水道水の吐水圧力だけでマイクロバブル(微細気泡)化して発生させる器具の名称を「マイクロバブ」としても、浴用入浴剤である「バブ」と出所の混同をもたらす行為とされるとは考えていなかった。
イ 本件商標は、マイクロバブル学会の会員(乙第4号証及び乙第5号証)である被請求人によるマイクロバブルの研究の結果、マイクロバブルを物理的に発生させる器具を製品化して、起業し、被請求人が代表取締役を務めている「株式会社micro-bub」の社名(乙第6号証)に由来した商標である。
会社の設立時点では、既に「microbubble」という名称が一般的になってきており、商標登録ができないおそれあったため、それに近い表現で「microbub」という商標と「マイクロバブルセイバー」という商標(商標登録第5633087号)の2件を登録出願し、会社名は読みやすいように「micro-bub」にしたものである。
「株式会社micro-bub」は、マイクロバブルを発生させる器具を製造、販売する企業であり、浴用入浴剤とは全く異なる器具を作る会社(乙第7号証)である。浴用入浴剤として著名な商標である「バブ」と第11類の器具の名称である「microbub」の間に、出所の混同は起こりえない。
ウ 請求人は、平成22年に登録第5374572号として商標登録された「マイクロ/バブ」の登録商標(以下「請求人マイクロバブ商標」という。)(乙第3号証)を有しているところ、その登録商標と本件商標を比較してみる。
本件商標は、「microbub」という欧文字で構成され、称呼は「マイクロバブ」である一方、請求人マイクロバブ商標は、請求人の既存の商標「バブ」の文字の上に、小さな文字で「マイクロ」の文字を配し、2段併記したものであり、請求人の有名な「バブ」であって、小さな泡が出る旨、すなわち、泡の小ささを形容してアピールしている。
入浴剤として周知な「バブ」のマイクロ版ということで、「バブ」を基本とした商品群のバリエーションであることを訴求していることが推測される。このことは、請求人の「大判バブ」という登録商標(乙第8号証)や、「プレミアムバブ」という登録商標(乙第9号証)における「バブ」の使い方からも推測される。
さらに、請求人マイクロバブ商標を付した商品は「バブ」と較べて、歴史も浅く、「バブ」程の知名度や認知度がない。そのため、請求人は、広告宣伝においても、「マイクロバブ」を前面に出すのではなく、「バブ」の商品バリエーションの一つとして位置付けようとしていること明らかである。請求人マイクロバブ商標の商品の包装にも「マイクロ」の文字は小さく、「バブ」が大きく表示されている。請求人のホームページでも「マイクロバブ」は「粉末タイプは、錠剤タイプに比べて、発生する炭酸ガスの泡の大きさが小さくなります。マイクロバブの泡は直径10?50μmで、バブやバブ メディケイティッドの泡の直径500?1000μmに対して、10分の1以下の大きさです。」(乙第10号証)と、「バブ」のバリエーションの一つのように表記されている。
そのため、請求人マイクロバブ商標を付した請求人の商品は、たとえ「microbub」と表記したとしても、請求人の著名な登録商標「バブ」とは異なり、第11類の商品に「microbub」と付した被請求人の商品との間には、出所を混同させるような連想は起こりえない。
エ 請求人も、自社のホームページにおいて、マイクロバブルという用語を使用してきている(乙第10号証及び乙第18号証)ところ、2006年前後からマイクロバブルという用語が広く一般にまで認知されてきており、請求人は、「マイクロバブ」に浴槽の中でミクロな泡となるマイクロバブルをイメージさせる広報の仕方をしているが、請求人マイクロバブ商標は、著名な造語「バブ」(BAB)に「マイクロ」という形容詞が付いた合体語である。一方、本件商標は、請求人や被請求人がホームページなどで使用している「microbubble」の短縮形で「バブ」とは異なった概念の造語である。さらに、両者の商品は、特許庁による類似群コードも異なっており、出所の混同を起こすことはない。
オ 請求人は、過去の訴訟において、「シルキーバブ」や「ミルキーバブ」という名称の浴槽水循環装置(空気を取り込み、浴槽内でマイクロバブルを発生させる装置)について商標侵害性が認められたとしているが、その根拠として示されたのは、一つは、装置自体が浴槽内のお湯を循環させて泡を発生させることで、浴用入浴剤としての機能があること、もう一つは、「バブ」に冠した「シルキー」や「ミルキー」という言葉が実態を持たない、単なる形容詞であるため「バブ」を想起させるというものである。
しかし、現在は、マイクロバブルという用語においては、「マイクロ」が単なる形容詞だった時代と異なり、2006年以降からは「マイクロバブル」とか、さらに小さい「ナノバブル」という用語が学術的(乙第4号証等)にも特定の概念をもって一般に用いられるようになってきている(乙第12号証等)。マイクロバブルに関しては、「マイクロ」は「シルキー」や「ミルキー」のような単なる形容詞ではなく、「マイクロバブル」という一つの用語として、意味を持って用いられるようになってきており、一連一体で、マイクロスコープやマイクロウェーブ、マイクロフイルム、マイクロプロセッサーのように、あえて分断して称呼する理由はない。
請求人は、「マイクロバブル」という用語の変化を背景に、通常なら『マイクロバブ』という横書きの商標を登録してもよいところなのに、平成22年になって「バブ」という既存商標の上に小さく「マイクロ」と表示した商標を登録申請したのは、マイクロバブルを意識する時代になってきたので、「マイクロ」という形容詞を付けるが、あくまでも「バブ」という商品の一つのバリエーションであるとして、知名度の高い浴用入浴剤「バブ」(BAB)をイメージさせようとしたものと思われる。
カ 以上のとおりであるから、本件商標については、出所の混同は起こりえないものである。
(2)公序良俗違反について
ア 請求人の商品「バブ」は、既に、浴用入浴剤としての知名度が高く、同じ浴室で使われることがあったとしても、シャワーヘッドや水栓金具という住宅設備器具との判別においては、出所を混同しようがない程に知名度は上がっているといえる。
また、請求人マイクロバブ商標に関しては、「バブ」という知名度の高いミクロの泡が出る浴用入浴剤「バブ」の中でも、さらに小さな泡か出る商品としての名称であり、需要者が請求人の「バブ」という商品バリエーションの一つとしてとして、位置付けていると思われる。
そのため、被請求人が第11類で「マイクロバブ」という用語を使用しても、販売ルート(薬剤ルートと住宅設備機器ルート、水道工事店ルート)も違い、販売時点での店舗(薬局、ドラックストアーと水道店、ペットショップ、理美容室)も異なり、売り場スペース(ホームセンターでは両方扱うことも考えられるが、医薬品売場、トイレタリー売場と水道用品売り場、住宅設備機器売場)も異なり、需要者の使用場面(浴槽の中に投入して使うのと、洗い場でシャワーを浴びたり、洗面所の水栓金具で手を洗う)も異なる。価格面でも、請求人の「バブ」は1包みが30円で、20個入りで約600円、「マイクロバブ」は4個入りで約500円であるのに対し、被請求人の「microbub」は、シャワーヘッドタイプで16,000円、水栓金具タイプで14,000円であり、これでは需要者が間違えて買おうとしても躊躇してしまう金額といえる。また、シャワーヘッドタイプは、取付けネジの種類がいくつかあり、自宅のネジサイズを確認しないと購入が難しいため、衝動買いは起こりにくいともいえる。
そのため、出所を混同させて「バブ」の知名度でシャワーヘッド用や水栓金具用、さらには便器用の「microbub」を間違って購入させるような公序良俗違反の行為は起こり得ない。
イ 被請求人としては、この機会に、「microbub」や「マイクロバブ」は単独で使用しても商品が理解し難いため、今後は商品名として使用することはないものと考えている。今後の商品名としては、「マイクロバブル○○○○」とし、「microbub」は社名商標として使用する意向である。
また、被請求人は、請求人とのコラボレーションも希望する。

5 当審の判断
(1)引用商標の周知著名性について
ア 請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、「炭酸ガスが血行促進する」とのキャッチフレーズの下に、「バブ」の片仮名からなる商標を使用した薬用入浴剤(以下「請求人商品」という。)を1983年に発売して以来、継続して、その商品の製造、販売を行うとともに、その宣伝広告を行ってきており、本件商標の登録出願時又は登録査定時より前の5年6月の間(2008年4月から2013年9月まで)だけでも、株式会社博報堂を通じて行ったテレビ、新聞、雑誌媒体において行った広告宣伝の総額が9億3700万円以上(テレビが約8億8600万円、新聞が約3300万円、雑誌が約1800万円)に達する(甲第4号証(枝番を含む。)及び甲第7号証)。
(イ)請求人商品の宣伝広告は、主にテレビを通じて行われ、2009年ないし2012年に放映された宣伝広告では、映像で「バブ」の文字を大きく顕著に表示した請求人商品及び「バブ」のロゴが鮮明に映し出されるとともに、音声で「バブ」と称呼されている(甲第8号証ないし甲第14号証)。
(ウ)平成24年10月発行の雑誌「momo」(モノ・マガジン特集号)には、新製品情報として「バブ」の文字を明示した請求人商品が写真とともに紹介され(甲第15号証)、また、平成24年10月発行の雑誌「日経トレンディ」には、「メタボに並ぶ『新・国民病』の予防関連市場が過熱」として「バブ」の文字を明示した請求人商品が写真とともに紹介され(甲第24号証)ている
(エ)2012年(平成24年)5月25日付け「中日新聞」には、全面広告として請求人商品が掲載され、「バブ」の文字を大きく顕著に表示した請求人商品、説明及び「バブ」のロゴが掲載されており(甲第16号証)、2012年(平成24年)10月23日付け「日経産業新聞」には、「入浴剤」に関する記事において、請求人商品の写真とともに、「ブランド別シェアで首位の薬用入浴剤『バブ』を有する花王は『バブ メディケイティッド』を13日に発売した。・・・二酸化炭素(CO2)の泡を出すバブは、皮膚からCO2を吸収させて血行を促進し・・・」との記事が掲載され(甲第25号証)、2012年(平成24年)11月3日付け「朝日(be)新聞」には、売れ筋の入浴剤として請求人商品が写真とともに掲載されている(甲第26号証)。
(オ)2012年6月1日から同月30日まで、JR首都圏、東京メトロ、大阪地下鉄、名古屋地下鉄、札幌地下鉄、仙台地下鉄及び福岡地下鉄の各路線において、「バブシャワー」の商標が表示された請求人商品の交通広告が実施された(甲第18号証)ほか、2013年9月1日から同月30日までは、同じく、「バブ」の「ナイトアロマ」と称する請求人商品の交通広告が実施された(甲第17号証)(ただし、後者の交通広告においては、大阪エリアがJR西日本に変更されている)。
(カ)請求人商品の商談用資料には、「バブ」の文字が明示された請求人商品の写真が掲載されている(甲第19号証及び甲第20号証)。
(キ)株式会社マーケティング・リサーチ・サービスが2009年、2011年及び2013年の各年に実施した「入浴剤に関するベンチマーク調査」によれば、請求人商品の助成知名率は、2009年が96.3%、2011年が95.3%、2013年が96.6%の数値を示している(甲第21号証ないし甲第23号証)。
イ 以上の事実を総合すると、上記アにおいて、請求人商品に使用されていた「バブ」の片仮名からなる商標は、引用商標1と社会通念上同一と認められるものであり、引用商標1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、既に請求人の業務に係る商品「薬用入浴剤」を表示するものとして、取引者、需要者の間において広く認識されていたものということができる。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「microbub」の欧文字を横書きしてなるところ、その全体として特定の熟語的意味合いを看取させるような事情は見いだし得ない一方で、その構成中の前半部の「micro」の文字部分が「極小の」を意味する英語として親しまれたものであり、また、後半部の「bub」の文字部分は、その表音が「バブ」であって、上記(1)のとおり、請求人の周知著名な商標である「バブ」の片仮名に通じるものといえる。
そして、本件商標の前半部の「micro」の文字部分は、その指定商品が第11類「シャワーヘッド用微細気泡発生器,給水栓用微細気泡発生器,便器用微細気泡発生器」であり、被請求人提出の乙第7号証のパンフレットによれば、これら商品は「マイクロバブル」と称する「5?50ミクロンの小さなミクロの泡」を発生させる機械器具であることをも勘案するならば、少なくとも、本件商標において、「micro」の文字部分が自他商品の識別標識として強力に機能するということはできない。
そうすると、本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標の全体をもって取引に資するほか、後半部の「bub」の文字部分にも注意が払われることが少なくないといえる。
イ 本件商標の指定商品と請求人商品との関係
本件商標の指定商品は、第11類「シャワーヘッド用微細気泡発生器,給水栓用微細気泡発生器,便器用微細気泡発生器」である。そして、請求人提出の甲第27号証の2には、取付け箇所を表す写真とともに「新陳代謝を促進し、カサカサ肌の解消と湯冷めもしにくくなります。」、「α波を高め、疲労回復や癒し効果が期待されます」との記載があり、また、被請求人提出の乙第7号証には、同じく、取付け箇所を表す写真とともに「温浴効果 マイクロバブルを満たした浴槽に入ることで、新陳代謝を促進します。利用者の声;入浴後も保温効果が持続し、湯冷めしなくなりました。」などの記載があることを踏まえるならば、該商品は、シャワーヘッドや水道の蛇口周辺に取り付ける機械器具で、「マイクロバブル」と称する「5?50ミクロンの小さなミクロの泡」を発生させ、その泡によって、温浴効果や疲労回復、癒やし効果が期待される商品ということができる。
他方、請求人商品は、第5類「薬剤」のうちの「浴剤」の範疇に属する商品である。そして、請求人提出の甲第4号証の2には、「薬用 入浴剤バブ新登場」の見出しの下に、「疲れやストレスをいやします。」として「バブは新陳代謝を活発にして、疲れのもとになる乳酸などの老廃物を排出しますので、疲れがよくとれ、心身ともにリラックスします。」との記載があり、甲第4号証の3には、「炭酸ガスの効果で血行を促進!」の見出しの下に、「炭酸ガスの血行促進効果を初めて入浴剤に応用」として「バブをお風呂入れると、炭酸ガスの細かい気泡が発生し、湯の中にどんどん溶け込みます。この炭酸ガスが、皮膚に浸透し、抹消血管の血管平滑筋に作用して血管を広げ、血行を促進します。」などの記載があることを踏まえるならば、該商品は、薬剤の一つである商品を湯船に投入し、炭酸ガスの小さな泡を発生させ、その泡によって、温浴効果や疲労回復、癒し効果が期待される商品ということができる。
そうすると、本件商標の指定商品と請求人商品とは、前者がシャワーヘッドや水道の蛇口周辺に取り付ける機械器具で、後者が薬剤のひとつという点で異なるものであるが、その主な需要者層は、ともに一般消費者で、しかも、浴室において入浴の際に利用するものであり、入浴の際に、小さな泡を発生させ、その泡によって温浴効果や疲労回復、癒しの効果を目的とする点では共通するものであり、両者は密接な関係を有する商品といえる。
加えて、被請求人は、シャワーヘッドや水栓金具などの住宅設備用器具に「bub」や「バブ」の文字があっても、出所の混同を招くことはあり得ないと主張しているが、上述のほか、例えば、住宅設備用器具の一つといえる給湯器においては、広告等の中で使用できる入浴剤を商標名で明らかにするなどの事情があり、シャワーヘッドや水栓金具などについても、給湯器と同様に、需要者が入浴剤とのいわゆる適合性を表示するものとして捉える可能性もあることから、かかる観点でも、本件商標の指定商品と請求人商品とは密接な関係を有するといえる。
ウ その他の勘案すべき事情
被請求人は、請求人マイクロバブ商標等の存在を指摘し(乙第3号証、乙第8号証ないし乙第10号証及び乙第18号証)、請求人が請求人マイクロバブ商標等について「バブ」を基本とした商品群のバリエーションとして位置付けようとしている旨主張している。
そこで、被請求人の主張を検討するに、請求人提出の甲各号証によれば、「バブ メディケイティッド」、「バブ COOL」、「バブ ナイトアロマ」、「爽快 バブシャワー」など、「バブ」の文字に他の文字を組み合わせた姉妹品と思しきものが商品化されていることが認められ、その一つとして、請求人は、請求人マイクロバブ商標を所有しているところ、これは、本件商標と全体から生ずる称呼が同一であり、乙第10号証及び乙第18号証によれば、既に商品化され、「マイクロバブ」として紹介されている。
そして、本件商標が「バブ」に相応する「bub」の文字に「micro」の文字を結合したものであるとしても、「バブ○○」又は「○○バブ」と称する「バブ」のいわゆる姉妹品を請求人が種々商品化している状況にあっては、「バブ」の文字に他の文字を付加したことをもって、取引者、需要者が引用商標や請求人を連想させないということはできない。
エ 小括
本件商標をその指定商品に使用した場合、それに接する取引者、需要者は、構成中の後半部の「bub」の文字部分が、上記アのとおり、請求人が「薬用入浴剤」に使用して周知著名となっている「バブ」の文字からなる引用商標1と称呼を共通にするものであるから、該文字部分に注意を払って取引に当たることも少なくないといえるところ、その指定商品と請求人商品とが密接な関係にあることを踏まえると、その商品が恰も、請求人又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同するおそれがあるものといえる。
(3)むすび
本件商標は、以上のとおり、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同項第7号について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2014-09-08 
結審通知日 2014-09-11 
審決日 2014-09-25 
出願番号 商願2013-8011(T2013-8011) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (W11)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 松江 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 中束 としえ
林 栄二
登録日 2013-11-29 
登録番号 商標登録第5633086号(T5633086) 
商標の称呼 マイクロバブ、ミクロバブ 
代理人 宇野 晴海 

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