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審判番号(事件番号) データベース 権利
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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y34
管理番号 1293805 
審判番号 取消2012-300403 
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-05-18 
確定日 2014-11-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第2523496号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成25年3月19日付け審決に対し,東京高等裁判所において審決取消の判決(平成25年(行ケ)第10164号平成25年12月25日判決言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 
結論 登録第2523496号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2523496号商標(以下「本件商標」という。)は,「PEARL」の欧文字と「パール」の片仮名を2段に表してなり,平成2年6月15日に登録出願,第27類「たばこ」を指定商品として,同5年4月28日に設定登録,その後,指定商品については,同年5月7日に第34類「たばこ」とする指定商品の書換登録がなされ,現に有効に存続しているものである。
なお,本件審判の請求の登録は,平成24年6月4日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者,通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから,商標法第50条第1項の規定により,取り消されるべきものである。
2 弁駁
(1)「パール」は,フィルターの修飾語にすぎないこと
被請求人が本件商標の使用として主張する「パール」の用語は,「キラキラきらめくパールフィルター」とのフレーズの中で使用されているものであり,フィルターがパールのように光沢感があることを表現する,「フィルター」を形容する修飾語である。
すなわち,「パール」は,その色彩の印象すなわち真珠色(銀色)を示すために使用されており,真珠のような「光沢」や「つや」があることを表現するため,あるいは,真珠色(もしくは真珠のような趣)であることを表現する修飾語として一般的に使用されている。この「パール」が「フィルター」を形容する修飾語であるとの解釈については,「フィルター」という言葉を同様に修飾する役目を果たしている2つの言葉(「キラキラ」と「きらめく」)のすぐ後に続いて使用されていることからしても,疑いを挟む余地はない。
「ピアニッシモ・スーパースリム」は,そのフィルター部分に「キラキラ光るチップペーパー」を採用した商品である(甲4)。「キラキラきらめくパールフィルター」のフレーズは,「ピアニッシモ・スーパースリム」が,キラキラした,キラキラきらめく真珠(パール)のような光沢のあるフィルターチップペーパーを使用した商品であることを強調して表現したフレーズであって,「パール」の文字は,「キラキラ」や「きらめく」といった修飾語が形容しているのと同様に,フィルターを形容する修飾語として使用されているものである。
実際,本件広告をみると,「キラキラきらめくパールフィルター」に続けて,「だから,手元・口元にも優しくキレイ」と記載されている。この記載は,たばこを手で持つ部分であって,吸い口にあたるフィルターが,キラキラ光っていることから,たばこを手に持ったとき,あるいはたばこを吸っているときに,手元や口元が優しくキレイに見えることを指摘したものと解される。したがって,「だから,手元・口元にも優しくキレイ」との文言が続いていることからも,「キラキラきらめくパールフィルター」の「フィルター」は,フィルターチップペーパーを指し,他方「パール」は,「キラキラ」や「きらめく」といった修飾語と一緒にそのフィルターチップペーパーがキラキラ光っていることを表す修飾語として使用されていることは明白である。
よって,パールは修飾語にすぎず,自他商品識別機能を備えた商標として使用されたものではない。
(2)「パールフィルター」を当該たばこの名称(商標)であるとの主張が不合理であること
「ピースロングフィルター」,「ウィンストン・フィルター」,「キャメルフィルター」と比較するのであれば,これらと同様に,たばこの商品名称として使用されている必要があるところ,本件のたばこの名称は「ピアニッシモ・スーパースリム」であって,「パールフィルター」ではないので,これらを同様に論じることはできない。「ピアニッシモ・スーパースリム」では,そのフィルター部分に「きらきら光るチップペーパー」を採用しており,「パール」は,「キラキラ」や「きらめく」といった修飾語と一緒にそのフィルターチップペーパーがキラキラ光っていることを表す修飾語として使用されているのであって,「ピース」や「ウィンストン」や「キャメル」のように識別標章として使用されているものでないことは明白である。
そもそも,「キラキラきらめくパールフィルター」のフレーズは,「キュッと詰まったメンソール」,「20本入りなのにコンパクト」(乙1及び乙2)又は「極細スリムサイズ」(乙3),「におい・煙が少ない」という「ピアニッシモ・スーパースリム」の商品の特徴を記載したフレーズと並んで記載されている。したがって,この「キラキラきらめくパールフィルター」のフレーズについても,商品の特徴を説明したフレーズにすぎず,商標としての機能を備えた文言・フレーズではないことは明らかである。
このように,被請求人は,明らかに同列には論じることができない「ウィンストン・フィルター」等の名称を持ち出し,「パール」を商標として使用していると主張するために,「ピアニッシモ・スーパースリム」の名称を隠した主張を展開しているが,このような不自然かつ不可解な主張こそが,被請求人が本件商標を使用していない証左である。よって,パールフィルターをたばこの名称(商標)とする被請求人の主張は不自然かつ不合理であって,認められない。
(3)以上のとおり,「パール」は,商標として使用されているものではなく,単に被請求人のたばこの新銘柄である「ピアニッシモ・スーパースリム」のフィルター部分がパールのようにキラキラきらめいていることを表す形容詞である。したがって,被請求人のその他の主張に反論するまでもなく,被請求人の主張には理由がない。
(4)被請求人の主張に対する反論
「パール」という単語が,たばこ等の指定商品との関係で識別力があるということと,登録商標「パール」を,自他商品識別機能を備えて使用しているという議論は,次元が異なっている。被請求人の議論は,商標として「パール」商標が,商標登録可能かどうかの議論と,被請求人の登録商標である「パール」の使用が商標として使用されているかどうかという議論を混同しているものであって,その理論構成が明らかに誤っていると考える。
被請求人によるこの点についての議論は不明瞭かつ不適切であるといわざるを得ない。本件の問題は,被請求人が使用する「パール」という用語が,自他商品識別機能を備えた使用をしているかどうかの問題であって,被請求人の議論は失当である。
商品に,一つ以上の商標が使用される例があること自体は認めるものの,請求人の主張の意図は,結局,被請求人は,「パールフィルター」という語を当該商品「ピアニッシモ・スーパースリム」について追加的商標として使用していることを立証するような何らの証拠も提出していないことを指摘する点にある。いずれにしても,被請求人の商品名称が「パールフィルター」ではなく,「ピアニッシモ・スーパースリム」なのであれば,「パールフィルター」と商品名称(商標)である「ピースロングフィルター」等が同等であるかのような被請求人の議論には何らの根拠もなくその主張は不合理だと考える。

第3 被請求人に対する審尋の要旨
被請求人が使用している商標は,「キラキラきらめく」の文字と「パールフィルター」の文字を2段に書したもの(乙1,乙2,乙4)及び「キラキラきらめくパールフィルター」(乙3)と認められるところ,これらは,「パール」の文字が独立して使用されているものではなく,本件商標とは態様の異なるものであるから,本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない。
したがって,他に本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)を指定商品に使用している事実を確認できる証拠の提出がない場合は,本件商標の登録は,取消しを免れない。

第4 被請求人の主張
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めるとし,答弁書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第22号証を提出した。
1 請求人の主張に対する答弁
(1)使用の証明
ア 被請求人は,本件商標をその指定商品に,本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」ということがある。)に使用している。
被請求人は,たばこの新銘柄として,平成22年(2010年)11月より「ピアニッシモ・スーパースリム」の販売を開始しており,該商品に本件商標を使用している。具体的には,「ピアニッシモ・スーパースリム」の販売を開始するに当たっての宣伝広告活動において,広告用シール型リーフレット(乙1),広告用ボード(乙2)及び広告用電子画像(乙3)(以下,乙1ないし乙3をまとめていうときは「サンプリングツール」という。)に本件商標を使用している。
乙第1号証の広告用シール型リーフレットには,右上部分に商標「パール」が自他商品識別標識としての機能を発揮する態様で,商標的に使用されている。また,乙第2号証の広告用ボードには,内側の右ページに商標「パール」が自他商品識別標識としての機能を発揮する態様で使用されている。さらに,乙第3号証の広告用電子画像は,携帯用電子端末の画面に表示させたものであり,右下部分に商標「パール」が自他商品識別標識としての機能を発揮する態様で使用されている。
イ 被請求人は,前記宣伝広告活動を平成22年10月22日から同年11月13日にわたり行っている。この宣伝広告活動は,被請求人の指揮監督の下で,株式会社ドライブコミュニケーションズ(以下「D社」という。)が行ったものである。また,この宣伝広告活動において使用され,配付された,商標「パール」が付されたサンプリングツールは,被請求人が株式会社博報堂に発注し製作したものである(乙4ないし乙11)。
乙第4号証は,宣伝広告活動の実施に関する資料の抜粋であり,表紙にはサンプリングツールに掲載されたものと一致する製品名及び製品の写真が掲載されている。また,配付物として広告用シール型リーフレット(乙1)が掲載されている。これにより,被請求人が,指定商品「たばこ」に関する広告に本件商標を付して展示し,頒布した事実が確認できる。
前記宣伝広告活動は,具体的には,被請求人の指揮監督のもと,飲食店等の各店舗において,宣伝広告対象である製品「ピアニッシモ・スーパースリム」を紹介し配付するものである。その紹介時に,広告用ボード(乙2)及び広告用電子画像(乙3)を使用し,さらに,広告用シール型リーフレット(乙1)を製品と併せて配付する内容となっている。
さらに,D社が,被請求人からの依頼により,2010年10月22日から同年11月13日にかけて,東京,大阪,名古屋において,商標「パール」を使用したサンプリングツールを配付し使用した事実を証明する証明書を提出する(乙11)。
ウ 前記の各号証の提出により,本件商標と社会通念上同一である商標「パール」がその指定商品について,要証期間内に使用されていることは,証明された。
(2)登録商標の使用
ア 登録商標と社会通念上同一の商標の使用
(ア)前記のとおり,商標「パール」が付されたサンプリングツールから,商標「パール」が使用されていることが確認できるが,前記サンプリングツールに付された「キラキラきらめく/パールフィルター」は大きく目立つように書されており,商標的使用態様であり,自他商品識別標識として使用されている。
また,「キラキラきらめく」部分は,修飾語又は記述的表現であり,「パールフィルター」が自他商品識別標識としての機能を発揮している。
さらに,両端を裁断した紙巻たばこの片方にフィルターを接合した製品を「フィルターシガレット」ということから,「フィルター」については,「フィルターシガレット」として「○○フィルター」のように指称する例が存在し,例えば,「ピースロングフィルター」,「ウィンストン・フィルター」,「キャメルフィルター」など,「○○フィルター」の態様で「たばこ」自体の名称として商標が使用されている。
また,紙巻たばこは,吸い口の態様によって「口付き」「両切り」「フィルター」に分類されるため,「フィルター」といえば「フィルターシガレットの一部分吸い口部分」としても理解されている(乙12)。
したがって,本件の「パールフィルター」は,「フィルター付きたばこ」を指称する商標であるとともに,「フィルター」部分は商品としての「たばこ」の品質・形態・種類を表す語と考えられ,指定商品との関係においては識別力がない語と評価されるべき部分であることは明らかであり,前記サンプリングツールにおける本件商標の使用態様においては,「パール」部分が自他商品識別標識としての機能を発揮して,商標的に使用されていると評価できる。また,取引においても,「フィルターシガレット」あるいは「フィルター付きシガレットの吸い口部分」を指称する「フィルター」が敢えて抽出されて認識されるよりは,むしろ,サンプリングツールに付された商標中の要部であって顕著性の高い「パール」部分が独立して認識され,取引に資することになると考えられる。
(イ)被請求人は,「パール」の語は,請求人が主張するような単なる修飾語ではないと考えている。「パールフィルター」の語を用いたたばこの広告(サンプリングツール)において,「パール」の語は十分自他商品の識別標識としての機能を発揮していると考えられるので,「パール」は本来的に修飾語であるはずもなく,十分な顕著性を有する商標である。
また,請求人は,本件のたばこの名称は「ピアニッシモ・スーパースリム」であって「パールフィルター」ではないと主張しているが,そもそも,「商標」は単一であり,その他の名称の使用は商標の使用に該当しないという前提に立った主張である点に誤りがある。
すなわち,現在の商取引においては,正式な商品名以外に商品を指し,暗示し,需要者,取引者に商品のイメージを沸かせる機能を発揮するサブタイトル的な商標も当然存在するものである。また,一つの商品に複数の商標が付されて取引に資されるケースは,現在の商取引において普通に行われている事も,経験上,明らかな事実である。
本件においては,商品名は「ピアニッシモ・スーパースリム」であることに何ら異論はないが,商標「パール」は,商品「たばこ」の品質を直接的・具体的に表すものではないものの,そのイメージを暗示する商標として,「ピアニッシモ・スーパースリム」と併せて使用されているものである。
イ 商標法第2条第3項第8号の使用
被請求人による宣伝広告活動において,サンプリングツールを配付又は使用する行為は,商品に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布する行為に該当する。すなわち,商標法第2条第3項第8号に掲げる商標の使用に該当する。
通常使用権者等による使用
被請求人による宣伝広告活動は,直接的には,D社によって行われたものであるが,この宣伝広告活動は,被請求人の指揮監督の下,受託会社であるD社が,被請求人の手足となって行われたものである。この態様から考えると,該宣伝広告活動は,被請求人本人によるものと評価すべきである。すなわち,本人による商標法第2条第3項第8号に掲げる商標の使用が行われたものと考えられる。
エ 要証期間内の使用
「ピアニッシモ・スーパースリム」の宣伝広告活動が,平成22年10月22日から同年11月13日に亘り行われた事実は,前述のとおりであり,要証期間内に本件商標が使用されていたことは明らかである。
以上のとおり,被請求人又は通常使用権者が,本件商標を,指定商品について要証期間内に使用している。
2 審尋に対する答弁
(1)「パール」部分は自他商品識別標識として機能することについて
「キラキラきらめく/パールフィルター」及び「キラキラきらめくパールフィルター」の文字中における「パール」の語は,商品「たばこ」との関係においては,商品の品質を表す語として普通に用いられるとは考えられず,そのような意味として親しまれているとも考えられない。たばこの外装にきらきら光るペーパーが使われていたとしても,これを「パール」の文字で表現する事は商標的表示となる。
「商品に付された1つの標章が常に1つの機能しか果たさないと解すべき理由はなく,商品の機能を表示するものと理解し得るとしても,その表示が,同時に,自他商品を識別させるために付されている商標でもあると解することができる」旨の判断がなされた裁判例が存在している(乙19)。
本件も同様に考えると,「パールフィルター」は,指定商品を暗示することがあるとしても,その表示が,同時に,自他商品を識別させるために付されている商標でもあると解することが可能であり,「パールフィルター」は商品「たばこ」の一部分を表示すると同時に,自他商品識別標識としての機能を発揮する商標と考えるべきである。さらに,「キラキラきらめく」及び「フィルター」の語は指定商品との関係では顕著性がないか,顕著性が極めて低い部分と考えられるので,商標「パール」が使用されていると考えるべきである。
(2)「パール」と他の要素を結合する必然性はないことについて
「キラキラきらめく」部分は商標のイメージを補強する付加的部分であり,「パール」部分が顕著性を有する顧客吸引力を発揮する商標部分と考えるべきである。これを全体として形容詞的用法と考える事も可能であるが,「パール」の文字は直接品質内容を形容していない。むしろ「パールフィルター」は単独の商標であり,残りの部分が「パールフィルター」の形容詞となるにすぎない。
また,「フィルター」の語は,たばこのフィルターを指すものであるが,この語は,たばこの一部分を示すものであるとともに,フィルター付きたばこの全体の名称として使用されており,各種の商標登録例があり,また,指定商品の表示としても認められている(乙20ないし乙22)。
たばこ用フィルターの商標としてではなく,たばこの名称として「○○フィルター」のように指称する例が多数存在しており,「フィルター付きたばこ」を指称する(略称する)ものであると考えるべきである。すなわち,たばこの品質や種類を表す形容詞的部分であって商品との関係においては識別力がない語である。
(3)社会通念上の同一
不使用取消審判における社会通念上の同一の範囲は,商標使用の実情を充分に考慮した上で,取引の実態に合致した判断が必要となる。
使用の実態として商品の普通名称を付加する事は,通常の取引で行われている取引の実情である。本件では,「フィルター付きたばこ」の略称である「フィルター」の文字を,本件商標「パール」に付加して,「パールフィルター」としてたばこの商標を使用することは,通常一般に容易に考えられる態様であり,商標の変更使用にも該当しない当然の使用方法である。
本件の使用証拠に表示されている商標は他に多くの修飾語が付いているが,社会通念上同一性の範囲にある本件商標の使用と考えられる。

第5 当審の判断
1 被請求人(商標権者)が提出した証拠及び主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は,本件商品の広告用シール型リーフレット(以下「本件広告A」という。),乙第2号証は,2つ折りにされた本件商品の広告用ボード(以下「本件広告B」という。),乙第3号証は,広告用電子画像の写し(以下「本件広告C」という。)であるところ,これらには,「パールフィルター」の文字(以下「使用商標」という。)が付されている(以下,これらの広告を併せて「本件各広告」ということがある。)。
そして,本件各広告は,商標権者の依頼により,株式会社博報堂が2010年10月15日に作成し,同じく,商標権者の依頼により,D社が,2010年10月22日から同年11月23日にかけて,東京,大阪,名古屋で行った商品「ピアニッシモ スーパースリム」(本件商品)の販売促進イベントにおいて配布又は使用したものである。
したがって,本件各広告は,商標権者がその取り扱いに係る商品の広告のために使用したものと認められる。
(以上,乙6ないし11)
(2)本件各広告における本件商標の使用の有無について
ア 本件商品について
本件各広告は,被請求人が平成22年11月から販売を開始したたばこの新商品(本件商品)に関する広告である。
本件商品は,「ピアニッシモ・ファミリー」と称される,商品名に「ピアニッシモ」を冠する商品群に属する一銘柄である。
イ 本件商品のパッケージについて
本件各広告には,本件商品のパッケージの写真が掲載されている。
本件商品のパッケージの正面(本件各広告に掲載されている面)には,中央部に「PIANISSIMO」「Super Slims」「Menthol」「ONE」の文字が上下4段で表示されている。このうち,「PIANISSIMO」の文字が最も大きいフォントで表示され,「Super Slims」の文字が次に大きいフォントで表示されている。ただし,本件商品のパッケージには,「パール」や「PEARL」の表示はない。
ウ 本件広告Aについて
本件広告Aは,本件商品の広告用シール型リーフレットである(乙1)。
これには,そのほぼ中央部分に本件商品のパッケージとたばこの写真が大きく掲載されており,この写真の上部に「キュッと極細スリム。」「PIANISSIMO」「美しさの新・スタイル ピアニッシモ・スーパースリム」の文字が,最も目立つ態様で上下3段書きに表示され,また,前記写真部分を囲むように左上から時計回りで「キュッと詰まったメンソール」,「キラキラきらめく」「パールフィルター」(上下2段),「におい・煙り少ない」,「20本入りなのに」「コンパクト」(上下2段)の各文字が次に目立つ態様で,スターマーク類似の記号の次に見出しのように表示され,それぞれの下に小さな文字で2,3行の商品の宣伝文言が記載されている。
エ 本件広告Bについて
本件広告Bは,2つ折りにされた本件商品の広告用ボードである(乙2)。
その表紙には,金色の口紅を塗った女性の顔写真が大きく掲載され,その下に「キュッと極細スリム。」「ピアニッシモ」「スーパースリム」「2010年11月上旬より全国発売」「PIANISSIMO」「Super Slims Menthol ONE」の文字が上下6段で表示されている。このうち,「ピアニッシモ」「スーパースリム」の文字が最も大きいフォントで表示され,「PIANISSIMO」の文字が次に大きいフォントで表示されており,これらが本件商品のメインブランドであると認められる。
また,当該広告用ボードの内面には,その中央から上の部分に本件商品のパッケージとたばこがボードを開くと浮き上がるように立体的な仕掛けが施されており,その背景には,上部に「ピアニッシモから」「極細スリムサイズ新登場!!」の文字が上下2段で大きなフォントで表示され,下部に「New! 美しさの新・スタイル」の文字がより大きなフォントで表示されており,前記のパッケージとたばこを囲むように左上から時計回りで「キュッと詰まったメンソール」,「キラキラきらめく」「パールフィルター」(上下2段),「におい・煙り少ない」,「20本入りなのに」「コンパクト」(上下2段)の各文字が,中程度の大きさのフォントでスターマーク類似の記号の次に見出しのように表示され,それぞれの下に小さな文字で2,3行の商品の宣伝文言が記載されている。
オ 本件広告Cについて
本件広告Cは,本件商品の広告用電子画像の写しである(乙3)。
これには,その左側に本件商品のパッケージとたばこの写真が大きく掲載されており,この写真の右側上部に,「PIANISSIMO」「Super Slims Menthol ONE」の文字が,上下2段に表示され,その下に,「極細スリムサイズ」「キュッと詰まったメンソール」「キラキラきらめくパールフィルター」「におい・煙り少ない1mg」の各文字が,中程度の大きさのフォントでスターマーク類似の記号の次に見出しのように表示され,それぞれの下に小さな文字で1,2行の商品の宣伝文言が記載されている。
2 判断
(1)本件商品は,商品名を「ピアニッシモ・スーパースリム」とするたばこであり,本件商品のパッケージの正面には,本件商品の商品名を欧文字で表した「PIANISSIMO」の文字が最も大きいフォントで表示されているのに対し,「パール」ないし「PEARL」の文字は表示されていないことは,前記1(2)の認定のとおりである。
そして,本件各広告においても,最も目立つところに,「PIANISSIMO」,「ピアニッシモ・スーパースリム」(本件広告A),「ピアニッシモ」「スーパースリム」(本件広告B)及び「PIANISSIMO」(本件広告C)の各文字が大きいフォントで表示されている。
これに対し,本件各広告に表示されている「パールフィルター」は,中程度の大きさのフォントで,中見出しのような位置に表示され,その下に1,2行ないし数行の宣伝文言が記載されているものである。そして,本件各広告の「キラキラきらめくパールフィルター」(上下2段ないし1行)の表示は,「キュッと詰まったメンソール」「におい・煙り少ない」「20本入りなのにコンパクト」(上下2段ないし1行)と同様の大きさのフォントと中見出し的な態様で表示されている。
そして,たばこ業界においては,フィルター付きたばこのブランドとして「○○フィルター」と称する例が存在し,世界的に販売数量の多いたばこブランドである「ウィンストン・フィルター」や「キャメル・フィルター」などの例が存在すること,及び本件各広告における「パールフィルター」の表示は,本件商品のメインブランドである「ピアニッシモ スーパースリム」ないし「PIANISSIMO」程ではないにせよ,本件各広告中において前記認定のとおり中程度に目立つ態様で表示されており,同程度に表示されている「キュッと詰まったメンソール」「20本入りなのにコンパクト」「におい・煙り少ない」に比べると,単なる商品の内容や形状を説明しただけのものではなく,そのフィルターにパール状の光沢や色つやがあるとの特徴があるフィルター付きたばこである本件商品を,「パールフィルター」と称してその宣伝広告活動しているものと認めることは可能である(「キラキラきらめく」は「パールフィルター」を修飾する形容詞として表示されているものと解される。)。
これらの事実からすると,被請求人は,そのブランド戦略からして,本件商品に「ピアニッシモ・スーパースリム」との商品名を付し,「PIANISSIMO」の商標を強調するなどした上で,フィルターにパールのような光沢とつやのあるたばこである本件商品の特徴に由来する「パールフィルター」という二次的なブランドも採用したものと認めるのが相当である。
以上によれば,被請求人は,本件各広告において,「ピアニッシモ スーパースリム」ないし「PIANISSIMO」等を本件商品のメインブランドとして広告宣伝し,取引者及び需要者は,これらの商標によって,本件商品を他の商品から識別するものであるけれども,同時に,「パールフィルター」との標章も,本件商品の特徴を表す二次的ブランドとして,本件各広告に使用されたものと認められる。
(2)次に,本件各広告における「パールフィルター」との商標が,本件商標と社会通念上同一の商標といえるか否かについて判断する。
本件商標は,前記第1のとおり,「PEARL」と「パール」の文字を2段に表示したものである。
これに対し,本件各広告の中の「パールフィルター」のうち,「フィルター」は,本件商標の指定商品であるたばこのフィルターを指す語であって,これをフィルター付きたばこに使用した場合,それ自体識別力を有しない語である。
そして,「パール」の文字は,真珠という意味の英語の片仮名表記として,日本人によく知られている言葉であるから,これをたばこという商品に使用した場合に,自他識別機能を有する商標となり得るものである。
しかし,前記(1)認定のとおり,本件各広告においては,「パール」は,本件商品の二次的ブランドである「パールフィルター」との商標の一部として使用されているにとどまるものである。「パールフィルター」との商標は,本件商品の二次的ブランドとして使用されているものである以上,取引者及び需要者はこれを一連一体のものとして認識し,把握するものであって,「パール」のみを分離して認識し,把握するものではない。
したがって,本件各広告において使用されている「パールフィルター」との商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であるということはできない。
(3)以上によれば,本件各広告において,本件商標が使用されているとは認められない。
3 むすび
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,その取消請求に係る指定商品について,本件商標の使用をしていることを証明したとは認められず,また,本件商標を使用していないことについて,正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2014-09-04 
結審通知日 2014-09-08 
審決日 2014-09-22 
出願番号 商願平2-67574 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y34)
最終処分 成立  
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 大森 健司
西田 芳子
登録日 1993-04-28 
登録番号 商標登録第2523496号(T2523496) 
商標の称呼 パール 
代理人 渡辺 広己 
代理人 広瀬 文彦 

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