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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y09
管理番号 1292777 
審判番号 取消2013-300735 
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-08-29 
確定日 2014-09-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第4860614号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4860614号商標(以下「本件商標」という。)は,「ADJ」の欧文字を標準文字で表してなり,平成16年4月28日に登録出願,第9類「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置」を指定商品として,平成17年4月28日に設定登録されたものである。
なお,本件の審判請求の登録は,平成25年9月19日である。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の指定商品中,第9類「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置」(以下「取消請求商品」という。)について登録を取消す,審判費用は,被請求人の負担とする,との審決を求め,審判請求書,弁駁書及び口頭審理陳述要領書において,その理由及び答弁に対する弁駁等を要旨次のように述べ,甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品中,取消請求商品につき,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって使用された事実が存しないものであるから,商標法第50条第1項の規定により,その登録は,取消されるべきである。
本件商標の商標原簿謄本(甲1)によれば,専用使用権者,通常使用権者等の設定登録はなされていない。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人により提出された使用証拠について
被請求人は,提出された使用証拠のうち,乙第1号証ないし乙第26号証に本件商標が記載され,これをもって商標法第50条第2項の規定による「登録商標の使用」を示す旨主張をしている。
しかしながら,乙第27号証ないし乙第42号証に示された商品カタログの記載内容によると,乙第3号証ないし乙第8号証,乙第10号証及び乙第11号証,乙第13号証及び乙第14号証,乙第19号証ないし乙第22号証に示されたデジタルカメラが記載されたカタログの記載内容の時期は,本件審判請求の登録前三年以前である。
また,乙第44号証に示された「デジタルカメラ販売年月日一覧」によると,乙第1号証ないし乙第14号証及び乙第18号証ないし乙第23号証に記載されたデジタルカメラの販売開始年月日は,本件審判請求の登録前三年以前である。
したがって,乙第1号証ないし乙第14号証及び乙第18号証ないし乙第23号証については,被請求人により提出された使用証拠のみをもっては,商標法第50条第2項の規定による「不使用取消審判の請求の登録前三年以内」(以下「要証期間」という。)の「登録商標の使用」を示すものではない。
(2)乙第15号証ないし乙第17号証及び乙第24号証ないし乙第26号証について
ア 商標としての使用について
商標法第50条第2項の規定による「登録商標の使用」とは,商標法第2条第3項でいうところの商標としての使用であり,当然ながら商標の本質的機能である自他商品又は役務の識別機能を発揮する態様での使用でなければならない。
しかしながら,乙第24号証ないし乙第26号証の文章中において,本件商標は,「ADJ(アジャスト)ボタン」と表示されていることより,「調節する」を意味する「adjust(アジャスト)」の省略形であると解され,「ADJボタン」又は「ADJレバー」は,それぞれ「調節ボタン」又は「調節レバー」を意味する機能表示として使用されているにすぎない。
また,被請求人が,「当社製品の特徴的機能の名称として(中略)標章を付して使用しております。」と主張していることからも,本件商標が使用されているのは,商品の「特徴的機能」についてであり,「商品」について識別機能を発揮する態様で使用されていないことは明らかである。
かくして,「ADJ」は,被請求人の商品であるデジタルカメラ(以下「本件商品」という。)の機能の内容を表示するものであって,被請求人の商品であることを示す自他商品識別機能を有するものではなく,商標法第2条第3項でいう商標としての使用には当たらない。
イ 使用に係る商品について
被請求人は,本件商標は,「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」について使用されていると主張している。
しかしながら,乙第15号証ないし乙第17号証において,本件商標は,本件商品のボタン上又はレバーの上部に小さく表示されており,乙第24号証ないし乙第26号証においても,ボタン上に小さく表示されているのみであり,本件商品全体ではなく,ボタン又はレバー部分のみに対して使用されているものである。
このことは,乙第15号証ないし乙第17号証における本件商品の機能設定画面において,「ADJボタン設定」又は「ADJレバー設定」と表示されていることからも明らかである。
一方,商標法における「商品」とは「商取引の目的たりうべき物,特に動産をいう」と解されるところ,上記本件商品のボタン又はレバー部分が独立して取引されている「商品」であるとはいえず,本件商品のボタン又はレバー部分が部品として個別に販売されていることを示す証拠の提出もない。
よって,本件商標は,「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」について使用されているとはいえない。
3 口頭審理陳述要領書(平成26年4月16日付け)
(1)「ADJ」について
ア 被請求人は,「『ADJ』と表示した場合には,『adj.』と異なり,必ずしも略語とは看取されない」と述べる。
しかしながら,使用証拠において,「ADJ.」,「ADJ.ボタン」,「ADJ.レバー」と,「.(省略記号)」を付した態様で使用されていることは被請求人も認めるところであり,「.(省略記号)」が付された場合には,一般需要者に略語と看取されることが自然である。
イ 被請求人は,「略語の『adj.』と看取されるとしても,本件商品の需要者のような我が国一般需要者には,その意味が『adjust(アジャスト)』や『adjustment(アジャストメント)』と直ちに理解されるものではない」と述べる。
しかしながら,乙第24号証ないし乙第26号証の文章中において,「ADJ」は,「ADJ.(アジャスト)ボタン」と表示されている。
つまり,被請求人自身が「ADJ」は「アジャスト」を意味すると明記しており,「ADJ」が「アジャスト」を意味することは明白である。
ウ 被請求人は,「『ADJボタン』,『ADJレバー』と表示されているとしても,これらの表示は,被請求人の商品特有のものとして認知されている」と述べる。
しかしながら,「ADJボタン」,「ADJレバー」の名称は,他の機械器具類の単なる機能表示として多数使用されている(甲2ないし甲8)。
(2)機能名称について
ア 被請求人は,「『ADJボタン』,『ADJレバー』は,本件商品において,特定の機能を発揮するものであるが,機能名称であるからといって商標としての使用ではないとはいえない」と述べる。
しかし,商標法第3条第1項柱書に「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については,次に掲げる商標を除き,商標登録を受けることができる」と規定されていることより,商標法第50条第2項の規定する「登録商標の使用」は,商品又は役務について使用されていなければならず,機能名称としての使用は,「登録商標の使用」に当たらない。
イ 被請求人は,乙第53号証を示し「機能」という語自体を含む登録商標を挙げ,「機能名称としての使用が商標的使用でないとすると,そもそもこのような『○○機能』という態様の商標は,商標的使用が予定されないので登録すべきではないということになる」と述べる。
しかし,請求人は,機能名称からなる商標が常に商標的使用に該当しないと主張しているのではない。機能名称が単なる機能の表示に終わらず,指定商品について商標として使用されている場合は,当然商標の使用になる。
したがって,問題は,機能名称からなる商標かどうかではなく,機能名称からなる商標が,単なる機能表示として使用されているか,あるいは単なる機能表示を超え,指定商品について使用されているかどうかである。
ここで本件商標の使用を見た場合,単なる機能表示に終わっており,指定商品についての商標の使用とはいえない。
ウ 被請求人は,「本件商標が表示されているのは物理的には液晶画面上やボタン上であるが,これをもってして,商品の部品たる液晶画面やボタンについて商標が付されているとみないのは当然である。機能名称たる本件商標が指称しているのはボタン等ではなく,当該機能を発揮するシステムである本件商品本体である」と述べる。
しかし,乙第18号証及び乙第27号証において,「ADJ.ボタン」の表示が「電源ボタン」,「OKボタン」,「削除/セルフタイマーボタン」,「シャッターボタン」等と並んで表示されており,「ADJ.ボタン」の表示は,明らかにボタンを指称している。
よって,本件商標が本件商品の本体を指称しているとは考えられない。
(3)使用に係る商標の識別力について
被請求人は,「一つの商品に識別力を発揮する商標は一つとは限らない」と述べ,「『ADJ.』がたとえ『アジャスト』の意味で使用され,また需要者にその意味で理解されるとしても,同時に当該商品の識別標識としても機能し得る」として,「DEEP SEA事件」の裁判例(乙55)を挙げているが,当該裁判例において「DEEPSEA」の文字は,赤色で他の文字と異なるように表示されており,本件商標とは表示態様が異なる。
また,裁判例では「『DEEPSEA』の語は,深い水深の場所でも使用できる腕時計の品質を表示する語として一般的に使用されているものではない」とあるが,本件の「ADJ」については,上述のとおり,「アジャスト」を表示する語として他の機械器具類に一般的に使用されており,裁判例と事案を異にする。
(4)まとめ
以上に述べたとおり,本件商標の使用は,商標法第50条第2項に規定された「登録商標の使用」には該当しない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求める,と答弁し,答弁書及び口頭審理陳述要領書において,その理由等を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第55号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)商標の使用者
乙第27号証ないし乙第42号証の「商品カタログ」には,被請求人の名称である「株式会社リコー」,本社所在地である「東京都中央区銀座8-13-1リコービル」が表示されている。
(2)使用に係る商品
乙第27号証ないし乙第42号証には,取消請求商品中,「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」の製品名及び品番が記載されている。
(3)使用に係る商標
乙第1号証ないし乙第26号証には,本件商標が記載されている。
(4)使用時期
乙第27号証には,「このカタログの記載内容は,2006年9月現在のものです。」と記載され,以下同様に,乙第37号証には,「2010年4月現在」,乙第38号証には,「2010年8月現在」,乙第39号証には,「2013年4月現在」,乙第40号証には,「2013年4月現在」,乙第41号証には,「2013年4月現在」,乙第42号証には,「2011年6月現在」のものである旨が記載されている。
また,本件商標が記載された本件商品の発売日は,乙第44号証のとおりである。
2 口頭審理陳述要領書(平成26年4月2日付け)
(1)要証期間の使用について
乙第44号証に示された商品は,被請求人のホームページに掲載され,発売日から現在に至るまで広告されている(乙45)。
乙第45号証のうち「生産終了製品」と表示されている商品は,生産は終了しているが,市場での販売は継続して行われている。
少なくとも,当該商品が発売日から現在に至るまで広告されていることは明らかである。
乙第16号証「GR DIGITAL IV」の生産は終了していない(乙45の16)。
乙第44号証に示された商品のうち,本件商品の本体の写真が提出されていない乙第45号証の18ないし22の商品についても,被請求人により発売日から現在に至るまで広告されており,乙第45号証の19「Caplio R7」のページには,「使いやすさ向上,新ADJ.ボタン」としてカメラ本体に「ADJ.」の商標が付されている写真が掲載されている。
本件商品が実際に販売されていることについては,2014年3月28日現在,「価格.com」のサイトにおいて,乙第16号証「GR DIGITAL IV」,乙第17号証「CX6」,乙第14号証「CX4」,乙第15号証「CX5」,乙第11号証「CX2」,乙第9号証「CX1」の価格が掲載されている(乙46)。
(2)使用に係る商標と本件商標の同一性について
使用に係る商標の態様は,「ADJ」のほか,「ADJ.」,「ADJ.ボタン」,「ADJ.レバー」(以下「使用商標」という。)があるが,争いのない乙第15号証ないし乙第17号証について,使用商標の表示箇所及び本件商標との社会通念上の同一性は,以下のとおりである。
ア 「ADJ.」とその下段に「OK」とあるが,「OK」は識別力のない部分であり,使用商標の「ADJ.」は,本件商標と社会通念上同一である。
イ 液晶画面上,「ADJ.ボタン設定1」等の「ADJ.ボタン」が機能名称たる本件商標に係る機能を発揮させるための表示であるが,「ボタン」は機能名称が表示されている部分を示す普通名称であって識別力がないので,使用商標は「ADJ.」であり,本件商標と社会通念上同一である。
(3)商標としての使用について
ア 「ADJ」について
「ADJ」は,辞書には「adjustment」の略語であって「調節,適応,適合,加減,修正,調整,調停」の意味と掲載されている(乙49)。たとえ「adjustment」あるいは「adjust」と理解されるとしても多義的といえる。
また,略語の「adj.」をみると,「adjacent,adjectival,adjective,・・・」と多くの単語の略語として使用されている(乙49)。
「ADJ」と表示した場合には,「adj.」と異なり,必ずしも略語とは看取されない。略語の「adj.」と看取されるとしても,デジタルカメラの需要者のような我が国一般需要者には,その意味が「adjust(アジャスト)」や「adjustment(アジャストメント)」と直ちに理解されるものではない(乙50)。
よって,「ADJ」が「ADJボタン」,「ADJレバー」と表示されているとしても,「調節ボタン」,「調節レバー」と理解されるとは限らない。
また,たとえ「ADJボタン」,「ADJレバー」と表示されているとしても,これらの表示は,被請求人の商品特有のものとして認知されている。
これらの表示をキーワードとしてインターネット上で検索すると,上位にヒットするのはすべて被請求人の製品のデジタルカメラに関する記事であり,被請求人の商品について使用されている商標として需要者に認知されている(乙51及び乙52)。
イ 機能名称について
「ADJボタン」,「ADJレバー」は,被請求人の商品において,特定の機能を発揮するものであるが,機能名称であるからといって商標としての使用ではないとはいえない。
まず,商品の機能,効能を謳うのは広告宣伝では当然であるところ,広告宣伝機能を有する商標自体に,商品の機能,効能を盛り込んだ構成の商標も多々見られ,「機能」という語自体を入れ込んだ構成の「○○機能」という商標も登録されている(乙53)。
もし,機能名称としての使用が商標的使用ではないとすると,そもそもこのような「○○機能」という態様の商標は,商標的使用が予定されないので登録すべきではないということになり,それは,登録商標の使用は必然的に「○○機能」という表示になるからである。
また,機能名称であるので,請求人主張のように「デジタルカメラのボタン又はレバー部分が独立して取引されている『商品』であるとはいえない」という立場に立てば,部品の名称ではないので,商標を付した部分が流通するということもあり得ない。
このような機能名称は,独立して部品として流通する,ということが想定されるものではないが,当該商品について,出所表示機能のほか,品質保証機能,広告宣伝機能を果たすという意味で,現実に商標として機能している(乙54)。
本件の場合,本件商標が表示されているのは液晶画面上やボタン上であるが,これをもってして,商品の部品たる液晶画面やボタンについて商標が付されているとみないのは当然である。
機能名称たる本件商標が指称しているのは,ボタン等ではなく,当該機能を発揮するシステムであるデジタルカメラ本体である。
前述のように,本件商標は,被請求人の商品を指称すると同時に,当該機能を備えているとの表示として商品の品質を保証し,商品の性能をアピールする広告宣伝機能を発揮している。
(4)使用商標の識別力について
一つの商品に識別力を発揮する商標は一つとは限らないのは取引実情において当然である。本件商品についても,例えば,乙第1号証の商品には,被請求人のハウスマーク「RICOH」,個別商品商標「Caprio R1」が表示されているが,「ADJ.」も当該商品の機能名称として識別力を発揮しているといえる。「ADJ.」がたとえ「アジャスト」の意味で使用され,また需要者にその意味で理解されるとしても,同時に当該商品の識別標識としても機能し得ることは判例にも示されているとおりである(乙55)。
(5)まとめ
以上のとおり,本件商標の使用は,商標法第2条第3項第1号,第2号及び第8号に該当する使用である。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠について
(1)乙第15号証は,本件商品を写した5枚の写真であるところ,1葉目上段の写真は,本件商品の正面であり,本件商品の右上部分に,「RICOH」,及び左下部分に,「CX5」と表示されている。
そして,2葉目の上段の写真は,本件商品の背面部分(一部)であり,丸形のボタン部分に「ADJ.」と「OK」の文字が,上下二段に表示されている。
また,その下段及び3葉目の写真は,「セットアップ」と表示された本件商品のモニター部分であり,「ADJ.ボタン設定1」と表示され,「露出補正」等の操作ができることが示されている。
乙第45号証の15(2014/3/28印刷)は,被請求人のウェブページに掲載された製品情報であり,「CX5」と表示された本件商品について,その「製品概要」には,「発売日:2011年2月10日」と記載されている。
(2)乙第16号証は,本件商品を写した6枚の写真であるところ,1葉目上段の写真は,本件商品の正面であり,本件商品の右下部分に,大きく「GR」と表示され,その下には,「DIGITAL」と表示されている。また,その下段の写真は,本件商品の背面であり,モニター部分の下に「RICOH」と表示されている。
そして,2葉目の上段の写真は,本件商品の背面部分(一部)であり,レバーの上部に,「ADJ.」と表示されている。
また,その下段及び3葉目の写真は,「キーカスタム設定」と表示された本件商品のモニター部分であり,「ADJ.レバー設定1」と表示され,「ホワイトバランス」等の操作ができることが示されている。
乙第45号証の16(2014/3/28印刷)は,被請求人のウェブページに掲載された製品情報であり,「GR DIGITAL IV」と表示された本件商品について,その「製品概要」が掲載されている。また,乙第46号証の「価格.com」の「リコー(デジタルカメラ)通販」の情報によれば,該商品については,「発売日:2011年10月21日」と記載されている(3葉目)。
(3)乙第17号証は,本件商品を写した5枚の写真であるところ,1葉目上段の写真は,本件商品の正面であり,本件商品の右上部分に,「RICOH」,及び左下部分に,「CX6」と表示されている。
そして,2葉目の上段の写真は,本件商品の背面部分(一部)であり,丸形のボタン部分に「ADJ.」と「OK」の文字が,上下二段に表示されている。
また,その下段及び3葉目の写真は,「キーカスタム設定」と表示された本件商品のモニター部分であり,「ADJ.ボタン設定1」と表示され,「露出補正」等の操作ができることが示されている。
乙第45号証の17(2014/3/28印刷)は,被請求人のウェブページに掲載された製品情報であり,「CX6」と表示された本件商品について,その「製品概要」には,「発売日:2011年12月3日(土)(ブラック)」及び「発売日:2011年12月16日(金)(シルバー,ピンク)」と記載されている。
2 以上によれば,以下のとおり判断できる。
(1)本件商標の使用について
ア 本件商標権者は,要証期間に発売した本件商品の3機種(CX5,GR DEGITAL IV,CX6)について,「ADJ.」の欧文字を付しているものである。
そして,かかる商標権者の行為は,「商品・・・に標章を付する行為」(商標法第2条第3項第1号)に該当するものと認められる。
イ 「ADJ」の欧文字を付した本件商品の3機種は,2014年3月28日現在において,その販売のために商標権者のウェブサイトに掲載されているものであるから,それぞれの商品の発売日以降,商標権者により販売のために広告されていたものと推認され,かかる商標権者の行為は,「商品・・・に関する広告,・・・に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)が行われたことを認めることができる。
ウ 本件商品は,本件の取消請求に係る指定商品中,「電気通信機械器具」に含まれる商品と認められる。
(2)使用に係る商標が本件商標と社会通念上同一であるかについて
本件商標は,「ADJ」の欧文字を表してなるものである。
これに対し,本件商品に付して使用された商標は「ADJ.」の欧文字及び符合からなるものであり,「.」部分は,単に付加されている記号にすぎず,「ADJ」の欧文字は,本件商標と同一の欧文字からなるものであるから,使用に係る商標は,「ADJ」の欧文字において本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
3 請求人の主張について
請求人は,甲第2号証ないし甲第8号証を提出し,「『ADJボタン』,『ADJレバー』の名称は,他の機械器具類の単なる機能表示として多数使用されている」旨,「乙第24号証ないし乙第26号証の文章中において,本件商標は,『ADJ(アジャスト)ボタン』と表示されていることより,『調節する』を意味する『adjust(アジャスト)』の省略形であると解され,『ADJボタン』又は『ADJレバー』は,それぞれ『調節ボタン』又は『調節レバー』を意味する機能表示として使用されているにすぎない。」旨,及び,「商標法第50条第2項の規定する『登録商標の使用』は,商品又は役務について使用されていなければならず,機能名称としての使用は,『登録商標の使用』に当たらない。」旨主張している。
しかしながら,請求人が提出した上記各号証は,本件商品とは異なる商品に関するものであり,また,「ADJボタン」,「ADJ」及び「ADJレバー」と表示又は記載されているものの,これらが「adjust(アジャスト)」を表すものとして使用されている証拠は見いだすことができない。
そうとすれば,「ADJ」の欧文字は,「adjust(アジャスト)」を表すものとして機械器具類について一般的に使用されているということができず,また,本件商品(デジタルカメラ)の機能を表示するものとして使用されているものということもできない。
そして,たとえ,被請求人が「ADJ」の文字を「アジャスト」の意味合いとして本件商品に使用しているとしても,一般には,そのような使用はされていないものであるから,本件商標が,本件商品の機能を表示したものとして理解されるということはできない。
本件については,被請求人が提出した証拠から, 前記2のとおり,商標権者が,業として,広告し,販売する本件商品について,本件商標と社会通念上同一と認められる「ADJ.」の文字を付していた事実が確認できるものであり,本件商品に表示された「ADJ.」の文字は,商標法第2条にいう商標の使用に該当するものというべきである。
4 むすび
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者が,その請求に係る指定商品中の「電気通信機械器具」に含まれる「デジタルカメラ」について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認められる。
したがって,本件商標の登録は,その請求に係る指定商品について,商標法第50条の規定により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
審決日 2014-05-09 
出願番号 商願2004-40290(T2004-40290) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯田 亜紀大島 勉 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 亨子
井出 英一郎
登録日 2005-04-28 
登録番号 商標登録第4860614号(T4860614) 
商標の称呼 エイデイジェイ 
代理人 深見 久郎 
代理人 宮永 栄 
代理人 西村 雅子 
代理人 向口 浩二 
代理人 竹内 耕三 
代理人 森田 俊雄 
代理人 田畑 浩美 

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