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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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異議2013900220 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X30 |
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管理番号 | 1291717 |
審判番号 | 無効2013-890049 |
総通号数 | 178 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2014-10-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2013-07-26 |
確定日 | 2014-09-01 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5460108号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5460108号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5460108号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成からなり、平成23年6月23日に登録出願、第30類「豆板醤,調味料,香辛料」を指定商品として、同年11月15日に登録査定、同年12月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第2 引用商標 請求人が引用する商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成からなり、商品「火鍋用の調味料」に使用するものである。 第3 請求人の主張 請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第18号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 無効事由 本件審判は、本件商標が商標法第4条第1項第19号及び同第7号に違反して登録されたものであるとして、同法第46条第1項により本件商標の登録を無効にすることを請求するものである。 (1)本件商標は、その出願日以前から審判請求人が自己の商標として請求人の本国である中国において「火鍋用の調味料」に使用した結果、中国における取引者・需要者の間に広く認識されている引用商標と同一又は類似であり、また、本件商標の権利者(被請求人)は、請求人と一定の取引関係がありながら請求人の承諾を得ず無断で本件商標を出願し登録を得たものであることから、これが不正の目的に基づく行為であることは明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当し、その登録を認められるべきではなかった。 (2)また、被請求人のかかる行為は著しく社会的妥当性を欠き、今後もこのような商標保護が正当化されるとするならば、我が国商標制度に対する外国からの信頼を著しく損なうことになり、ひいては我が国の信用にも影響を与えかねない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、その登録を認められるべきではなかった。 2 商標法第4条第1項第19号について (1)請求人について 請求人「重慶周君記火鍋食品有限公司」(欧文字名称:「Chongqing Zhoujunji Hotpot Food Co.,Ltd.」)は、1993年に設立された、火鍋用の調味料等の製造販売を業とする中国の法人である(甲2の1)。 (2)本件審判についての請求の利益について 請求人が製造販売する各製品には商標「周君記」が付される(甲2の2)。甲第2号証の2は請求人ウェブサイトをプリントアウトしたものであり、ここで紹介されている22種の製品のパッケージの全てに商標「周君記」が付されている。 また、請求人は、平成25年7月3日付けで、第30類「コーヒー,食品香料(精油のものは除く。),茶,菓子及びパン,砂糖,穀物の加工品,小麦粉を主原料とする穀物の加工品,ポップコーン,豆粉,氷,醤油,酢,調味料,酵母,家庭用食肉軟化剤,鍋物用のつゆ及び鍋物用のつゆの素,鍋物用調味液」を指定して、本件商標と酷似する商標を我が国に出願している(商願2013-51632、甲3)。 以上より、請求人は、本件審判について利害関係を有し、請求の利益を有する者である。 (3)引用商標について ア 引用商標は、請求人の前身、「重慶三九火鍋底料庵」により中国商標局に出願され、2007年5月28日に登録を受けた(登録第4359634号、甲4の1)。その後、2010年8月6日に請求人に譲渡された(甲4の2)。 イ 引用商標の周知性 引用商標「周君記」は、中国商標局により、火鍋用の調味料に関し、「馳名商標」として認定されている(甲5ないし7)。ここで、馳名商標とは、中国において関連公衆に広く認知され、高い名声を有する商標をいう(甲8)。馳名商標は、下記の要素を考慮して認定される。 (a)関係公衆の当該商標に対する知名度 (b)当該商標の使用継続期間 (c)当該商標のあらゆる宣伝の継続期間、程度及び地理的範囲 (d)当該商標が馳名商標として保護を受けてきた記録 (e)当該商標が馳名商標であることのその他の要因 特許庁においても、商標法第4条第1項第19号違反を理由とする商標登録異議申立において、「『馳名商標』として認定された商標は中国国内における需要者の間に広く認識されている商標といえる」として、「馳名商標」として認められていることを理由に当該引用商標の中国国内での著名性を認定した例が見られる(甲9)。 加えて、引用商標「周君記」は、重慶市の「著名商標」としても認定されている(甲10)。この「著名商標」制度は地方政府がその地域内で周知商標を保護する制度であり、前記「馳名商標」制度とは異なる制度である。 以上より、本件引用商標は、中国国内における需要者の間に広く認識されている商標といえる。 (4)本件商標と引用商標の類否について 本件商標は、黒色の簡体字風の漢字「周君記」と、その中国語読みの「ZHOUJUNJI」を赤色で上部に小さく表し、「記」の文字の左上の点を赤色の雲の如き図形と置き換えた構成である。「周君記」及び「ZHOUJUNJI」の各文字から「シュークンキ」又は「ジョウジュンジ」の称呼が生じる。なお、この「周君記」の語は、各種辞書には掲載されておらず、我が国で親しまれた成語とはいえない。したがって、特定の観念は生じない。 他方、引用商標は、漢字「周君記」からなり、「シュークンキ」の称呼を生じるため、本件商標は、その外観及び称呼において、引用商標「周君記」と極めて紛らわしい。また、観念については、「周君記」の語が我が国で親しまれた成語であるとはいえないことから両者から特定の意味合いは生じないが、我が国の通常の需要者の注意力をもってすれば、各漢字が如何様な意味合いを有しようとも、両商標を構成する「周君記」の文字が共通することにより、両商標が観念において共通することを容易に理解することが可能である。 以上より、本件商標は、引用商標と極めて類似する商標である。 (5)不正の目的の有無について ア 商標審査基準に基づく推認 商標審査基準によれば、次の(a)及び(b)の要件を満たすような商標登録出願に係る商標については、他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認して取り扱うものとする、とある(甲11)。 (a)一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであること。 (b)その周知な商標が造語よりなるものであるか、若しくは、構成上顕著な特徴を有するものであること。 以下、本件商標が当該要件を満たすか否か検討する。 引用商標「周君記」は、「火鍋用の調味料」に関し中国国内での著名性が認められ馳名商標として認定されているが、前記のとおり、本件商標はその引用商標と極めて類似する商標である。それどころか、請求人は引用商標の態様を若干変更して使用する場合があるところ(甲12の1ないし8)、本件商標は、引用商標の使用例の一と同一の構成態様である(甲12の1、2、5、7及び8)。 以上より、本件商標は、要件(a)を満たす。 なお、前記のとおり、引用商標は「火鍋用の調味料」に関し著名性が認められているのに対し、本件商標の指定商品にも「調味料」が含まれており、その他「豆板醤」及び「香辛料」も、中華料理には必須である。なお、「火鍋」とは、中国人の食文化において広く知られる鍋料理である(甲13)。このように、本件商標及び引用商標の両者は、その構成態様のみならず、使用される商品についても同一又は極めて密接な関連性を有するといえる。 他方、本件商標を構成する「周君記」の語は、上述のとおり、我が国で親しまれた成語とはいえず、我が国の需要者等にとっては一種の造語であるといえる。 以上より、本件商標は、要件(b)を満たす。 よって、本件商標は、他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認される。 イ 被請求人と請求人との密接な関係 請求人は、中国の法人「重慶香水火鍋有限公司」に対し、アメリカ、オーストラリア、フランス、日本、韓国、香港、マカオ並びに台湾における引用商標「周君記」の準独占的使用許諾をしているところ(甲14)、2010年から2011年にかけて、被請求人がこの重慶香水火鍋有限公司から請求人の製品を少なくとも5回輸入した記録が残っている(甲15の1ないし5)。そして、そのうちの2回は、本件商標の出願日前に行われている。 被請求人「陽光産業株式会社」は、1990年8月から東京都豊島区西池袋にて「陽光」なる中国食材・雑貨店を営む他、池袋・川崎等を中心に幅広くビジネスを展開する「陽光グループ」の一企業である(甲16の1及び2)。被請求人は、自身のウェブサイトにおいて、請求人の製品を販売しているほか(甲16の3)、請求人の名称を「関連企業」として掲載している(甲16の4)。また、貿易相手としても掲載している(甲16の5)。 さらに被請求人は、自らが発行する中国語新聞「陽光導報」において、繰り返し請求人の商品の広告を行っているが(甲17の1ないし9)、そこでは、自らを請求人の「総代理店」と名乗っている(甲17の10)。 このように、請求人と被請求人の間には、密接な商取引関係が認められる。それどころか、被請求人は自身のウェブサイト等において請求人との商取引関係を対外的にアピールしている。それにもかかわらず、被請求人は、請求人に無断で、本件商標を出願し、登録を得たのである。 なお、本件審判の各証拠においては、「陽光産業株式会社」(原簿、甲1の2)、「SUN SHINE INDUSTRY CO.,LTD」(甲15の1)、「SUN SHINE INDUSTRY LTD.」(甲15の2)、「YOKOU INDUSTRY CO.,LTD」(甲15の4)、「陽光グループ本社」(甲16の3)、「サンシャイン産業株式会社」(甲17の10)など複数の法人が登場するが、住所や電話番号の共通性などから、これらは全て実質的に被請求人と同一の法人であることが推認される(甲18)。 ウ 以上、ア及びイより、被請求人が本件商標を偶然採択したとはいい難く、被請求人は、引用商標が中国国内で著名となっていることを熟知しながら、引用商標が我が国で商標登録されていないことを奇貨として、本件商標を出願し登録を得ることで引用商標に蓄積された名声・信用・顧客吸引力にフリーライドしようとしたものと判断せざるを得ない。 したがって、被請求人の本件商標の使用が「不正の目的」に基づく行為であることは明らかである。 (6)小括 以上、(1)ないし(5)を総合的に勘案すると、本件商標は、その出願前から請求人が自己の商標として請求人の本国である中国において「火鍋用の調味料」に使用した結果取引者・需要者の間に広く認識されている引用商標と同一又は類似であること、並びに、被請求人が不正の目的をもって本件商標を使用していることが明らかである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当し、その登録を認められるべきではなかった。 3 商標法第4条第1項第7号について 前述のとおり、被請求人が、中国国内で著名な商標と認定された請求人の商標を、我が国で登録されていないことを奇貨として、請求人に無断で我が国に出願し登録を受けたという行為は、たとえ、自己の事業を保護するとの意図に基づき行われたものであるとしても、我が国の一般的な商取引界では極めてアンフェアであり、著しく社会的妥当性を欠き、到底正当化し得ないものである。 このような商標保護が正当化されるとするならば、我が国商標制度に対する外国からの信頼を著しく損なうことになり、ひいては我が国の信用にも影響を与えかねない。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当し、その登録を認められるべきではなかった。 4 結び 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号に該当し、その登録を認められるべきではなかった。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。 1 理由 被請求人の主張は、被請求人には不正の目的がないということである。 平成23年6月ころに、被請求人は、請求人との間で被請求人の商品である火鍋用の調味料についての日本における独占販売契約を締結した。しかし、これを書面化することはなかった。 しかるに、日本においては、請求人の引用商標は商標登録されていなかった。 日本においては、請求人の商品である調味料についての日本における独占販売契約を被請求人が有しているので、これを日本において販売できるのは被請求人のみである。そして、それ以前において被請求人は、多大な広告費用をかけて、日本において、請求人の商品を宣伝して販路を拡大してきた。また、被請求人において、日本で売れるような調味料になるように中国で販売している商品とは異なる内容の商品を提案し、これを請求人において製造し、被請求人において日本で販売してきたのである。このような営業努力にもかかわらず、引用商標と同一ないし類似の商標を何者かが登録して類似の調味料を販売したり、あるいは独占販売契約を破って何者かが中国から請求人の調味料を輸入して販売することを防ぐために、本件商標を登録したのである。 そしてもとより、被請求人は、請求人の商品の標章としてのみ本件商標を使用している。 本件商標を登録した事情は、上記のとおりであり、不正の利益を得る目的もなければ、他人に損害を与える目的もなく、その他の不正の目的もない。 第5 当審の判断 1 審判請求の利益について 請求人は、本件商標と類似すると主張する商標を登録出願していることが認められ(甲3)、また、職権による調査によれば、当該登録出願は本件商標を引用した拒絶理由通知を受けていることが確認できる。したがって、審判請求の利益を有するとの請求人の主張は妥当なものといえる。 請求人の上記主張に対して、被請求人は何ら反論をしていない。 よって、請求人は、本件審判請求の利益を有するものである。 2 商標法第4条第1項第19号について (1)引用商標の中国における周知・著名性について ア 事実認定 請求人が提出した甲各号証によれば、以下の事実が認められる。 (ア)「周君記」の文字からなる引用商標は、「重慶三九火鍋底料庵」により中国商標局に出願され、2007年5月28日に登録第4359634号として登録を受けたこと(甲4の1)。その後、引用商標は、2010年8月6日に請求人に譲渡されたこと(甲4の2)。 (イ)引用商標は、商品「火鍋用の調味料」について、2009年4月24日に中国商標局により「馳名商標」として認定されたこと(甲5ないし7)。なお、「馳名商標」とは、中国において関連公衆に広く知られ高い名声を有する商標について、中国商標局により認定されるものであること(甲8)。また、「火鍋」とは、中国の鍋料理のことをいうものであること(甲13)。 (ウ)請求人は、引用商標と類似する商標を使用した商品を扱っており(甲2及び甲12)、この中には本件商標と同一構成の商標の使用も認められ(甲12の1、2、5、7及び8)、本件商標登録出願前である2011年5月20日における使用も確認できること(甲12の2)。 (エ)請求人は、2010年6月9日に、中国法人重慶香水火鍋有限公司に対し、2010年8月6日から2017年5月27日の期間について、日本を含む複数の国(地域を含む)について引用商標の使用許諾契約をしていること(甲14)。 (オ)商標権者は、本件商標の登録出願前である2010年1月13日から本件商標の登録直後である2011年11月22日の間において、5回にわたり、重慶香水火鍋有限公司から請求人の商品を輸入していること(甲15の1ないし5)。 イ 判断 前記アによれば、2009年4月24日に「馳名商標」の認定を受けた引用商標を付した請求人商品は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標の使用許諾を受けた重慶香水火鍋有限公司と商標権者との取引の中で我が国に輸入され、これを商標権者が国内において販売していたと推認し得るものである。 そして、引用商標は、2009年4月24日に「馳名商標」の認定を受けたことから、当時中国国内において著名性を有していたことがうかがわれ、その後、引用商標を付した請求人商品は、本件商標の登録出願前である2011年5月20日には中国内で取り扱われ、該商品を本件商標の登録直後まで商標権者が我が国に輸入したことなどからみれば、引用商標の著名性は、輸入時に中国国内において継続していたと推認し得るものである。 (2)本件商標と引用商標の類否について ア 外観について 本件商標は、前記第1に示したとおり、欧文字と漢字の二段の構成からなるところ、漢字部分は簡体字風に「周君記」と表し、該「記」の文字はその左上の点と表すところを赤色の雲の如き図形と置き換え、その上部に位置する「ZHOUJUNJI」の欧文字は赤色で小さく表したものである。その外観についてみるに、上段の欧文字部分は、その下段の漢字部分の読みをローマ字表記したものとは理解できず、両者とも相互に関連を有しない造語からなるものと認識されるとみるのが相当である。そして、上段の欧文字部分は、小さく表されているものの赤書きされ、一方、下段の漢字部分は、大きく顕著に特徴を有して表されていることから、両者それぞれが独立して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部に当たるものと判断することができる。 他方、引用商標は、前記第2に示したとおり、漢字部分は簡体字風に「周君記」と表したものである。 イ 称呼について 本件商標の要部と認められる漢字部分は、簡体字風にややデザイン化してなるものの、漢字「周君記」を表したものと容易に認められ、その各文字自体は、我が国において親しまれた語でもあることから、これを音読みに「シュウクンキ」の称呼が生じるとみるのが相当である。また、本件商標のもう一つの要部と認められる「ZHOUJUNJI」の欧文字部分からは、これをローマ字読みに「ゾウジュンジ」の称呼が生じるとみるのが相当である。 他方、引用商標は、「周君記」の漢字を表したものであるから、これより「シュウクンキ」の称呼が生ずるものである。 ウ 観念について 本件商標及び引用商標において構成される「周君記」の漢字は、全体として我が国で親しまれた成語とはいえず、また、本件商標の「ZHOUJUNJI」の欧文字部分も親しまれた成語とはいえないことから、本件と引用の両商標からは特定の観念は生じないというべきである。 オ 類否判断 本件商標と引用商標とは、その構成全体として外観上の違いが認められるが、漢字部分についてみれば、両者は、ともに「周君記」の漢字からなり、本件商標においてややデザイン化したところが見受けられるとしても、近似する外観を呈するということができる。 また、本件商標と引用商標は、ともに「シュウクンキ」の称呼を共通にするものである。 そして、観念においては、両者は、漢字部分についてみれば、ともに「周君記」の漢字からなり、これが観念を生じない造語とはいえ類似しないものとまでいうことはできない。 してみれば、両者は、観念において比較することができないものの、本件商標の漢字部分と引用商標とは外観上近似し、称呼が同一であることから、両商標は互いに類似するというのが相当である。 そして、引用商標の取扱商品は「火鍋用の調味料」であるから、本件商標の指定商品は、これと抵触するものである。 (3)不正の目的をもって使用するものであるか否かについて 請求人は、本件商標と同一構成の商標を、遅くとも本件商標の登録出願前である2011年5月20日に使用していたことが認められる(甲12の2)ところ、被請求人は、引用商標の使用許諾を受けた重慶香水火鍋有限公司を経て、本件商標の登録出願日前に2回、本件商標の登録出願中に2回、本件商標登録後に1回、我が国に輸入したことが認められる(甲15(枝番号を含む。))。そして、甲第15号証の2及び甲第15号証の4によれば、その取扱商品は「調味料」であることが認められる。 また、被請求人は、本件商標登録出願日前に、被請求人が発行した中国語新聞「陽光導報」において、本件商標が使用された請求人の商品の広告を行っていることが認められ(甲17(枝番号を含む。))、かつ、当該商標が中国における馳名商標であることを表示している。 さらに、甲第16号証の3は、2013年7月25日に紙出力された被請求人のインターネットのホームページの写しであるところ、これによれば、被請求人は、本件商標及び引用商標が使用された商品を取り扱っていることが認められる。 そうとすれば、被請求人は、重慶香水火鍋有限公司との取引によって、引用商標が中国商標により馳名商標と認定され、かつ、本件商標と同一構成の商標が、請求人の商品である「火鍋用の調味料」に使用されていることを知りながら、それが我が国で登録されていないことを奇貨として、請求人に承諾を得ずに剽窃的に本件商標を登録出願したものと推認できるものである。 そして、本件商標が登録された後においても、請求人から本件商標及び引用商標が付された商品「火鍋用の調味料」の我が国における独占販売契約を受けることなく、本件商標の使用を継続しているところである。 このような被請求人による一連の行為は、本件商標が付された商品「火鍋用の調味料」の製造者である請求人との関係において、取引上の信義則に反するものであり、引用商標に蓄積された信用にフリーライドするものであって、かつ、引用商標の正当な権利者である請求人及び同人の許諾を受けた者による、請求人商標が付された商品の我が国における取引を妨げ、本件商標を被請求人が独占的に使用することで自己の利益を図ることを目的としたものというべきである。 この点について、被請求人は、商品の独占販売契約の書面自体は作成していないとしても、請求人とは上記商品の独占販売契約を交わしているので、不正の目的がないと主張する。 しかしながら、被請求人は、上記主張をするのみで、これを立証すべく証拠の提出は何らされていない。 さらに、被請求人は、引用商標と同一ないし類似の商標の我が国における他者による登録を阻止し、あるいは、引用商標と同一ないし類似の商標が使用された調味料の第三者による輸入行為を防ぐために本件商標を登録出願した旨答弁書で述べているが、被請求人は、我が国において本件商標の登録出願をすることについて、請求人から承諾を得ていたことの立証もない。 したがって、被請求人は、請求人に無断で本件商標を登録出願したものというべきであり、その行為は、たとえ自己の事業展開に必要となる商標であったとしても、不正の目的をもって使用をするためのものというべきである。 よって、被請求人には不正の目的がないとする被請求人の上記主張は、採用することはできない。 (4)小括 してみれば、本件商標は、請求人の業務に係る商品である「火鍋用の調味料」を表示するものとして、本件商標登録出願時及び登録時において中国で周知・著名となっていた引用商標と類似の商標であつて、不正の目的をもって使用をするものというべきであるから、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、請求人の主張する他の理由について言及するまでもなく、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 1 本件商標 (色彩については、原本参照のこと。) 2 引用商標 (色彩については、原本参照のこと。) |
審理終結日 | 2014-07-03 |
結審通知日 | 2014-07-07 |
審決日 | 2014-07-22 |
出願番号 | 商願2011-43911(T2011-43911) |
審決分類 |
T
1
11・
222-
Z
(X30)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 薩摩 純一 |
特許庁審判長 |
関根 文昭 |
特許庁審判官 |
手塚 義明 酒井 福造 |
登録日 | 2011-12-22 |
登録番号 | 商標登録第5460108号(T5460108) |
商標の称呼 | シュークンキ、ジュオウジュインジ |
代理人 | 大村 昇 |
代理人 | 高梨 範夫 |
代理人 | 村上 健次 |
代理人 | 小林 久夫 |
代理人 | 安島 清 |
代理人 | 田島 浩 |