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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W43 審判 一部申立て 登録を維持 W43 審判 一部申立て 登録を維持 W43 審判 一部申立て 登録を維持 W43 審判 一部申立て 登録を維持 W43 審判 一部申立て 登録を維持 W43 審判 一部申立て 登録を維持 W43 審判 一部申立て 登録を維持 W43 |
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管理番号 | 1290776 |
異議申立番号 | 異議2013-900211 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2013-06-24 |
確定日 | 2014-08-07 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5568635号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5568635号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5568635号商標(以下「本件商標」という。)は、「THE ONE’S HOTEL」の文字を標準文字により表してなり、平成24年9月25日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,会議室の提供,展示施設の貸与,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く)」及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同25年2月15日に登録査定され、同年3月22日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下の(1)ないし(3)のとおりであり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。 (1)国際登録第739344号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、2002年(平成14年)10月15日に国際商標登録出願(事後指定)、第35類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載の役務を指定役務として、平成16年1月9日に設定登録されたものである。 (2)国際登録第1076051号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2010年(平成22年)10月29日にGermanyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,2011年(平成23年)2月15日に国際商標登録出願、第35類及び第43類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、平成24年4月27日に設定登録されたものである。 (3)国際登録第1150554号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、2012年(平成24年)9月14日にGermanyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,同年11月5日に国際商標登録出願、第35類及び第43類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、平成25年10月25日に設定登録されたものである。 以下、引用商標1ないし3を一括して、単に「引用商標」ということがある。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号、同項第19号及び同法第8条第1項に該当するから、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第40号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項について ア 本件商標の称呼及び観念について 本件商標は、「THE ONE’S HOTEL」の文字を標準文字により表してなるところ、その構成中、「THE」の文字部分は、英語の定冠詞であり、特定の観念を生じさせない部分であって、自他商品役務の識別機能の弱い部分である。 そして、「HOTEL」は、「ホテル」を指す語であり、「旅館。特に西洋風の宿泊施設」の意味を有する(甲9)から、該部分は、役務の提供場所を表す語であるため、自他商品役務の識別機能が発揮することができない、もしくは弱い部分である。 さらに、「ONE’S」のうち「’S」の文字部分は、所有格を表す語であって、自他商品役務の識別機能の弱い部分である。 そうすると、本件商標においては、「ONE」の文字部分が自他商品役務の識別機能を発揮する特徴的部分であり、該部分に相応して、「ワン」の称呼及び「1」の観念が生じるというべきである。 また、本件商標からは、その構成より、英語の定冠詞である「THE」の文字部分が省略されて称呼されることもあるから、「ONE’S HOTEL」の文字部分に相応して、「ワンズホテル」の称呼及び「1ホテル」程度の観念も生じるというべきである。 イ 引用商標1の称呼及び観念について 引用商標1の構成中、「MOTEL」の文字部分は、「モーテル」を指し、「自動車旅行者のための宿泊所」の意味を有する(甲10)から、該部分は、役務の提供場所を表す語であるため、自他商品役務の識別機能が発揮することができない、もしくは弱いといえ、引用商標1の文字部分のうち、「ONE」の文字部分が、自他商品役務の識別機能を発揮する特徴的部分である。 そうすると、引用商標1からは、該文字部分に相応して、「ワン」の称呼及び「1」の観念を生じ、また、引用商標1は、数字の「1」をモチーフとした図形を含んでおり、該図形部分より、数字の「ONE」を想起させるため、該図形部分からも「ワン」の称呼及び「1」の観念を生じるというべきである。 さらに、引用商標1からは、その「MOTEL ONE」の文字部分に相応して、「モーテルワン」の称呼及び「モーテル1」程度の観念が生じる。 ウ 引用商標2の称呼及び観念について 引用商標2は、その構成中、「OnE」の文字部分から、「ワン」の称呼及び「1」の観念を生じる。 また、引用商標2は、「OnE」の文字部分の左側に、見やすく「1」をモチーフとした図形が配されているため、需要者又は取引者が引用商標2に接したときには、「1」が強く印象に残り、図形部分からも、「ワン」の称呼及び「1」の観念を生じる。 エ 引用商標3の称呼及び観念について 引用商標3の構成中、「mOTEL」の文字部分は、「モーテル」を指し、該文字は、上述のとおり、役務の提供の場所を表す語であるため、自他商品役務の識別機能を発揮することができないか、弱いため、引用商標3の文字部分のうち、「OnE」の文字部分が自他商品役務の識別機能を発揮する特徴的部分である。 そうすると、引用商標3からは、該文字部分に相応して、「ワン」の称呼及び「1」の観念が生じる。 また、引用商標3は、数字の「1」をモチーフとした図形を含んでおり、数字の「ONE」を想起させるため、該図形部分からも、「ワン」の称呼及び「1」の観念が生じる。 さらに、引用商標3からは、その「mOTEL OnE」の文字部分に相応して、「モーテルワン」の称呼及び「モーテル1」程度の観念が生じるものというべきである。 オ 本件商標と引用商標の対比について 本件商標と引用商標とは、「ワン」の称呼及び「1」の観念を生じ、称呼及び観念上紛らわしい類似の商標である。 また、本件商標から生じる「ワンズホテル」と引用商標1及び3から生じる「モーテルワン」の称呼を比較すると、「ワン」及び「テル」の部分において共通する。ここで、本件商標の「ホテル」及び引用商標1の「モーテル」の部分は、上述のとおり、自他商品役務の識別機能が発揮することができないか、弱い部分であるから、該部分以外の「ワン」の部分がとりわけ強調して称呼され、互いに紛らわしいというべきである。 さらに、本件商標から生じる「1ホテル」と引用商標1及び3から生じる「モーテル1」の観念を比較しても、「ホテル」と「モーテル」が宿泊施設という点で共通し、「motel(モーテル)」の語源は、「motor」(自動車)と「hotel」(ホテル)の合成語(甲10)であることから、「モーテル」は、「ホテル」の観念を内包するため、「ホテル」と「モーテル」の観念は、互いに極めて類似し、全体から生じる「1ホテル」と「モーテル1」の観念は、極めて類似する。 そうすると、本件商標と引用商標1及び3との全体を比較しても、本件商標と引用商標1及び3は、称呼及び観念上紛らわしく、互いに類似の商標である。 カ 具体的な取引の実情について ホテルの名称には、「ホテル」の語が語尾及び語頭に付くものがあるが、需要者又は取引者は、しばしば、その名称から、「ホテル」を省略して称呼することが認められ、このような状況のもとでは、「HOTEL」や「MOTEL」の語が、語頭及び語尾のいずれに付いているかを、需要者又は取引者は、特段意識することなく取引に当たっているものということができる。 キ 出所の混同について 具体的な取引の実情に鑑みれば、需要者又は取引者は、本件商標の「HOTEL」や引用商標1の「MOTEL」の語は省略して取引に当たることが多いと解され、その特徴的部分である「ONE」の部分を取引の際に用いることが多い。また、「HOTEL」と「MOTEL」は、宿泊施設を表す語として広く用いられている点で共通し、また、一の会社が「ホテル」及び「モーテル」を仕様の異なる宿泊施設として提供することは、通常考えられるところである。 このような状況のもとでは、需要者又は取引者は、「HOTEL」と「MOTEL」の差異によって、役務の出所を識別することは考えにくく、該文字部分以外の特徴的部分である「ONE」に着目して役務の出所を識別するものと解するのが相当である。 以上のとおり、具体的な取引の実情を検討しても、本件商標と引用商標に接した需要者又は取引者が、役務の出所につき誤認混同するおそれがあるというべきである。 ク 小括 以上より、本件商標と引用商標1及び2とは、類似する商標であって、また、本件商標の指定役務のうち「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供」は、引用商標1の指定役務のうち「宿泊施設の提供及びケータリングサービス,宿泊の予約の取次ぎ」と類似し、引用商標2の指定役務のうち「飲食物の提供,一時宿泊施設の提供,モーテル及びホテルにおける宿泊施設の提供,宿泊の予約の取次ぎ」と類似する。 よって、本件商標は、その指定役務のうち「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供」に係る部分について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 また、本件商標と引用商標3とは、類似する商標であって、本件商標の指定役務のうち「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供」は、引用商標3の指定役務のうち「飲食物の提供,一時宿泊施設の提供,モーテル及びホテルにおける宿泊施設の提供,宿泊の予約の取次ぎ」と類似する。 よって、引用商標3が登録されれば、本件商標は、その指定役務のうち「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供」に係る部分については、商標法第8条第1項に違反して登録されたものである。 (2)商標法第4条第1項第10号について ア 申立人の使用に係る商標 申立人の使用に係る商標は、別掲4のとおり、白色で「mOTEL OnE」の文字を横書きし、その上部真ん中やや右寄りに「1」の周りを楕円で囲んだ水色の図形を表してなる商標(以下「使用商標1」という。)、別掲3のとおり、黒色で「mOTEL OnE」の文字を横書きし、その上部真ん中やや右寄りに「1」の周りを楕円で囲んだ水色の図形を表してなる商標(以下「使用商標2」という。)、「mOTEL OnE」の文字を横書きしてなる商標(以下「使用商標3」という。)及び「MOTEL ONE」の文字を横書きしてなる商標(以下「使用商標4」という。)である。 以下、使用商標1ないし4を一括して、単に「使用商標」ということがある。 イ 使用商標の周知著名性について 申立人は、ドイツのミュンヘンに所在し、主として、宿泊施設を提供する業務を行う企業であり、使用商標を用いてホテルチェーンを運営している。 申立人は、使用商標を使用し、ドイツ、ヨーロッパ諸国及び世界各国において広く認識されている。それに伴い、日本のホテル予約サイトにおいても多数紹介されるに至り,広く知られるところとなっている(甲32ないし甲40)。 ウェブサイトには、本件商標の登録出願前から、「MOTEL ONE」に対する口コミが多く書き込まれており、申立人の業務に係る「MOTEL ONE」が日本の旅行客にも利用され、広く知られ(甲32)、旅行口コミサイトにおけるドイツのホテルのランキングでは、複数の「MOTEL ONE」が上位に選出されている(甲33)。現在は、インターネットで簡単に海外のホテルを予約することができ、多くの旅行者がホテル予約サイトからホテルを予約するという実情がある。 このような状況において、様々な日本のホテル予約サイトで「MOTEL ONE」が取り上げられていることは、申立人の使用商標が日本において広く知られていることを裏付けるものである。 よって、申立人の使用商標は、ドイツ、ヨーロッパ諸国及び世界各国並びに日本において、本件商標の登録出願前から広く認識されていたことがわかる。 ウ 小括 以上によれば、使用商標は、本件商標の登録出願前から、申立人の役務の出所を表す表示として広く認識されるに至っていることがわかる。また、本件商標と使用商標が類似することは、上述のとおり、本件商標と引用商標1ないし3が類似することから明らかである。 さらに、申立人による使用商標に係る役務は「宿泊施設の提供」であり、本件商標の指定役務のうち「宿泊施設の提供」と同一である。 したがって、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において周知となっている使用商標と類似するものであり、本件商標の指定役務のうち「宿泊施設の提供」は、使用商標と同一である。 よって、本件商標は、その指定役務のうち「宿泊施設の提供」に係る部分については、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。 (3)商標法第4条第1項第15号について ア 使用商標の周知性及び本件商標と使用商標の類否について 上述のとおり、使用商標は、本件商標の登録出願前から申立人によって使用され、需要者又は取引者の間で広く知られている。そして、本件商標と使用商標が類似することは、上述のとおり明らかである。 イ 出所の混同について 使用商標の周知性を鑑みれば、本件商標がその指定役務について使用されれば、役務の出所について混同が生じるおそれがあることは明らかである。 本件商標の指定役務のうち「宿泊施設の提供」は、使用商標に係る役務の「宿泊施設の提供」と同一であって、「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」は、宿泊施設に関する役務という点で共通し、「動物の宿泊施設の提供」は、対象が動物である点が異なるだけで、同じ宿泊施設を提供する役務である。「飲食物の提供」は、宿泊施設においても飲食物の提供のサービスが行われ、「会議室の提供,展示施設の貸与」は、宿泊施設等でも会議室や展示室を提供する点で、「宿泊施設の提供」と関連性が強い。また、「高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く)」も、宿泊する場所の提供という点で共通するものである。 そうすると、使用商標に係る役務と本件商標の指定役務は、互いに関連性の強い役務である。 また、今日、企業は、経営の多角化により、企業のさらなる発展を目指すところであり、企業がすでに行っている業務と関連性の強い業務について企業が着手するということは容易に想像できる。 このような状況下で、日本において周知である使用商標に類似する本件商標がその指定役務について使用された場合、需要者又は取引者は、申立人と経済的・組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、役務について混同するおそれがあることは明らかである。 ウ 小括 よって、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務と混同が生じるものであるから、本件商標の指定役務に係る部分については、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 (4)商標法第4条第1項第19号について 使用商標と類似する本件商標が付された本件商標の指定役務に接する需要者又は取引者は、その出所を誤認することとなるため、本件商標の採択自体、申立人の有する使用商標の業務上の信用にフリーライドする意図を有するものであることが明らかである。 また、「MOTEL ONE」が数々の賞を受賞していることからも、申立人の使用商標の価値は極めて高く、本件商標は、その価値に乗じようとする意図で登録出願されたものとみるのが相当である。 さらに、使用商標と類似する本件商標の採択は、申立人の使用商標を希釈化させる意図を有するとみるのが相当であり、申立人に損害を加える目的を有することを十分に推認し得るというべきである。 よって、本件商標は、その指定役務に係る部分については、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。 (5)商標法第4条第1項第7号について 使用商標は、申立人が独自に採用したものであるところ、これに類似する本件商標の登録出願は、申立人の使用に係る商標が周知となっているのを知った上で登録出願されたものであると考える得る。とりわけ、「MOTEL ONE」は、数々の賞を受賞しており、申立人による使用商標の価値は高いものであるから、本件商標は、その価値に乗じ、剽窃的に登録出願されたものと認められ、本件商標の登録出願は、公正な秩序を乱すものというべきである。 また、需要者又は取引者は、本件商標に接したときに、日本において周知である「MOTEL ONE」に関連のホテルであると認識して取引にあたるおそれがある。これは、商取引の秩序を乱し、社会公共の利益に反するものといわざるを得ない。 よって、本件商標は、その指定役務に係る部分については、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。 4 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項該当性について ア 本件商標 本件商標は、「THE ONE’S HOTEL」の文字を標準文字により表してなり、その構成中、「THE」の文字は、英語の定冠詞であって、「ONE’S」の文字は、「人の,その人の」の意味、「HOTEL」の文字は、「ホテル。旅館。」の意味を有し、これらの語は、一般に知られている平易な英語といえるから、本件商標の構成文字全体から「ザワンズホテル」の称呼を生じ、よどみなく一連に称呼することができるものである。 そして、本件商標は、その構成中の各単語を一連にした意味合いが想起され得るものの、特定の意味を有する語句であると直ちに理解、認識されるものではなく、また、役務の提供における業態を表す語である「HOTEL」の文字を有していることから、全体としてホテルの名称としてみるのが自然である。 してみれば、本件商標は、上記のとおり、構成全体から「ザワンズホテル」の称呼を生じるものであるほか、定冠詞の「THE」が省略されて呼ばれることも多いことから、本件商標は、「ワンズホテル」の称呼をも生じるものといえる。 しかしながら、本件商標は、その構成中の「ONE’S」又は「ONE」の文字部分のみが分離、抽出されて認識される特段の事情は見いだし得ない。 イ 引用商標 引用商標は、前記2のとおり、「MOTEL ONE」の文字とその背景中央に、数字「1」をモチーフとした図形を配してなるもの(引用商標1)、数字「1」をモチーフとした水色図形の右側に「OnE」の文字を横書きしたもの(引用商標2)又は「mOTEL OnE」の欧文字を横書きし、前記「L」と「O」の文字の上部に数字「1」をモチーフとした水色図形を配してなるもの(引用商標3)である。 そして、引用商標1及び3は、それぞれ「MOTEL ONE」、「mOTEL OnE」の文字を要部とするものといえ、その構成中、「MOTEL」又は「mOTEL」の文字は、「自動車旅行者のための宿泊所。」の意味、「ONE」又は「OnE」の文字は、「1」の意味を有し、これらの語は、一般に知られている平易な英語といえるから、引用商標1及び3の構成文字全体から「モーテルワン」の称呼を生じ、よどみなく一連に称呼することができるものであって、その構成中の各単語を一連にした意味合いが想起され得るものの、特定の意味を有する語句であると直ちに理解、認識されるものではないから、特定の意味を有することのない一体のものとして看取、把握されるというべきである。 また、引用商標2は、数字「1」をモチーフとした水色図形の右側に「OnE」の文字を横書きしてなるから、該構成文字に相応して「ワン」の称呼を生じ、「1」の観念を生じるといえる。 ウ 本件商標と引用商標との類否について (ア)外観 本件商標は、「THE ONE’S HOTEL」の文字を横書きしてなるのに対し、引用商標は、それぞれ「MOTEL ONE」若しくは「mOTEL OnE」の文字と数字「1」をモチーフとした図形との結合からなり、又は数字「1」をモチーフとした水色図形と「OnE」の文字との結合からなるものであるから、外観上、これらが互いに紛れるおそれはない。 (イ)称呼 本件商標から生ずる「ザワンズホテル」又は「ワンズホテル」の称呼と引用商標1及び3から生ずる「モーテルワン」の称呼を比較すると、両称呼は、その音構成中、「ワン」の部分において共通にするとしても、構成音数を異にするのみならず、それぞれを一連に称呼するときは、全体の音感、音調が相違し、明瞭に聴別できるものである。 また、本件商標から生ずる「ザワンズホテル」又は「ワンズホテル」の称呼と引用商標2から生ずる「ワン」の称呼を比較すると、両称呼は、明らかに聴別できるものである。 (ウ)観念 本件商標と引用商標1及び3は、ともに特定の意味を有することのない造語からなるものであるから、観念上類似するとはいえない。 また、「1」の観念を生じる引用商標2と本件商標についても、観念上類似するとはいえない。 (エ)以上によれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛れるおそれのないものであるから、両商標は、非類似の商標というべきである。 エ したがって、本件商標は、引用商標1及び2との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく、また、本件商標は、引用商標3との関係において、同法第8条第1項に該当するものではない。 (2)商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について ア 使用商標について 申立人が引用する使用商標は、別掲4のとおり、黒色四角形内の下方に「mOTEL OnE」の欧文字を白抜きにし、前記「L」と「O」の文字の上部に数字「1」をモチーフとした青色図形を配してなるもの(使用商標1)、別掲3のとおり、「mOTEL OnE」の欧文字を横書きし、前記「L」と「O」の文字の上部に数字「1」をモチーフとした水色図形を配してなるもの(使用商標2)、「mOTEL OnE」の文字を横書きしてなるもの(使用商標3)又は「MOTEL ONE」の文字を横書きしてなるもの(使用商標4)であるところ、使用商標から生じる「モーテルワン」の称呼は、よどみなく一連に称呼することができるものであって、特定の意味を有することのない一体のものとして看取、把握されるというべきである。 イ 本件商標と使用商標との類否について 本件商標と使用商標とは、前記(1)ウにおいて、本件商標と引用商標との類否について判断したと同様に、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 ウ 使用商標の著名性について 申立人の提出に係る証拠をみると、「press info」(甲26)に「Equity investment to support Motel One’s strategic expansion」(LONDON,30 July,2007)の見出しの下、「モーテル・ワンは、ドイツにおいて格安ホテルを運営する主要で急成長する会社である。」旨の記載があり、2012年及び2013年の申立人パンフレット(甲13及び甲15)に「MOTEL ONE」の文字が、申立人の業務に係る役務「宿泊施設の提供」を表示する商標として使用されている。また、申立人のウェブサイト(甲24)には、「ドイツサービスクオリティ研究所は、モーテル・ワンに三度1位を与えた。そのホテルグループはすでに2010年と2012年に”最良の格安ホテル”を受賞し、2011年に観光事業部門の”ドイツサービス賞”を受賞した」旨の記載があるものの、申立人提出に係るこれらの証拠は、すべて英文によるものである(甲5ないし甲8及び甲11ないし甲31)。 また、ウェブサイトにおけるページ(甲32ないし甲40)には、「Motel One Muenchen-Sendl.Tor」、「モーテル ワン ハンブルク エアポート/Motel One Hamburg Airport」、「モーテル ワン ミュンヘン- ドイチェス ムジウ/Motel One Munchen-Deutsches Museum」、「モーテル ワン ニュルベルグ シティ/Motel One Nuernberg-City」、「モーテル ワン ベルリン-クダム/Motel One Berlin-Ku’damm」などの表示で紹介されている。 しかしながら、提出された証拠によっては、我が国において、申立人に係る使用商標についての開始時期、広告・宣伝の方法及び回数やその内容等についての状況が不明確である。 そうすると、申立人に係る使用商標がドイツにおいて使用されているとしても、申立人の宿泊施設の提供を表示する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国において周知、著名であったものと認めることができない。 エ 小括 本件商標と使用商標とは、前記イのとおり、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であり、また、使用商標は、我が国において、周知、著名であったものと認められないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号所定の要件を充足するものではなく、さらに、本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者が、該役務を申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように連想、想起することはなく、その出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものではない。 (3)商標法第4条第1項第19号該当性について 本件商標は、前記(2)イのとおり、使用商標とは、非類似の商標であり、また、申立人の提出に係る証拠のいずれをみても、商標権者が本件商標を使用商標に化体した信用、名声などを毀損させ、その出所表示機能を希釈化させるといった不正の目的をもって使用すると認めるに足る事実は、見いだし得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第7号該当性について 申立人は、数々の賞を受賞している使用商標と類似する本件商標の登録出願は、申立人の使用商標が周知であったことを知った上で、使用商標の価値に乗じ剽窃的に登録出願されたものであるから、商取引の秩序を乱し、社会公共の利益に反する旨述べている。 しかしながら、申立人の提出に係る甲各号証からは、使用商標がドイツで使用され、2010年と2012年に”最良の格安ホテル”を受賞し、2011年に観光事業部門の”ドイツサービス賞”を受賞しているものの、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたとするのは認め難く、本件商標と使用商標とは、前記(2)イのとおり、互いに紛れるおそれのない非類似のものであることから、使用商標の価値に乗じ剽窃的に登録出願したものということはできない。 してみれば、商標権者が本件商標を登録出願し、商標登録を受けた行為が、直ちに公正な取引秩序を乱すものであって、商取引の秩序に反するものともいえない。 その他、本件商標が、不正な意図をもって登録出願されたものとして、その経緯において著しく社会的妥当性を欠くものがあるということもできない。 したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標といえないから、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。 (5)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号、同項第19号及び同法第8条第1項に違反してされたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 1 引用商標1 ![]() 2 引用商標2 ![]() (色彩については、原本参照。) 3 引用商標3及び使用商標2 ![]() (色彩については、原本参照。) 4 使用商標1 ![]() (色彩については、原本参照。) |
異議決定日 | 2014-07-30 |
出願番号 | 商願2012-77308(T2012-77308) |
審決分類 |
T
1
652・
263-
Y
(W43)
T 1 652・ 4- Y (W43) T 1 652・ 22- Y (W43) T 1 652・ 271- Y (W43) T 1 652・ 261- Y (W43) T 1 652・ 25- Y (W43) T 1 652・ 222- Y (W43) T 1 652・ 262- Y (W43) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 杉本 克治 |
特許庁審判長 |
関根 文昭 |
特許庁審判官 |
酒井 福造 寺光 幸子 |
登録日 | 2013-03-22 |
登録番号 | 商標登録第5568635号(T5568635) |
権利者 | 株式会社湖山亭うぶや |
商標の称呼 | ザワンズホテル、ワンズホテル、ザワンズ、ワンズ |
代理人 | 山崎 行造 |