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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服2014582 審決 商標
不服201320999 審決 商標
不服201210340 審決 商標
異議2013900186 審決 商標
異議2013900392 審決 商標

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審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W35
管理番号 1289815 
異議申立番号 異議2013-900185 
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-08-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-06-07 
確定日 2014-07-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第5564051号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5564051号商標の指定役務中、第35類「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」についての商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5564051号商標(以下「本件商標」という。)は、「おもてなし」の平仮名を標準文字で表してなり、平成24年4月4日に登録出願、第35類「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」のほか、第35類、第36類及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同25年2月1日に登録査定、同年3月8日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、登録異議の申立ての理由を要旨次のように主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第38号証を提出した。
本件商標「おもてなし」は、「ふるまい」等の意味を有する「持成(もてなし)」に、丁寧の意味を表す接頭語「お」を付けてなる語であることは明白である。
そして、日本社会の接客に関する様々な場面では、接客を行う際に心を込めて、質の高い対応を提供することが良いことと考えられており、実際に行われているところ、そのことは、「おもてなし」と表現され、広く認識されているものであり、医療、宿泊、交通、飲食、観光等に関連した多くの業界において、心を込めて接すること、質の高い接客を提供することを表す語として「おもてなし」の語が広く使用されているものである(甲1?甲7)。
さらに、本件異議申立に係る役務を取り扱う業界においても、美容部員、ビューティーコンサルタント等が接客して商品を販売することが普通に行われているが、その際に心を込めて接すること、質の高い接客を提供することを表す語として「おもてなし」の語が広く使用されているものである(甲8?甲38)。
すなわち、本件商標は、これを本件指定役務に使用するときは、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識できない商標であって、商標法第3条第1項第6号に該当する。
以上のとおり、本件商標は、その指定役務中、「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきものである。

第3 取消理由通知
当審において、平成26年3月26日付けで、商標権者に対し通知した取消理由は、次のとおりである。
1 「おもてなし」の語について
(1)本件商標の構成
本件商標は、前記第1のとおり、「おもてなし」の平仮名を標準文字で表してなるところ、その構成中の「もてなし」の文字部分は、「ふるまい」などの意味を有する語であり、同じく「お」の文字部分は、丁寧の意を表す接頭語であるから、「もてなし」の語に接頭語の「お」を冠してなるものであり、構成全体として我が国において広く知られた語と認められるものである。
なお、「もてなし」の語は、例えば、「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店発行)において「(ア)とりなし。とりつくろい。たしなみ。(イ)ふるまい。挙動。態度。(ウ)取扱い。あしらい。待遇。(エ)馳走。饗応。」、「大辞林第三版」(株式会社三省堂発行)において「(ア)客に対する扱い。待遇。(イ)客に出す御馳走。接待。(ウ)人や物事に対する振る舞い方。態度。(エ)物事に対する扱い。とりはからい。処置。」、「国語大辞典(新装版)」(株式会社小学館発行)において「(ア)教養、性格などによって醸成された態度。身のこなし。挙動。動作。ふるまい。(イ)人に対する態度。人に対するふるまい方。人に対する遇し方。待遇。(ウ)人に対して、自分の望む結果が得られるようにしむけること。しむけ。とりはからい。処置。(エ)物の使いぶり。用い方。取り扱い方。(オ)饗応。ごちそう。」と記載されているものである。
(2)取引における「おもてなし」の語の使用状況について
ア 申立人の提出に係る甲各号証によれば、以下のような事実が認められる。
(ア)石川県和倉温泉旅館加賀屋のウェブサイト「おもてなし」(甲2)には、「伝統のおもてなし 加賀屋おもてなしの心は、いつもお客様の満足を第一に考え動いた、故先代の女将小田孝の信条から生まれました。小さな気くばり、心くばりを基本にした客室係のサービス、そして、今ではどこでも見られる習慣、女将によるお部屋回りの挨拶は、ここ加賀屋で始まりました。・・・その心が、今も受け継がれ、加賀屋・あえの風でなければ体験のできない『心のこもったおもてなし』として、いつまでも変わらず、お客様に愛され続けています。」などと掲載されている。
(イ)株式会社シーボンの遅くとも平成24年10月1日頃には掲載されたと推認されるウェブサイト(甲9)には、「心を込めたおもてなしを、特別な貴女に。シーボン.お友達紹介プレゼント」と掲載されている。
(ウ)株式会社アイビー化粧品の平成22年6月1日発行の「アイビーニュースVol.380」(甲10)には、豊岡第2販社、販社長の言葉として「心のこもったおもてなしでお待ちしております。」と記載され、また豊岡第3販社、販社長の言葉として「心も肌も元気になっていただけるようおもてなしいたします。」と記載されている。
また、同社、平成24年11月1日発行の「アイビーニュースVol.409」(甲11)には、佐賀第2販社についての記事として「私達がお客様をお迎えする時、大切にしているおもてなしは、『お客様を知る』ということ。」と記載されている。
(エ)平成15年10月21日付け日本経済新聞(甲14)において、「変革続け企業価値向上」の見出しの下、「日経フォーラム世界経営者会議」の講演要旨が掲載され、資生堂社長池田守男氏の欄には、「商品を通じて日本の伝統的な『おもてなしの心』を伝える手法として、生産現場に『匠工房』という手法を導入した。これは、ラインで大量生産するのではなく、一人の作業員が充てんから仕上げまで商品を丹念に作り上げるセル生産方式だ。・・・研究開発、生産、物流、販売などすべての活動において顧客との心の触れ合いを大切にしていきたい。この活動を通じてこそ、ブランド力の源泉である社会的信頼を得られると確信している。」などと記載している。
(オ)平成22年7月2日付け日本経済新聞の「春秋」欄(甲15)において、「・・・そして思い出したのが、以前にインタビューした資生堂の福原義春名誉会長の言葉。『おもてなしの心が大事です』▼福原さんの発言は、日本の観光立国には何が必要か、という質問への答えの一つだった。・・・豊かになった中国からの観光客に日本の観光業界が寄せる視線も、一段と熱が帯びてきているようだ。願わくば、おもてなしの心を忘れないよう。老婆心ながら。」と掲載されている。
(カ)平成22年7月28日付け日本経済新聞(甲16)において、「『日本流の接客』/資生堂が冊子作成」の見出しの下、「『おもてなしの心を海外でも』--。資生堂は日本流の接客思想を盛り込んだ冊子を作成し、海外74カ国・地域の美容職社員約8千人に配布した。」と掲載されている。資生堂が海外展開で日本ならではの「おもてなし」を重視している旨の記事は、平成21年12月21日付け日刊工業新聞(甲18)、平成24年8月15日付け日刊工業新聞(甲20)、平成21年6月27日発行の雑誌「週刊東洋経済」(甲24)、平成22年6月14日発行の雑誌「NIKKEI BUSINESS」(甲25)及び平成25年1月14日発行の雑誌「PRESIDENT」(甲27)にも掲載されている。
(キ)平成24年4月25日付け日刊工業新聞(甲19)において、「資生堂140年 女性の美を支えて 下」の見出しの下、末川久幸社長へのインタビュー記事には、「『資生堂』というブランドそのものを絶対に変えてはいけないし、大事にしたい。おもてなしの心、研究開発力などすべての融和がブランドを形成する。この部分を守らなければ信頼などといった基盤が崩れてしまう。・・・」と掲載されている。
(ク)平成24年8月15日付け日刊工業新聞(甲20)において、「美の『おもてなし』世界に」の見出しの下、資生堂執行役員関根近子さんへのインタビュー記事には、「海外を成長ドライバーと位置づける資生堂。その原動力となっているのが、世界で2万人を超える美容販売員(ビューティーコンサルタント(BC))」を通じたカウンセリング販売だ。日本ではあたりまえの販売方法が米国やフランスなど海外では独自性となり資生堂の地位確立につながっている。・・・個々の肌にあった正しい化粧品を選べるカウンセリング能力と化粧技術という基本があるうえで、『おもてなし』といった所作や接遇がある。単にモノを売るのではなく『美』をトータルで提供するのが他社にない当社の独自性だ。
・・・当社はお客様一人ひとりに『最高のおもてなし』をすることで他社との差別化につなげたい」などと掲載されている。
(ケ)機関誌「BUSINESS RESEARCH 2011年5・6月号」(甲26)の「お客様の声(VOC)経営の取り組み」の項において、株式会社資生堂お客様センター長伊與田智美氏の「資生堂が目指すVOC経営の進め方と社内改革」と題する講演要旨録には、資生堂のコアバリュー三つのうちの一に、「お客さまの心を知る、歓びを知る、お客さまへの信頼と感謝を忘れない、資生堂がお客さまと向き合うときのいつわりのない心と形を表現する価値『おもてなしの心』」が含まれているとされ、「特に、お客さまとの大切な接点である店頭での活動においての『おもてなし』は、ヒトやモノを介した触れ合いを通じ、心までも豊かに導いていくことです。資生堂の『おもてなし』の心とは、『お客さまの本当の気持ちを理解しようとする努力。お客さまとお話をするときや肌に触れるときの心遣い。化粧品の取扱い方。そのようなお客さまを迎える時の化粧品の世界にふさわしい心と形、その美意識』と定義しています。ですから、店頭で商品をお客さまにお渡しするときなど、すべての所作におもてなしのこころを込める活動をしています。」などと記載されている。
(コ)「資生堂 アニュアルレポート2011」(甲28)において、「・・・医薬品を礎にした研究開発、『おもてなし』の心をベースとした応対など、すべての人に美しさと健やかさを届けるための資生堂独自の取り組みは、創業から139年、とどまることなく進化を積み重ねています。」、「・・・価格に見合う価値がお客さまにしっかり伝わるような情報発信、そして、資生堂ならではの『おもてなしの心』がこもった応対を全世界のビューティーコンサルタントが実践することで、お客さま満足の最大化をめざし、グローバル競争を勝ち抜いていきます。」などと記載されている。
(サ)「SHISEIDO NEWS RELEASE(参考資料)」において、「資生堂、第3回『BCコンテスト世界大会』開催」(甲32)と題する書面には、上記大会が2012年7月25日に開催されること、参加総数20,300名の中から、1年以上かけて選抜された32名のBCが「おもてなしの心」から生まれた自身の所作や技を競い、キャリアに応じたカテゴリー毎に最優秀賞各1名を決定すること、開催の目的について、資生堂は現在、日本をオリジンとし、アジアを代表するグローバルプレイヤーを目指し、日本発の「おもてなしの心」と高い技術力で、世界中の店頭において、お一人おひとりにあった美しさを提案する活動を推進しているが、BCコンテスト世界大会は、こうした活動の中心的な役割を担うBCの技術力と応対力を高めることを目的として2004年にスタートし、4年毎に開催していること、審査にあたっては、・・・今回より他業界で活躍する「おもてなしのプロ」にも審査員として参加いただき、国や文化の違いを超えた「おもてなしの心」を外部の視点からも審査していただくことで、化粧品業界に限定されない客観性を高めることなどが記載されている(上記コンテスト結果については、甲31参照)。
(シ)2007年10月1日株式会社秀和システム発行の「為家洋子著/図解入門業界研究 最新ファッション業界のトレンドがよ?くわかる本」(甲35)において、「第3章化粧品、美容、ファッショングッズ業界の動向/資生堂のグローバル戦略」の項(104ページ)に、「化粧品業界では、資生堂の活躍が目立っています。資生堂の強みは、美容部員による対面販売力。その接客のポイントは『おもてなし』の心にあります。」、「国際コンテストを開催/・・・同社の日本の美容部員は、入社後二カ月間の研修で『資生堂方式』と呼ばれる接客術を学んでいます。特に成長著しい中国では、対面販売における接客術など、美容部員の教育に力を入れています。研修では『おもてなしの心』を学ぶとのこと。日本の老舗旅館ではぐくまれた『おもてなし』は、日本発の世界文化になりつつあります。」と記載されている。
(ス)2009年6月15日株式会社秀和システム発行の「梅本博史著/図解入門業界研究 最新化粧品業界の動向とカラクリがよ?くわかる本(第2版)」(甲36)において、「第4章 専門店流通の動向とカラクリ/高付加価値店へ」の項(84ページ)に、「専門店の目指す道/・・・また接客については、『おもてなし』の心が大切です。再来店してもらえるように十分なおもてなしをし、地域のオアシス的な店にならなければなりません。」と記載されている。
イ 以上によれば、「おもてなし」の語は、旅館等のお客様に対する接客において「心のこもったおもてなし」などと長年使用されていることがうかがえるものであり、本件異議の申立てに係る指定役務「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を行う業界においても、役務の提供方法として美容販売員(ビューティーコンサルタント(BC))を通じたカウンセリングが一般に行われているところ、遅くとも、本件商標の登録査定がなされた平成25年2月1日までには、顧客との接遇に際しては、化粧品を選べるカウンセリング能力と化粧技術という基本が重要であることはもとより、「おもてなし」といった所作や接遇が重要と考えられるようになってきているものであって、該語がその内容とともに理解、認識される状況にあったといえる。
2 本件商標の商標法第3条第1項第6号該当性について
(1)商標法第3条第1項第6号の趣旨
本号が、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を商標登録の要件を欠くと規定するのは、同項第1号ないし第5号に例示されているような、識別力のない商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品の識別力を欠くために、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである。
そこで、以下、上記見地から本件について検討する。
(2)本件商標は、上記1のとおり、その構成文字である「おもてなし」の語が「人に対するふるまい方」などの意味を有し、一般に広く知られているものであり、本件商標の登録査定時において、本件異議申立てに係る指定役務を取り扱う業界において、顧客への役務の提供に際して、所作や接遇が重要と考えられるようになってきており、これを表す用語として「おもてなし」の語が普通に使用されていることが認められるから、一般的に使用される標章であって、自他役務の識別力を欠くために、商標としての機能を果たし得ないというのが相当であり、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものである。
したがって、本件商標は、その指定役務中「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、商標法第3条第1項第6号に該当する。

第4 商標権者の意見
前記第3の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。

第5 当審の判断
本件商標についてした前記第3の取消理由は、妥当なものと認められる。
したがって、本件商標は、その指定役務中、第35類「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたといわざるを得ないから、本件商標の登録は、同法第43条の3第2項の規定により、その指定役務中「結論掲記の役務」について、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2014-05-30 
出願番号 商願2012-26462(T2012-26462) 
審決分類 T 1 652・ 16- Z (W35)
最終処分 取消  
前審関与審査官 矢代 達雄 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 手塚 義明
酒井 福造
登録日 2013-03-08 
登録番号 商標登録第5564051号(T5564051) 
権利者 株式会社ココカラファイン
商標の称呼 オモテナシ、モテナシ 
代理人 小谷 悦司 
代理人 川瀬 幹夫 

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