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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2014900008 審決 商標

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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W092528
審判 全部申立て  登録を維持 W092528
審判 全部申立て  登録を維持 W092528
管理番号 1289809 
異議申立番号 異議2013-900398 
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-08-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-11-25 
確定日 2014-07-22 
異議申立件数
事件の表示 登録第5613889号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5613889号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5613889号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成よりなり、2012年9月27日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、平成25年3月18日に登録出願され、第9類「スマートフォン・タブレット型携帯情報端末装置・コンピュータ用情報入出力装置・コンピュータ用ディスプレイ装置及び携帯型テレビジョン受信機の附属品,コンピュータ用コントローラ・コンピュータ用キーボード・コンピュータ用マウス・コンピュータ用ヘッドセット・コンピュータ用ヘッドフォン・コンピュータ用イヤフォン及びコンピュータ用音響スピーカーの専用カバー及び附属品,スマートフォン・タブレット型携帯情報端末装置・コンピュータゲーム用コントローラ・コンピュータ用情報入出力装置及び携帯電話機の専用キャリーケース,スマートフォン・タブレット型携帯情報端末装置・携帯電話機・コンピュータゲーム用ジョイスティック・コンピュータ用トラックボール型コントローラ・コンピュータ用拡大スコープ・コンピュータ用ケーブル・コンピュータ用記憶装置・コンピュータネットワーク用のインターフェースカード・電源アダプタ・バッテリー・充電器・自動車電源装置・充電式バッテリー及び電源函の専用収容バッグ,コンピュータゲーム用コントローラ,コンピュータゲーム用楽器型コントローラ,コンピュータゲーム用フライトシミュレーション用コントローラ,業務用テレビゲーム機用プログラム,電池,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」、第25類「被服,ビーニー帽及びその他の帽子,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」、第28類「双方向型家庭用テレビゲーム機用コントローラ,双方向型業務用テレビゲーム機用コントローラ,家庭用テレビゲーム機用のフロアパッド型コントローラ,業務用テレビゲーム機用のフロアパッド型コントローラ,家庭用テレビゲーム機用のマット型コントローラ,業務用テレビゲーム機用のマット型コントローラ,家庭用テレビゲーム機用の楽器型コントローラ,業務用テレビゲーム機用の楽器型コントローラ,家庭用テレビゲーム機用のハンドル型コントローラ,業務用テレビゲーム機用のハンドル型コントローラ,家庭用テレビゲーム機用のフットペダル型コントローラ,業務用テレビゲーム機用のフットペダル型コントローラ,家庭用テレビゲーム機用のレーザーガン型コントローラ,業務用テレビゲーム機用のレーザーガン型コントローラ,家庭用テレビゲーム機用の釣りざお型コントローラ,業務用テレビゲーム機用の釣りざお型コントローラ,外付けモニターと併せて使用する家庭用テレビゲーム機の前面に装着する保護カバー,外付けモニターと併せて使用する業務用テレビゲーム機の前面に装着する保護カバー,家庭用テレビゲーム機用の手動コントローラ,業務用テレビゲーム機用の手動コントローラ,家庭用テレビゲーム機用のジョイスティック,業務用テレビゲーム機用のジョイスティック,携帯用液晶画面ゲーム機の専用キャリーケース,携帯用液晶画面ゲーム機の専用収容バッグ,運動用ヘッドギアー,家庭用テレビゲーム機,携帯用液晶画面ゲーム機その他のおもちゃ」を指定商品として、同年8月22日に登録査定、同年9月6日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由として引用する商標は、以下の6件の登録商標(これらは、いずれも現に有効に存続している。)及び拒絶査定不服審判に係属中の商標登録出願1件である。
1 国際登録第1048069号商標
国際登録第1048069号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、2010年(平成22年)6月28日に国際商標登録出願され、第9類「Sports helmets.」、第16類「Stickers; decals.」、第18類「All purpose sports bags; all-purpose carrying bags; backpacks; duffle bags.」、第25類「Clothing, namely, t-shirts, hooded shirts and hooded sweatshirts, sweat shirts, jackets, pants, bandanas, sweat bands and gloves; headgear, namely, hats and beanies.」を指定商品として、平成23年7月29日に設定登録されたものである。
2 登録第5044896号商標
登録第5044896号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、平成18年6月9日に登録出願され、第32類「エネルギー補給用清涼飲料,スポーツ用清涼飲料,その他の清涼飲料,果実飲料,エネルギー補給用のアルコール分を含有しない飲料,スポーツ用のアルコール分を含有しない飲料,ビール風味の麦芽を主体とするアルコール分を含有しない飲料,その他のアルコール分を含有しない飲料,麦芽ビール,その他のビール」を指定商品として、平成19年5月11日に設定登録されたものである。
3 登録第5431413号商標
登録第5431413号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、平成22年10月27日に登録出願され、第5類「栄養補給剤,その他の薬剤,食餌療法用食品及び飲料」、第29類「乳飲料,コーヒー入り乳飲料,その他の乳製品」、第30類「コーヒー飲料,ミルク入りコーヒー飲料,その他のコーヒー及びココア,茶,氷,食品香料(精油のものを除く。)」、第32類「ビタミン・ミネラル・滋養物・アミノ酸・ハーブを加味したエネルギー補給用の清涼飲料,ビタミン・ミネラル・滋養物・アミノ酸・ハーブを加味したコーヒー風味のエネルギー補給用の清涼飲料,ビタミン・ミネラル・滋養物・アミノ酸・ハーブを加味したエネルギー補給用の果実飲料,ビタミン・ミネラル・滋養物・アミノ酸・ハーブを加味したコーヒー風味のエネルギー補給用の果実飲料,飲料製造用調製品」及び第33類「エネルギー補給用のアルコール飲料(ビールを除く。),コーヒーを加味したアルコール飲料(ビールを除く。),その他のアルコール飲料(ビールを除く。)」を指定商品として、平成23年8月12日に設定登録されたものである。
4 登録第5057229号商標
登録第5057229号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成18年6月9日に登録出願され、第32類「エネルギー補給用清涼飲料,スポーツ用清涼飲料,その他の清涼飲料,果実飲料,エネルギー補給用のアルコール分を含有しない飲料,スポーツ用のアルコール分を含有しない飲料,ビール風味の麦芽を主体とするアルコール分を含有しない飲料,その他のアルコール分を含有しない飲料」を指定商品として、平成19年6月22日に設定登録されたものである。
5 商標登録願2012-89483号商標
商標登録願2012-89483号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲4のとおりの構成よりなり、平成24年11月5日に登録出願されたものであり、同25年11月28日に拒絶査定がなされ、その後、審判2014-3266号として、第14類「シリコン製ブレスレット,シリコン製バングル,ブレスレット,バングル,身飾品」を指定商品として、拒絶査定不服審判に係属しているものである。
6 登録第5419513号商標
登録第5419513号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲5のとおりの構成よりなり、2010年7月27日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成23年1月27日に登録出願され、第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」を指定商品として、同年6月17日に設定登録されたものである。
7 登録第5427070号商標
登録第5427070号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲6のとおりの構成よりなり、平成23年1月5日に登録出願され、第5類「輸入栄養補給剤,その他の輸入薬剤,食餌療法用輸入食品及び食餌療法用輸入飲料」及び第32類「アルコール分を含有しない輸入飲料,輸入清涼飲料,輸入果実飲料」を指定商品として、同年7月22日に設定登録されたものである。
これらを併せていうときは、「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第7号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第155号証(枝番を含む。)を提出した。
1 申立ての理由の要点
(1)「M」のロゴマーク等のMONSTER ENERGYブランドマーク商標の著名性
ア 会社沿革及び取り扱い商品
申立人のモンスター エナジー カンパニー(Monster Energy Company)は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり、アルコールを含有しない飲料、すなわち、炭酸飲料等の企画、開発、製造、マーケティング、販売の事業に従事している(甲2及び甲58)。
イ 申立人による商標の使用
申立人は、2002年にエナジードリンクの新ブランド「MONSTER ENERGY」(引用商標1)を創設し、米国で同年3月から広告宣伝を開始し、同年4月から製造販売を開始した(以上、甲4、甲7、甲18、甲58等)。
この「MONSTER ENERGY」のエナジードリンク製品は、従来の清涼飲料製品の容器とは異なる黒色ベースのボトル缶にモンスター(Monster)の爪痕を象ったロゴマーク(引用商標2及び引用商標3、以下、「『M』のロゴマーク」という。)と「MONSTER」の文字を太字で目立つように表示した野性味あふれる独特な雰囲気が経済・ビジネス界でも注目を浴び(甲56及び甲57)、男性若者層を中心に忽ち人気商品となった。
申立人の「MONSTER ENERGY」ブランドの各種エナジードリンクには、2002年の発売開始以降、現在まで継続して、ボトル缶の中央に看者の注意を惹く最も大きく目立つ態様でモンスター(Monster)を象徴する「M」のロゴマークが表示されてきたこと、当該ロゴマークの下に「MONSTER ENERGY」をはじめ、「MONSTER」と他の語又は文字を組み合わせてなる構成を共通点とする多数の申立人商標(以下、まとめて「MONSTERファミリー商標」という。)が個別商品名として使用されてきたことが認められる(甲11?甲16、甲58等)。
ウ 広告・マーケティング・販売促進活動
申立人は、2002年から現在まで、全世界における「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンクに関する広告、マーケティング及び販売促進活動費として総額21億米ドルを超える費用を支出した(甲58)。こうした販売促進活動の主な内容は、世界の有名アスリート・レーシングチーム及び競技会、アマチュア選手、音楽祭及びミュージシャン、並びに米国ラスベガスの公共機関モノレールに対する支援活動(スポンサー提供)、並びに販売店用什器及び備品の供給である。
上記スポンサー提供活動においては、スポーツ競技会などイベント会場施設の看板、旗、垂れ幕、ブース、什器類、移動車、スタッフやスポンサー契約アスリートやレーシングチームが着用するユニフォーム等及び関連広告物などに、「MONSTER ENERGY」の名称、特徴的なレタリング文字で表示した「MONSTER」の文字のほか、「M」のロゴマーク、あるいは、これと「MONSTER ENERGY」の文字からなる「M MONSTER ENERGY」のロゴマーク(引用商標1、引用商標4、引用商標5に示す態様)の商標が表示されている(以下、これらの引用商標の複数又は全部について言及する場合は「MONSTER ENERGY ブランドマーク」という。)。
このようなスポンサー活動は、日本国内の一般消費者にも発信、紹介されている(甲34?甲45、甲52、甲53、甲56及び甲57)。
申立人が支援するアスリート及びチームが着用・使用するスポーツウエア等、並びに競技会場で用いられる旗、ポスター、看板、スポーツサーキット移動車両、競技会場で販売されるアパレル製品やアクセサリー類には、MONSTER ENERGY ブランドマークが付されており(甲58等)、これらの写真やビデオ画像は、申立人のウェブサイトやメールマガジン、第三者のウェブサイト、一般のスポーツファンのブログ、ニュースリリース、ソーシャルメディア等を通じて、世界中のスポーツファンに配信され(甲34?甲45、甲52、甲53、甲56?甲58)、全世界のエナジードリンクの需要者のみならず、スポーツファンを中心とする一般消費者の間にMONSTERファミリー商標を広く浸透させることに大きな効果を発揮している。
エ 国内における販売及び販売促進活動
日本国内では「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンクの販売は、アサヒ飲料株式会社を通じて行われている。2012年3月15日付のニュースリリースでアサヒ飲料株式会社が国内独占販売権取得を公表し、2種類のエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の発売を発表、同年5月8日から実際の販売が開始している(甲5?甲7)。当該商品は、2012年5月8日の発売後、日本国内でも忽ち人気となり、同年9月時点で既に年間売上目標の100万箱を突破し(甲8)、その後も好調に売上を伸ばして157万箱の売上を記録した(甲9)。さらに、2013年5月7日からは同ブランドの新製品として糖類ゼロ・カロリーゼロのエナジードリンク「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」も発売されている(甲10)。
これら3種の「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンクは、日本全国のコンビニエンスストア、自動販売機、鉄道の駅売店、スーパーマーケット、列車の売店、会員制スーパー、店舗、ゲームセンター、ドラッグストア及びホームセンター等の販売小売店のほか(甲58)、アサヒ飲料の通販サイトからも直接購入可能である(甲11?甲17)。また、大手ネットショッピングサイトのアマゾンジャパンなどでは日本未発売の輸入品販売も取り扱われている(甲33)。
また、2012年5月の国内発売直後から継続的にテレビコマーシャル放映、日本開催の多数のスポーツイベント等へのスポンサー提供、サンプル配布など含む大々的な広告・販売促進活動が実施されている(甲58等)。
オ 全世界の販売国・地域及び販売額
現在までに全世界100以上の国及び地域で1種類以上の「MONSTER」ファミリー商標を使用したエナジードリンクを販売し、又は販売中である(甲58)。
販売額は、2002年に米国で販売開始以来、90億缶以上販売し、世界中で毎年15億缶以上を売上げ、世界中で合計170億米ドルを超える収益を上げており、全世界での小売販売額は、毎年40億米ドルを超える。
日本における「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンクの販売数量は、2012年4月の販売開始から2013年3月までの約2年の期間において約5,500万缶を売り上げ、総販売額は、4,900万米ドル以上、日本円で40億円以上に昇る(甲58)。
カ アパレル製品、ビデオ製品等の販売
2002年から現在まで、申立人は、MONSTER ENERGYブランドマークを付したアパレル製品等の製造販売をライセンスしており、多数のライセンシーを通じて現在、日本及びアジア全域、オーストラリア、米国、カナダ、中央アメリカ、南米、ヨーロッパ、アイスランド、スカンジナビア及びメキシコを含む世界各地で販売中である(甲58等)。
キ 経済界等からの表彰等
「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンクの開発、導入の成功に急成長を遂げた申立人の会社の業績は、本件商標が登録出願される遥か以前から、経済界でも高く評価され、数々の表彰を受けている(甲58等)。
また、申立人の会社の宣伝広告や有名アスリートやレーシングチームなどに対するスポンサー活動によるマーケティングの戦略や高成長ぶりを評価する記事が数多く掲載されている。
ク 国内外における商標登録によるブランド保護
日本国内では、引用商標に示すとおり、「M」のロゴマーク並びに当該ロゴマークを基調とするロゴマークを、第30類及び第32類の各種飲料製品のほか、栄養補給剤、サプリメント(第5類)、アクセサリー類(第14類)、ステッカー(第16類)、バッグ類(第18類)、並びに本件商標の指定商品と同一又は類似の商品に当たるアパレル製品(第25類)及び運動用ヘルメット(第9類)について商標登録又は出願済みである。
また、「M MONSTER ENERGY」のロゴマークを含む「MONSTER」ファミリー商標は、世界100以上の国及び地域で商標登録・出願済みである(甲58)。同証拠物件RCS-1は、申立人が日本を含む全世界で所有する登録済みの「MONSTER」ファミリー商標の一覧を示す。これらの登録は、本件商標の指定商品が属する第25類を含む幅広い商品区分になされている(甲80?甲155)。
ケ 以上の事実に照らせば、申立人の「MONSTERファミリー商標」は、本件商標の登録出願日の平成25(2013)年3月18日[優先日、平成24(2012)年9月27日]以前より、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本国米国をはじめとする外国で広く認識されていただけにとどまらず、本件商標の登録出願時及び査定時には、日本国内の需要者の間でも申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたことが明らかである。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同15号に該当する理由
本件商標は、「第25類 被服、ビーニー帽及びその他の帽子、履物、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」(以下「本件指定商品」という。)に使用するものである。本件指定商品は、特許庁商標課編「類似商品・役務審査基準」に照らし、申立人の登録に係る引用商標1の指定商品と同一又は類似のものであることが明らかである。これらの商品は、申立人が実際に「M」のロゴマーク、「M MONSTER ENERGY」のロゴマークを付して製造販売中の商品と同一又は類似のものである。また、本件指定商品は、その製造部門、販売場所、用途又は需要者層が申立人の取り扱いに係るアパレル製品と一致ないし重複する極めて関連性が深いものである。
本件商標は、四隅にアールを付けた黒塗りの正方形の略中央に、中央付近から左右それぞれの先端に向かって徐々に幅が狭くなる概ね同程度の形状及び長さのものとして看取し得る線様図形4本を、上記正方形の右上と左下を結ぶ斜め方向に略平行に配置してなる白抜きの図形(以下、当該白抜きの4本の線様図形を「本件図形」という。)から構成される商標である。
引用商標は、いずれも「M」のロゴマークをその主たる構成要素として含む商標であり、「M」のロゴマークは、細く尖った左端部を有する上端から下端に向かって徐々に幅が狭くなる概ね同程度の形状及び長さのものとして看取し得る線様図形3本を、縦方向に略平行に配置した図形から構成されるものである。
本件商標の構成中の本件図形は、全体の長さ及び形状が概ね同程度のものとして看取され、先端部に向って徐々に幅が狭く細くなる線様図形を複数本、略平行に並べて構成されている点で、引用商標の構成中の「M」のロゴマークの構成の特徴と共通するものであり、「M」のロゴマークと構成の軌跡を同じくするものであり、図形全体の外観印象が相紛らわしい類似のものであることが明らかである。本件商標の構成中、正方形の図形部分は単なる背景的なものとして把握されるものであり、本件図形が出所表示識別標識として実質的に機能する部分であるから、本件商標は、引用商標中の「M」のロゴマークと類似する。
引用商標1は、上段に「M」のロゴマークを大きく表示し、下段に「MONSTER ENERGY」の文字を上下二段に書したものから構成されるロゴマークであるところ、「M」のロゴマークが看者を強く惹きつけ印象付ける独創的なデザインの図形であることに加えて、申立人の商品の出所識別標識として広く認識されていることに照らせば、引用商標1の構成中の「M」のロゴマークが出所識別標識として注目され、認識、理解されることも十分に起こり得る。してみれば、本件商標は、引用商標の構成中の「M」のロゴマークと類似するのみならず、引用商標1と類似することも明らかである。
引用商標1は、本件商標よりも先に登録出願されたものである。
したがって、本件商標は、先願に係る引用商標1に類似し、引用商標1の指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
また、引用商標中の「M」のロゴマークが本件指定商品の分野において申立人の商品の出所識別標識として広く認識されていることを斟酌すれば、本件商標が本件指定商品に使用された場合は、これに接した需要者は申立人の「M」のロゴマークを想起連想し、本件指定商品を申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係る商品であると誤信することにより、商品の出所について混同を生じるおそれが高いことが明らかである。
加えて、商標法第4条第1項第15号の規定は、出所の混同防止のみならず、著名商標の顧客吸引力へのフリーライド、その出所表示力のダイリューションを防止する趣旨も含むものであると解されるものである[平成16年(行ケ)第85号審決取消請求事件、平成16年10月20日東京高裁判決]。2002年から現在に至るまでの申立人の全世界における継続的使用に係る「M」のロゴマーク及び「M MONSTER ENERGY」をはじめとするMONSTER ENERGYブランドマークの著名性に照らせば、本件商標が本件指定商品に使用された場合は、申立人による継続的使用と営業努力によって申立人の商品の出所識別標識として広く認識されるに至った「M」のロゴマーク及び「M MONSTER ENERGY」のロゴマークの強力な出所表示力が希釈化することが明らかである。また、商標権者による本件商標の使用は、申立人がこれらのロゴマークについて獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドする行為といわざるを得ない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する理由
本件商標は、その登録出願時に申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内及び米国その他の外国で広く認識されている「M」のロゴマークと構成の軌跡を同じくする商標であり、かつ、申立人が実際に「M」のロゴマーク及び「M MONSTER ENERGY」のロゴマークを使用中のアパレル製品、運動用ヘルメット等と同一又は類似の商品に使用するものである。本件商標が本件指定商品に使用された場合には、申立人の上記ロゴマークの強力な出所表示力を希釈するおそれが極めて高く、また、本件商標の使用は、申立人が当該ロゴマークについて獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず、申立人に経済的および精神的損害を与える。
したがって、本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1に示すとおりの構成よりなるものであって、四隅の角を丸くした黒色の略正方形内に、右上から左下に傾けて4本の引っ掻き傷を象ったような本件図形を配してなるものである。
そして、本件商標からは、特定の称呼及び観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、別掲2ないし別掲6に示すとおりの構成よりなるものであるところ、このうち、引用商標1及び引用商標4ないし引用商標7は、引用商標2及び引用商標3よりなる図形(以下、この図形を「申立人図形」という。なお、申立人は、「『M』のロゴマーク」と表記している。)とほぼ同一形状の図形を、それぞれの構成中に有してなるものである。
しかして、申立人図形は、上端部に左向きに細く尖らせた端部を有し、その上端から下端に向かって徐々に幅が収斂し細くなる不規則な凸凹を有する形状の図形を、3本縦方向に平行に配置し、このうちの中央の図形は左右のそれに比べてやや長く描いてなるものである。
そして、これら引用商標の申立人図形部分からは、特定の称呼及び観念を生じないことから、引用商標2、引用商標3及び引用商標6からは、特定の称呼及び観念は生じないものであり、引用商標1、引用商標4及び引用商標5からは、それぞれ構成中の上下二段に表された「MONSTER」及び「ENERGY」の文字から、「モンスターエナジー」「モンスターエネルギー」の称呼が生じ、特定の観念を生ずるものとは認められない。また、引用商標7は、構成中の図形部分から特定の称呼及び観念は生じないものの、構成中の「IMPORT」文字から「インポート」の称呼と「輸入」との意味合いを理解させるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
そこで検討するに、本件商標は本件図形を要部とするものであり、引用商標は申立人図形よりなるか又はそれを1つの要部とするものというのが相当であるところ、本件図形と申立人図形は、上記したとおり、その構成態様からして、一見して全く別異の図形として看取されるものである。
してみれば、本件図形を要部とする本件商標と、申立人図形よりなる引用商標2及び引用商標3に時と処を異にして接するときには、これらは、外観上、互いに紛れることはないと判断するのが相当であるから、本件商標と引用商標2及び引用商標3とは、外観上、非類似の商標というべきである。
また、これらよりさらに外観上の相違点を有する、引用商標1及び引用商標4ないし引用商標7と本件商標とは、外観上、互いに類似するということはできないものである。
さらに、本件商標からは、特定の称呼及び観念は生じないものであるのに対し、引用商標2、引用商標3及び引用商標6からも特定の称呼及び観念は生じず、引用商標1、引用商標4及び引用商標5からは、それぞれの構成文字より「モンスターエナジー」「モンスターエネルギー」の称呼が生じ、特定の観念は生ずるものとは認められない。また、引用商標7は、その構成文字から「インポート」の称呼と「輸入」との意味合いを理解させるものであるから、称呼及び観念においても、互いに類似するということはできないものである。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれからみても、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)MONSTERファミリー商標の著名性について
申立人は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に所在するノンアルコール飲料を製造販売する飲料会社であり、2002年4月に米国で「MONSTER ENERGY」ブランドの下に、エネルギー補給用清涼飲料(エナジードリンク)の製造・販売を開始したものである。
そして、申立人が、提出した証拠方法によれば、申立人のエナジードリンクは、我が国において、2012年5月8日からアサヒ飲料株式会社を通じて販売が開始され(甲7?甲9)、その後も同社により、MONSTERファミリー商標を使用した清涼飲料の宣伝広告がされていることが認められるところである(甲10?甲16)。
また、申立人が、2012年5月の国内発売直後から継続的にテレビコマーシャル放映、日本開催の多数のスポーツイベント等へのスポンサー提供、サンプル配布など含む広告・販売促進活動を実施していると主張して、提出した甲第58号証の宣誓供述書等には、その旨の情報が掲載されていることが認められるものである。
しかしながら、甲各号証によれば、上記した宣伝広告が行われていることが認められるとしても、我が国における商品の販売数量、販売高などに関する主張(2012年4月の販売開始から2013年3月までの約2年の期間において約5,500万缶を売り上げ、日本円で40億円以上に昇るとの主張(甲58))を具体的に把握し得る証拠は提出されておらず、職権をもって調査するも、本件商標の登録出願時において、引用商標が周知著名性を獲得するほどの販売数量、販売額に達していると認め得る事実は発見できない。
また、申立人からは、我が国における新聞、雑誌等による宣伝広告の内容やその費用を把握し得る証拠も提出されていない。そして、提出された証拠のうち、本件商標の登録出願前に日本で行われた宣伝広告と主張している甲号証(甲58等)についても、その旨の陳述文書と、風景や人物の写真であって、撮影された日付も確認できず、これらの写真からは、申立人の商品について、MONSTERファミリー商標がどのように使用されているのかについても把握することができないものである。
したがって、MONSTERファミリー商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間で広く認識されて周知著名になっていたと認めることはできないものといわざるを得ない。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について
上記(1)のとおり、MONSTERファミリー商標は、我が国において周知著名性を獲得していたと認めることはできず、また、該商標と本件商標とは別異の商標であるから、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することはなく、その出所についての混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるものではなく、本件商標とMONSTERファミリー商標とは、別異の商標であって、申立人が提出した証拠からは、本件商標の登録出願の経緯に、申立人との関係で信義則に反するなど何らかの社会的相当性を欠く事情があったとは認められず、また、その他、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠く事情や商標法の予定する秩序に反する行為があったということもできないものである。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるとすることはできないものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第7号に該当するものとは認められないから、同法第43条の3第4項に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標1及び4)



別掲3(引用商標2及び3)



別掲4(引用商標5)



別掲5(引用商標6)



別掲6(引用商標7)





異議決定日 2014-07-11 
出願番号 商願2013-19358(T2013-19358) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W092528)
T 1 651・ 261- Y (W092528)
T 1 651・ 271- Y (W092528)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 松江 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 田中 亨子
今田 三男
登録日 2013-09-06 
登録番号 商標登録第5613889号(T5613889) 
権利者 マッド・キャッツ・インタラクティブ,インコーポレーテッド
代理人 中熊 眞由美 
代理人 柳田 征史 
代理人 特許業務法人岡田国際特許事務所 
代理人 佐久間 剛 

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