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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y09
管理番号 1288675 
審判番号 取消2013-300064 
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-01-25 
確定日 2014-05-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第5023326号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5023326号商標の指定商品中、第9類「電子応用機械器具及びその部品(但し,電子管,半導体素子,電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)を除く。),計算尺,電子出版物」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5023326号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成18年5月29日に登録出願され、第9類「電子応用機械器具及びその部品,計算尺,電子出版物」のほか、第9類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、同19年2月2日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成25年2月14日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第18号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが結論掲記の指定商品についての登録商標の使用をしていないものである。
2 本件商標が使用されている商品について
被請求人は、本件商標を付して使用している商品(以下「本件商品」という。)は、「テレビ放送を表示し、又はパソコン用モニターとして使用する商品」であるので、商標権者及び通常使用権者が取消請求に係る指定商品中、「電子応用機械器具及びその部品、但し、電子管、半導体素子、電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)を除く。」について、本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標を、本件審判の請求登録前3年以内に、日本国内において使用していた旨主張する。
しかしながら、本件商品は、専ら「テレビジョン受信機」として取引者・需要者に認識され取引されているものであって、「パソコン用モニター」には該当せず、よって、本件商標が取消請求に係る指定商品について使用についての立証はなされていない。
(1)本件商品についての被請求人、需要者・取引者の認識
本件商品は、確かにパソコンに接続することが可能である。しかし、需要者・取引者がこれを「パソコン用モニター」と認識し取引に臨んでいたとする根拠は全くなく、むしろ、提出された証拠によれば、被請求人自らがこれを「テレビジョン受信機」として認識し、取引者も同様にこれを「テレビジョン受信機」として認識し取引に臨んでいたことがうかがい知れる。
甲第2号証は、被請求人が自ら頒布したニュースリリースであって、乙第1号証ないし乙第4号証として提出されたものである。これらのニュースリリースにおいて人目を引くように大見出しになっている文言は「PCデポ、薄型大画面テレビ本格参入」、「42v型プラズマテレビ149,900円」、「PCデポ、ハイビジョン対応37インチ液晶テレビ」、「PCデポ、薄型大画面テレビ新価格。」、「PCデポ、42インチ液晶テレビ」であり、いずれも「テレビ」として発表している(乙1ないし乙4)。一部のニュースリリースには、商品説明にパソコン接続端子を備えていることが記載されているが、これとて複数あるテレビの一機能として紹介されているにすぎず、しかも全てのニュースリリースで言及されているわけではない。
甲第3号証は、被請求人の運営する家電量販店の折り込みチラシであって、乙第6号証ないし乙第8号証として提出されたものである。乙第6号証において、本件商品は、「地デジ液晶テレビ」と同じ欄に掲載されている一方、「パソコン用モニター」は、これとは全く別に紙面裏面にまとめて掲載されている。また、乙第7号証では、「液晶テレビ」として宣伝・広告されており、乙第8号証においても、他社の「液晶テレビ」と同じ箇所に掲載されている。すなわち、本件商品は、「液晶テレビ」として広告・販売されていたのである。
甲第4号証は、該量販店の売場で使用された売場用広告であって、乙第9号証ないし乙第11号証として提出されたものである。いずれも「レコーダー&テレビでインターネットモデル」として紹介されていることから、該店舗において、本件商品が陳列されたのは、「テレビジョン受信機」の販売コーナーであって、「パソコン用モニター」の売場ではないことが推認される。
甲第5号証は、被請求人が開設するウェブサイトの写しであって、乙第22号証として提出されたものである。左上に掲載された取扱商品の一覧は「液晶テレビ ハイブリッド/デジタルチューナー/デスタトップ/ノートブック」であって、本件商品は「液晶テレビ」として取り扱われている。
甲第6号証は、本件商品の取扱説明書であって、乙第25号証及び乙第26号証として提出されたものである。本件商品が「ハイビジョン液晶テレビ」であることが明示されている。
このように、そもそも被請求人自身が本件商品を「テレビジョン受信機」としてのみ認識しているのであり、製造・販売に携わる被請求人自らが「テレビジョン受信機」として市場に送り出している商品について、取引者・需要者が「パソコン用モニター」として認識していたと考える根拠は全くない。
現に、取引者が本件商品を「テレビジョン受信機」と認識していた証拠として、甲第7号証を示す。これは、本件商品を紹介する各種媒体の記事として乙第31号証ないし乙第33号証及び乙第35号証として提出されたものである。こうした紹介記事において、本件商品は、「42V型液晶テレビを9万9900円で7月上旬発売」、「業界最安の液晶TV3機種」、「録画&ネット閲覧対応テレビ」として紹介されている。しかも、上記記事の中に、本件商品がパソコンと接続可能であることは一切唱われていない。
乙第34号証にあるように、上記紹介記事を掲載するにあたっては、当該商品の特長を漏らさずアピールするために、入念な打ち合わせが行なわれるにもかかわらず、これらの紹介記事の中にパソコンと接続が可能である点についての言及がないのである。真に本件商品が「テレビジョン受信機」と「パソコン用モニター」の二面性を特長として開発・販売されたのであれば、絶好のPRの場においてその特長を紹介しないということは全くあり得ない。上記紹介記事は、被請求人において、本件商品が「パソコン用モニター」であるという認識を全く有していなかった事実を示しているし、同時に取引者においても、本件商品が「テレビジョン受信機」としてのみ認識されていたことを端的に示している。
(2)取引の実情について
パソコンが接続可能なテレビジョン受信機についての取引の実情を確認する。
甲第8号証は、2013年上半期のベストバイを特集する、2013年6月に発行された雑誌「家電批評」7月号の写しである。ここには、「Part9」として「薄型テレビ」というカテゴリーを設けられている。そこで上半期のベストバイとして紹介されているテレビは、東芝製「REGZA」(登録商標)である。そして、該商品がパソコンと接続可能であることは、該商品についてのウェブサイトを見れば明らかである(甲9)。該REGZA(登録商標)シリーズは、本件商標と同様にパソコンとの接続が可能であり、その特徴もウェブサイトに紹介されてはいるものの、雑誌では「薄型テレビ」として分類されており、紹介されているのが実情である。
甲第10号証は、2013年上半期の売れたモノ総決算を特集する2013年6月に発行された雑誌「GetNavi」別冊である。ここでも「フルHDテレビ」というカテゴリーが設けられており、「テレビ」として紹介されている。こうした「テレビ」は、PC入力端子を備えていることはもとより(甲12)、Wi-Fi機能を標準装備し、無線LAN搭載のモバイル機器と接続が可能なものすらあって(甲11)、こうした付加機能を備えていても取引の実情としては「フルHDテレビ」なのである。
また、インターネット上における「液晶テレビ」の人気ランキングを見ても、前記の各「テレビ」が上位にランクインしている(甲13及び甲14)。これらのランキングは「液晶テレビ」のランキングであって、「パソコン用モニター」のランキングではないし、いわゆるクチコミの中に「パソコン用モニター」として使用していることをうかがわせるような記載は一切無い。
もちろん製造者・販売者である各社もそうした実情を認識しており、これら商品のパンフレットも「液晶テレビ」及び「液晶カラーテレビ」として制作・頒布されている(甲15ないし甲17)。
このように、パソコンとの接続が可能であっても市場においてはあくまでテレビジョン受信機として認識されており、パソコン用モニターとは明確に区別されている実情がある。
したがって、単にパソコンとの接続ができるにすぎないものはもとより、パソコン画面を適切に表示するための画面調整機能程度の機能を備えたにすぎないものは、あくまでテレビジョン受信機の付加機能にすぎず、市場においては単なる「テレビジョン受信機」として扱われているのが実情なのである。
(3)本件商品について
被請求人は、テレビジョン受信機について「各種施設や企業内に設置して、広告宣伝や案内用のディスプレイ等として使用するという使用方法が増加して」おり、「テレビ放送を表示するだけの商品とは全く別の用途で使用することができるため、単にテレビの一機能にすぎないというものではなく、『パソコン用モニター』という全く別の商品として使用される」(答弁書第16頁)旨主張する。
確かに、近年の技術の進歩により、テレビ放送だけでなく、各種情報機器と接続することで様々な情報を表示させることができる「表示装置」が登場していることは事実である。
しかし、前記取引の実情を踏まえて勘案するに、画質の調整も含めて、単にパソコンの画面が出力できるという程度では、今や「テレビジョン受信機」として当然備えているべき一付加機能にすぎないといわざるを得ない。単にパソコンと接続可能なテレビという域を超えて真に二面性を有する商品として取引者・需要者に認識されるためには、それ相応の機能と、該機能を活かすための使用方法の提案といった積極的な宣伝・広告活動が不可欠である。
この点において、本件商品は、そうした特性を備えておらず、単にパソコンとの接続が可能であるという域を脱していないし、故に、被請求人においても、これが「パソコン用モニター」として使用できることを積極的に打ち出していた様子もない。
そうとすれば、取引の実情や需要者、取引者の認識、社会通念等を総合して考察すれば、本件商品は、「テレビジョン受信機」であって、これが「パソコン用モニター」と二面性を有する商品であるといえないことは明らかである。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人が「電子応用機械器具及びその部品、但し、電子管、半導体素子、電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)を除く。」について、本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標を、本件審判の請求登録前3年以内に、日本国内おいて使用していた事実は存在しないので、本件商標の登録は上記指定商品について、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第47号証を提出した。
1 本件商標の使用について
(1)本件商標は、上段にロゴ化した「St’yleVis’on」の文字(以下「StyleVisionロゴ」という。)、中段に「スタイルビジョン」の片仮名及び下段に「stylevision」の欧文字を書した態様である。
(2)被請求人は、パソコン・ネットワーク総合専門店の「PC DEPOT」を経営しており、店舗において、他社製品のほか、自社オリジナル商品の販売を行っており、自社オリジナル商品の統一ブランドとして「OZZIO\オッジオ」を使用しており、その中でも、テレビ放送を表示し、又はパソコン用モニターとして使用する商品について「StyleVision」とサブブランドを付して、2006年から継続して販売している(乙1ないし乙4)。パソコン用モニターは、本件請求に係る指定商品中、「電子応用機械器具及びその部品、但し、電子管、半導体素子、電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)を除く。」に該当する商品である。
被請求人は、本件商品の製造について第三者とOEM生産の契約を結び、製造を委託している。本件商品の発売当初は、製造をバイ・デザイン株式会社に委託していた(乙27ないし乙29)。2010年7月からは、LEDバックライトを搭載した本件商品の製造を株式会社コヴィア(以下「コヴィア社」という。)ヘ委託している(乙24)。
(3)乙第4号証は、本件審判の請求登録前3年以内である2010年6月9日付けの本件商品に関するニュースリリースであり、インターネット上でも公表された。紙面には、「StyleVisionロゴ」、「スタイルビジョン」及び「StyleVision」が記載されている。
(4)乙第6号証ないし乙第8号証は、本件審判の請求登録前3年以内である2010年5月1日、同年8月21日、2011年1月29日発行の折り込みチラシである。それぞれ表面の右上部分、右中段部分、右下に本件商品が掲載されており、本件商品上に「StyleVisionロゴ」が記載されている。
(5)乙第9号証ないし乙第11号証は、被請求人店舗にて使用された本件商品に関する売場用広告である。エコポイントは、2009年5月15日から2011年3月31日までに特定の商品を購入した場合に付与されるものであって、該売場用広告に記載されている「11月30日まで」及び「12月1日?12月31日まで」のエコポイントの点数の記載から、2010年11月30日及び2010年12月1日?12月31日を表していることがわかり、エコポイントの見直しに関する発表の時期を考慮すると(乙47)、本件審判の請求登録前3年以内である2010年10月8日以降に該売場用広告が使用されたことが認められる。上部には、「StyleVisionロゴ」が記載されている。
(6)乙第12号証及び乙第13号証は、店舗に置かれる本件商品に関するパンフレットであり、仕様詳細の下部に、「仕様は2010年6月現在のものとなります。」及び「仕様は2011年1月現在のものとなります。」との記載があることから、本件審判の請求登録前3年以内である2010年6月及び2011年1月に作成され、それ以後に店舗に置かれるものであることが認められる。1頁目上部には「StyleVisionロゴ」が記載されている。
(7)乙第14号証ないし乙第20号証は、被請求人店舗であるPC DEPOT港北本店及び太田店の店舗ジャーナルリストであり、レジで発行される領収書、受注確認書及び完了確認書等のデータを保存したものである。
乙第14号証及び乙第15号証は、2010年4月2日及び同3日の記録の一部であり、「BD42E」が販売されたことが認められ、乙第6号証、乙第25号証及び乙第35号証により、「BD42E」は、「StyleVisionロゴ」又は「StyleVision」が使用された本件商品であることが認められる。
乙第16号証は、2010年4月18日の記録の一部であり、「BD32E」が販売されたことが認められ、乙第35号証より、「BD32E」は、「BD42E」と同時期に発売されており、「StyleVisionロゴ」又は「StyleVision」が使用された本件商品であることが認められる。
乙第17号証は、2011年7月17日の記録の一部であり、「HFV-40LEX2A」が販売されたことが認められ、乙第13号証により、「HFV-40LEX2A」は、「StyleVisionロゴ」が使用された本件商品であることが認められる。
乙第18号証は、2011年7月19日の記録の一部であり、「SFV-47LEX2A」が販売されたことが認められ、乙第4号証、乙第7号証、乙第10号証、乙第12号証及び乙第13号証により、「SFV-47LEX2A」は、「StyleVisionロゴ」、「スタイルビジョン」及び「StyleVision」が使用された本件商品であることが認められる。
乙第19号証は、2011年7月25日の記録の一部であり、「SFV-40LEX2A」が販売されたことが認められ、乙第8号証及び乙第13号証により、「SFV-40LEX2A」は、「StyleVisionロゴ」が使用された本件商品であることが認められる。
乙第20号証は、2011年7月28日の記録の一部であり、「SFV-42LEX2A」が販売されたことが認められる。乙第4号証、乙第7号証、乙第9号証及び乙第12号証により、「SFV-42LEX2A」は、「StyleVisionロゴ」、「スタイルビジョン」及び「StyleVision」が使用された本件商品であることが認められる。
以上のことから、乙第14号証ないし乙第20号証により、本件商標が使用された本件商品が実際に売買されたことが認められる。商品の包装箱には、「StyleVisionロゴ」が使用されている(乙5)。
(8)乙第23号証は、コヴィア社が製造したモニター部分のみの取扱説明書である。コヴィア社とは、2010年7月1日付けでOEM契約を結んでいる(乙24)。該取扱説明書の表紙には、「HTV-40LEX2A/HTV-42LEX2A/HTV-47LEX2A/HTV-55LEX2A」という品番が記載されているところ、コヴィア社の製造する本件商品は、「モニター」及び「チューナー」を組み合わせて一つの商品として販売するものであり、上記品番はそれぞれ、「HFV-40LEX2A/HFV-42LEX2A/HFV-47LEX2A/HFV-55LEX2A」又は「SFV-40LEX2A/SFV-42LEX2A/SFV-47LEX2A/SFV-55LEX2A」のモニター部分のみを表した品番である。このことは、乙第17号証において、「HFV-40LEX2A」の受領確認書中に「HTV-40LEX2A(40インチパネル)」と記載してあること、乙第18号証において、「SFV-47LEX2A」の完了確認書(店舗用)中に「HTV-47LEX2A(47インチパネル)」と記載してあること、乙第19号証において、「SFV-40LEX2A」の領収書中に「HTV-40LEX2A(40インチパネル)」と記載してあること、乙第20号証において、「SFV-42LEX2A」の受注確認書中に「HTV-42LEX2A(42インチパネル)」と記載してあることから認められる。また、乙第30号証の売場指示書において、「今回、7月上旬発売のモデルは、モニターとSTB(セットトップボックス)が別れており、モニター(3サイズ)とSTB(2タイプ)の全6モデルとなります。」との記載、「モニター単体(単体発売は行いません)」の下に、「HTV-42LEX2A(42インチパネル)」、「HTV-47LEX2A(47インチパネル)」及び「HTV-55LEX2A(55インチパネル)」との記載からも、モニター部分のみの品番を表していることが認められる。また、乙第23号証の最終頁には、「2010.08.27」と記載されており、本件審判の請求登録前3年以内に発行されたものと認められる。表紙および奇数頁右上に「StyleVision」が記載されている。
(9)乙第31号証は、「asahi.com」に掲載された本件商品の記事である。本件商標の直接的な使用行為ではないが、「StyleVision」との記載があり、本件審判の請求登録前3年以内である2010年7月上旬より発売する旨が記載されている。
乙第32号証は、「AV Watch」、乙第33号証は、「GET NAVI 11月号」に掲載された本件商品の記事である。本件商標の直接的な使用行為ではないが、「StyleVision」との記載があり、それぞれ本件審判の請求登録前3年以内である2010年7月上旬より発売又は2010年9月24日に発売される旨が記載されている。
(10)前記の証拠書類より、商標権者により、本件商品に関する広告に「StyleVisionロゴ」、「スタイルビジョン」及び「StyleVision」を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為を行ったことが認められる。また、商標権者により、商品の包装に標章を付する行為及び商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為を行ったことが認められる。
なお、乙第23号証における取扱説明書の「StyleVision」の記載から、通常使用権者であるコヴィア社により、商品に関する取引書類に、「StyleVision」を付して頒布する行為を行ったことが認められる。
上述したように、被請求人とコヴィア社とは、OEM契約を結んでおり(乙24)、OEM契約の全趣旨及び本件商品の販売状況等からすると、コヴィア社は、被請求人より本件商標について、黙示の使用許諾を受けた通常使用権者であると認められる。
(11)以上より、本件商標は、商標権者及び通常使用権者により、本件審判の請求登録前3年以内に、日本国内において、本件商品について使用されており、該行為は、商標法第2条第3項第8号、同第1号及び同第2号の商標法上の「使用」に該当するものである。
2 使用商標について
本件商標は、前記第1のとおり、3段の態様ではあるが、一つの広告において、本件商標を構成する「StyleVisionロゴ」、「StyleVision」及び「スタイルビジョン」の全ての要素が表示されていることから、本件商標と同一又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用と認められるものである。
3 取消請求に係る指定商品の該当性について
本件商品は、テレビ放送を表示し、又はパソコン用モニターとして使用する商品であり、パソコン用モニターは、「電子応用機械器具及びその部品、但し、電子管、半導体素子、電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)を除く。」に該当するものである。乙第4号証によれば、被請求人は、本件商品を「液晶テレビ」と記載しているが、本件商品は、「テレビ」のみではなく、「パソコン用モニター」としても使用されるものである(乙1ないし乙21)。
(1)判決及び審決例
東京高等裁判所昭和57年(行ケ)第67号の判決、平成12年(行ケ)第447号の判決及び平成24年(行ケ)第10277号の判決(乙39ないし乙41)及び不使用取消審判事件(乙42ないし乙46)において、商品又は役務の二面性が認められており、ある1つの製品が複数の機能や用途を有する場合には、常にいずれか1つの指定商品にのみに属すると判断することは妥当でなく、具体的な機能や用途を検討した上で2つ以上の指定商品に該当し、又は2つ以上の指定商品について使用されていると判断すべきである。
また、機能や用途が複数ある商品は、その使用する商標について商標登録する場合、適切に商標を保護できるように複数の指定商品を選択して権利を取得する必要があるところ、不使用取消審判の場面で商品の属性についてあまりに厳格な判断をすることにより、現実に使用している商標が適切に保護できないという事態を招くことになり妥当ではない。不使用取消審判は、使用している形跡もない名目だけの登録商標の整理をすることを目的としているものであり、本件のように、現実に使用している場合には、保護すべき法益が実在するため、保護が与えられるべきである。
(2)本件商品について
乙第1号証1頁目に「パソコン接続端子(D-sub15ピン)を装備し、パソコン両面表示WXGA(1280×768)モードで表示可能な1台2役のハイビジョン対応薄型テレビです」の記載からもわかるように、2006年の発売当初からパソコン用モニターとしても使用される商品として販売されてきた(乙1及び乙21)。
乙第23号証には、14頁及び15頁にそれぞれ「PCアナログ映像入力」及び「PCステレオ音声入力」と記載されている。また、27頁に「PCとの接続」の記載、33頁に「PC接続の設定」の記載、34頁に「PCモニタ省電力モード」の記載がある。上述したように、乙第23号証は、本件商品の品番「HFV-40LEX2A/HFV-42LEX2A/HFV-47LEX2A/HFV-55LEX2A」又は「SFV-40LEX2A/SFV-42LEX2A/SFV-47LEX2A/SFV-55LEX2A」のモニター部分に関する取扱説明書であるから、乙第4号証、乙第7号証ないし乙第13号証及び乙第16号証ないし乙第20号証における本件商品に関するものであることが認められる。また、乙第12号証及び乙第13号証には、「PCアナログ入力」の項目に「D-sub 15pin」と記載されている。
乙第25号証及び乙第26号証は、バイ・デザイン株式会社が発行した本件商品の取扱説明書である。被請求人は、バイ・デザイン株式会社と2006年6月6日に覚書を締結し、OEM基本契約書及び売買取引基本契約書を締結している(乙第27号証ないし乙第29号証)。乙第25号証及び乙第26号証には、15頁に「PC-アナログ入力(青)」の記載、31頁に「パソコンを接続する」との記載がある。また、73頁に「LCD調整(VGA入力時のみ)パソコンの映像(VGA入力)を出力する際の映像の設定を行います。」の記載、78頁に「[VGA]PC-アナログ入力端子に接続した機器の映像と音声を出力します。」の記載、90頁の「接続端子」の項目に「PC-VGA映像+ステレオ音声入力×1」の記載がある。乙第25号証は、乙第6号証、乙第14号証、乙第15号証及び乙第35号証に記載の本件商品(「BD42E」)に関するものであり、乙第26号証は、乙第16号証及び乙第35号証に記載の本件商品(「BD32E」)に関するものであることが認められる。また、「BD42E」に関する広告(乙6)には、「PC入力(D-sub 15pin)」と記載されている。
以上より、本件商品は、パソコンに接続することにより、モニターとして使用することができ、「パソコン用モニター」としても使用される商品であることが認められる。
(3)被請求人店舗では、本件商品を広告用のディスプレイとして各売場に設置し、広告宣伝及び商品説明に関する内容を表示して使用しており、「パソコン用モニター」として使用している。近年、テレビ放送を表示し、又はパソコン用モニターとして使用する商品が普及するとともに、被請求人のように店舗にて使用したり、各種施設や企業内に設置して、広告宣伝や案内用のディスプレイ等として使用するという使用方法が増加している。また、一般家庭でも、大画面でインターネットをしたりオンラインゲームをしたりするなど、パソコン用モニターとして使用されるケースが増加している。テレビ放送を表示するだけの商品とは全く別の用途で使用することができるため、単にテレビの一機能にすぎないというものではなく、「パソコン用モニター」という全く別の商品として使用されるものであるといえる。
(4)被請求人は、上述のようにパソコン・ネットワーク総合専門店の「PC DEPOT」を経営しており、主にパソコンに関連する商品を取り扱っている。本件商品もパソコン関連商品という位置づけのもと、自社オリジナル商品ブランドとして発売されているものである。
4 結語
以上より、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者及び通常使用権者が請求に係る指定商品中、「電子応用機械器具及びその部品、(但し、電子管、半導体素子、電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)を除く。)」に含まれる「パソコン用モニター」について、本件商標と同一又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していた。

第4 口頭審理について
合議体は、被請求人の提出に係る証拠方法では「パソコン用モニター」に本件商標を使用していることが認められないとして、請求人及び被請求人の双方に対して、口頭審理(日付:平成26年2月26日、特許庁審判廷)を行う旨通知したところ、被請求人からの同年1月28日付け上申書及び請求人からの同年2月3日付け上申書において、双方から出頭する必要がない旨の申し出があったため、口頭審理期日の中止に関する通知書を請求人及び被請求人の双方へ送付し、以後、本件審理を書面審理としたものである。

第5 当審の判断
1 本件商標の使用状況について
被請求人は、商標権者及び通常使用権者であるコヴィア社が、要証期間内に、「電子応用機械器具及びその部品(但し、電子管、半導体素子、電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)を除く。)」に含まれる「パソコン用モニター」について、本件商標と同一又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していた旨主張している。
そこで、被請求人の提出に係る乙各号証について検討するに、以下の事実が認められる。
(1)被請求人は、2006年5月29日頃から薄型大画面テレビ本格参入し、「42V型プラズマテレビ」、「ハイビジョン対応37インチ液晶テレビ」などを「OZZIO StyleVision」シリーズとして発売することをニュースリリースにより公表されている(乙1ないし乙4)。
(2)「O’ZZIO StyleVisionロゴ」又は「StyleVisionロゴ」は、2010年5月1日、同年8月21日及び2011年1月29日の被請求人の折り込みチラシ(乙6ないし乙8)において、他社の液晶テレビの画像並びに「フルスペックハイビジョン」又は「液晶テレビ」の表示とともに記載されている。
(3)乙第24号証は、平成22年7月1日付けの商標権者とコヴィア社とのOEM基本契約書であり、「株式会社ピーシーデポコーポレーション(・・・以下「甲」という。)と株式会社コヴィア(・・・以下「乙」という。)は、甲が乙に対し、甲の指定する商標を付したozzio製品の製造を委託するにあたり、その委託および受託に関する基本事項を定めるため、次のとおりのOEM基本契約(以下「本契約」という。)を締結します。」の記載、「第1条(目的)」の中に「1.甲をOEM先、乙をOEM元として、乙が設計・製造し、甲の指定する商標が付された製品・・・」の記載、「第31条(有効期間)」には、「1.本契約の有効期間は、平成22年7月1日から平成23年6月30日までとします。但し、期間満了1ケ月前までに甲または乙のいずれからも書面による終了の意志表示のない限り、本契約は自動的に1年間延長されるものとし、以後も同様とします。」の記載がある。
2 以上からすると、商標権者は、液晶テレビについて、本件商標と社会通念上同一と認められる「StyleVisionロゴ」及び「StyleVision」を付して広告したことが認められる。
また、商標権者とコヴィア社とは、商標権者の指定する商標を付したOZZIO製品に関するOEM契約を結んでおり(乙24)、OEM契約の全趣旨及び本件商品の販売状況等からすると、コヴィア社は、本件商標権の通常使用権者であるといい得る。
そして、コヴィア社は、2010年8月27日作成の本件商品の取扱説明書(乙23)に本件商標と社会通念上同一と認められる「StyleVision」を付しており、該取扱説明書はその商品とともに梱包されるというのが一般的であることからすると、当該取引において上記取扱説明書を使用したものと推認できる。
したがって、本件商標の商標権者及び通常使用権者であるコヴィア社は、本件審判の請求の登録前3年の間に、本件商標を本件商品の広告及び取扱説明書に使用したものと認められる。
3 本件商品について
被請求人は、本件商品について、パソコンに接続することにより、モニターとして使用することができ、「パソコン用モニター」としても使用される商品である旨主張している。
そこで、パソコンに接続されるとする被請求人の提出に係る乙各号証について検討するに、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は、本件商品について、「OZZIO StyleVision」シリーズとして発売することを公表したニュースリリースであり、そこには、「パソコン接続端子(D-sub15ピン)を装備し、パソコン画面表示WXGA(1280×768)モードで表示可能な1台2役のハイビジョン対応薄型テレビです」の記載がある。
(2)乙第22号証は、2013年4月11日に紙出力の「OZZIO-サポート&サービス」のウェブサイトとするものであり、右上にStyleVisionロゴが表示され、「液晶テレビ ハイブリッド」と表示され、「StyleVisionよくあるご質問」として、「Q6 PCと本体を接続する端子は?」、「Q18 2画面にならない。」等の記載がある。
(3)乙第23号証は、「O’ZZIO/StyleVision」の取扱説明書の「PCとの接続」の項(27頁)には、「本体の背面にある【PCアナログ映像入力】と、接続するパソコンのビデオカード出力をD-Subケーブルで接続してください。」の記載、同じく「その他の設定」の項(34頁)には、メニュー項目の一つとして、「PCモニタ省電力モード」の記載がある。
(4)乙第25号証及び乙第26号証は、型名「BD42E」及び「BD32E」の取扱説明書とするものであり、該表紙の左上方には、「ハイビジョン液晶テレビ」の記載、「本体接続部」の項に「PC-アナログ入力(青)」の記載、「パソコンを接続する」の項に「付属のVGAケーブルでパソコンのVGA出力と、本機のVGA入力を接続します。」の記載、「その他の情報\主な仕様」の頁に「42型 BS・110度CS・地上デジタルチューナー内蔵 ハイビジョン液晶テレビ」の記載がある。なお、乙第25号証には、「一歩進んだ使いかた\つないだ機器を使う」の頁に「[VGA]PC-アナログ入力端子に接続した機器の映像と音声を出力します。」の記載、90頁の「接続端子」の項目に「PC-VGA映像+ステレオ音声入力×1」の記載がある。
(5)以上からすると、本件商標が使用されたと認められる本件商品は、外部機器との接続として、PC(パソコン)との接続に係る説明があることが認められるものの、「O’ZZIO/StyleVision」に関する記事や広告とする前記1のとおりの本件商標の使用状況からすれば、テレビジョン受信機として販売されているものであって、テレビジョン受信機がパソコンに接続できるとする機能の一つとして記載され、認識されるというべきである。
そうすると、本件商品は、テレビジョン受信機というべきであり、パソコン用モニターとはいい得ないから、取消請求に係る指定商品に含まれるものとは認められない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人は、商標権者及び通常使用権者であるコヴィア社が、要証期間内に商品「パソコン用モニター」について本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることを証明したものとは認められない。
その他、被請求人は、取消請求に係る指定商品について、本件商標を使用している証明をしていない。
したがって、本件商標の登録は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その請求に係る指定商品について使用されていなかったものといわざるを得ず、また、使用していないことについて正当な理由があるものとも認められないから、商標法第50条第1項及び第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
別掲 別掲(本件商標)



審理終結日 2014-02-17 
結審通知日 2014-02-20 
審決日 2014-04-08 
出願番号 商願2006-49255(T2006-49255) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y09)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山田 正樹茂木 祐輔 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 手塚 義明
寺光 幸子
登録日 2007-02-02 
登録番号 商標登録第5023326号(T5023326) 
商標の称呼 スタイルビジョン、スタイルビゾン 
代理人 木村 美穂子 
代理人 山崎 和香子 
代理人 木村 満 
代理人 齋藤 宗也 
代理人 松嶋 さやか 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 
代理人 椎名 智子 

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