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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2013900010 審決 商標
無効2010890022 審決 商標
無効2013890003 審決 商標
平成19行ケ10391審決取消請求事件 判例 商標
無効2012890075 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W31
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W31
管理番号 1287633 
審判番号 無効2013-890066 
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-09-27 
確定日 2014-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5603736号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5603736号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5603736号商標(以下「本件商標」という。)は、「観音めだか」の文字を標準文字で表してなり、平成25年4月2日に登録出願され、第31類「めだか(食用のものを除く。)」を指定商品として同年7月10日に登録査定、同年8月2日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張(要旨)
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 請求人の業務について
(1)請求人は、2001年から川めだかの飼育を始め、2005年には白めだかの飼育を始めた。そして、2006年に白黒の斑の模様を有するめだかが存在することを知り、異種交配による錦鯉のような二色や三色に発色しているめだかを作り出すための改良を開始した。
請求人は、2007年に朱色(橙色)と白の二色めだかの育成に成功し、2010年には朱色、白色及び黒色の三色めだかの育成に成功し、同年、「観音蝦」なる名称(屋号)にてインターネットのヤフーオークション(以下「ヤフーオークション」という。)で観賞用改良めだかの販売を開始した。
(2)請求人が、2010年に、朱色の多い二色めだかを「紅観音大正二色」、朱色の多い三色めだかを「紅観音大正三色」、黒色の多い二色めだかを「黒観音大正二色」、黒の多い三色めだかを「黒観音大正三色」とそれぞれ命名し、ヤフーオークションに出品したところ、二色や三色に発色しているめだかは、当時大変珍しかったため急激に人気が上昇した結果、「観音蝦」なる名称に加えて各めだかの名称に「紅観音」、「黒観音」と「観音」なる語を共通させていたこともあり、「観音」なる語を含むめだかは、請求人の育成に依るものであると業界内において広く知られるようになった。
(3)請求人は、錦鯉の発色に近付けるべく、赤く発色するめだかを目指して更なる改良に取り組んだが、そもそも、めだかには赤色の色素が存在せず、業界では赤いめだかの育成は不可能とされていたのが通説であった。
しかしながら、改良めだかの歴史は10年ほどであって非常に浅く、未知な部分がほとんどであり、また、ほとんどの改良めだかが突然変異体に依るものであったため、請求人は、赤を発色する突然変異体が出ることもあり得ると考え、改良を続け、2010年11月に琥珀色めだかと墨黒めだかを交配してローズの赤に近い赤茶(赤琥珀)色のめだかの育成に成功した。
さらに、2011年1月には前述の赤琥珀色のめだかと紅観音大正三色との交配で、より赤に近いめだかの育成に成功した。
(4)請求人は、2011年1月に請求人の名称(屋号)を「観音めだか」に変更し、この赤色のめだかを含むめだかについて「観音めだか」の文字からなる商標を現在まで継続して使用している。
そして、「観音めだかは赤いめだか」としてヤフーオークションに出品を開始し、2011年1月15日には「観音めだかブログ」を開始した(甲4の1)。
(5)請求人は、水質のpHと総硬度(GH)がめだかの赤色の発色を促進することを発見し、また、より濃い赤色にするため鱗の厚みを増し、密度を上げるべく、餌に海洋性コラーゲン、カルシウム、ビタミンC、ビタミンBl、B2を強化した自家製餌を開発し、これらを与えて飼育したところ濃い赤色を発色するめだかを数十匹確認して、当該濃い赤色を発色する個体どうしを交配することで、現在、赤色の固定率が50%以上まで上がっている。
(6)ヤフーオークションヘの出品当初は、「赤いめだかなど存在しない」と疑問を抱く人も多かったが、購入して、実物のめだかを観察して、飼育している人達の意見、また、請求人が飼育方法、繁殖方法、健康管理等のアフターフォローにも力を入れた結果、赤色のめだかの信頼度及び請求人のサービスへの信頼度が上がり、現在では、通常のめだかの平均流通価格が1匹10円?1,000円であるところ、請求人が育成した赤色のめだかは1匹1万円?10万円という価格で落札され(甲3の1?11、甲5及び甲6の1?22)、最も高いものでは80万円で取引されたものもある。
また、請求人は現在、上記ブログ以外にホームページやフェイスブック等において、請求人の育成しためだかの紹介及び販売等の役務を行っている(甲7及び甲8)。
2 本件商標の登録を無効とすべき理由
(1)商標法第4条第1項第8号
ア 請求人は、2011年1月に、自ら創作した造語である「観音めだか」を請求人の飼育するめだかに関する業務の名称(屋号)として使用を開始し、現在に至るまで継続して使用しており、また、請求人の飼育する赤いめだかを販売する際も請求人商標「観音めだか」(以下「請求人商標」という場合がある。)を付して販売しているから、本件商標の登録出願時及び査定時の両時点において使用していることは明らかである(甲2?甲8)。
イ 甲第2号証の1は、請求人の顧客が、請求人のために顧客自ら作成して無償で提供した看板であり、該看板の裏面に彫られている作成年月日及び甲第2号証の2からみて、本件商標の登録出願時において、「観音めだか」が請求人の名称であると顧客の間で知られていたことも明らかである。その他にも、請求人の顧客から、本件商標の登録出願前に「観音めだか」と表示されたストラップが無償で提供された事実(甲9)も、「観音めだか」が請求人の名称(屋号)であることが顧客の間で知られていることを表している。
加えて、請求人は自己の名称(屋号)として「観音めだか」を使用したステッカーも製作しており(甲10)、現在に至るまで顧客に対して継続して使用している。
ウ 甲第2号証ないし甲第10号証は、「観音めだか」が請求人の名称(屋号)であることを客観的に証明するものであり、かつ、請求人の名称(屋号)が顧客の間で良く知られていることを証明している。また、甲第3号証ないし甲第6号証により、請求人が「観音めだか」なる名称(屋号)を現在に至るまで継続して使用していることも明らかである。
エ 被請求人が本件商標の登録出願前に請求人ヘメールを送る際の宛先として、請求人を「観音めだか様」と呼んでいること(甲11)から明らかなとおり、被請求人は請求人の名称(屋号)が「観音めだか」であることを知っており、被請求人は「観音めだか」が請求人の名称(屋号)であることを知っていて出願したことは明らかである。
したがって、被請求人は、故意に又は悪意で他人の名称について商標権を取得したといえる。
もちろん、被請求人は、請求人に対し本件商標の出願及び登録の承諾を得ようとしたことはなく、請求人は、被請求人による「観音めだか」の商標出願及び登録を承諾したことは一切ない。
オ 商標法第4条第1項第8号は他人の人格権を守る規定であると解されるところ、前述のとおり、本件商標の登録は、まさに請求人の人格権を侵害するものであり、本件商標は無効理由を包含する登録である。
なお、「観音めだか」は、請求人の名称(屋号)であって、名称の略称ではないから、同号に該当するために著名であることまでは要求されないものと思料するが、甲第2号証及び甲第9号証に示すとおり、また、後述の甲第12号証の1ないし1065に示すとおり、請求人商標は、めだかについて請求人が使用する商標として周知であることは明らかであり、当該めだかを販売等する際にも請求人は、屋号として「観音めだか」なる名称を使用しているから、請求人の名称(屋号)として周知であることも明らかである。
(2)商標法第4条第1項第10号
ア 上記1で述べたとおり、請求人が請求人商標の使用を開始したのは2011年1月であり、使用期間は4年足らずであるが、錦鯉や金魚等に比べると、改良めだか自体の歴史が非常に浅く、また、赤色のめだかの育成は不可能であると考えられていたので、その歴史自体が特に浅いものである。
しかしながら、請求人の創作した赤色のめだかの出現は業界においては画期的であり、また、今まで存在しなかった事物の名称は世間に早く浸透することはこれまでからよくみられる現象である。
イ 赤色のめだかは非常に珍しいため急速に人気が出ると共に、請求人は赤色のめだかの販売にあたり、飼育方法、繁殖方法、健康管理等のアフターフォローにも力を入れたので(甲4の1?94)、購入者の強い信頼を獲得し、本件商標の登録出願時において、請求人商標は、請求人が育成しためだか(赤色のめだかを含む。)を示す商標であるとして業界では良く知られたものとなっている。請求人商標が請求人の商標としてよく知られていることを証明する証明書(甲12の1?1065)を約1ヶ月程度の期間で1,065通集めることができたことにかんがみても、請求人商標が、請求人が飼育した赤色のめだかであることを示す商標としてよく知られていることを証明できるものである。
ウ 被請求人は、本件商標を出願する前から「観音めだか」なる商標を使用してヤフーオークションにてめだかを販売しているところ(出品者名akasiro23、kannon_medaka)、被請求人の出所に係るめだかを請求人の出所によるものと誤って購入した者から請求人に対する苦情が多く届いており(甲13)、また、ヤフーオークションに対しても苦情が寄せられたことから、被請求人の出品はいったん停止となったが、現在、被請求人は新たな出品者名(kannon4484)で出品を再開している。
請求人は、混同を防止すべく請求人のブログ等で注意喚起を行っているが、誤って購入する者も後を絶たない。
エ 上述のとおり、実際に混同が生じている事実があるから、請求人商標は、請求人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であることは明らかである。
したがって、請求人商標は、請求人によって飼育されためだかを示す商標として本件商標の登録出願時において周知であり、請求人は現在も請求人商標を継続して使用しているので、より周知性を増している。
(3)商標法第4条第1項第16号
ア 請求人は、自ら飼育した赤色のめだかに請求人商標を付して販売する際には、赤色を発色するめだかであることを確認した後、写真を付けてヤフーオークション等で販売し(甲3の1?11)、アフターフォローにも力を入れている(甲4の1?94)。
その結果、現在、請求人商標が付された赤色のめだかは、請求人の飼育によるものであることが需要者及び業界において周知となっている(甲12の1?1065)。
したがって、被請求人が「観音めだか」なる商標をめだかに付して販売すれば、購入者は、請求人の出所に係るめだかであると信じて購入することになり、請求人のめだかは赤色の発色がよく元気なめだかであるのに対して、被請求人は、主としてめだかを卵で販売しているから、赤色のめだかが生まれるかどうかは不明であり、かつ、孵化して元気に育つかどうかも不明であるから、顧客が被請求人によって販売されためだかやめだかの卵を購入すれば、商品の品質の誤認が生じるおそれがある。
イ 請求人は、自己のブログでめだかの飼育方法等のノウハウを提供したり(甲4の1?94)、万が一にも死亡して顧客へ届いた場合には死亡補償を付ける等のアフターフォローにも力を入れており(甲3の1?11)、高額のめだかも安心して購入できるという信頼が顧客の中にあってリピーターも多くいるので、「観音めだか」なる名称(屋号)には既に請求人の信用が化体しているといえる(甲14)。
被請求人が「観音めだか」なる商標を付してめだかを販売すれば、購入者は請求人のサービスが受けられると信じて購入するから、サービスの質の誤認が生じるおそれがある。
したがって、本件商標は、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれが非常に高い商標である。
(4)商標法第4条第1項第7号
ア 被請求人は、請求人が撮影してブログに使用した赤色のめだかの写真(甲15及び甲17)をさらに赤色に着色し、請求人に無断で使用して自己のめだかを販売した事実がある(甲16及び甲17)。
また、被請求人は、請求人が販売の際に利用しているヤフーオークションで販売しているため、上記(2)のとおり、被請求人の販売によるめだかを請求人の出所に係るものと誤って購入した者は多く、被請求人に対する苦情が請求人に殺到している(甲13)。
イ 被請求人は、ヤフーオークションにて送料無料と記載しながら、高額の梱包料を徴収しており、当該梱包料について問い合わせをした顧客に対しても悪態をつくので、「非常に悪い出品者」と評価している者もおり(甲18)、アルビノ種と表示して、アルビノ種ではないめだかの卵を販売してトラブルとなったこともある(甲19)。
請求人は、自己のホームページやブログ等で、被請求人の商品と請求人の商品は全く関係がない旨を記載して、購入者の誤認・混同を抑止すべく努めているが(甲20)、同様な苦情が後を絶たない状態である。
ウ なお、写真が盗用された件に関しては、明らかに請求人の営業上の利益を害する行為であるから、請求人は、写真やブログの文章を無断で使用しないこと、「観音めだか」等の請求人の商標をオークション等で使用しないこと、請求人のオークションに入札しないこと、「観音めだか」等請求人のブランドに関して商標登録しないこと等を求めた通知書を平成25年3月13日に書留内容証明郵便として被請求人に送付しているが(甲21)、未だに合意に至っていないどころか、被請求人は請求人に対して執拗に嫌がらせのメールを送りつけている(甲22)。
エ 加えて、被請求人は請求人の商標だけではなく、甲第23号証に示す他人の商標登録第5375468号(「紅桜」:指定商品第31類「魚類(食用のものを除く)」)と同一の称呼の「紅桜」を「観音」なる用語と組み合わせて、何らの権原もなく「観音紅桜」として自己のめだかの卵の販売を行っている事実もある(甲24)。
オ 請求人を含む有志らが、めだかの販売にあたり、被請求人のように写真を加工して販売する悪質な業者をオークションから排除すべく考案した4原色シール(写真のめだかの色が本物のめだかの色であると確認できることを目的として作られたシール。(甲3、甲4等))に関しても、被請求人は、全く考案していないにもかかわらず、盗用して商標登録等の権利取得を画策している(甲25)。
カ かかる現状にかんがみるに、仮に、本件商標の登録が無効とならず、被請求人が継続して本件商標をめだかについて使用すれば、請求人が長年努力して請求人商標に化体させた信用にただ乗りし、また、当該信用を希釈し、汚す行為であるのみならず、実際に需要者に商品の品質又は役務の質の誤認が生じているから、健全な商取引を実現することにより産業の発達に寄与し、併せて、需要者の利益を保護することを目指す商標法の目的に反するものであって、本件商標は公序良俗を害する登録商標であることは明らかである。
3 むすび
請求人が「観音めだか」という名称を想到するに至ったのは、幼いころから住んでいる京都市北区鷹峰にある鷹峯三山のひとつから、かつて水晶が採掘され、「観音山」と呼ばれていたことに端を発する。観音山は京都を守る五方の北の神山であり、観音は慈悲の神といわれている。
請求人は、不可能といわれていた赤色のめだかの育成に成功した際、この赤色のめだかが人を癒し、その色や姿で人々に喜びを与えてくれることを願って「観音めだか」の名称を想到するに至り、また、自らの屋号を「観音めだか」とした。そして、請求人はこの赤色のめだかを販売するだけではなく、アフターフォローにも力を入れるという努力をした結果、現在では1匹数万円で取引されるほどの人気を得られるようになり、自らの造語した「観音めだか」という屋号に信用を化体させてきた(甲12の1?1065)。
また、前述した被請求人の行為は、商標法のみならず知的財産法の立法の精神とは全く異なるものであり、被請求人が本件商標権に基づいて請求人に権利行使を行うようなことがあれば、権利の濫用であることは明白であるが、被請求人のこれまでの言動にかんがみると、本件商標権によって請求人に権利行使を行うことが強く予想されたので、請求人は、平成25年9月4日付の書留内容証明郵便にて、被請求人が請求人に商標権に基づく請求を行ったとしてもこれに応じる予定はない旨及び本件商標に対し無効審判を請求する旨を通知する通知書を送付している(甲27)。
請求人は、甲第1号証ないし甲第27号証(枝番号を含む。)の存在によって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第16号及び同第7号に該当するため、同法第46条第1項第1号により無効にされるべきものと確信している。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対し何ら答弁していない。

第4 当審の判断
1 本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)請求人の主張及びその提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、2011年(平成23年)1月15日に「観音めだか」と称するブログ(http://blog.kannon-medaka.com/)(以下「請求人ブログ」という。)を開設し、頻繁に掲載内容を更新している(甲4の1?94、甲9、甲10、甲15、甲20)。
請求人ブログは、掲載内容は日々更新されるものの、赤と黒を基調にした横長長方形の冒頭の部分は変わることなく、そこには、めだかの写真を背景に、「ちいさな出逢いから/紬がれゆく和み/?観音めだかの日々徒然?」との表題及び説明文が記載され、かつ、冒頭部分内右下の四角形中に「観音めだか」の文字(「観音め」の文字が縦書きされ、「め」の文字の右横に「だか」の文字が横書きされている。)を大きく表示し、「だか」の文字部分の上段に「kannon-medaka」の文字を小さく併記した構成からなる標章(別掲参照。以下「請求人使用商標」という。)が常に表示されている。
そして、請求人ブログには、めだかの飼育方法、繁殖方法、健康管理、ヤフーオークションへの出品等についての説明を始めとする種々の情報が、めだかの写真と共に掲載されており、これに対する読者、顧客等からの質問、感想、意見等と請求人による回答も掲載されている。
イ 例えば、2011年(平成23年)に更新されたブログでは、02.17付の「へそまがり」の見出し下における、「・・・ご近所さんが、紅観音大正三色を見て、・・・あれだけこだわって出した、紅・黒・白は、誰が見ても『紅観音大正三色』だと自負していた・・・」等の記述(甲4の7)、02.18付の「コメント」欄における「お師匠様・・・昨年落札した大正三色&白観音の卵から、・・・(沙悟浄)」、「沙悟浄さん 観音シリーズは、普通種のみで繁殖してますので、・・・(観音めだか)」等の記述(甲4の9)、03.08付の「紅観音大正三色 オス 出品致しました」の見出し下における、「久しぶりの、紅観音出品です。紅観音・黒観音・白観音の、観音シリーズ。今、観音シリーズに、新しい仲間を加えるため、繁殖期間中です。本来の、極上紅観音大正三色は、赤に近い濃い朱色、分厚い色乗りした鱗、敷石模様の墨黒、クリアーな白、この4つを重視した個体です。」等の記述(甲4の13)、03.27付の「いろんなタイプ 紅観音」の見出し下における、「紅観音シリーズは、模様も色も、多種多様でバリエーション楽しめます。紅観音の基本模様は、濃赤朱、青系の墨黒、透明感のある白、この三色。黒は敷石模様、・・・」等の記述(甲4の14)、05.15付の「紅観音大正二色」の見出し下における、「久しぶりの、二色個体です。紅観音は基本を三色としてますが、二色も綺麗ですね。」等の記述(甲4の23)、05.20付の「紅観音の名称表示について」の見出し下における、「・・・※紅観音・黒観音・白観音大正カラーは、錦鯉の表現を目指した個体で、・・・黒観音大正二色は、黒の体色に頭部朱、体に朱がのった二色個体となります。黒観音大正三色は、黒の体色に頭部朱、体に朱と濃い黒がのった三色個体となります。紅観音大正二色は、透明鱗体に頭部朱、体に朱がのった二色個体となります。紅観音大正三色は、透明鱗体に頭部朱、体に朱、黒がのった三色個体となります。白観音大正三色は、クリアーホワイトの体色に、頭部朱、体に朱、黒がのった三色個体となります。」等の記述(甲4の24)、07.12付の「新たな 観音シリーズ」の見出し下における、「昨年秋頃から、新たな観音シリーズを試作しておりました。2種類の、新シリーズを作っています。」等の記述(甲4の29)、07.27付の「品種改良」の見出し下における、「めだかの進化は、日々スピードアップしているように感じます。昨年はまだ、ブチや、二色が主流で、昨年、紅観音大正三色を初出品してから、この1年で、三色めだかがこんなにもたくさん世にでてくるとは、・・・」等の記述(甲4の31)やめだかの写真が掲載され、2012以降も、01.02付の「2012年☆初出品☆」の見出し下における、「新年の初出品は!☆やっぱり!紅観音です」等の記述(甲4の49)に始まり、随時更新がされている。
ウ 請求人ブログについては、2012.10.09付のブログによると、2012年(平成24年)10月に2ヵ月連続20,000アクセス数に達し、2013.07.02付のブログによると、2013年(平成25年)6月の総アクセス数が34,267件、ブログ総記事数が700を超えた(甲4の74及び92)との記述がある。
エ 請求人は、2010年(平成22年)から、錦鯉のように二色や三色に発色させた観賞用改良めだかについて、「紅観音大正二色」、「紅観音大正三色」、「黒観音大正二色」、「黒観音大正三色」等と称して、ヤフーオークションにおいて販売を開始したと主張しているところ、請求人は、「kannon_shrimp」の出品者名で「☆京都発【観音めだか】」の表示を用いて販売を行い(甲5)、甲第14号証の請求人(kannon_shrimp)のヤフーオークションでの評価一覧の記載によれば、最先のオークションは、2011年(平成23年)1月5日が終了日時となっている。
さらに、請求人は、2013年(平成25年)2月16日以降、ヤフーオークションにおいて「【観音めだか】■極上(C)■濃赤紅観音メス1匹■+おまけ」、「【観音めだか】リピーター様限定■極上(C)■濃赤紅観音メス1匹」、「【観音めだか】■画像のめだか全部■新種改良中■(1)」、「【観音めだか】■特選(A)■濃赤紅観音メス1匹■」等の表示の下に、商品「めだか」の写真と共に商品の説明を付して繰り返し出品しており、その後も継続してオークションが行われ、いずれも落札されている(甲3の1?11)。
上記ヤフーオークションのウェブサイトにおいては、請求人の商品「めだか」について常に「観音めだか」(請求人商標)の文字が表示されている。
オ 本件商標の登録出願後の例ではあるものの、平成25年5月21日から同年9月8までの約3か月間にヤフーオークションにおいて、請求人(kannon_shrimp)の飼育しためだかが、京都発【観音めだか】として、1万円から2万円前後で繰り返し落札され、同年7月16日には、28万円で落札されている(甲5)。また、「観音めだか 請求人」を送り主として、種々のめだかが本件商標の登録出願前の平成23年5月17日から同25年5月28日にかけて、三重県、大阪府、兵庫県、岡山県、滋賀県、千葉県、愛知県、愛媛県、岐阜県、東京都、高知県、神奈川県、茨城県、福岡県、熊本県、長崎県、広島県等の各地に所在する複数の顧客(落札者)に対して発送され、代金が請求人の銀行口座に振り込まれている(甲6の1?22)。
カ 請求人は、上記アの請求人ブログのほか、「観音めだか」と称するウェブサイト(http://kannon-medaka.com/)(以下「請求人サイト」という。)を開設し、「観音めだかのお店」として請求人の飼育しためだかの紹介及び販売を行っている(甲7及び甲8)。請求人サイトには、請求人ブログと同様、その冒頭の赤と黒を基調にした横長長方形内に、めだかの写真及び請求人使用商標が表示されている。
キ 請求人商標の周知性に関し、「平成23年1月から今日に至るまで継続して請求人が商品『赤色系の色彩を有するめだか』について、請求人商標を使用していること、請求人が請求人商標を使用した上記商品を主としてヤフーオークションによって販売し、請求人サイトとブログにおいても宣伝広告、販売をしていること、及びその結果、請求人商標は、上記商品が請求人の業務に係る商品であることを直ちに認識させるほどに周知になっている」旨を証明する書面が、九州、四国から本州に及ぶ各地域に所在する1,000名を超える者(主に請求人の顧客と考えられる。)によって提出されている(甲12の1?1065)。
(2)以上を総合すると、請求人は、改良めだかを対象とした比較的特殊な分野の商品について主にヤフーオークションにおいて取引を行っているところ、改良めだかは錦鯉や金魚に比べ歴史が浅く、特に二色や三色に発色しているめだかは珍しいことから、請求人の飼育しためだかは短期間に人気が上昇したことが窺われ、請求人商標は、請求人の業務に係る商品「めだか(「赤色系の色彩を有するめだか」を含む。)」を表示する商標として、本件商標の登録出願時には既に、その取引者、需要者、特にめだかの愛好家の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものといえる。
(3)他方、本件商標は、前記第1のとおり、「観音めだか」の文字からなるものであって、請求人商標と同一又は類似といい得るものであり、その指定商品も請求人商標の使用に係る商品と同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
2 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 以下のウの記載よりすれば、被請求人は、「出品者:akasiro23」と認められ、本件商標の登録出願前に、ヤフーオークションにおいて、商品「めだか」の写真と共に以下のような商品説明を付して、改良めだかを出品した(甲16)。
「最初で最後の出品/超極上濃赤紅観音大正三色めだかの卵20個+αの出品です/画像1と2は親です。/・・・/観音メダカさんから、より良い個体を厳選して譲って頂き/(涙が出るほど高価格で落札しました)/・・・/メール速達便での発送ですが福岡からの発送となり・・・/(2013年2月22日16時34分追加)」
イ 本件商標の登録出願前の2013年2月23付の請求人ブログには、「【☆緊急の呼びかけです!!】」の見出し下に、「・・・下記の出品ですが、この個体は、全く違う県に住む、親しいめだか仲間に販売した個体ですが、何故か??福岡の方が出品されています。超極上濃赤紅観音大正三色めだかの卵20個+α・・・このオークションは、問題!ではないでしょうか?!しかも、写真は、私が撮影し、当ブログ1月17日と1月20日に、掲載したものを、異常加工したものです。」として、「当方が撮影した写真」と「加工した出品写真」とが対比して掲載され、さらに、「ましてや、写真を勝手に使用することは、当ブログ内で禁止しています。・・・当ブログ内の写真を無断掲載し、しかも、持っていない個体を、あたかも所有しているように、説明されています。」等の記述がされている(甲20)。
ウ 被請求人は、本件商標の登録出願前の2013年2月27日及び同月28日に請求人に対し、「件名:Re:オークション入札の件」として要旨以下のような電子メールを送付した(甲11)。
「こんばんは、貴方の嫌いなakasiro23です。・・・a.『観音めだか』等々の商標登録はおすみでしょうか?一応来週、商標登録申請手続きを申請開始したいと思います。b.4色シールですが来週からオークションに出品を考えています。・・・24時間以内に回答無き場合どちらも登録無きものと考え『観音めだか』のオークションでの使用、4色シールのオークション出品をさせて頂きます。」(2月27日送信)
「観音めだか様 先ほどのメールに対するご回答お待ちしております。・・・めだか村の方々の商標登録も同時に進めている事をお伝えいたします。又、信頼関係を築きたいと言われていますが、観音めだか様の本名、連絡先等も教えてもらえず如何なものかと思います。・・・」(2月28日送信)
エ 請求人は、代理人を通じて本件商標の登録出願前の平成25年3月13日付で要旨以下のような内容の「通知書」を被請求人に送付した(甲21)。
「・・・貴殿は、平成25年2月26日に通知人(合議体注:請求人)のブログ内掲載写真を無断で画像処理した上で、『観音めだか』を所持し譲渡可能であるかの如く装って、オークションの出品のために使用しました。かかる行為は、通知人の著作権あるいは著作者人格権を侵害する行為であるとともに、通知人の営業上の利益を違法に侵害します。・・・貴殿に対し、次の5点を求めます。a.通知人のブログ並びにオークション内掲載写真及び文章を無断使用しないこと。b.『観音めだか』『紅観音』をオークション等に使用及び出品しないこと。c.通知人の出品するオークションに入札しないこと。d.『観音めだか』『紅観音』等、当ブランドに関して商標登録しないこと。e.4色シールは正規のものを使用し、不正に模倣したものは使用しないこと。以上をお約束頂けるのでしたら、通知人は貴殿についてのブログの記事を撤回させて頂きます。お約束頂ける場合は、合意書を交わしたいと存じますので、当職までご連絡ください。・・・」
(2)以上を総合すると、被請求人は、請求人と同様にヤフーオークションにおいて「めだか」の取引を行っており、請求人とは同業者といえること、請求人商標は、上記1(2)のとおり、めだか愛好家の間において広く認識されていること、被請求人は、本件商標の登録出願前に、めだかのオークション等に関して請求人と電子メールを交換し、さらには、請求人(代理人)から警告を内容とする通知書を受け取っていること、本件商標は、請求人商標と同一又は類似といえるものであることなどが認められるものであり、被請求人は、請求人商標及び請求人の存在を熟知した上で、請求人商標が登録出願されていないことを奇貨として、先取りし、不正の目的をもって剽窃的に本件商標の登録出願をしたものといわざるを得ない。
上記のとおり、被請求人の本件商標の登録出願は、商標登録出願について先願主義を採用し、また、現に使用していることを要件としていない我が国の法制度を前提としても、健全な法感情に照らし条理上許されないというべきであり、また、商標法の予定する秩序に反するものというべきであるから、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第10号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(請求人使用商標)(色彩は原本参照)




審理終結日 2014-02-28 
結審通知日 2014-03-04 
審決日 2014-03-27 
出願番号 商願2013-23869(T2013-23869) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (W31)
T 1 11・ 25- Z (W31)
最終処分 成立  
前審関与審査官 矢澤 一幸 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 村上 照美
大森 健司
登録日 2013-08-02 
登録番号 商標登録第5603736号(T5603736) 
商標の称呼 カンノンメダカ、カンノン 
代理人 安藤 順一 
代理人 伏見 康司 
代理人 上村 喜永 
代理人 前川 真貴子 

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