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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服20138058 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 取り消して登録 X12 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 取り消して登録 X12 |
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管理番号 | 1287587 |
審判番号 | 不服2013-9036 |
総通号数 | 174 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2014-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-05-16 |
確定日 | 2014-05-12 |
事件の表示 | 商願2011-10905拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願商標 本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第12類「二輪自動車」を指定商品として、平成23年2月18日に登録出願されたものである。 第2 原査定の拒絶の理由の要点 原査定は、「本願商標は、二輪自動車の一類型である立体的形状を表したものと容易に認識されるものであり、本願指定商品においては、各種の形状よりなる商品を採択し、需要者の購買意欲を高めているといえるので、これを本願指定商品に使用しても、単に商品の形状を表示してなるものと認識されるものであるから、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと認める。また、出願人は、意見書、手続補足書において資料第1号証ないし第3号証を提出し、商標法第3条第2項(使用による識別性)を主張しているが、提出された各号証からは、本願商標が、需要者が出願人の業務に係る商品であることを認識することができる商標とは認められない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、同条第2項に該当するに至っていないとするのが相当である。」と認定、判断し、本願を拒絶したものである。 第3 当審の判断 1 商標法第3条第1項第3号該当性について (1)本願商標の構成 本願商標は、別掲のとおり、二輪自動車の一種と看取される立体的形状からなるところ、その形状は、大別して、ヘッドライト、ハンドル、フロントフォーク、前車輪、フロントフェンダ、レッグシールドを有するフロントカバー、リヤカバー、燃料タンク、シート、エンジンのクランクケース、チェーンケース、リヤフォーク、テールライトを有するリヤフェンダ、キャリア、リアサスペンション、マフラー、後車輪により構成されるものである。 (2)本願商標の識別性 前記(1)を踏まえて本願商標の形状について考察すると、その構成中のレッグシールドを有するフロントカバー及びステップスルー(跨ぎ空間)が特に特徴のある形状を有しており、また、これらと組み合わされた大径の車輪、リヤフォーク、キャリア、サスペンションの配置等の特徴とも相俟って、本願商標は、看者に対し、他の二輪自動車(ステップスルーがなく車体を跨いだ乗車姿勢で大径車輪を有するもの、及びフロアーで足を揃えた乗車姿勢のもので小径車輪を有するもの。)とは異なる独特な印象を与え、全体として、需要者の目につきやすく、印象に残りやすいものといえる。 他方、該特徴は、走行性能を高めるための大径の車輪、乗り降りの容易さと車体の強度等の双方を考慮した適度な高さの跨ぎ空間、これら車輪と跨ぎ空間の形状にあわせた防風と泥よけのためのレッグシールドを有するフロントカバーであると看取されるものであり、また、リヤフォーク、キャリア及びサスペンションを組み合わせた形状も、二輪自動車において一般的に用いられ得る形状の範囲内のものといえるから、いずれの特徴も、二輪自動車としての機能を高め、美感を惹起させることを目的としたものというべきである。 そうとすると、本願商標は、これを見た需要者に対して、機能性及び美観を兼ね備えた二輪自動車の形状を表したものと看取させるから、本願の指定商品との関係において、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表したにすぎないものというべきである。 よって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。 2 商標法第3条第2項該当性について (1)立体商標における使用による識別力の獲得 立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、当該商標ないし商品等の形状、使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣伝のされた期間・地域及び規模、当該形状に類似した他の商品等の存否などの諸事情を総合考慮して判断するのが相当である。 そして、使用に係る商標ないし商品等の形状は、原則として、出願に係る商標と実質的に同一であり、指定商品に属する商品であることを要するというべきである。 もっとも、商品等は、その製造、販売を継続するに当たって、技術の進歩や社会環境、取引慣行の変化等に応じて、品質や機能を維持するために形状を変更することが通常であることに照らすならば、使用に係る商品等の立体的形状において、ごく僅かに形状変更がされたことや、材質ないし色彩に変化があったことによって、直ちに、使用に係る商標ないし商品等が自他商品識別力を獲得し得ないとするのは妥当ではなく、使用に係る商標ないし商品等にごく僅かな形状の相違、材質ないし色彩の変化が存在してもなお、立体的形状が需要者の目につき易く、強い印象を与えるものであったかなどを総合勘案した上で、立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているかを判断すべきである(平成22年(行ケ)第10253号、知的財産高等裁判所平成23年6月29日判決言渡参照)。 (2)本願商標の使用による識別力 以下、請求人の主張及び提出に係る各甲号証から、前記(1)の観点に照らして、本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否か検討する。 ア 本願商標の形状 本願商標に係る立体的形状は、その構成中のレッグシールドを有するフロントカバー及びステップスルー、また、これらと組み合わされた大径の車輪、リヤフォーク、キャリア、サスペンションの配置等における特徴により、全体として、他の二輪自動車と異なる一定の特異性を有しているということができる。 イ 本願商標の使用の実情 (ア)使用開始時期及び使用期間 本願商標は、請求人が製造販売する二輪自動車であるスーパーカブ(以下、そのシリーズ商品も含めて「スーパーカブ」という。)の基本デザインであり、スーパーカブは、まったく新しいカテゴリーの二輪車を具体化したもの(甲第2号証の3)として、1958年8月に、初代モデルが発売されて以来、モデルチェンジを繰り返し、派生モデルも生じているものの、その基本デザインは、50年以上も変更されていない(甲第1号証、甲第2号証の4、甲第5号証、甲第6号証、甲第13号証など。)。 (イ)生産台数 スーパーカブの生産台数の累計は、1958年当時の我が国の50ccの二輪自動車の存在台数が30万台弱であった中(甲第11号証。なお、スーパーカブの当初モデルの排気量は50cc。)、登場から約3年後の1961年6月までに100万台を超え、1966年に500万台、1976年に1,000万台、1991年に2,000万台、2000年に3,000万台、2003年に4,000万台、2005年に5,000万台、2008年に6,000万台を超えて、世界最多量産の二輪自動車となっており、その後もその記録を更新し、2012年には、生産累計台数が7,600万台以上となっている(甲第3号証ないし甲第6号証)。 (ウ)使用地域 スーパーカブは、日本全国にある請求人の二輪自動車販売店で販売されており、スーパーカブの販売店は、請求人のウェブサイトから検索することができるところ(甲第19号証)、当審における職権調査によれば、例えば、東京都に所在する販売店の検索結果は162店舗である。 また、スーパーカブは、郵便、新聞、牛乳等の配達、蕎麦等の出前、銀行等の営業、警察官、通勤や通学などに用いられるため(甲第7号証、甲第9号証、甲第10号証、甲第12号証、甲第16号証)、幅広い層の需要者に使用されている状況からすれば、実際にスーパーカブを使用している者以外の者においても、本願商標を目にすることは多いものといえる。 (エ)広告宣伝等 請求人は、1958年から現在に至るまで、スーパーカブの商品カタログを毎年のように作成、発行するとともに、スーパーカブの広告を新聞、雑誌などの媒体に掲載してきており、これらのカタログや広告には、本願商標が掲載されている(甲第5号証、甲第6号証、甲第9号証、甲第10号証、甲第14号証)。 また、スーパーカブを単独で特集した書籍や、特集記事を掲載した雑誌なども多数発行されており、それらによれば、スーパーカブは、日本全国どこでも見かけることができ(甲第5号証)、生活の中に溶け込むように使用され、社会の風景の一部になるほど、身近な存在となっており(甲第5号証、甲第7号証、甲第10号証、甲第13号証、甲第16号証)、いつも視界のなかを走るオートバイであった(甲第9号証)などの記載があり、このことから、本願商標は、我が国において、広く一般に知られているといえる。 (オ)本願形状に類似した他の商品の存否 インターネット情報等によれば、本願商標の特徴を有する二輪自動車として、ヤマハ発動機株式会社のヤマハメイトシリーズ(以下「ヤマハメイト」という。)又はスズキ株式会社のスズキバーディーシリーズ(以下「スズキバーディー」という。)に関する情報が見受けられる。 しかしながら、ヤマハメイト及びスズキバーディーは、いずれもスーパーカブの後発商品であり(甲第8号証)、それらの生産台数がスーパーカブの生産実績と同等といえるほどの情報も見当たらず、また、需要者はヤマハメイト又はスズキバーディーも含めて、本願商標の特徴を有する二輪自動車をスーパーカブと認識するといわれることもあり(甲第23号証)、さらに、ヤマハメイトは2008年9月に生産終了し(甲第22号証)、スズキバーディーも既にその一部が生産終了となっている(甲第21号証)。 そして、これらのほかに、本願商標の特徴を有する二輪自動車は見当たらない。 他方、本願商標は、「2008年度 グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」及び「2008年度 グッドデザイン・ライフスケープデザイン賞」を受賞し(甲第2号証)、「2009日本自動車殿堂 歴史車」にも選定登録されている(甲第4号証)。 ウ 小括 以上からすれば、本願商標は、1958年以降、モデルチェンジを繰り返し、派生モデルも生じているものの、その特徴において変更を加えることなく、本件審決時までの50年以上にわたって、請求人により製造、販売されている二輪自動車であるスーパーカブの立体的形状であり、その生産台数は一貫して極めて多く、日本全国で販売され、幅広い層の需要者に使用されているものである。また、本願商標は、長年にわたり多くの広告や雑誌等において紹介され、そのデザインの継続性から各種デザイン賞にも選定されているものであり、さらに、本願商標と出所の混同を生じるおそれがある他人の二輪自動車は見当たらないものといえる。 そうとすれば、本願商標は、二輪自動車について使用された結果、請求人を出所とする識別標識として、需要者が認識するに至ったものというのが相当であるから、本願商標は、自他商品識別力を獲得するに至っており、本願の指定商品である二輪自動車の需要者が、本願商標に接するときは、請求人に係る二輪自動車であることを認識することができるものというのが相当である。 したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するというべきである。 3 まとめ 以上のとおり、本願商標は、その指定商品について、商標法第3条第2項の要件を具備するものであるから、同条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶する限りでない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(本願商標) 1 左側面図 ![]() 2 右側面図 ![]() 3 正面図 ![]() 4 左前方斜視図 ![]() 5 右後方斜視図 ![]() |
審決日 | 2014-03-27 |
出願番号 | 商願2011-10905(T2011-10905) |
審決分類 |
T
1
8・
13-
WY
(X12)
T 1 8・ 17- WY (X12) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 白倉 理 |
特許庁審判長 |
寺光 幸子 |
特許庁審判官 |
手塚 義明 根岸 克弘 |
代理人 | 鷺 健志 |
代理人 | 野村 明代 |