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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X30
審判 全部無効 外観類似 無効としない X30
審判 全部無効 観念類似 無効としない X30
審判 全部無効 称呼類似 無効としない X30
管理番号 1287527 
審判番号 無効2013-890055 
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-08-05 
確定日 2014-04-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5354984号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5354984号商標(以下「本件商標」という。)は、「ジュアアルディ」の片仮名を標準文字で表してなり、平成22年2月22日に登録出願、第30類「茶」を指定商品として、同年8月10日に登録査定、同年9月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する登録商標は、以下の2件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第4115001号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成8年3月5日に登録出願、第30類「茶,コーヒー及びココア,コーヒー豆,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,酒かす」を指定商品として、同10年2月20日に設定登録されたものである。
2 登録第4711250号商標(以下「引用商標2」という。)は、「JUAR TEA」の欧文字を標準文字で表してなり、平成14年5月14日に登録出願、第30類「茶」を指定商品として、同15年9月19に設定登録されたものである。
以下、上記2件の引用商標をまとめて「引用商標」という。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。
なお、請求人は、審判請求書において、請求人を甲、被請求人を乙と記載し、また、引用商標1をイ号商標、引用商標2をロ号商標と記載しているが、当合議体は、甲を請求人、乙を被請求人、イ号商標を引用商標1及びロ号商標を引用商標2と置きかえて審理した。
1 無効の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とされるべきものである。
2 本件商標及び引用商標
(1)本件商標
本件商標は、「ジュアアルディ」を横書きしてなり、指定商品は第30類「茶」であるが、被請求人が実際に使用する商品は「アフリカ産茶葉」であり、本件商標の商標権者(被請求人)は、ジュアールジャパン株式会社(以下「ジュアールジャパン」という。)である(甲1)。
(2)引用商標1
引用商標1は、太陽のマークとともに、「Jua & Ardhi」と「JUAR」が二段書きとなっている。「Jua & Ardhi」とは、アフリカの言葉で、Jua(ジュア:太陽)とArdhi(アルディ:大地)の2語からなる言葉であり、Juar(ジュアール)とは、JuaとArdhiの2語を合体させて作った造語である。
なお、商標公報(合議体注:特許庁電子図書館の「商標出願・登録情報」と思われる。)によると該当部分の称呼は「ジュアアンドアーデ」となっているが、実際に請求人が使用している称呼は「ジュアアルディ」であり「&」は単なる結合記号でサイレントとなっている。指定商品は、第30類「茶」などであるが、請求人が実際に使用する商品は「アフリカ産茶葉」である。
引用商標1の商標権者は、請求人と株式会社サンフィールド(以下「サンフィールド」という。)の共有に係るものである。
(3)引用商標2
引用商標2は、「JUAR TEA」の文字からなり、指定商品は第30類「茶」などであるが、請求人が実際に使用する商品は「アフリカ産茶葉」である。上記(2)のとおり、Juar(ジュアール)とは、Jua(ジュア:太陽)とArdhi(アルディ:大地)の2語を合体させて作った造語である。
引用商標2の商標権者は、請求人とサンフィールドの共有に係るものである。
3 具体的な無効原因
(1)ジュアールティー事業の経緯
請求人とサンフィールドは、平成8年頃から、アフリカから輸入した茶葉を加工した商品「茶」に関して、「ジュアールティーブランド」として、請求人とサンフィールドの協力のもと製造・販売を行って事業を進めてきた。請求人とサンフィールドの共同名義の形で平成8年から同15年にかけて、引用商標1及び引用商標2を含む複数の商標権を取得した。
請求人とサンフィールドの間の協力体制による取引は、平成18年まで順調に推移してきたが、同19年初頭から急に減少し、同20年2月以降不自然な形で停止されてしまった。サンフィールドは、ジュアールティーブランド事業以外の事業の失敗のため、会社が事実上の休眠状態に陥っていることが分かった。
(2)被請求人による侵害行為の露見
被請求人は、平成19年初め頃、サンフィールドの一部社員を引き抜いて被請求人(会社)に入社させ、「ジュアールティーブランド」を始めた。当初はサンフィールドから買い受けた「ジュアールティーブランド」商品の在庫を販売していたようであるが、さらに、「ジュアールティーブランド」商品をあたかも自らのブランドとして製造、販売を企図し、引用商標1及び引用商標2を含む商標権のサンフィールドの持分の譲り受けを画策して、請求人に対して商標法第35条で準用する特許法第73条第1項の譲渡同意を求めてきた。請求人は、共有者であるサンフィールドの持分譲渡に関して、同意をせず明確に断った(事実1)。
請求人は、状況を確認すべくサンフィールド代表者をはじめ同社幹部に連絡を取ろうとしたが、電話もつながらず、同社の住所地や関係先を訪ねても既に引き払われていた状態であり、連絡不能に陥っている。なお、サンフィールドは登記簿上、現在も破算、清算などはしておらず休眠状態のまま存続しているようである。
その後、被請求人は、引用商標1や引用商標2などの商標権の一切の持分を持つことなく、無権限のままなし崩し的に、遅くとも平成21年2月から「製造者:ジュアールジャパン株式会社」として茶を製造し、「ジュアールティーブランド」をあたかも自社ブランドとして指定商品「茶葉(アフリカ産茶葉)」に使用して販売を開始した。その商品パッケージには、引用商標1や引用商標2と酷似した商標が使用されている。その一例として入手した引用商標1の商品パッケージを提出する(甲5に添付した「甲1」を援用)。
また、被請求人は、そのホームページにおいて引用商標1や引用商標2と酷似した商標を掲載し、被請求人自らの「ジュアールティーブランド」の販売の誘因を行ってきた。つまり、「製造者および販売者:ジュアールジャパン株式会社(被請求人)」として商標を使用している。この事実を立証するため、公証人竹中邦夫役場において作成した事実実験公正証書の謄本を提出する(甲4)。同証書において立証されていることを要約すると、被請求人の公式販売サイトにおいて、同証書の別紙3及び別紙4が表示され、各商品パッケージに同証書の別紙1にかかる引用商標1や引用商標2が無断使用されている事実が公証されている。
その後、請求人は被請求人に対して、被請求人による商標権の違法侵害状態を解消させるべく、交渉の経緯を持ったが、誠意のない態度に終始したため、請求人は、侵害の事実とそれら交渉経緯の事情を説明した判定(判定2010-600060 以下「本判定」という。)を請求し、「被請求人使用にかかる商標は、商標が同一又は類似、商品が同一又は類似であるものとして、被請求人の製造販売行為が、明らかに請求人のイ号商標権、ロ号商標権の効力の範囲内に属する。」旨の判定を得た(甲5及び甲6)。
(3)被請求人による本件商標の取得の経緯
請求人が被請求人に対して侵害警告を行っているさなか、被請求人は、本件商標に係る出願を平成22年2月22日に行い、同年9月17日に登録を受けていた(甲1)。本件商標は、請求人が被請求人に対して使用停止を求めている引用商標1の識別力を発揮する要旨の一つ「Jua & Ardhi」をそのまま取り出した文字をカタカナ表記したに過ぎないものであり、同様の文字構成を持ち、同様の称呼を生じるものである。
形式的には引用商標1と本件商標は「&」の有無があるが、「&」は「Jua」と「Ardhi」を接続する接続記号に過ぎず、発音もサイレントであるので、同様の文字構成を持ち、同様の称呼を生じるものである。
また、指定商品も第30類「茶」であり、事実上の使用商品は「アフリカ産茶葉を原料とする茶」であり、請求人の業務にかかる使用商品と同じである。
(4)本件商標の被請求人による使用が請求人の業務との出所混同が生じる点について
被請求人は、上記のとおり、請求人の引用商標1や引用商標2を違法に使用し、侵害行為を繰り返してきた事実があるところ、引用商標1の主要構成の一部の商標構成をそのまま抜き出して片仮名表記にしたに過ぎない商標登録出願をしており、出所混同が生じることを十分に認識しながら、むしろ故意に紛らわしい商標登録出願を行っている事情が明確に存在する。
実際にアフリカ産茶葉の指定商品において、きわめて紛らわしい形で商標を使用したパッケージを用いているため、「ジュアアルディ」のカタカナ表記の称呼を添えて本件商標「ジュアアルディ」を被請求人が使用すると、実際に市場において出所混同を生じるおそれが十分にあることは明白である。アフリカ産茶葉というのはお茶の中でも特殊なカテゴリであり、これに、被請求人が、請求人の引用商標1の一部を抜き出したに過ぎない「ジュアアルディ」を使用すると請求人にかかる業務と混同を生じるおそれが高い。
実際に需要者層も重なっている。請求人は兵庫県在であるが、流通業者を通じて関東一円でも取引し、通信販売により全国で取引がある。被請求人は東京在であるが、通信販売を行っている。通信販売の特徴としてパソコンを用いてアフリカ・茶などで検索すれば、請求人の通販サイトも被請求人の通販サイトもヒットすることとなり、需要者が重なり合うといえる。そのため、被請求人が、請求人の引用商標1の一部を抜き出したに過ぎない「ジュアアルディ」を使用すると請求人にかかる業務と混同を生じるおそれが高い。
また、本件商標の出願は、本判定の審理中に行われたものであり、本判定請求にかかる商標の文字構成を抜き出したカタカナ表記を出願するという悪質性の高いものである。
さらに付け加えれば、請求人は被請求人に対して、請求人所有の一連の「JUAR」ブランド商標の侵害状態を排除すべく交渉してきたが、その交渉のさなか、被請求人は本件商標のほか、「JUAARDHI(登録第5354985号)」及び「太陽マークのロゴ(登録第5354983号)」(甲7)など、請求人の引用商標1及び引用商標2と相紛らわしい一連の商標を複数出願・登録している。これら登録についても同様の事情で無効になるべきものであり、追って対応を予定しているが、このように、侵害警告、本判定の結論などの経緯を経てもなお、類似・出所混同をおこすおそれのある商標使用を故意に継続しようと自己名義で登録した意図が明白であり、もし、これらのような商標登録を排除できないとすると法の正義、商標法の目的とする健全な社会秩序維持は図れない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、引用商標1及び引用商標2についての侵害警告事件の経緯、本判定の結論などから明らかなように、侵害を起こして起きながら、そのさなかに引用商標1の主要な商標構成の一部をそのまま抜き出して出願したに過ぎないものであり、指定商品においても同一又は類似の関係にあり、よって、商標登録出願時及び登録査定時において、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。
被請求人の本件商標の出願及び登録の行為は悪質であり、本件商標の登録を排除できなければ法の正義、商標法の目的とする健全な流通秩序の維持は図れない。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
1 請求人の主張の要旨
(1)請求人は、ひたすら過去の被請求人の行為について触れ、被請求人が請求人所有の登録商標と同一の商標を正当な権原なく使用しているため商標権侵害であると主張し、これを根拠に、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当し無効だと主張している。
(2)しかしながら、請求人が請求の理由であげている事は、本件商標が同第15号に該当するかどうかとは一切関係ない。また、請求人の主張は、単なる中傷としか受け止められない点も多々あるので、以下のとおり事実を述べる。
2 事実関係
(1)引用商標1及び引用商標2は、請求人とサンフィールドの共同の権利であることに間違いはない。
(2)平成19年から、ジュアールジャパン(被請求人)は、その活動を開始したが、当初、被請求人は、自らが主体となって茶の製造販売等についての業務を行っていた訳ではなく、サンフィールドの指揮・監督のもと茶葉の加工処理や袋詰め作業等を行っていた。具体的には、OEM化をのぞむネット通販業者などの顧客がサンフィールドにロイヤリティを支払って作成したオリジナルパッケージに、加工した茶葉の袋詰めの作業を行っていたものである。
その後の同20年初頭頃までは、被請求人は商標権者たるサンフィールドの指揮・監督のもと、輸入した茶葉をサンフィールド及びサンフィールドが許可した業者のために用意されたパッケージに茶葉を詰める作業をサンフィールド工場内で行っていたに過ぎない。
(3)なお、請求人は、平成19年初め頃、被請求人がサンフィールドの一部社員を引き抜いて雇用し、ジュアールティーブランドを始めたと述べているが、事実は全く異なり、実際には、先に述べたように関東圏販路拡大のために協力していたが、サンフィールド代表の突然の失踪を受けサンフィールドの社員に対し、希望者のみ被請求人の会社で雇ったというのが事実である。
(4)平成19年9月頃からサンフィールドの資金難が深刻化しはじめたが、サンフィールドの当該茶についての事業を突然終了するのも困難であったため、サンフィールドから当該商標権を被請求人に譲渡する旨の申し出があり、同20年1月、商標権移転登録申請の手続において、被請求人は、サンフィールドの商標権が請求人と共同名義であることを知る。つまり、このときまで、被請求人は、引用商標1及び引用商標2がサンフィールドと請求人との共有に係る権利であることを知らなかった。
(5)被請求人は、当該商標権の共有者である請求人からの同意が得られなかったので、移転申請を断念し、その後、請求人と交渉を行ったが、最終的には互いに歩み寄れずに終わった。具体的には、被請求人は、ライセンス料として、請求人の売掛金残と相殺して欲しいと申し出たが、受け入れてもらえず、また、請求人からも、OEMとしての茶葉の製造について契約を交わして欲しいという申し出があったが、その金額について纏まらなかった等の経緯がある。
(6)請求人の製造・販売に係る「ジュアールティー」ブランドに係る商品は、品質及び価格等に関して、市場が望むものからは逸脱していると被請求人は考えており、被請求人が望むブランドとしての価値向上は望めなかった。
こうした事情をうけ、請求人の「ジュアールティー商品」と決別して、市場において区別されるような新たなブランドのもと事業を開始するために、被請求人は、本件商標を出願・登録し、本件商標登録後(平成22年9月17日)から、本件商標に係る「ジュアアルディ」ブランドのもと事業を展開している。
(7)事実関係について、最後に「公正証書」(甲4)及び本判定(甲5?甲6)について述べる。
請求人は公正証書の中で被請求人のウェブサイト情報をプリントアウトしたものを添付し、「この証書を嘱託人代理人に閲覧させたところ同人は相違ないことを認め次に署名押印する。」などと、被請求人が請求人所有の引用商標1等を使用していたという事実を証明しようとしているが、証明の対象とされた商品は、本件商標とは一切関係がない。本無効審判の証拠として提出する意図が理解できない。
本判定(甲5?甲6)については、請求人は本判定請求の中で、いかにも被請求人が無断で請求人の商標を使用しているように結論づけているが、これも同様に、本件商標に係るものでない以上、本無効審判には全く結びつかない。本無効審判において何を証明し何を補強するために提出されたのかその意図が全く不明である。
3 請求人主張の無効理由について
(1)商標法第4条第1項第15号は具体的出所混同防止のための総括条項として規定されていると理解されるが、本件商標が、実際に需要者に混同を生じさせているといった事実やそのおそれがあることを示す様な事情についても一切証明がない。
例えば、本件商標が同号に該当することを裏付けるための、本件商標の出願時及び査定時における請求人の業務に係る商品の周知・著名性についての記載や、それを証明する証拠の提出が一切ない。請求人の業務に係る「ジュアールティー」ブランドの周知・著名性については甚だ疑問が持たれるところであるが、こうした周知・著名性を示すための、販売数量や売上額、広告宣伝の期間や媒体、それにかけた費用額等の客観的な証拠が全く提出されていないので、「請求人の商標がどの程度需要者に認知され、周知されているのか」といった事実が全く不明である。
(2)上述したように、被請求人は、請求人の商品と混同され何らかの関係があるとみなされたくないことから、区別してもらうために新しい商標を創作しその登録をしたものである。その結果として市場から高い評価を得て信頼を獲得してきている。
実際に、現在、被請求人が新たに立ち上げた本件商標に係る「JUAARDHI(ジュアアルディ)」ブランドの商品は人気・評価が非常に高く、全国のドラッグストアー、デパート、空港でも取引されるに至っている。
(3)実際の商品パッケージ等、具体的な取引の実態をみても出所混同されるおそれは一切無い。本件商標が使用された被請求人の商品(乙1)と請求人の商品(乙2)を見比べると、文字の配置、図の構成など、あらゆる点において異なっており、全体的な印象にも著しい差異がある。仮に同じ商品棚に陳列されていたとしても、需要者が見誤って購入するといったような事態は到底考えられない。
(4)被請求人は、自身の商品に、ケニア大使館との契約から「アフリカ産茶葉」ではなく「ケニアティー」「ケニア紅茶」と表記し、ケニア共和国から認定されたケニア産の厳選茶葉を使用しているので、それを証明するための金色のシールを必ず商品に貼付し目印にしている。ちなみにこのマークは、ケニア大使館より使用しても良いという許可が下りているもので、日本では被請求人しか許されていない。これも、被請求人が一から築き上げて獲得した成果の一つであり、被請求人の営業及びその商品に対する真摯な姿勢が評価された結果である。
4 むすび
以上のとおり、本件商標が、実際に需要者に混同を生じさせているといった事実やそのおそれがあることを示す様な事情についても一切証明がなされていない以上、商標法第4条第1項第15号には該当しない。

第5 当審の判断
請求人の主張について、以下検討する。
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
請求人は、本件商標はその登録出願時及び査定時において、同法第4条第1項第15号に該当するものであると主張し、その理由として、請求人及び被請求人が使用するアフリカ産茶葉はお茶の中でも特殊なカテゴリであり、需要者層も重なっているから、引用商標の一部を抜き出したにすぎない本件商標を被請求人が使用すると、請求人の業務と出所の混同を生ずるおそれが高いと述べている。
しかしながら、請求人は、上記主張を証明する証拠、例えば、引用商標がアフリカ産茶葉に使用されて広く知られていることなどを証明するもの等を何ら提出してはおらず、上記主張のみからでは、被請求人が本件商標をその指定商品に使用した場合、請求人の業務と出所の混同を生ずるおそれがあるものとはいい難い。
よって、本件商標は同法第4条第1項第15号に該当するということはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
請求人は、上記のとおり、本件審判請求の理由において「請求人及び被請求人が使用するアフリカ産茶葉はお茶の中でも特殊なカテゴリであり、需要者層も重なっているから、引用商標の一部を抜き出したにすぎない本件商標を被請求人が使用すると、請求人の業務と出所の混同を生ずるおそれが高いから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨主張しているところ、上記請求人の主張及び請求の全趣旨を善解すれば、請求人は、本件商標は出所の混同を防止する規定のひとつである商標法第4条第1項第11号に該当するとの主張をしているともいえるので、念のため、本件商標が、同号に違反して登録されたものであるかについても検討する。
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「ジュアアルディ」の片仮名を標準文字で表したものであるから、その構成文字に相応して「ジュアアルディ」の称呼を生じ、辞書等に載録されていない造語といえるものであって特定の観念を生ずるものではない。
(2)引用商標について
ア 引用商標1について
引用商標1は、別掲のとおり、太陽を模した図形とその下に「Jua & Ardhi」及び「JUAR」の欧文字を2段に配したものであるところ、図形部分と文字部分は視覚上、分離して看取される態様であり、これらを一体のものとして捉える事情も見いだせないから、それぞれの部分が独立して取引に資される場合も少なくないといい得るものである。
そして、その文字部分からは、構成文字全体に相応した「ジュアアンドアルディジュアール」の称呼が生ずるといえるところ、全体として特定の観念を生ずるものではなく、また、その称呼も12音と冗長といえるものである。さらに、これら文字部分は、「Jua & Ardhi」と「JUAR」に、上下段に分かれて表示され、その文字の大きさも上段の文字は小さく、下段の文字は大きく表されて、視覚上分離して看取される態様といえるものであり、これらを一体的に把握して一連にのみ把握すべき相互の関連性があるとは認められないものであるから、それぞれの文字部分に相応した「ジュアアンドアルディ」及び「ジュアール」の称呼をも生ずる。そして、「Jua」、「Ardhi」及び「JUAR」の文字は、それぞれ辞書等に載録されていない造語といえるものであって特定の観念を生ずるものではない。
イ 引用商標2について
引用商標2は、「JUAR TEA」の欧文字を標準文字で表してなるものであるところ、その構成文字全体に相応した「ジュアールティ」の称呼を生ずるほか、後半「TEA」の文字が、その指定商品「茶」を意味する語として普通に使用されていて自他商品の識別機能がない部分といえることから、これを除いた「JUAR」の部分から「ジュアール」の称呼をも生ずる。そして、「JUAR」は辞書等に載録されていない造語といえるものであるから、引用商標2からは特定の観念を生ずるとはいえない。
(3)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標と引用商標1は、それぞれ上記(1)及び(2)アのとおりであるところ、両者は図形の有無及び構成文字が異なることから外観において相紛れるおそれはなく、本件商標から生ずる「ジュアアルディ」の称呼と、引用商標1から生ずる「ジュアアンドアルディジュアール」、「ジュアアンドアルディ」及び「ジュアール」の称呼とは、その構成音や構成音数が異なり聞き誤るおそれはない。また、両商標とも観念を生ずるものではないから、観念上相紛れるおそれもない。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれはなく、類似する商標ということはできない。
イ 本件商標と引用商標2との類否について
本件商標と引用商標2は、それぞれ上記(1)及び(2)イのとおりであるところ、両者は構成文字が異なることから外観において相紛れるおそれはなく、本件商標から生ずる「ジュアアルディ」の称呼と、引用商標2から生ずる「ジュアールティ」及び「ジュアール」の称呼とは、その構成音や構成音数が異なり聞き誤るおそれはない。また、両商標とも観念を生ずるものではないから、観念上相紛れるおそれもない。
そうすると、本件商標と引用商標2とは、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれはなく、類似する商標ということはできない。
(4)小括
したがって、本件商標は引用商標と類似する商標とはいえないから、商標第4条第1項第11号に該当するということはできない。
3 引用商標1に関する請求人の主張について
(1)請求人は、「実際に請求人が使用している称呼は『ジュアアルディ』であり『&』は単なる結合記号でサイレントとなっている。」、「形式的には引用商標1と本件商標は『&』の有無があるが、『&』は『Jua』と『Ardhi』を接続する接続記号に過ぎず、発音もサイレントであるので、同様の文字構成を持ち、同様の称呼を生じるものである。」と主張している。
しかしながら、請求人が、引用商標1(「Jua & Ardhi」部分)について、「ジュアアルディ」と称呼し使用していること、及びそのことが、「茶」の取引者・需要者の間で、周知・認識されていることを示す証拠の提出はないところ、引用商標1の「Jua & Ardhi」部分は、半角ほどのスペースを介して、「Jua」、「&」及び「Ardhi」の文字を同書、同大に横書きした構成からなるものであり、「&」の文字が、大文字の「J」及び「A」の文字と同じ大きさで書されていることからすれば、引用商標1の「Jua & Ardhi」部分からは、構成文字に相応した「ジュアアンドアルディ」の称呼を生ずるというのが自然といえる。また、ほかに「&」の文字を捨象して発音するとする特段の事情も見いだせないから、出願人の主張を採用することはできない。
(2)甲第4号証ないし甲第6号証について
請求人は、その主張を立証するものとして、「公正証書」(甲4)及び本判定の請求書及び判定(甲5)を提出しているので、これらについて検討する。
甲第4号証は公証人による公正証書であるところ、本件商標についての記載はされておらず、添付されている別紙1ないし別紙4にも本件商標が表示されていない。
したがって、この号証をもってしては、本件における請求人の主張を立証する証拠ということはできない。
甲第5号証及び甲第6号証は、本判定に関するものであるところ、本判定において、被請求人が、商品「茶」に使用しているイ号標章は、本件商標とは別異の商標であるから、本判定の請求及び結論(判定)をもってしては、本件における請求人の主張を立証する証拠ということはできない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではなく、また、同11号に該当するということもできないから、同法第46条第1項により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
引用商標1(登録第4115001号)



審理終結日 2014-02-10 
結審通知日 2014-02-13 
審決日 2014-02-25 
出願番号 商願2010-12574(T2010-12574) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (X30)
T 1 11・ 263- Y (X30)
T 1 11・ 261- Y (X30)
T 1 11・ 271- Y (X30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 薩摩 純一 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 村上 照美
大森 健司
登録日 2010-09-17 
登録番号 商標登録第5354984号(T5354984) 
商標の称呼 ジュアアルディ 
代理人 永井 道彰 
代理人 秋元 輝雄 
代理人 吉澤 大輔 

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