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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2012890070 審決 商標
無効2011890101 審決 商標
無効2013890034 審決 商標
無効2011890023 審決 商標
無効2012890071 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない Y30
審判 全部無効 外観類似 無効としない Y30
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y30
審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y30
管理番号 1285480 
審判番号 無効2012-890087 
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-10-04 
確定日 2014-02-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第5081512号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第5081512号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成からなり、平成18年5月25日に登録出願、第30類「学校給食用の菓子及びパン」を指定商品として、同19年9月14日に登録査定がなされ、同年10月5日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本件商標の登録の無効の理由として引用する登録商標は、以下の4件であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、商標登録の更新登録に係る記載を省略する。)。
1 登録第258225号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成からなり、昭和8年9月14日に登録出願、第43類「菓子及麺ぽうノ類」を指定商品として、昭和9年10月16日に設定登録されたものである。その後、指定商品については、平成17年11月30日、第30類「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつ豆・ゆであずきを除く。),粉末あめ,水あめ(調味料),もち,パン」に書換登録がなされたものである。
2 登録第496695号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)に示すとおりの構成からなり、昭和30年6月24日に登録出願、第43類「菓子及び麺ぽうの類」を指定商品として、昭和32年2月20日に設定登録されたものである。その後、指定商品については、平成19年12月19日、第30類「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつ豆・ゆであずきを除く。),粉末あめ,水あめ(調味料),もち,パン」に書換登録がなされたものである。
3 登録第1523963号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(4)に示すとおりの構成からなり、昭和47年10月4日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、昭和57年6月29日に設定登録されたものである。その後、指定商品については、平成14年7月3日、第30類「菓子,パン」に書換登録がなされたものである。
4 登録第496702号商標(以下「引用商標4」という。)は、漢字の「明治」を横書きにしてなり、昭和31年5月10日に登録出願、第43類「菓子及び麺ぽうの類」を指定商品として、昭和32年2月20日に設定登録されたものである。その後、指定商品については、平成19年7月4日、第30類「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつ豆・ゆであずきを除く。),粉末あめ,水あめ(調味料),もち,パン」に書換登録がなされたものである。
なお、以下、引用商標1ないし4をまとめて、単に「引用商標」という場合がある。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第32号証(枝番を含む。)を提出した。
1 無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。
2 無効原因
(1)商標法第4条第1項第11号に該当する点について
ア 本件商標は、その先出願に係る引用商標(甲第2号証ないし同第4号証)と類似しており、その指定商品も同一若しくは類似のものである。
イ 本件商標の権利者について
被請求人である竹内氏は主に学校給食用のパンを製造している、大阪市在の明治パン株式会社(以下「明治パン」という。)の代表者である(甲第6号証)。
この点は、本件商標に関する審決取消請求事件である平成24年(行ケ)第10130号判決において認定されているとおりである(甲第7号証)。
したがって、本件商標は実質的には明治パンにより使用される商標として出願、登録された商標ということができ、被請求人も上記事件における被告準備書面(2)においてそのように主張している(甲第8号証)。
ウ 本件商標から生じる称呼について
本件商標の構成は、上記のとおり、赤色の山型の冠状の図形の下に、青色の「Meiji」(「M」の文字部分は二つの楕円形をハート型に重ねた形状に図案化されたもの)の文字を配してなるものである。
本件商標中、下段における一字目(一番左の図案化された部分)が図案化された「M」の文字であることは、上記イで述べたように、本件商標の実質的な権利者が明治パンであることから当然に首肯されるところである。
被請求人は、前掲審決取消請求事件において、本件商標採択の理由について、明治パンの新工場が設立されることをきっかけとして、そこで使用する伝票や名刺、封筒などに記載される商標として本件商標がデザインされ、登録出願された旨、述べている(甲第8号証中、第2頁(3))。
そして、被請求人は本件商標を「明治パン株式会社」の表示と近接した構成で実際に使用している事実がある(甲第23号証ないし同第27号証)。
甲第23号証は明治パンの納品書(控)の写し、甲第24号証は明治パンの未使用の納品書(控)・納品書・請求書の1セットの写し、甲第25号証は明治パン株式会社の従業員の名刺の写し、甲第26号証は明治パンで使用する封筒の写し、甲第27号証は明治パンで使用する連絡書の写しであるところ、これら各号証は、本件商標に対する取消審判事件(取消2010-301211)及びこの審決に対する前掲審決取消請求事件において、被請求人自ら提出した証拠である。
また、被請求人は、本件商標の構成中、「eiji」の文字部分を「eisyoku」に変更した以外、ほぼ同一構成よりなる登録第5081513号商標「Meisyoku」(甲第9号証)の商標権者である。明治パンは同商標を使用しているところ、これは「メイショク」の称呼をもって取引されている(甲第28号証、第29号証)。そして、被請求人は過去に商標「メイショク/明食」を出願しており(商公昭61-74511、甲第30号証の1)、同商標は登録後(登録第1959004号)、明治パンに移転されている事実がある(甲第30号証の2)。
これらの事実から、本件商標は、「Meiji」の文字を図案化した商標であり、「Meiji」の文字に照応して「メイジ」の称呼が生じる(下段における一字目は「M」を図案化されたものである。)ことが立証されるものである。
エ 引用商標から生じる称呼について
引用商標は、いずれも旧明治製菓株式会社(以下「明治製菓」という。)所有に係る登録商標であったが、現在は請求人の持株会社である「明治ホールディングス株式会社」が商標権者となっている。但し、いずれの引用商標もその指定商品について主に請求人により使用されているものである。
引用商標1ないし3の「Meiji」からは、その構成文字に照応して自然と「メイジ」の称呼が生じること明らかである。また、引用商標4「明治」からも、その構成文字に照応して自然と「メイジ」の称呼が生じることが明らかである。
実際に、引用商標が請求人により商品「菓子」等について使用されていること、引用商標は「メイジ」の称呼をもって取引されていることについては特許庁、被請求人並びに明治パンにとっても顕著な事実と思料するが、引用商標の使用実績等については下記「(2)商標法第4条第1項第15号に該当する点について」において詳述する。
オ 本件商標と引用商標の指定商品の類似について
本件商標の指定商品は甲第1号証に示すとおりであり、引用商標の指定商品は甲第2号証ないし同第5号証に示すとおりであるから、本件商標の指定商品は引用商標の指定商品と同一又は類似のものである。
カ 本件商標及び引用商標の類否について
(ア)称呼類似について
上述のとおり、本件商標及び引用商標からは、共に「メイジ」の称呼が生じるものである。したがって、本件商標と引用商標とは「メイジ」の称呼を共通にする、明らかに類似の商標である。
本件商標から生じる称呼について、本件商標に対してなされた過去の無効審判事件(無効2008-890043)では、「本件商標の類否判断については、その登録出願された標章をもって判断されるものとしなければならない。したがって、当該ハート型図形は、青色に彩色した二つの楕円形をハート型に重ねて表現した独創的なものと認識し、いずれかの字形を表現したものかなどと推測して取引に当たるものともいい難く、本件商標からは直ちに「メイジ」の称呼を生じるものということはできない。むしろ、普通の書体で表された「eiji」の文字部分から自然に「エイジ」の称呼が生じるものといわなければならない」と判断した。そして、本件商標からは「メイジ」の称呼を生じるものということはできず、「エイジ」のみの称呼が生じると認定され、その結果、本件商標と引用商標は称呼上非類似のものと判断されている(甲第31号証)。
しかし、甲第23ないし同第27号証から明らかなように、本件商標が「明治パン株式会社」の文字に近接して表示されている実際の使用態様や、登録第5081513号商標「Meisyoku」が「メイショク」の称呼をもって取引されている事実などを総合的に勘案すれば、本件商標は、これに接する需要者・取引者に「Meiji」の文字を図案化した商標であると容易に理解されるものである。
したがって、本件商標からは「Meiji」の文字に照応した「メイジ」の称呼が生じること明らかであり、この点について前掲の無効2008-890043審決には明白な誤りがあるものといわざるを得ない。
(イ)外観類似について
本件商標は、欧文字「Meiji」からなること上述のとおりである。そして、引用商標1ないし3も欧文字「Meiji」からなるものである。
よって、両者は、欧文字「Meiji」からなる点において共通しており、両者を離隔的に対比した場合には、相紛れるおそれは否定できないものというべきである。
(ウ)観念類似について
本件商標及び引用商標からは、共に「明治」に照応した、「年号(明治天皇在位期の年号)」との観念が生じるものといえる。
商標の類否判断については、「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうる限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする」のが、最高裁判所昭和43年2月27日判決(民集22巻2号399頁)である。
そこで、引用商標並びに引用商標の使用に係る商品の取引の実情について考察するに、後述するとおり、引用商標は請求人による永年に亘る使用、広範、且つ、強力な宣伝広告活動の結果、取引者、需要者の間で著名となっているものである。
さらに、請求人は、「給食用の菓子」等の製造販売も行っており、本件商標の出願時、登録査定時においては、前身の明治製菓がこれらの商品について引用商標を実際に使用している(甲第11号証ないし同第14号証)。
甲第11号証は給食用のクラッカー(チーズスティック菓子)、甲第12号証は給食用のグミキャンデー、甲第13号証は学校給食専用品の牛乳専用調味食品、甲第14号証は給食牛乳添加用のココアパウダーの商品、包装袋の写真である。
かかる状況を踏まえた上で、本件商標及び引用商標の外観、称呼及び観念より与えられる印象・記憶・連想等を総合してみれば、両商標を同一又は類似の商品に使用した場合、需要者をしてその出所について誤認混同を生じさせるおそれが多分に存するものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効にすべきものである。
(2)商標法第4条第1項第15号に該当する点について
ア 本件商標と引用商標は類似しており、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものと思料するが、仮に商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても、本件商標が指定商品に使用されるときは、あたかもこれが請求人の業務に係る商品であると、あるいはまた請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると混同を生じさせるおそれが多分に存するので、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当するものである。
イ 引用商標の著名性について
引用商標の著名性については、本件商標に対してなされた過去の無効審判事件(甲第31号証)において
「請求人の主張及びその証拠(甲各号証)によれば・・・本件商標の登録出願時において、引用商標は、明治チョコレート等の菓子、食品の需要者に相当程度には知られるに至っていたということができる」
と認定されている。つまり、過去の審決で引用商標の著名性は既に肯定されているものである。
そこで、本件審判においても、上記無効審判事件と同様の証拠を提出した上で、引用商標の著名性について、以下に詳述する。
引用商標は、請求人及びその前身である明治製菓による永年に亘る使用、強力な宣伝広告活動の結果、請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして取引者・需要者間に広く認識されている著名商標である。
引用商標の著名性については、「AIPPI・JAPAN」から出版されている「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN/日本有名商標集」に掲載されているように(甲第15号証)、あるいはまた、「特許電子図書館」内の「日本国周知・著名商標検索」において引用商標中登録第1523963号、第496702号が検索されるように(甲第4号証の2、甲第5号証の2)、特許庁及び被請求人において顕著な事実と思料する。念のため、さらに請求人の前身である明治製菓及び引用商標の概略を説明し、引用商標が本件商標の出願時、登録査定時において既に周知・著名であった事実を立証する。
(ア)請求人の概略、引用商標の生い立ち並びに使用開始時期等について
請求人は、平成23年(2011年)4月に明治製菓と旧明治乳業株式会社が統合して発足した(甲第32号証)。請求人は、明治製菓の食品事業を承継しているものである。
明治製菓は、1916年に前身である東京菓子株式会社として創立され、大正13年に社名を「明治製菓株式会社」に変更した。明治製菓は、大正15年に発売したミルクチョコレートに「MEIJI」の文字を使用している。
昭和7年には、板チョコを始めとする各種チョコレートの大量生産を開始し、わが国チョコレートの工業発展の口火を切り、その地位を不動のものとし、”チョコレートは明治”が著名なフレーズとなったように、請求人は、チョコレート産業の基盤を築いたものである(甲第16号証)。この頃より、商標「Meiji」「明治」は周知著名となっている。
昭和30年には、我が国を代表する世界的なデザイナーである亀倉雄策氏のデザインによる新しいロゴの「Meiji」の商標を採択(甲第16号証の第12頁、甲第17号証)、使用を開始している。以来、引用商標は明治チョコレート等の菓子、食品の宣伝、パッケージデザインのロゴ等として継続して使用されてきた。
なお、いうまでもなく引用商標は旧社名である「明治製菓株式会社」より採択された商号、商標であり、それ故、後述する明治製菓及びグループ企業の事業規模、広範に亘る事業内容に伴って、取扱いに係る多くの商品・役務に日本全国で使用されている。
(イ)明治製菓の企業規模、事業内容、取扱品目等について
概略は以下のとおりであるが、詳細については、甲第10号証の明治製菓のホームページ中、「会社概要」「事業案内」「事業所・グループ会社紹介」のサイトページ打ち出し(2008年3月21日付プリント分)、甲第18号証の明治製菓の「会社案内」(2005年発行)等を参照されたい。
なお、甲第10号証のホームページは、本件商標が登録査定された2007年9月20日から半年後の状況を立証するためのものであり、甲第18号証の会社案内は、本件商標の登録出願前である2005年当時の状況を立証するためのものであることを付言する。
明治製菓は、平成19年(2007年)4月1日現在で資本金283億円、平成19年(2007年)3月期の年間売上高2946億円(甲第10号証中「会社概要」参照)を誇る、いうまでもなく我が国における大手菓子メーカーである。
明治製菓の事業内容は、主として菓子、食品(いわゆる健康食品、スポーツフーズを含む)、薬品等の製造販売であり、その他、健康事業、研究開発事業等、広範に亘り事業活動を展開している。また、海外にも事業展開しており、食料分野、薬品分野における海外事業の内容は、甲第10号証中「海外事業」に示されるとおりである。
また、明治製菓は、グループ会社を擁していた事実(甲第10号証中「事業所・グループ会社紹介」参照)から明らかなように、明治製菓は、本件商標の出願時、登録査定時には既に菓子業界屈指の著名企業であり、我が国における有数の事業規模を誇る巨大企業であったことが明らかである。
(ウ)引用商標の使用商品・役務について
明治製菓は、本件商標の指定商品と同一又は類似の商品である「菓子」の製造販売を主たる業務とする企業であり、取扱いに係る数多くの菓子について引用商標が使用されている(甲第10号証、第16号証、第18号証等)。
このように、引用商標は、「菓子」について強力な著名性を有しているものといえる。
加えて、引用商標は、明治製菓及びグループ企業により、主として、菓子、パン類、各種食品(飲料、加工食品、健康食品)、医薬品、薬品、医療機器等の商品、及び該商品の製造、販売に関連する役務の他、情報提供、イベント、地域活動、スポーツクラブの経営、研究開発等に使用されていた。
引用商標は、明治製菓の商号より採択された商号商標であり、それ故、明治製菓及びグループ企業の事業規模、広範に亘る事業内容に伴って、取扱いに係る多くの商品・役務に日本全国で使用されている。
(エ)引用商標の宣伝広告実績及び著名度について
引用商標は、本件商標出願時、登録査定時の遙か以前より、テレビ、新聞、雑誌、カタログ等の媒体を通して盛大に宣伝・広告されている。テレビにおいては、全国的なネットワークで殆ど毎日いずれかのチャンネルで請求人商品が放映されていることは、特許庁及び被請求人においても顕著な事実と思料する。そのため、引用商標は、取引者・需要者間に広く認識されるに至っているものである。
加えて、請求人及び明治製菓の企業認知度が非常に高いことも顕著な事実と思料するが、引用商標は上述のとおり商号(略称)商標よりなるものであるから、企業認知度は引用商標の著名度にも直結するものといえる。
さらに、引用商標中、登録第1523963号、第496702号については、防護標章登録が認められている(甲第19号証ないし同第22号証)。
このように、引用商標は、極めて広範に亘る商品・役務について防護標章登録を受けている。
さらに注目すべきは、これらの防護標章は、平成14年8月30日、平成17年12月2日、平成21年7月24日に登録されていることである。この事実は、平成14年?平成21年当時の引用商標の著名性を示す強力な証左であるが、ここから、本件商標の出願時、登録査定時における引用商標の著名性が立証されるものである。
以上のとおり、引用商標の著名度は請求人の企業著名度と相俟って、相当程度高いことが明らかである。
ウ 商品又は役務の出所の混同のおそれについて。
明治製菓は、菓子業界でトップ企業であるだけでなく、甲第10号証、第18号証等に示されるとおりその業務範囲は広く、引用商標「Meiji」「明治」は多種の商品・役務に使用されている。
そして、引用商標は、明治製菓の商号(略称)商標であり、引用商標から容易に明治製菓及び請求人を認識できるものであるところ、上述の如く明治製菓及び請求人の認知度が高いことは引用商標の著名度にもつながるものである。
したがって、明治製菓及び請求人の業務・事業規模等の広範さよりすれば、仮に「菓子」と密接な関係があるものとはいえない商品・役務に本件商標が使用されたとしても、需要者・取引者は、その商品・役務が請求人若しくは請求人の関連会社の業務に係る商品・役務であるかの如く、その出所について混同を起すおそれは多分にあるといわざるを得ない。
ましてや、本件商標は、その指定商品を「学枚給食用の菓子及びパン」とするものであるから、本件商標は、請求人の主力商品である「菓子」と同一又は類似の商品について使用されるものである。
してみれば、百歩譲って、仮に本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても、本件商標は、外観上「Meiji」の文字よりなるものであること(「Meiji」を容易に想起させること)、「メイジ」の称呼が生ずるものであること等を勘案すれば、本件商標を被請求人が使用した場合には、需要者・取引者に本件商標の使用に係る商品があたかも請求人若しくは請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所につき混同を生じさせるおそれがあること明白である。
結局、仮に本件商標に商標法第4条第1項第11号の無効事由がないとしても、商標法第4条第1項第15号の無効事由が存しているものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べた。
1 主位的答弁
(1)商標法第56条第1項で準用する特許法第167条は、一事不再理の原則を表明したもので、確定審決の登録があったときは、当事者及び参加入は、同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することはできない旨を規定している。
この点、本件商標に対しては、既に、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当することを理由として、無効審判が請求され、請求不成立の審決が確定している事実がある(甲第31号証)。
下記に述べるように、商標法第4条第1項第11号及び同第15号を理由とする本件審判の請求は、無効2008-890043と同一事実及び同一証拠に基づいてなされていることから、商標法第56条第1項で準用する特許法第167条の規定に違反する。
したがって、本件審判は、審理をするまでもなく、不適法な審判請求として直ちに却下されるべきである。
(2)請求人が「当事者」に該当すること
請求人の株式会社明治は、無効2008-890043の請求人である「明治製菓株式会社」の承継人であり、実質的に同一である。
したがって、商標法第56条第1項で準用する特許法第167条の規定の「当事者」に該当する。
この点は、甲第7号証の「平成24年(行ケ)第10130号審決取消請求事件」判決文の記載からも明らかなとおり、無効2008-890043の請求人である「明治製菓株式会社」は、Meiji Seikaファルマ株式会社へ商号変更されると同時に、「株式会社明治」に会社分割されたという経緯を有するのである。
よって、「当事者」たる請求人は、無効2008-890043と同一の事実及び同一の証拠に基づいて、審判を請求することはできない。
(3)「同一の事実及び同一の証拠」について
ア 請求人は、引用商標として、甲第2号証ないし同第5号証に示す登録商標を引用して無効を主張するものであるが、いずれも無効2008-890043の無効審判事件で、既に引用した登録商標である。
イ さらには、審判請求書の10頁の上から9行目から10行目にあるように、「・・・本件審判においても上記無効審判事件と同様の証拠を提出した上で、引用商標の著名性について以下に詳述する。・・・」との記載から明らかなように、請求人は、同一の証拠を提出している。
ウ なお、請求人は、平成24年(行ケ)第10130号判決の資料を提出しているようであるが、この点については、無効2008-890043の無効審判事件で下記のように、既に主張した事項であり、なんら目新しいものではない。
エ すなわち、無効2008-890043の無効審判事件の審決の「1請求の理由」、「(1)商標法第4条第1項第11号について」、「ア 本件商標の権利者」の旨の審決の記載からも明らかなように、「・・・被請求人は、主に学校給食用のパンを製造しており、大阪府大阪市旭区大宮1-5-16に所在の明治パン株式会社(以下『明治パン』という。)の代表者である(甲第8号証)。この点は、本件商標の指定商品が『学校給食用の菓子及びパン』であり、明治パンの業務内容と一致していること、商標権者の住所と明治パンの住所が一致していることから明らかである。・・・」として明治パンと被請求人との関係については、既に主張を行っている。
オ 以上、本件審判の請求は、無効2008-890043の審判事件と同一事実及び同一証拠に基づいてなされたものである。
(4)主位的答弁の「むすび」
本件審判の請求は、無効2008-890043の審判事件と同一事実及び同一証拠に基づいてなされたものであり、さらには、請求人は、「当事者」に該当するものである。
以上、本件審判の請求は、商標法第56条第1項で準用する特許法第167条の規定に違反するものであることは明らかである。したがって、本件審判の請求は不適法な審判請求として、直ちに、却下されるべきである。
2 予備的答弁
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し、同法第46条第1項により無効とされるべき旨を主張する。
しかるに、既に、商標法第4条第1項第11号及び同第15号の理由は、無効2008-890043で審理され、本件商標が上記各号に該当しないと判断されているものである。
したがって、無効2008-890043の結論と同様に、本件商標は上記各号に該当しないことが明らかであるが、念のために予備的に答弁する。
(1)商標法第4条第1項第11号の非該当について
本件商標は、無効2008-890043の無効審判事件で、判断されたとおり、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
ア 本件商標について
(ア)本件商標は、オレンジ色に彩色した三つの半円をドームのように模した図形の下に、青色に彩色した二つの楕円形をハート型に重ねた図形と、その左側に同色に彩色した「eiji」の欧文字とを配した構成態様からなるものである。
(イ)本件商標の構成する当該ハート型図形は、青色に彩色した二つの楕円形をハート型に重ねて表現した独創的なものと認識し、いずれかの字形を表現したものかなどと推測して取引に当たるものともいい難く、本件商標からは直ちに「メイジ」の称呼を生じるものということはできない。
むしろ、普通の書体で表された「eiji」の文字部分から自然に「エイジ」の称呼が生じるものである。
イ 引用商標について
引用商標は、それぞれ「Meiji」又は「明治」の文字からなり、該構成文字に相応して「メイジ」の称呼を生じ、また、一義的には「明治天皇在位期の年号」の意味を看取し、これから派生しその時代に創設された学校や企業などに冠された名称などを想起し、これを観念する場合も決して少なくないものである。
ウ 商標の類似
上記したように、本件商標は、「メイジ」の称呼を生じるものということはできないから、本件商標より「メイジ」の称呼を生じるものとし、それを前提に本件商標と引用商標との類似を述べる請求人の主張は妥当でなく、その理由をもって両商標を類似のものとすることはできない。
なお、請求人は、平成24年(行ケ)第10130号判決の資料を提出しているようであるが、この点については、主位的答弁で指摘するように、既に無効2008-890043の無効審判事件で主張した事項であり、なんら目新しいものではないことから、判断を左右するものではない。
(ア)称呼類似について
本件商標と引用商標から生じる称呼を対比すると、前者からは「エイジ」のみの称呼が生じ、後者からは「メイジ」のみの称呼が生じるということができるから、両称呼「エイジ」と「メイジ」とでは、第1音において「エ」と「メ」とに差異があり、構成音数が比較的少なく簡潔である両称呼にあって、前記の差異が称呼全体に与える影響は小さいものとはいい難く、これらをそれぞれ一連に称呼したときには、全体から受ける音感が相違し、聞き違い、取り違えられることなく、十分に区別し得るものというべきである。
(イ)外観類似について
本件商標と引用商標の外観構成をみると、オレンジ色に彩色した三つの半円をドームのように模した図形、青色に彩色した二つの楕円形をハート型に重ねた図形、及びその左側に同色に彩色した「eiji」の欧文字とを配した構成態様からなる本件商標と「Meiji」又は「明治」の文字からなる引用商標とは、両商標全体の構成上の差異は顕著であり見誤るおそれはない。
すなわち、「eiji」の文字部分と引用商標の各「Meiji」の欧文字とを対比しても、比較的短い綴りにある両者は、その1文字目において「M」の有無という顕著な相違があり、これによって両者の外観から受ける印象は明らかに異なるものであり、引用商標のかかる構成文字中、1文字目「M」を無視し、「eiji」の文字部を抽象して認識するものとはいい難いから、当該欧文字部分を離隔的に対比しても外観上相紛れるおそれはないというべきである。
(ウ)観念類似について
本件商標と引用商標とは、前者が特定の観念を生じえない造語とみられること、後者から一義的に生じるところの「明治天皇在位期の年号」に通じるような意味を把握させないことから、両者が観念上相紛れるものとはいえない。
エ 以上のように、本件商標と引用商標とは、外観・称呼・観念のいずれについても類似するものではない。
したがって、本件商標と引用商標とが、類似するものでない以上、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものでない。
(2)商標法第4条第1項第15号の非該当について
ア 上記したように、本件商標と引用商標とは、外観・称呼・観念のいずれについても類似するものではない。したがって、本件商標と引用商標とは別異の出所を表す標識として看取されるものというべきである。
イ そうすると、本件商標をその登録出願時において指定商品に使用した場合、これに接する需要者が引用商標を想起し連想して、同商品を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く誤信するとは認め難いから、商品の出所について混同するおそれがあったとすることはできない。
ウ したがって、引用商標の周知性を議論するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものでない。
(3)予備的答弁の「むすび」
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号に該当しないことは明白であるので、同法第46条第1項によりその登録が無効とされるべきものではない。

第5 当審の判断
(1)本件審判請求について
被請求人は、本件審判が、先に無効2008-890043事件(以下「先の審判事件」という。)として審理され、その審決が確定した審判事件と「同一の事実及び同一の証拠」をもって先の審判事件の当事者によって請求されたものであるから、商標法第56条第1項で準用する特許法第167条の規定に違反しており、本件の審判請求は却下されるべきである旨申し立てているので、これについて検討する。
ア 先の審判事件及び本件審判事件について
(ア)先の審判事件は、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたとの理由で請求され審理されたものである。そして、先の審判事件で請求人が提出した証拠は、「甲第1号証ないし同第29号証(枝番を含む。)」であるところ、本件のそれは、「甲第1号証ないし同第32号証(枝番を含む。)」であって、これらを比較すると、先の審判事件での証拠と同一のものは含まれるが、それ以外に別な証拠が追加されているものと認められる。
(イ)また、先の審判の請求人は「明治製菓株式会社」であり、他方、本件審判の請求人は「株式会社明治」であるところ、甲第7号証及び甲第32号によれば、2009年に共同持株会社「明治ホールディングス株式会社」が設立され、「明治乳業株式会社」と「明治製菓株式会社」が経営統合され、その後、食品事業会社「株式会社明治」と薬品事業会社とに事業再編され分離したものである。しかして、引用商標に係る商標権は「明治ホールディングス株式会社」が所有するものの、請求人は、「明治製菓株式会社」の食品業務を引き継いだ者であると認められるから、本件審判の請求人は、先の審判事件について第三者ではなく、先の審判事件の「当事者」であった者と解するのが相当である。
イ 「同一の事実及び同一の証拠」に基づく請求か否かについて
(ア)商標法第4条第1項第11号に該当するとの理由について、本件商標の先願に係る他人の登録商標の存在及び証拠として先の審判事件で引用された商標は、引用商標1ないし4及び登録第5080844号商標並びに登録第5080845号商標であるのに対し、本件において引用された登録商標は、前記第2に記載のとおり、引用商標1ないし4である。
してみると、先の審判事件と較べ、本件商標に対し、新たに引用する登録商標の存在するものでもない。そして、引用商標1ないし4をもってする同第11号該当性の有無の判断が先の審判事件において既になされ、当該審決は確定しているものである。
しかしながら、請求人は、本件審判において、本件商標の認定に際して考慮されるべき事情を述べると共に、甲第23号証ないし同第27号証を追加しているものである。
してみれば、商標法第4条第1項第11号違反を理由とする本件審判請求については、先の審判事件と「同一の証拠」をもってなされたとすることはできない。
(イ)また、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたとの理由についてみると、両審判事件ではともに、要するに、引用商標が周知著名であること、本件商標と引用商標とが類似するものであること、本件の指定商品と使用される商品間の共通性や需要者を共通にすることなどから、本件商標が使用された場合、商品の出所について混同するおそれがあるとするものである。
そして、本件において提出された証拠には、先の審判事件と同一の証拠も含まれるが、商標の類否に関連する事情を示す資料、使用されている商品間の関連性に係る資料等、先の審判事件で提出されなかった別の証拠が示されており、「同一の証拠」に基づくものとはいい難いものである。
ウ 小括
してみると、本件審判の請求が、たとえ、同一の事実に基づく審判請求と認め得るとしても、同一の証拠に基づくものとはいえず、「同一の事実及び同一の証拠」に基づく審判請求とは認め難いから、これを不適法な請求として却下することはできないものである。
そこで、本案に入り審理し、以下のとおり判断する。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標
(ア)本件商標は、上段に、オレンジ色に彩色した三つの半円をドームのように模した図形を配し、その下段に、青色に彩色した二つの楕円形を縦長に交差させハート型に重ねた図形の左側に青色に彩色した「eiji」の欧文字を配した構成からなるものである。
しかして、本件商標の構成全体においては、特定の観念や称呼をもって取引に資されるとすべき理由はみいだせない。また、構成文字の一部、特に、頭文字部が図案化されて表示されることがままあることを参酌したとしても、本件商標にあって、上段のオレンジ色に彩色した部分を除く部分で、かつ、下段の「eiji」以外の部分が、欧文字「M」として容易に認識されると認め得る的確な理由及び証左はみいだせない。
してみれば、本件商標の構成中、下段は、前記のとおり、その左端が二つの楕円形を縦長に交差させた図形として認識されるとみるのが相当であり、「M」と「eiji」を表したものとしては看取されないというべきである。
したがって、本件商標は、「メイジ」の称呼が生じるものとは認められず、判読可能な欧文字「eiji」に相応して「エイジ」の称呼を生じるというのが相当である。また、当該欧文字からは、特定の観念は生じない。
(イ)他方、引用商標1は、別掲(2)に示すとおり、「Meiji」の文字からなるものであるから、これより「メイジ」の称呼を生じることが明らかであり、また、「明治(明治天皇在位期の元号)」の観念が生じるというのが相当である。
そして、引用商標2及び3は、別掲(3)及び(4)に示すとおりの構成からなり、引用商標1と同様、「メイジ」の称呼を生じること明らかであり、また、「明治(明治天皇在位期の元号)」の観念が生じるというのが相当である。
さらに、引用商標4は、「明治」の文字を横書きしてなるものであり、構成文字に相応して「メイジ」の称呼、「明治(明治天皇在位期の元号)」の観念が生じるものである。
なお、引用商標から生じる上記の観念については、請求人も同様に主張するところである。
イ 商標の類否
本件商標と引用商標とを比較すると、本件商標と引用商標とは、その外観構成において、顕著な相違があり、全く異なる印象を与えるものであるから、外観上相紛れるおそれはないというべきである。
なお、引用商標1ないし3を構成する「Meiji」と本件商標の下段を比較した場合においても、「eiji」で共通する点があるとしても、本件商標の下段左端部が「M」として認識されることはなく一の図形として認識されるというのが相当であって、両左端部分で全く構成態様が相違しているというべきであるから、引用商標「Meiji」との間で、外観上相紛れるおそれはないものである。
つぎに、本件商標の称呼「エイジ」と引用商標の称呼「メイジ」とを対比すると、第2及び第3音の「イ」「ジ」を共通にするが、語頭音の「エ」と「メ」で相違するものである。そして、全体が3音構成の短い称呼において、識別上最も重要な位置を占める語頭における前記差異が、称呼全体の音感に与える影響は決して小さいものではないから、これらをそれぞれ一連に称呼しても、彼此相紛れることなく区別し得るものである。
さらに、本件商標は、前記ア(ア)のとおり、特定の観念をもって受けとめられるものではないから、引用商標とは観念について比較し得ず、両商標は、観念上相紛れるおそれはないものである。
しかして、本件商標及び引用商標の外観、称呼及び観念が与える印象・記憶・連想等を総合してみた場合、これらを同一又は類似の商品に使用しても、同じ事業者の製造・販売に係る商品であるかの如く混同・誤認されるおそれはないと判断されるものである。また、上記判断を覆す取引の実情等はみいだせない。
したがって、本件商標は、引用商標に類似する商標であるとすることはできない。
ウ 請求人は、本件商標に関連して、証拠(甲第23号証ないし同第27号証)を提出し、本件商標の下段の1字目が「M」であることが首肯されるべきである旨主張している。
確かに、甲第23号証ないし同第27号証の取引書類等において、本件商標と「明治パン株式会社」(商号)とが近接して表示されている事実を窺い知ることができる。
しかしながら、商標の類否判断に際して、比較される商標は、その個々具体的な構成態様に即して認定・判断がされるべきものである上、たとえ、本件商標の現実の使用者が明治パンであり、その社名(商号)が併せ表示されているとしても、その表示の根拠とする甲第23号証ないし同第27号証は、登録査定時以降あるいは使用日の特定ができないものであって、これらの使用の有無が判断に影響を及ぼすものとはいえない。
しかも、取引書類等で通常に行われる表示法の一であり、本件商標と社名(商号)は別個独立した標章として看取されるというのが相当であるから、直ちに、当該商号が本件商標に影響を与えて、本件商標の下段の左端部が欧文字「M」として認識されることとなると認めることはできないばかりか、例えば、本件商標の構成中に「メイジ」とのルビが付されているような場合や、類否の判断時において、取引上「メイジ」が確立した本件商標の称呼となっていたというような格別の事情が認められる場合などと同列に論ずることはできないというべきである。
なお、商標「Meisyoku」が「メイショク」の称呼をもって取引されている事実と、本件商標の構成の認定及び称呼の認定とは、直接的な関わりを認め得るものではない。
したがって、本件商標については、前記ア及びイのとおり認定判断するのが相当であるから、請求人の主張は採用し得ない。
エ 小括
上記のとおり、本件商標は引用商標に類似する商標とは認められないから、指定商品の類否について論及するまでもなく、本件商標は、引用商標をもって、商標法第4条第1項第11号に該当するものとはいえない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の周知性について
請求人の主張及び証拠(甲各号証)によれば、請求人は、同人の前身と認められる明治製菓の時より、主として菓子を中心とした食品、医薬品等の製造販売をし、また、そのほか、健康事業や研究開発事業等、広範に亘り事業活動を展開し、我が国における大手菓子メーカーの一といえるものである。
そして、引用商標は、明治製菓が、永年に亘り、菓子、特に、チョコレートを中心として継続的に使用し、かつ、引用商標を使用した同人に係る前記商品の広告宣伝活動を継続して行ってきたものと認められる。
しかして、前記使用の結果、引用商標は、本件商標の出願時及び査定時には、菓子業界はもとより、食品業界をはじめ相当に広い範囲で、明治製菓に係る商品を表示するものとして、需要者間に広く認識されるに至っていたと認められるものである。
イ 本件商標と引用商標との類似の程度
(ア)上記(2)のとおり、その外観、称呼及び観念のいずれからみても、本件商標と引用商標は類似する商標とは認められないものである。
そして、他に、本件商標と引用商標とがさらに関連あるものとして受けとめられるとすべき理由は見出せないから、結局、本件商標と引用商標とは、別異の出所を示すものとして看取されるというのが相当である。
(イ)なお、請求人は、本件商標が「明治パン株式会社」と同時に表示されて使用される場合に関連して縷々述べるが、「明治パン株式会社」の表示から引用商標を想起することがあるか否かや、当該表示と請求人との関連付けの有無についてはさておくとして、引用商標の上記周知性を併せ勘案したとしても、新たに提出された出願日以降あるいは使用日の特定できない証拠に、本件商標が前記表示と同時に表示されて使用される場合があることをもって、本件商標の構成態様に起因して、引用商標や請求人の商品との関連付けがなされるとは認め得ないものである。
ウ 商品間の関連性及び需要者の共通性など
本件商標の指定商品は、「学校給食用の菓子及びパン」であるところ、現に、被請求人は明治パンを使用者として同商品について本件商標の使用をさせているものである(甲第23号証ないし同第27号証)。
これに対し、引用商標が使用されてきた商品は、チョコレートをはじめ、菓子・パン等であり、その取り扱い商品中には、学食用の食品が含まれている(甲第11号証ないし同第14号証)。
しかして、本件商標の指定商品と引用商標が使用されてきた商品とは、同一又は類似する商品、あるいはこれらと関連ある食品であって、その関連性の程度は強いものであり、さらに、これら両商品は、その需要者を共通するものというべきである。
エ 出所混同のおそれについて
上記ア及びウによれば、引用商標の周知性の程度は相当に高く、本件商標の指定商品と引用商標が使用される商品間の関連性は強いものであり、また、その需要者を共通すると認め得るものである。
しかしながら、上記イのとおり、本件商標は引用商標と類似の商標とは認められず、別異の出所を示すものとして看取されるというべきものである。
してみると、本件商標をその指定商品に使用した場合、上記アないしウを総合勘案しても、これに接する需要者が引用商標を想起し連想して当該商品を請求人の業務に係る商品、あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く誤信するとは認め難いから、本件商標の出願時及び査定時において、商品の出所について混同するおそれがあったということはできないものである。
オ 小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。
(3)結語
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定によって、その登録を無効とすることはできない。
なお、請求人は、平成25年3月11日付け審理再開申立書及び弁駁書を提出しているが、その主張は本件審判の請求が一事不再理の原則に反しないとするものであって、前記判断に影響のあるものではないから、審理の再開は行わないこととした。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標(なお、色彩については原本参照)


(2)引用商標1


(3)引用商標2


(4)引用商標3


審理終結日 2013-03-06 
結審通知日 2013-03-08 
審決日 2013-03-28 
出願番号 商願2006-47950(T2006-47950) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Y30)
T 1 11・ 271- Y (Y30)
T 1 11・ 263- Y (Y30)
T 1 11・ 261- Y (Y30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 保坂 金彦 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 鈴木 修
小川 きみえ
登録日 2007-10-05 
登録番号 商標登録第5081512号(T5081512) 
商標の称呼 メイジ、メージ、エイジ、エージ 
代理人 和田 光子 
代理人 岸田 正行 
代理人 保崎 明弘 
代理人 水野 勝文 
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 

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