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審判番号(事件番号) データベース 権利
取消2012300853 審決 商標
取消2012300737 審決 商標

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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z34
管理番号 1283236 
審判番号 取消2012-300851 
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-11-02 
確定日 2013-12-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第2275504号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2275504号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2275504号商標(以下「本件商標」という。)は、「CLEAR」の欧文字を書してなり、昭和62年9月25日に登録出願、第27類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成2年10月31日に設定登録され、その後、同12年10月17日に商標権の存続期間の更新登録がされ、また、同13年1月17日に指定商品を第34類「たばこ,喫煙用具,マッチ」とする指定商品の書換登録がされ、さらに、同22年11月2日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録(予告登録)は、平成24年11月20日にされているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由、答弁に対する弁駁及び上申において、要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証(以下「甲1ないし甲10」のように略記する。)を提出した。
1 請求の理由
請求人が、主として、日本たばこ産業株式会社(以下「日本たばこ」という場合がある。)の公式ウェブサイト(甲3)、並びにその他のウェブサイト及び各種の情報源から入手した情報を調査した結果、本件商標はその指定商品である「たばこ,喫煙用具,マッチ」について、継続して3年以上日本国内において使用されていない。
また、本件商標について専用使用権者、通常使用権者等の登録はなされておらず、前記調査の結果、未登録の通常使用権者が存在しているとも思われない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録の取り消しを免れないものである。
2 第1答弁に対する弁駁
被請求人が「マイルドセブン・アクア・メンソール」シリーズのたばこの景品付き化粧箱及び専用ケース(審判注:被請求人は答弁書において「景品付きのたばこの化粧箱」及び「当該商品専用の店頭販売用ケース(以下「ケース」という。)」と答弁しているが、以下、「たばこの景品付き化粧箱」、ケースについては「専用ケース」という表記に統一する。)に使用しているのは、一連の文字、句読点により構成される「爽快、クリア。」の表示(乙第2号証ないし乙第11号証(以下「乙2ないし乙11」のように略記する。))であって、被請求人が本件商標と社会通念上同一であると主張する「クリア」の文字が独立して使用されているわけではない。
そして、この「爽快、クリア。」の表示は、特にメンソールたばこに関して、「爽快でクリアな(透明な、澄んだ)」味・香り、使用感との意味合いを容易に看取させ、全体として商品(たばこ)の特徴を簡潔に表記、記述したキャッチコピー(販売促進のための宣伝文句)として認識、把握されるものである。
被請求人による、こういった「爽快、クリア。」表示の使用態様、また、たばこの取引の実情においては、その構成中の「クリア」の文字部分が商品の出所を表示し識別する標識、すなわち「商標」として機能しているとはいい得ず、したがって、本件商標の「使用」にも該当しないため、被請求人の答弁には理由がないものと考え、以下、詳述する。
(1)被請求人が使用しているのは「爽快、クリア。」の表示であること
ア 被請求人は、本件商標の使用の事実として、たばこの景品付き化粧箱及び専用ケースに「目立つ態様で『爽快』の文字と句読点で分離した『クリア』の商標が付されている」と主張している。
しかし、被請求人が提出した証拠(乙2ないし乙11)によれば、化粧箱及び専用ケースに付されているのは、同じ書体・色・サイズにより等間隔に構成された「爽快、クリア。」の表示であって、「爽快」と「クリア」という二つの文字・語句が並列、表記された一連の表示と認識される態様である。
イ すなわち、同表示にある句読点は、文の構造や語句相互の関係を示す記号であって、句点(。)は「一つの文の終わり」に、読点(、)はことばの切れ続きを明らかにするため、特に「対等の関係で並ぶ同じ種類の語句の間」に用いられる。してみれば、被請求人が使用する「爽快、クリア。」の表示は、末尾の句点(。)によりこれが一つの文、ひとまとまりであること、また、読点(、)を間にした「爽快」と「クリア」の語が対等若しくは並列関係にあることを示しており、それは同表示を作成、使用した被請求人の意図でもあるはずである。
ゆえに、被請求人のたばこの景品付き化粧箱及び専用ケースに付された「爽快、クリア。」の表示に接した取引者、需要者(成人喫煙者)は、これを一連の構成として、また、「爽快」と「クリア」の文字・語句を対等・並列的な関係にあるものとして一体に把握し、理解すると考える。したがって、被請求人が使用しているのは、「爽快、クリア。」の語句の組み合わせからなる記述的表示であって、「クリア」単独での商標としての使用にも、当然ながら本件商標の使用にも当たらないというべきである。
ウ 被請求人は、答弁を通じて、「爽快、クリア。」の表示中の「爽快」は文字で、句読点で分離した「クリア」は商標であるとの持論を展開しているが、これら二つの語句にそういった機能(軽重)の差が生じる理由・説明は何ら示しておらず、「クリア」の商標を使用しているとの主張は、その前提からして合理的根拠を欠くものといわざるを得ない。
(2)「爽快、クリア。」の表示は需要者(成人喫煙者)らにキャッチコピー(宣伝文句)として認識されるにすぎないこと
ア 被請求人は、「たばこを取り扱う業界において一般に行われている販促方法」である「景品付き化粧箱は、たばこの包装箱より大きく紙面も広いため、たばこの銘柄の他に、商品やブランドのコンセプト等を商標として表したものや、キャッチコピー等が付されているのが一般的」であり、「本件商標は・・・『マイルドセブン・アクア・メンソール』シリーズのコンセプトの一つとして、景品付きのたばこの化粧箱及び当該商品専用の店頭販売用ケースに付して使用された」と主張している。
イ 被請求人が使用しているのは、「爽快、クリア。」の表示であるところ、「爽快」と「クリア(透明な)」は、まさに被請求人がいう『マイルドセブン・アクア・メンソール』シリーズのコンセプト、すなわち被請求人が消費者(成人喫煙者)に訴えたい商品の基本的な意図や特徴を記述したものであり、被請求人自身がニュースリリース等を通じて喧伝しているとおりである(甲4ないし甲6)。
ウ この点からも、被請求人が使用している「爽快、クリア。」の記述的表示は、「マイルドセブン・アクア・メンソール」シリーズの主要なコンセプト「爽快」と「クリア」を並列して記述した一体の構成というべきである。
そして、被請求人自身が認めているように、「たばこの業界において一般的な販促方法」である「景品付き化粧箱は・・・たばこの銘柄の他に、商品やブランドのコンセプト・・・キャッチコピー等が付されているのが一般的」な取引の実情に照らして、「爽快、クリア。」の表示は、需要者(成人喫煙者)らをして、当該たばこの特徴として「爽快でクリアな」味・香り、使用感を有するとの意味合いを容易に看取させ、ゆえに、全体として明らかに商品(たばこ)の特徴を簡潔に表記、記述したキャッチコピー(成人喫煙者の注意を惹きつける販売促進のための宣伝文句)として認識、把握されるものである。
(3)「爽快、クリア。」の記述的表示中の「クリア」の文字は商品の識別標識としての機能を有しないこと
ア 被請求人は、「たばこの業界において一般的な販促方法」として、景品付き化粧箱や専用ケースに「マイルドセブン・アクア・メンソール」のシリーズ・商品の名称(銘柄)等の他に、さらに加えて、この「爽快、クリア。」の表示を使用している。
すなわち、被請求人が提出した証拠(乙2ないし乙11)によれば、同たばこは、「マイルドセブン・アクア・メンソール・スーパーライト・ボックス」又は「マイルドセブン・アクア・メンソール・ワン・100’s・ボックス」の品名、銘柄として取引されていることがわかる。また、化粧箱に詰めるたばこ(商品)本体と、景品付き化粧箱(乙2ほか)及び専用ケース(乙3ほか)には、被請求人の著名/登録商標である「MILD SEVEN」やブランドロゴ(図形)、「Q」の文字を図案化した「AQUA/mentho1」又は「AQUA mentho1」、「アクア・メンソール/スーパーライト」又は「アクア・メンソール・ワン」といった商標がそれぞれ顕著な態様で付されている。
これに対し、「爽快、クリア。」の表示は、化粧箱の景品(が入る部分)の下に1ヶ所、あるいは専用ケース奥の部分に(被請求人のコーポレートロゴ「JT」及び「AQUA mentho1」とともに)1ヶ所付されているにすぎない。
イ 需要者(成人喫煙者)らが商品(たばこ)を選択し取引を行う際に、商品の出所を表示し、自他商品の識別標識としての機能を果たすのは、まず著名ブランド「MILD SEVEN/マイルドセブン」や、シリーズ名「AQUA menthol/アクア・メンソール」であり、若しくは各銘柄「アクア・メンソール・スーパーライト」、「アクア・メンソール・ワン」といった商標であるはずである。被請求人のいう「目立つ態様で」あっても、「爽快、クリア。」の表示は、前述のとおり当該シリーズ商品のコンセプト(特徴)を簡潔に表記、記述したキャッチコピー(販売促進のための宣伝文句)と認識されるにとどまり、識別標識とはなり得ない。
ウ 被請求人によるこういった「爽快、クリア。」表示の使用態様においては、その記述的な語句の組み合わせの中の「クリア」の文字部分が商品の出所を表示し識別する標識、すなわち「商標」として機能しているとはいい得ず、したがって、本件商標の「使用」に該当しないことも明白である。
(4)登録「商標」の「使用」に係る判断基準等について
ア 商標の本質は、当該商標を使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの(商標法第3条第2項)として機能すること、すなわち、商品又は役務の出所を表示し、識別する標識として機能することにあると解されるから、商標がこのような出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているといえない場合には、形式的には同法第2条第3項各号に掲げる行為に該当するとしても、当該行為は商標の「使用」に当たらないと解するのが相当である(平成20年(ワ)第34852号)(甲8)とされている。
イ そして、特許庁における商標の登録取消審判においても、上記判断基準に則し、被請求人が使用する標章等の態様、当該標章等が使用された商品の表記全体との関係、指定商品との関係など具体的、かつ総合的に考察する手法が確立されている。
例えば、取消審判2011-300601号(甲7)及び取消審判2010-301233号(甲8)が挙げられる。
ウ このような、判断基準、審理手法に照らして、被請求人による「爽快、クリア。」表示の使用態様は、その構成全体をもって、当該商品(たばこ)の特徴として「爽快でクリアな」味・香り、使用感を有するといった意味合いを容易に看取、把握させ、たばこの取引の実情(販促方法)、当該商品(たばこ)の景品付き化粧箱及び専用ケース(乙2ないし乙11)に付された被請求人商標「マイルドセブン」ほか表記全体との関係、被請求人による宣伝の実態等を具体的、総合的に考察するならば、当該商品(たばこ)の特徴を簡潔に表記、記述したキャッチコピー(成人喫煙者の注意を惹きつける販売促進のための宣伝文句)として認識、把握されるにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないことは明白である。さらに、その記述的表記中の「クリア」の文字部分が商品の出所を表示し識別する標識、すなわち「商標」として機能しているとはいい得ず、いずれにせよ、本件商標の「使用」に該当しないことも明白である。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人の提出した証拠によって、被請求人が本件商標を使用していた事実は認められない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙18(枝番を含む。)を提出した。
1 第1答弁
(1)本件商標の使用の事実の要点
商標権者である被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に我が国において、その請求に係る指定商品中「たばこ」について、本件商標を使用している。
(2)本件商標の使用の事実
ア たばこを取り扱う業界において一般に行われている販促方法の1つに、商品であるたばこと景品であるライターや携帯灰皿等とを、1つの化粧箱に詰めて販売する方法がある。また、このような景品付き化粧箱は、たばこの包装箱よりも大きく紙面も広いため、たばこの銘柄の他に、商品やブランドのコンセプト等を商標として表したものや、キャッチコピー等が付されているのが一般的である。
被請求人も上記の販売方法を採択しており、本件商標は、被請求人の製造・販売に係るたばこである「マイルドセブン・アクア・メンソール」シリーズのコンセプトの1つとして、景品付きのたばこの化粧箱及び当該商品専用の店頭販売用ケース(以下、景品付きたばこの化粧箱は「ケース」、店頭販売用ケースは「専用ケース」という場合がある。)に付して使用されたものである。
イ 本件審判の要証期間に撮影された写真ではないが、2012年10月に使用した化粧箱及び専用ケースと同じ態様の化粧箱及び専用ケースの写真の一例を乙2及び乙3として示す。
乙2の1は、被請求人の製造・販売に係る「マイルドセブン・アクア・メンソール・スーパーライト・ボックス」の景品付き化粧箱の写真であり、乙2の2は、「マイルドセブン・アクア・メンソール・ワン・100’s・ボックス」の景品付き化粧箱の写真である。
これらの化粧箱の中央に目立つ態様で「爽快」の文字と句読点で分離した「クリア」の商標が付されていることが視認できる。また、化粧箱には「ライター付き1個パック410円」と書され、当該化粧箱の態様で商品である「たばこ」が販売されていたことは容易に理解できる。
乙3の1は、「マイルドセブン・アクア・メンソール・スーパーライト・ボックス」の景品付き化粧箱を入れる専用ケースの写真であり、乙3の2は、「マイルドセブン・アクア・メンソール・ワン・100’s・ボックス」の景品付き化粧箱を入れる専用ケースの写真である。
ケース上部に化粧箱と同様に「クリア」の商標が付されていることが視認できる。
ウ 上記化粧箱及び専用ケースの作成は、被請求人が株式会社電通(以下「電通」という。)に依頼し、電通からの委託により、株式会社電通テック(以下「電通テック」という。)がその印刷を大日本印刷株式会社(以下「大日本印刷」という。)に発注し作成される。印刷された専用ケース等は、被請求人及び被請求人の指定先に納品され、小売店に搬入される。
エ 乙4は、大日本印刷から電通テックヘ送られた2012年9月30日付けの納品書の写しである。この納品書の「品名」欄4行目及び5行目記載の「MS M4銘柄 1個ベタ化粧箱 AQUA5mg(又は1mg)」とは、「マイルドセブン・メンソール4銘柄・アクアの景品1個付き化粧箱5mg(又は1mg)」の略であり、同欄6行目記載の「MS M4銘柄 1個ベタ販売ケース」とは、「マイルドセブン・メンソール4銘柄用の景品1個付き化粧箱の販売用ケース」の略であり、この品名に記載された化粧箱とケースには、2012年10月に使用した乙2及び乙3に示す態様の化粧箱とケースが含まれている。
また、上記納品書「備考」欄には、「9月30日にジェイティ物流アセンブリ先・日本たばこ産業株式会社(以下「日本たばこ」という。)営業部へ納品致しました」との記載がされており、2012年9月30日に、「マイルドセブン・アクア・メンソール」シリーズのたばこの景品付き化粧箱と専用ケースが、大日本印刷からジェイティ物流アセンブリ先と日本たばこ営業部に納品されたことが明かである。
オ 乙5は、電通テックの「印刷物の納入に関する証明書」である。この証明書には、「電通テックが日本たばこの紙巻きたばこ製品『マイルドセブン・アクア・メンソール・スーパーライト・ボックス』及び『マイルドセブン・アクア・メンソール・ワン・100’s・ボックス』の化粧箱及び専用ケースの作成を、大日本印刷に発注し、その納入を受けて日本たばこ及びその指定先に納品した」旨記載されており、乙4に示す納品書に記載された化粧箱及び専用ケースのうち、「マイルドセブン・アクア・メンソール・スーパーライト・ボックス」と「マイルドセブン・アクア・メンソール・ワン・100’s・ボックス」の景品付き化粧箱及び専用ケースが大日本印刷から被請求人及びその指定先に納品されたことを証明するものである。
具体的には、証明書に付された別紙1ないし3の3つの態様からなる「マイルドセブン・アクア・メンソール・スーパーライト・ボックス」の化粧箱を413,309個、同書に付された別紙4ないし6の3つの態様からなる「マイルドセブン・アクア・メンソール・ワン・100’s・ボックス」の化粧箱を415,415個、及び、上記各種のたばこの景品付き化粧箱を含む専用ケースを514,648個が、2012年9月30日に被請求人と被請求人の指定先に納品されたことを証明するものであり、乙4に示す納品書と、納品した品名、納入日が合致する。
なお、乙4に記載の品名が「MS M4銘柄 1個ベタ化粧箱 AQUA5mg(又は1mg)」「MS M4銘柄 1個ベタ販売ケース」と略して書かれているが、これは上述のとおり「マイルドセブン・メンソール4銘柄・アクアの景品1個付き化粧箱5mg(又は1mg)」「マイルドセブン・メンソール4銘柄用の景品1付き化粧箱の販売用ケース」のことを略したものであり、乙5に示す証明書に記載の品名と異ならないことは、証明書添付の別紙1ないし8の写真をみても明かである。すなわち、別紙1ないし6の化粧箱の写真には、「MILD SEVEN AQUA menthol SUPER LIGHTS5」、「MILD SEVEN AQUA menthol ONE1」の文字や「5mg」「1mg」の文字が視認され、化粧箱の上部に景品が1個入る空間が設けられており、これが、上記各たばこに関する景品付き化粧箱であることが容易に理解できる。また、別紙7及び8に示す専用ケースにも、上記化粧箱と同様に個々のたばこの銘柄等の文字が視認されることから、上記景品付き化粧箱専用の陳列用のケース(専用ケース)であると容易に理解できるものである。
また、当該証明書に添付した別紙1ないし8に示す化粧箱及び専用ケースには、いずれも目立つ態様で「クリア」の商標が「爽快」の文字と句読点で分離した態様で付されていることが視認できる。
以上のことから、「クリア」の商標が付された「たばこ」の景品付き化粧箱及び専用ケースが作成され、2012年9月30日に被請求人とその指定先に納品されたことが明かである。
カ 上記の2012年9月30日に納品された化粧箱及び専用ケースは、ライター等の景品が付されてコンビニェンスストアやたばこの小売店に搬入され、個々の店舗においてたばこが化粧箱に入れられる。また、化粧箱は、例えば、乙6の別紙1及び2に示すような態様で専用ケースに入れて消費者の目に付くように陳列され、景品付きのたばこが販売される。
キ 乙6ないし乙11は、「マイルドセブン・アクア・メンソール」シリーズのたばこの景品付き化粧箱からなる商品と、当該商品の専用ケースを店内に設置し、当該商品を販売したことを小売店が証明する書面である。
(ア)上記証明書に添付の別紙1は、「マイルドセブン・アクア・メンソール・スーパーライト・ボックス」のたばこの景品付き化粧箱とその専用ケースの写真であり、○内に1から○内に3の番号を付した3つの態様からなる景品付き化粧箱を、○内に4の番号を付した専用ケースに入れた態様を示すものである。別紙1の○内に1、○内に2、○内に3は、別紙1に示す○内に1から○内に3の番号を付した3態様の景品付き化粧箱を、それぞれ単品で撮影した写真である。別紙1の○内に4は、別紙1に示す○内に4の番号を付した専用ケースを単品で撮影した写真である。
(イ)また、証明書に添付の別紙2は、「マイルドセブン・アクア・メンソール・ワン・100’s・ボックス」のたばこの景品付き化粧箱とその専用ケースの写真であり、○内に1から○内に3の番号を付した3つの態様からなる景品付き化粧箱を、○内に4の番号を付した専用ケースに入れた態様を示すものである。別紙2の○内に1、○内に2、○内に3は、別紙2に示す○内に1から○内に3の番号を付した3態様の景品付き化粧箱を、それぞれ単品で撮影した写真である。別紙2の○内に4は、別紙2に示す○内に4の番号を付した専用ケースを単品で撮影した写真である。
(ウ)各証明書の別紙1及び2に示すように、景品付き化粧箱及び専用ケースには、「クリア」の商標が目立つ態様で付されており、乙5に示す納品された化粧箱及び専用ケースと同一の態様となっていることは明らかである。
ク 各小売店の証明書(乙6ないし乙11)により明らかなとおり、「クリア」の商標が付された化粧箱入りのたばこが、本件審判の請求の登録前3年以内である2012年10月10日から2012年11月9日の間に、いずれかの小売店の店頭に陳列され、販売されたことに疑義はなく、また、同期間において「クリア」の商標が付された専用ケースが店頭に陳列されたことに疑義はないものである。
(3)以上のような、たばこの景品付き化粧箱に「クリア」の商標を付して使用する行為は、商標法第2条第3項第1号に規定する使用に該当し、「クリア」の商標を付した景品付き化粧箱に入った「たばこ」を販売する行為は、同条第3項第2号に規定する使用に該当する。また、店頭に陳列された「クリア」の商標を付した専用ケースは、一種の広告ともいえるから、当該使用は同条第3項第8号に規定する使用に該当するものである。
また、本件商標は、欧文宇「CLEAR」を横書きした構成からなり、使用に係る商標は片仮名「クリア」を横書きした構成からなるが、いずれも「クリア」の称呼が生じ、「透明な」等の同一の観念が生じるものであるから、上記使用に係る商標は本件商標と社会通念上同一の商標であることが明らかである。
(4)小結
上記のとおり、本件商標は、前記の各証拠資料から明らかなように、被請求人が、指定商品「たばこ」について使用していることに何ら疑義はないものといえる。
2 第2答弁
(1)請求人は、弁駁書において、以下の主な理由を根拠に、答弁には理由がないと主張する。
ア 被請求人が使用しているのは、「爽快、クリア。」の表示である。
イ 「爽快、クリア。」の表示は、需要者(成人喫煙者)らにキャッチコピー(宣伝文句)として認識されるにすぎない。
ウ 「爽快、クリア。」の記述的表示中の「クリア」の文字は、商品の識別標識としての機能を有しない。
(2)しかしながら、被請求人が「たばこ」の化粧箱及び専用ケースで使用する文字要素のうち「クリア」の部分は、独立して「たばこ」との関係で自他商品識別標識力を発揮し、本件商標を「たばこ」に使用していたことに疑義があるものではない。
以下、詳述する。
ア 請求人は、「被請求人が使用しているのは『爽快、クリア。』の表示である」旨主張し、需要者は、「爽快、クリア。」を一連の構成として、「爽快」と「クリア」の文字・語句を対等・並列的な関係にあるものとして一体的に把握し理解する旨述べる。
しかしながら、請求人が使用する商標は「クリア」であり、当該表記は独立して自他商品識別標識として機能するものである。
本件商標は、乙2ないし乙11に示すとおり、「クリア」の商標が「爽快」の文字と読点で分離した態様で使用されており、「クリア」の文字と「爽快」の文字とを常に一連の表示として看取・認識しなければならない理由はない。
そもそも、一つの商品の化粧箱やケースに、常に一つの商標が付されるものではなく、複数の商標が付されることも、たばこを扱う業界において一般に行われている。
また、本件商標を付した化粧箱及び専用ケースは、景品付きの商品を入れる包装容器であるところ、たばこの銘柄の他に、商品やブランドコンセプト等を付すことも一般的に行われ、このような容器に表された表記内容は広告機能も発揮するのが通常であり、これらは、商標としての機能を果たすものである。そして、このような表記をいかに瞬時に需要者に看取させるか、その表記方法も各社工夫をこらしているものと思われる。
この点、乙号証に示す「爽快、クリア。」の表記は、「爽快」と「クリア」の個々の二つの表記を限られたスペースにおいて表記したものであり、句読点の符号は、これらの個々の二つの表記をそれぞれ別個のものとして区別するためにいわば飾りとして使用したものである。すなわち「爽快」と「クリア」を一連に表記したいのであれば、「爽快クリア」の5文字を連ねればよいものであるところ、被請求人においては、「爽快」と「クリア」の二つの表記をそれぞれ別個のものとして需要者の視覚に訴えるべく「爽快」と「クリア」の個々の二つの表記を句読点の符号を付して、個々の各表記がより目立つようにするといった表記上の手法をとったものである。
さらに、句読点の使用方法には文法上のルールはあるが、文法上の役割に限らない使用方法もあるものであって、例えば、幅広い年齢層に知られている「モーニング娘。」や小説の題名としての「野ブタ。をプロデュース」のように、音楽グループ名や特定の語を目立たせるために、句点(。)を飾りのように付して使用することも行われており、句読点を、視覚的に訴えるための飾りやデザイン的な役割を担うものとして用いることも現にあるのである。
加えて、文法上のルールの点からみても、読点は様々な使い方があるのであって、文の主題を表す語句の後に打つ、条件や理由を説明する語句の後に打つ、提示した言葉の後に打つ、文の成分を倒置したした後に打つ、助詞を省略した箇所に打つ、リズムを強調したい場合に打つ、文意を明確にしたい場合に打つ、などの使われ方をする。したがって、読点が存在していることをもって、その前後に置かれた表記が「対等・並列的な関係にあるもの」として「一体に把握」されるなどということもできない。
したがって、乙号証に示す「爽快、クリア。」の表記から、これらが常に一体の表記と認識される理由はない。
特許庁の審判実務においても、使用商標が、登録商標と他の文字や図形等の要素を有する商標について、同一性を認め登録商標の使用を認めている(乙12ないし乙16)。
なお、請求人は、「『爽快、クリア。』の表示中の『爽快』は文字で、句読点で分離した『クリア』は商標であるとの持論を展開していますが、これらの二つの語句にそういった機能(軽重)の差が生じる理由・説明は何ら示されておらず、『クリア』の商標を使用しているとの主張は、その前提から合理的根拠を欠く」と主張するが、そもそも、本件では、本件商標である「CLEAR」の使用が争点となっており、被請求人は「クリア」の表記が本件商標の使用と確信していることから「『クリア』の商標」と述べているにすぎないことに、合理的根拠を欠くというのは理解し難い。
イ 請求人は、「『爽快、クリア。』の表示は需要者(成人喫煙者)らにキャッチコピー(宣伝文句)として認識されるにすぎない」と主張し、その根拠として請求人は、甲4ないし甲6を示し、「常に『爽快(感)』と『クリア(透明感)』の文字・語が組み合わせで使用されている実態があります」と述べている。
しかしながら、乙号証に示す「爽快、クリア。」は、「爽快」と「クリア」の個々の二つの表記をそれぞれ別個のものとして分離して表記したものであって、「爽快」の表記と「クリア」の表記が連結し一体となって使用されているものではなく、また、請求人が甲号証において示すような、「爽快」「クリア」の二つの表記が被請求人の発行した文面の中で同時に使われているとする例があるからといって、乙号証に示す「爽快、クリア。」における「爽快」の表記と「クリア」の表記が構成する文字全体が一体として特定の既成の観念を表してなるものではない。したがって、「爽快、クリア。」との表示の中で「クリア」の表記は、あくまでも独立して認識されるものである。
また、「クリア」の表記は、被請求人の「マイルドセブン」ブランドに係るたばこのブランドコンセプトを体現するものの一つとして、被請求人が「マイルドセブン・アクア・メンソール・シリーズ」をはじめとする「マイルドセブン」ブランドに係るたばこに継続して使用してきたものであり、たばこで「クリア」といえば「マイルドセブン」ブランドに係る製品が需要者において想起されうる、自他商品識別標識を有するものである。
なお、仮に、被請求人における「クリア」の表記が、「マイルドセブン・アクア・メンソール・シリーズ」の特徴を暗示するものとして、かかる表記がキャッチコピーとして看取・認識されたとしても、それをもって直ちに自他商品の識別標識として機能しないものとされる理由はなく、自他商品識別標識としての機能を発揮するものであるか否かは、表記の内容、表記の方法等から個別に判断されるべきである。このことは、「標語等が直ちに自他商品の識別標識として機能しないものとする格別の理由はなく、その構成中にあって、自他商品の識別標識として機能すべき要部を有している場合には、たとえ、需要者において、標語等を表すものと認識し得るとしても、そのことをもって、商標の使用が認められないものではなく、かかる要部が、同時に、自他商品を識別させるための商標でもあると解するべきである。」(乙15)と判断されている。
してみれば、被請求人がたばこの広告において「クリアなメンソール製品」(甲4)、「クリアな爽快感」(甲5)等と表記したことにより、化粧箱等に個々に表された「爽快」と「クリア」の二つの表記から、仮にキャッチコピーとしての効果が表れたとしても、たばことの関係において、化粧箱等に大きく書された「クリア」の部分は、尚その自他商品識別力を充分に発揮するものである。
ウ 請求人は、「『爽快、クリア。』の記述的表示中『クリア』の文字は商品の識別標識としての機能を有しない」ことを前提として、自他商品の識別標識としての機能を果たすのは「MILD SEVEN/マイルドセブン」や「AQUA menthol/アクア・メンソール」等であると主張する。
しかしながら、「クリア」の表記は、「マイルドセブン」ブランドに係るたばこに継続して使用してきたものであり、「クリア」といえば「マイルドセブン」ブランドに係る製品が需要者において想起されうる、自他商品識別標識を有するものであるから、請求人の主張は、その前提において誤っている。
さらに、仮に、識別力を有さなくとも、「『商標法第50条所定の登録商標の使用』は、商標がその指定商品について何らかの態様で使用されておれば十分であって、識別標識としての使用に限定しなければならぬ理由は、全く考えられない」旨の裁判例が存在している(乙18)。
してみれば、乙号証に示す「クリア」の表記は、大きく目立つ態様で、化粧箱及び専用ケースに付されているものであるから、自他商品識別標識として充分に機能するものであり、請求人の主張は失当である。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者により、第34類「たばこ」について、使用されていることは明らかである。

第4 当審の判断
1 請求人及び被請求人の両当事者の主張及び提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1) 乙各号証
ア 乙2の1及び2は、それぞれのたばこに含有するタールが5mg及び1mg用のライター付き「たばこの景品付き化粧箱」の写真であるところ、上段部分の景品を入れる四角形の枠とその下のタバコの箱を入れる枠内との青色地の横長仕切り部分内に、白抜きで表された「爽快、クリア。」の文字が認められる。
イ 乙3の1及び2は、上記各「たばこの景品付き化粧箱」を入れる専用ケースの写真であるところ、いずれの専用ケースからも背板の飛び出ている青色表示部分に、白抜きで表された「爽快、クリア。」の文字が認められる。
ウ 乙4は、納入日の欄に「2012年9月30日」と記載されている大日本印刷から株式会社電通テック宛ての「納品書」の写しであり、乙5は、株式会社電通テックによる該「納品書」に係る「印刷物の納入に関する証明書」である。乙5には、納入品として、別紙1ないし8の「たばこの景品付き化粧箱」の写真が添付され、景品を入れるスペースに大小異なるものの、基本的には乙2の1ないし乙3の2の写真とおおよそ同じものであり、仕切り部分若しくは背板に、白抜きで表された「爽快、クリア。」の文字が認められる。
エ 乙6ないし乙11は、いずれも、表題に「『マイルドセブン・アクア・メンソール』化粧箱等の設置に関する証明書」と記載されている小売店の「証明書」であり、乙5に添付されている写真の製品を店内に設置し販売したことが証明されている。
2 本件商標と使用標章との社会通念上の同一性の判断
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「CLEAR」の欧文字を表してなるものであるから、その構成文字に相応して「クリア」の称呼、「明らかなさま、明晰、澄んでいること、冴えていること」の観念を生じるものである。
(2)使用標章について
被請求人は、乙2の1ないし乙3の2の写真に示された化粧箱及び専用ケースには、いずれも目立つ態様で「クリア」の商標が「爽快」の文字と句読点で分離した態様で付されていることが視認でき、該「クリア」商標と本件商標とは社会通念上の同一の商標である旨主張する。
しかし、上記化粧箱の仕切り部分及び専用ケース背板には、「爽快、クリア。」と記載されており、該「爽快」と「クリア」の文字間の読点と「クリア」の文字に続く句点の存在があることから、「爽快」と「クリア」の文字のそれぞれが分離された構成からなるものとみるよりは、「爽快、クリア。」の全体をもって一つの文章からなるものとみるのが相当である。そうとすると、これより、「爽快ですっきり」程の意味合いを容易に想起させるものであり、製品の特徴を表した一連の宣伝文句(キャッチコピー)と認識、把握させるものである。
してみれば、商標権者が化粧箱及び専用ケースに使用すると主張する商標は「爽快、クリア。」の文字全体であって、これより「爽快ですっきり」の観念が生ずるとすると、「明らかなさま、明晰、澄んでいること、冴えていること」の観念を生じる本件商標とは、社会通念上の同一の商標ということができない。
3 被請求人の主張
被請求人は、使用標章「爽快、クリア。」は、「爽快」と「クリア」という個々の二つの表記をそれぞれ別個のものとして分離して表記したものであり、句読点の符号は、別個のものとして区別するためのいわば飾りとして使用しているから、使用標章中の「クリア」の表記は、独立して認識され、自他商品の識別標識を有する旨主張している。
しかしながら、使用標章「爽快、クリア。」は、上記のとおり、製品の特徴である爽快感や透明感を表現した一連の宣伝文句(キャッチコピー)と認識、把握されるものであり、また、かかる構成において、「クリア」の文字部分のみが独立して、取引に資するという特段の事情も見いだせない。
そうとすれば、使用標章「爽快、クリア。」は、その構成全体の文字に相応して「ソウカイクリア」と発音され、「爽快ですっきり」程の意味を表す一連一体のものとして認識し、把握されるといえるものであるから、使用標章と本件商標とは、その構成に係る文字、読み及び意味において、明らかに相違するものであるから、商標法第50条第1項に規定する本件商標と社会通念上同一のものとして認識される商標ということはできない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていることを証明したものとは認めることはできず、また、被請求人は、本件商標をその請求に係る指定商品に使用をしていないことについて、正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-09-12 
結審通知日 2013-09-17 
審決日 2013-11-06 
出願番号 商願昭62-107128 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z34)
最終処分 成立  
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 酒井 福造
手塚 義明
登録日 1990-10-31 
登録番号 商標登録第2275504号(T2275504) 
商標の称呼 クレアー、クレア 
代理人 川崎 隆夫 
代理人 瀧野 秀雄 
代理人 江成 文恵 
代理人 今井 貴子 
代理人 青山 なつ子 
代理人 渡辺 広己 
代理人 瀧野 文雄 

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