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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X0102071719
審判 全部申立て  登録を維持 X0102071719
審判 全部申立て  登録を維持 X0102071719
審判 全部申立て  登録を維持 X0102071719
審判 全部申立て  登録を維持 X0102071719
審判 全部申立て  登録を維持 X0102071719
管理番号 1282421 
異議申立番号 異議2012-685020 
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2012-12-11 
確定日 2013-09-09 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1038816号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 国際登録第1038816号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1038816号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(A)のとおりの構成からなり、2009(平成21)年9月3日にGermanyにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、2010年2月23日に国際商標登録出願され、第1類、第2類、第7類、第17類及び第19類に属する別掲(B)に記載したとおりの商品を指定商品として、平成24年6月11日に登録査定、同年9月21日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
1 商標法第3条第1項柱書について
(1)登録異議申立人について
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、1883年に英国で創業し、1929年から「Denso」ないし「DENSO」商標(以下「申立人商標」という。)の下で、種々の工業・産業用設備や建築物・構造物の防食用材、防水用材及びシール材(具体的には、金属防食用コーティング剤、コンクリート防食剤、防水剤、耐腐食性塗料、防水塗料、シール材、建築用シール材など。以下「DENSO商品」という。)を扱っている英国法人で、約80年という長きにわたり、DENSO商品を世界各国で提供し続けてきた(甲8?甲13)。
申立人は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカに系列子会社を持ち、その他140余の国々に対しても製品を提供しており(甲10)、日本においては、北日本防食株式会社や芝田株式会社など複数の販売代理店を通じて、遅くとも1970年頃からDENSO商品を日本国内で販売している(甲10?甲13)。
(2)申立人と商標権者との契約
申立人と商標権者は、世界各国において、「DENSO」の文字からなる、又は「DENS」の文字を含む商標の権利を持ち合っており、例えば、申立人は、日本、オーストラリア、カナダ、中国、香港などにおいて、一方の商標権者は、ドイツ、フランスなどにおいて、それぞれ「DENSO」に関する商標権を所有している。すなわち、一方が「DENSO」に関する商標権を所有している国では、他方は所有しておらず、日本では申立人が「DENSO」に関する商標権を所有し(甲3?甲6)、商標権者は、一切所有していない。こうした状況において、両者は、「DENSO」に関する商標登録及びその使用範囲について明確な棲み分けを図り、出所の混同を防止すべく、「DENSO」商標及び「DENS」の文字を含む商標の使用や登録を、国別で互いに制限することについて、2001年2月14日に契約(甲7:以下「本件契約」という。)を締結し、当該契約は、現在も有効に存続している。
本件契約の第1条(c)には、「デンソーホールディングは、添付物件1に記載の国において所有しうるDENSを含む一切の商標を使用しない。」と明記されており、当該添付物件1は、申立人が「DENSO」に関する商標権を所有している国の一覧で、日本が含まれている。当該条項により、商標権者は、日本において「DENS」の文字を含む商標を一切使用しないこととし、本件契約の締結以来、日本国内において「DENSO」商標はもとより「DENS」の文字を含む商標も一切使用していない。
本件商標「DENSOLAR」は、語頭において明らかに「DENS」の文字を含むものであるから、現在も有効な本件契約の下では、商標権者は本件商標を日本国内で使用しないことが明らかであって、実際に、本件商標の登録出願時又は登録査定時において商標権者が本件商標を日本国内で使用していたという事実も認められない。
(3)小括
以上のとおり、商標権者には、本件商標の登録査定時に、本件商標を現実的に使用する意思はなかったのであり、本件商標に係る登録出願が商標法第3条第1項柱書の要件を具備していなかったことは明らかである。
そして、判決例において、「登録商標が,その登録査定時において『自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標』に当たることについては,権利者側において立証すべき」(平成24年(行ケ)第10019号 平成24年5月31日判決)であると説示されているところ、上記の本件契約があるにもかかわらず、商標権者が日本国内において本件商標を実際に使用し、又は具体的な使用の計画を進めていたことについては疑義があり、これを証明できない限り、本件商標に係る登録出願の商標法第3条第1項の要件不備は免れないというべきである。
2 商標法第4条第1項第7号について
本件契約の第1条(c)には、「各当事者は、相手方の管轄地域として割り当てられる添付物件1または2に記載の国において、文字部分『DENS』または『DENSO』を含む商標または他の標識の新規登録出願をしない。」との合意が交わされており、本件契約により、商標権者は、添付物件1に掲げられる国、すなわち日本国内において、「DENS」の文字を有する本件商標を出願してはならないことが明確にされている。それにもかかわらず、商標権者が「DENS」の文字を明らかに含む本件商標「DENSOLAR」を出願したことは、企業間の一般的道徳観念に著しく反し、明らかに社会的相当性を欠くものといわざるを得ない。
また、そもそも、本件契約は、その趣旨の一つとして、両当事者が同一の市場において同一又は類似の商標を使用することにより出所の混同が生じ、関連取引者・需要者に商品の誤認や取り違い等の不利益が及ぶことを防止すべく締結されたものである。しかして、商標法の目的の中に「需要者の利益を保護することを目的とする。」とあるように、需要者の利益を保護することは商標法の予定する秩序の一つであって、本件契約が締結された具体的な経緯に照らして、本件商標を登録する行為は、商標法の予定する秩序を害するものと評価せざるを得ない。
以上のとおり、本件商標は、本件契約に違反して出願されたものであり、商標権者による当該出願行為は、社会的相当性を著しく欠き、信義誠実の原則に反するものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
3 商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号について
(1)申立人が引用する登録商標
ア 登録第1023977号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(C)のとおりの構成からなり、昭和45年6月30日に登録出願、第7類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同48年8月1日に設定登録され、その後、4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成17年11月30日に指定商品を第19類「腐蝕防止剤を塗布または含浸した布製テープ状のパイプ保護用建築専用材料,陶磁製建築専用材料,れんが及び耐火物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,建造物組立てセット(金属製のものを除く。),土砂崩壊防止用植生板,窓口風防通話板,区画表示帯,セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
イ 登録第1978158号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(D)のとおりの構成からなり、昭和52年10月6日に登録出願、第7類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同62年8月19日に設定登録され、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成21年1月28日に指定商品を第19類「陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,建造物組立てセット(金属製のものを除く。),土砂崩壊防止用植生板,窓口風防通話板,区画表示帯,セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス,腐蝕防止剤を塗布又は含浸した布製テープ状のパイプ保護材」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
(なお、以下、引用商標1及び引用商標2をまとめて「引用商標」という場合がある。)
(2)本件商標及び申立人商標の構成について
本件商標は、欧文字「DENSOLAR」を標準書体で横書きしたものである。
一方、申立人商標は、上記1(1)のとおり、「Denso」又は「DENSO」の文字からなる商標である。
(3)申立人商標の周知・著名性について
今から80年以上前の1929年、Paul Winn&Company Ltd.(現・申立人)は、英国において、ドイツ製の防食・シーリング用テープの事業を引き受け、「Denso」というブランド名で取引を開始し、DENSO商品が、パイプや金具などの腐食を防止するためのものとして、ガス・水道事業において大きな成功を収め、第二次世界大戦中や戦後も、DENSO商品に対する需要は増すばかりであった(甲9)。一方で、申立人は、様々な関連業種企業を買収していき、防食・シーリング用材の取り扱い範囲を拡大させていき、1960年代には、世界中に販売代理店を設け、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカにおいて子会社を、1970年代には、米国、カナダにおいて子会社を設立し、事業のグローバル化を推し進めた(後記のとおり、日本における販売網を確立したのもこの頃である。)(甲9)。また、1980年頃から、DENSO商品は、英国の地方公共団体による公共事業、あるいは国家プロジェクトからの受注も増加していった。
日本では、1970年から、芝田株式会社が、ペトロラタム系DENSO商品の輸入を開始し、現在に至るまでこれら製品を日本全国に紹介してきた(甲12)。また、1971年からは、北日本防食株式会社が、DENSO防食システムの国内での販売施工をスタートさせ、現在に至るまで継続してDENSO商品を輸入・販売している(甲10,甲11)。両社の公式ウェブサイトに「ペトロラタム系防食テープとして世界各地で数多くの使用実績を持つデンゾーは、知名度が高く、この種の製品の代名詞のような存在となり、その名は関係業界に広く、深く浸透しております。」(甲11)や「あらゆる産業界で広範囲に活用され、短い期間で北海道から沖縄まで全国で使われるようになりました。DENSO(デンゾー)防食システムの需要はますます増大しています。」(甲12)と説明されているように、申立人商標が、防食・シーリング用材の分野において、その関連の取引者・需要者の間で広く認識されていることが優にうかがえる。
こうした申立人の世界的な実績が評価され、1995年、当時の申立人の代表David Winnは、バッキンガム宮殿において、ウェールズ皇太子(チャールズ皇太子)より大英帝国勲位を受け、また、2010年には、申立人は、エリザベス女王よりQueen’s Award for Enterpriseを授かっている(甲9)。申立人は、今年で創業130周年を迎え、防食・シーリング用材の分野において、最も歴史が古くかつ最先端をいくリーディングカンパニーとしてその地位を確立している。
以上のとおり、申立人商標である「Denso」及び「DENSO」は、80年以上(日本に関しては40年以上)継続して使用され続けており、防食・シーリング用材との関係において、日本国内の関連取引者及び需要者の間で広く認識されているものである。
(4)本件商標と申立人商標の類似の程度について
申立人商標である「Denso」及び「DENSO」は、防食用コーティング材やシーリング材の分野において、世界的に周知・著名なものであるから、本件指定商品のうち、防食・シーリング関連の商品について、本件商標「DENSOLAR」が使用された場合には、その構成中「DENSO」の部分が、申立人商標の周知・著名性に相応して、関連取引者・需要者に対し、外観及び称呼において支配的な印象を与えることが明らかである。
よって、該取引者・需要者は、本件商標の構成中「DENSO」を申立人商標ととらえ、本件商標の使用に係る商品を申立人の製造又は販売に係るものと誤認・混同してしまうことが明らかであって、本件商標と申立人商標とは、外観及び称呼において類似するものである。
(5)シリーズ商品としての誤認について
一般に、シリーズ商品などの場合、複数ある商品群の各名称に、共通の語を冠するということが珍しくなく、申立人も、実際に「DENSO(デンゾー)」の系列ブランドとして「デンジル」というブランドを展開している(甲10,甲12)。しかして、申立人商標を熟知する防食・シーリング材関連の取引者・需要者が、本件商標「DENSOLAR」に接した場合には、これがあたかも「DENSO」とシリーズ商品ないし系列商品であると誤認してしまうことは明白である。
このような誤認・混同の可能性を懸念し、また、それらを防止するべく、申立人と商標権者は、「DENSO」商標のみならず、「DENS」の文字を含む商標に関する取り扱いについても、本件契約で明確に規定を設けたのであって(甲7)、かかる経緯からも、本件商標がその指定商品について使用された場合の混同のおそれは高いといわざるを得ない。
(6)商品の類似関係について
類似商品・役務審査基準に照らせば、引用商標1及び引用商標2の指定商品は、本件商標の指定商品中、第17類「Insulating materials,in particular insulating materials for protecting installations,pipes and containers from heat and cold;plastic and elastic sealing compounds and seals for pipes of stoneware,cements,concrete,metal or plastic;plastic and elastic sealing compounds and seals for building parts,joint seals;insulating materials consisting of mixtures of natural and synthetic rubbers and rubber substitutes with bituminous materials in the form of paints,compounds,mastics,pastes,emulsions and dispersions,profiles,bands,strips,foils,cords,flexible tubes,pipes,sheets,tapes and solid and foam rings.」及び第19類「Bituminous materials,namely bituminous products in the form of casting compounds,protective compounds for buildings,anti-corrosive compounds,paints for buildings and coatings for buildings and sealing compounds,mastics,cords,profiles,sheets,washers,bands and strips;all the aforesaid goods in particular in the field of solar technology.」と類似することが明らかである。
また、上記商品以外、すなわち、本件商標の指定商品中、第1類の全商品、第2類の全商品及び第19類の「Bitumen」についても、申立人商標の使用に係るDENSO商品(すなわち、金属防食用コーティング剤、コンクリート防食剤、防水剤、耐腐食性塗料、防水塗料、シール材、建築用シール材など)と類似することが明らかである。
さらに、第7類の商品についても、「Hand tools,in cluding hand instruments used as tools,namely spray guns for paint;equipment and machines for manufacture and procession of anti-corrosion,insulating and sealing preparations」などは少なくとも、申立人が提供する防食・シーリング材に深く関連するものであって、取引者・需要者層及び取引経路を共通にし得るものであるから、申立人の業務と高い関連性を有するものといわざるを得ない。
(7)小括
以上のとおり、本件商標は、その指定商品、とりわけ上記(6)で特定した商品について使用された場合には、申立人の使用に係る商標である「Denso」及び「DENSO」並びに引用商標1及び2との間で出所混同の生じるおそれが高く、また、申立人商標が防食・シーリング材の分野において周知・著名であることから、申立人と組織的又は経済的に関連する系列商品ないしシリーズ商品であるかのごとく、いわゆる広義の混同のおそれもあるといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に該当することが明らかである。
4 商標法第4条第1項第19号について
上記のとおり、申立人商標は、防食・シーリング材との関係について、日本はもとより、申立人の拠点である英国においては特に周知・著名である。そして、本件商標は、語頭において申立人商標「DENSO」をそっくりそのまま含むものであり、かつ、その指定商品も、申立人が主として取り扱うコーティング材・シーリング材等に関するものばかりであり、混同のおそれ(広義の混同を含む。)が高く、類似する商標である。
商標権者は、申立人との契約において、「DENS」の文字を含む商標を、日本国内において使用及び出願することを禁じられていたにもかかわらず(甲7)、それを破って「DENSOLAR」につき商標登録出願を行ったものであって、著しく社会的相当性を欠くものである。さらに、「DENSOLAR」が、防食・シーリング材関連の商品について使用されることにより、申立人商標との間で混同が生ずることはもとより、申立人商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損・希釈化させるおそれがあることは明らかであって、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものというべきである。
5 結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない、また、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきものである。
第3 当審の判断
1 申立人商標の周知・著名性について
申立人の提出に係る証拠によれば、申立人は、1883年に「Paul Winn & Co.Ltd.」として英国で創業し(1933年、現申立人の原型となる「Winn & Coales Ltd.」が誕生している。)、現在、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカに系列子会社を持つ英国法人であり、1929年、英国において、ドイツ製の防食・シーリング用テープの事業を引受け、該商品が「Denso」防食テープとして取引され、パイプや金具の保護用品として、ガス・水道事業分野において成功を収め、申立人商標(「Denso」ないし「DENSO」商標)の下で、DENSO商品(金属防食用コーティング剤、コンクリート防食剤、防水剤、耐腐食性塗料、防水塗料、シール材、建築用シール材など)を扱って、長きにわたり、DENSO商品を世界各国に提供し続けてきたことがうかがわれる(甲8?甲13)。
申立人は、日本においては、北日本防食株式会社や芝田株式会社など複数の販売代理店を通じて、遅くとも1970年頃からDENSO商品を日本国内で販売していることが推認される(甲10?甲13)。
また、申立人及び商標権者は、「DENSO」に関する商標登録及びその使用範囲について、「DENSO」商標及び「DENS」の文字を含む商標の使用や登録を国別で互いに制限する旨の契約を2001年2月14日付けで締結していることが認められる(甲7)。
以上によれば、申立人商標は、DENSO商品に係る業界の取引者、需要者の間において、一定程度知られていることは認められる。
しかしながら、申立人及び商標権者の両者が上記の本件契約をわざわざ行っているという事情をも考慮すると、提出に係る証拠によっては、申立人商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているとまでは認めることはできない。
2 本件商標と申立人商標及び引用商標との類似性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲(A)のとおり、「DENSOLAR」の欧文字を横書きしてなるところ、構成各文字は、同じ書体、同じ大きさをもって等間隔にまとまりよく表されており、視覚上、その構成中の特定の文字部分のみが看者の注意を強く引くとみるべき特段の事情は認められない。
そうとすると、本件商標は、その構成態様と相まって、その構成全体が一連一体のものとして看取、把握されるものというべきであるところ、本件商標を構成する「DENSOLAR」の文字は、辞書類に掲載されている既存の語とは認められないから、看者をして、特定の語義を有することのない一種の造語として認識されるものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、その構成文字に相応する「デンソーラー」の称呼を生じ、特定の観念を生ずることのないものである。
イ 申立人商標及び引用商標について
申立人が「DENSO商品」に使用しているとして引用する申立人商標は、「Denso」又は「DENSO」の欧文字を横書きしてなる構成を基本とするものである。
また、引用商標1は、別掲(C)のとおり、「DENSO」の欧文字を横書きしてなるものであり、引用商標2は、別掲(D)のとおり、「DENSO」及び「PRODUCTS」の文字並びに図形からなるものである。
上記各商標は、「Denso」若しくは「DENSO」の文字からなる、又は該文字を有するものであり、該文字は、辞書類に掲載されている既存の語とは認められないから、看者をして、特定の語義を有することのない一種の造語として認識されるものとみるのが相当であり、そのような場合にあって、欧文字で表記されているものは、ローマ字風又は我が国で親しまれた外国語である英語風に読まれるというのが取引の経験則に照らし相当である。
そうすると、上記各商標における「Denso」又は「DENSO」の文字からは、「デンソ」又は「デンソー」の称呼が生じるというのが自然であり、引用商標2については、「デンソプロダクツ」又は「デンソープロダクツ」の称呼をも生じるものである。
ウ 本件商標と申立人商標及び引用商標との類否について
本件商標と申立人商標及び引用商標とは、それぞれ上記の構成からなるものであるから、その外観が明らかに相違し、外観上、両者が相紛れるおそれはない。
また、本願商標から生ずる「デンソーラー」の称呼と申立人商標及び引用商標から生ずる「デンソ」、「デンソー」、「デンソプロダクツ」又は「デンソープロダクツ」の称呼とを比較すると、両称呼は、その音構成及び構成音数が明らかに相違し、互いに聴き誤るおそれはない。
さらに、本件商標と申立人商標及び引用商標とは、それぞれ観念が生じないものであるから、両商標は、観念において比較することができない。
ところで、申立人は、申立人商標の周知・著名性により、関連取引者・需要者は、本件商標の構成中「DENSO」を申立人商標ととらえ、本件商標の使用に係る商品を申立人の製造又は販売に係るものと誤認・混同してしまうことが明らかであって、本件商標と申立人商標とは、外観及び称呼において類似するものである旨主張している。
しかしながら、上記1のとおり、申立人の提出に係る証拠によっては、申立人商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているとまでは認めることはできないものであるから、申立人商標の周知・著名を前提にする申立人の上記主張は、採用することができない。
したがって、本件商標と申立人商標及び引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれも相違する非類似の商標というべきである。
3 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標に係る指定商品は、引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品を含むものであるといえる。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、上記2のとおり、外観、称呼及び観念のいずれも相違する非類似の商標である。
また、本件商標と引用商標とは、これらを同一又は類似の商品に使用した場合に出所の混同を生ずるおそれがあるとみるべき特段の取引の事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 本件商標の商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について
上記1のとおり、申立人の提出に係る証拠によっては、申立人商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内における需要者の間に広く認識されているとまでは認めることはできないものである。
また、上記2のとおり、本件商標と申立人商標とは、外観、称呼及び観念のいずれも相違する非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号所定のほかの要件について論及するまでもなく、同号に該当しない。
さらに、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することはなく、その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当しない。
5 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1のとおり、申立人の提出に係る証拠によっては、申立人商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているとまでは認めることはできないものである。
また、上記2のとおり、本件商標と申立人商標とは、外観、称呼及び観念のいずれも相違する非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号所定のほかの要件について論及するまでもなく、同号に該当しない。
6 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、本件契約(甲7)の第1条(c)には「各当事者は、相手方の管轄地域として割り当てられる添付物件1または2に記載の国において、文字部分『DENS』または『DENSO』を含む商標または他の標識の新規登録出願をしない。」との合意が交わされており、本件契約により、商標権者は、日本国内において、「DENS」の文字を有する本件商標を出願してはならないことが明確にされているにもかかわらず、本件商標は、本件契約に違反して出願されたものであり、商標権者による当該出願行為は、社会的相当性を著しく欠き、信義誠実の原則に反するものである旨述べている。
しかしながら、本件商標と申立人商標及び引用商標とは、上記2のとおり、外観、称呼及び観念のいずれも相違する非類似の商標である。
また、申立人の提出に係る証拠によっては、申立人商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているとまでは認めることができないものであることは、上記1のとおりである。
してみれば、商標権者が不正の利益を得るために使用する目的で本件商標を登録出願し、商標登録を受けたものということはできないから、かかる行為が、直ちに公正な取引秩序を乱すものであって、ひいては商標法の精神に反し、商取引の秩序に反するものともいえない。
その他、本件商標が、不正な意図をもって登録出願されたものとして、その経緯において著しく社会的妥当性を欠くものがあるということもできない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標といえないから、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
7 本件商標が商標法第3条第1項柱書の要件を具備していたかについて
申立人は、本件契約(甲7)の第1条(c)には「デンソーホールディングは、添付物件1に記載の国において所有しうるDENSを含む一切の商標を使用しない。」と明記されており、現在も有効な本件契約の下では、商標権者は本件商標を日本国内で使用しないことが明らかであって、実際に、本件商標の登録出願時又は登録査定時において商標権者が本件商標を日本国内で使用していたという事実も認められず、商標権者には、本件商標の登録査定時に、本件商標を現実的に使用する意思はなかった旨主張している。
しかしながら、商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」として登録を受けられる商標は、現に使用している商標だけでなく、使用する意思があり、かつ、近い将来において使用する予定のある商標も含まれるものと解すべきであるところ、申立人のいう上記の本件契約について、仮に商標権者においてその契約に違反する行為があったとしても、本件商標は、上記2のとおり、申立人商標及び引用商標とは非類似の商標であって、現に商標権者が本件商標に係る登録出願をして登録を得ているのであるから、上記証拠のみによっては、近い将来において、商標権者が本件商標をその指定商品について使用する意思がないことまでを具体的に裏付けるものとは認められない。
また、申立人は、判決例(平成24年(行ケ)第10019号 平成24年5月31日判決)に「登録商標が,その登録査定時において『自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標』に当たることについては,権利者側において立証すべき」であると説示されているところ、上記の本件契約があるにもかかわらず、商標権者が日本国内において本件商標を実際に使用し、又は具体的な使用の計画を進めていたことについては疑義があり、これを証明できない限り、本件商標に係る登録出願の商標法第3条第1項の要件不備は免れないというべきである旨主張している。
しかしながら、上記判決に係る事件は、商標登録無効審判事件についてのものであり、本件は、登録異議の申立事件であるところ、無効審判制度は、基本的には登録の適否を巡る当事者間の紛争解決を目的とする制度であり、通常は侵害訴訟等の係争において利害関係人が防御手段として請求する制度であるのに対し、登録異議申立制度は、公衆の利益保護の観点から、第三者による申立てに基づき特許庁による登録処分の見直しを行い、瑕疵ある登録処分の是正を速やかに図り、登録の信頼を図ることを目的とする制度である点で両制度はその趣旨及び役割を異にするものとされていることからすれば、本件商標が商標法第3条第1項柱書の要件を具備していたか否かについての判断において、上記判決における説示をそのまま本件に当てはめることは適切ではないから、申立人の上記主張は、採用することはできない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないということができない。
8 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せずにされたものではなく、同法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号のいずれにも違反してされたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 【別記】

(B)本件商標に係る指定商品
第1類「Chemicals used in industry;chemical preparations for scientific purposes (other than for medical or veterinary use);adhesives used in industry,protective chemical agents for buildings,namely substances for impregnating concrete,stone and brickwork;chemical admixture for concrete,in particular for producing porous concrete,foamed concrete and heat resistant concrete and construction parts manufactured therefrom;protective chemical agents for buildings,namely natural and synthetic rubbers and plastic substitutes therefor,and mixtures of the aforesaid materials with bituminous materials in the form of adhesives used in industry and in the form of mastics;all the aforesaid goods in particular in the field of solar technology.」
第2類「Inhibitors for preventing corrosion;preservatives against rust and corrosion;anti-corrosion coating materials for construction parts in the construction of railway carriages,boats,vehicles,aeroplanes and installations;sealing pastes and anti-corrosion pastes;all the aforesaid goods in particular in the field of solar technology.」
第7類「Metalworking machines and tools;construction machines and apparatus;chemical processing machines and apparatus;plastic processing machines and apparatus;machines and apparatus for manufacturing rubber goods;stone working machines and apparatus;hand tools,including hand instruments used as tools,namely spray guns for paint;equipment and machines for manufacture and procession of anti-corrosion,insulating and sealing preparations;all the aforesaid goods in particular in the field of solar technology.」
第17類「Insulating materials,in particular insulating materials for protecting installations,pipes and containers from heat and cold;plastic and elastic sealing compounds and seals for pipes of stoneware,cements,concrete,metal or plastic;plastic and elastic sealing compounds and seals for building parts,joint seals;natural and synthetic rubbers and rubber substitutes;insulating materials consisting of mixtures of natural and synthetic rubbers and rubber substitutes with bituminous materials in the form of paints,compounds,mastics,pastes,emulsions and dispersions,profiles,bands,strips,foils,cords,flexible tubes,pipes,sheets,tapes and solid and foam rings;all the aforesaid goods in particular in the field of solar technology.」
第19類「Bitumen,bituminous materials,namely bituminous products in the form of casting compounds,protective compounds for buildings,anti-corrosive compounds,paints for buildings and coatings for buildings and sealing compounds,mastics,cords,profiles,sheets,washers,bands and strips;all the aforesaid goods in particular in the field of solar technology.」


異議決定日 2013-09-03 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (X0102071719)
T 1 651・ 222- Y (X0102071719)
T 1 651・ 22- Y (X0102071719)
T 1 651・ 262- Y (X0102071719)
T 1 651・ 18- Y (X0102071719)
T 1 651・ 25- Y (X0102071719)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉岡 めぐみ冨澤 武志 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 山田 和彦
原田 信彦
登録日 2010-02-23 
権利者 DENSO-Holding GmbH & Co.
商標の称呼 デンソーラー、デン、デイイイエヌ 
代理人 中村 稔 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 藤倉 大作 
代理人 加藤 ちあき 
代理人 田中 伸一郎 
代理人 松尾 和子 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 辻居 幸一 

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