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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201315595 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X3542
審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X3542
管理番号 1281446 
審判番号 無効2013-890015 
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-03-06 
確定日 2013-10-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5518007号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5518007号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5518007号商標(以下「本件商標」という。)は、「OpenCloud」の欧文字を標準文字で表してなり、平成22年7月20日に登録出願され、第35類「ドメイン名登録申請事務手続の事務処理代行,広告,経営の診断および指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,コンピュータによるデータ入力及びデータ管理に関する事務の代行,コンピュータによるファイルの管理(電子計算機データベースに蓄積された電子データの管理を含む。),事業の管理及びこれに関するコンサルティング,電子商取引に係る事業の管理・運営に関するコンサルティング,電気通信ネットワーク及びコンピュータネットワークの運営に関する事業の管理に関するコンサルティング,インターネットに接続されたコンピュータサーバー内の情報構築・編集の代行,サーバーコンピュータの操作に関する運用管理に関するコンサルティング」及び第42類「デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成または保守,電子計算機端末による通信網に接続される通信機能付き電子計算機(中央処理装置および電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与,インターネットサーバの貸与,インターネットサイトに関する使用状況およびその統計に関する情報の提供,インターネットにおけるホームページの設計・作成・保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするための高度の専門的な知識・技術または経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介および説明,電子計算機通信ネットワークを利用した事業者及び利用者の認証に係る電子証明書の発行,ウェブサイトのホスティング,ウェブサイトのホスティングに関する助言,電子計算機用プログラムの提供,コンピュータシステムにおけるデータのバックアップ処理,インターネットにおけるサーバー記憶領域の貸与,電子データの暗号化,コンピュータネットワークへアクセスする者の認証,通信回線を介した電子商取引の利用者の認証,電子計算機のプログラムの故障診断及びウイルス検査,電子計算機通信ネットワークのセキュリティ対策に関する診断又はコンサルティング,コンピュータ上の情報の暗号化及びコンピュータ上の情報の保全に関する相談・指導及び助言,インターネットにおける電子掲示板へのアクセスタイムの賃貸,インターネットにおける電子掲示板用サーバーのエリアの貸与,インターネットにおけるホームページの設計・作成・保守に関するコンサルティング,インターネットのホームページに関するデザインの考案,電子計算機の故障診断及びウイルス検査,アプリケーションサービスプロバイダーによるコンピュータプログラムの提供,アプリケーションサービスプロバイダのコンピュータプログラムへのアクセスタイムの賃貸,コンピュータ通信におけるサーバーシステムの構築に関するコンサルティング」を指定役務として、同24年7月30日に登録査定、同年8月31日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第18号証(以下、略して表示するときは、「(甲1)」のように表示する。)を提出している。
1 本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)本件商標の記述性
本件商標は、欧文字「OpenCloud」を標準文字で表してなるところ、我が国で馴染みのある英単語「Open」及び「Cloud」を繋げた結合語であると認識される。
英単語「Open」の語は、日本語「オープン」として通用するものであり、広辞苑第6版によれば、該日本語は、「開くこと」の意味に加え、「開いてあるさま。規制のないさま。開放。公開。」の意味を有し、該意味を有する形容詞として、様々な名詞との結合語を形成しやすく、同辞典の「オープン」の項には、「オープンアカウント」、「オープンエア」などの27もの結合語が掲載され、その中の「オープンソース」の語について、「コンピューター・プログラムのソースコードを無償で公開し、複製・修正・再配布などが自由に行えるようにすること。またそのようなソフトウェア」と記載されている(甲2)。
IT用語辞典によれば、「オープン(open)」の語については、「システム構築などの分野で、ハードウェアやソフトウェアの基本的な仕様や設計、接続方法などが公開されており、様々なメーカーが同種の製品を提供していたり、異なるメーカーの製品を組み合わせて使用できるような状態のことをオープンであるという。」とされ、用例として、「公開されている設計のことを『オープンアーキテクチヤ』(open architecture)、オープンな製品を組み合わせて構築されたシステムを『オープンシステム』(open system)という。」との記載があり、同辞典によれば、「ソフトウェアの分野で、コンピュータプログラムのソースコードが広く一般に公開され、誰でも自由に人手・改変・再配布などできるような状態を『オープンソース』(open source)という。また、そのようなソフトウェアを『オープンソースソフトウェア』(OSS:open source software)という。」と記載されている(甲3)。
以上によれば、一般にIT技術分野においては、「オープン」の語は、「公開された」との意味を有する形容詞として、しばしば次の語を修飾する態様で用いられていることが認められる。
次に、「Cloud」の語は、「雲」を意味する英単語である一方、「インターネットのネットワークを雲に例え、cloudと呼んでいる。」との事実があり、「クラウド・コンピューティング」といった場合、「コンピューティング資源(ソフトウェア、ハードウェアなど)をインターネットなどのネットワークを介して共同利用するシステム。利用者はネットワーク端末さえあれば、世界のどこからでも必要なコンピュータ処理が可能になる。」の意味を有している(甲4)。
そして、「クラウドコンピューティング」は、一般に「クラウド」と略称されている事実があり、また、「クラウド」の語が「クラウドサービス」の略として普通に使用されている(甲5)。そうすると、本件商標中の「Cloud」の語もクラウドサービス又はクラウドコンピューティングを意味しているものと認識される。
以上の事実に鑑みると、両語を合わせた「OpenCloud」の語は、「ソフトウェアの仕様や設計が公開された(オープンソースの)クラウドコンピューティング」の意味として容易に認識し得るものであり、現に、該語がかかる意味合いで使用されている実情がある。
(2)背景
ア クラウドコンピューティングの拡大
IT業界においては、従前、ユーザー(企業、個人など)がコンピュータのハードウェア、ソフトウェア、データなどを、自分自身で保有・管理するのが一般的であった。しかし、2006年頃から、コンピュータ処理をインターネットを通じたネットワーク経由で提供するクラウドコンピューティングが広まり始めた。クラウドコンピューティングを採用した場合、プロバイダー側においては、仮想化技術などを使用してデータセンターのコンピュータなどを多数のユーザーで共有させるスケールメリットがあり、ユーザー側においては、自前のコンピュータやそのハードウェア、ソフトウェア、設備などを保有・設計・開発したり、保守・管理する必要が無くなるメリットがある。
イ オープンソースクラウドの拡大
クラウドの基盤ソフトウェアをオープンソースのものにした場合、プロバイダー側のメリットとして、ICT用語ガイドの「オープンクラウド」の項にもあるとおり、「すでに完成されているソフトウェアを利用することで、開発にかかるコストを削減できること、そして迅速なサービス提供を実現できることが挙げられます。またソースコードが公開されているため、自社でカスタマイズして機能を追加するといったことも可能であり、独自性を打ち出すこともできます。」と記載がある(甲6)。
また、ユーザー側には、データを相互運用でき、プロバイダーの乗り換えが容易になるというメリットがある。このように、オープンソースソフトウェア基盤のクラウドは、プロバイダー、ユーザーの双方にとって、高いメリットがある。
ところで、コンピュータの基本ソフトであるOSの分野の歴史をみると、多様なOSが存在する中で、ソースコードが公開されている「Linux」は、誰でもソフトウェアのバグを修正したり、機能を強化したりすることが可能であり、そのメリットからサーバー用OSなどとして幅広く活用されるようになったという流れがある。
同様に、クラウドコンピューティングの分野においても、クラウドの普及が進むにつれ、ソフトウェアの開発費の削減・運用の効率化の観点から、徐々にオープンソースのクラウドに対する関心及びニーズが高まり始めた。2008年には、「オープン・クラウド・コンピューティングの現状」とのタイトル表示によるインターネット上の記事が存在しており、「オープン・クラウド」の語が使用されていることが確認できる(甲7)。その後、オープンな規格の採用推進を提唱する「open cloud manifesto(オープンクラウドマニフェスト)」(甲8)が2009年3月にウェブ上で公開されると、IBM、サンマイクロシステムズなど多数の企業が参加を表明し(甲9)、「open cloud」の語は、更に浸透した。
したがって、「open cloud」の語は、2009年ころには、「公開された規格を採用するクラウド」又は「オープンソースのクラウド」の意味で使用されていたことが認められる。
我が国においても、平成22年(2010年)2月付けの「産学連携ソフトウェア工学実践事業(クラウド・コンピューティング時代のDependabilityの考え方などに関する米国の動向調査)」において、「オープンクラウドマニフェスト」及び「オープンクラウドコンソーシャム」についての記載が12頁にわたって掲載されている(甲10)。また、甲第11号証には、「オープンクラウドの基礎知識」を表題とする記事中で、「クラウドコンピューティング(以下、クラウド)の普及に伴い『オープンクラウド』というキーワードが注目されている。」との記載がある。
先に述べたとおり、オープンクラウドは、プロバイダー側、ユーザー側の双方にメリットの高いクラウド形態であるため、その利用は、拡大傾向にあり、例えば、シトリックス社というソフトウェア企業の2010年9月2日付けプレスリリースには、「オープンクラウド戦略をさらに推進するため」、「オープンクラウドの相互運用」などの記載がある(甲12)。
また、オープンソースベースの各クラウドの相互接続による連携、運用ノウハウの周知のための実証実験を行う団体が2012年2月3日に設立されたが、その団体名称として「オープンクラウド実証実験タスクフォース」が使用され、その目的は「オープンクラウド基盤技術の実証実験」となっており、「オープンクラウド」の語が、クラウドの形態を表す一般名称として使用されている(甲13)。
さらに、別の企業のウェブサイト上では、「オープンクラウドやプライベートクラウド、さらに分散ストレージも登場」、「オープンクラウドマーケットプレース」などの使用例が確認でき(甲14及び甲15)、「オープンクラウド」の語が「公開された規格を採用するクラウド」又は「オープンソースのクラウド」の一般名称として使用されており、また、オープンクラウドの流れが近年急速に拡大していることを受け、「オープンクラウド入門」を題号とする書籍が発行され(甲16)、同書中で、「オープンクラウド」の語は、「事業者がオープンソースベースのクラウド基盤ソフトウェアを採用してサービスやソリューションを提供する」との意味の一般名称として使用されている。
(3)国際登録第1044859号「Opencloud」商標に関する第9類の商品及び第38類、第42類の役務を指定した国際商標登録出願については、該商標が商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号に該当するとして、全指定商品及び役務について拒絶査定がなされ、確定している(甲17及び甲18)。
(4)指定役務
本件商標は、第35類及び第42類の広範な役務を指定しているところ、これらは、いずれもインターネットを利用して提供することが可能な役務である。本件商標をもってこれら役務を提供した場合、これら役務は、オープンソースベースのクラウドコンピューティングによって管理・提供されているとの認識を需要者に与えるにすぎないものである。よって、本件商標は、その指定役務との関係において、役務の提供の質、態様を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標にすぎない。
(5)小括
以上のとおり、本件商標は、その単語構成から、需要者に「ソフトウェアの仕様や設計が公開された(オープンソース)のクラウドコンピューティング」を認識させるにすぎず、また、本件商標と実質的に同一の「open cloud」及び「オープンクラウド」の語が、「公開された規格を採用するクラウド」又は「オープンソースのクラウド」の意味で実際に使用されている事実が認められる。
したがって、本件商標が、その指定役務に使用されても、その役務の提供の質、態様を普通に用いられる方法で表示するにすぎないことが明らかである。
よって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 本件商標の商標法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、欧文字「OpenCloud」を標準文字で表してなるところ、クラウド業界において、「OpenCloud」の語は、「オープンソースベースのクラウド」の意味として容易に認識し得るものであり、また、実際にそのような意味で使用されている実情がある。本件商標が、その指定役務に使用された場合、その取引者及び需要者は、該役務が、オープンソースのクラウド基盤によって提供されていると認識すると考えられるので、それ以外の質・態様で役務が提供された場合には、役務の質・態様を誤認させるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
3 結論
本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とされるべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、答弁していない。

第4 当審の判断
1 本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「OpenCloud」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「Open」の語は「(ア)開くこと、(イ)開いてあるさま。規制のないさま。開放。公開。」などの意味を有する英語として、同じく「Cloud」の語が「雲」を意味する英語として、いずれも我が国において広く知られている語であり、これらの語が結合したものと認識されるものである。
そして、「Open」又は「オープン」の語は、情報技術(IT)の分野においては、「システム構築などの分野で、ハードウェアやソフトウェアの基本的な仕様や設計、接続方法などが公開されており、様々なメーカーが同種の製品を提供していたり、異なるメーカーの製品を組み合わせて使用できるような状態のこと」を意味するものであり、また、「ソフトウェアの分野で、コンピュータプログラムのソースコードが広く一般に公開され、誰でも自由に入手・改変・再配布などできるような状態」を「『オープンソース/open source』という。」のように使用されている(甲3)。
また、「Cloud」又は「クラウド」の語は、「雲」などの意味を有する語であって、該語を使用した「cloud computing/クラウド・コンピューティング」について、「コンピューティングの資源(ソフトウェア、ハードウェアなど)をインターネットなどのネットワークを介して共同利用するシステム。利用者はネットワーク端末さえあれば、世界のどこからでも必要なコンピューター処理が可能になる。インターネットのネットワークを雲に例えてcloudと呼んでいる。」と説明されている(甲4)。
さらに、「現代用語の基礎知識」(自由国民社2011年1月1日発行)には、情報技術中、「コンピューター技術のビジネス活用」(783頁)の項に「クラウドコンピューティング[cloud computing]」として、「インターネット上にあるハードウェア、ソフトウェア、データなどのリソースを、ユーザーがそのリソースがどこに存在するかを意識することなく使える環境や利用形態をいう。サーバーがどこにあるのかを意識する必要がない、つまり雲(クラウド)の中にあるとでも考えておけばいいという意味でクラウドコンピューティングという。・・・ユーザーが接続先を意識せず、あたかも専用のネットワークであるかのように使えることが特徴である。企業にとっては、自社内にシステムを構築するコストと運用にかかるコストを削減できるというメリットがある。」との記載がある。
そうすると、両語を結合した「OpenCloud」の文字からは、「ソフトウェア、データなどの仕様や設計が公開された(オープンソースの)クラウドコンピューティング」の意味合いを容易に認識させるものといえる。
2 オープンクラウドについて
(1)「ICT用語ガイド」(ICT Business Online)のウェブサイトには、2012年4月11日公開された記事として「オープンクラウド」の見出しの下、「クラウド・コンピューティングにおける新たなトレンドとして、クラウドサービス同士の接続、あるいはパブリッククラウドとプライベートクラウドの連携など、よりオープンなクラウド環境である『オープンクラウド』の実現を目指す動きが挙げられます。このオープンクラウドが浸透し始めた背景やそのメリットを解説していきます。」との記載とともに「クラウド環境にも大きな影響を与え始めたオープンソース」及び「オープンソースで構築されたクラウドを利用するメリット」について解説されている(甲6)。
(2)「SourceForge.JP Magazine」のウェブサイトには、最新更新を2008年10月21日とするインターネット記事に「オープン・クラウド・コンピューティングの現状」の見出しの下、「クラウド・コンピューティングのためのオープン標準はすでにあり、今は調整段階にあるからだ。」との記載、「『クラウド』とは?/クラウド・コンピューティングはある特定の技術というよりプロセスだ。・・・Zemlinによると、クラウド・コンピューティングのためのオープン標準策定に向けた動きはしばらく前からあり、オープンソース・ツールを使ってクラウドにアクセスするという現在の傾向は今も拡大を続けているという。」との記載がある(甲7)。
(3)2009年春にウェブサイトに公開された「open cloud manifesto」において、open cloudの目標、原則などが記載され、クラウドコンピューティングがオープンであることが提唱されている(甲8)。
(4)「InfoQ」の「オープン・クラウド・マニフェスト」と題するウェブサイトにおいて、「無名制作者のグループが、多数の企業が署名し、オープン・クラウド・コンピューティングを求めるためのオープン・クラウド・マニフェスト(リンク)を作成した。・・・同マニフェストでは、今後のオープン・クラウドに対する6つの基本原則が以下のとおり提議されている。」との記載、「同マニフェストには、多数の企業(Akamai,AMD,AT&T,Cisco,Eclipse Foundation,EMC,IBM・・・)が参加している。」との記載がある(甲9)。
(5)株式会社アイ・ビー・ティの平成22年2月付けの「平成21年度産業技術研究開発委託費(産学連携ソフトウェア工学実践事業(クラウド・コンピューティング時代のDependabilityの考え方などに関する米国の動向調査))」と題する報告書において、「業界団体におけるクラウド・コンピューティングの取組動向」の中に「オープンクラウドマニフェスト」について掲載され、オープン環境としてのクラウド・コンピューティングの発展を確保するための「クラウド・コンピューティングのユースケース白書」について記載されている(甲10)。
(6)「IDC frontier」のウェブサイト(2013年2月8日紙出力)には、「世界標準クラウド」の項に「IDCフロンティアのクラウドサービスは、必要なときに必要なだけITリソースを利用できるlaaS型サービスです。オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアであるCloudStackを採用し、利用者自身で仮想マシンなどの構築や管理を行えます。」との記載、「多様なバリエーション」の項に「オープンクラウドやプライベートクラウド、さらに分散ストレージも登場」との記載、「日本品質の信頼性」の項に「長年のデータセンター運営で培われたノウハウをクラウドサービスでもご提供いたします。高い信頼性と、きめ細かな導入支援や運用サポートをお届けします。/経済産業省『クラウドサービス利用のための情報セキュリティマネジメントガイドライン』(2011年4月)」との記載がある(甲14)。
(7)「Amazon」のウェブサイト(2013年1月10日紙出力)には、発売日を2012年10月9日とする「オープンクラウド入門」を題号とする書籍が発行され、同書の内容紹介中において、「近年、急速に事業者やユーザー層を拡大しているのがオープンクラウドの流れ(事業者がオープンソースベースのクラウド基盤ソフトウェアを採用してサービスやソリューションを提供)である。」との記載がある(甲16)。
(8)小括
以上からすれば、「open cloud」又は「オープンクラウド」の文字は、2008年には、「オープン・クラウド・コンピューティングの現状」とのタイトル表示によるインターネット上の記事が存在しており、「オープン・クラウド」の語が「オープンソースのクラウドコンピューティング」の意味合いで使用されており、その後、2009年ころには、オープンクラウドの原則などが提唱されているオープンクラウドマニフェストに対して、多数の企業が参加し、事業者やユーザー層を拡大しているのがオープンクラウドの流れとなっていることから、本件商標の登録査定時には、該文字が前記意味合いのものとして認識され、使用されていたものと認められる。
そうとすれば、「OpenCloud」の文字は、インターネットを利用する取引者、需要者において、「ソフトウェアやデータなどの仕様や設計が公開された(オープンソース)のクラウドコンピューティング」を想起、連想させるものとなっていたというのが相当である。
3 商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標の指定役務は、第35類及び第42類に属する前記第1に記載のとおりであって、例えば、第35類「インターネットに接続されたコンピュータサーバー内の情報構築・編集の代行」及び第42類「インターネットにおけるホームページの設計・作成・保守,インターネットにおける電子掲示板へのアクセスタイムの賃貸,インターネットにおけるサーバー領域の貸与」を始め、その指定役務についての提供方法は、インターネットを利用して提供されることが少なくないものに加え、「電子計算機用プログラムの提供,アプリケーションサービスプロバイダーによるコンピュータプログラムの提供」など、ソフトウェアに関する役務を含むものである。
そして、「Open Cloud」の文字は、情報技術(IT)分野のみならず各種ビジネスにも活用でき、インターネットを利用する取引者などにより使用され、「ソフトウェアやデータなどの仕様や設計が公開された(オープンソース)のクラウドコンピューティング」を想起、連想させるものであるから、該文字からなる本件商標をその指定役務中「オープンソースのクラウドコンピューティングを利用した役務の提供」に使用するときは、取引者、需要者をして、役務の質、提供方法を表示したものと認識させるにすぎず、自他役務の識別機能を果たすことができないものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきものである。
4 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-07-29 
結審通知日 2013-08-01 
審決日 2013-09-03 
出願番号 商願2010-56871(T2010-56871) 
審決分類 T 1 11・ 13- Z (X3542)
T 1 11・ 272- Z (X3542)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大森 健司 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 田中 亨子
原田 信彦
登録日 2012-08-31 
登録番号 商標登録第5518007号(T5518007) 
商標の称呼 オープンクラウド 
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 

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