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審決分類 |
審判 一部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X25 |
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管理番号 | 1281428 |
審判番号 | 無効2012-890067 |
総通号数 | 168 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2013-12-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2012-08-06 |
確定日 | 2013-11-08 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5244937号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5244937号の指定商品中、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,べルト,履物」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5244937号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成よりなり、平成20年11月28日に登録出願、第14類「身飾品,キーホルダー,宝石箱,宝玉及びその模造品,貴金属製靴飾り,時計」、第18類「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,革ひも,毛皮」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,べルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同21年5月22日に登録査定、同年7月3日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第5155384号商標(甲第2号証:以下「引用商標」という。)は、別掲2に示すとおりの構成よりなり、平成18年10月30日に登録出願、第14類「貴金属,キーホルダー,身飾品(「カフスボタン」を除く。),貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品,宝玉の原石,時計」、第18類「かばん類,袋物,傘,革ひも,原革,原皮,なめし皮,毛皮」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,乗馬靴」を指定商品として、同20年8月1日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。 1 請求の理由の要点 (1)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は引用商標と外観において類似するものであり、又、本件商標の指定商品は引用商標の指定商品と同一又は類似するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第10号について 本件商標は、引用商標の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標に類似するものであり、又、引用商標の商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 2 本件商標を無効とすべき具体的理由 (1)本件商標について 本件商標は、上記第1(別掲1)のとおり、骸骨頭部と交差した骨片の外観から成るので、特定の称呼、観念は生じない。 (2)引用商標について 引用商標(甲第2号証)は、上記第2(別掲2)のように、骸骨頭部とその下部に交差した骨片とから成る外観であり、特別な称呼、観念は生じない。 (3)商標法第4条第1項第11号について ア 本件商標の構成 本件商標は、骸骨頭部とその後方下部に交差した骨片から成り、骸骨頭部は縦長で略中央左右には上下方向に切れ込みが形成され、左右の眼が下方向に傾斜した垂れ目となり、鼻部分には切れ込みが設けられている。さらに、口部分の歯は左右の歯が下方向に突出している。このような骸骨頭部の後方下部に骨片が交差している外観である。 イ 引用商標の構成 引用商標は、骸骨頭部とその下部に交差した骨片から成り、骸骨頭部は縦長で略中央左右には上下方向に切れ込みが形成され、左右の眼が下方向に傾斜した垂れ目となり、鼻部分には切れ込みが設けられている。さらに、口部分の歯が下方向に突出している。このような骸骨頭部の下部に骨片が交差している外観である。 ウ 本件商標と引用商標との類否 外観について 本件商標と引用商標とは骸骨頭部と交差した骨片から成る外観では同一で、微細な部分については異なる点は存在する。 しかしながら、主要な部分である骸骨頭部は、細長な頭部、頭部中央左右に設けた切れ込み、左右の目が下方向に傾斜した垂れ目、鼻部分への切れ込みなど、本件商標と引用商標とは類似していると言わざるを得ない。 引用商標については、その骸骨頭部の外観形状は、非常にユニークな形状で、被請求人は苦心の末に製作したものである。 このことは、第25類における被服での骸骨頭部の過去の登録例(甲第3号証)からも明らかである。 この過去の登録例では、40件示しており、「31番」に位置する引用商標は、過去の骸骨頭部の登録例とはイメージが明らかに異なる。 なお、甲第3号証の25(登録番号5102424号)、26(登録番号5102425号)、30(登録番号5127078号)は本審判請求人の登録商標である。 引用商標が登録されるまでの骸骨頭部は、引用商標のようなスマートな外観形状ではなく、引用商標が登録された後、スマートな引用商標に類似する本件商標が登録されている。 本件商標は引用商標とは微細な部分において異なるが、上記したように引用商標の基本的外観は類似するものであり、特に、被服のような業界においては、取引者、需要者は本件商標と引用商標とは外観において相紛らわしいおそれを生じる。 エ 結論 以上のとおり、本件商標は、引用商標とは外観が極めて類似する商標であり、本件商標の指定商品中、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」は、引用商標の指定商品と同一類似する。 また、出願の先後関係においても、本件商標は既に登録済みの引用商標の後願である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 (4)商標法第4条第1項第10号について ア 引用商標の周知性について 甲第4号証は、引用商標が被服につき使用されている各雑誌である。 (ア)ギンザ「株式会社マガジンハウス、2004年5月号」には、引用商標がデニムパンツに使用されている。 (イ)HUGE「株式会社講談社、平成16年5月1日発行」には、引用商標がデニムパンツ、デニムシャツに使用されている。 (ウ)POPEYE「株式会社マガジンハウス、2004年5月25日発行」には、引用商標がパンツに使用されている。 (エ)メンズノンノ「株式会社集英社、2003年10月号」には、引用商標がブルゾンに使用されている。 (オ)メンズノンノ「株式会社集英社、2004年3月号」には、引用商標がジャンパーに使用されている。 (カ)メンズノンノ「株式会社集英社、2004年6月号」には、引用商標がTシャツに使用されている。 (キ)BARFOUT「株式会社ブラウンズブックス、2006年6月号」には、引用商標がTシャツに使用されている。 (ク)流行通信「株式会社INFASパブリケーションズ、2006年2月号」には、引用商標がファッションイベントで使用されている。 (ケ)装苑「文化学園 文化出版局、2006年2月号」には、引用商標がファッションショーで使用されている。 (コ)SENSE「株式会社センス、2003年7月号、2004年6月号、2005年12月号」には、Tシャツ、デニムパンツ、トランクスに引用商標が使用されている。 上記のように、引用商標は、2003年ごろから被服について使用して雑誌などに掲載されており、本件商標の出願前(平成20年(2008年)11月28日)より使用して、引用商標の被請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く知られている。 イ 本件商標と引用商標との類否 両商標の類否については、前記(3)ウ(商標法第4条第1項第11号における両商標の類否)で述べたとおり、引用商標の基本的外観は類似するものであり、特に、被服のような業界においては、取引者、需要者は本件商標と引用商標とは外観において相紛らわしいおそれを生じる。 ウ 結論 以上のとおり、本件商標は、引用商標の被請求人の業務に係る商品である第25類「被服」を表示するものとして需要者の間に広く知られている引用商標に類似する。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。 3 結び 以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第10号に該当するものであるから、同法第46条の規定により、その登録は無効とされるべきである。 第4 被請求人の主張 被請求人は、本件の審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第17号証を提出している。 1 被請求人の主張の要点 本件商標と引用商標とは外観において顕著に相違し、また、観念及び称呼も類似するとはいえず、取引の実情等を考慮しても、本件商標がその指定商品に使用された場合に、引用商標との間で商品の出所に誤認混同を生じさせるおそれはないから、両商標は類似しないと目するのが相当である。また、引用商標は、周知商標と到底いえるものではないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第10号に該当せず、請求人の上記主張には理由がなく、当を失するものである。 2 請求人の主張が当を失する理由 (1)本件商標と引用商標の非類似性について ア 商標の類否判断の基準について 商標の類否判断は、同一又は類似の商品に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号 同43年2月27日判決参照)。 もっとも、特定の観念や称呼を生じない図形商標同士の類否判断は、それぞれの商標の構成全体の有する外観上の印象が互いに相紛らわしいか否かによってするべきである(東京高裁平成12年(行ケ)第147号 同12年9月21日判決等参照)。 そこで、上記の観点から本件商標と引用商標の非類似性について述べる(乙第1号証参照)。 イ 本件商標について 本件商標の構成は、黒塗りで表された頭蓋骨とその背後に交差していると思しき2本の骨片からなり、頭蓋骨及び骨片は一体に構成されてなる。 該頭蓋骨部の全体的な輪郭は縦長でスマートに形成され、眼窩部は下方向に傾斜した垂れ目状に白抜きされ、側頭骨部には縦細の切り込みが白抜きされ、鼻孔部は縦長h状に白抜きされ、頬骨部は左右に膨出することなく下方に向かって略三角形状に突出してなり、上顎部の下端は緩やかな弧を描いた形状であり、上顎部の下端には2本の長い牙が設けられ、該牙に挟まれる態様で略縦長長方形状の6本歯が並置されてなる。 頭蓋骨の背後に交差していると思しき2本の骨片は、端部から頭蓋骨部にかけて漸次幅細になるように形成されてなり、端部には細い切り込みが白抜きされてなる。 前記構成からなる本件商標からは、格別の称呼、観念は生じることはない。 ウ 引用商標について 引用商標の構成は、黒塗りで表された頭蓋骨と、その下部に交差した2本の骨片からなり、頭蓋骨と骨片はそれぞれ分離して構成されてなる。 該頭蓋骨部の全体的な輪郭は縦方向長さ及び横方向長さにおいてズングリするように形成され、眼窩部は下方向に傾斜した外郭線を波状とする垂れ目状に白抜きされ、側頭骨部には幅広の切り込みが白抜きされ、鼻孔部は幅広逆v状に白抜きされ、頬骨部は左右に膨出するように波状に突出してなり、上顎部の下端も波状に突出してなる。 頭蓋骨部の下部に交差した2本の骨片は、端部を除いてほぼ同じ幅で形成され、全体が黒塗りされてなる。 前記構成からなる引用商標からは、格別の称呼、観念は生じることはない。 エ 本件商標と引用商標の類否判断 (ア)本件商標と引用商標の共通点 そこで、本件商標と引用商標とを比較すると、両商標は、黒塗りで表された頭蓋骨と2本の交差した骨片からなる点、頭蓋骨部の眼窩部が垂れ目状に白抜きされている点、側頭骨部及び鼻孔部が白抜きされている点において共通するものである。 (イ)共通点の普遍性 しかしながら、上述した黒塗りで表された頭蓋骨と交差した2本の骨片からなる図形商標は、アパレル業界において被服等のブランドとして数多く採択され、各社商標登録がなされている(乙第2号証)。 すなわち、頭蓋骨単独あるいは骨片を組み合わせた図形を基本モチーフとするデザインは、この種業界において好まれて採択されているものであり、むしろありふれていると言っても過言ではなく、各社は、骸骨頭部と交差した骨片という限られた構成要素の中で、表現方法においてそれぞれ創意工夫をしているのが実情である。 したがって、黒塗りで表された頭蓋骨と2本の交差した骨片からなるという抽象的かつ漠然とした共通性をもって両商標を類似する商標ということはできないことは明らかである。 そして、頭蓋骨部の眼窩部を表現する際には、頭蓋骨という性格上、垂れ目状に表現されることや頭蓋骨部をシルエット状に図形を表現する際に側頭骨部及び鼻孔部が白抜きされていることは極普通の表現であり、取引者、需要者の印象に残り難いものである。 このように多数採択されている頭蓋骨等の図形に接した取引者、需要者は、単に抽象的な頭蓋骨の図形である、あるいは2本の骨片の図形であるとみるよりは、むしろ、細部に亘る構成部分においてどのような創意工夫が表現されているのかという点に強い注意を惹くものである。 すなわち、今日のように情報媒体が多様化し、情報量が飛躍的に増大した社会において、一般世人は多量の情報を識別認識することに慣れ、個々の情報間の差異に敏感に反応する習性が培われていることは顕著な事実であるところ、前記黒塗りで表された頭蓋骨と交差した骨片からなる図形商標は、アパレル業界において被服等のブランドとして数多く採択され、各社商標登録をしている実情にあっては(乙第2号証参照)、黒塗りで表された頭蓋骨と交差する骨片からなる図形商標に接する取引者、需要者は、その商品の購入を検討するに際して、細部における図形商標の具体的な表現方法の違いまで着目して、各人の好みや用途に沿った商品を選択することも決して少なくないというのが相当である。 ましてや、頭蓋骨等からなる図形商標が現実に使用されるこの種商品は極めてファッション性が強いものであり、該商品に接する取引者、需要者は、一層デザインの細部に亘る部分まで注意が惹かれてくるものといえる。 それ故、本件商標と引用商標との間に存在する共通点は、いずれも、両商標の構成上の抽象的なモチーフにおける共通点に過ぎないものであり、両商標の類否に影響を及ぼさないものである。 そして、抽象的なモチーフを同じくする図形同士の類否において、具体的な構成が対比された結果、外観上類似すると判断された審決例・決定例は、多数存在し、このような例は枚挙に暇がないものである(乙第3号証ないし乙第16号証)。 (ウ)本件商標と引用商標の相違点 次に、本件商標と引用商標の相違点について検討するに、両商標は、次のとおり、顕著な相違点があるものである。 まず、本件商標は、黒塗りで表された頭蓋骨とその背後に交差していると思しき2本の骨片が一体不可分に構成されているのに対して、引用商標は、黒塗りで表された頭蓋骨とその下部に交差していると思しき2本の骨片がそれぞれ分離して構成されているという差異を有する。 該差異は、そもそも、構成部材が一体的か否かという全体的なシルエットにおける顕著な差異というべきものであり、該差異を有することで両商標は自ずと印象においても全く相違するものである。 この相違は、両商標の類否を左右する程の大きな影響を与えるものといえる。 また、本件商標は、頭蓋骨部を縦長で細身でスマートな形状とし、全体的なシルエットも明瞭に写実的に表現したものであるとともに本件商標の上顎部下端において、緩やかな弧を描いた形状であるとともに2本の長い牙が設けられ、該牙に挟まれる態様で略縦長長方形状の6本歯が並置されてなるのに対して、引用商標は、頭蓋骨部をズングリとし、全体的なシルエットもぼんやりと表現するとともに、引用商標の上顎部下端において上顎部の下端も波状に突出してなるという点において差異を有する。 本件商標は牙等を設け上記のように明瞭に写実的に表現したことにより、骸骨の本物感、恐怖感、ワイルドでシャープという印象を看取できるのに対して、引用商標からはズングリしてぼんやり表現したことにより愛嬌さを看取できるものであり、その印象において相違するものである。 さらに、本件商標の眼窩部の外郭線は波状ではないのに対して引用商標の眼窩部の外郭線は波状であるという点、本件商標の鼻孔部は縦長h状に白抜きされているのに対して引用商標の鼻孔部は幅広逆v状に白抜きされているという点、本件商標の側頭骨部の白抜き部は縦細の切り抜き状であるのに対して引用商標の側頭骨部の白抜き部は幅広であるという点、本件商標の頬骨部は左右に膨出することなく下方に向かって略三角形状に突出してなるのに対して引用商標の頬骨部は左右に膨出するという点、本件商標の骨片は、端部から頭蓋骨部にかけて漸次幅細になるように形成されてなり端部には細い切り込みが白抜きされてなるのに対して引用商標の骨片は頭蓋骨部の下部に2本交差してなり端部を除いてほぼ同じ幅で形成され全体が黒塗りされてなるという点において、差異を有するものである。 すなわち、本件商標と引用商標は共に頭蓋骨と骨片という抽象的な共通性は有するものの、それぞれ各構成部分の表現形態を全く異にするものである。 そして、本件商標からは、頭蓋骨の輪郭、眼窩部、鼻孔部、頬骨部、側頭骨部、上顎部及び骨片の表現、さらには牙及び歯の存在から、全体として本物感、恐怖感、ワイルドでシャープという印象を与えるのに対して、引用商標からは、頭蓋骨の輪郭、眼窩部、鼻孔部、頬骨部、側頭骨部、上顎部及び骨片の表現から、全体としてぼってりとした愛嬌のある印象を与えるものである。 (エ)小括 以上の次第で、本件商標と引用商標は、頭蓋骨と2本の交差した骨片という抽象的な共通点を有するとしても、具体的構成及びその表現方法において顕著な差異があるため、それぞれの全体から受け取る印象は異なり、両商標を対比観察した場合はもとより、時と処を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上、明らかに区別し得るものである。また、互いの称呼及び観念については比較し得ないものである。 また、被請求人は、本件商標を指定商品「被服」等アパレル製品に大々的に使用し、また多数の企業にライセンスを許諾した事業を展開した結果、有名歌手や俳優に愛用される程になっており、本件商標は、今や被請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く知られるに至っているものである(乙第17号証)。 そして、今現在に至るまで、請求人による引用商標を使用した商品と被請求人による本件商標を使用した商品との間で、商品の出所に誤認混同を生じさせるような事実は認められないものである(乙第17号証)。 したがって、両商標は、外観上相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当であり、取引の実情等を考慮しても、本件商標がその指定商品に使用された場合に、引用商標との間で商品の出所に誤認混同を生じさせるおそれはないから、両商標は、類似しないものである。 (2)引用商標が周知商標でないことについて 請求人は、甲第4号証を提出し、引用商標が周知商標であると主張しているところ、甲第4号証における各雑誌においては、引用商標が使用されたデニムパンツ、ティーシャツ、ジャンパー等の被服が販売されている事実について、被請求人は必ずしも否定するものではない。 しかしながら、甲第4号証として提出された雑誌は、いずれも多数のアパレル製品が紹介されているファッション誌であり、その記事も必ずしも目立つものともいえないものである。そして、どの程度の需要者がこれら雑誌を見て、どの程度の需要者が引用商標を使用した被服に着目したのかも、全くもって不明である。また、提出された雑誌は、僅か12冊に過ぎず、周知商標であること証明する証拠としては、極めて脆弱と言わざるを得ないものである。 したがって、請求人は「引用商標の被請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く知られている」事実を証明できておらず、それ故、引用商標は周知商標ではないことは明らかである。 3 結語 したがって、本件商標と引用商標とは、外観において顕著に相違し、また観念及び称呼を対比すべき術もなく、取引の実情等を考慮しても、本件商標がその指定商品に使用された場合に、引用商標との間で商品の出所に誤認混同を生じさせるおそれはないから、両商標は非類似の商標である。 また、引用商標は、周知商標と到底いえないものである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第10号の規定に該当しないものである。 第5 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標について 本件商標は、別掲1に示すとおり、概略、正面を向いた頭蓋骨とその背後に扁平に交差させた二本の骨を組み合わせた黒塗りの図形からなるものであり、特定の称呼及び観念は生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標は、別掲2に示すとおり、概略、正面を向いた頭蓋骨とその下に扁平に交差させた二本の骨を組み合わせた黒塗りの図形からなるものであり、特定の称呼及び観念は生じないものである。 (3)両商標の類否について 本件商標と引用商標を比較すると、両商標は、前記(1)及び(2)で示すとおりの構成よりなるところ、子細に観察すれば、本件商標は、頭蓋骨と扁平に交差させた二本の骨が重なっている点及び本件商標の頭蓋骨は、犬歯が特徴的であるのに対して、引用商標は、頭蓋骨と扁平に交差させた二本の骨が離れている点等において差異を有するとしても、ともに頭蓋骨と扁平に交差させた二本の骨の図形を黒塗りに表してなる点、交差している骨の角度がほぼ同じである点、いずれの頭蓋骨も正面を向いている状態である点、目に相当する部分が両端で下がっている点、鼻に相当する部分の下端が二股に分かれている点等において、その構成の軌を一にするものであり、「正面を向いた頭蓋骨と扁平に交差させた二本の骨を組み合わせた図形を黒塗りに表した構図」として看者の記憶に強く印象づけられるものである。 そして、時と処を異にして離隔的に接する場合、必ずしも常に図形の細部まで正確に記憶されているとはいえないのが通常であり、両商標における被請求人が主張している構成上の差異は、両商標の構成全体から受ける共通した印象からすれば、微差の範囲にとどまるものというべきである。 加えて、請求に係る指定商品である「被服」等の取引分野においては、請求人の提出に係る甲第4号証からも明らかなように、商標は、商品の生地に印刷したり、縫いつけたり、刺繍するなどして使用されることも多く、その場合においては、商品の生地がよじれることにより、頭蓋骨と扁平に交差させた二本の骨の間隔は、変化しやすいものである。また、犬歯についても、小さく表示されていることにより、上記した細部における構成上の差異は、一層、曖昧なものとなり、印象が希薄なものとなるといわなければならない。 また、本件商標と引用商標は、ともに、特定の称呼や観念は生じないものであるから、称呼や観念によって、両者を明確に区別し得るものともいえない。 しかして、両商標は、前記「正面を向いた頭蓋骨と扁平に交差させた二本の骨を組み合わせた図形をシルエット風に表した構図」から受ける共通の印象が、他の相違点を凌駕するものといえるから、時と所を異にする取引の実際にあって、これらを同一又は類似の商品に使用した場合は、同一の事業者の製造販売に係る商品であるかの如く、需要者がその出所について誤認混同するおそれがあるといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、引用商標に類似する商標といえるものである。 (4)請求に係る指定商品との類否について 本件商標の指定商品中、請求に係る指定商品は、「被服」、「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,べルト」及び「履物」であり、また、引用商標の指定商品中には、「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」、「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」及び「履物」を含むものであるから、請求に係る指定商品は、引用商標の指定商品中の上記指定商品とそれぞれ同一又は類似の商品と認められる。 (5)まとめ 以上のとおり、本件商標は、引用商標に類似する商標であり、かつ、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品に使用されるものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。 2 被請求人の主張について 被請求人は、「頭蓋骨単独あるいは骨片を組み合わせた図形を基本モチーフとするデザインは、この種業界において好まれて採択されているものであり、むしろありふれていると言っても過言ではなく、各社は、骸骨頭部と交差した骨片という限られた構成要素の中で、表現方法においてそれぞれ創意工夫をしているのが実情である。」旨主張して、乙第2号証を提出している。 しかしながら、商標の類否の判断は、比較すべき商標につき個別具体的に判断されるべき性質のものであるところ、乙第2号証の商標は、漫画のように表された商標や黒塗りされた横長四辺形内に頭蓋骨と二本のほぼ垂直に交差させた骨を識別力を有する文字とともに白抜きした商標がほとんどであって、本件商標及び引用商標から受ける印象や記憶とは異なるものであるから、同号証によって、本件商標と引用商標との類否の判断が左右されるものではない。 3 むすび 以上のとおり、本件商標の指定商品中、その請求に係る指定商品「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,べルト,履物」について、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、その余の無効理由について論及するまでもなく、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標![]() 別掲2 引用商標 ![]() |
審理終結日 | 2012-11-14 |
結審通知日 | 2012-11-19 |
審決日 | 2012-12-03 |
出願番号 | 商願2008-95923(T2008-95923) |
審決分類 |
T
1
12・
261-
Z
(X25)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 手塚 義明 |
特許庁審判長 |
水茎 弥 |
特許庁審判官 |
井出 英一郎 渡邉 健司 |
登録日 | 2009-07-03 |
登録番号 | 商標登録第5244937号(T5244937) |
代理人 | 木村 純平 |
代理人 | 山田 和明 |
代理人 | 飯島 紳行 |
代理人 | 藤森 裕司 |