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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2012900305 審決 商標
異議2013900044 審決 商標
異議2012900369 審決 商標
異議2012900254 審決 商標
異議2012900319 審決 商標

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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X10
審判 全部申立て  登録を維持 X10
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管理番号 1277954 
異議申立番号 異議2012-900371 
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2013-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2012-12-26 
確定日 2013-07-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第5525469号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5525469号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
登録第5525469号商標(以下「本件商標」という。)は、「メルシーポット」の片仮名を標準文字で表してなり、平成23年12月5日に登録出願、第10類「家庭用及び医療用の電動鼻水吸引器,乳幼児用又は介護・医療用電動式体液吸引器」を指定商品として、同24年8月28日に登録査定、同年9月28日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号によって取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号ないし第23号証を提出した。
(1)引用商標
申立人が引用する商標は、以下のア及びイのとおりであり、現に有効に存続しているものである(以下まとめていうときは「引用各商標」という。)。
ア 登録第5136810号商標(以下「引用商標1」という。)は、「MERCI」の欧文字を標準文字で表してなり、平成18年11月17日に登録出願、第10類「放射線療法・神経放射線療法・心臓病の治療・外科手術に用いる血栓除去及び血塊・血液内の異物の回収用カテーテル・ガイドワイヤー・回収装置,その他の医療装置,医療用機械器具,避妊用具,業務用美容マッサージ器,家庭用電気マッサージ器,医療用手袋,しびん,病人用便器,耳かき」を指定商品として、同20年6月6日に設定登録されたものである。
イ 登録第5234364号商標(以下「引用商標2」という。)は、「MERCI RETRIEVAL SYSTEM」の欧文字を標準文字で表してなり、2007年8月29日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成20年2月27日に登録出願、第10類「放射線療法・神経放射線療法・心臓病の治療・外科手術に用いる血栓除去及び血塊・血液内の異物の回収用カテーテル・ガイドワイヤー・回収装置,その他の医療装置,医療用機械器具,おしゃぶり,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック,避妊用具,人工鼓膜用材料,補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。),業務用美容マッサージ器,家庭用電気マッサージ器,医療用手袋」を指定商品として、同21年5月29日に設定登録されたものである。
(2)具体的理由
ア 商標が類似することについて
本件商標中の「ポット」は「つぼ、ポット」を意味する英単語「pot」に対応し、第10類の指定商品中「家庭用及び医療用の電動鼻水吸引器、乳幼児用又は介護・医療用電動式体液吸引器」との関係では、自他商品識別力を発揮し得ない。蓋し「鼻水吸引器」や「体液吸引器」において、吸引した液体を貯蔵するための壺状部材は必須構成要素であり、「ポット」はかかる壺状貯蔵部を備えることを単に記述するにすぎない。
一方、「メルシー」は「ありがとう」を意味するフランス語「merci」に対応するが、第10類の指定商品の内容を何ら示すものではない。
してみれば、本件商標の要部は「メルシー」の部分にあるといえ、需要者は 本件商標「メルシーポット」中の「メルシー」の語に着目し、これを単に「メルシー」とのみ称呼して商品取引にあたるというべきである。
引用商標1は「MERCI」の語のみから構成され、「メルシー」のみの称呼を生じる。引用商標2は「MERCI」と「RETRIEVAL SYSTEM」の結合語であるが、「RETRIEVAL SYSTEM」は「回収装置」を意味し、指定商品との関係では自他商品識別力は弱い。
したがって、引用商標2の要部は「MERCI」の部分にあるといえ、当該部分より「メルシー」のみの称呼を生じる。
本件商標と引用各商標とを比較すれば、いずれも「MERCI」の部分が要部となり、当該要部から「メルシー」のみの称呼が生ずる点で共通している。
また、本件商標において「MERCI」以外の要素は指定商品との関係で識別力を有さず、取引において省略され易いことを考えれば、本件商標は引用各商標との関係では外観及び観念においても共通しているということができる。
したがって、本件商標と引用各商標とは、互いに類似する。
イ 指定商品が類似することについて
本件商標と引用各商標の指定商品はいずれも、第10類「医療用機械器具」に属する商品であって互いに類似する。特に、本件商標の指定商品は人体から鼻水や体液といった組織を吸引し回収する装置であり、引用各商標の指定商品が、同じく血管内の血栓等異物を回収する装置である点で両者は互いに目的・用途を共通にしており、その類似性は高いと見るべきである。
加えて、本件商標は「医療用電動式体液吸引器」を指定している。かかる体液吸引機は、心臓病の治療や外科手術の際にも用いられるのであり、引用各商標の指定商品が同じく心臓病の治療や外科手術に用いられることを考えれば、両商品の主たる需要者はともに外科手術専門医であり、その類似の度合は強いというべきである。
ウ 引用商標が広く知られていることについて
引用各商標は、主に「血栓除去及び血塊・血液内の異物の回収装置」の名称として、引用商標の所有者であるコンセントリック・メディカル・インコーポレイテッド社(以下「コンセントリック社」という。)により使用されている。
「MERCI」と名付けられた回収装置は、詰まりの生じた血管内に極微細な針金を挿入し、血栓部を貫通させた後に針金先端部を螺旋状に展開させ、血栓をからめた状態で針金を引き抜くことで血栓等を除去、回収し、もって血管内血流を再開させるための装置である(甲4ないし甲6)。
「MERCI」は、血栓等回収装置としては、日本で最初に実用化され、2010年(平成22年)4月に厚生労働省の承認を受けた後、同年10月に保険適用された。
「MERCI」は、従来の治療方法とは異なり、血栓を回収して体外に摘出するという画期的な手法であり、従来の血栓治療における問題点を克服するものとして注目を浴び、保険適用されたことで、閉塞血管における血栓等を回収するという新たな施術法が日本でも一般化したのであり、かかる点で「MERCI」は脳梗塞や心筋梗塞等の治療方法として、医療史に残る業績を達成したといえ、脳梗塞や心筋梗塞等の血管閉塞の治療用の医療機械器具として、関係する医療関係者に広く知れ渡っているといえる。
また、「MERCI」及びこれを利用した閉塞血管の再開通手術方法は、脳梗塞や心筋梗塞等の患者及びその家族の間でも広く知れ渡っているといえる。
エ 本件商標の使用が、コンセントリック社の業務にかかる商品と混同を生じさせるおそれがあること
前述のとおり、本件商標と引用各商標とは、商標及び指定商品が類似している。また、引用各商標は閉塞血管内の血栓等回収装置の名称として日本国内において周知性を獲得するに至っている。
かかる状況下、脳梗塞や心筋梗塞等の施術に関係する医業従事者や、これら疾患に関心のある一般需要者が、本件商標「メルシーポット」が付された「家庭用及び医療用の電動鼻水吸引器,乳幼児用又は介護・医療用電動式体液吸引器」に接した場合、当該商品が血栓等回収装置である「MERCI」を販売するコンセントリック社と何らかの経済的・事業的関連性のある者による商品であると誤認する可能性は高い。需要者は、コンセントリック社が、血栓等回収装置として周知性・名声を獲得した「MERCI」のシリーズ商品として、「MERCI」の回収技術を応用した「家庭用及び医療用の電動鼻水吸引器、乳幼児用又は介護・医療用電動式体液吸引器」を開発、販売したのであろうと誤認し、商標「MERCI」に化体した名声を信用して「メルシーポット」を購入するおそれがある。
さらに、本件商標「メルシーポット」は、高度専門医療の現場においても使用される「医療用電動式体液吸引器」も指定しており、かかる人命に関わる高度医療の現場において、類似する商標の商品が併存する事態は厳に回避されるべきである。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前記1のとおり、「メルシーポット」の片仮名を横書きしてなるところ、その構成は、同じ書体、同じ大きさ、等間隔をもってまとまりよく表されており、構成文字から生ずる「メルシーポット」の称呼も、無理なく一連に称呼できるものである。
そして、本件商標の構成中、後半の「ポット」の文字部分が「[しばしば複合語をなして] つぼ,鉢,かめ,(深い)なべ,きゅうす」等の意味を有する英語「pot」(ベーシック ジーニアス英和辞典)に通ずる語であるとしても、本件指定商品との関係においては、該文字が商品の品質等を表示するものとして直ちに理解させるものともいい難いところであるから、本件商標は、構成文字全体をもって一体不可分の造語として認識し把握されるとみるのが自然であり、他に構成中の「メルシー」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は、見いだせない。
してみれば、本件商標は、「メルシーポット」の称呼を生じ、特定の観念を生じさせない造語からなるものというのが相当である。
他方、引用商標1は、「MERCI」の欧文字を横書きしてなるところ、我が国において親しまれて使用されている平易なフランス語といえるから、その構成文字に相応して「メルシー」の称呼を生じ、「ありがとう」の観念を生ずるものである。
引用商標2は、「MERCI RETRIEVAL SYSTEM」の欧文字を横書きしてなるところ、申立人は、その構成中の「RETRIEVAL SYSTEM」の文字は、「回収装置」を意味し、その指定商品との関係においては、自他商品の識別標識としての機能が弱いと主張しているが、該文字は、一概に識別力が弱いとはいえないものであり、また、申立人も主張するのみで何らの証拠も提出していない。
しかしながら、引用商標2の構成全体から生じる「メルシーリトリーバルシステム」の称呼は14音とやや冗長な構成からなること及び申立人の主張を考慮すれば、簡易、迅速を尊ぶ取引の実際においては、取引者、需要者をして、商標の識別上重要な前半に位置する我が国において親しまれて使用されている平易なフランス語といえる「MERCI」の欧文字部分に着目して取引に資される場合も決して少なくないものといわなければならないから、引用商標2からは、「メルシー」の称呼を生じ、「ありがとう」の観念を生ずるものであるというのが相当である。
以上のことから、引用各商標は、共に「メルシー」の称呼及び「ありがとう」の観念を生ずるものである。
そこで、本件商標と引用各商標の類否についてみると、外観においては、本件商標は、「メルシーポット」の片仮名を表示してなり、引用各商標は、「MERCI」及び「MERCI RETRIEVAL SYSTEM」の欧文字を表してなるから、両者は、外見において明らかな差異を有するものである。
そして、称呼においては、本件商標は「メルシーポット」の称呼を生じ、引用各商標は「メルシー」の称呼を生ずることから、両者は、その構成音数において明らかな差異を有するものであるから、それぞれを一連に称呼するときは、音調、音感が明らかに異なり、称呼上区別し得るものである。
さらに、観念においては、本件商標は、特定の観念を有しない造語であるのに対し、引用各商標からは「ありがとう」の観念を生ずることから、両者は類似しないものである。
したがって、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれよりみても、引用各商標に類似する商標であるということはできないから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
申立人提出に係る証拠によれば、「血栓除去及び血塊・血液内の異物の回収装置」を表すものとして、本件商標の登録出願時及び査定時において、我が国の脳梗塞や心筋梗塞等の血管閉塞の治療用の医療機械器具の取引者の間に相当程度知られていたものと認められる。
しかしながら、引用各商標が、申立人の業務に係る「血栓除去及び血塊・血液内の異物の回収装置」として相当程度知られているものであるとしても、本件商標と引用各商標は、前記(1)のとおり、何ら相紛れるおそれのない別異の商標であるから、商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者をして申立人の引用各商標を想起、連想させるものではなく、申立人又は同人と経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2013-07-18 
出願番号 商願2011-87330(T2011-87330) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (X10)
T 1 651・ 263- Y (X10)
T 1 651・ 261- Y (X10)
T 1 651・ 271- Y (X10)
最終処分 維持  
前審関与審査官 須田 亮一内藤 隆仁 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 大森 健司
前山 るり子
登録日 2012-09-28 
登録番号 商標登録第5525469号(T5525469) 
権利者 OXiM株式会社
商標の称呼 メルシーポット 
代理人 深見 久郎 
代理人 竹内 耕三 
代理人 森田 俊雄 
代理人 向口 浩二 

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