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審決分類 審判 全部取消 商標の同一性 無効としない Y33
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y33
管理番号 1277941 
審判番号 取消2012-300534 
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-06-29 
確定日 2013-06-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第602965号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第602965号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、昭和36年4月8日に登録出願され、第28類「日本酒」を指定商品として、昭和37年12月25日に設定登録がされ、その後、5回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、また、平成14年10月23日に指定商品を第33類「日本酒」とする指定商品の書換登録がされ、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成24年7月18日にされたものである。
第2 請求人の主張
本件審判請求人(以下「請求人」という。)は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれもが使用した事実がないから、その登録は商標法50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、本件商標の指定商品中の「清酒」について使用している「長寿」の文字に関し、「壽」(旧字体)の文字を「寿」とする相違のみであり、社会通念上同一の商標の使用であると答弁している。
2008年(平成20年)9月に作成された商品カタログ(乙第2号証の1)(以下「2008年商品カタログ」という。)によれば、本件商標の使用状態は、「長寿」の文字を、「行書体」で表したものと認められる。
しかしながら、本件商標の態様は、力強い毛筆体で表記された外観に顕著な特徴を有している。
さらに、本件商標中の下部の文字は、「壽」(旧字体)とは明らかに相違し、まさにこの部分に自他商品識別標識としての機能が存在するものと認められる(甲第3号証)。
したがって、「壽」(旧字体)の文字を「寿」として使用しているものではなく、本件商標と使用されている商標とが、社会通念上同一の商標であると認められないことは明らかである。
(2)商品カタログ(甲第2号証の1,2)について
本件審判請求の登録日は、平成24年(2012年)7月13日であるので(合議体注記:本件商標の登録原簿によれば、本件審判の予告登録は平成24年7月18日になされているものであるが、この誤記は、本件の結論を左右するものではないと判断されるので、以下、請求人が主張するとおりの記載をする。)、平成21年(2009年)7月13日から平成24年(2012年)7月12日の期間内で、本件商標が使用されている事実が証明されなければ、本件商標の取消しが免れないものである。
被請求人は、2010年(平成22年)3月作成の新商品カタログ(乙第2号証の2)(以下「2010年新商品カタログ」という。)作成時には、「長寿」の生産中止を決定していたが、「長寿」の在庫販売は継続して行っていたため、「2008年商品カタログ」を並行して使用していたと主張している。
しかしながら、「2008年商品カタログ」と「2010年新商品カタログ」が並行して使用していた事実は何ら示されていない。
さらに、平成21年(2009年)時点での商品カタログの有無についても証明されていない。
したがって、平成21年(2009年)7月13日以降、本件商標が使用されている事実は認められない。
なお、上記(1)で述べたとおり、本件商標と乙第2号証の1で示された商標とは、社会通念上同一の商標とは認められないので、たとえ、使用商標が平成21年(2009年)7月13日以降に使用されていたとしても、本件商標が使用されている事実は認められないものである。
よって、「2008年商品カタログ」及び「2010年新商品カタログ」において、本件商標が使用されている事実は認められない。
(3)本件商標の使用の事実について(乙第3号証ないし乙第6号証)
ア 被請求人より示された販売実績であるが、被請求人の関連会社と思われるオオゼキ・エフ・アンド・シー(関寿庵)(乙第3号証)に対しては2本、食品商社の株式会社イズミック(乙第4号証)に対しては1本の、相互に関連のある特定の間柄に対しての取引であり、しかも、わずかに合計3本となっている。この販売個数は、たとえ「数量限定販売商品」であっても、通常の商取引では考えられない数量であり、取引としての証拠を確保するための恣意的なもので、実質的な「商標の使用」にあたるものとはいい難く、証拠能力に疑いがある。
イ また、乙第6号証については、被請求人から販売業者である(有)はまおか酒店への販売の事実さえも示されていないので、本件商標を使用している証拠としては認められない。
したがって、本件商標が使用されている事実は認められない。
(4)結語
上述したとおり、本件商標は、その指定商品「日本酒」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないことは明らかである。
よって、請求の趣旨のとおりの審決を求めるものである。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証(枝番を含む。)を提出した。
1 本件商標の被請求人による使用
本件商標については、これと社会通念上同一と認められる商標を取消請求に係る指定商品中の「清酒」について、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人が使用していたものである。
2 本件商標の使用の事実及び使用時期について
(1)乙第2号証の1は、2008年9月に作成した商品カタログ(抜粋)であるが、その8頁(左上)には、「超特撰 純米大吟醸酒 長寿」の商品写真、商品説明、価格等、25頁の商品一覧表には、当該商品の商品コード(000798)、参考小売価格等が掲載されている。
また、乙第2号証の2は、2010年3月に作成した新商品カタログであるが、その作成時に「長寿」の生産中止を決定していたため、新商品カタログにはその商品の掲載はない。しかしながら、「長寿」商標の使用をする商品「清酒」の在庫販売は継続して行っていたので、2010年3月以降も、上記乙第2号証の1のカタログは、新カタログとともに数ヶ月間並行して使用し、取引者、需要者にも頒布していたものである。
(2)乙第3号証の1は、オオゼキ・エフ・アンド・シーが運営する「関寿庵」からの受注伝票、「関寿庵」への出荷指示伝票(控)及び「関寿庵」の貨物受取書である。
上記乙号証により、2010年5月12日に、被請求人が関寿庵の脇本氏から「超特撰 長寿1.8L瓶詰」(商品コード000798)を受注し、同5月14日に出荷し、同日に同商品を注文者の脇本氏が受け取ったことが証明される。
乙第3号証の2は、被請求人が「関寿庵」へあてた一括請求書(2010年5月1日?同31日)、請求明細表及び「関寿庵」の出金伝票であるが、その請求明細表の2頁目に、「出荷日:05/14、商品:超特撰 長寿 1.8L瓶詰(000798)、数量:2」の記載があることから、その商品「清酒」が2010年5月14日に「関寿庵」へ販売されたこと、及び、オオゼキ・エフ・アンド・シーの「出金伝票」により、2010年8月2日に前記「超特撰 長寿 1.8L瓶詰」を含む商品代金の一括支払が被請求人になされたことが証明される。
乙第3号証の3は、「関寿庵」の販売実績を示す2010年6月15日付けのレシート(領収証控)であるが、「4901061007983/チョウジュ 10000 ¥10,443」(冒頭の数字は、乙第2号証の1の商品一覧表における「超特撰 純米大吟醸酒 長寿1.8L瓶詰」を示す。)の表示から、「関寿庵」が当該「長寿1.8L瓶詰」(清酒)を同日に一般需要者に販売したことが証明される。
(3)乙第4号証は、酒類及び食品卸を主な事業内容とする「株式会社イズミック」(大阪支店 大阪西営業所)の受領書及び被請求人の請求明細表であるが、受領書には、「伝票No.727557、商品コード:00-798、品名:超特撰 長寿1.8L瓶詰」の表示があり、2010年2月9日付けの受領印が押印されていること、2010年2月10日締切の請求明細表にも、出荷日を2月8日とするほか、上記受領書と同一の伝票番号や商品名等が記載されていることからみれば、乙第4号証によって、2010年2月9日に被請求人が「超特撰 長寿1.8L瓶詰」(清酒)を「株式会社イズミック」に販売したことが証明される。
(4)乙第5号証は、「超特撰 長寿1.8L瓶詰」に係る2010年1月から同5月までの出荷実績表(エクセルデータ)であるが、被請求人の内部資料ではあっても、これに「伝票NO:727557、着指定日:20100209、得意先名:(株)イズミック 大阪支店 大阪西営業所、品名:超特撰 長寿1.8L瓶詰」等及び「伝票NO:792267、出荷日:20100514、得意先名:オオゼキ・エフ・アンド・シー(関寿庵)、品名:超特撰 長寿1.8L瓶詰」等の記載が認められる。
(5)乙第6号証は、2012年7月26日にプリントアウトした「(有)はまおか酒店」のインターネットWebページであるが、ここにおいても、「長寿」商標が商品「清酒」に使用されていることが認められる。
(6)以上のとおり、乙第2号証ないし乙第6号証によって、「長寿」商標を商品容器、包装用箱等に付した、「商品コード:000798」とする「清酒」(乙第2号証の1)が、被請求人により、少なくとも、2010年5月14日に「関寿庵」、2010年2月9日に「(株)イズミック 大阪支店 大阪西営業所」に卸売され、2010年6月15日に「関寿庵」が一般需要者に販売したことが証明される。
(7)なお、上記「清酒」に使用する「長寿」の文字は、本件商標とは、「寿」の文字を後者が「壽」(旧字体)とする相違のみであって、その称呼及び観念を同-にするものであるから、社会通念上同一の商標といい得るものである。
したがって、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、被請求人が本件商標と社会通念上同一と認められる商標「長寿」を「清酒」について使用していたことは明らかである。
3 結論
本件商標は、本件審判の取消の請求に係る指定商品中の「清酒」について、その請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人により使用されていたものであるから、その登録を商標法第50条の規定により取り消すべきものではない。
第4 当審の判断
1 本件使用商標は本件商標と社会通念上同一ではないとの請求人の主張について
(1)本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなるものであるところ、被請求人が本件商標と社会通念上同一であると主張している、乙第2号証の1の8頁に掲載されている商標(以下「本件使用商標」という。)は、別掲(2)に表示した商品容器及びその包装用箱の表面に表示されている文字からなるものである。
しかして、両者の相違について、被請求人は、「『清酒』に使用する『長寿』の文字は、本件商標とは、『寿』の文字を後者が『壽』(旧字体)とする相違のみであって、その称呼及び観念を同一にするものであるから、社会通念上同一の商標といい得るものである。」と答弁している。
これに対して、請求人は、「本件使用商標は、『長寿』の文字を、『行書体』で表したものと認められる。しかしながら、本件商標の態様は、力強い毛筆体で表記された外観に顕著な特徴を有している。さらに、本件商標中の下部の文字は、『壽』(旧字体)とは明らかに相違し、・・・『壽』(旧字体)の文字を『寿』として使用しているものではなく、本件商標と使用されている商標とが、社会通念上同一の商標であると認められないことは明らかである。」旨主張している。
(2)そこで、以下、上記の請求人の主張に関して、本件使用商標が本件商標と社会通念上同一ということができるか否かについて検討する。
ア 本件商標及び本件使用商標は、ともに毛筆書体よりなるところ、漢字の書体には、篆書、隷書、楷書、行書、草書などがあり、これらについて、例えば、広辞苑第六版(株式会社岩波書店発行)によれば、楷書は「漢字の書体の一つ。隷書から転化したもので、点画をくずさない、現代の基準となる書き方。」、行書は「漢字の書体の一つ。楷書と草書との中間の書体。」、「草書」は「書体の一つで、篆隷(てんれい)を簡略にしたもの。俗に行書をさらにくずし、点画を略したものをいう。」との記載があり、隷書については「(徒隷すなわち卑しい身分の者にも解しやすい書体の意)漢字の書体の一つ。・・・小篆(しょうてん)の繁雑を省いて作ったものという。漢代にまた装飾的になり、後世、これを漢隷または八分(はっぷん)といって古い隷書と区別したが、一般に隷書といえば漢隷を指す。楷書を隷書ということもある。」、篆書については「漢字の一体。大篆と小篆とがある。」と記載されている。また、同辞典には、旧字体は「1949年内閣告示の当用漢字字体表で定められた字体とは異なり、それ以前に使用されていた漢字の字体。」、新字体は「漢字の字体で、古くから用いていたものに代わって新しく用いるようになった字体。1949年告示の当用漢字字体表で、旧来の正字体に代わって新たに正字体として認められたもの。」との記載もある。
イ そして、上記アの漢字における毛筆書体の成り立ちなどを参考にして、本件商標及び本件使用商標の各態様を各毛筆書体に照らしてみれば、「長壽」の文字を、本件商標は、隷書により書されたものであり、本件使用商標は、行書ないし草書により書されたものであると認められる。すなわち、本件商標と本件使用商標とは、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標であるといい得るものである。
ウ また、本件商標は、前記第1のとおり、昭和37年12月25日に設定登録がされたものであるが、その登録の経緯に本件商標の構成態様が隷書体であることにより登録を受けたというような特段の事情も発見し得ない。
(3)以上によれば、本件商標と本件使用商標とは、社会通念上同一の商標ということができるものである。
よって、「本件商標中の下部の文字は、『壽』(旧字体)とは明らかに相違し、・・・『壽』(旧字体)の文字を『寿』として使用しているものではなく、本件商標と使用されている商標とが、社会通念上同一の商標であると認められないことは明らかである。」旨の請求人の主張は、採用することはできない。
2 本件商標の使用について
(1)被請求人が提出した乙各号証によれば以下の事実が認められる。
ア 商品カタログについて
乙第2号証の1は、被請求人が2008年9月に作成した商品カタログの抜粋(写)であるところ、その8頁の左上に、「超特撰 純米大吟醸酒 長寿」、「1.8L瓶詰(販売数量限定商品)」として、商品容器及び包装用箱の写真、商品の説明、価格等が掲載され、同25頁には、商品一覧表が掲載され、当該商品の商品名、商品コード(000798)、参考小売価格等が掲載されている。
イ オーゼキ・エフ・アンド・シー(関寿庵)との取引について
(ア)乙第3号証の1は、2010年5月12日付けの「関寿庵」からの受注伝票(写)とそれに伴う、被請求人の同月14日付けの「オーゼキ・エフ・アンド・シー(関寿庵)」あての出荷指示伝票(控)(写)及び同日付けの貨物受取書(写)であるところ、これらによれば、商品「超特撰 長寿1.8L瓶詰」(商品コード000798)について、被請求人が関寿庵の担当者から2010年5月12日に発注を受け、同月14日に同商品が出荷され、同日に関寿庵の同担当者がこれを受け取ったことが確認できる。
(イ)乙第3号証の2は、被請求人が「関寿庵」へあてた、2010年5月1日ないし同31日の間の請求書(写)と認められるところ、請求明細表には、出荷日が5月14日であると認められる欄に、伝票No.「792267」、商品「超特撰 長寿 1.8L瓶詰(000798)」、オーゼキ・エフ・アンド・シー(関寿庵)との記載がある。そして、この請求明細表の最後に売上額合計として「893236」と記載され、その2葉後にオオゼキ・エフ・アンド・シーの出金伝票(写)が添付され、被請求人を支払先として、「清酒他 5月分」を内容とする「893,236」が金額欄に記載されており、これらの金額は、符合している。
ウ 株式会社イズミックとの取引について
乙第4号証は、株式会社イズミック(大阪支店 大阪西営業所)の受領書(写)及び被請求人の請求明細表(写)と認められるものである。この受領書には、伝票No.「727557」、商品コード「00-798」、品名「超特撰 長寿1.8L瓶詰」の表示があり、2010年2月9日付けの「(株)イズミック大阪西」の受領印が押されていることが確認できる。
そして、三葉目に添付されている、被請求人の2010年2月10日の株式会社イズミックあての請求明細表には、出荷日が2月8日であると認められる欄に、上記受領書と同一の伝票番号や商品名等が記載されていることが確認できる。
エ 乙第5号証について
乙第5号証は、被請求人の「超特撰 長寿1.8L瓶詰」に係る2010年1月から同年5月までの出荷実績表(内部資料)とするものであるところ、ここには、伝票NO「727557」、出荷日「20100208」、得意先名「(株)イズミック 大阪支店 大阪西営業所」、品名「超特撰 長寿1.8L瓶詰」及び伝票NO「792267」、出荷日「20100514」、得意先名「オーゼキ・エフ・アンド・シー(関寿庵)」、品名「超特撰 長寿1.8L瓶詰」との各記載が認められる。そして、この出荷実績表には、上記の二社以外にも、「(株)マスダ 阪神支店」、「(株)井筒屋」、「北海道酒類販売(株)稚内支店」、「マルナカ」など複数の得意先名が記載され、また、この間、「超特撰 長寿1.8L瓶詰」が合計80本販売されたことが記載されている。
オ 乙第6号証について
乙第6号証は、被請求人が2012年7月26日に紙出力した「(有)はまおか酒店」のインターネットWebページであるところ、ここに乙第2号証の1に掲載されている商品「清酒」と同じ商品が、同カタログと同じ態様で紹介され、そこには「在庫 残り少ない」との表示があることが認められる。
(2)上記(1)のア及びイで認定した事実によれば、乙第2号証の1に掲載されている商品「清酒」、「超特撰 純米大吟醸酒 長寿」、「1.8L瓶詰」の商品コードは「000798」であるところ、乙第3号証の1の帳票類には、この商品コードが付された商品「超特撰 純米大吟醸酒 長寿」「1.8L瓶詰」が記載されていることから、乙第3号証の1により、本件使用商標が使用された商品「清酒」が、本件審判請求前3年以内である、2010年5月12日にオーゼキ・エフ・アンド・シー(関寿庵)から受注を受け、同14日に同社に販売されたことが認められるものである。
また、上記(1)のア及びウで認定した事実によれば、乙第2号証の1に掲載されている商品「清酒」、「超特撰 純米大吟醸酒 長寿」、「1.8L瓶詰」の商品コードは「000798」であるところ、乙第4号証の(株)イズミックの受領書(2010年2月9日の受領印がある)及び被請求人の(株)イズミックあての請求明細表(2010年2月10日付け)には、この商品コードが付された商品「超特撰 純米大吟醸酒 長寿」、「1.8L瓶詰」が記載されていることから、乙第4号証により、本件使用商標が使用された商品「清酒」が、本件審判請求前3年以内である、2010年2月9日に(株)イズミックに販売されたことが認められるものである。
(3)以上によれば、本件商標は、被請求人である商標権者により、本件審判の請求に係る指定商品「日本酒」に含まれる「清酒」について、本件商標と社会通念上同一と認め得る本件使用商標をもって、本件審判の請求の登録前3年以内に使用されていたと認めることができるものである。
(4)請求人の主張について
ア 請求人は、「『2008年商品カタログ』と『2010年新商品カタログ』が並行して使用していた事実は何ら示されていないから、平成21年(2009年)7月13日以降、本件商標が使用されている事実は認められない。」と主張している。
しかしながら、上記(2)で判断したように、乙第2号証の1、乙第3号証及び乙第4号証により、本件取消対象に係る商品「日本酒」に含まれる「清酒」は、乙第2号証の1の「2008年商品カタログ」に示された本件使用商標の態様をもって、本件審判請求3年以内に販売されていたといえるものであって、本件取消審判は、審判請求前3年以内に使用の事実があったか否かが、その正否の要件であるから、本件使用商標が掲載された商品カタログが本件審判請求前3年以上前である、2008年9月に作成されたものであることをもって、本件審判請求前3年以内における本件使用商標の使用事実が否定されるものではない。よって、この点についての請求人の主張は失当である。
イ 請求人は、「被請求人より示された販売実績であるが、被請求人の関連会社と思われるオーゼキ・エフ・アンド・シー(関寿庵)(乙第3号証)に対しては2本、食品商社の株式会社イズミック(乙第4号証)に対しては1本の、相互に関連のある特定の間柄に対しての取引であり、しかも僅かに合計3本となっている。この販売個数は、たとえ『数量限定販売商品』であっても、通常の商取引では考えられない数量であり、取引としての証拠を確保するための恣意的なもので、実質的な『商標の使用』にあたるものとはいい難く、証拠能力に疑いがある。」と主張している。
確かに、3本という、本件商品「清酒」の販売本数は、少数というべきである。しかしながら、乙第2号証の1の商品カタログには「販売数量限定品」とあり、また、請求人は、答弁書において、「2010年(平成22年)3月には、『長寿』の生産中止を決定していたが、『長寿』の在庫販売は継続して行っていた。」と述べており、さらに、乙第6号証によれば、被請求人が、2012年7月26日に紙出力した、「(有)はまおか酒店」のインターネットのWebページには、乙第2号証の1の商品カタログに掲載されている商品「清酒」と同じ商品が、「在庫 残り少ない」との表示とともに紹介がされていることが認められるから、この商品は、2012年7月26日時点においても、その取扱いが継続されていたといえるものである。
そうとすれば、例え3本という少数であっても、乙第2号証の1、乙第3号証及び乙第4号証により、本件商標の指定商品である「清酒」が本件使用商標をもって販売された事実は、これを否定することはできないというべきである。
加えて、上記(1)エによれば、被請求人の内部資料ではあるものの、乙第5号証の出荷実績表には、「オオゼキ・エフ・アンド・シー(関寿庵)」、「株式会社イズミック」の外にも、「(株)マスダ 阪神支店」、「(株)井筒屋」、「北海道酒類販売(株)稚内支店」、「マルナカ」など複数の得意先名が記載されており、また、この出荷実績表には商品「清酒」が、2010年1月から同年5月までの間に合計80本販売されたことが記載されており、加えて、この出荷実績表は、乙第3号証及び乙第4号証の記載との整合性もあることから、この出荷実績表を含めた乙各号証の帳票類が後日記載のものであるとか後日作成したのものであることをうかがわせるものとはいえず、その成立に不自然さは認められない。よって、乙第3号証及び乙第4号証が「取引としての証拠を確保するための恣意的なもの」との請求人の主張は採用することができない。
3 まとめ
以上によれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が本件請求に係る指定商品「日本酒」に含まれる「清酒」について、本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていたことを証明したと認めることができるものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別記】


審理終結日 2012-12-25 
結審通知日 2013-01-04 
審決日 2013-01-31 
出願番号 商願昭36-10345 
審決分類 T 1 31・ 11- Y (Y33)
T 1 31・ 1- Y (Y33)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 酒井 福造
山田 和彦
登録日 1962-12-25 
登録番号 商標登録第602965号(T602965) 
商標の称呼 チョージュ 
代理人 柴田 昭夫 
代理人 為谷 博 
代理人 丹羽 宏之 
代理人 西尾 美良 

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