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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない X0942
審判 全部無効 外観類似 無効としない X0942
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X0942
審判 全部無効 観念類似 無効としない X0942
管理番号 1277888 
審判番号 無効2012-890096 
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-11-08 
確定日 2013-07-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第5447377号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標登録の無効の審判
1 本件商標
本件商標登録の無効の審判に係る、登録第5447377号商標(以下「本件商標」という。)は、「Sapie」の欧文字を横書きしてなり、平成23年6月10日に登録出願、第9類「電気通信機械器具,電子計算機用プログラム」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供」を指定商品及び指定役務として、同年10月12日に登録査定、同月28日に設定登録されたものである。
2 本件商標登録の無効の審判
本件商標登録の無効の審判は、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるとして、同法第46条第1項により本件商標の登録を無効にすることを請求するものであり、その予告登録が平成24年11月27日になされているものである。

第2 引用商標
本件審判請求人(以下「請求人」という。)が、本件商標の登録の無効の理由として引用する登録商標は、以下の2件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第4669881号商標
登録第4669881号商標(以下「引用商標1」という。)は、「SAP」の欧文字を横書きしてなり、1999年8月3日にドイツ連邦共和国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成12年1月19日に登録出願、第9類「電子計算機用プログラムを記録させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の磁気記録媒体,その他の電子応用機械器具及びその部品」、第16類「データ処理プログラムその他のコンピュータソフトウエア用のカタログ・操作説明書・実行マニュアルその他のマニュアル,その他の印刷物」、第41類「コンピュータプログラム及びソフトウェアの作成・設計・開発・使用・応用に関する知識の教授,電子データ処理に関する知識の教授,その他の技芸・スポーツ又は知識の教授」及び第42類「金融及び制御管理・生産及び資材管理・品質管理及びプラントの保守・販売及び流通管理・人的資源及びプロジェクト管理・一般事務用(ワードプロセッシング・電子メール・公文書管理等)などの内部目的の範囲で使用する電子計算機プログラムの作成・設計及び開発,その他の電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータプログラム及びソフトウェアの貸与又は最新化,電子計算機プログラムの作成・設計・開発に関する指導及び助言,コンピュータプログラム及びソフトウェアに関する調査,インターネットを利用したコンピュータプログラム及びソフトウェアの開発・設計・作成・変更・保守に関する情報の提供,インターネットを利用したコンピュータプログラム及びソフトウェアの貸与に関する情報の提供」を指定商品及び指定役務として、同15年3月28日に登録査定、同年5月9日に設定登録されたものである。
2 国際登録第759060号商標
国際登録第759060号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、2001年(平成13年)4月18日に国際商標登録出願、第9類「Machine-readable data media provided with computer programs; computer programs and software; magnetic carriers for computers, namely magnetic tapes, magnetic disks; magnetic wafers and magnetic cards for computers.」、第16類「Written material for software and data processing programs, namely manuals, catalogues, operating instructions and working instructions.」第41類「Training about the programming, design, development, use and application of computer programs and software and about electronic data processing.」及び第42類「Programming, development and design of computer programs and software, particularly for internal function areas such as financial and controlling management, production and materials management, quality management and plant maintenance, sales and distribution, human resources and project management, general office functions such as word processing, electronic mail and archiving; implementation, servicing, leasing, updating, outsourcing and maintenance of computer programs and software; consulting and advising about programming, design, development, use and application of computer programs and software; research in the field of computer programs and software; consultancy and information in the Internet regarding development, creation, programming, production, performance, distribution, application, use, mode of operation, handling, modification, maintenance, leasing, updating, design and outsourcing of computer programs and software.」を指定商品及び指定役務として、同14年8月6日に登録査定、同月30日に設定登録されているものである。
(以下、引用商標1及び引用商標2をまとめて「引用商標」という場合がある。)

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第21号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1号第11号について
(1)本件商標と引用商標との類似性について
欧文字5文字で構成される本件商標「Sapie」は、その構成上重要な部分である語頭部から、既に周知著名性を獲得している引用商標と同一の「S」「a」「p」の文字を連続して含んでおり、外観において相紛らわしく、また、「サピエ」の称呼を生ずる本件商標は、称呼上、強く明瞭に発音される語頭の「サ」の音を、「サップ」の称呼を生ずる引用商標(「サップ」以外にも「エスピーエー」の称呼を生ずるものである。)と共通にし、さらに相違音である「エ」の音は明瞭には聴取され難い語尾に配置されていることから、一連に称呼した場合には、「サピ」に近似した音で聴取され、引用商標の称呼である「サップ」と語調語感が近似し、互いに相紛れるおそれがある。これらを考慮すれば、両商標が同一又は類似の商品・役務に使用された場合には、その取引者、需要者は、商品・役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあり、互いに類似する商標である。
(2)指定商品・役務の同一又は類似について
本件商標の指定商品・指定役務は、引用商標の指定商品・指定役務と同一又は類似のものである。
2 商標法第4条第1号第15号について
(1)引用商標の著名性について
請求人は、ドイツに本社を置く、ヨーロッパ最大級のソフトウェア会社である。請求人会社は、1972年に設立し、その年にISS標準ソフトウェアである「SAP R/1」を開発したことに始まり、1980年には、ドイツ国内の業界優良企業100社のうち50社が「SAP」を導入、1988年に、導入企業数が1,000社を突破し、2000年には、グループ全体でSAPユーザ数1,000万、導入数36,000を突破し、世界120力国で、導入企業13,500社、パートナー1,000社、対応業種別ソリューションが22種にまで拡張している。現在では、販売および開発の拠点を50力国以上に展開し、195,000以上の顧客にSAPのアプリケーションとサービスを提供している(甲第4号証及び甲第6号証)。
日本においては、請求人が100%出資する日本法人として、SAPジャパン株式会社を1992年に設立し、2002年には、SAP製品の国内導入企業数が1,000社を超え、現在では、エレクトロニクス、精密、機械・エンジニアリング、消費財、公共・公益などの各業種を代表する国内企業の多くに、請求人のソフトウェア製品又はそれに関連するサービスが導入・提供されており、また、中堅・中小企業に向けたソフトウェア製品及びそれに関連するサービスを開発し、多くの中堅・中小企業に請求人の製品やサービスの提供を行っている。さらに、請求人は、我が国の国内企業との協業関係を確立することなどにより、積極的な事業展開を行い、その一方で、社会貢献活動についても積極的に行っている。(甲第7号証及び甲第11号証)。
2008年7月には、日本市場に最適なソリューションを提供すべく、参加パートナーである17の企業と共同で研究施設である「SAP Co-innovation Lab Tokyo」を開設し、我が国独自の要求や業界特有の要件に適したソリューションを始め、エンタープライズサービス指向アーキテクチャー(SOA)や、グリーンIT、仮想化などの最新技術を提供するための研究開発に取り組んでいる(甲第12号証)。
請求人名称は、「SAP AG(エス ピー エー アー ゲー)」であるが、当該名称を構成する「AG」の部分は、ドイツ語で「株式会社」を意味する「Aktiengesellshaft(アクチェンゲゼルシャフト)」の略であって、一般的には、単に「SAP」と略称され、「エス エー ピー」若しくは「サップ」と称されている。
請求人は、各種ソフトウェア・ソリューションおよびサービスを提供している(甲第13号証及び甲第16号証)。
請求人は、販売するソフトウェア製品およびそれに関連するサービスのほとんどについて、請求人の略称でもある引用商標「SAP」を共通して、他の文字と区別できる態様で表示し、引用商標をいわゆるハウスマークとして、現在に至るまで継続的に使用している。
その結果として、我が国におけるソフトウェア事業及びそのソフトウェアに関連するサービス事業の売上は、2011年度は5億7900万ユーロ、2010年度は4億4800万ユーロ、2009年度は4億400万ユーロ、2008年度は4億1000万ユーロ、2007年度は3億4000万ユーロ、2006年度は3億800万ユーロとなっている(甲第17号証及び甲第18号証)。
また、請求人は、ソフトウェア及びそれに関連するサービス事業を、世界的な規模で展開しており、その結果、引用商標であり、請求人の略称でもある「SAP」は、インターブランド社が毎年発表している「BEST GLOBAL BRANDS」において、年々、ブランドランキングを上げている(甲第19号証)。
ソフトウェア分野における売上ランキングにおいては、2011年度、2010年度、2009年度いずれも、「Microsoft」、「IBM」、「Oracle」に続く、第4位にランキングされている(甲第20号証)。
これらのことから、引用商標「SAP」が世界的なブランド価値と世界的な名声を獲得していることは明らかであり、また、上記に示した我が国での引用商標の使用状況やソフトウェア事業及びそのソフトウェア事業に関連するサービスにおける2006年度から2011年度までの売上を勘案すれば、引用商標「SAP」が、本件商標の出願時に、既にソフトウェア業界及びこれら関連する商品又はサービスの取引者・需要者において広く認識されるに至り、日本国内のみならず世界的規模で著名性を獲得したものであることは明白である。
(2)出所の混同のおそれ
引用商標及びその称呼である「サップ」の周知・著名性は、前述より明らかである。また、引用商標は、それ自体が造語であって、「SAP」の構成文字及びそこから生ずる「サップ」との称呼は、取引者・需要者の記憶・印象に強く残るものである。
これに対し、本件商標は、商標の構成上重要な部分であり、観念的な連想を引き起こし易い部分でもある語頭部に、引用商標と同じ「S」「a」「p」の文字を包含しており、また、その指定商品及び指定役務は、引用商標が指定する第9類及び第42類に属する商品・役務と同一又は類似のものである。
さらに、ソフトウェア業界においては、共通言語として英語または欧文字が普通に用いられている実情があることも踏まえれば、語頭部から連続して「S」「a」「p」の文字を含む本件商標がその指定商品及び指定役務に使用されたときには、その商品又は役務の取引者・需要者は、それらの商品又は役務を、あたかも周知著名な引用商標の商標権者である請求人が取り扱う商品又は提供するサービスである「SAP」のシリーズ品又は姉妹品として、請求人が提供する商品又はサービスにかかるものと誤認するものであり、そうでなくとも、請求人と何らかの組織的・経済的関係を有する者の製造に係る商品又はサービスであると認識し、請求人の業務に係る商品又はサービスと出所の混同を生ずるおそれがある。
(3)フリーライド及びダイリューションについて
商標法第4条第1項第15号の規定は、平成10年(行ヒ)第85号審決取消請求事件における平成12年7月11日最高裁判所第三小法廷判決で説示されているとおり、著名商標の顧客吸引力へのフリーライド、その出所表示力のダイリューションを防止する趣旨を含むものであると解される(甲第21号証)。
本件商標は、請求人の主力商品及び主サービスと同一又は類似の商品、サービスに使用されるものである。
したがって、本件商標の登録は、世界的に広く認識されている引用商標「SAP」の顧客吸引力へのフリーライド及びダイリューション行為を実質的に助長することになりかねず、取引者又は消費者を混乱させる可能性が高いものである。
よって、本件商標は、フリーライドやダイリューションの防止の観点からみても、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであることは明らかである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に反してなされたものであり、無効とすべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
1 本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しない理由
3文字(引用商標)対5文字(本件商標)という非常に短い構成文字からなる商標同士の比較においては、「ie」の2文字の有無の差異が両商標の外観に与える影響は非常に大きく、当該差異が見逃されるようなことは到底考えられないものである。
両商標は外観上相紛れるようなことはなく、非類似であること明らかである。
本件商標は、同じ書体、同じ間隔、同じ色彩で「Sapie」の文字を表記しているものであって、「Sap」の文字部分のみが看者の注意を惹き、「ie」と分離して把握されるようなことはない。本件商標から引用商標を連想させるようなことはなく、観念上も相紛れるおそれはないものである。
本件商標から生ずる称呼「サピエ」と引用商標から生ずる称呼「サップ」とは、その全体の語感語調が近似することはなく、互いに聞き誤る恐れもないものである。
2 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しない理由
本件商標と引用商標とが、その称呼、観念及び外観のいずれの点においても非類似であって、全く別異の商標であることは上記したとおりである。
本件商標の構成中、「S」「a」「p」の一部分の綴りが引用商標と共通するとしても、本件商標は「Sapie」の全体で一体不可分の識別標識として認識されるものであって、「Sap」の部分は他の文字と有機的に結合し、完全に埋没しているものである。
したがって、万が一、引用商標が周知著名性を有しているとしても、取引者・需要者が「Sap」の部分から請求人あるいは請求人が提供する商品・役務を想起したり、認識したりするようなことはあり得ない。
また、本件商標「Sapie」は、知能化技術の発展を加速するために被請求人が設計、開発したソフトウェアプラネットフォームの総称であって(乙第2号証)、被請求人が独自に創作した造語である。
したがって、本件商標は引用商標に肖って創作したものではなく、被請求人には、引用商標の顧客吸引力にフリーライドする意図も全くなく、独自の企画開発力、営業力をもって本件商標に係る商品、役務を提供しているものである。
3 総括
本件商標は、商標法第4条第1項第11号並びに同第15号の規定に該当するものではない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、前記「第1 1」のとおり、「Sapie」の欧文字を横書きしてなるところ、1文字目を大文字で表し、2文字目以降を小文字で表してなるものであって、それらは、同書体をもって、語頭部を除いて同大で、等間隔に表されており、その構成中の特定の文字部分が強い識別力を発揮するとみるべき態様のものということはできない。
そうすると、本件商標は、その構成全体をもって一体的に看取、把握されるものというべきである。
したがって、本件商標からは、その構成文字に相応して「サピエ」の称呼を生ずるものである。
また、本件商標を構成する「Sapie」の文字は、英和辞典をはじめとする外国語の辞書等に掲載されてはおらず、これが既成語とは認められないから、特定の観念を生ずるということはできないものである。
(2)引用商標について
ア 引用商標1について
引用商標1は、前記「第2 1」のとおり、「SAP」の欧文字を横書きしてなるところ、その全ての文字を大文字で表してなるものであって、これらは、同書体をもって、同大で、等間隔に表されているものである。
そうすると、引用商標1は、その構成全体をもって一体的に看取、把握されるものというべきである。
次に、その称呼についてみるに、引用商標1は、その構成態様および構成文字に相応して、一義的には「エスエーピー」の称呼が生じるものである。
また同時に、取引の実際の場においては、取引者・需要者が、「SAP」の文字を外国語の成語風に称呼して取引に資することも決して少なくないものと思われ、そうとすれば、引用商標1からは、「サップ」の称呼をも生ずるものと判断される。
さらに、観念についてみるに、「SAP」の語は、我が国において日常的に親しまれているものとはいえないから、引用商標1の「SAP」の文字からは、直ちには特定の観念は生じないというのが相当である。
したがって、引用商標1は、特定の観念をもって取引に資されることはないというべきである。
イ 引用商標2について
引用商標2は、上辺と下辺を平行に、左辺を垂直とし、右辺を左下方向きの斜線とした四角形の中に、白抜きで「SAP」の文字を表してなるところ、その構成中の「SAP」の文字は、独立して自他商品・役務の識別機能を果たし得るものである。
よって、引用商標2からは、引用商標1と同様に、「エスエーピー」ないし「サップ」の称呼を生ずるものであり、これが特定の観念をもって取引に資されることはないというべきである。
(3)引用商標の称呼について
ア 請求人は、引用商標の称呼に関して、「本件商標は、・・・一連に称呼した場合には、『サピ』に近似した音で聴取され、引用商標の称呼である『サップ』と語調語感が近似し、互いに相紛れるおそれがある。」と主張しているところ、この点に関して、以下の事実が認められる。
すなわち、引用商標は、審査段階において、ともに商標法第4条第1項第11号の拒絶理由通知が発せられ、これに対して出願人であった本件審判請求人は、意見書において、「本願商標の『SAP』の文字部分からは『エスエイピー』の称呼が生じ、決して『サップ』なる称呼でもって取り扱われるものではありません。」と主張し、それに添う証拠を提出した結果、本件請求人の主張が容れられ、引用商標が、それぞれ登録された経緯が認められるところである。
イ このように、引用商標が登録される手続の過程においては、上記の主張をしていた請求人が、本件無効審判においては、引用商標の「SAP」の文字部分から、「サップ」の称呼が生ずるとの矛盾した主張をすることは、信義誠実を旨とすべき無効審判の手続上問題なしということはできないものである。
ウ しかしながら、無効審判は、職権により審理をすることができるから、上記の経緯にかかわらず、前記「(2)」で判断したように、本件においては、引用商標から「サップ」の称呼をも生ずるとして、以下、本件商標と引用商標の類否判断をすることとする。
(4)本件商標と引用商標との類否について
ア 外観について
本件商標と引用商標との構成は前記したものであるから、外観上、両者が相紛れるおそれはないものである。
イ 称呼について
まず、本件商標から生ずる「サピエ」の称呼と、引用商標から生ずる「エスエーピー」の称呼とは、判然と区別できるものである。
次に、本件商標から生ずる「サピエ」の称呼と、引用商標から生ずる「サップ」の称呼を比較すると、ともに3音節(促音を含む。)という短い音構成からなり、かつ、語頭音「サ」以外の音を異にするものであるから、その音の差異が称呼全体に及ぼす影響は決して少なくなく、それぞれを一連に称呼するときは、語感、語調において相違し、互いに聴き誤るおそれはないというべきである。
ウ 観念について
本件商標は特定の観念を生ずることのないものである。他方、引用商標も直ちには特定の意味を想起させることはないから、両者は観念上相紛れるおそれはないものである。
類否判断
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(5)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標と引用商標は、前記のとおり類似せず、互いに別異の商標というべきである。
(2)引用商標の著名性について
請求人が、引用商標が著名であるとして提出した証拠方法によれば、請求人やその日本法人の設立時期、会社の概要、沿革、活動状況及び取扱商品・役務等をうかがい知ることができ、請求人が、ヨーロッパ最大級(世界第3位)のソフトウェア会社であることも把握できる(甲第4号証ないし甲第13号証(枝番を含む。))ものの、上記各号証並びに甲第14号証ないし甲第18号証(枝番を含む。)に示されたパンフレットの写し、インターネット情報や決算公告などによっても、引用商標が、どのような商品・役務について、どの期間、どの地域で、どのような規模で使用され、どの程度広告宣伝されたのか等を把握することができない。
また、甲第19号証及び甲第20号証によっては、引用商標の世界における知名度をうかがい知ることはできても、その、我が国における著名性の程度を推し量ることはできない。
したがって、請求人が提出した証拠方法によっては、引用商標が本件商標の登録出願時に、我が国の取引者、需要者の間で広く認識されて著名になっていたと認めることはできない。
(3)出所の混同のおそれの有無
以上によれば、引用商標が、本件商標の登録出願時に、我が国において著名性を有していたということができないから、本件商標をその指定商品及び指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者が、該商品及び役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように連想、想起することはなく、その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
(4)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
引用商標2


審理終結日 2013-02-27 
結審通知日 2013-03-01 
審決日 2013-03-21 
出願番号 商願2011-40266(T2011-40266) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (X0942)
T 1 11・ 262- Y (X0942)
T 1 11・ 261- Y (X0942)
T 1 11・ 263- Y (X0942)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 矢澤 一幸 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 小川 きみえ
鈴木 修
登録日 2011-10-28 
登録番号 商標登録第5447377号(T5447377) 
商標の称呼 サピエ 
代理人 石川 義雄 
代理人 橋本 良樹 
代理人 蔵田 昌俊 
代理人 加藤 恒久 
代理人 吉田 親司 
代理人 幡 茂良 
代理人 潮崎 宗 
代理人 小出 俊實 

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