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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y41 |
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管理番号 | 1277804 |
審判番号 | 取消2011-300681 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2011-07-19 |
確定日 | 2013-07-08 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4802600号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4802600号商標に係る指定商品及び指定役務中の第41類「麻雀用具の貸与」については,その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4802600号商標(以下「本件商標」という。)は,「JanNavi」の欧文字と「ジャンナビ」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり,平成15年10月31日に登録出願,第9類「業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲーム機,硬貨作動式機械用の始動装置,ゲーム機(テレビジョン受像機専用のもの),コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」,第28類「マージャン用具,硬貨投入式麻雀卓」及び第41類「インターネットのネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供,通信を用いて行う麻雀ゲームの提供,麻雀の教授,麻雀競技会の企画・運営又は開催,麻雀荘の提供,麻雀大会の企画・運営又は開催,麻雀用具の貸与,娯楽の提供,娯楽情報の提供,ゲームセンターの提供,会員制による教育・娯楽の提供」を指定商品及び指定役務として,同16年9月17日に設定登録されたものであり,現に有効に存続しているものである。 第2 本件審判請求後の手続の経緯 平成23年 7月19日 審判請求 平成23年 8月 2日 予告登録 平成23年10月24日 答弁書(乙1?9) 平成23年12月14日 弁ばく書(甲1?19) 平成24年 1月23日 請求人上申書(甲20,21) 平成24年 7月 9日 被請求人口頭審理陳述要領書(乙10?41) 平成24年 7月13日 被請求人上申書(乙42) 平成24年 7月25日 請求人口頭審理陳述要領書(甲22) 平成24年 8月 1日 口頭審理 平成24年 8月27日 被請求人上申書(乙43?66) 平成24年 9月10日 請求人上申書 第3 請求人の主張(要旨) 請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由,答弁に対する弁ばく,口頭審理陳述要領書,口頭審理及び上申書において,次のように述べ,証拠方法として甲1号証ないし甲22号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標の商標権者である被請求人は,継続して3年以上日本国内において,本件商標をその指定役務中の第41類「麻雀用具の貸与」に関して正当な理由なく使用していない。また,本件商標について専用使用権は設定されておらず,通常使用権の登録もない。 よって,本件商標は,商標法第50条第1項の規定により,その指定役務中の前記の役務については,登録を取り消されるべきである。 2 答弁に対する弁ばく (1)はじめに 本件取消審判は,請求人による商標「雀ナビ」の使用に対して,被請求人が本件商標権に基づいてその使用中止を要請してきたことに対抗して,請求したものである。本件商標権の行使は,大野光明(以下「大野」という。)と請求人間の特殊な背景事情の下,請求人が商標「雀ナビ」を登録していないことを奇貨として,請求人の業務を妨害することを目的として行われているものである。 (2)請求人と大野との関係について 被請求人の答弁書によれば,平成23年4月8日に「jannavi.co.jp」,「ジャンナビ.JP」というドメインを取得し,株式会社ナビの(以下「ナビ」という。)ホームページを立ち上げ,同サイト内で,本件商標を使用したサービスや商品の紹介・販売等をすることを開始したとしているが,上記ドメイン取得の翌日である同年4月9日から5月31日の間における被請求人の代表取締役は,請求人の前代表取締役でもあった人物で,最終的には請求人と紛争となり,請求人会社の取締役を解任された大野である。 そして,大野の請求人会社の代表取締役及び取締役退任に伴う紛争を解決し,両者が相互にその業務を妨害する事態の発生を防止することを目的として,同年6月8日付けで請求人・大野個人の間で「合意書」を作成している(甲7)。 このように,大野は,そもそも請求人である株式会社ウインライト(以下「ウインライト」という。)に深く関係し,最終的には請求人との間で紛争関係が生じていた人物である。 (3)被請求人と大野との関係について 被請求人であるナビは,現在は,東京都台東区入谷一丁目に所在し,代表者は樋口雅光となっているが(甲8),それ以前は,東京都荒川区西日暮里二丁目に所在しており,平成23年4月9日(被請求人がドメインを取得した翌日)から5月31日の間は,大野が代表取締役であったという事実がある(甲9)。 しかも,かって同社の取締役であった大野一典は大野の実兄であり,ナビの筆頭株主でもあった(甲10)。加えて,大野から請求人に対する平成19年4月10日付け通知書(甲6)では,通知人である大野自身が同社の業務を深く了知していることを前提とした書面を送付している。更に,大野は,被請求人会社の組織変更前の有限会社ナビ時代にも,同社のプロデューサーなる肩書の名刺を使用しており(甲11),被請求人の役員としてではなく実質的に強い影響を与える立場として活動していたということを誇示していた。 このように,大野は,かっては請求人の代表取締役であって,請求人が「オンライン麻雀ゲーム」の商標として「雀ナビ」を使用することを主導した人物であり,その後に請求人との間で紛争が生じ,請求人会社の取締役を解任されたのである。そして,今回の本件商標権に基づく被請求人の権利行使は,大野が被請求人会社を買収して代表取締役となったのと同時期から準備されたものであって,請求人の業務を妨害することを目的として行われたものである。本件審判請求に対し提出された乙4,5,7も請求人からの取消審判請求を見越して,不使用取消を免れるために作出されたものであって,その内容自体にも不自然な点が多々見受けられ,到底信用できるものではない。 (4)乙各号証について (ア)乙3について 乙3は,「jannavi.co.jp」,「ジャンナビ.JP」に関する請求明細であり,その請求日は2011年4月8日であって,被請求人の代表取締役が樋口四郎だった時点のものである。甲16のとおり,同氏が取締役・代表取締役であった平成23年(2011年)4月9日以前には,被請求人は本件商標を「麻雀ゲーム・アプリケーション・プログラム製品」の商標として使用していなかったのであるから,これらのドメインは,被請求人が所有者として登録されてはいるものの(甲17),当時の代表取締役である樋口四郎の関与しないところで,何者かによって取得された可能性が大きいものである。 (イ)乙4,5について これらは,何(いず)れも被請求人が「jannavi.co.jp」のドメインの下で開設しているホームページの写真であるが,当該ドメインは前述のように2011年4月8日に登録されたものである点からすれば,このホームページは大野が被請求人の代表取締役に就任したことを契機として初めて開設されたものである。しかも,当該ホームページがいつ開設されたのかは不明であり,これら乙号証は,本件審判請求の登録前に使用があったことの証拠にならない。 また,内容をみても,乙4の同社の「沿革」中において,平成16年9月に「ネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームジャンナビの提供」との記載がある。 しかし,甲16(樋口四郎の確認書)に示されたとおり,平成23年4月9日以前には,被請求人は「麻雀ゲーム・アプリケーション・プログラム製品」の商標として「ジャンナビ」を使用していないのである。更に加えて,請求人と大野の間で紛争があった当時に,大野から請求人へ送付された平成19年4月10日付け通知書(甲6)では,大野が被請求人であるナビの業務について,同社が「麻雀台(実機)の開発を業とする会社」であって,請求人の業務との競合関係はー切ないこと,言い換えれば「ネットワークを利用して対戦する麻雀ゲームの提供」などを行ってはいないことを大野自身が認めている。 このように,事実と明らかに相違する内容のホームページが真正に作成されたなどということは凡(およ)そ考え難く,乙4,5に示されている被請求人のホームページは,本件審判請求がなされた後に,使用の体裁を取り繕うために慌てて作成された可能性が高い。 (ウ)乙7について 乙7は,5件の「物品受領書」の写しであるところ,本件審判の取消対象となっている「役務」の実質的な取引書類としては,全く同じ書式からなるこの「物品受領書」が提出されているのみであり,取引の相手方からの書類は全く提出されていない。かかる証拠によっては,そもそも実体的な取引があったことを証明していることにならないだけでなく,本件「物品受領書」には以下のように,大野が主導して作成されたのではないかと疑わせる不自然な点が存する。 乙7のうち,4件目(N11043)を除いた物品受領書は,「株式会社ナビ」には「様」が付されておらず,その相手方当事者の方に「様」が付されていることに鑑(かんが)みれば,全(すべ)て被請求人であるナビが「様」の付されている者に対して発行したものであるという体裁をとっている。 しかし,物品を受領しているのはナビから「麻雀用具の貸与」を受けている相手であり,物品を提供(貸与)している側のナビが発行者となっているのは不自然である。 以上のとおり,乙4,5,7の大半は,大野のコントロールの下で作出されたと推測されるとともに,その内容も不自然であって,不使用取消を免れるための名目的なものにすぎないことは明らかである。東京高裁平成4年(行ケ)144号及び平成5年(行ケ)168号で判示されているように「単に不使用取消審判を免れる目的で名目的に商標を使用するかのような外観を呈するような行為があっただけ」では,商標法第2条第3項にいう商標の使用には該当しない。乙各号証のように,不当に取消を免れるためだけに準備をした「使用」も「名目的」なものにすぎないのであって,取消しを免れることはできない。 (エ)その他の証拠について 乙6は,被請求人から株式会社ジョイスヘの請求書であるが,本件商標の使用とは直接関係がない。また,乙8,9は,本件商標の使用の事実とは無関係である。 (5)むすび 以上のとおり,被請求人の提出に係る乙各号証は,不使用取消審判の請求を免れるために名目的に使用しているにすぎないから,本件商標は取消を免れない。 3 平成24年1月23日付け上申書 「請求人と大野の関係」,「被請求人と大野の関係」その他本件審判に至るまでの経緯に関する,請求人代表取締役藤本勝博による陳述書及び,大野一典と大野の関係を示す戸籍謄本を提出する。 4 口頭審理陳述要領書 (1)大野と被請求人の関係について 被請求人は,大野が被請求人の代表取締役に就任した平成23年4月9日までは両者の関係が薄かったかのように言うが,大野の陳述書(乙38)によれば,被請求人は,樋口四郎と大野が共同して麻雀台を開発することを目的に設立されたというのであるから,形式的には部外者であったとしても,大野が当初から被請求人の業務に関して枢要な役割を担っていたことは明らかである。 また,大野は被請求人を再建しようと決意し,平成23年4月に樋口四郎から被請求人を引き継いだが,他(ほか)の会社の事業が忙しくなったので同年5月末に他人に売却したなどと主張している。 しかしながら,真に被請求人の再建を決意して引き継いだのであれば,わずか2か月足らずで手放すことはなかったであろう。しかも,大野が代表取締役であった期間に,本件審判事件の要証事実に関係する資料が作成され,代表取締役を辞任した直後の平成23年6月に,商標権侵害の警告書が被請求人から請求人に送付されている。警告書を受領した請求人が不使用取消審判を提起するであろうことは容易に予想できるところであって,上述した代表取締役辞任と警告書送付のタイミングが偶然の一致であるなどとは到底考えられない。自らが代表取締役のままでは,請求人との間で締結した「合意書」(甲7)に違反すると考え,他人に交代させた上で警告書を発した,というのが真相である。 (2)請求人,被請求人,訴外ジョイスによる共同事業について ア 被請求人は,麻雀機メーカーであるジョイスに対し,平成15年6月10日に「JoyNavi」という「麻雀」をテーマにした共同開発を実施することを提案し(乙11),更に同年7月1日には,「ジャンナビ」のゲーム開発の計画が提案された(乙12)などと主張している。 しかしながら,まず,乙11,12を見るに,両者の相違は,表題が乙11は「『JOYとNAVI今後の展開』御提案書」に対し,乙12が「『JanNaviの展開』ご提案書」となっていることと,乙12の2ページ「はじめに」の部分に,第2段落として「ナビゲーションシステムを多く広げるために麻雀→雀(ジャン)ナビゲーション→NAVI(ナビ)『ジャンナビ』のゲーム開発を計画する。」が加わっていることだけであり,それ以外は完全に同一である。しかし,前者が麻雀台の開発計画で,後者が麻雀ゲームのそれであるなら,その内容は自ずと異なってこなければならない。乙12が,乙11をコピーして表題と上記段落を追加しただけのものである以上,これが2003年当時,真に作成され交付されたなどということは考えられない。余りにお粗末な「証拠」である。 イ 大野の陳述書(乙38)によれば,被請求人とジョイスは平成13年から麻雀台の共同開発を行っていたというのであるから,2003年(平成15年)になって被請求人がジョイスに共同開発を提案したというのは辻棲が合わない。更に,被請求人は,「平成15年5月ころ,牌は実物を用い,サイコロ・点棒の点数表示は麻雀台中央にある画面に表示させ,ゲーム的なリーチアクション要素を取り入れた麻雀台を完成した」とのことであるが,そうであるとすれば,完成後である平成15年6月に共同開発を持ちかけたのは何故なのか,理解に苦しむ。 ウ 被請求人は,大野と樋口四郎の間で,ジョイスが販売する麻雀台,請求人が販売する麻雀ゲームコンテンツなどの商品の統一名を「ジャンナビ」「JanNavi」とすることに決定したと主張し,乙38にも同趣旨の記載がある。しかし,一方で,被請求人及び大野は,ジョイスが販売していた麻雀台が「パイリーダー」と称されていたことを認めており(陳述要領書),明らかに矛盾している。 また,被請求人は,乙1に示された利用説明書が「パイリーダー」のものであることも認めた(陳述要領書)。被請求人らによれば,麻雀台「パイリーダー」と「ジャンナビ」の違いは,点棒を使用するかしないかであるとのことであるが,甲22(乙1)には「点数の移動」なる項目があり,麻雀台上で点数が移動することが示されているから,「パイリーダー」は点棒を使用しないものと考えられる。 このように,平成15年から麻雀台に「ジャンナビ」を使用しているという被請求人の主張は矛盾に満ちており,到底信用することができない。 (3)樋口四郎作成の確認書(甲16)について 被請求人は,請求人及び訴外ジョイス(陳述要領書では「訴外被請求人」とされているが,誤記と思われる)との共同開発における役割分担の中で,請求人を通じて麻雀ゲームとして「ジャンナビJanNavi」商標を使用していたとし,そのため,樋口四郎作成の確認書は,不正確な事実を述べていると主張する。 上記で述べたとおり,被請求人による「被請求人・請求人・訴外ジョイスによる共同開発」の主張こそが矛盾に満ちており,そもそも信用できるものではない。 (4)麻雀卓の貸付に係る物品受領書は信用できるとの主張に対して 被請求人は,乙7の1件目(右上の欄に「秋葉麻雀同好会 澤田」と記載されたもの)及び2件目(右上の欄に「小林」と記載された)の物品受領書に関し,乙20及び乙38を新たに提出している。 しかし,乙20については,被請求人と小林なる個人の間の貸与がどのような経緯によってなされたかが全く不明であって,その記載が真実であると考えるに足る説明は皆無である。さらには,乙20と乙7の2件目を比較すると,両者に記載された「小林」という文字の筆跡が著しく相違しており,これらが同一人物によって署名されたものとは考えられない。 更に,秋葉麻雀同好会に対する貸与について新たに提出されているのは,大野の陳述書のみであり(乙38),実際に取引があったことを示す客観的な証拠は依然として示されていない。 (5)物品受領書について ア 被請求人は,物品受領書に関し,「納品書(控),請求書,納品書,物品受領書の4枚綴りの複写式のものを使用し(乙25),これを利用する際には,納品書と物品受領書の間に厚紙を入れ,物品受領書にあて名が複写されることをふせいだ上,物品受領書については,改めて『様』がついている欄に,顧客の名称を書き込んでいる」と主張する。 しかるに,そのような主張は虚偽である疑いが濃厚である。そのような使用方法は,納品書(控)に記載された全(すべ)ての事項を残り3枚のフォームに複写することによって各フォームにいちいち同じことを記載する手間を省くという乙25の書式の本来想定されている使用方法に反しており,わざわざ「厚紙を入れ,物品受領書にあて名が複写されることをふせぐ」意味が全くない上に,乙28,36の物品受領書の顧客の名称の記載は,いずれもゴム印の押捺によるものであって,被請求人が主張するように被請求人自身が当該名称を「書き込んだ」はずがないからである。 イ 乙32は,被請求人とLSコミュニケーションズとの間の契約書であって,LSコミュニケーションズが「取り扱い販売目録」の販売を行うことを内容とするものであるところ,この契約に基づいて販売したと主張しているのは,第28類「全自動式の麻雀台」であり,本件審判の取消対象たる指定役務ではない。 以上のとおり,被請求人が主張するLSコミュニケーションズとの取引は,不自然な点が多々あり信ぴょう性が認められないのであって,その真実性には大いに疑問がある。 したがって,新たに提出された証拠及び被請求人の主張は,「麻雀卓の貸付に係る物&受領書」に関する信用性を裏付けるものではなく,むしろ逆に,その真実性に更なる疑問を生じさせていると言わざるを得ない。 5 平成24年9月10日付け上申書 (1)物品受領書の番号について 被請求人によれば,物品受領書の番号は,「N」は「ナビ」を表し,数字の1番目と2番目は西暦の下2桁,3番目と4番目は月,最後の数字は当該月に物品受領書が発行された取引番号,とのことである。 しかしながら,請求人が口頭審理において指摘したとおり,乙7の3通目は平成23年(2011年)4月20日付で番号が「N11042」であり,4通目は同年4月30日付で「N11043」,5通目は同年5月1日付で番号が「N11051」となっており,日付と番号が奇妙に符合している。偶然の一致というには余りに不自然であって,本件審判で証拠提出するためにねつ造した際,番号のことまで深く考えず,日付に対応した数字を記入した可能性が極めて高い。 (2)乙43について 乙43は,大野の陳述書であるから証拠としての価値が低いものであるが,別紙を含めその陳述内容を精査しても,本件の争点である商標「JanNavi/ジャンナビ」を付した麻雀台が存在していたことは何も証明されていない。 別紙「J」の写真は,「C」及び「D」と同じもののように見えるが,ソフトウェアや部品の一部を共通にするとしても,別々の会社が別個に製造販売している商品を撮影した写真がその背景まで含めて同じというのは理解できず,ジョイス社の「パイリーダー」しか存在していなかったことを強くうかがわせるものである。 加えて,大野は,乙43において,「ジョイスではパイリーダーと称する麻雀台をナビ社に平成23年6月20日に譲渡したもので,ナビ社はそれをジャンナビと改め,麻雀台に表記したものである」,また,「平成23年6月20日麻雀台パイリーダーを2台譲り受ける。その台をジャンナビとして表記しレンタル,販売を行う」と陳述している。 しかし,権原なき第三者が商標を抹消し別の商標に差し替える行為は,当該商標の本来の機能の発揮を妨げるものであり,商標を専有する権利を侵害するものであるというべきである。 (3)LSコミュニケーションズとの取引について ア 乙62?64に鑑み,被請求人がLSコミュニケーションズと締結したとする2種類の契約書(乙30,32)をみると,単一の契約書自体においても,また,二つの契約書相互間においても,不合理で辻棲の合わない点が多々存在する。 まず,乙30は,被請求人が同社に対し「麻雀ゲームソフトジャンナビ」を複製し,当該複製品をインターネット上のサイト,ホームページに組み込み販売する権利を許諾する(第1条)というものであって,被請求人が同社にゲームソフトを販売(卸売)し,同社が転売するというものではない。 しかるに,第7条2項では「本契約有効期間中に購入した本ソフトウェア製品について,乙は,本契約の有効期間満了後といえども,頒布することを妨げられない」と規定されており,齟齬がある。 また,両者の間のメール交信とされる乙63は,乙29の契約締結に至る経緯を示すものとされているが,LSコミュニケーションズからの申入れは「麻雀ソフトの販売代理」であったとされているところ,そのような取引であれば,むしろ乙31のような契約を締結すべきであったものと考えられる。けだし,乙31の第1条は「甲は乙に対し,本件販売物に関する代理店における販売,サービスを委託し,乙は甲の販売代理店として,販売の履行をする」と,第2条1項では「乙は,本契約に伴う本件販売物を販売するものとする」とされ,第4条で「甲は乙に対し,乙からの注文に応じ,本件販売物を許諾,販売する」とされており,まさに「販売代理」の契約である。「本件販売物」には,目録に示されたように「インターネットのネットワークを利用する麻雀ゲーム」「通信を用いて行う麻雀ゲーム」が含まれているからである。 しかも,乙31の第2条3項は,「乙は,本件販売物については,複製,改変及びリバース・エンジニアリングをしないものとする」としており,乙によるゲームソフトの複製を禁止している。更に,乙31は,その前の契約である乙29との関係について何ら定めるところがないのであるから,これら二つの契約は矛盾する内容となっている。 このような相互に矛盾する規定が至るところに存するこれらの契約が真に取引のために締結されたなどということは,およそ考えられないから,被請求人の主張を信用することは到底できない。 次に,被請求人は,平成23年6月と7月にLSコミュニケーションズに麻雀台ジャンナビを貸し付けたと主張し,乙44?47を提出している。期間は1か月で賃料は5万円とのことであるが,貸し出したとされる麻雀台は「ジャンナビJN01」である(乙45,47)ところ,被請求人は自らのウェブサイトにおいてこの麻雀台のレンタル料を1ヶ月2万円であると明示している(乙5)。被請求人は自らのウェブサイトに記載している料金の2.5倍の金額で貸し付けたことになるが,販売代理店契約(乙32)を締結している相手と,定価の2.5倍もの高額で取引するなどということは考えられず,このような取引があったこと自体,全く信用できない。 また,当該取引が乙32の契約に基づいてなされたものであるというが,同契約に貸与に関する記載はない。売買では本件指定役務に当たらないことから,麻雀台をレンタルしたという話を作ったのであろうが,お粗末と言うほかない。 イ 被請求人は,平成23年4月と5月は手書きの伝票が使用されていたが,6月以降はパソコンで作成された領収書が使用されていると主張し,乙51?53を提出した。口頭審理において,手書きの物品受領書の書式が現在は販売中止になっていると指摘されたことから,領収証もそのような指摘を受ける可能性があることを恐れて,上述のような主張に至ったものと推測される。 しかるに,乙7の物品受領書は,平成23年6月20日の日付で手書き,乙45の受領書は,同じ平成23年6月20日の日付でパソコンで作成されている。領収証をパソコンで作成するのであれば,請求書や納品書,物品受領書もパソコンで作成することが通常であるのに,6月以降も廃版となった手書きのものを使用したり,同日に作成されたにもかかわらずパソコンで作成したりと,取扱いがおよそ首尾一貫しない。 したがって,ここにも被請求人の主張の矛盾がある。 (4)追加の証拠について ア 乙54,57?59は,被請求人が作成した書面の写真であって,このような書面はいか様にでも作成できるものである。 更に,乙55は,乙7の2件目の取引に対応する「領収書」等であるが,同じ取引にもかかわらず,物品受領書(請求書,納品書も)は手書き伝票で作成され,「領収書」と「入金伝票」がパソコンで作成された(乙55)ということになり,通常の事務作業ではあり得ない処理である。 これらのことからすれば,乙54,55,57?61は,口頭審理期日の後になって,使用があったかのように見せかけるために被請求人が作成したものと考えるほかなく,到底信用できない。 イ 乙60?66は,被請求人と取引先との電子メール写しとされているが,このような書面もいか様にも作成できるもので証拠としての価値を見いだすことはできない。 実際,これらのメールがねつ造によるものであることを明らかに示す記載が見られる。例えば,乙66のメールヘッダに「Sent:Fliday,July22,2011 2:37PM」と記載されており,金曜日(Friday)が「Fliday」と間違って綴られている。メールヘッダは,コンピューターによって自動的に付される記載であるから,スペルミスなど起こり得ないはずである。同様のスペルミスは,乙60の「Manday」にもある。 乙64の下方の「Sent:Friday…」という記載の「:」の後にはスペースがないところ,ほかの箇所における「:」の後にはスペースがあり,表記方法が一貫していない。また,乙64の中段以降の時刻表示は,「14:12PM」,「13:43PM」及び「13:23PM」と記載されており,24時間表示と午前・午後表示を混在させて用いるという,本来あり得ない表記方法になっている。 更に,乙65の中段以降においては,6月が「June」と先頭文字が小文字で表記されている(英語で月を表す単語の先頭文字は大文字を用いるものであり,実際に乙として提出された外のメールにおいて,月を示す先頭文字は大文字で表されている)。 これらはいずれも,コンピューターによって自動的に生成されるメールヘッダの記載としては,決してあり得ないものばかりである。 このように,電子メールの写しは,被請求人においていか様にでも作成できるものであるところ,実際にねつ造がなされたことを露呈する記載がこのように存在するのであるから,被請求人が提出した電子メールの写しと称する書面のすべてがおよそ信用することができないものである。 (5)むすび 以上のとおり,新たな証拠と主張によっても,本件商標が取消請求に係る指定役務に使用されていたことは何ら立証されていないから,取消しは免れない。 第4 被請求人の主張(要旨) 1 被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めるとし,答弁書,口頭審理陳述要領書,口頭審理及び上申書において,その理由を以下のように述べ,証拠方法として乙1号証ないし乙66号証(枝番を含む。)を提出した。 (1)被請求人は,「ジャンナビ」という名称を付した麻雀台や麻雀用具を提供,販売,貸与している。 (2)被請求人の会社設立 被請求人は,平成13年,麻雀台においてコンピュータを利用して役牌,点数計算をオートメーションで行うプログラムの開発等を目的として会社を設立した。 被請求人は,平成15年,麻雀ナビゲーションシステム(乙1,2)や麻雀ゲームのプログラム等を開発し,平成15年10月31日,「ジャンナビ」を商標出願した。この「ジャンナビ」という名称は,麻雀の「雀」とナビゲーションの「ナビ」を組み合わせたものという意味で,麻雀ゲーム中にプレーヤーがどの牌を切ったら良いか迷った時など,車のカーナビのように案内する機能をもつシステムとして考案し名付けたものである。また,被請求人は,麻雀用具はもとより,ゲーム機器,携帯ゲーム,インターネットなどでもこのシステムを利用することを企画した。このようにして,平成16年9月17日,被請求人は,本件商標を登録するに至った。 (3)麻雀用具の貸与 被請求人は,平成15年,麻雀ゲームの自動点計算システム(ジャンナビ)(乙1,2)を開発し,当該システムを搭載した製品の名称を「ジャンナビ」又は「JanNavi」とすることとして,本件商標を登録した。 その後,平成23年初旬から,本件商標を利用した事業を開始する準備を始め,平成23年4月8日,ネット上に「jannavi.co.jp」「ジャンナビ.JP」というドメインを取得し(乙3),ナビのホームページを立ち上げ,同サイト内で「ジャンナビ(JanNavi)」の商品を紹介,販売することを開始した(乙4)。 そして,現在,被請求人は,同サイトにおいて,「JanNavi全自動台JN01」「JanNavi手打ち卓JN02」「フェニックスF」と名付けた麻雀台,「ジャンナビ麻雀マットJN03」と名付けた麻雀マットを提供,販売している(乙4,5)。 当該麻雀台は,被請求人が開発した自動点計算システム(ジャンナビ)を株式会社ジョイスに提供して製造したものであり(乙6),麻雀台の中央部分に搭載された小型液晶画面において麻雀牌にICチップを埋め込んだ牌を,麻雀台の天板に備えたリーダから読み取り記憶して,点数を自動的に計算するという仕組みになっており,一台が200万円と高価なものであるため,レンタルにも応じている(乙4)。そのレンタルした麻雀台や麻雀ソフトの受領書が乙7である。 (4)背景事情 上記のとおり,被請求人は,平成23年3月ごろから本件商標を使用した事業を開始しようとしたものの,請求人が既に「雀ナビ」の名称でオンライン麻雀ゲームを提供,販売していたため,同年6月23日及び7月14日に内容証明郵便により「ジャンナビ」の使用を中止するよう通知した(乙8の1・2,乙9)。しかしながら,請求人からは何ら返事がなかった。その後,同年9月13日に本件審判請求書が発送され,請求人から取消審判が請求されていることを知った次第である。 (5)結語 以上のとおり,被請求人は,本件商標を使った「家庭用テレビゲーム」,「業務用テレビゲーム機」及び「コンピュータ用プログラムを記憶させた記憶媒体」を使用しており,請求人の請求には理由がなく,取消審判は認められない。 2 口頭審理陳述要領書 (1)本件商標権の行使は,業務妨害目的ではない 請求人は,今回の本件商標権に基づく被請求人の権利行使が大野によるもので,被請求人の業務を妨害することを目的とするものだと主張するが,こうした主張は,以下の事実から誤りである。 (2)樋口四郎作成の確認書(甲16)について 当該確認書は,樋口四郎が被請求人の取締役であった期間「JanNaviジャンナビ」を,麻雀ゲーム・アプリケーション・プログラム製品の商標として使用していないことを確認するものである。 被請求人は,請求人及び訴外被請求人との共同開発における役割分担の中で,「ジャンナビ JanNavi」の商標権を有しており,三社による共同事業が終了するまで,請求人を通じて,麻雀ゲームとして当該商標を使用していたものである(乙38)。 したがって,樋口四郎の陳述書は,不正確な事実を述べている。 (3)被請求人のホームページについて 大野の陳述書(乙38)に記載されたとおり,被請求人のホームページは,平成23年4月8日にドメインを取得し,あらかじめ制作していたWebデータを用いて3日後の4月11日に開設されたものである。 (4)物品受領書の証拠としての位置づけ 物品受領書(乙7)を5枚提出しているが,これらの物品受領書のうち,右上に株式会社AIRCAST,株式会社正成(以下「正成」という。),LSコミュニケーションズと記載されているものは,麻雀用具の貸与に関するものではないので,これらの証拠に係る主張は撤回し,麻雀用具の貸与に係る物品受領書に関する取引を述べ,物品受領書の信用性を主張する。 ア 麻雀卓の貸付に係る物品受領書は信用できる 小林に対する全自動式の麻雀台「ジャンナビ」の貸付け(乙7)に関し,小林作成の上記麻雀台を借りた旨の陳述書を提出する(乙20)。 また,秋葉麻雀同好会に対する貸与(乙7)に関しては,陳述書は得られなかったが,本件取引は存在する(乙38)。 したがって,被請求人は,平成23年8月2日以前に,「ジャンナビ」という商標を用いた麻雀用具の貸与を実施している。審判官が信用性を否定した物品受領書は真実の取引を反映したものである。 (5)「ジャンナビソフト貸与」に係る物品受領書は信用できる。 被請求人における物品受領書の使用方法について解説する。 被請求人は,納品書(控),請求書,納品書,物品受領書の4枚つづりで,複写式となっているコクヨ製の物品受領書を使用している(乙25)。被請求人は,この物品受領書を利用する際,納品書と物品受領書の間に厚紙を入れ,物品受領書にあて名が複写されるのをふせいだ上,物品受領書については改めて「様」がついている欄に,顧客の名称を書き込んでいる。 上記の利用方法に従えば,すずめに対する物品受領書(乙22)は,本来被請求人の名前が記載される場所に「すずめ」の名前が記載される一方,本来「すずめ」が記載される位置に,「正成」の名前が記載されている。本来,被請求人の名前が記載されるべきところに「すずめ」と記載されているのは,納品書(控),請求書,納品書を作成する際に厚紙を入れ忘れた上,これを訂正せずに,物品受領書を保管したことにあると思われる(乙38)。また,すずめと正成(乙26)は,共に紺野仁吉が経営していたことから,紺野からの要望により,「正成」に納品した形の物品受領書を作成したものである(乙41)。 したがって,一見すると,物品受領書(乙22)は,被請求人と無関係に見えるが,実際は,すずめと被請求人との間の取引を裏付けるものである。4 平成24年8月27日付け上申書 (1)物品受領書の番号の付け方は,以下のとおりである。 Nは,被請求人を意味する「ナビ」,数字の左から数えて1番目・2番目の数字は西暦の下2桁,数字の左から数えて3番目・4番目の数字は「月」,最後の数字は当該月に物品受領書が発行された取引番号である。 乙28を用いて説明すると,この取引は,Nと記載されていることから被請求人による取引だということがわかり,次に1105と記載されていることから,2011年5月の取引だとわかり,最後に「1」と記載されていることから,当該月の1番目の取引だということがわかる。 (2)パイリーダーと麻雀卓ジャンナビの関係を説明するため陳述書(乙43)を提出する。 (3)LSコミュニケーションズとの取引に係る主張を追加する。 被請求人は,LSコミュニケーションズに対し,平成23年6月20日,麻雀台ジャンナビを,賃料5万円で貸し付けた(乙44,45)。また,同年7月20日にも,麻雀台ジャンナビを,賃料5万円で貸し付けた(乙46,47)。この取引は,平成23年6月6日付けの販売代理店契約(乙32)に基づいてなされたものである。 本来なら売買になるはずであったが,このとき,LSコミュニケーションズから,売買ではなくしばらく貸与にしてほしい旨の要望があったので,上記貸付けがなされた。 (4)以下の証拠を追加する。 ア 秋葉麻雀同好会との麻雀台ジャンナビの貸与に係る証拠として領収書(乙54)を提出する。 イ 小林との麻雀台ジャンナビの貸与に係る証拠として,領収書(控)・入金伝票(乙55)を提出する。 ウ これまでの取引に関するメール(乙60?66)を提出する。 第5 当審の判断 1 本件の争点 商標法第50条第1項による商標登録の取消審判の請求があったときは,同条第2項本文は,「その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り,商標権者は,その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」と規定しているところ,被請求人は,商標権者が本件審判の登録(平成23年8月2日)前3年以内(以下「要証期間」という)に,本件商標(ジャンナビ)という名称を付した麻雀台を貸与した旨主張し,答弁書において乙1?9を,口頭審理陳述要領書において乙10?41を,上申書において乙42?66を提出した。 これに対し,請求人は,被請求人の提出に係る乙各号証及びその主張は,いずれも信ぴょう性を欠くものであるから,本件商標が取消請求に係る役務に使用されていたことは何ら立証されていない旨主張し,弁ばく書において甲1?19を,上申書において甲20,21を,口頭審理陳述要領書において甲22を提出した。 したがって,本件の争点は,要証期間内に商標権者(被請求人)が本件商標を付した麻雀台が存在し,これを他人に貸与したことを,被請求人がその提出に係る乙各号証により証明し得た否か,すなわち,被請求人の提出した乙各号証及びその主張が信ぴょう性のあるものであるか否かにある。 2 当事者双方の提出に係る乙各号証及び主張について (1)請求人,被請求人等と大野との関係について 被請求人は,本件商標の使用を立証するものとして大野による陳述書(乙38,39,43,56)を提出しているところ,請求人は,大野と被請求人及び請求人との関係等を理由にその陳述書は信用できない旨主張しているので,以下,大野と請求人及び被請求人との関係についてみる。 被請求人「ナビ」は,平成16年3月30日に有限会社ナビを組織変更して設立した会社であって,大野は,平成23年4月9日から同年5月31日まで代表取締役であったこと,また,大野は,被請求人の設立時にその事業を手伝う目的で作成したとする有限会社ナビの「プロデュサー」の肩書の名刺を所有していたこと,大野の実兄が被請求人の筆頭株主になっていることが認められる(甲8?11,21)。 また,請求人「ウインライト」は,平成15年7月23日に設立した会社であって,大野は,平成16年5月22日から19年1月25日までは代表取締役,同年3月22日まで取締役であったこと,そして,大野と請求人との間で「大野の請求人会社の代表取締役及び取締役退任に伴う紛争を解決し,両者が相互にその業務を妨害する事態の発生を防止することを目的」とした「合意書」が作成されていたことが認められる(甲5,7,14)。 以上の認定事実及び当事者双方の主張から,大野は被請求人と密接な関係を有する者であって,かつ,請求人との間において紛争関係にあった者であることが認められる。 (2)本件商標を付した麻雀台が存在していたか否か 被請求人は,本件商標を付した麻雀台の存在を示すものとして,答弁書,口頭審理陳述要領書及び上申書において乙各号証を提出しているので,以下,これらの証拠の真偽について検討する。 ア 乙1は,麻雀ナビゲーションシステムの写真として提出されているものであるが,6ページにわたり麻雀台にあるスイッチを入れることにより表示される画面によって行う麻雀ゲームの操作手順が説明されている。また,乙2は,該麻雀ナビゲーションシステムのパンフレットとして提出されているものであるが,これは,中央に表示画面を有する麻雀台と牌が並んだ写真が上下に2枚配されている1枚紙からなるものであるところ,乙1で説明されている麻雀卓の一部を写したものと認められる。 しかし,乙1,2のいずれにも,本件商標の表示はみあたらない。 そして,請求人は,「乙1は株式会社ジョイスの取扱いに係る手打ち台『パイリーダー』の取扱説明書である」と主張し,甲22を提出しているところ,請求人の主張のとおり,乙1と甲22は,その記載内容が一致しており,また,被請求人も陳述要領書(5ページ3?5行)において,「平成17年ころ,訴外株式会社ジョイスは,自動点数計算システム『ジャンナビ』を備えた麻雀台『パイリーダー』を完成させ,乙1の写真に写された利用説明書を作成した。」として,これが「パイリーダー」の説明書であることを認めている。 したがって,乙1,2は,要証期間内に本件商標を付した麻雀台が存在したことを証明し得るものではない。 イ 乙4は,「ナビのホームページ」とするものであり,会社概要の欄の「事業内容」中の「麻雀事業」に「麻雀台の開発,販売,レンタル」,「沿革」の欄に平成15年4月に「世界初,抵抗麻雀牌役牌読み取り装置Ω開発」,同年11月に「世界初,麻雀ジャンナビ開発(麻雀のナビゲーションシステムで,麻雀牌に埋め込まれたICを読み取り,役牌の読み取りや点数計算を自動的に行う世界初の麻雀装置)」と記載され,「ECショップ/販売・レンタル」の欄には,「ジャンナビJN01/全自動/ナビゲーションシステム台/販売価格:¥2,000,000/レンタル(1ヶ月):¥20,000/ICチップを内蔵した自動点計算ナビゲーションシステム/役牌の判定や点数計算を自動で行うシステムです。専用牌2セットが付属します。」なる商品,「ジャンナビJN02/手打ち台/販売価格:¥500,000/レンタル(1ヶ月):¥10,000/いつでもどこでも気軽に麻雀が楽しめる組立式麻雀台」なる商品等が記載されている。また,乙5は,当該ホームページ中の「ECショップ」の欄のみを印刷したものであり,乙4の8ページ目と同じものと認められる。 しかし,これら「ジャンナビJN01」「ジャンナビJN02」と説明された麻雀台本体に本件商標の表示はみあたらず,また,当該ホームページの情報がいつの時点のものであるのか,その年月日を示す表示もない。 これに対し,被請求人は,「被請求人のホームページは,平成23年4月8日にドメインを取得し,あらかじめ制作していたWebデータを用いて3日後の4月11日に開設されていたものである。」と主張するところ,これを裏付けるものとして提出された証拠は,「お名前.com」なるドメイン名取得に関する料金の請求を表示したウェブページ(乙3)と被請求人の主張と同趣旨の内容を記載した大野による陳述書(乙38)のみである。 そして,「お名前.com」のウェブページから分かることは,何者かが「jannavi.co.jp」及び「ジャンナビjp」なるドメイン名の申請をし,2011年4月8日にその料金の請求がなされていることを推認し得るにとどまるものであり,これによって,当該ホームページが平成23年4月11日に開設されたとの事実を立証し得るものではない。 また,大野による陳述もこれを裏付ける具体的な証拠の提出はなく,加えて,前記(1)の認定のとおり,同氏が被請求人と密接な関係にある人物であることからすれば,その陳述のみをもって当該ホームページが平成23年4月11日に開設されたことを認めることはできない。 ウ 乙42は,平成24年7月13日付けの岩沢善明との記名押印のある陳述書であるが,これには平成24年6月6日にLSコミュニケーションズが麻雀店ファーストに麻雀台「ジャンナビ」を販売した旨記載され,これに添付された写真2の2には,麻雀台の横部に「JANNAVI」と思しき文字が表示されたプレートのようなものが貼付されていることが見て取れる。 しかし,その販売日は要証期間外であって,これをもって,要証期間内に本件商標を付した麻雀台が存在したことを証明し得るものではない。 エ 乙43は,平成24年8月24日付けの大野によるジョイスのパイリーダーとナビのジャンナビの関係を説明する陳述書であるが,ナビのジャンナビと説明する「J」の自動麻雀台及び手動式麻雀台のいずれにも,本件商標の表示は見あたらず,平成23年6月20日にジョイスから2台譲り受け,ジャンナビと表記してレンタル,販売したとする「K」にも,その表記は見あたらない。 そして,この陳述書の内容をみると,請求人の主張のとおり,ジャンナビとする「J」の写真とパイリーダーとする「C」及び「D」の写真が背景まで含め同じであり,別々の会社が製造販売している商品を撮影した写真がその背景まで含めて同じであるという点,「ジャンナビJN02手打ち台」なる製品名で平成23年4月から自社のウェブサイトに手打式の麻雀台を掲載していたと主張する一方で同じような麻雀台「L」を1年後(平成24年4月)に完成させたという点などの不自然な記載が散見され,加えて,平成23年6月20日に譲り受けたとする「K」の麻雀台の下部にその説明と相違する「平成24年6月20日」との記載があることなどをも併せ考慮すれば,乙43の陳述書をもって,要証期間内に本件商標を付した麻雀台が存在したと認めることはできない。 エ 以上のとおり,被請求人の提出した前記乙各号証からは,要証期間内に本件商標を付した麻雀台が存在したことを認めることはできない。 (3)取引書類について 被請求人は,麻雀台の取引を示すものとして,秋葉麻雀同好会(澤田),小林及びLSコミュニケーションズとの取引書類などを提出しているので,以下,これらの乙各号証の真偽について検討する。 ア 秋葉麻雀同好会(澤田)との取引について 秋葉麻雀同好会(澤田)との取引に関し,被請求人は,答弁書において,乙7(物品受領書)を,口頭審理陳述要領書において乙38(陳述書)を,上申書において乙54(領収書(控)写真)及び乙60(電子メール(写))を提出した。 乙7の1件目(Noは記載されていない)は,ナビが秋葉麻雀同好会(澤田)に宛てた平成23年4月28日付の物品受領書であり,「ジャンナビ手打ち台JNO2」,金額(10500)と記載され,備考欄には「レンタル代として」と記載されているが,受領者の住所の記載もなく,これのみをもって記載の取引が行われたことを認めることはできない。 乙38の大野陳述書には,「麻雀台『ジャンナビ』は,平成23年4月28日,千葉麻雀同好会の澤田に貸し付けました。」(11ページ3,4行)とあるだけで,その陳述を裏付ける具体的な証拠はない。 乙54は,ナビが秋葉麻雀同好会(澤田)に宛てた平成23年4月28日付の領収書(控)を写した写真であり,金額欄に「10,500」その下段に「ジャンナビJNO2手打ち台レンタルとして」と記載されているが,撮影日も撮影者も不明な写真をもって,これに写された内容に信ぴょう性があるものと認めることはできない。 乙60は,ナビと秋葉麻雀同好会との取引に関するメールとするものであるが,その本文に麻雀台JN02の貸与に関するやりとりが記載されてはいるものの,コンピュータによって自動に生成されるはずのヘッダー部分に「Monday」を「Manday」とする誤記がある。請求人の指摘するとおり,メールのヘッダー部分にこのような誤記があることは通常はあり得ないことであり,このメールの存在について疑義を持たざるを得ない。 よって,前記のいずれの乙各号証をもってしても,被請求人が平成23年4月28日に秋葉麻雀同好会(澤田)に本件商標を表示した麻雀台を貸与したことを認めることはできない。 イ 小林との取引について 小林との取引に関し,被請求人は,答弁書において乙7(物品受領書)を,口頭審理陳述要領書において乙20(陳述書)を,上申書において乙55(領収書(控))及び乙61(電子メール(写))を提出した。 乙7の2件目(No11066)は,ナビが小林に宛てた平成23年6月20日付のものであり,「ジャンナビ麻雀台JNO1(全自動卓)」,金額(21000)と記載され,備考欄には「レンタル代として」と記載されているところ,受領者の住所の記載もなく,これのみをもって記載の取引が行われたことを認めることはできない。 乙20は,平成24年7月6日付けの小林宏行の記名・押印のある陳述書であり,「私は,平成23年6月20日に確かに株式会社ナビより,『ジャンナビ』という商標の付いた全自動式の麻雀台1台を21000円で借りました。この麻雀台は,同年6月27日に,株式会社ナビに返却しております。」と記載されているところ,これに対し,請求人から,「被請求人と小林との間の貸与に関する経緯が不明であって,乙20の記載が真実であると考えるに足る説明は皆無であり,乙7と乙20に記載された『小林』の筆跡が異なることから,これらが同一人物によって署名されたものとは考えられない」との主張がなされているところである。 乙55は,ナビが小林にあてた平成23年6月20日付の領収書(控)と入金伝票であり,いずれもパソコンで作成されたものと推認され,その双方に「NoJN-601,麻雀台ジャンナビレンタル費として平成23年6月20日 上記正に受領しました。」との記載がある。 そこで,乙7と乙20を対比すると,両者の間には「No11066」と「NoJN-601」の伝票番号の相違が認められること,また,被請求人は,上申書において,伝票類に関する説明として「4月と5月は手書きの伝票が使用されていたが6月以降はパソコンで作成された領収書が使用されている。」と主張しているところ,乙7の物品受領書は,6月20日付であるにもかかわらず手書きで作成されていること,さらには,被請求人は,口頭審理における審尋に対し,乙7に関し,他に書類はない旨の主張していたにも関わらず,乙55が新たに提出されたことからしても,請求人の主張のとおり,乙55の作成経緯に疑問を抱かざるを得ず,併せて,乙7の信ぴょう性についても疑問を抱かざるを得ない。 乙61は,小林との取引に関するメールとするものであるが,その本文に麻雀台JN01の貸与に関するやりとりが記載され,そのヘッダー部分に誤記は見受けられないものの,乙60の電子メールにおける疑義からして,このメールが真正に作成されたものとにわかには認め難い。 そして,これら伝票及びメールの信ぴょう性に関する疑義からして,乙20の陳述書の真偽について疑問を呈する請求人の主張に首肯せざるを得ないところである。 よって,これらの乙各号証をもってしては,被請求人が平成23年6月20日に小林に本件商標を表示した麻雀台を貸与したことを認めることはできない。 ウ LSコミュニケーションズとの取引について LSコミュニケーションズとの取引に関し,被請求人は,口頭審理陳述要領書において乙32(販売代理店契約書)を,上申書において乙44?47(領収書(控)入金伝票及び受領書)及び乙62?66(電子メール(写))を提出した。 乙32は,平成23年6月6日付けの被請求人とLSコミュニケーションズの販売代理店契約書であり,これには,別紙の取り扱い販売物目録に「7,麻雀用具の貸与」の記載がある。しかし,「麻雀用具の貸与」は,そもそも販売物となるものではない。また,外に列記された「3,麻雀の教授」から「11,会員制による教育,娯楽の提供」も同様に販売物となるものではない。しかも,これらは,本件商標の指定商品・役務中の第41類の一部の役務と同一の表示であり,請求人の主張のとおり,一般的な商取引における販売物の表示としておよそ使用される表示とはいえないことからしても,当該契約書の作成経緯について疑義を抱かざるを得ない。 乙44,46は,ナビがLSコミュニケーションズにあてた領収書(控)及び入金伝票であり,それぞれに「¥50,000円」「麻雀台ジャンナビレンタル費として 上記正に受領いたしました。」との記載と,それぞれの受領日である「平成23年6月20日」又は「平成23年7月20日」の記載がある。また,乙45,47は,LSコミュニケーションズがナビにあてた件名を「ジャンナビJN01」,合計金額を「¥50,000」とする受領書であり,それぞれの品名欄に「ジャンナビJN01レンタル/全自動麻雀台」,数量欄に「1」等の記載,それぞれの備考欄に「レンタル期間:平成23年6月20日?1か月間」又は「レンタル期間:平成23年7月20日?1カ月間」の記載がある。 このように,被請求人は,LSコミュニケーションズとの関係において,全自動麻雀台ジャンナビを月額5万円で貸し出したとしているところ,被請求人は自らのウェブサイトにおいてこの麻雀台のレンタル料を1ヶ月2万円としており,請求人の主張のとおり,被請求人が販売代理店契約(乙32)を締結している相手と定価の2.5倍もの高額で取引するなどということは考えられず,このような取引があったこと自体に疑義を抱かざるを得ない。 乙62?66は,ナビとLSコミュニケーションズとの取引に関するメールとするものであるが,これらの本文に麻雀卓等の販売代理店契約等に関するやりとりが記載されているが,乙60と同様にそのヘッダー部分に誤記が認められ,このメールの存在に疑義を持たざるを得ない。 よって,これらの乙各号証をもってしては,被請求人が平成23年6月20日及び7月20日にLSコミュニケーションズに本件商標を表示した麻雀台を貸与したことを認めることはできない。 (4)小括 以上のとおり,被請求人の提出した上記乙各号証によっては,要証期間内に本件商標を付した麻雀台が存在したこと,かつ,要証期間内に本件商標を付した麻雀台を,商標権者(被請求人)が,秋葉麻雀同好会(澤田),小林及びLSコミュニケーションズのいずれについても貸与したことを認めることはできない。 また,前記以外の乙各号証において,本件商標を付した麻雀台の具体的な取引を示すものはない。 3 むすび 以上のとおり,当事者双方の主張及びその提出に係る各号証を総合的に判断すれば,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求に係る指定役務である「麻雀用具の貸与」について,本件商標の使用をしていた事実を証明したということはできない。 したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,請求に係る第41類「麻雀用具の貸与」について取り消すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-10-24 |
結審通知日 | 2012-10-26 |
審決日 | 2012-12-18 |
出願番号 | 商願2003-96408(T2003-96408) |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(Y41)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石田 清 |
特許庁審判長 |
小林 由美子 |
特許庁審判官 |
小川 きみえ 鈴木 修 |
登録日 | 2004-09-17 |
登録番号 | 商標登録第4802600号(T4802600) |
商標の称呼 | ジャンナビ、ジャン、ジェイエイエヌ、ナビ |
代理人 | 中村 眞一 |
代理人 | 一色国際特許業務法人 |
代理人 | 原 秋彦 |
代理人 | 中川 直政 |
代理人 | 粟谷 しのぶ |
復代理人 | 山崎 岳人 |