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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2012900307 審決 商標
異議2012900220 審決 商標
異議2012900265 審決 商標
異議2012900206 審決 商標
異議2012900292 審決 商標

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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X33
審判 全部申立て  登録を維持 X33
審判 全部申立て  登録を維持 X33
審判 全部申立て  登録を維持 X33
管理番号 1272686 
異議申立番号 異議2012-900228 
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2013-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2012-08-07 
確定日 2013-03-21 
異議申立件数
事件の表示 登録第5492341号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5492341号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5492341号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(A)のとおりの構成からなり、平成23年12月6日に登録出願、第33類「果実のエキス(アルコール分を含む。),アラック酒,蒸留酒,ぶどう酒,リキュール,スピリッツ(飲料),ブランデー,ウイスキー,果実入りアルコール飲料,アルコールエッセンス,ウォッカ,米を原料とする酒,消化促進酒(リキュール及びスピリッツ)」を指定商品として、同24年4月16日に登録査定、同年5月11日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下の(1)ないし(5)のとおりであり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。なお、これらを一括して、以下「引用各商標」という場合がある。
(1)登録第2381236号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:HANSEN’S
登録出願日:昭和55年10月17日
設定登録日:平成4年2月28日
更新登録日:平成14年1月29日,平成23年10月11日
指定商品(書換登録後):
第30類「茶,コーヒー,ココア,氷」
第32類「清涼飲料,果実飲料」
(2)登録第2705566号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲(B)のとおり
登録出願日:昭和58年1月19日
設定登録日:平成7年3月31日
更新登録日:平成17年6月7日
指定商品(書換登録後):
第30類「茶,コーヒー,ココア,氷」
第32類「清涼飲料,果実飲料」
(3)登録第2705567号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:Hansen’s Natural
登録出願日:昭和58年1月19日
設定登録日:平成7年3月31日
更新登録日:平成17年3月15日
指定商品(書換登録後):
第32類「清涼飲料,果実飲料」
(4)登録第4926692号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲(C)のとおり
登録出願日:平成16年12月21日
(優先権主張:2004年7月12日(アメリカ合衆国))
設定登録日:平成18年2月3日
指定商品:
第32類「ビタミン・ミネラル・滋養物・アミノ酸及び/又はハーブを加味した炭酸入り清涼飲料,炭酸水,ソーダ水,セルツァ炭酸水,その他の炭酸入り清涼飲料」
(5)登録第5488749商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲(D)のとおり
登録出願日:平成23年10月25日
(優先権主張:2011年7月29日(アメリカ合衆国))
設定登録日:平成24年4月20日
指定商品:
第32類「アルコール分を含有しない飲料,清涼飲料,炭酸入り清涼飲料,ソーダ水,果実風味の清涼飲料」

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、その申立ての理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第90号証(枝番を含む。なお、括弧内における証拠番号は、以下「甲1?甲90」のように省略して記載する。)を提出した。
(1)申立人の沿革並びに「HANSEN」の名称及び「HANSEN’S」商標の著名性
申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり、アルコールを含有しない飲料、すなわち、炭酸飲料、天然ソーダ水、フルーツジュース、エネルギー飲料、エネルギースポーツ飲料、フルーツジューススムージー、レモネード、アイスティー等の開発、製造、マーケティング、販売の事業に従事している(甲10)。
申立人は、2012年1月の社名変更(甲2?甲6)前は、ハンセン ビヴァレッジ カンパニー(Hansen Beverage Company;以下「ハンセン社」という。)との名称で広く認識されていた。この旧名称の主要部「Hansen」は、後述のとおり、創業者のヒューバート・ハンセン(Hubert Hansen)の氏姓を採択したものであり、「HANSEN」の名を用いた商標の「HANSEN’S」(引用商標1)、「HANSEN’S(ロゴ)」(引用商標2)、「HANSEN’S NATURAL」(引用商標3)、「HANSEN’S NATURAL SODA(ロゴ)」(引用商標4)、「HANSEN’S NATURAL CANE SODA(ロゴ)」(引用商標5)等は、世界45以上の国及び地域で商標登録されており、同社の取り扱いに係る飲料製品中、主に、清涼飲料、ソーダ水、果実飲料、アイスティー、エネルギー飲料等を扱う部門の主要ブランド名として、創業時から現在に至るまで継続して使用されている(甲11,甲12の1?6)。
ハンセン社の事業の沿革は、1930年代に創業者のヒューバート・ハンセン氏とその3人の息子が米国南カリフォルニアの映画の撮影所や小売業者にフレッシュジュースを販売したことから始まった。1970年代に入ると、同社の取扱商品は、果実飲料から「Hansen’s Natural Soda」ブランドのソーダ水に至るまで拡大し、「Hansen’s Natural Soda」ブランドのソーダ水は、30年以上にわたり、米国西海岸における天然ソーダ水の主導的ブランドの地位を保持している。その後、同社の「Hansen’s」ブランドの商品の種類は、さらに著しく拡大し、「Hansen’s」エネルギー飲料、「Hansen’s」ジュース及びスムージー、「Hansen’s」無菌ジュース、「Hansen’s Natural Fruit Stix and Tea Stix」粉末ジュース飲料ミックスなど、幅広い種類の飲料製品を取り扱っている。
さらに、2002年に申立人がエネルギー飲料のブランド「MONSTER ENERGY」を創設し、製造販売を開始したことによって、飲料メーカーとしての申立人の知名度はさらに上昇した。この「MONSTER ENERGY」(甲89)ブランドのエネルギー及びスポーツ飲料製品は、従来の飲料製品の容器とは異なる黒色ベースのボトル缶にモンスターの爪痕を象った「M」のロゴマークを大きく表示した野性味あふれる独特な雰囲気が経済・ビジネス界でも注目を浴び(甲38,甲39)、男性若者層を中心にたちまち人気商品となった。
この「MONSTER ENERGY」ブランドの飲料製品には、モンスターの爪痕を象った「M」の文字と「MONSTER ENERGY」の文字からなるロゴマーク(甲86,甲87)、「M MONSTER ENERGY」(甲88)をはじめ、「MONSTER」(甲90)及び当該文字を含むファミリー商標(甲7?甲9)が個別商品名として使用されている。
日本国内でも、「MONSTER ENERGY」ブランドに係る2種類のエネルギー飲料「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」が、2012年5月からアサヒ飲料株式会社を通じて販売を開始している(甲13?甲15)。「MONSTER ENERGY」ブランドの飲料製品について、アサヒ飲料株式会社発行のプレスリリース(甲15)は、「2002年にアメリカで発売。現在アメリカをはじめ北米、南米、欧州、豪州、アジアなど世界57カ国以上(2010年度)で販売、ブランド力とファッション性で若者からの圧倒的な支持を背景に、急成長しているエナジードリンクです。」と記載していることからも明らかなとおり、申立人の製造販売に係る飲料製品は、全世界で流通し、広く知られている。
申立人は、自社製品の販売促進活動の一環として、「MONSTER ENERGY」のブランドの創設から現在まで継続して、「MONSTER ENERGY」のブランド名の下で、サーフライダー、スケートボーダー、オートバイドライバー、カーレーサーなど、様々な分野のスポーツで活躍する世界の一流選手やレーシングチームとスポンサー契約を交わし、その競技活動の支援活動を行っていることでもよく知られている。例えば、2005年に、申立人は、米国のモトクロス史上、最高のライダーの一人とされる「リッキー・カーマイケル」とスポンサー契約を交わした(甲39)。同氏のレーシングスーツ並びに2輪車及び4輪車には、「MONSTER ENERGY」の文字、「M MONSTER ENERGY」のロゴマーク、あるいは、「M」の文字のロゴマークが付されていることが認められる(甲16の1?3)。このほか、世界的に有名な数多くのアスリートたちのスポンサーも務めている(甲17?甲25)。また、日本のカワサキのオートバイレーシングチームのスポンサーも務めており、同レーシングチームの車体には、「MONSTER ENERGY」の名称、「M MONSTER ENERGY」のロゴマーク、「M」のロゴマークが付されていることが認められる(甲26)。
このような申立人による「MONSTER ENERGY」の名称を用いた著名スポーツ選手に対するスポンサー活動は、申立人自らが発信する情報のみならず、スポンサー提供を受けるスポーツ選手各人が運営するホームページやブログ、有名経済ビジネス誌、一般の報道ニュース、スポーツファンのホームページなどを通じて、日本国内の一般消費者にも紹介されている(甲16?甲27,甲34,甲35,甲38,甲39)。
また、これらの有名選手たちが着用するスポーツウエアなどの被服、レーシングスーツ、レーシングヘルメットなどのスポーツ用品や車体には、「MONSTER ENERGY」の文字、そのロゴマーク及び「M」のデザインのロゴマークが付され、その写真やビデオが、申立人のホームページのほか、これらの選手自身やスポーツファンのホームページ、ブログ、あるいは一般のニュースなどを通じて多数紹介されることを通じて、「MONSTER ENERGY」のブランド名とそのブランド所有者である申立人(旧ハンセン社、現モンスターエナジー社)の名前は、我が国の需要者にも広く知られるに至っている。例えば、インターネットの検索エンジン「Google」で「モンスターエナジー」の片仮名で検索すると約149万件の情報記事がヒットしたことからも、申立人の高い認知度が容易に推認できる(甲28)。
また、「MONSTER ENERGY」ブランドの被服、運動用特殊衣服、運動用ヘルメット、ステッカー、リュックサックなどは、日本国内でも輸入販売されている(甲29,甲30)。
申立人の2011年度(12月31日締)の総売上高は、2010年の14億8,900万米ドルから19億5千万米ドルヘと、ほぼ31%近く増加した。2012年度上半期の総売上高は、米国外における2億5,400万米ドル余の売上を含めると、11億9,600万米ドルを超過した。その売上の大部分は、同社の他ブランドによるものであるが、「HANSEN’S」のブランド製品の売上も相当程度大きいものといえる。同社には財務報告上2つのセグメントがあり、その1つが「HANSEN’S」などのブランドの果実飲料及びソーダ水を主要製品とするセグメントである。当該セグメントの2011年の純売上高は、9,490万米ドルで、2010年の純売上高に比し、約360万米ドル増加した。
このようなハンセン社の業績は、本件商標が登録出願されるはるか以前から、経済界でも高く評価されて、数々の賞を受賞している(甲33)。
また、複数の有名経済ビジネス誌でも、飲料製品メーカーとして、ハンセン社のマーケティング手法や業績が高く評価されており(甲34?甲37)、さらに、ハンセン社の宣伝広告やマーケティングの戦略や高成長ぶりを評価する記事が数多く掲載されている(甲31?甲33,甲35,甲38,甲39)。これらの記事は、申立人が現名称に変更する前、かつ、本件商標の登録出願よりもはるか以前に掲載された記事であり、申立人は、旧名称の主要部「HANSEN」(ハンセン社)の名で記載されているものである。当該記事が掲載された雑誌の「TIME」、「FORTUNE」、「NEWSWEEK」、「FORBES」などは、いずれも海外の経済ビジネス関係雑誌として、我が国でも極めて著名なものであり、定期購読する読者も多く存在するものであるから、日本国内でも相当程度の需要者がこれらの記事を読んでいたことが容易に推認される。
申立人は、本件商標の登録出願日のはるか以前より、「HANSEN’S」を始め、これを含む複数の商標を本国米国及び日本を含む全世界で登録している。すなわち、申立人は、引用各商標などの「HANSEN’S」の文字を構成に含む商標について、日本国内で登録しているほか、本国米国、オーストリア、ベネルクス、ブラジル、カナダ、チリ、中国、デンマーク、欧州共同体、フランス、韓国、インドネシア、アイルランド、マカオ、マレーシア、メキシコ、パナマ、パラグアイ、ポルトガル、シンガポール、南アフリカ、スウェーデン、スイス、台湾、タイ、イギリス、ベトナムなど、世界45以上の国及び地域で登録している(甲40?甲85)。
以上の事実を総合すれば、申立人が2012年1月に社名変更する前の旧名称の主要部であり、かつ、創業者の氏姓に相当する「HANSEN」の名及びその所有格を表す「HANSEN’S」の商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、前者が申立人である米国有名飲料メーカーの社名の略称として、後者が申立人の業務に係る果実飲料、ソーダ水、炭酸飲料、清涼飲料、茶飲料、エネルギー飲料などの種々の飲料製品を表示するものとして、本国米国などの外国で広く認識されていただけにとどまらず、日本国内の取引者、需要者の間でも広く知られていたことが明らかである。
(2)本件商標と引用各商標との類否
本件商標は、中国語簡体の文字「[漢]森」(「漢」の中国語簡体文字を「[漢]」と表示する。以下同様。)と英文字「HANSEN」(中間の文字「NSE」の上部に弧状のデザインが付されている。)を上下二段に平行に横書きしてなるものであり、上段と下段の文字は、常に一体不可分の識別標識として認識、理解されるものとはいえず、それぞれが独立の識別標識として機能し得るものであるから、本件商標からは、「HANSEN」の文字に基づいて、「ハンセン」の称呼及び「Hansen氏(人名)」との観念が生じることが明らかである。また、仮に、上下段の文字が分離し得ない一体的なものとして把握されるとしても、上段の文字「[漢]森」は下段の文字「HANSEN」の発音に対応する中国語表記として認識、理解されるから、本件商標からは、「ハンセン」の称呼及び「Hansen氏(人名)」との観念が生じることが明らかである。
これに対して、引用各商標は、いずれも「HANSEN’S」の文字を顕著に有する構成からなるものであり、当該文字部分が独立の識別標識として認識、理解され得るものであるから、当該文字部分に基づいて、「ハンセンズ」の称呼及び「Hansen氏(人名)の」との観念が生じる。
そこで、本件商標の構成文字「HANSEN」と引用各商標(又はその主要部)の構成文字「HANSEN’S」の外観を比較すると、両者は、看者の印象に最も残りやすい語頭から連続する6文字「HANSEN」を共通にし、その相違点は、英語で所有格を作るときに語尾に付加する文字「’S」(アポストロフィエス)の有無のみであるから、外観において類似する。
また、本件商標から生じる称呼「ハンセン」と引用各商標から生じる称呼「ハンセンズ」を比較すると、両者は、看者の印象に最も残りやすい語頭から連続する4音「ハンセン」を共通にし、一般に不明瞭に発音されやすい語尾の「ズ」の有無のみが相違する。したがって、それぞれを一連に発音するときには、容易に聴別することが困難であるから、両者は、称呼においても類似する。
さらに、観念においても、本件商標と引用各商標(又はその主要部)は、前者が「Hansen氏(人名)」、後者がその所有格の「Hansen氏(人名)の」を意味するというごくわずかな差異であり、共に「Hansen」という氏姓を直感させる点で共通するものであるから、類似する。
よって、本件商標は、外観、称呼及び観念のすべてにおいて引用各商標に類似することが明らかである。
(3)本件指定商品と申立人の取扱商品との関連性
本件商標は、第33類「果実のエキス(アルコール分を含む。),アラック酒,蒸留酒,ぶどう酒,リキュール,スピリッツ(飲料),ブランデー,ウイスキー,果実入りアルコール飲料,アルコールエッセンス,ウォッカ,米を原料とする酒,消化促進酒(リキュール及びスピリッツ)」に使用するものである。当該指定商品は、申立人が1930年から現在に至るまで継続して「HANSEN’S」をはじめとする引用各商標を使用している商品と「飲料」という点で同種のものであり、また、これらは、一般に同一主体又はその関連会社によって製造販売されることも多いものであって、販売場所に関しても同一店舗内の隣接する売り場で販売されることが通常である。
加えて、本件商標の指定商品中の「果実のエキス(アルコール分を含む)、アラック酒、リキュール、ぶどう酒、ブランデー、果実入りアルコール飲料」は、申立人の主要商品の一つである果実飲料と原材料(果実)を共通にすることも明らかである。
さらに、アルコールを飲めない場合や制限している場合に、アルコール飲料の代わりに、アルコールを含有しない炭酸飲料、アイスティー、ウーロン茶、ミネラルウォーター、フルーツジュースなどのソフトドリンクで代用することは日常普通に行われており、本件商標の指定商品と申立人の商品は、その用途や需要者の範囲も一致ないし重複することが多いものである。
このような事柄に照らせば、本件商標が使用される指定商品と申立人の業務に係る商品は、極めて関連性が深い商品であることが明らかである。
(4)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
上記のとおり、本件商標は、その登録出願前から申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていた「HANSEN’S」を始めとする「HANSEN」の名を含む引用各商標と類似するものであり、かつ、その指定商品は、申立人が引用各商標を使用する飲料製品と製造販売部門、原材料、用途、効能、需要者の範囲などが一致ないし重複することが多いものであり、これらと密接に関連するものである。
したがって、本件商標がその指定商品に使用された場合には、申立人と組織的又は経済的な関連を有する者の取扱いに係る商品と誤信され、その出所について混同を生ずるおそれがあることが明らかである。
また、申立人と無関係の者により「HANSEN」の名が申立人の商品と関連が深い本件指定商品に使用された場合には、引用各商標の出所表示力が希釈化することも明らかである。
さらに、商標権者の本国中国では、申立人は、商標「HANSEN’S」について、1992年に出願し、1994年に登録を取得している(甲47)。本件商標の登録出願時(2011年12月6日)の申立人の名称は、「Hansen Beverage Company」(ハンセン社)であった。これらの事実に照らせば、飲料製品を取り扱う商標権者が、申立人の当時の名称の略称「HANSEN」及びその商標「HANSEN’S」について不知であったとは考え難い。
したがって、商標権者による本件商標の指定商品についての採択使用は、「HANSEN’S」その他の「HANSEN」の名を含む引用各商標の顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当することが明らかである。
(5)本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標は、その登録出願時に申立人の名称の略称として広く認識されていた「HANSEN」の文字を顕著に含むものであり、上記のとおり、申立人の取扱いに係る飲料製品と密接に関連する商品に使用されるものである。
したがって、当該指定商品に使用される本件商標に接した需要者は、申立人(ハンセン社)を直感し、当該指定商品と申立人との間に何らかの経済的又は組織的な関係があるかのように誤った認識がなされる結果、申立人の人格権が毀損されることが明らかである。本件商標の登録は、申立人の承諾を得ていない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当することが明らかである。
(6)本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
上記のとおり、商標権者の本国中国で申立人の商標「HANSEN’S」が1992年に出願され、1994年に登録されている事実と、本件商標の登録出願時の申立人の名称が「Hansen Beverage Company」であったという事実に照らせば、飲料製品を取り扱う商標権者が、申立人の当時の名称の略称「HANSEN」及びその商標「HANSEN’S」について不知であったとは考え難い。
したがって、本件商標は、その登録出願前から少なくとも米国などの外国で申立人の飲料製品を表示するものとして広く認識されていた「HANSEN’S」が第33類の商品について未登録であることに便乗し、これと明らかに類似する商標を先取り的に登録しようとした不正目的による出願と推認せざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当することが明らかである。
(7)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、その登録出願時(2011年12月6日)に、少なくとも米国などの外国で飲料製品メーカーとして広く認識されていた申立人の名称「Hansen Beverage Company」の略称「HANSEN」と一致する「HANSEN」の文字とその中国語の音訳文字から構成されるものであり、また、その登録出願時に、少なくとも米国などの外国で申立人の飲料製品に使用される商標として広く認識されていた「HANSEN’S」その他の「HANSEN」の名を含む引用各商標と明らかに類似するものである。
本件商標は、申立人が米国では1930年代から継続して引用各商標を使用している飲料製品(第30類,第32類)と密接に関係する第33類の飲料製品を指定して登録したものであるから、申立人の旧名称の略称に当たる「HANSEN」の名と引用各商標の周知性及び顧客吸引力にフリーライドする意図をもって採択されたものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神及び国際信義に反することが明らかであるから、公序良俗を害するおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当することが明らかである。
(8)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同項第8号、同項第19号及び同項第7号に該当するものであるから、同法第43条の2の規定により、その登録が取り消されるべきである。

4 当審の判断
(1)「HANSEN」の名称及び引用各商標の周知・著名性について
申立人が提出した証拠によれば、その大部分が「MONSTER ENERGY」ブランドに係る証拠であり、引用各商標が、我が国を含む諸外国において、商標登録されていること、主として引用商標2の態様と同様の「Hansen’s」の文字が付された清涼飲料・炭酸飲料が販売されていることは認められるが、引用各商標及び「HANSEN」の文字からなる標章が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は同人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されていると認めるに足りる証拠はない。まして、「HANSEN」の文字が、申立人の著名な略称として一般に受け入れられていると認めるに足りる証拠もない。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用各商標の周知性の程度
上記(1)のとおり、引用各商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
イ 本件商標と引用各商標との類似性
本件商標は、「[漢]森」の文字と「HANSEN」の欧文字(中間の文字「NSE」の上部に弧状の線が付されている。)を上下二段に横書きしてなるところ、上段の文字部分は、大きく表され、看者に強い印象を与えるものであるが、中国語の簡体字である「[漢]」の漢字及び「森」の漢字からなるものであり、直ちに読みを特定することが困難である。それに比較して、下段の欧文字部分は、「HANSEN」の文字から容易に「ハンセン」と読むことができるものであり、上段の文字が実際に中国語において「ハンセン」と発音される漢字であることからすれば、下段の欧文字が上段の漢字の読みを特定しているとみてもさほど不自然なことではない。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「ハンセン」の称呼が生じ、特定の観念は生じないとみるのが相当である。
他方、引用各商標は、それぞれ、「Hansen’s」の欧文字若しくはそれを含むもの又はややデザイン化された「Hansen’s」の欧文字若しくはそれを含むものであるところ、「Hansen’s」の欧文字部分からは、「ハンセンズ」の称呼が生じるものであり、引用各商標の周知性の程度が上記アのとおりであることをも考慮すれば、特定の観念は生じないとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、その構成中の「[漢]森」の文字が看者に強い印象を与えるものであり、引用各商標の構成中の「Hansen’s」の欧文字部分と共通する綴りを一部に有しているとしても、本件商標と引用各商標とは、外観において著しい差異を有していることから、これらは十分に区別し得るものである。
また、本件商標から生ずる「ハンセン」の称呼は、引用各商標から生ずる「ハンセンズ」と比較した場合、語尾における「ズ」の有無により、聞き誤るおそれはないといえるものであり、さらに、両商標からは、特定の観念が生じないことから、観念において比較することはできない。
以上によれば、本件商標と引用各商標とは、観念において比較することができないとしても、称呼において聞き誤るおそれはなく、外観における著しい差異により十分に区別できるものであるから、本件商標と引用各商標とが類似する商標とはいえない。
ウ 引用各商標の独創性の程度
引用各商標の構成中の「Hansen」の文字は、申立人も該文字が氏姓であると主張するとおり、英和辞典などにおいてその旨の記載があることからすれば、該構成文字は、少なくとも既成の語であるといい得るものであり、その独創性は低いものであるといわざるを得ない。
エ 本件商標の指定商品と引用各商標の使用に係る商品との関連性
本件商標の指定商品は、前記1のとおり、第33類「果実のエキス(アルコール分を含む。),アラック酒,蒸留酒,ぶどう酒,リキュール,スピリッツ(飲料),ブランデー,ウイスキー,果実入りアルコール飲料,アルコールエッセンス,ウォッカ,米を原料とする酒,消化促進酒(リキュール及びスピリッツ)」である一方、引用各商標の使用に係る商品は、清涼飲料などであるところ、これらは、アルコールを含むか含まないかの違いはあるとしても、販売場所、用途、需要者などが一致することが多いものであることから、本件商標の指定商品と引用各商標の使用に係る商品との関連性は、高いといえるものである。
オ 商品の出所の混同を生ずるおそれ
上記アないしエのとおり、本件商標と引用各商標とは、本件商標の指定商品と引用各商標の使用に係る商品についての関連性が高いとしても、引用各商標の周知性は認めることができないものであるばかりでなく、引用各商標の独創性も低く、また、両商標は類似するものではないから、これらを総合して考察すれば、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、申立人又は引用各商標を想起、連想させるものとは認められず、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものとはいえない。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性について
申立人は、本件商標が申立人の著名な略称「HANSEN」を含む商標である旨述べているが、申立人の提出に係る証拠によれば、上記(1)のとおり、「HANSEN」の文字からなる標章が、本件商標の登録出願時に我が国において、申立人の著名な略称を指し示すものとして一般に受け入れられていたとの事実は、これを認めるに足りる証拠はない。
してみれば、本件商標が申立人の著名な略称を含むものであるとする申立人の主張は、その前提を欠くものであり、採用することはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものとはいえない。
(4)本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
上記(1)のとおり、引用各商標及び「HANSEN」の文字からなる標章が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は同人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されていると認めることはできないものであり、また、上記(2)イのとおり、本件商標と引用各商標とは類似するものではないから、申立人の提出に係る証拠を勘案しても、本件商標権者が、不正の目的をもって本件商標を登録出願し、商標登録を受けたと認めるに足る具体的な事実を見いだすことはできない。
そうとすれば、本件商標は、引用商標の出所表示機能を希釈化させ、申立人の名声を毀損させる目的、その他不正の目的をもって使用するものとは認め難いものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものとはいえない。
(5)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、本件商標が、申立人の旧名称の略称に当たる「HANSEN」の名と引用各商標の周知性及び顧客吸引力にフリーライドする意図をもって採択されたものといわざるを得ない旨述べているが、「HANSEN」の文字からなる標章及び引用各商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は同人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されていると認めることはできないこと、また、本件商標と引用各商標とが類似するものではないこと、上記のとおりであり、申立人の主張は、その前提を欠くものである。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標といえないから、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
(A)本件商標


(B)引用商標2(登録第2705566号商標)

(C)引用商標4(登録第4926692号商標)

(D)引用商標5(登録第5488749号商標)


異議決定日 2013-03-11 
出願番号 商願2011-87369(T2011-87369) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (X33)
T 1 651・ 22- Y (X33)
T 1 651・ 222- Y (X33)
T 1 651・ 23- Y (X33)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安達 輝幸北口 雄基 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 田中 敬規
酒井 福造
登録日 2012-05-11 
登録番号 商標登録第5492341号(T5492341) 
権利者 内蒙古漢森酒業集団有限公司
商標の称呼 カンシン、ハンセン 
代理人 柳田 征史 
代理人 佐久間 剛 
代理人 中熊 眞由美 

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