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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y16
審判 一部取消 商標の同一性 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y16
管理番号 1272639 
審判番号 取消2011-300247 
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-03-04 
確定日 2013-04-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4763746号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4763746号商標の指定商品及び指定役務中、第16類「写真,写真立て,印刷物,文房具類」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4763746号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成14年12月10日に登録出願、第16類「写真,写真立て,印刷物,文房具類」及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定商品及び指定役務として、平成16年4月16日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成23年3月24日にされたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のとおり述べた。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中の「写真,写真立て,印刷物,文房具類」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
(2)平成23年5月20日付け答弁(以下「第1答弁」という。)に対する弁駁
ア 第1答弁における乙号証について
(ア)乙第1号証は、一枚の用紙の表裏に印刷を行い、4つ折り状態とした冊子で、表紙該当部分に「ビリケン/ファミリークラブ」と「VOL.17」と表示されている。また、内面に、「ビリケン」(本件商標中の右部分と同じ態様。本項(2)において、以下「使用商標1」という。)と「FANCLUB REPORT VOL.17」が図形と共に表されている。被請求人は、平成21年12月発行としているが、この冊子のいずれの頁においても発行年月日を確認することはできず、月間あるいは年間の発行部数、冊子の価格も表示されていない。
(イ)乙第2号証は、同じく一枚の用紙の表裏に印刷を行い、4つ折り状態とした冊子で、表紙該当部分に「ビリケン」(本件商標中の左部分と同じ態様。本項(2)において、以下「使用商標2」という。)と表示されている。また、内面に、使用商標1と「FANCLUB REPORT VOL.20」が図形と共に表されている。被請求人は、平成21年12月発行としているが、この冊子のいずれの頁においても発行年月日を確認することはできず、月間あるいは年間の発行部数、冊子の価格も表示されていない。
(ウ)乙第3号証は、私製年賀葉書であり、表面に使用商標1を着色楕円図形を背景に白抜きで表すとともに「ビリケン・ファミリークラブ」と表示し、裏面に使用商標1を着色楕円図形を背景に白抜きで表した標章が左肩に表されている。
イ 本件商標と使用商標との対比
本件商標は、通常の文字表示である使用商標2と図案化した使用商標1を左右に並べて結合した商標であり、使用商標2単独でもなく、使用商標1単独でもない。このような登録商標を使用しているというがためには、登録商標の態様である「ビリケン ビリケン」をそのまま使用していなければならないことはいうまでもない。
しかるに、乙第1号証ないし乙第3号証に示す態様は、使用商標1と使用商標2をそれぞれ別個に使用するものであり、到底本件商標をそのまま使用しているとはいい得ないものである。
したがって、登録商標を使用していないことは明白である。
ウ 商標法上の商品について
(ア)商標法上の商品とは、商取引の目的物として流通性のあるもの、すなわち、一般市場で流通に供されることを目的として生産される有体物であると解すべきである。
したがって、会員に対するサービスの意味を持つ宣伝文書は、商取引の目的物とはいい難く、また、刊行物としての交換価値は認められないので「商品」ではない。さらに、宣伝広告のため、無償で配布されるものは商品から除外される。
(イ)乙第1号証及び乙第2号証は、「ビリーBilly」と「ケンKen」、すなわち「ビリケン Billyken」グループのファミリークラブが会員に無償で提供する宣伝文書の類であり、印刷日、発効日、印刷物としてのコード記号等の記載は一切なく、金額、発行部数なども表示されていない。
したがって、「ビリケン Billyken」グループのファミリークラブ会員以外に対して有償で販売されるものではなく、市場において独立して商取引の対象として一般市場を転々流通し得るものではない。
(ウ)乙第3号証は、「ファンクラブ年賀状」であるが、これとても「ビリケン Billyken」グループの宣伝文書にほかならず、ビリケン・ファミリークラブが「ビリケン Billyken」グループの宣伝のため会員に発信されるものと考えられ、この私製年賀状自体が市場において独立して商取引の対象として転々流通し得るものではなく、「印刷物」の一つとしての「絵はがき」に該当しないことは明白である。
エ まとめ
以上のとおり、乙第1号証ないし乙第3号証は、「ビリケン Billyken」グループの宣伝広告文書にほかならず、第16類「印刷物」に該当しないことは明白である。
また、これらの資料に表示されている使用商標1及び2は、宣伝広告の対象である「ビリーBilly」と「ケンKen」、すなわち「ビリケン Billyken」グループを表示するものにすぎないものであって、乙第1号証ないし乙第3号証の自他商品識別標識、すなわち商標として使用されているものでないことは明らかである。
(3)平成24年3月16日付け回答書(同年1月18日付け審尋に対する回答:以下「回答書」という場合がある。回答書に添付の乙第1号証ないし乙第8号証は、順に乙4号証ないし乙第11号証と読み替える。)に対する弁駁
ア 被請求人は、乙第4号証(請求書1)によってファンクラブ会報の作成者が商標権者であることを証明したとしているが、乙第1号証及び乙第2号証と乙第4号証との関係が全く不明であり、両者は無関係のものといわざるを得ないから、ファンクラブ会報の作成者が商標権者であることが立証されたとはいえない。
イ 被請求人は、乙第5号証(請求書2)及び乙第6号証(請求書3)によって、「東京都港区六本木5-5-1 ロアビル7F」の「ビリケン・ファミリークラブ」は商標権者が契約・支払をして業務上使用していることを証明したとしているが、商標権者が「六本木共同ビル株式会社」に対して賃貸料を支払い、「ロアビル7F」の商標権者が電話料金を支払っていることを証明し得たとしても、商標権者が「ビリケン・ファミリークラブ」を運営している点までは立証されているとはいい得ない。
ウ 被請求人は、乙第7号証ないし乙第11号証を提出しているが、これらによっても、商標権者が「ビリケン・ファミリークラブ」を運営していると一義的には解釈することはできない。
エ 乙第7号証ないし乙第11号証は、乙第1号証ないし乙第3号証と同様に、会員に対するサービスとして、また、宣伝広告のため無償で配布される宣伝文書・宣伝葉書であって、市場において転々流通される商取引の目的物とはいい難く、刊行物として市場における交換価値は認められないから、商標法上の「商品」とはいい得ない。
オ 乙第7号証ないし乙第9号証における「ビリケン」の表示は、「ビリケン」というグループ名の表示にすぎず、配布パンフレットの内容を表示したタイトルであって、配布パンフレットの商標ではない。
カ 乙第10号証及び乙第11号証において「ビリケン」の表示がみられるが、これは「ビリケン」というグループからの年賀状であることを表示するにすぎず、私製年賀葉書の出所を表すものではない。
キ 乙第7号証ないし乙第11号証において使用されている商標についても、乙第1号証ないし乙第3号証と同様に、本件商標の使用でないことは明白である。
ク 以上のとおり、被請求人が提出する乙第1号証ないし乙第11号証によっては、本件審判の請求に係る指定商品中の「印刷物」に本件商標を使用していることは何ら立証されていない。
(4)平成24年5月29日付け答弁(以下「第2答弁」という。第2答弁に添付の乙第1号証ないし乙第16号証は、順に乙第12号証ないし乙第27号証と読み替える。)に対する弁駁
ア 乙第21号証及び乙第22号証
乙第21号証及び乙第22号証によって判明するのは、有限会社フジインターシードが、ビリケンボールペン用中紙、ボールペン、アッセンブリを商標権者に納品して請求したであろうこと、及びそのボールペンが乙第21号証の写真で示されているボールペンであろうということのみである。
乙第21号証で示されるボールペンについての販売事実は証明されておらず、商標権者が販売する商品とは解されない。
被請求人は、「ビリケン」が関西出身の「ビリー」と「オクダ ケン」の2人よるユニットであり、CDを発売したり、各地でライブを行ったりするアーティストであると説明しており、商標権者は「ビリケン」の所属事務所で「ビリケン」の公式ファンクラブである「ビリケン・ファミリークラブ」を運営していると主張している。
そうだとすると、「ビリケン夏祭りを記念して製作したボールペン」というのは、常識的に、「ビリケン夏祭り」に集まったファンに対し、感謝の意味合い、また、ビリケンユニットの宣伝広告の意味合いで無料配布される記念品というべきもので、商標権者が販売した商品ではあり得ない。
このようなグッズに商標が表示されていたとしても、商品「ボールペン」についての本件商標の使用といい得ないことは明白である。
イ 乙第23号証及び乙第24号証
被請求人は、乙第23号証として「ペンケース」の写真、乙第24号証として「クリアケース」の写真をそれぞれ提出しているが、これらの商品が商標権者の販売に係る商品であることの立証はなく、また、2009年頃に製作したと主張するのみで製作・納品会社の請求書は提出されておらず、実際に2009年に製作されたものかどうかも明らかでない。
要するに、このような商品が存在しても、商標権者が要証期間に販売した商品とはいえず、恐らく宣伝広告・販促品の一として、いつの日か配布された品物であろうと想像するのみである。
ウ 乙第25号証
被請求人は、乙第25号証として「封筒」を提出しているが、これが本件指定商品の一であり、商標権者の商品として販売されているとの主張もなされておらず、使用事実を証明するための証拠としては価値のないものである。
エ 乙第26号証
被請求人は、乙第26号証として「チラシ」を提出しているが、ビリケン・ファミリークラブの会員に対して配布される出演予定のイベントを知らせるチラシは、商標法上の商品「印刷物」に当たらないことは明白である。また、「これからのイベント出演予定」において「※2008年1月現在の予定です。」と記載されているとおり、当該チラシは2008年1月中に配布されたものと推定されるところ、これは要証期間内のものでないことが明白である。
オ 乙第27号証
被請求人は、乙第27号証として「CDに同封されていた印刷物」を提出しているが、CDにその内容を説明した印刷物が同封されるのは通常行われているところであり、その印刷物はCDの付属物として意味があるのみで、独立して取引の対象となる商品でないことは明白である。
カ 使用商標と本件商標
「ビリケン」は、「ビリー」と「オクダ ケン」の2人によるユニット名であり、被請求人が使用事実を示すものとして提出する証拠は、いずれもこのユニット名を表示したにすぎず、あくまでも当該ユニットの宣伝・広告のために使用商標を使用しているにすぎない。
また、新たに提出された乙第21号証ないし乙第27号証は、上記のとおり、いずれも本件商標の使用事実を証明する証拠価値を有しないものである。
さらに、全く表現態様の異なる二種類のビリケンを左右に併記して登録した商標は、商標権者自身、何らかの意図をもって採用した商標の態様であり、いずれか一方の使用、独立して個別に表示される使用態様は、登録商標に類似する範囲の使用といい得ても、登録商標と外観上明らかな相違が生じるもので、同一性が認められるべきではない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のようにと述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第40号証(枝番を含む。なお、前記2に記載のとおり、回答書に添付の乙第1号証ないし乙第8号証は、乙第4号証ないし乙第11号証と、第2答弁に添付の乙第1号証ないし乙第16号証は、乙第12号証ないし乙第27号証と読み替えている。さらに、平成24年12月20日付け答弁書に添付の乙第17号証ないし乙第20号証は、順に乙第28号証ないし乙第40号証と読み替える。)を提出した。
(1)平成23年5月20日付け答弁(第1答弁)
本件商標は、指定商品及び指定役務中の「印刷物」(第16類)について継続して3年以上使用している。
なお、証拠方法において、乙第1号証として「ファンクラブ会報(平成21年12月発行)」、乙第2号証として「ファンクラブ会報(平成22年12月発行)」及び乙第3号証として「ファンクラブ年賀状(平成22年12月作成)が提出されている。
(2)平成24年3月16日付け回答書
歌手「ビリケン」の所属事務所が商標権者であり、「ビリケン」の公式ファンクラブ(名称:ビリケン・ファミリークラブ)を運営し、ファンクラブの活動において、各印刷物を作成・発行しているのも商標権者である(乙4)。
また、ファンクラブ会報(乙1,乙2)に記載してある住所及び電話番号について、商標権者が契約・支払をして業務上使用している(乙5,乙6)。
新たな証拠として、「ビリケンのあしあと?ビリケン マネージャー日記?」(乙7?乙9)及び「ファンクラブ年賀状」(乙10,乙11)を提出する。
なお、「ビリケン」は、2003年にデビューして以来継続的に活動しており、それに伴い公式ファンクラブである「ビリケン・ファミリークラブ」も業務を行っている。
(3)平成24年5月29日付け答弁(第2答弁)
新たな証拠(乙12?乙27)を追加して証明するとおり、本件審判の請求の登録前3年以内に商標権者は本件商標をその指定商品「文房具」等について使用しているものである。
ア 「ビリケン」について
「ビリケン」は、関西出身の「ビリー」と「オクダ ケン」の2人によるユニットである。2003年2月にCDをリリースして以来、現在に至るまで多数のCDを発売したり各地でライブを行ったりしている(乙12?乙14)。
2004年6月には日本赤十字社イメージソングをリリースし、2010年9月にはテレビ東京系人気TVアニメ「毎日かあさん」のオープニングテーマ曲及びエンディングテーマ曲をリリースする等、年齢性別を問わず幅広い世代に人気のあるアーティストである(乙15)。
イ 「株式会社ケンプファー」について
「株式会社ケンプファー」は、上記したアーティスト「ビリケン」の所属事務所であり、「ビリケン」の公式ファンクラブである「ビリケン・ファミリークラブ」を運営している。「ビリケン・ファミリークラブ」は、主にファンクラブの運営、ファンクラブ会報の製作・発行、Tシャツ・エコバック・タオルといったオリジナルグッズの販売を行っている(乙16)。
ウ 商標権者と商標の使用者について
商標権者は、住所を「東京都港区麻布台3丁目3番9号 飯倉三生マンション203」とし、名称を「株式会社ケンプファー」とするものである。乙第1号証ないし乙第3号証には、「お問合せ」の欄に「ビリケン・ファミリークラブ」及び「東京都港区六本木5-5-1 ロアビル7F」と記載されている。これは、商標権者である「株式会社ケンプファー」が「ビリケン・ファミリークラブ」を運営しているからである。「株式会社ケンプファー」は、「東京都港区六本木5-5-1 ロアビル7F」のオフィスを借りて、歌手ビリケンの専用の窓口(公式ファンクラブ)である「ビリケン・ファミリークラブ」を継続して運営している(乙17?乙19)。また、「株式会社ケンプファー」がビリケンファンクラブ(ビリケンFC)の入会金の管理をしていた(乙20)。
エ 乙第21号証「ボールペン」
乙第21号証は、商標権者が2008年8月23日に開催されたビリケン夏祭りを記念して製作したボールペンである。ボールペンの最上部に本件商標が表示されている。ボールペンの下部には、本件審判の請求の登録前3年以内である「2008.8.23」が表示されている。「ボールペン」は、第16類「文房具類」に属する商品である。
乙第22号証は、当該ボールペンに関する請求書である。これによれば、要証期間内である2008年8月31日に、ボールペンを製作した有限会社フジインターシードが商標権者あてにボールペン製作にかかった費用を請求していたことが明らかである。
オ 乙第23号証「ペンケース」、乙第24号証「クリアケース」及び乙第25号証「封筒」
乙第23号証及び乙第24号証は、2009年頃に商標権者がビリケンのオリジナルグッズとして製作した「ペンケース」及び「クリアケース」である。
乙第25号証は、商標権者がビリケンのファンクラブ会報等を定期的に郵送する際に使用していた封筒である。
乙第23号証ないし乙第25号証に表された「ビリケン」の文字は、本件商標が「ビリケン」の文字を左右に併記して書してなるのに対し、左側又は右側の片方の使用であるが、「ビリケン」の語が我が国において特定の意味合いをもって知られた語でないこと、本件商標の片方の使用を欠くことで本件商標との間で観念について変動を伴うものではないこと及び本件商標の左右の態様の各語が共に「ビリケン」とごく自然に称呼されるものであることに、登録商標が左右2段書きの態様からなる場合に左右のどちらか一方を使用することは世間一般によくあることを併せ考慮すると、本件商標と上記使用商標とは社会通念上同一の商標というべきものである。
カ 乙第26号証「チラシ」
乙第26号証は、商標権者が2008年3月1日から同年4月11日までのビリケン出演予定のイベントを知らせるためのチラシである。「チラシ」は、第16類「印刷物」に属する商品である。
キ 乙第27号証「印刷物」
乙第27号証は、2010年9月にテレビ東京系人気TVアニメ「毎日かあさん」のオープニングテーマ曲及びエンディングテーマ曲をリリースした際に、CDに同封されていた印刷物である。CDに同封されていた印刷物は、第16類「印刷物」に属する商品である。
(4)平成24年12月20日付け答弁(以下「第3答弁」という。)
新たな証拠(乙28?乙40)を追加して、第2答弁で提出した「ボールペン」及び「卓上カレンダー」について、主張、立証する。
ア ボールペン
乙第21号証で提出した「ボールペン」について、請求人は、当該ボールペンがファンに対する感謝の意味合い及び「ビリケン ユニット」の宣伝広告の意味合いで無料配布される記念品であり、被請求人が販売した商品ではない旨主張する。
当該ボールペンは、2008年8月23日に行われたビリケンの夏祭りライブイベントにおいて、事前に3,000円のライブチケットを購入したファンに対しチケットと引換えに手渡されたものであって、当該ボールペン単独で無料配布されていたわけではない。当該ボールペンは、有料のチケットを購入しなければ入手できない性質のものであることから、このチケット代金にはボールペンの製作費用も含まれており、不特定多数の人々に無料配布される販促品とは本質的性質を異にするものである。
したがって、被請求人は、ファンからチケット代金という形でボールペンの製作費用を回収しており、当該ボールペンは商取引の対象となったものである。
また、人気アーティストのロゴや写真が入ったボールペンをはじめとする限定グッズが、ネット上のオークション等を通じて有料で譲渡されることは少なくなく、それ自体独立した交換価値を有し、商取引の対象となるものである。
例えば、ライブ会場で有料のチケットを購入したファンが当日入手した無料のボールをオークションに出品し、少なくとも45,000円以上で売られており(乙28)、同じく、ライブ会場で有料のチケットを購入したファンが当日入手した無料の銀テープをオークションに出品し、売られている(乙29?乙31)。さらに、非売品のライブツアーグッズであるキーホルダーが、ネット上のオークションで売られている(乙32)。
このように、時代の変遷に伴い様々な取引が登場するようになってきている今日の取引の実情や商品の存在も考慮されるべきである。
以上より、当該ボールペンは、「ビリケン ユニット」の宣伝広告の意味合いで無料配布される記念品ではなく、商標法上の「商品」に該当するものである。
イ 卓上カレンダー
第2答弁において提出した乙第16号証(5葉目)の卓上カレンダーは、2008年4月から2009年3月までのものであり、要証期間内であることは明らかである(乙33)。当該カレンダーの表紙には、「ビリケンカレンダー」と書されており、右下に小さく「KAMPFER」の文字が書されていることから、当該カレンダーの製造販売が商標権者である株式会社ケンプファーによるものであることは明白である(乙33・34)。
また、当該カレンダーは、ビリケンのオフィシャルホームページにおいて税込2,000円で販売されていたことから(乙16)、それ自体が独立の商取引の対象物たる商品として取引の流通過程に置かれていた商標法上の商品である。
さらに、「カレンダー」は、第16類「印刷物」に属する商品である。
なお、乙第35号証は、当該カレンダーの請求書であるところ、有限会社フジインターシードが商標権者に対し、当該カレンダーの製作にかかった費用を請求したことが明らかである。
そして、乙第36号証に示した使用商標「ビリケン」は、本件商標の左側部分のみが使用されているという点において本件商標と相違するとしても、この程度の変更は、商取引の実際においては通常行われているところであり、本件商標の要部である「ビリケン」の識別性に影響を与えない程度の表示態様の変更とみるのが相当である。
したがって、乙第36号証に示した使用商標は、本件商標の左側の「ビリケン」のみであるが、左側の「ビリケン」も右側のロゴ化した「ビリケン」も「ビリケン」であることに変わりがなく、本件商標の同一性を逸脱しない範囲での変更であることから、本件商標と社会通念上同一の商標であると解するべきである。
また、乙第37号証に示した毛書体の「ビリケン」についても、書体が異なることにより、その表現方法に若干の差異を有するが、本件商標と同様に「ビリケン」の称呼が生じること、「バンドのビリケン」の観念を共通にすること、また、本件商標の識別性に影響を与えない範囲での変更とみるのが相当であることから、社会通念上同一の商標が使用されているというべきである。
(5)結論
以上のとおり、本件商標に係る商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内にその商標に係る第16類の指定商品中の「文房具」及び「印刷物」に含まれる商品について本件商標を使用しているものである。

4 当審の判断
(1)本件審判の請求について
商標法第50条第1項に規定する商標登録の取消しの審判にあっては、その第2項において、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、その使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにした場合を除いて、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れないとされている。
本件審判は、本件商標の指定商品及び指定役務中、第16類「写真,写真立て,印刷物,文房具類」(以下「請求に係る指定商品」という。)についての登録の取消しを請求されたものであり、これに対し、被請求人は、請求に係る指定商品中の「文房具,印刷物」について本件商標を使用しているから、本件審判の請求は成り立たない旨答弁し、乙各号証を提出している。
(2)本件商標及びそれと社会通念上同一と認められる商標について
ア 本件商標の使用の立証に係る商品が多数に及んでいるため、まず、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が使用されている商品が存在するかどうかについて、検討する。
商標法において、「商標登録出願は、・・・商標ごとにしなければならない。」(商標法第6条第1項)ものであり、それが登録された場合、「登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない。」(同法第27条第1項)とされているものである。そして、商標法第50条第1項に規定する商標登録の取消しの審判においては、使用されていなければならない「登録商標」として、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。」と規定され、その使用の範囲を拡大して社会通念上同一と認められるものを含ませることを明確化している。
本件商標は、別掲のとおり、横書きした「ビリケン」の文字を、左右に2つ並べた構成からなるところ、左に位置する「ビリケン」の文字部分は、語頭の「ビ」と末尾「ン」の文字が、中間部に位置する「リケ」の文字部分よりやや大きく表され、また、右に位置する「ビリケン」の文字部分は、末尾の「ン」の文字の跳ね上がる右部分の下部を左横に長く伸ばし、「ビリケ」の文字部分の下線のように表したものである。そして、態様の相違する左右2つの「ビリケン」の文字は、1文字程度のスペースを介しているものの、横一列に、まとまりよく一体的に表されているものである。
また、本件商標の構成中の左右2つの「ビリケン」の文字は、どちらかが片方に付随して装飾的に付加されているというような関係は認められず、それぞれが本件商標を構成する要素として明確に存在しているとみるのが相当である。
してみれば、本件商標と社会通念上同一と認められる商標は、外観において、態様の相違する左右2つの「ビリケン」の文字を連続して視認できる構成態様の使用であることが必要であり、また、本件商標は、その構成文字に相応して、「ビリケンビリケン」の称呼を生ずることは明らかであるから、「ビリケン」の称呼のみしか生じない使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることはできないとみるのが相当である。
イ 被請求人が提出した乙各号証について、上記アで述べた判断に適合する本件商標と社会通念上同一と認められる商標が使用されているかどうかについてみるに、乙第21号証は、商標権者が2008年8月23日に開催されたビリケン夏祭りを記念して製作したボールペンの写真とするものである。
乙第21号証の1の1葉目には、ボールペンの写真の画像が表されており、その最上部に本件商標の左側の「ビリケン」の文字と同一視できる文字が表されている。乙第21号証の1の2葉目には、ボールペンの写真の画像が表されており、その最上部に本件商標の右側の「ビリケン」の文字と同一視できる文字が表されている。乙第21号証の1の2葉目の画像は、上記乙第21号証の1の1葉目に表示されているボールペンの写真の画像の裏面が表示されていると認められる。
乙第21号証の1の1葉目に表されている「ビリケン」の文字と2葉目に表されている「ビリケン」の文字は、本件商標の左側の「ビリケン」の文字と右側の「ビリケン」の文字であるとそれぞれ同一視でき、連続して「ビリケン ビリケン」と表示されているものであるから、この使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用と認められる。
したがって、乙第21号証における商品「ボールペン」についての使用されている商標は、本件商標と社会通念上同一の商標であると認められる。
しかしながら、そのほかの乙各号証においては、本件商標の左側の「ビリケン」の文字と同一視できる文字や本件商標の右側の「ビリケン」の文字と同一視できる文字が単独で使用されていることを確認できるものの、これらは、外観において、本件商標の態様の相違する左右2つの「ビリケン」の文字を連続して視認できる構成態様の使用であるものではなく、また、「ビリケン」の称呼は生じても、「ビリケンビリケン」の称呼を生ずることがないことは明らかであるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用とみることはできないものであり、その他、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が使用されている商品が表示されていると認められる証拠はない。
(3)「ボールペン」(乙21)に係る本件商標の使用が「商標法上の商品」についての使用に該当するか否かについて
上記(2)において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が使用されていると認められる「ボールペン」(乙21)について、被請求人は、「『ボールペン』は、商標権者が本件審判の請求の登録前3年以内である2008年8月23日に行われたビリケンの夏祭りライブイベント用に製作したものである。『ボールペン』は、請求に係る指定商品中の『文房具類』に属する商品である。当該ボールペンは、上記ライブイベントにおいて、事前に3,000円のライブチケットを購入したファンに対しチケットと引換えに手渡されたものであって、当該ボールペン単独で無料配布されていたわけではなく、このチケット代金にはボールペンの製作費用も含まれており、被請求人は、ファンからチケット代金という形でボールペンの製作費用を回収しており、当該ボールペンは商取引の対象となったものである。よって、当該ボールペンは、『ビリケン ユニット』の宣伝広告の意味合いで無料配布される記念品ではなく、商標法上の商品に該当するものである。」旨主張している。
そこで、検討するに、被請求人の提出に係る乙第1号証、乙第2号証、乙第7号証ないし乙第9号証、乙第12号証ないし乙第16号証、乙第20号証、乙第26号証及び乙第27号証並びに被請求人の主張によれば、歌手「ビリケン」は、関西出身の「ビリー」と「オクダ ケン」の2人によるユニットであり、2003年2月にCDをリリースして以来、CDの発売やライブ活動を行っていること、商標権者である「株式会社ケンプファー」は、歌手「ビリケン」の所属事務所であり、「ビリケン」の公式ファンクラブである「ビリケン・ファミリークラブ」を運営していること、そして、「ビリケン・ファミリークラブ」は、ファンクラブの運営、ファンクラブ会報の製作・発行、オリジナルグッズ(Tシャツ、エコバック、タオル、携帯ストラップ、カレンダー、卓上カレンダー)の販売を行っていることが認められる。
そして、乙第21号証をみるに、乙第21号証の1の2葉目のボールペン(写真の画像)の下方に表されている「夏祭り」及び「8.23」の記載並びに乙第22号証の有限会社フジインターシードから商標権者あての2008年8月31日付け請求書の記載内容(ビリケンボールペン用中紙 150枚、ボールペン 150本、アッセンブリ 150セット)からすれば、被請求人の主張のとおり、上記ボールペンは、上記ライブイベントにおいて、ライブチケットと引換えに手渡されたものであることが推認できる。
そうとすれば、該ボールペンは、「ビリケン・ファミリークラブ」のオリジナルグッズであるとしても、これが単独で販売されたものではないといえる。
そして、商標法第50条の適用上、当該「ボールペン」(乙21)が、「商標法上の商品」であるというためには、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならず、また、「商品についての登録商標の使用があった」というためには、当該商品の識別標識として同法第2条第3項第1号、同項第2号又は同項第8号所定の行為がされることを要するというべきものであるところ、2008年8月23日に行われたビリケンの夏祭りライブイベントは、歌手「ビリケン」による「音楽の演奏」等の役務の提供であり、ライブチケットの購入代である3,000円は、その対価といい得るものであって、この夏祭りライブイベントにおいて、チケットと引換えに手渡された「ボールペン」は、当該役務の提供の一環として渡された物であり、商標権者が本件商標と社会通念上同一の商標を入れて無料で配る記念品・広告品、いわゆるノベルティーに当たるものといえる。
してみれば、本件における「ボールペン」に本件商標と社会通念上同一といえる商標を付す行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「役務に関する広告に標章を付して頒布する行為」に当たるものといえることはあっても、商標法上の商品ということはできないものである。
なお、被請求人は、上記記載の主張のとおり、「チケット代金にはボールペンの製作費用も含まれており、当該ボールペンは商取引の対象となったものであって、当該ボールペンは、商標法上の商品に該当するものである。」旨主張しているが、たとえ、チケット代金にボールペン制作費が含まれ、当該ボールペンがネットオークションに出品されるというような場合が想定されるとしても、被請求人の提出に係る証拠からは、上記のとおり判断する相当であり、上記被請求人の主張は採用することはできない。
(4)むすび
以上のとおり、被請求人の提出に係る乙各号証によっては、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定商品について使用していないことについて、正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品及び指定役務中「結論掲記の商品」について、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標


審理終結日 2013-01-28 
結審通知日 2013-01-30 
審決日 2013-02-19 
出願番号 商願2002-109384(T2002-109384) 
審決分類 T 1 32・ 11- Z (Y16)
T 1 32・ 1- Z (Y16)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 きみえ 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 田中 亨子
酒井 福造
登録日 2004-04-16 
登録番号 商標登録第4763746号(T4763746) 
商標の称呼 ビリケンビリケン、ビリケン 
代理人 川島 麻衣 
代理人 小暮 君平 
代理人 大島 泰甫 
代理人 稗苗 秀三 
代理人 工藤 莞司 
代理人 長谷川 芳樹 

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