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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y03
管理番号 1272630 
審判番号 取消2012-300222 
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-03-21 
確定日 2013-04-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4826930号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4826930号商標(以下「本件商標」という。)は、「PRECIOUS」の欧文字を横書きしてなり、平成15年10月15日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類,歯磨き,香料類」を指定商品として同16年12月17日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第34号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上、我が国において、商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれによっても使用されていない。よって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取消すべきものである。

2 答弁に対する弁駁
(1)「PRECIOUS」は、「貴重な」等の意味の英語であるが(甲1)、同じ意味の英語に由来する外来語「プレシャス」として日本語に定着しており(甲2)、このことは、本件商標の指定商品である化粧品の需要者の広く知るところである。したがって、「PRECIOUS」、「プレシャス」は、化粧品に使用したときに、化粧品の品質を表示する語であり、識別力が無いか、あるいは、識別力の著しく弱い語である。
「PRECIOUS」、「プレシャス」は、上述のように「貴重な」等の意味の形容詞であるから、「PRECIOUS+〇」「プレシャス+〇」、「○+PRECIOUS」「○+プレシャス」として「貴重な○」の意味の熟語を構成し、かかる熟語は、一体として認識把握される。
このことは、本件商標の商標権者である被請求人以外の者によって、本件商標と抵触する指定商品に、「PRECIOUS+〇」、「プレシャス+〇」、「○+PRECIOUS」、「○+プレシャス」の構成の数多くの商標が登録されている(甲3ないし甲34)ことから明白である。
よって、二段書きの「ESPRIQUE/PRECIOUS」、横一連の「ESPRIQUE PRECIOUS」及び「エスプリーク プレシャス」は、一体としてのみ認識把握され、一体としてのみ商標として出所識別機能を有する。
(2)このことは、乙第7号証の1「2011/cosmetics/in/Japan/日本の化粧品総覧」3枚目ないし7枚目において、「エスプリーク プレシャス」が「ブランド名」として表示されていること、8枚目の「コーセー」のページに「エスプリーク プレシャス」がブランド名として表示されていること、乙第7号証の2「2012/cosmetics/in/Japan/日本の化粧品総覧」3枚目ないし8枚目において「エスプリーク プレシャス」が「ブランド名」として表示されていること、しかも、6枚目ないし8枚目において「エスプリーク プレシャス」が「エスプリーク」と並んで「ブランド名」として表示されていること、9枚目以下の「コーセー」のページにおいて、「エスプリーク プレシャス」が「エスプリーク」と並んでコーセーのブランド名として表示されていることから明らかである。
このことは、また、被請求人自身容器に二段書きの「ESPRIQUE/PRECIOUS」を表示した化粧品の写真を掲載した被請求人の広告物(乙5の1ないし5)において、ブランド名として「エスプリーク プレシャス」と告知していることからも明白である。
また、乙第6号証の各種広告媒体においても、「エスプリーク プレシャス」と表示され、ブランド名が「エスプリーク プレシャス」であることが表示されていることからも明白である。
さらに、乙第3号証の1及び2(被請求人のウエブサイトのページ)においても、容器に二段書きの「ESPRIQUE/PRECIOUS」が横向きに配された化粧品とともに、ブランドの表示として「エスプリーク プレシャス」が使用されていることからも明白である。
これは、乙第4号証の1及び2においても同じである。
また、乙第3号証の1及び2、乙第4号証の1及び2においても、二段書きの「ESPRIQUE\PRECIOUS」以外は商品の容器に使用されていない。
乙第2号証の1の1枚目及び2枚目、乙第2号証の2の3枚目において、商品の容器に一連の「ESPRIQUE PRECIOUS」が縦向きに付されているが、これは、上記に照らし、全く信用できない。
なお、乙第5号証の3の2枚目の6(丸付き数字)の化粧品の容器においてのみ、二段書きの「ESPRIQUE/PRECIOUS」が「縦に」配されており、その他は「横に」配されている。
よって、乙第2号証の1、2の縦向きの「ESPRIQUE PRECIOUS」の表示は、「偽造」であると解さざるを得ない。
(3)以上述べたように、二段書きの「ESPRIQUE/PRECIOUS」、一連の「ESPRIQUE PRECIOUS」(かかる態様の使用が無いことは明らかにした。)及び「エスプリーク プレシャス」は、一体としてのみ商標として使用され認識されている。
よって、二段書きの「ESPRIQUE/PRECIOUS」、一連の「ESPRIQUE PRECIOUS」(仮に使用されているとしても)及び「エスプリーク プレシャス」は、本件商標と、外観において相違し、観念において相違し、称呼において相違するから、同一の商標でもなく、社会通念上同一と認められる商標でもない。
(4)よって、被請求人は、本件商標を本件取消審判請求の登録前3年以内に使用していないから、その登録は取消すべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証(枝番を含む。)を提出した。
〈答弁の理由〉
1 本件商標について
本件商標は、被請求人が2006年12月16日から発売している「エスプリーク(ESPRIQUE)」ブランドの「化粧品」のペットネーム(商品毎の商標)として採択、使用している。
2 本件商標の使用の事実及び使用時期について
乙第2号証の1は、「化粧下地」(現物)の写真であるが、当該商品の容器及び包装箱の表面に「ESPRIQUE PRECIOUS」、「ESPRIQUE/PRECIOUS(上下二段の表示)」の文字、包装箱の裏面に「エスプリーク プレシャス/スーパーラスティング ベース UV/〈化粧下地〉」の文字が三段で表示されている。
乙第2号証の2は、「パウダーファンデーション」(現物)の写真であるが、当該商品及びその容器・包装箱(詰替用のもの)の表面に「ESPRIQUE PRECIOUS」、「ESPRIQUE/PRECIOUS(上下二段の表示)」の文字、包装箱(詰替用のもの)の裏面に「エスプリーク プレシャス/ドラマティカルベール パクト UV/(エクストラモイスト)/〈ファンデーション〉」の文字が四段で表示されている。
なお、乙第2号証ないし乙第7号証において使用されている「ESPRIQUE」、「PRECIOUS」の文字は、いずれも「ESPRIQUE」の文字に比し、「PRECIOUS」の文字が約4分の1程度の大きさで表されている。
また、上記写真の商品は、前者(乙2の1)が乙第3号証の1(P.3)の2番目の商品、乙第4号証の1のインターネット上のウエブサイト(楽天市場)のクチコミ投稿記事の商品、乙第5号証の5(P.2)のプレスリリース中の3(丸付き数字)の商品、乙第6号証(P.3)の「週刊粧業」の記事中の商品「スーパーラスティングベースUV」、乙第7号証の2(P.41、120)の雑誌「日本の化粧品総覧」の商品「スーパーラスティングベースUV」と同一の商品であり、後者(乙2の2)が、乙第3号証の1(P.2)の2番目の商品、乙第4号証の2のウエブサイト(楽天市場)のクチコミ投稿記事の商品、乙第5号証の3(P.2)のプレスリリース中の1(丸付き数字)の商品、乙第6号証(P.1)の「週刊粧業」の記事中の商品「ドラマティカルベール パクトUV(エクストラモイスト)」、乙第7号証の1(P.44、125)の雑誌「日本の化粧品総覧」の商品「ドラマティカルベール パクト UV(エクストラモイスト)」及び乙第7号証の2(P.44、120)の商品と同一の商品である。
乙第3号証の1は、被請求人ホームページ(抜粋)を、2012年5月24日にプリントアウトしたものであるが、当該ホームページの1ページ目には、左上部の黒く塗り潰した四角形の図形内に、白抜きで「ESPRIQUE」と「PRECIOUS」の文字が上下二段に表示されている(当該図形の右横にも、アイカラー等の商品写真と共に、「ESPRIQUE」と「PRECIOUS」の文字が同一構成、同一態様で表されている。)。
そして、2ページ及び3ページ目(商品の詳細ペ-ジ)には、例えば、「エスプリーク プレシャス スーパーラスティング パクト UV」「発売日:2011年2月16日」、「エスプリーク プレシャス ドラマティカルベール パクト UV(エクストラモイスト)」「発売日:2010年8月21日」、「エスプリーク プレシャス スーパーラスティング ベース UV」「発売日:2011年2月16日」、「エスプリーク プレシャス クリアビジョン ベース UV」「発売日:2011年2月16日」等の記載がされている。
上記の各商品(ファンデーション、化粧下地等)には、その容器に、乙第3号証の1(P.1)と同一構成、同一態様の「ESPRIQUE」「PRECIOUS」の文字が表示されている。
乙第3号証の2は、被請求人ホームページ(抜粋)を2010年11月19日にプリントアウトしたものであるが、当該ホームページには、上部左右の箇所に、黒く塗り潰した四角形の図形内に白抜きで、「ESPRIQUE」と「PRECIOUS」の文字が、乙第3号証の1と同一構成、同一態様で表示されているものであって、例えば、「クレンジングや洗顔料、化粧水、クリーム、ジェル、美容液はこちら。」のように、化粧品の詳細ページに移行できるようになっている。
乙第4号証の1は、ウエブサイト(楽天市場)における、「エスプリーク プレシャス スーパーラスティングベースUV」のクチコミ投稿記事であるが、例えば、「毎日使用しています。とろ?り感もフィット感も大満足です。(投稿日:2010年12月1日)」、「のびがよく、ファンデーションのつきもいいので、購入して良かったです。(投稿日:2011年4月1日)」、「下地は、使用感ひとつでリキットの付け心地が変わるのですごく重要だなっと改めて実感しました。(投稿日:2010年9月17日)」との旨が記載されている。
乙第4号証の2は、ウエブサイト(楽天市場)における、「エスプリーク プレシャス ドラマティカルベールパクトUV(エクストラモイスト)」(パウダーファンデーション)のクチコミ投稿記事であるが、例えば、「【くずれにくい】夏場は、ラスティングでしたが、たいへん良いです。【ナチュラル】厚塗りになりません。【潤い】ふわっとしています。・・・(投稿日:2011年9月8日)」、「オールシーズンOKだし、粒子が細かいのか、つきが良い。リピしてます。(投稿日:2012年1月19日)」、「カバー力が、有りとても良いと思います。化粧崩れも少なく綺麗に仕上がります。(投稿日:2011年4月9日)」との旨が記載されている。
乙第5号証の1は、化粧品発売のプレスリリースであるが、「『エスプリーク プレシャス』誕生」のタイトルで、2006年12月16日にその商品が発売されることをプレスリリースしたものである。
乙第5号証の2ないし5は、「エスプリーク プレシャス」の新化粧品発売のプレスリリース(2009年6月29日、2010年7月2日、同年11月1日、2011年1月20日にプレスリリース)である。これらには、いずれにも乙第3号証の1(P.1)と同一構成、同一態様の「ESPRIQUE」「PRECIOUS」の文字が表示されている。
乙第6号証は、新化粧品発売の上記プレスリリース(乙第5号証の2ないし5)に対応する新聞記事(2010年8月2日?2011年2月7日)の抜粋である。
乙第7号証の1は、平成22年(2010年)10月20日発行の「2011/cosmetics/in/Japan(日本の化粧品総覧)」(抜粋)の写しであるが、当該「化粧品総覧」の「化粧品の主な新製品(2009.7?2010.6)」の項(P.39、42、44、50、51)で、被請求人の「エスプリーク プレシャス」の各種化粧品が、2009年8月21日?2010年6月16日の間に発売されることが掲載されている。さらに、「主要メーカー別販売商品編」における「コーセー」の項(P.125)には、1番目に「エスプリーク プレシャス」の各種化粧品が掲載されている。
乙第7号証の2は、平成23年(2011年)10月20日発行の「2012/cosmetics/in/Japan(日本の化粧品総覧)」(抜粋)の写しであるが、当該「化粧品総覧」の「化粧品の主な新製品(2010.7?2011.6)」の項(P.40、41、44、48、51、53)で、被請求人の「エスプリーク プレシャス」の各種化粧品が、2010年7月16日?2011年2月16日の間に発売されることが掲載されている。さらに、「主要メーカー別販売商品編」における「コーセー」の項(P.120)には、「エスプリーク」化粧品の次の2番目に「エスプリーク プレシャス」の各種化粧品が掲載されている。

3 以上の乙第2号証ないし乙第7号証を総合すれば、被請求人の「エスプリーク プレシャス」の各種化粧品は、2006年12月16日に新発売され、以降、本件審判請求の登録前3年以内はもとより、現在も継続して製造・販売されていると認められるものである。
そして、上記商品に使用する「PRECIOUS」の文字は、「ESPRIQUE」と「PRECIOUS」の文字を二段に、あるいは「ESPRIQUE PRECIOUS」のように表されているところから、その構成上、当該「PRECIOUS」の文字が商標として独立して把握、認識されるものであり、それが本件商標と称呼及び観念を同一(乙8)にするものであるから、本件商標と社会通念上同一の商標と言い得るものである。
また、乙第2号証ないし乙第7号証で使用する「エスプリーク プレシャス」の文字も、これに接する取引者・需要者に、被請求人の「エスプリーク」ブランドにおける、商品毎の商標「プレシャス」を表したものと把握、認識される結果、当該「プレシャス」の文字が独立して自他商品の識別機能を果たすものといえるから、これら使用商標と本件商標は、社会通念上同一の商標といわなければならない。
加えて、前記被請求人の主張は、「プレシャス」の文字を表してなる登録第4482167号商標に係る登録取消審判事件(取消2010-301085)における審決(乙9)の判断からみても妥当である。
以上のとおり、乙第2号証ないし乙第8号証によって、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、被請求人が本件商標と社会通念上同一と認められる商標「PRECIOUS」「プレシャス」を「化粧品」について使用していることの証明が明白になされているものである。

4 結論
本件商標は、取消請求に係る指定商品中の「化粧品」について、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において被請求人により使用されているものであるから、その登録を商標法第50条の規定により取り消すべきものではない。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙第2号証ないし乙第7号証(枝番を含む。)によれば以下の事実が認められる。
(1)乙第2号証の1は、商品「化粧下地」(以下「使用商品1」という。)の現物(商品及び包装箱)の写真と認められるところ、包装箱の表面には、縦書きの「みずみずしい感触、長時間くずれにくい化粧下地」の文字及び一連に書された「ESPRIQUE PRECIOUS」の文字(以下「使用商標1」という。)並びに「Super Lasting Base」「UV」及び「BEAUTE de KOSE(6文字目及び12文字目の「E」にはアクサン・テギュ記号が付されている。以下同じ。)」の文字が表示され、裏面下部には「株式会社コーセー」、「お問合せ先」等が表示されている。また、包装箱の中の商品にも、二段書きされた「ESPRIQUE」及び「PRECIOUS」の文字(以下「使用商標2」という。)が表示されている(以下、使用商標1及び使用商標2をまとめていうときは「使用商標」という。)。
なお、使用商標は、「PRECIOUS」の文字が「ESPRIQUE」の文字の約4分の1程度の大きさで表されている。
(2)乙第2号証の2は、商品「パウダーファンデーション」(以下「使用商品2」という。)の現物並びに「レフィル(詰め替え用)」の現物及びその包装箱の写真と認められるところ、商品には使用商標2が表示されている。また、レフィルの包装箱の表面には使用商標1が表示され、裏面下部には「株式会社コーセー」、「お問合せ先」等が表示されている。
(3)乙第3号証の1は、被請求人のホームページ(2012年5月24日打ち出し)であるが、1ページ目の左上部の黒塗り四角形内に使用商標2が白抜きで、また、上部中央にも使用商標2が表示されおり、「エスプリーク プレシャス 商品カテゴリ一覧」として、「スキンケア(クレンジング、洗顔料、化粧水、クリーム、ジェル、美容液)、「ベースメイク(ファンデーション、フェースパウダー、コンシーラー、化粧下地)」及び「ポイントメーク(口紅、リップグロス、アイシャドウなど)」のカテゴリが表示され、それぞれの商品の詳細ページの紹介が可能となっており、詳細ページには、使用商品1(発売日:2011年2月16日)及び使用商品2(発売日:2010年8月21日)を含む商品の説明と発売日等が掲載されている。
乙第3号証の2は、被請求人のホームページ(2010年11月19日打ち出し)であるが、1ページ目の上部左右の黒塗り四角形内にそれぞれ使用商標2が白抜きで表示されており、「エスプリーク プレシャス 商品カテゴリ一覧」として、「スキンケア」、「ベースメイク」、「ポイントメーク」及び「化粧雑貨」のカテゴリが表示され、それぞれの商品の詳細ページの紹介が可能となっており、詳細ページには、商品の説明と発売日等が掲載されている。なお、使用商品1及び使用商品2についての記載はない。
(4)乙第4号証の1及び2は、楽天市場のウエブサイト(2012年5月22日打ち出し)であるが、使用商品1について、2010年9月17日、同年12月1日及び2011年4月1日を投稿日とする商品を使用した感想等のクチコミ投稿記事(乙4の1)及び使用商品2(レフィル)について、2011年4月9日、同年9月8日及び2012年1月19日を投稿日とする同様のクチコミ投稿記事(乙4の2)が確認できる。
(5)乙第5号証の1は、2006年10月10日付けの化粧品発売のプレスリリースであるが、そこには「?新しい大人の「カワイイ」を提案する新ブランド? 『エスプリーク プレシャス』誕生」のタイトルの下、商標権者が2006年12月16日より新ブランド「エスプリーク プレシャス」として、「口紅」をはじめ全13種の化粧品を発売することが記載されている。
乙第5号証の2ないし5は、「エスプリーク プレシャス」の新製品、新色、限定品等の発売に関するプレスリリース(2009年6月29日、2010年7月2日、同年11月1日、2011年1月20日付け)であるが、そこには、いずれにも使用商標2が表示され、商標権者が発売する新製品の商品名、特徴、参考小売価格等の紹介あるいは説明がされている。
(6)乙第6号証は、2010年8月2日付け、2011年1月1日付け、2011年2月7日付けの「週刊粧業」、2010年11月3日付けの「日本経済新聞」、2010年11月5日付けの「日経産業新聞」及び2011年1月21日付けの「化学工業日報」の各新聞記事であるが、そこには、商標権者の化粧品「エスプリーク プレシャス」に関する記事が掲載されている。
(7)乙第7号証の1は、「2011/cosmetics/in/Japan/日本の化粧品総覧」(平成22年10月20日発行:抜粋)であるが、「3.化粧品の主な新製品(2009.7?2010.6)」の項において、商標権者の「エスプリーク プレシャス」の各種化粧品が発売されたことが掲載され、また、商標権者(コーセー)の項(P.125)には、「エスプリーク プレシャス」の各種化粧品が掲載されている。
乙第7号証の2は、「2012/cosmetics/in/Japan/日本の化粧品総覧」(平成23年10月20日発行:抜粋)であるが、「3.化粧品の主な新製品(2010.7?2011.6)」の項において、商標権者の「エスプリーク プレシャス」の各種化粧品が発売されたことが掲載され、また、商標権者(コーセー)の項(P.120)には、「エスプリーク プレシャス」の各種化粧品が掲載されている。

2 以上の事実を総合すれば、以下のとおり判断することができる。
(1)使用者、使用商品及び使用時期について
乙第2号証の1及び2によれば、商標権者の取扱いに係る使用商品1は「化粧下地」、使用商品2は「ファンデーション」と認められるものであり、これらはいずれも本件審判の請求に係る「化粧品」に属する商品である。
そして、使用商品1については、2011年(平成23年)2月16日に(乙3の1(P.3)、乙5の5、乙6(P.3)、乙7の2(P.41))、使用商品2については、2010年(平成22年)8月21日に(乙3の1(P.2)、乙5の3、乙6(P.1)、乙7の2(P.44))発売され、また、クチコミ投稿記事の記載から使用商品1及び2が販売されていたことが推認できる(乙4の1及び2)。
そして、両発売日及び投稿日はいずれも本件審判請求の登録(平成24年4月12日)前3年以内のものである。
(2)使用商標について
ア 本件商標について
本件商標は、「PRECIOUS」の欧文字を横書きしてなるものである。
イ 使用商標について
乙第2号証の1及び2によれば、商標権者は、使用商品1及び使用商品2に係る商品又はその包装箱に、各文字間に1文字程度の間隔を設けて書された「ESPRIQUE PRECIOUS」の欧文字からなる商標(使用商標1)及び上下二段に書された「ESPRIQUE」及び「PRECIOUS」の欧文字からなる商標(使用商標2)を使用しているところ、使用商標の構成文字中の「PRECIOUS」の文字は、その前半或いは上段に位置する「ESPRIQUE」の文字の約4分の1程度の大きさで表されていることから、両文字は、視覚上分離して看取され得るものである。
そして、各使用商標は、その構成全体をもって、親しまれた既成の観念を表してなるものとみるべき特段の事情も見当たらない。
そうとすると、使用商標は、看者をして、「ESPRIQUE」と「PRECIOUS」の各文字をそれぞれ常に一体のものとしてのみ認識されるということはできず、「PRECIOUS」の文字部分も独立して看取、把握されるものであって、自他商品識別標識としての機能を有しているものということができる。
ウ 本件商標と使用商標との同一性について
本件商標は、前記アのとおり、「ESPRIQUE」の文字を横書きした構成よりなり、使用商標は、前記イのとおり、構成中の「PRECIOUS」の文字部分が独立して看取されるものである。そして、本件商標と使用商標において独立した表示として抽出される「PRECIOUS」とは、書体はやや少相違するものの同一の文字からなる社会通念上同一の商標といえる。
(3)小括
以上のことからすれば、商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品中の「化粧品」の範ちゅうに属する商品「化粧下地,ファンデーション」について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用したというべきである。
(4)請求人の主張について
請求人は、本件商標中の、「PRECIOUS」は「貴重な」等の意味の英語であり、それに由来する外来語「プレシャス」も日本語として定着しており、化粧品に使用したときはその品質を表す語であって、識別力が無いか、著しく弱い語であり、「PRECIOUS、プレシャス」は、「貴重な」等の意味を有する形容詞であるから、「貴重な○○」の一体の熟語として認識把握される旨述べているが、「PRECIOUS(プレシャス)」が「貴重な」の意味で親しまれているとしても、当該語が具体的に商品の品質等を表すものとはいえず、識別力がないとはいい得ないものであり、また、使用商標は全体として特定の観念を理解させるものではないことは前記(2)イのとおりである。
また、請求人は、使用商標は、一体としてのみ認識把握され、一体としてのみ商標としての出所識別機能を有するもので、このことは「エスプリーク プレシャス」がブランド名として表示されていることからも明白である旨述べているが、「エスプリーク プレシャス」がブランド名として表示されているとしても、使用商標から、「PRECIOUS」の文字部分が独立して看取されるものであること前記(2)イのとおりである。
したがって、請求人の主張はいずれも採用することができない。

3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件商標の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が請求に係る指定商品中の「化粧品」について、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)の使用をしていたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-11-06 
結審通知日 2012-11-09 
審決日 2012-11-20 
出願番号 商願2003-90158(T2003-90158) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y03)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 内山 進
前山 るり子
登録日 2004-12-17 
登録番号 商標登録第4826930号(T4826930) 
商標の称呼 プレシャス 
代理人 柴田 昭夫 
代理人 古木 睦美 
代理人 為谷 博 
代理人 佐藤 雅巳 

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