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審決分類 |
審判 一部取消 商標の同一性 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35 |
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管理番号 | 1272514 |
審判番号 | 取消2012-300385 |
総通号数 | 161 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2013-05-31 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2012-05-14 |
確定日 | 2013-03-11 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5214702号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5214702号商標の指定役務中、第35類「飲食料品(穀物の加工品を除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,人工甘味料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,工業用粉類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飼料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,種子類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,防虫紙の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,乳糖の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,乳児用粉乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5214702号商標(以下「本件商標」という。)は、「養命」の文字を標準文字で表してなり、平成19年6月22日に登録出願、第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食料品(穀物の加工品を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,花及び木の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,運動具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,携帯電話用のストラップの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,お香の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,陶器の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,肥料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,試験紙の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,人工甘味料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,工業用粉類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飼料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,種子類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,防虫紙の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,乳糖の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,乳児用粉乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同21年3月19日に設定登録されたものである。 そして、本件審判の請求の登録は、平成24年5月31日にされたものである。 2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第36号証を提出した。 (1)請求の理由 本件商標は、その指定役務中の「飲食料品(穀物の加工品を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,人工甘味料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,工業用粉類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飼料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,種子類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,防虫紙の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,乳糖の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,乳児用粉乳の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、継続して3年以上日本国内において使用された事実がないから、その登録は、商標法第50条の規定により、取り消されるべきである。 (2)答弁に対する弁駁 ア 被請求人は、「養命酒」の要部が「養命」である旨主張しているが、取引者、需要者間に広く認識されている商標は「養命」の語と「酒」とが結合した漢字3文字を一連一体に結合された「養命酒」であって、「養命」ではなく、また、「養命酒」を略して「養命」と称されることもない。しかも、「養命」が著名でないことは、「養命酒」について、登録第800892号商標の防護第1号及び同第2号並びに登録第836699号商標の防護第1号ないし同第6号と防護標章登録はなされているものの、「養命」については、防護標章登録はなされていないことから明らかであり(甲第4号証)、「養命酒」といえば、観念上、薬用養命酒(お酒に「自然由来の有効成分」を溶かし込んだもの)を想起するものであり、「養命」から、直ちに、「養命酒」を認識しない(甲第5号証ないし甲第16号証)。 イ また、取引者、需要者間に広く認識されている商標「養命酒」があっても、その構成中の「養命(称呼「ヨーメイ」を含む)」が、指定商品「うどんのめん、そばのめん」についての商標「養命」(甲第5号証)、指定商品「ふとん」についての商標「養命ふとん」(甲第6号証)、指定商品「浴剤」についての商標「養命泉」(甲第7号証)、指定商品「布団綿」についての商標「養命わた」(甲第8号証)、指定商品「菓子及びパン」についての商標「ようめい」(甲第9号証)と登録されていることからも明らかである。 ウ さらに、実際の取引の場等においては、「養命」(称呼「ヨーメイ」を含む)の語を含む医薬品について、「養命」及び「養命丸」(甲第10号証)、「養命散」(甲第11号証)並びに「養命錠」(甲第12号証)、「もぐさ」についての「養命印」(甲第13号証)、「薬用入浴剤」についての「養命泉」(甲第14号証)、「ふとん」についての「養命ふとん」(甲第15号証)、「そば」についての「養命そば」(甲第16号証)が、現実に他人に使用されているが、養命酒製造株式会社又は養命酒製造株式会社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者(以下「養命酒製造株式会社等」という。)との間で出所の混同を生じることはない。 エ 加えて、使用に係る「養命酒」は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で、まとまりよく一体に書されているばかりでなく、「養命酒」の称呼「ヨウメイシュ」は、淀みなく一気一連に称呼し得るものであり、「養命酒」からは、薬用養命酒(お酒に「自然由来の有効成分」を溶かし込んだもの)の観念が生じるものである。すなわち、使用に係る「養命酒」は、外観上、称呼上、観念上一体として捉えられるから、酒が商品名であるとしても、「養命」の文字のみが独立して分離観察されるものではなく、「養命酒」の文字全体をもって一つの造語を形成している商標とみるべきものである。 オ 以上述べたことから、「養命酒」の要部は、「養命」でないことは明らかであり、本件商標と使用に係る商標「養命酒」とは、社会通念上同一性を有する商標ではないものと思料する。 カ 被請求人は、本件商標をその指定役務について使用している旨主張し、乙第4号証ないし乙第12号証を提出しているところ、以下のとおり、そのいずれにおいても、本件審判の請求の登録(平成24年5月31日)前3年以内(以下「本件期間内」という場合がある。)に日本国内において、商標権者等が本件商標を本件請求に係る指定役務のいずれかについて使用している事実は、何ら示されていない。 (ア)乙第1号証ないし乙第10号証においては、「養命酒」、「養命酒健康の森」、「養命酒本舗」、「Yomeishu」等の記載はあるが、商標「養命」を本件請求に係る指定役務について使用している事実は見いだせない。 (イ)乙第11号証は、登録商標「ももいちご\百壱五(登録第4323578号)」と社会通念上同一と認められる商標「ももいちご」を、指定商品「いちご」につき使用していたということができるとして審決を取り消した事例にすぎないものである。 (ウ)乙第12号証は、商標の使用を開始する意思を示したにすぎないものである。 (3)まとめ 以上述べたように、被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第12号証のいずれにも、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を本件請求に係る指定役務のいずれかについて使用している事実は、何ら示されていない。 3 被請求人の答弁 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。 (1)本件商標の特殊性について(乙第1号証ないし乙第3号証) ア 商標権者の「養命酒」は、著名商標としてすでに認識されているが、これは、商標権者の業務に係る商品「薬用酒、薬味酒」について、400年にわたって使用している商標「養命酒」の構成中、「酒」の文字がその商品との関係において自他商品識別力の弱いものであり、要部は「養命」であるといえる。 ちなみに、「養命酒」及び「養命」の語は、1602年に、商標権者の創始者である塩沢宋閑により創造された造語商標であることも本件商標の特殊性である。 イ 商標権者は、1923年に、前身である株式会社天龍館を設立、塩沢家より養命酒の事業を継承し、1951年に、「養命酒製造株式会社」に改称した。その後、社会全体に多角的な経営が叫ばれる中で、例えば、2002年に、「ミネラルウォーター」を「養命水」として発売している。 このように、商標権者は、「薬味酒、酒」以外の飲食品についても、その品目を広げ、「生活者の信頼に応え、豊かな健康生活に貢献する」とした理念を基本として事業の多角化に取り組み、幅広い飲食品についても製造販売を継続して行っている(乙第1号証)。 「養命酒」は、1969年(昭和44年)以来、「養命」は、1998年(平成10年)以来、それぞれ「日本有名商標集」に掲載され、商品「薬用酒、酒」に関して、著名商標として認知されるに至っている(乙第2号証)。 商標権者の企業努力は、特許庁においても認められ、防護標章としても登録され、その評価においても客観的な評価が出されている(乙第3号証)。 したがって、著名な商標「養命酒」の要部は、「養命」であり、「養命」といえば著名な商標「養命酒」の要部であるとの客観的な認識を十分考慮の上、本件商標の使用について判断すべきである。 (2)使用の事実(乙第4号証ないし乙第12号証) 上記(1)を踏まえた上で、商標権者は、本件商標を本件請求に係る指定役務について使用していることを以下に証明する。 ア 商標権者は、2006年(平成18年)に開設したインターネットの通信販売サイト「養命酒本舗」(「養命酒オンライン@Amazon.co.jp:養命酒本舗」)において、「養命水」(商品:ミネラルウォーター)のほか、商品「サプリメント、スープ、ブレンド茶、お香、みりん、薬味酒」を販売している(乙第4号証及び乙第5号証)。 イ 商標権者は、2005年(平成17年)に開設した「養命酒健康の森」の店内において、商品「茶」(健康ブレンド茶)のほか、「薬味酒、お香」を販売している(乙第6号証)。 さらに、オンライン上では、「養命酒オンライン@Amazon.co.jp:健康の森」として、商品「茶、コーヒー(豆)、ソース、味噌」をネット販売している(乙第7号証)。 ウ 商標権者は、2010年(平成22年)に開業した健康生活提案型複合施設「くらすわ」の店内において、商品「ワイン、ビネガー、浅漬け、ジャム、コンフィチュール、ドレッシング、ハーブティ、米、味噌、風呂敷」を販売している(乙第8号証)。 さらに、オンライン上では、「養命酒オンライン@Amazon.co.jp:CLASUWA」として、商品「ドレッシング、味噌、浅漬けの素、スープ、ハム、ソーセージ、ジャム、ハーブティー、ハーブ」を販売している(乙第9号証)。 エ 上記アないしウの使用のように、商標権者が多角的な経営を行っていることは一般需要者に十分認知されている(乙第10号証)。すなわち、商標権者のホームページ(乙第10号証)には、「養命酒健康の森」、「養命酒本舗」、「くらすわ」が登場し、そこから各サイトにリンクされているので、商標権者とこれらの関係は、需要者が直ちに把握できる状態となっているわけである。 したがって、ネット上からでも「養命酒健康の森」、「養命酒本舗」、「くらすわ」が取り扱っている商品が一目瞭然であることから、本件商標が使用されているものと理解されるべきであるといえる。 オ 以上のように、上記(1)で述べた本件商標の特殊性により、各証拠が「養命酒」の下での使用であったとしても、「養命酒」の要部は、「養命」であるとの一般認識が前提にあることから、「養命酒」と本件商標が観念上同一の出所に由来するものであると思料する。 なお、裁判においても、「不使用商標登録取消審判における商標の使用とは、商標法50条1項が明示するように、必ずしも登録された商標と同一の商標の使用でなくても社会通念上同一と認められる商標の使用であれば足りると解されている。」としている(乙第11号証)。 さらに、商標権者は、本件商標の使用を、乙第4号証ないし乙第9号証で述べた以外の役務についての使用も順次予定している(乙第12号証)。 したがって、商標権者は、本件商標を第35類の役務に本件期間内に使用しているといえる。 (3)むすび 以上のとおり、本件審判の請求は、成り立たないものである。 4 当審の判断 (1)本件商標の使用について ア 商標法第50条第1項による商標登録の取消しの審判の請求があったときは、同条第2項本文は、「その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」と規定し、また、登録商標の使用の範囲については、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」を含めて解釈すべきである旨が規定されている(第50条第1項)ところ、被請求人は、前記3のとおり、使用の事実を証明する各証拠が「養命酒」の下での使用であったとしても、「養命酒」の要部は、「養命」であるとの一般認識が前提にあることから、使用に係る商標「養命酒」は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である旨主張する。そこで、以下検討する。 ア 被請求人の提出した証拠によれば、以下の事実を認めることができる。 (ア)商標権者のホームページでの通信販売サイト「養命酒本舗」(2012年(平成24年)7月18日及び同月20日に紙出力されたもの)には、「養命酒本舗」、「Yomeishu」の表示の下に、「養命水」と称する商品「ミネラルウォーター」のほか、商品「サプリメント、はちみつ、みりん、スープ」等が掲載されている(乙第4号証及び乙第5号証)。 (イ)商標権者の営業に係る「養命酒健康の森」のホームページ(2012年(平成24年)7月19日に紙出力されたもの)には、「Yomeishu」、「養命酒/健康の森」の表示の下、商品「ブレンド茶」等が掲載されている(乙第6号証)。 また、上記「養命酒健康の森」の通信販売サイト「養命酒オンライン@Amazon.co.jp:健康の森」(2012年(平成24年)7月18日に紙出力されたもの)には、「Yomeishu」、「養命酒 健康の森」の表示の下、商品「ブレンド茶、コーヒー(豆)、ソース、味噌」等が掲載されている(乙第7号証)。 (ウ)商標権者の営業に係る「くらすわ」のホームページ(2012年(平成24年)7月19日に紙出力されたもの)には、商品「ジャム、ドレッシング、ハーブティ」等が掲載されているほか、いわゆるリンク先として、「薬用養命酒」、「養命酒健康の森/駒ヶ根工場」、「養命酒本舗」の表示がある(乙第8号証)。 また、上記「くらすわ」の通信販売サイト「養命酒オンライン@Amazon.co.jp:CLASUWA」(2012年(平成24年)7月18日に紙出力されたもの)には、「Yomeishu」、「くらすわ」の表示の下、商品「ソーセージ、ハム、ジャム、コンフィチュール、スープ、菓子、調味料、ハーブティー」等が掲載されている(乙第9号証)。 (エ)商標権者のホームページ(2012年(平成24年)7月18日に紙出力されたもの)には、「Yomeishu」の表示の下、「商品情報」として、「栄養ドリンク」等が掲載されている(乙第10号証)。 イ 上記アで認定した事実によれば、商標権者は、2012年(平成24年)7月18日ないし同月20日頃に、インターネットにおける通信販売サイトにおいて、本件請求に係る指定役務における小売の販売対象となる商品に含まれる「ミネラルウォーター、サプリメント、はちみつ、スープ、ブレンド茶、コーヒー(豆)、ソース、味噌、ソーセージ、ハム、ジャム、コンフィチュール、菓子、調味料」等を掲載したことを認めることができる。 しかしながら、上記商品には、本件商標である「養命」の表示は一切なく、被請求人主張のとおり、「養命酒」を要部とする表示又は「Yomeishu」の表示の下に掲載されていたものである。 また、本件審判の請求の登録は、前記1のとおり、平成24年5月31日にされたものであることから、被請求人は、その登録前3年以内(平成21年5月31日から同24年5月30日までの間)における使用の事実を証明する必要があるところ、上記通信販売サイトにおける商品の掲載は、本件審判の請求の登録後にされたものといえるから、これをもって、被請求人が必要とされる使用の事実を証明したということはできない。 ウ 使用に係る商標「養命酒」及び「Yomeishu」が本件商標と社会通念上同一と認められる商標であるか否かについて (ア)本件商標 本件商標は、前記1のとおり、「養命」の文字を標準文字で表してなるものであるから、これより、「ヨウメイ」の称呼を生ずるものであって、特定の観念を生じない造語からなるものと認められる。 (イ)使用に係る商標「養命酒」 「養命酒」の文字は、同一の書体をもって、同一の大きさ、同一の間隔で書され、外観上、一体的に表されているばかりでなく、これより生ずると認められる「ヨウメイシュ」の称呼もよどみなく称呼し得るものである。また、「養命酒」の語は、その構成全体をもって、商標権者の業務に係る商品「薬用酒」を表示する商標として、需要者の間に広く認識されているものといえるところ、該「養命酒」が単に「養命」と略称されて使用されているという事実を認めるに足りる証拠の提出はない。 したがって、使用に係る商標「養命酒」は、これより、「ヨウメイシュ」の一連の称呼のみを生ずるものであって、商標権者の業務に係る商品「薬用酒」の商標としての「養命酒」の観念を生ずるというべきである。 (ウ)使用に係る商標「Yomeishu」 「Yomeishu」は、商標権者の業務に係る商品「薬用酒」を表示する商標として著名な「養命酒」をローマ字で表記したものと直ちに理解させるものといえるから、これより、「ヨウメイシュ」の称呼及び商標権者の業務に係る商品「薬用酒」の商標としての「養命酒」の観念を生ずるものというべきである。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)によれば、本件商標と「養命酒」とは、「酒」の漢字の有無の差異を有するものであり、また、本件商標と「Yomeishu」とは、文字の種類を異にするものであるから、使用に係る商標「養命酒」と「Yomeishu」は、いずれも本件商標と外観において同視できる商標ということはできない。 また、本件商標から生ずる「ヨウメイ」の称呼と「養命酒」及び「Yomeishu」から生ずる「ヨウメイシュ」の称呼とは、末尾部分において、「シュ」の音の有無の差異を有するものであるから、同一の称呼を生ずる商標ということはできない。 さらに、上記のとおり、本件商標は特定の観念を生ずることのないものであるのに対し、使用に係る商標「養命酒」と「Yomeishu」は商標権者の業務に係る商品「薬用酒」の商標としての「養命酒」の観念を生ずるものであるから、両商標は、同一の観念を生ずるものではない。 してみれば、使用に係る商標「養命酒」及び「Yomeishu」は、本件商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相違するものであるから、商標法第50条第1項に規定する本件商標と社会通念上同一と認められる商標ということはできない。 したがって、「養命酒」及び「Yomeishu」の文字からなる商標の使用をもって、商標権者が本件審判の請求に係る指定役務について登録商標の使用をしていたと認めることができない。 エ 被請求人の主張について 被請求人は、「養命酒」が商品「薬用酒、酒」について使用され著名商標として認知されるに至っており、使用される商品との関係から、その要部は、「養命」の文字部分であるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である旨主張する。 しかし、「養命酒」の文字からなる商標が商品「薬用酒」について使用され、著名となっているとしても、上記ウ(イ)のとおり、その著名性は、「養命酒」の文字全体をもって一体不可分のものとして認識されているというべきであって、その構成中の「養命」の文字部分のみが分離、抽出されて、これが商品「薬用酒」の略称として需要者の間に広く認識されていると認めるに足りる証拠の提出はない(なお、被請求人は、商標「養命」は、1998年(平成10年)以来、「日本有名商標集」に掲載され、商品「薬用酒、酒」に関して著名商標として認知されるに至っている旨主張するが、商標「養命」が「日本有名商標集」に掲載されている事実は認め得るとしても、その事実のみをもって、「養命酒」が単に「養命」と略称され、かつ、「養命」が商標権者の業務に係る商品「薬用酒、酒」を表示するものとして著名であると認めることはできない。)。 そして、本件審判において問題とすべき点は、「養命」の文字からなる本件商標又はこれと社会通念上同一と認められる商標が、本件期間内に取消請求に係る指定役務のいずれかについて使用されたかどうかにあるというべきであるところ、これを裏付ける証拠の提出はない。 したがって、上記被請求人の主張は理由がなく、採用することができない。 (2)むすび 以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録(平成24年5月31日)前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、請求に係る指定役務について、登録商標の使用をしていたことを証明したということはできないし、また、使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。 したがって、本件商標の登録は、その指定役務中の「結論掲記の指定役務」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-01-10 |
結審通知日 | 2013-01-15 |
審決日 | 2013-01-28 |
出願番号 | 商願2007-65006(T2007-65006) |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(X35)
T 1 32・ 11- Z (X35) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 渡辺 潤、榎本 政実、大島 康浩 |
特許庁審判長 |
寺光 幸子 |
特許庁審判官 |
田中 敬規 酒井 福造 |
登録日 | 2009-03-19 |
登録番号 | 商標登録第5214702号(T5214702) |
商標の称呼 | ヨーメー |
代理人 | 入江 一郎 |
代理人 | 特許業務法人 松原・村木国際特許事務所 |