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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 224
管理番号 1269656 
審判番号 取消2011-300900 
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-09-27 
確定日 2012-11-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第558951号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第558951号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第558951号商標(以下「本件商標」という。)は、「Lotus」の欧文字と「ロータス」の片仮名を併記してなり、昭和34年8月25日に登録出願、第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同35年10月22日に設定登録され、その後、4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに指定商品については、平成12年8月30日に第24類「織物」とする指定商品の書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は,平成23年10月18日である。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由、答弁に対する弁駁、口頭審理における陳述において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
被請求人は、本件商標を、その指定商品のいずれについても継続して3年以上日本国内において使用していない。
また、本件商標について専用使用権者は存在せず、また通常使用権者として本件商標を使用している者も存在しない。
したがって、本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品につき使用されていないものである。
よって、請求人は、商標法第50条第1項の規定に基づき、本件審判につき請求の趣旨のとおりの審決を求める。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標の使用証拠の不存在
ア 被請求人は、「ストレッチングベルト」(MCS-10)で特定される本件商標の使用に係る商品(以下「使用商品」という。)は、取引書類上(乙6ないし乙9、以下、まとめて「本件取引書類」という)、「MCS-10」等の品番等により管理しているが、繊維卸業では、商品見本を添付した「サンプル台帳」と呼ばれる台紙により売買契約を取り交わすのが通常の取引形態・慣行であって、使用商品に係るサンプル台帳に本件商標が記載されており(乙3ないし乙5)、これは本件商標を商品に付する行為であり、被請求人とイトキン株式会社(以下「イトキン」という。)とは、当該サンプル台帳に基づき取引を決定し、使用商品は被請求人からイトキンへ譲渡されたと主張している。
イ そこで、上記主張を証拠に照らして検討する。
(ア)被請求人のアウター衣料資材には、「MCS-10」「MSC-20」「MCK-200」の品番があるとのことであるが、本件取引書類中に記載されている品番は、すべて「MCS-10」のみである。
また、本件取引書類中には、本件商標は一切表示されていない。
上記品番「MCS-10」と本件商標とを関連づける資料としては、乙第3号証の1及び2の「サンプル台帳」として提出されたもの1枚のみである。
しかし、上記資料に関しては、次のとおり多くの疑問がある。
(イ)本件商標が使用されているのは、乙第3号証の1及び2のみであり、他に証拠は一切ない。本件取引書類中には、すべて「品名」と明示し記載欄がわざわざ準備されているにもかかわらず、それらの「品名」欄はすべて空白であるか、「MCS-10」のような品番しか書かれていない。もし、乙第3号証の1及び2に示すように、「MCS-10」なる品番の商品に本件商標を使用して取引を行っていたのだとしたら、上記「品名」欄に一切本件商標の表示がなされていないのはいかにも不自然である。つまり、この事実は、本件商標が取引上使用されていなかったことを強く推認させるものである。
(ウ)上記1枚の「サンプル台帳」(乙3の1及び2)については、これが要証期間内に存在した事実自体が立証されていない。
(エ)また、被請求人は、「繊維業界では、このような『サンプル台帳』によって取引先と数量、単価や納期などについて売買契約を取り交わすのが通常の取引形態である」と一般的な取引形態を述べ、被請求人とイトキンとがサンプル台帳に基づき取引を決定したと主張するが、このサンプル台帳なるものが、具体的に誰にいつどのように提示され取引上使用されたのかを立証するところが全くない。
(オ)その他、被請求人のウェブページ(乙2の1ないし4)にも本件商標は一切表示されていないが、この事実も、本件商標がそもそも全く使用されたことがないか、あるいは上記のとおり対外的に取引上は使用されない被請求人社内の愛称として内部的に使用されていたにすぎないものであることを強く推認させる。
ウ 被請求人の使用商品は、一般に、ロール状に巻かれた状態で取引されるものであり(甲3ないし甲7)、例えば、甲第3号証の2、甲第4号証の2、甲第5号証の2、甲第6号証の2及び甲第7号証に示されるとおり、商品又はその包装に商標を表示することが普通に行われており、当該業界において、サンプル台帳のみに商標が表示されるものであるとは到底考えられない。
上記甲号証が示すとおり、現実に商標が商品に表示されて販売されており、使用に係る商品に関しサンプル台帳のみによって取引対象が決定されるとする被請求人の主張は明らかに事実と異なり、不自然である。
エ さらに、本件商標の登録は昭和35年であり極めて古い。したがって、サンプル台帳が作成されたのが本件審判請求の登録前3年よりはるか以前のことであって、サンプル台帳は内部的に保管されていたものであって要証期間内に取引に用いられたことはないということが十分あり得る。
また、サンプル台帳があくまで内部的な見本として作成されたものにすぎず実際の取引において利用されていない可能性も高い。
さらに、当該サンプル台帳は、標章「LOTUS ロータス」を表示した台紙に細い布のようなものをステープラーで留めた極めて簡単な作りのものであり、本件審判請求の後に作成することも十分に可能である。
いずれにしても、上記のとおり、サンプル台帳については要証期間内における存在、その使用事実のいずれも立証されていない。
オ 以上のとおり、被請求人が提出した乙号証によっては、本件商標が本件審判請求の登録前3年以内に使用商品に使用された事実は証明されていない。
(2)使用商品と本件商標の使用を証明すべき商品との相違
ア 被請求人は、本件商標が「アウター衣料資材『ストレッチインサイドベルト』又は『形態安定ウエスト芯地』」に使用されていると主張するが、以下に述べるとおり、本件商標が、本件審判請求に係る指定商品「第24類 織物」に使用されたことを証明していない。
前記のとおり、被請求人は、本件取引書類に表示されているのは「MCS-10」のみであり、「MCS-20」「MCK-200」についての取引書類は提出されていないから、以下、「MCS-10」のみについて検討する。
イ 本件審判請求に係る指定商品
本件審判請求に係る指定商品は第24類「織物」である。
国際分類の類別表によれば、第24類は、「織物及び織物製品であって他の類に属しないもの ベッドカバー テーブルカバー」であり、その注釈において「第24類には、主として、織物(反物)及び家庭用織物製カバーを含む。・・・この類には、特に、次の商品を含まない。特殊な織物・・・」とされ(甲8)、商標法施行令別表は、第24類を「織物及び家庭用の織物製カバー」とし、その区分に属するものとして、商標法施行規則別表には「織物」等が定められており、「商品及び役務の区分解説」によれば、「織物」は、「この概念には生地のみが属し、・・・生地を特殊な形態、寸法に加工したものは含まれない。」とされる(甲9)。
したがって、本件審判請求に係る指定商品「織物」には、生地を特殊な形態、寸法に加工したものであって他の類に属するものは含まれないと解される。
ウ 使用商品
被請求人は、使用商品について具体的な内容、性質等を主張、立証せず、ただ「アウター衣料資材『ストレッチインサイドベルト』」であると述べ、これが本件審判請求に係る商品「織物」であると主張する。
「ストレッチインサイドベルト」は、「伸びる『インサイドベルト』」のことであり、「インサイドベルト」とは、一般に「ベルトの一種。ズボン・スカートの胴回りの内側に縫いつけたもの。ベルト芯。」(広辞苑第六版、甲10)とされており、例えば、甲第11号証において、「スカートやスラックスなどのウエストに、折れにくく型崩れしにくいインサイドベルトです。」と記載されているように、インサイドベルトとは、未加工の生地ではなく、ズボンやスカートのウエスト部分に利用されるように生地をベルト状(帯状)に加工したものであって、衣服の縫製に用いられる「裁縫用品」である。
この「インサイドベルト」は、実際の取引においても、以下のとおり、「生地」とは別のカテゴリーに属する裁縫用品の1つとして販売されている。
「インサイドベルト」が、「生地」とは別に、「ゴム」「テープ」と同じカテゴリー内に陳列されている(甲3の1)。
「インサイドベルト」が、大カテゴリー「ソーイング材料」内の小カテゴリー「テープ・バイアス・リボン」内に含まれている(甲4の1)。
「インサイドベルト」が、「裏地」「芯地・接着芯地」とは別のカテゴリーの商品として扱われている(甲5の1)。
「インベル(インサイドベルト)」が、「裏地・芯地」カテゴリーとは別に、「洋裁道具・洋裁材料・ソーイング用品」カテゴリー内の商品として扱われている(甲6の1)。
以上のように、「(ストレッチ)インサイドベルト」は、言葉の定義上も、実際の取引においても、「織物」ではなく「裁縫用品」であり、「裁縫用品」は、商品区分上、国際分類第26類「裁縫用品」に属するものであって(国際分類表注釈によれば「この類には、主として、裁縫用品を含む」とされる。甲8)、商標法施行規則別表によれば、第26類に属する商品として、例えば「テープ」がある。
被請求人は、使用商品は、「アウター衣料資材」を対象にすると述べ、乙第2号証の4を指摘しているが、この乙第2号証の4(被請求人ウェブサイト)によれば、「お取り扱い製品のご紹介」の項において、「芯地」「裏地」「肩パッド・裄綿」「テープ」のカテゴリー分けがされており、当該「テープ」の説明として「縫製で必要不可欠な、様々な用途に対応する品揃え(滑脱防止・伸止め・インベル等)を提供しています。」と記載されている(甲12)。
この「インベル」とは「インサイドベルト」の略語である(甲13。また、乙6の4などにおいても「インベル」と略称されている。)。すなわち、被請求人自身、使用商品を、第26類「裁縫用品」の「テープ」と同種の商品として取り扱っているのである。
加えて、実際の取引においても、「インサイドベルト」が「テープ」と同種のカテゴリーの商品として販売されていることは、上記甲第3号証の1、甲第4号証の1に係る指摘のとおりである。
さらに、乙第6号証及び乙第7号証には「20MM」又は「20mm」の表示があり、乙第8号証及び乙第9号証には「30MM」又は「30mm」の表示がなされているが、これらは使用商品の「幅」を表しており、これらの表示は、使用商品が、それが縫い付けられる「ズボン」「スカート」等に適する寸法に「加工」されていることを示すものである。
使用商品が専用の「加工」が施されたものである点については、被請求人が、答弁書において、「繊維卸業者は、発注者の要望に応じて直ちに集荷や加工等の対応ができるように・・・。・・・発注者の要望に応じて資材に加工等を施すことは当たり前のことであり・・・。・・・使用商品を見るに、『被服』のアウター衣料資材という性質上、個々の最終製品に併せた形態での納品となるため・・・。」と自認するところである。
すなわち、上記のとおり、本件審判請求に係る商品「第24類 織物」には、生地を特殊な寸法に加工したものは含まれず、また、第24類には他の類(本件でいえば第26類)に属するものは含まれないから、最終製品に適合するよう寸法の加工がされているものであって、第26類「裁縫用品」に属する使用商品「ストレッチインサイドベルト」が、本件審判請求に係る指定商品「織物」の概念に属する余地はない。
エ 以上のとおり、使用商品は第24類「織物」には当たらないから、本件商標が、本件審判請求に係る指定商品に使用されたことは証明されていない。
(3)被請求人が使用商品を譲渡したといえるか
被請求人は、使用商品は、イトキンに譲渡されたと主張するが、被請求人、イトキン、発注を行ったとされる株式会社三景(以下「三景」という。)、株式会社田幸(以下「田幸」という。)並びに納品先とされる株式会社ベルモード(以下「ベルモード」という。)及び株式会社青森エリート(以下「青森エリート」という。)との関係や各社の役割は何ら立証されていない。とくに、被請求人は、三景を通してイトキン(のジャンニロ)が発注を行ったとして、その流通過程を乙第6号証ないし乙第9号証を用いて説明するが、「発注書」(乙6の2、乙7の2及び乙9の2)によれば、被請求人は、田幸に対し、使用商品を、ベルモード又は青森エリートに送付するよう指示しているのみである。
とくに田幸は、服飾資材の生産、販売を業とするものであり(甲14の1及び2)、現に「インサイドベルト」を取り扱っているのであって(甲14の3)、「MCS-10」なる製品の製造、販売者が田幸で、被請求人は単に注文を受け納品を指示する仲介役にすぎないのであれば、被請求人が使用商品を譲渡した者でないことは明らかである。
以上のとおり、「MCS-10」が被請求人の製造、販売に係る商品である事実、及び、被請求人が「MCS-10」を譲渡した事実も証明されていないことは明らかである。
(4)結論
以上詳述したとおり、被請求人は、本件商標が本件審判請求の登録前3年以内に本件審判請求に係る指定商品に使用された事実を証明していない。
3 口頭審理における陳述
(1)「サンプル台帳」(乙3)の原物について
ア 被請求人は、「商談の場で・・・サンプル台帳を使用している」(被請求人の口頭審理陳述要領書(以下「陳述要領書」という。)第2頁下から2行目)、「商談の場において顧客に伝える」(第3頁20行目)などと述べているが、自ら「具体的な記録は無い」と自認するように(同1行目)、その「商談」が、具体的に、いつ、だれと、どのように行われたのか立証する証拠を何ら提出しておらず、主張すらしていない。
イ 被請求人は、「衣料資材ゆえその名称が外部に出ることは少ない」(同21行目)と述べているが、これは、「取引先にサンプル台帳が頒布されており」との陳述(同22行目)、及び、使用商品の納品時の形状の参考として提出された乙第21号証の物品に「ロータス」の文字が表示されていることと矛盾するし、被請求人の主張は場あたり的で混乱している。
ウ 被請求人は、注文は口頭取引により始まると主張しているが(同22行目)、これを立証する証拠はなく、また、その口頭取引が、いつ、どこで、誰と行われたのか主張さえされていない。
本件取引は企業間の取引であり、全て口頭のみでの取引とは考え難いこと、現代において電子メールやファクシミリによる簡易な通信手段があることを考慮すれば、一切記録がないとする被請求人の主張は信じがたい。
エ 顧客が「ロータスを下さい」と口頭で告げるという被請求人の主張に係る行為は、商標法第2条第3項各号に規定される「使用」の定義のいずれにも該当しない。
(2)サンプル台帳の作成時期について
被請求人は、縷々述べているが、本件で問題となっている乙第3号証の1及び2に示されるサンプル台帳の作成時期については、全く立証していない。かつ田中印刷なる会社が「ロータス台紙」及び「ハンガー下札」を印刷したと述べ、乙第14号証及び乙第15号証を提出しているが、これらは、サンプル台帳に係るものではない。
(3)サンプル台帳の頒布先について
ア 被請求人は、サンプル台帳の頒布先をイトキン他アパレル業者であると述べているが(第4頁8行目)、これを裏付ける証拠を一切提出していない。
イ 被請求人は、「商談成立/不成立いずれの場合においても、サンプル台帳はその役割を終え不必要となるので、通常、頒布先において廃棄される。なぜなら、必要であれば、被請求人に対して再度提供を求めれば足りるからである。」と述べているが(同10行目)、通常、取引先においてサンプル台帳が廃棄されるとする被請求人の説明は明らかに不自然である。
ウ 被請求人は、取引先にサンプル台帳の有無を問い合わせる等の依頼をすることは取引実務の弊害となる可能性があり承服できない等と主張しているが、そのような被請求人の私的な事情により本件商標の「使用」の存在が肯定されたり、使用の立証責任が免じられたりすることはあり得ず、法律上全く無意味な主張というほかない。
エ 被請求人は、答弁書においてサンプル台帳を頒布した旨の主張は一切していないにもかかわらず、唐突に、被請求人の陳述要領書において頒布の事実を主張するが、結局、「頒布先の詳細な記録は残っていない」(第4頁10行目)としてこれを立証する証拠を何ら提出しておらず、上記被請求人の主張は極めて不自然であって信じがたい。
オ 被請求人は、サンプル台帳の保管場所を被請求人の本社内と述べ(同18行目)、その保管場所の写真を提出しているが(乙16ないし乙18)、そこにサンプル台帳は写っていない。
(4)商標権者が、使用商品を製造したこと、本件商標を販売したことについて
ア 被請求人は、織物ロータスを委託製造しているのは田幸であり、被請求人は織物ロータスを販売していると述べているが(第6頁3行目)、被請求人と田幸との間で製造委託契約がされた事実を証する証拠は提出されていない。
イ 被請求人は、「被請求人が織物ロータスを販売した証明は答弁書記載のとおりである。」と述べているが(同10行目)、弁駁書において論証したとおり、そのような「証明」はなされておらず、被請求人の陳述要領書にも被請求人による使用商品の「販売」の事実を示す証拠は添付されていない。
ウ 被請求人は、直近の取引として、「2012年2月20日頃に被請求人の営業担当者が株式会社東京スタイル(以下「東京スタイル」という。)にサンプル台帳を使用してロータスを提案した。」(同11行目)と述べ、この取引に係る取引書類を証拠として提出しているが(乙19及び乙20)、当該取引は本件審判請求登録後のものである。
(5)使用商品について
ア 使用商品は、規格が定められており、長さ30mに対し、幅は20、25、30又は35mmであって、明らかにテープ状に「加工」された商品であるから、弁駁書のとおり、指定商品としての「織物」に該当せず、被請求人の陳述要領書によってこの事実はさらに明確になったものと思料する。
イ 被請求人は、「使用商品である原反の一部及びテープ状のものの見本を提出する。」と述べているが(第7頁12行目)、いずれの証拠がそれであるか不明である。
なお、被請求人は原反とテープ状のものの繊維試験の結果を乙第22号証として提出するようであるが、上記のとおり、本件で問題となるのは、具体的に商取引の対象と主張された商品が何であったのかであり、仮に、取引対象となる前の「原反」と、取引対象となった後の「テープ状のもの」の繊維試験結果が提出されたとしても、本件審判請求に係る指定商品についての使用の立証とは関係が無く、無意味である。
(6)その他
上記のとおり、本件で問題となるのは、具体的に取引対象となった「商品」の法的評価であり、被請求人が主観的に「織物」と認識していたか否かではないし、被請求人社内において使用商品が上記幅にカットされる前の状態で保管されていたか否かでもない。結局、サンプル台帳、被請求人が主張する「商談」及び「取引書類」等から総合的考えると、現に本件取引の対象となって発注・受注・製造・販売、等された可能性があるものは、「ストレッチインサイドベルト」であり、指定商品としての「織物」とは全く別異のものである。
以上詳述したとおり、被請求人は、本件商標が本件審判請求の登録前3年以内に本件審判請求に係る指定商品に使用された事実を証明していない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由、口頭審理における陳述及び上申書において要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第22号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)請求人の主張等
本件商標は、商標権者が、日本国内において、本件審判請求の登録前3年以内の期間に、商品「織物」について本件商標を使用しているため、商標法第50条第1項の規定に基づき、本件商標はその登録を取り消されるべきではない。
(2)本件商標が付された商品が使用された事実の立証
ア 被請求人の繊維事業
本件審判の被請求人たる持田商工株式会社(以下「商標権者」という。)は、1950年創業以来、繊維製品の製造加工、卸売、仲介並びに輸出入業を主要な事業の一つとして継続して行なっている。商標権者は関連会社も有しており、国内は1964年にプリーツ加工を主に行う「株式会社持田プリーツワークス」、海外においては、2000年に「持田香港有限公司」、2003年に「摩奇達国際貿易(上海)有限公司」を設立し、グローバルに繊維事業を展開している(乙2の1及び2)。
商標権者の繊維事業は、商標権者のホームページ上でも紹介されているとおり、生活資材・機能素材・アウター衣料資材・インナー資材等の各種資材の開発・製造・販売並びに上記資材の加工製品の製造・販売の他、服飾製品の企画提案から納入先製品の受託製造まで幅広く取り扱っている。半世紀以上に渡る歴史に育まれた技術やノウハウをベースに、常に時代に合わせた高品質な資材製品の供給をし続けている(乙2の3及び4)。
イ 本件商標が付された商品
本件商標が付された商品「織物」は、商標権者の繊維事業の内、アウター衣料資材を対象とする(乙2の4)。具体的には、商品写真に示すように、サンプル台帳と呼ばれる商品見本の台紙に止められたアウター衣料資材を対象とする(乙3の1及び2、乙4の1及び2、乙5の1及び2)。
「台帳」という名称のとおり、各台紙の左横には台紙を一綴りにするための穴が2つ開けられている。なお、台紙一枚も台紙を一綴りにした見本集も、いずれもサンプル台帳と呼ばれている。繊維卸業では、このようなサンプル台帳によって取引先と数量、単価や納期などについて売買契約を取り交わすのが通常の取引形態である。このような取引形態を行う理由は、繊維卸業の特殊性に起因している。
サンプル台帳の台紙上部には、それぞれ本件商標の記載があり、台紙下部には「持田商工株式会社」の文字が記載されている。台紙中央部には本件商標の対象とするアウター衣料資材「ストレッチインサイドベルト」又は「形態安定ウエスト芯地」がステープラーで止められている。かかる資材が片方のみ台紙に止められている理由は、資材の厚さや手触りを確認できるようにするためである。かかる資材は、本件商標の名の下に提供されていることは明らかであることから、サンプル台帳の態様は本件商標を商品「織物」に「付する」行為であるといえる。
ウ 本件商標の使用の事実
本件商標の下に提供されるアウター衣料資材に付されている品番中、「MCS-10」は、以下において挙げられる発注書等の証拠の存在により、本件審判請求の登録前3年以内に、商標権者から「イトキン」に譲渡されている事実が認められる。
前述のサンプル台帳に基づき、商標権者とイトキン間で使用商品の取引が決定し、使用商品が商標権者からイトキンへ譲渡されるまでの流れを証拠に沿って説示する。
(ア)乙第6号証の1ないし4について
まず、イトキンのジャンニロ(イトキンが取り扱うブランドの一つである(乙10))は、三景を通して、使用商品を商標権者に発注する。その際、三景から商標権者に対して「直送依頼書」(乙6の1)が発せられる。かかる「直送依頼書」には、三景から商標権者に、使用商品を「ベルモード」に出荷するよう指示がなされている。
指示を受けた商標権者は、田幸に、使用商品をベルモードに直送する指示をするのであるが、その際、「発注書」(乙6の2)が発せられる。
田幸は、使用商品をベルモードに納品した事実を示す「計算書」(乙6の3)を商標権者に発する。
商標権者は、田幸から上記「計算書」を受け取ると、三景の指示とおりにベルモードに使用商品を直送した旨の「附属発注兼納品伝票」(乙6の4)をジャンニロに発し、その写しを保管する。
上記一連の4枚の書面には、本件商標の下に提供される資材の品番「MCS-10」の記載がある。加えて、一連の証拠には、「直送依頼書」の右上部に記載の発注者の製品番号「NGHGI65260」が一貫して記載されている整合性から、これら4枚の書面は関連づけられていることは明らかである。
(イ)乙第7号証の1ないし4について
乙第7号証の1ないし4についても、上記(ア)と全く同様の流れである。
(ウ)乙第8号証の1ないし4について
ほぼ上記(ア)と同様の流れであるが、三景から発せられた「直送依頼書」(乙8の1)には、使用商品を「青森エリート」に出荷するよう指示がなされている。
指示を受けた商標権者は、田幸に、使用商品を「塚本倉庫(株)内持田商工(株)東京物流センター」に直送する指示をするのであるが、その際、「発注書」(乙8の2)が発せられる。ここで、上記東京物流センターは商標権者の倉庫であり、本取引の場合はここから青森エリートに転送された。
田幸は、使用商品を上記東京物流センターに納品した事実を示す「計算書」(乙8の3)を商標権者に発する。
商標権者は、田幸から上記「計算書」を受け取ると、三景の指示とおりに青森エリートに使用商品を直送した旨の「附属発注兼納品伝票」(乙8の4)をジャンニロに発し、その写しを保管する。
上記一連の4枚の書面には、本件商標の下に提供される資材品番「MCS-10」の記載がある。加えて、「直送依頼書」と「附属発注兼納品伝票」には、発注者の製品番号「NGLAI41190」が記載されている整合性から、それぞれの書面は関連づけられていることは明らかである。
(エ)乙第9号証の1ないし4
ほぼ上記(ウ)と同様の流れであるが、三景から発せられた「直送依頼書」(乙9の1)には、使用商品を青森エリートに出荷するよう指示がなされている。
指示を受けた商標権者は、田幸に、使用商品を青森エリートに直送する指示をするのであるが、その際、「発注書」(乙9の2)が発せられる。
田幸は、使用商品を青森エリートに納品した事実を示す「計算書」(乙9の3)を商標権者に発する。
商標権者は、田幸から上記「計算書」を受け取ると、三景の指示とおりに青森エリートに使用商品を直送した旨の「附属発注兼納品伝票」(乙9の4)をジャンニロに発し、その写しを保管する。
上記一連の4枚の書面には、本件商標の下に提供される資材品番「MCS-10」の記載がある。加えて、一連の証拠には、「直送依頼書」の右上部に記載の発注者の製品番号「NGLAI41190」が一貫して記載されている整合性から、これら4枚の書面は関連づけられていることは明らかである。
(オ)ファッショントレンドは財界同時進行で移り変わっていくため、アパレル業界の発注者の要求にスピーディに応えるべく、繊維産業の流通は特殊なものとなっている。前述の取引の流れが示すように、繊維産業の生産工程や流通は多段階構造にわたり、発注から納品までの間に製造委託・加工委託等の下請事業者が多数介在する。繊維卸業者は、発注者の要望に応じて直ちに出荷や加工等の対応ができるよう、商品「織物」は倉庫等に保管し、そこから各下請事業者等に直送される。発注者の要望に応じて資材に加工等を施すことは当たり前のことであり、特に説明を要することではない。このような取引実情ゆえ、サンプル台帳による商品の売買契約の締結が織物卸業の慣行となっている。
使用商品を見るに、「被服」のアウター衣料資材という性質上、個々の最終製品に併せた形態での納品となるため、便宜上、発注者の品番や使用商品の品番で管理を行っている。しかしながら、あくまでも対象となっているアウター衣料資材は、サンプル台帳が示すとおり、本件商標の下に提供される本件商標が付された商品「織物」であることに違いはない。
したがって、上記証拠から、本件商標は商品「織物」に使用されている事実を確実に認定されうる。
エ 本件商標と商品について使用されている商標の同一性
サンプル台帳に付されている商標(以下「使用商標」という。)は欧文字のブロック体及び片仮名のゴシック体の文字にて記載されている(乙3の1)。本件商標(乙1の2)は欧文字及び片仮名の文字を手書きのタッチにて書された態様であるため、使用商標は本件商標と物理的に同一ではない。
しかしながら、商標法第50条第1項の「登録商標」には「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」等、「当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」も含まれる旨規定されている。
本件商標を使用商標の態様で表記しても称呼及び観念に違いはないため、使用商標と本件商標とは書体の相違を有するにすぎない。
したがって、使用商標と本件商標は、社会通念上同一の商標であることが明らかである。
(3)むすび
以上を総合的に考慮すれば、本件商標と社会通念上同一の商標である乙第3号証の1に表示される商標が、品番「MCS-10」に係る商品「織物」に付されて、本件審判請求の登録前3年以内に商標権者からイトキンへ譲渡がなされたことが認められる。
よって、商標権者が、本件審判請求の登録前3年以内において、商品「織物」に本件商標と社会通念上同一の商標を付したものを譲渡等している事実を確かに認定されるものである。
2 口頭審理における陳述
(1)「サンプル台帳」(乙3)の原物について
ア 営業担当者が、商談の場で、問い合わせの都度、サンプル台帳をいつ、誰と使用しているというような具体的な記録は無い。
イ 商談の場では、サンプル台帳・ハンガー下札・幅広の生地のロータス(乙11ないし乙13、以下「ロータス」という。))を顧客に見せ、ロータスの手触りや生地の厚さや硬さ等を確かめて頂き、ロータスが衣料資材として顧客の要望に合致していることを説明する。サンプル台帳やハンガー下札に貼付けてあるのは、ロータスの用途の一例としてテープ状のものを紹介しているだけである。ロータスは接着芯地全体を指しており、要望に応じて様々な形状にすることが可能である。被請求人は、織物ロータスを顧客の要望に応じた形状にして納品する。かつてロータスは織物全体の名称であったが、現在は接着芯地全体を指す。接着芯地を仕様別に分けた品番が答弁書に記載のMCS-10、MCS-20、MCK-200である。
(2)サンプル台帳の作成時期
ア 田中印刷の売上伝票の中に、平成15年10月10日に「ロータス台紙」及び「ハンガー下札」の売上伝票が存在する(乙14)。当時は自社でパソコンやプリンタを使って内製するよりも印刷業者に発注した方が品質が良く、安価であったため、印刷業者に発注していた。当時の台紙及びハンガー下札を証拠として提出する(乙15)。
当時の台紙及びハンガー下札には幅広の生地が留めてあったが、現在は残っていない。
イ 答弁書に記載したサンプル台帳と当時の台紙は異なる。サンプル台帳は、その後、自社または田幸において、パソコンとプリンタを使って内製するようになったため当時の台帳を見本により内製しやすいよう印象が変わらない範囲でデザインを簡素化したことによる。プリンタの性能が向上したため、印刷所に発注は行っていない。
(3)サンプル台帳の頒布先
ア 頒布先はイトキン他アパレル業者である。しかしながら、サンプル台帳はその目的上、どの業者に頒布したか又は受領したかという記録を取る必要性のあるものではないので、頒布先の詳細な記録は残っていない。
イ 商談に使用するサンプル台帳は、被請求人の本社内に保管している。営業担当者が必要な時に保管場所から持ち出して使用している。ハンガー下札や幅広の織物も同じ場所に保管している(乙16ないし乙18)。
ウ サンプル台帳は、答弁書に添付した証拠写真のとおりの形態である(乙3の2、乙4の2、乙5の2)。数枚の台紙を束として綴っていた時期もあった名残からサンプル台帳と呼ばれている。現在はこの3パターンの台紙のみ存在している。
(4)流通過程(乙6)について
乙第6号証の1ないし4、乙第7号証の1ないし4の流通過程
イトキン(アパレル企業)・“ジャンニロ”(イトキンのブランド)→三景(仲介業者 同業他社)→商標権者(織物卸売商社)→田幸(織物製造委託業者)→ベルモード(被服製造工場イトキンの協力工場)
(5)商標権者が、使用商品を製造したこと、使用商品を販売したことについて
ア ロータスを委託製造しているのは田幸である。商標権者は織物ロータスの販売を行っている。
ロータスは登録された昭和35年より前に、商標権者が田幸に発注した製造委託品である。また、過去に田幸からロータスについて専用使用権あるいは通常使用権の許諾の申し入れは無かった。
イ 商標権者が織物ロータスを販売した証明は、答弁書に記載のとおりである。直近では、2012年2月20日頃に商標権者の営業担当者が東京スタイルにサンプル台帳を使用してロータスを提案した。同年2月22日付でテープ状にしたロータスの有償サンプルの依頼があった。顧客は有償サンプルをその後の発注の参考にするし、事実、東京スタイルから発注は来ている。
ウ 使用商品について
(ア)乙第3号証の1の使用商品の規格は、以下のとおりである。
幅:20・25・30・35mm、長さ:30m、定価:1,080円(30mm)、780円(20mm)
(イ)規格の管理は、サンプル台帳に上記の幅及び長さが記載してある。しかしながら、顧客の要望に応じて、幅及び長さを変えて納品することは可能である。
(6)使用商品である原反の一部及びテープ状のものの見本を提出する。
答弁書に添付したサンプル台帳に貼付けてある商品は既に納品済みであるため手元には無い。しかしながら、テープ状のものはサンプル台帳に記載の幅で30mの長さのものである。納品時の形状は例えば、品番「T-3100」のようなものである(乙21)。テープ状のものと原反との同一性は、繊維試験の結果によって証明する(乙22)。
(7)本件商標の商標法における使用について
商標権者がサンプル台帳に基づき、イトキンとの間で行う使用商品の取引は商標法第2条第3項第1号、同第2号及び同第8号に該当する。
3 上申書における主張
繊維試験の結果(乙22)は、独立行政法人東京都立産業技術研究センターにて行った、サンプル台帳のテープ状の生地とその原反の評価試験の結果である。試験サンプルNo.1ないし4は、織物ロータスのテープ状のもの(品番MCS-10)とその原反(各2色、白/黒)である。繊維混用率は繊維の種類を重量割合で示した数値であり、No.1ないし4はいずれもポリエステル100%である。また、密度は一定範囲内の生地に存在する縦糸と横糸の数を示した数値であり、No.1ないし4の数値には若干の誤差が認められるものの、近似値と判断できる範囲である。これは織物という性質上、繊維業界でいうところのいわゆる製造工程で生じるロットの差であるといえる。繊維の種類が同一であり、織物の密度が極めて近似していることから、サンプル台帳のテープ状のものと原反は明らかに同一であると証明できる。
第4 当審の判断
1 被請求人は、商標権者がイトキンとの間の商取引でサンプル台帳を使用し、本件指定商品「織物」の範ちゅうに属する商品「ストレッチインサイドベルト」(MCS-10)を販売した旨主張して、証拠として乙各号証を提出しているので、以下に検討する。
(1)乙第3号証の1及び2は、サンプル台帳をスキャンしたものとその写真の写しであるが、そこには、「LOTUS」及び「ロータス」の文字、「ストレッチインサイドベルト」「MCS-10」「特徴 1.ポリエステル100%の素材を使用、経伸度20%を保有・・・」「素材 ポリエステル100%」「カラー BK、OW」「MOCHIDA/持田商工株式会社 本社/東京都千代田区岩本町・・・」の記載と共に、ステープラー止めされたテープ状のサンプル2種類(白、黒)が貼付されている。
(2)「直送依頼書」について
ア 乙第6号証の1は、三景が作成した2011年1月31日付け「直送依頼書」であるが、そこには、「持田商工(株)御中」「得意先名 イトキン(株)国内(他社分)」「出荷先 (株)ベルモード(赤沼)/住所・・・」「当社への出荷明細及び納品書には必ず発注番号を記入して下さい。」「製品 59891724」「NGHGI65260」「品名/MCS-10 20MM」「カラー/Y/BK」「数量/39.0/17.0」「出荷日2月1日」等の記載がある。
イ 乙第7号証の1は、三景が作成した2011年1月14日付け「直送依頼書」であるが、そこには、「持田商工(株)御中」「得意先名 イトキン(株)国内(他社分)」「出荷先 (株)ベルモード(赤沼)/住所・・・」「当社への出荷明細及び納品書には必ず発注番号を記入して下さい。」「製品 59581682」「NGHGI65260」「品名/MCS-10 20MM」「カラー/Y」「数量/82.0」「出荷日1月17日」等の記載がある。
ウ 乙第8号証の1は、三景が作成した2010年10月6日付け「直送依頼書」であるが、そこには、「持田商工(株)御中」「得意先名 イトキン(株)国内(他社分)」「出荷先 (株)青森エリート/住所・・・」「当社への出荷明細及び納品書には必ず発注番号を記入して下さい。」「製品 58391307」「NGLAI41190」「品名/MCS-10 30MM」「カラー/BK」「数量/35.0」「出荷日10月8日」等の記載がある。
エ 乙第9号証の1は、三景が作成した2010年9月2日付け「直送依頼書」であるが、そこには、「持田商工(株)御中」「得意先名 イトキン(株)国内(他社分)」「出荷先 (株)青森エリート/住所・・・」「当社への出荷明細及び納品書には必ず発注番号を記入して下さい。」「製品 57671123」「NGLAI41190」「品名/MCS-10 30MM」「カラー/BK」「数量/242.0」「出荷日9月15日」等の記載がある。
(3)「発注書」について
ア 乙第6号証の2は、商標権者が作成した平成23年1月31日付け「発注書」であるが、そこには、「仕入先 (株)田幸」「直送先 名称 (株)ベルモード/住所・・・」「品番/MCS-10」「C/#/W/BK」「規格 20MMX30」「数量/2/1」「製品No.・納期他(備考)/NGHGI65260」等の記載がある。
イ 乙第7号証の2は、商標権者が作成した平成23年1月17日付け「発注書」であるが、そこには、「仕入先 (株)田幸 殿」「直送先 名称(株)ベルモード殿/住所・・・」「品番/MCS-10」「C/#/W」「規格 20MMX30」「数量/3」「製品No.・納期他(備考)/NGHGI65260」等の記載がある。
ウ 乙第8号証の2は、商標権者が作成した平成22年10月7日付け「発注書」であるが、そこには、「仕入先 (株)田幸 殿」「直送先 名称塚本倉庫内(株)持田商工(株)東京物流センター殿/住所・・・」「品番/MCS-10」「C/#/BK」「規格 30MMX30」「数量/2」等の記載がある。
エ 乙第9号証の2は、商標権者が作成した平成22年9月3日付け「発注書」であるが、そこには、「仕入先 (株)田幸」「直送先 名称 (株)青森エリート/住所・・・」「品番/MCS-10」「C/#/W/BK」「規格 30MM」「数量/9」「製品No.・納期他(備考)/NGLAI41190」等の記載がある。
(4)「計算書」について
ア 乙第6号証の3は、田幸が作成した平成23年2月1日付け「計算書」であるが、そこには、「持田商工株式会社御中」「品名 MCS-10 S 20MM #OW/#BK」「反数/2.0/1.0」「数量/2.00/1.00」「単位/R」「摘要/・・・NGHGI65260・・・」「出荷日 23年02月01日」「納品先(株)ベルモード」等の記載がある。
イ 乙第7号証の3は、田幸が作成した平成23年1月17日付け「計算書」であるが、そこには、「持田商工株式会社 御中」「品名 MCS-10 S 20MM #OW」「反数/3.0」「数量/3.00」「単位/R」「摘要/・・・NGHGI65260・・・」「出荷日 23年02月01日」「納品先(株)ベルモード」等の記載がある。
ウ 乙第8号証の3は、田幸が作成した平成22年10月7日付け「計算書」であるが、そこには、「持田商工株式会社 御中」「品名 MCS-10 S 30MM #BK」「反数/2.0」「数量/2.00」「単位/R」「出荷日 22年10月07日」「納品先 持田商工(株)東京物流センター」等の記載がある。
エ 乙第9号証の3は、田幸が作成した平成22年9月10日付け「計算書」であるが、そこには、「持田商工株式会社 御中」「品名 MCS-10 S 30MM #BK」「反数/9.0」「摘要/・・・NGLAI41190・・・」「数量/9.00」「単位/R」「出荷日 22年9月10日」「納品先(株)青森エリート」等の記載がある。
(5)「附属発注書兼納品伝票(仕入先経理用)」について
ア 乙第6号証の4は、商標権者が作成した平成23年2月7日付け発注の「附属発注書兼納品伝票(仕入先経理用)」であるが、そこには、「ジャンニロ御中/指示直送先(株)ベルモード<赤沼>」「品番/NGHGI65260」「品名 MCS-10 ストレッチインベルト 20mm」「反数/数量/3R」「カラー別明細/オフシロ/2 B,K/1」等の記載がある。
イ 乙第7号証の4は、商標権者が作成した平成23年1月21日付け発注の「附属発注書兼納品伝票(仕入先経理用)」であるが、そこには、「ジャンニロ御中/指示直送先(株)ベルモード>」「品番/NGHGI65260」「品名 MCS-10 ストレッチインベルト 20mm」「反数/数量/3R」「カラー別明細/OW/3」等の記載がある。
ウ 乙第8号証の4は、商標権者が作成した平成23年10月8日付け発注の「附属発注書兼納品伝票(仕入先経理用)」であるが、そこには、「ジャンニロ御中/指示直送先(株)青森エリート」「品番/NGLAI41190」「品名 MCS-10 ストレッチインベルト 30mm」「反数/数量/2R」「カラー別明細/BK/2」等の記載がある。
エ 乙第9号証の4は、商標権者が作成した平成23年9月24日付け発注の「附属発注書兼納品伝票(仕入先経理用)」であるが、そこには、「ジャンニロ御中/指示直送先(株)青森エリート」「品番/NGLAI41190」「品名 MCS-10 ストレッチインベルト 30mm」「反数/数量/9R」「カラー別明細/BK/9」等の記載がある。
(6)乙第11号証は、乙第3号証の2、乙第4号証の2、乙第5号証の2のサンプル台帳をA4サイズ1枚に縮小して印刷したものの写しである。
(7)ハンガー下札について
ア 乙第12号証は、ハンガー下札の写真の写しであるが、そこには、「LOTUS」が記載されたハンガーに「MCS-10」「MCS-20」の記載されたテープ状のサンプルが4本吊されている
イ 乙第14号証は、田中印刷が持田商工宛てに作成した平成15年10月10日付け「売上伝票」の写しであるが、そこには、「品名/ロータス台紙/ロータスハンガー下札」、「数量/2200/600」、「単価/27/122」、「金額/59400/73200」との記載がある。
ウ 乙第15号証は、2葉の写真の写しであるが、左側には、「LOTUS」「ロータス」「持田商工株式会社」が上辺に表示された用紙(台紙)の写真と、右側には、フックが付いた台紙に、「LOTUS」「持田商工株式会社」が記載された写真が写されている。
エ 乙第16号証は、ロッカー内に吊された多数のハンガー下札の写真の写しであるが、1つのハンガー下札には、ハンガー部分に「LOT」の文字が表されている。
オ 乙第17号証及び乙第18号証は、乙第16号証の「LOT」の文字が表されているハンガー下札を拡大した写真の写しであるが、そこにはハンガー部分に「LOTU」(乙17)、「LOTUS」(乙18)の文字が写されている。
(8)乙第13号証は、上部右に「MCS-10」と記載されたメモ用紙と「SR10/BK・・・」と記載されたメモ用紙が置かれた黒色の生地等の写真の写しである。
(9)乙第21号証は、ドーナッツ形のラベルが付された商品の写真の写しであるが、そこには、「ロータス」「接着テープ」「品番 T-3100」「カラー27」「規格10mm×50m巻」「MOCHIDA/持田商工株式会社」等の記載がある。
(10)乙第22号証は、乙第3号証のサンプル台帳のテープ状の「MCS-10」のサンプルと乙第13号証の「MCS-10」の生地の繊維試験結果である、繊維混用率、繊維密度が記載されている。
2 上記1で認定した事実及び被請求人の主張を総合的に考察すれば、次のように判断することができる。
(1)使用商品に係る商取引について
本件の商取引は、本件取引書類(乙6ないし乙9)によってなされているところ、前記(2)ないし(5)のとおり、本件取引書類は「MCS-10」と「品番/NGHGI65260」あるいは「品番/NGLAI41190」等が符合すること、本件商取引が複雑な取引であることを考慮すると、本件取引書類に記載された使用商品は、アパレル企業のイトキンが仲介業者の三景に発注し、三景を介して織物卸売商社の商標権者が受注し、商標権者の織物製造委託業者の田幸がこれを製造し、イトキンの被服製造工場であるベルモード、青森エリートに納品したという、イトキンの発注から商標権者の委託製造先である田幸が納品するまでの取引過程とみることができる。
そうとすれば、商標権者は、要証期間である平成22年9月2日、同年10月6日、同23年1月14日、同年同月31日に、仲介業者である三景を通じて、イトキンから使用商品の発注を受け、これを製造業者である田幸に製造委託し、製造された使用商品は、イトキンの被服製造委託業者であるベルモード又は青森エリートで製造する被服の資材として、平成22年9月10日、同年10月7日、同23年1月17日、同年2月1日に納品されたと推認される。
(2)使用者、使用時期などについて
ア 使用者
前記(1)のとおり、本件の商取引では、商標権者は要証期間にイトキンから三景を通じて使用商品を受注し、製造委託先である田幸からイトキンに使用商品が納品され、その代金の請求が商標権者からイトキンになされたことから、本件商標の使用者は、商標権者と認められる。
イ サンプル台帳及びハンガー下札について
被請求人は、通常の取引と同様に商標権者とイトキンとの前記商取引は口頭によるものであるが、イトキンとの間の商談では、本件商標が表示されたサンプル台帳及びハンガー下札を使用したから、本件商標の使用をした旨主張している。
また、被請求人は、ハンガー下札については、平成15年10月10日に作成したとして、乙第14号証及び乙第15号証を、また、現在もロッカーに保管しているとして、乙第16号証ないし乙第18号証を証拠として提出している。
しかしながら、被請求人は、サンプル台帳を頒布した時期、使用した時期については何ら証明していない。また、乙第16号証ないし乙第18号証は、ハンガー下札の写真の写しであって、撮影日、撮影者、撮影場所の記載はなく、その使用時期についても、被請求人は、商談で使用された旨主張するのみであって何ら証明していないから、要証期間にハンガー下札が商談において使用されたと認めることはできない。
ウ 乙第21号証について
被請求人は、使用商品は品番「T-3100」の接着テープ(乙21)のような形状で納品された旨主張し、証拠として乙第21号証を提出している。
しかしながら、乙第21号証は、品番「T-3100」の商品の写真の写しであるが、そこには、使用商品と相違する「接着テープ」、「T-3100」、「カラー 27」等が表示されていることから、使用商品を納品したことを証明したものとはいえない。
エ 乙第22号証について
被請求人は、使用商品の原反とサンプル台帳に貼付の「MCS-10」のサンプルの繊維混合率、糸密度の試験結果(乙22)がほぼ一致していることから、サンプル台帳が要証期間又は商談前に作成された旨主張している。
しかしながら、サンプル台帳の商品サンプルは、原反(乙13)と品質がほぼ一致していることから、原反を用いて作成されたものであるとしても、原反が作成された時期が明らかにされておらず、サンプル台帳の作成時期を特定することはできない。
オ まとめ
以上のとおり、サンプル台帳及びハンガー下札の使用時期については何ら証明されていないから、本件商標が商品又は商品の包装に付して使用されたものとはいえない。
また、被請求人は、サンプル台帳は商談で使用するが頒布先では保管していないこと、サンプル台帳の頒布記録は残っていないことなど主張するのみであるから、サンプル台帳が、使用商品の広告のために頒布、使用されたものと認めることもできない。
(3)本件商標と使用商標との同一性について
本件商標は、手書き風の「Lotus」「ロータス」の文字を併記したものである。
一方、使用商標は、サンプル台帳(乙3の1及び2、乙11)で使用される「LOTUS」と「ロータス」であるから、使用商標は、本件商標と欧文字と片仮名それぞれの文字綴りを同じくするものであるから、本件商標と社会通念上同一のものと認められる。
(4)使用商品の帰属について
取消請求に係る指定商品は、第24類「織物」であるので、使用商品が「織物」の範ちゅうに属するかについて以下検討する。
ところで、特許庁商標課編「商品区分解説[改訂第3版]」によれば、第24類「織物」の解釈には、「この概念には生地のみが属し、例えば、『靴磨き布』『眼鏡ふき』等のように、生地を特殊な形態、寸法に加工したものは含まれない。」と説明されている。
そして、使用商品は、「伸びるインサイドベルト」(甲13)で、スカートやスラックスなどのウエストに、折れにくく型崩れにくくするもの(甲11)として、ズボン・スカートの胴回りの内側に縫いつけ使用するものである(甲10)。
また、使用商品は、ポリエステルのたて糸とよこ糸を組み合わせたもので(乙22)、平たく作った布地(乙13)をテープ状(幅20mmないし30mm:乙6ないし乙9)に裁断されたものである。
そうとすれば、使用商品は、織物の原反をテープ状に裁断したものであって、織物であることに変わりはないから、特殊な形態、寸法に加工したものでなく、「織物」の範ちゅうに含まれる商品ということができる。
(5)小括
以上のとおり、被請求人提出の乙各号証によっては、要証期間に本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標が、取消請求に係る指定商品について使用されたものと認めることができない。
ほかに、要証期間に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定商品のいずれかについて本件商標の使用の事実を認めるに足る証拠の提出はない。
なお、当審は、被請求人に対し、さらに期間を指定して答弁の機会を与えたが、被請求人は何ら答弁していない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定商品について、本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-09-24 
結審通知日 2012-09-26 
審決日 2012-10-10 
出願番号 商願昭34-25576 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (224)
最終処分 成立  
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 瀬戸 俊晶
田中 亨子
登録日 1960-10-22 
登録番号 商標登録第558951号(T558951) 
商標の称呼 ロータス 
代理人 安形 雄三 
代理人 加藤 智恵 
代理人 大島 厚 
復代理人 高橋 孝仁 

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