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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X4144 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X4144 |
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管理番号 | 1269618 |
審判番号 | 無効2012-890038 |
総通号数 | 159 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2013-03-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2012-05-08 |
確定日 | 2013-01-21 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5297642号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5297642号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 登録第5297642号商標(以下「本件商標」という。)は、「CBTセンター」の文字を標準文字で表してなり、平成21年9月17日に登録出願、第41類「心理療法又は精神療法によるカウンセリングの知識の教授及びこれらに関する研究会・講習会の企画・運営又は開催,心理療法又は精神療法によるカウンセリングに関する資格付与のための資格検定試験の実施及び資格の認定並びに資格の付与,心理療法又は精神療法によるカウンセリングに関する書籍・電子出版物の制作」及び第44類「心理療法又は精神療法によるカウンセリング,医業・健康のための心理検査・心理相談及びカウンセリング」を指定役務として、平成22年1月29日に設定登録されたものである。 2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第58号証を提出した。 (1)無効事由 本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、商標法第46条第1項第1号により無効にされるべきである。 (2)無効理由 ア 「CBT」の意義・使用状況について (ア)本件商標「CBT」からなる欧文字3文字は、「Cognitive Behavior Therapy」あるいは「Cognitive Behavioral Therapy」の頭文字をとった略語であり、日本語では、「認知行動療法」を意味する語として普通に用いられている用語であり、需要者・取引者に知られているものである。 「認知行動療法」(CBT)は、認知(ものの受け取り方や考え方)に焦点を当てながら気分や行動を調整して精神疾患を治療する精神療法の一つで、欧米では30?40年の歴史があるが、我が国に積極的に紹介されるようになったのは、1980年代後半以降である(甲4、甲5)。 精神科の治療方法としての認知行動療法は、1960年代に、米国でアーロン T.ベック(Aaron T.Beck)がうつ病に対する精神療法として開発したものであるが、その後、うつ病は勿論のこと、不安障害やストレス関連障害、パーソナリティ障害、摂食障害、統合失調症などの各種の精神疾患に有効であることが実証され、米国は勿論、世界的に注目されることになった。 (イ)日本でも厚生労働科学研究をはじめとして、認知行動療法の有用性を実証する研究成果が積み重ねられ、精神疾患はもちろんのこと、身体疾患に伴う精神的ストレスヘの対処、さらには、学校や職域、地域、法律関係の領域など、多方面で活用されるようになってきている(甲8ないし甲32、甲48ないし甲58)。特に2010年には、厚生労働大臣より、医者が行う、うつ病に対する認知行動療法に限って医療保険点数化されることが決定している(甲58)。すなわち、これは、認知行動療法の治療効果を国が認めたということがいえる。 近年の日本における認知行動療法の研究・発展はめざましく、認知行動療法を示す「CBT」の語も急速に精神療法の専門家、精神医療の従事者、病院等に浸透している。また、ここ数年では、新聞・テレビ等のマスコミでも認知行動療法がしばしば取り上げられており、「CBT」の語は、精神療法の専門家のみならず、一般的にも知られるに至っている。こうした背景のもと、認知行動療法及びこれを示す「CBT」は、国内外の学会誌・紙、医療雑誌、専門書籍・一般書籍、論文、インターネットのウェブサイト等で数多く紹介されている(甲8ないし甲32、甲48ないし甲58)。 請求人が提出した証拠から明らかであるとおり、「CBT」の語は、2000年初頭?中頃には「認知行動療法」を意味する語として普通に用いられ、需要者・取引者に知られているものであることがいえる。そして、本件商標の査定時である、2010年1月13日には少なくともそれ以上の状況であることがいえる。 (ウ)上記のことは、我が国における「認知行動療法」の発展に寄与し、研究・啓発活動等を行ってきた学会である、「日本認知療法学会」(徳島県鳴門市、理事長:大野裕、甲2)及び「日本行動療法学会」(宮崎県宮崎市、理事長:杉山雅彦、甲3)も意見書において述べているところである(甲4、甲5)。 イ 本件商標の識別力について (ア)上記アで述べたとおり、本件商標の「CBT」にかかる部分については、「認知行動療法」を意味する略語であることが需要者・取引者(医療従事者)に知られている。一方、本件商標の「センター」の部分は、英語の「center」に語源を有し、「場所、施設」といった意味内容を有する語(甲6)として、我が国の一般需要者になじみのある外来語であり、日本語の中におけるカタカナ語の代表格ともいえる語である(甲7)。さらには、「センター」の語は、医療施設・医療総合施設を表す「医療センター」、福祉活動を行う「福祉センター」といったように別の語と結合し複合語を構成する使われ方が一般にされている(甲7)という事情があることから、「医療施設」、「医療総合施設」といった意味内容をも想起するものである。 (イ)以上より、本件商標は、全体として「認知行動療法を提供する場所」、「認知行動療法を施す施設」、「認知行動療法に関する医療総合施設」等の意味内容を容易に連想・想起するものであるといえ、本件商標の指定役務である、「心理療法又は精神療法によるカウンセリングの知識の教授及びこれらに関する研究会・講習会の企画・運営又は開催,心理療法又は精神療法によるカウンセリングに関する資格付与のための資格検定試験の実施及び資格の認定並びに資格の付与,心理療法又は精神療法によるカウンセリングに関する書籍・電子出版物の制作」及び「心理療法又は精神療法によるカウンセリング,医業・健康のための心理検査・心理相談及びカウンセリング」との関係では、役務の内容を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当し、商標としての機能である出所識別力を有しないものである。 (ウ)したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。 3 被請求人の主張 被請求人は、答弁していない。 4 当審の判断 (1)請求人の主張及び同人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。 ア 「認知行動療法」は、認知(ものごとの受け取り方や考え方)に焦点を当てながら気分や行動を調整して精神障害を治療する精神療法の一であり、1960年代に米国で開発され、1970年代からの臨床研究によって、各種精神障害に有効であることが実証され、世界的に注目されるようになった。そして、同療法は、1980年代後半以降、我が国においても積極的に紹介されるようになった(甲4、甲5、甲32)。 イ 「認知療法 NEWS」(2001年12月・日本認知療法学会事務局発行)において、「1980年代にオックスフォード大学の・・・が神経性過食症・・・への認知行動療法(以下CBTと略す)の有効性を報告して以来、・・・」との記載があり、同文の中で認知行動療法の略語として「CBT」の表記が複数に亘り記載されているほか、2004年9月の同「認知療法 NEWS」、2004年12月の同「認知療法 NEWS」においても、「CBT」の表示あるいは用語が、いずれも複数に亘り掲載されている。また、2005年6月の同「認知療法 NEWS」において、「認知行動療法(CBT)」の表示が掲載され、「CBT」の表示あるいは用語が、いずれも複数に亘り掲載されていることが認められる(甲8ないし甲11)。 ウ 「2006 今日の治療指針」及び「2010 今日の治療指針」には、いずれも、「認知行動療法(CBT)」の項が設けられ、その説明が掲載されている(甲13、甲14)。 また、2006年9月発行の「不安障害の臨床心理学」(甲25)には、「認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy:以下CBT)」の記載があり、平成15年(2003年)12月発行の「よくわかる うつ病のすべて」(甲26)には、「認知行動療法 Cognitive Behavioral Therapy(CBT)」の記載があり、2005年5月発行の「こころの科学」(甲28)、2009年3月発行の「PTSDの持続エクスポージャー療法」(甲30)及び2007年8月発行の「認知行動療法」(甲31)には、「認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT)」の記載がある。 エ 2008年6月発行の「気分障害」(甲16)、2006年2月発行の「EBM 精神疾患の治療」(甲22)及び2008年4月発行の「パニック障害ハンドブック」(甲23)の索引には、「CBT」が「認知行動療法」あるいは「cognitive behavioral therapy」に対応した語であることが示されている。 オ 複数の外国語文献(甲33ないし甲42、甲44同ないし甲47)においても、「CBT」が「Cognitive Behavior Therapy」あるいは「Cognitive Behavioral Therapy」を示す略語として、当該文献の本文や目次において掲載されていることが認められる。 以上によれば、「CBT」の文字は、「Cognitive Behavior Therapy」あるいは「Cognitive Behavioral Therapy」の頭文字を採った略語であり、本件商標の査定時までには、医療の関係において、「認知行動療法」を意味する語として知られ、「認知行動療法」を表すものとして普通に用いられていた語と認められるものである。 また、「センター」の文字は、英語の「center」に語源を有し、「場所、施設」の意味を有する語として、我が国において一般に親しまれた外来語であり(甲6、甲7)、加えて、「センター」の語は、例えば、「医療センター」「ヘルスセンター」「緊急センター」のように、他の語(文字)を冠して、複合語を構成する使われ方が一般に行われている実情があるといえる。 (2)本件商標は、「CBTセンター」の文字からなるものであるところ、「CBT」と「センター」とは間隔を置かず一連に表されているものであるけれども、両文字をもって構成されたと容易に理解されるものである。そして、前記(1)の認定事実及び事情に鑑みると、「CBTセンター」の文字は、前記各文字の意味合い及び「センター」の語の用例に照らし、全体として「認知行動療法の施設」の意をもって認識されるというのが相当である。 また、本件商標の指定役務は、1に記載のとおり、心理療法や精神療法によるカウンセリングに係る役務及び医業・健康のための心理検査・心理相談及びカウンセリングの役務と認められるものである。 しかして、本件商標「CBTセンター」をその指定役務について使用した場合、需要者・取引者は、「認知行動療法の施設」、「認知行動療法の医療施設」の意味合いを看取し、当該役務の提供場所を表したものと理解するに止まるというのが相当であるから、本件商標は、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ない標章のみからなるものというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。 (3)以上のとおり、本件商標は商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-11-07 |
結審通知日 | 2012-11-09 |
審決日 | 2012-11-21 |
出願番号 | 商願2009-71295(T2009-71295) |
審決分類 |
T
1
11・
272-
Z
(X4144)
T 1 11・ 13- Z (X4144) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 田中 幸一 |
特許庁審判長 |
野口 美代子 |
特許庁審判官 |
内山 進 前山 るり子 |
登録日 | 2010-01-29 |
登録番号 | 商標登録第5297642号(T5297642) |
商標の称呼 | シイビイテイセンター、シイビイテイ |
代理人 | 石田 昌彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 長坂 省 |
代理人 | 田中 克郎 |