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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X30
管理番号 1269575 
審判番号 不服2012-9057 
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-17 
確定日 2013-01-15 
事件の表示 商願2011- 43822拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「播州伝承」の文字を標準文字で表してなり、第30類「穀物の加工品」を指定商品として、平成23年6月23日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『播州伝承』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中『播州』は『今の兵庫県の南西。』を指称する旧国名『播磨』の別称であり、また、『伝承』は『伝え受けつぐこと。』等を意味し、本願商標全体として『兵庫県で伝え受けつぐこと』程の意味合いを把握、理解することから、本願商標をその指定商品中前記文字に照応する商品について使用しても、本願商標に接する取引者、需要者は、『兵庫県で伝え受けつがれた穀物の加工品』程の意味合いを認識するにすぎず、結局、本願商標は、単に商品の品質(産地)を表示したもので自他商品識別機能を果たさないものと言わなければならない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)本願商標は、前記1のとおり「播州伝承」の文字からなるものであり、その構成から「播州」及び「伝承」の文字(語)を結合してなるものと容易に認識し得るものである。
そして、その前半部の「播州」の文字(語)は、「播磨(今の兵庫県の南西部。)国の別称。」の意味を有する(広辞苑第六版)。
また、後半部の「伝承」の文字(語)は、「伝え受けつぐこと。また、その伝えられた事柄。」などの意味を有し(広辞苑第六版)、食品を取り扱う業界においても、「伝承の味」、「伝承の製法」、「伝承料理」のように、「味や製法を伝え受けつぐこと。その伝えられた味や製法」を意味するものとして一般に使用されているものであり、本願指定商品の分野においても別掲1のとおり、前記意味合いで使用されているものである。
さらに、別掲2のとおり、本願指定商品及びその他の食品の分野において、「その地方で伝え受けつがれた味や製法」について記述する際に、「○○伝承」(「○○」は地名。以下、同じ。)、「○○の伝承」のように「地名」及び「伝承」の文字(語)が共に使用されている実情がある。
そうとすれば、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、これを「播州地方で伝え受けつがれた味や製法による穀物の加工品」であることを表示したもの、すなわち商品の品質、産地を表示したものと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
(2)なお、請求人は、本来「伝承」の語は、生来的な性質として、物、特に市場において売買される商品とは馴染みにくい語であり、本願指定商品「穀物の加工品」の品質を表現する語として通常用いられるものではない。ましてや、単なる地名ではなく旧国名「播磨」の別称である「播州」を「伝承」に付加してなる本願商標「播州伝承」を、本願指定商品「穀物の加工品」との関係で用いることは、極めて特異なことであり独自性を有するものであるとして、本願商標は、指定商品の品質の間接的な表示に該当し、また、取引上一般的に使用されている事実も認められないため、自他商品識別力を有するものである旨、及び、この主張が妥当であることは、本願商標と同様に地名と「伝承」の文字を結合してなる複数の商標に係る登録例によって裏付けられる旨主張している。
また、請求人は、過去と現在とで出願商標を取り巻く状況に何ら変化がないのであれば、本願商標の登録の可否の判断は過去の登録例の判断と同一のものとなって然るべきである旨主張している。
しかしながら、商標が自他商品識別標識としての機能を有するか否かの判断は、査定時又は審決時における取引の実情を勘案して、その指定商品の取引者、需要者の認識を基準に判断すべきものであるところ、上記のとおり、本願指定商品及びその他の食品の分野において、「その地方で伝え受けつがれた味や製法」について記述する際に「地名」及び「伝承」の文字(語)が共に使用されている取引の実情があり、さらに、当該分野の商品は、味や製法が商品の品質において重要な要素であることからすれば、「播州」及び「伝承」の文字(語)を単に結合してなる本願商標は、「播州地方で伝え受け継がれた味や製法」であることを表すものとして、取引者、需要者に認識されるものと判断するのが相当であり、自他商品識別標識としての機能を有しないものというべきである。
さらに、近年、地域産業の活性化や地域おこしの観点から、地域の農林水産物や食品などの特産品に対する注目が高まっており、原材料や製法等の特性がその地域に起因するものであるとの情報を需要者に示すことにより、他の地域の商品との差別化を図り、その付加価値を高めていこうとする取組み
が各地で行われている実情があるから、前述のとおり判断するのが相当であって、他の登録例の存在によってこの判断は何ら左右されるものではない。
したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。
(3)してみれば、「播州伝承」の文字を標準文字で表してなる本願商標は、これをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者は「播州地方で伝え受け継がれた味や製法による穀物の加工品」であることを表示したもの、すなわち商品の品質、産地を表示したものと認識するにとどまるものであるものといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
以上のとおりであるから、本願商標が同法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(下線は、合議体で付記した。)
1 本願指定商品の分野における「伝承」の使用例
(1)「クロネコ・バイヤーズダイレクト」と称するウェブページにおいて、「手延べ 三輪素麺」について、「1200年の歴史を持つ素麺発祥の地『三輪』において受け継がれてきた、伝承の味となめらかな舌触りを味わえる逸品です。」と記載されている。(http://kauneko.com/shop/g/g10002735/)
(2)「ケンコーコム 健康メガショップ」と称するウェブページにおいて、「中華麺250g」の「商品説明」に、「『中華麺 250g』は、様々な調理法でお召し上がりいただける中華麺(乾麺)です。伊之助めんは、とくに主原料の小麦粉等については吟味の上、四百余年来の伝承の製法に基づいて作りだされたものです。」と記載されている。(http://www.kenko.com/product/item/itm_6918509572.html)
(3)「五島手延うどん協同組合」のホームページにおいて、「五島うどん」について、「麺匠達がつくる伝承の技は、遣唐使船の往来時、中国の浙江省岩担地区に現存する『索麺』が伝えられたといわれております。」と記載されている。(http://www.goto-udon.jp)
(4)「有限会社天野食品」のホームページにおいて、「古式うどん」について、「室町時代よりの伝承品」と記載されている。(http://www.amano-shokuhin.com/koshiki/kosiki.html)
(5)2008年2月15日付け北國新聞において、「ふるさとの味、若い人にも 伝承料理のレシピ、パソコンで管理 宝達志水町、74歳の井上さん 講習に活用」の見出しの下、「宝達志水町の山あい所司原の井上照子さんは、地元に伝わる山菜料理やそば、漬物など伝承料理のレシピをパソコンで管理している。」と記載されている。
(6)2009年4月5日付け日本農業新聞において、「うどん、そば類など101品目 作り方 分かりやすく/『埼玉の伝承料理集』 県が発行」の見出しの下、「主な伝承料理はまんじゅう、ジャム、手打ちうどん、野草料理など。」と記載されている。
2 食品の分野における「地名」及び「伝承」の使用例
(1)「株式会社 播磨灘」のホームページにおいて、「活煮」等について、「ふるさと播州伝承の味 瀬戸内海沿岸で受け継がれてきた味」と記載されている。(http://www.harimanada.co.jp/miyake/page_goods/itiran.htm)
(2)兵庫県のホームページにおいて、「『中播磨・食の伝承者』の紹介」の見出しの下、「『中播磨・食の伝承者』一覧表」の「項番21」の「自己PR」に「県内外からの人の出入りも多い所ですので、播磨の伝承料理などを若い人・子供たちに伝えていきたいです。」と記載されている。(http://web.pref.hyogo.jp/ch03/ch03_3_000000121.html)
(3)「贈る一休」と称するウェブサイトにおいて、「【料亭旅館 金城樓】加賀伝承 治部詰め合せ」について、「金沢に古くから伝わる煮物料理の治部。とろみの効いた金城樓自慢の特製出汁に鴨肉やすだれ麩を合わせた絶品料理です。」と記載されている。(http://shop.ikyu.com/shMain/shItemDtl.asp?shopId=500664&itemNo=10018716)
(4)「わが街とくさんネット」と称するウェブサイトにおいて、「福井県銘茶 お茶の大三 【越前伝承】豆入り上番茶ティーバッグ」について、「【豆入り上番茶】は古くから越前福井に伝わる炒った大豆の入った大衆茶です。」と記載されている。(http://www.wagamachi-tokusan.jp/index.php/m/product_detail?gf_mph=211)
(5)「高島屋オンラインストア」と称するウェブサイトにおいて、「【高島屋限定】金澤伝承の味『じぶ煮』と半生うどん詰合せ」について、「金澤の代表的郷土料理『じぶ煮』。・・・伝承された深い味わいをご賞味ください。」と記載されている。(http://www.takashimaya.co.jp/shopping/gift/wintergift/1000001076/1000001079/-/ps_id/4211449/storeCode/ECST0001/c_cd/1000001079)
(6)「美濃加茂市観光協会」のホームページにおいて、「観光協会会員 八尋産業株式会社」の見出しの下、「どて煮 岐阜の伝承食品」と記載されている。(http://www.city.minokamo.gifu.jp/ajisai/minokamo_new_hp/kankou/member/mem_39.html)


審理終結日 2012-11-09 
結審通知日 2012-11-16 
審決日 2012-11-29 
出願番号 商願2011-43822(T2011-43822) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 薩摩 純一 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 高野 和行
梶原 良子
商標の称呼 バンシューデンショー、デンショー 
代理人 特許業務法人 有古特許事務所 

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