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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 037 |
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管理番号 | 1268462 |
審判番号 | 取消2011-301062 |
総通号数 | 158 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2013-02-22 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2011-11-24 |
確定日 | 2013-01-04 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3079978号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第3079978号商標(以下「本件商標」という。)は、「ハウスクリニック」の文字を横書きしてなり、平成4年9月28日に登録出願、第37類「建築工事一式,塗装工事,内装仕上工事,防水工事,管工事,電気工事」を指定役務とし、特例商標として同7年10月31日に設定登録され、その後、同17年11月8日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の請求の登録は、平成23年12月13日にされたものである。 第2 請求人の主張の要点 請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証の1及び2を提出している。 1 請求の理由 (1)請求人は、本件商標について、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが継続して3年以上日本国内においてその指定役務について使用しているか否かの調査を行った。 (ア)広島県広島市安佐北区落合1-48-1-704号付近において調査を行ったところ、建築会社、建具業者及び管理リフォーム業者によると、いずれも「ハウスクリニックという会社は聞いたことがない。」とのことであり、また、当該地区の法人会及びNTTの電話帳には、「有限会社ハウスクリニック」は掲載されていない。 (イ)本件商標権者の登記住所において、建物(マンション)の郵便ポストを確認したところ、「有限会社ハウスクリニック」の表示はなかったし、上記住所に最も近い駅の前の不動産業者に聞いたところ、「ハウスクリニックという会社は聞いたことがない。」とのことであった。 (ウ)本件商標権者の登録住所においても調査を行ったが、そこには「株式会社アサ・テクノ」があったが、その会社の看板等に「有限会社ハウスクリニック」の看板等の広告表示はなかったし、「株式会社アサ・テクノ」の隣で工事をしていた業者にも確認したが、「ハウスクリニックという会社は聞いたことがない。」とのことであった。 (2)以上のような商標不使用の調査結果であり、また、不使用についての正当な理由もないと思料されるので、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消されるべきである。 2 弁駁の理由 (1)「有限会社ハウスクリニック」が、平成3年6月14日の会社設立以来今日まで、建設業として営業している旨の被請求人の主張については認める。 しかし、税務申告書は、商標法でいう取引書類には該当せず、また、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内で商標権者が建設業の営業をしていたからといって、本件商標を使用していたということにはならない。営業を行っていることと、登録商標の使用をしていることとは、全く別の事柄であるからである。 (2)登録商標の使用とは、「会社名称を使って営業していること」ではなく、商標法でいう登録商標「ハウスクリニック」の使用をしていることであり、商標法第50条第1項が義務付けているのは、「登録商標と同一の商標」の使用であって、「商標の使用状態は、それぞれの状況によって異なることは当然だ。」との被請求人の主張は全くの誤りである。登録商標の使用というためには、常に登録商標「ハウスクリニック」と同一の商標を使用していることが必要である。 よって、商標「有限会社ハウスクリニック」を使用した場合には、本件商標「ハウスクリニック」の類似商標の使用であって、同一商標の使用には該当せず、取消しを免れないのである。 商標権者は、「有限会社ハウスクリニック」の商標の使用はしていても、本件商標の使用をしていないことが明らかである。 (3)被請求人の提出に係る乙第2号証の1及び2は、商標権者が発行した請求書の控であることは分かるが、これらは単なる社内文書であって、その日付「2010年1月31日」及び「2011年1月31日」については、本件審判の請求の登録後に商標権者がいかようにも記載することができるものであり、第三者による証明がない限り、これらの日付が真実であるということはできない。 たとえ、これらの日付が真実であることが証明されたとしても、「有限会社ハウスクリニック」の表示は、単なる請求書の発行人としての商号を記載したものであって、本件商標の使用をしたことにはならない。 甲第1号証の1及び2は、それぞれ乙第2号証の1及び2から「有限会社ハウスクリニック」の表示を削除したものであり、このように、上記請求書から「有限会社ハウスクリニック」の表示を削除すると、請求書の発行人が誰なのか全く分からなくなってしまうことが明らかである。よって、このような場合には、「有限会社ハウスクリニック」は、単なる請求書の発行人を示す商号の表示であって、商標法でいう登録商標の使用には該当しない。 また、たとえ「有限会社ハウスクリニック」の表示が商標の使用に該当するとしても、「有限会社ハウスクリニック」は、本件商標と同一ではなく、類似の商標であって、登録商標と同一の商標の使用を義務付けた商標法第50条第1項でいう登録商標の使用には該当せず、取消しを免れないものである。 なお、乙第2号証の3の請求書は、その日付が「2012年1月31日」となっているので、これが真実のものであるならば、本件審判の請求の登録後のものということになるから、審判請求の登録前3年以内の登録商標の使用を立証すべき証拠とはならず、本件商標の使用の事実を証明する証拠たり得ないものである。 (4)商標権者が平成18年7月に看板を取付けたとの主張については認めるが、この事実は、本件審判の請求の登録前3年以内に該当しないので、たとえ乙第3号証の看板を取り付けたとしても、本件商標の使用の事実を証明したことにはならず、しかも、「この看板はその後すぐに取り外した。」と商標権者が自白しているので、この看板及びその写真(乙第3号証)は、本件商標の使用の事実とは無関係ということになる。 (5)以上のように、被請求人が答弁書において主張している点は、一部を除いてことごとく誤りであり、商標法第50条が要求する登録商標と同一の商標の使用実態があるとはいえない。 第3 被請求人の答弁の要点 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証(枝番を含む。なお、平成24年8月1日付け答弁書に係る乙第1号証ないし乙第3号証を乙第6号証ないし乙第8号証とした。)を提出している。 (1)商標権者は、平成3年6月14日の会社設立以来、一度も休業することなく今日まで、建設業として営業している(乙第1号証の1ないし5:平成19年度ないし同23年度の確定申告書写し)。 (2)商標権者が「ハウスクリニック」の会社名称を使って営業していること自体が大切であり、営業規模、商標の使用状態は、それぞれの状況によって異なることは当然である(乙第2号証の1ないし3:平成22年1月分、同23年1月分及び同24年1月分の株式会社アサ・テクノあての請求書控え写し)。 (3)平成18年7月に取付け及び撤去した看板の写真(乙第3号証)を提出する。 (4)請求人は、株式会社アサ・テクノあての請求書(乙第2号証の1ないし3)について、「第三者による証明がない限り真実であるということはできない」と主張しているので、乙第2号証の1及び2の写しについて、株式会社アサ・テクノが証明をしたものを提出する(乙第7号証の1及び2)。 (5)商標権者とアドバイザー契約を結んでいる伊藤和雄の陳述書及びアドバイザー手数料の振込状態を示す預金通帳の写しを提出する(乙第8号証の1及び2)。 (6)本件商標の使用を証明するものとして、乙第4号証の1及び2(株式会社アサ・テクノ作成に係る商標権者からの請求書の内訳明細書:平成22年1月分及び同23年1月分)、乙第5号証の1ないし5(商標権者の施工に関する林俊美の証明書及び取引書類等)を提出する。 第4 当審の判断 1 本件商標の使用について 被請求人は、平成3年6月14日の会社設立以来今日まで、休業することなく、「ハウスクリニック」の会社名称を用いて、建設業として営業している旨主張し、証拠を提出しているので、以下、検討する。 (1)乙第5号証の1ないし5によれば、以下の事実を認めることができる。 ア 乙第5号証の1は、広島市安佐北区口田南3丁目41-6在の「林 俊美」(以下「施主」という。)による平成24年9月9日付け「ハウスクリニック施工証明書」とするものであり、「私は平成22年5月に、ハウスクリニックの吉田さんにお願いして別紙にある工事をしてもらいました。」との記載がある。 イ 乙第5号証の2-1及び2-2は、有限会社ハウスクリニック発行の施主あての平成22年4月2日付け「御見積書」(写)であり、「合計金額」の記載とともに、「現場名」欄に「林ビル 202号室/浴室改修・台所床改修工事」の記載及びその工事に係る内訳が金額とともに記載されている。 ウ 乙第5号証の3は、施主と商標権者との間で締結された平成22年4月19日付け「工事請負契約書」(写)であり、「工事名」欄に「浴室改修・台所床改修工事」の記載、「工事場所」欄に「広島市安佐北区口田南3丁目41-6 林ビル 202号室」の記載、「工事内容」欄に「見積書内訳のとおり」の記載、「工期」の「着工予定」欄に「平成22年5月10日」の記載、「完成予定」欄に「平成22年5月31日」の記載及び「契約金額」欄に「¥376,000」の記載がある。 エ 乙第5号証の4は、商標権者から施主にあてた平成22年5月31日付け「請求書」(写)であり、「品名」欄に「林ビル202号室 浴室改修・台所改修工事契約金額」の記載、「数量」欄に「一式」の記載、「金額」欄に「376000」の記載及び「税込合計金額」欄に「394,800.-」の記載がある。 オ 乙第5号証の5は、商標権者から施主にあてた平成22年6月30日付け「領収書」(写)であり、「但」欄に「林ビル202号室 浴室改修・台所床改修工事」の記載及び該領収書中央に「394,800.-」の記載がある。 (2)上記(1)において認定した事実によれば、以下のとおり判断するのが相当である。 商標権者は、施主との間において、「浴室改修・台所床改修工事」について、平成22年4月2日に見積りをした後、完成予定を同年5月31日とする工事請負契約をし、該工事費用の請求をしたことが認められ、施主は、同年6月30日に該工事の費用を商標権者に支払ったものといえる。 そして、これら一連の取引における見積書、契約書、請求書及び領収書の写しには、「有限会社ハウスクリニック」との記載があることが認められるところ、該「有限会社ハウスクリニック」の表示は、その構成全体をもって会社名を表したものと理解されるものではあるものの、いわゆる商号商標と称されるものにあっては、商品又は役務の出所識別に当たり、その構成中にある会社の種類を表す「有限会社」等の部分を捨象した残余の部分が要部たり得ることに鑑みれば、該表示にあっては、その構成中の「ハウスクリニック」の文字部分が役務の出所識別に係る要部とみるのが相当である。 そうすると、上記取引書類における「有限会社ハウスクリニック」の表示については、その構成中の「ハウスクリニック」の文字に相応する「ハウスクリニック」の称呼を生ずるものであり、該称呼は、本件商標から生ずる称呼と同一のものであるから、該表示は、本件商標と社会通念上同一といえるものである。 してみれば、商標権者が上記取引書類について「有限会社ハウスクリニック」の文字を表示した行為は、「浴室改修・台所床改修工事」という役務に関する取引書類に本件商標を付して頒布したものといえる。 2 請求人の主張について 請求人は、商標法第50条第1項の規定は、登録商標と同一の商標の使用であって、類似商標の使用は、同一商標の使用には該当しない旨主張している。 しかしながら、同規定における「登録商標」については、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。」とされ、単なる物理的同一にこだわらず、取引社会の通念に照らして同一と認識し得る商標をも含めているところ、本件商標と使用商標とが社会通念上同一であることについては、上記のとおりであるから、この点に関する請求人の主張は、採用することができない。 3 むすび 以上によれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者によって本件審判の請求に係る指定役務中「浴室改修・台所床改修工事」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認めることができる。 したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-11-06 |
結審通知日 | 2012-11-08 |
審決日 | 2012-11-20 |
出願番号 | 商願平4-251500 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(037)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 薫、原田 信彦 |
特許庁審判長 |
寺光 幸子 |
特許庁審判官 |
酒井 福造 田中 敬規 |
登録日 | 1995-10-31 |
登録番号 | 商標登録第3079978号(T3079978) |
商標の称呼 | ハウスクリニック |
代理人 | 内田 和男 |