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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X293043 |
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管理番号 | 1268386 |
審判番号 | 不服2011-18983 |
総通号数 | 158 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2013-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-09-02 |
確定日 | 2012-12-07 |
事件の表示 | 商願2010-21155拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 本願商標 本願商標は,「丹波黒どり」の文字を普通に用いられる方法で横書きしてなり,第29類,第30類及び第43類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成22年3月18日に登録出願されたものであり,その後,指定商品及び指定役務については,原審における平成22年10月25日付けの手続補正書により,第29類「鶏肉,卵,鶏肉製品,とり肉を主材とする惣菜,加工卵,鶏肉又は鶏卵を使用したカレー・シチュー又はスープのもと,鶏肉を加味した炊き込みごはんの素,鶏肉又は鶏卵を使用したお茶漬けのり・ふりかけ」,第30類「鶏肉又は鶏卵を使用した菓子及びパン,鶏肉又は鶏卵を使用した又は鶏料理用のウースターソース・グレービーソース・ケチャップソース・しょうゆ・食酢・酢の素・そばつゆ・ドレッシング・ホワイトソース・マヨネーズソース・焼肉のたれ,鶏肉又は鶏卵を使用した又は鶏料理用の穀物の加工品,鶏肉又は鶏卵を使用したぎょうざ・サンドイッチ・しゅうまい・すし・肉まんじゅう・ハンバーガー・ピザ・べんとう・ホットドッグ・ミートパイ・ラビオリ」及び第43類「鶏料理を主とする飲食物の提供」に補正されたものである。 第2 原査定の拒絶の理由(要点) 原査定は,「本願商標は,『丹波黒どり』の文字を書してなるところ,食品を取り扱う業界において,『兵庫県丹波地方』のことを『丹波』,『黒鶏』のことを『黒どり』と称していることが確認できる。そうすると,本願商標に接する需要者は,その指定商品および指定役務との関係においては,全体として『兵庫県丹波地方の黒鶏を使用した商品及び兵庫県丹波地方の黒鶏を使用した料理の提供』であることを端的に表示したものであることを理解,認識するにとどまるから,本願商標は,単に商品の品質及び役務の質を表示したにすぎないものであって,自他商品・役務の識別標識としての機能を果たし得ないものというのが相当である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記旨の商品及び役務以外の指定商品・指定役務に使用するときは,商品・役務の品質・質の誤認を生ずるおそれがあるから,同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。 第3 当審における手続の経緯 当審において,平成24年5月29日付けの審尋(以下単に「審尋」という。)により,請求人に対し,「本願商標は,『丹波地方で飼育された黒鶏』ほどの意味合いを容易に理解させるから,これをその指定商品及び指定役務中,第29類『鶏肉,卵,鶏肉製品,とり肉を主材とする惣菜,加工卵』及び第43類『鶏料理を主とする飲食物の提供』に使用するときは,これに接する需要者に,『丹波地方で飼育された黒鶏』の肉・卵であること,『丹波地方で飼育された黒鶏』を使用した商品であること,『丹波地方で飼育された黒鶏』を使用した鶏料理を主とする飲食物の提供であることを理解させるにとどまるから,商品・役務の品質・質を表示する標章のみからなるものといわなければならない。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する」旨と,「請求人は,請求書において,本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものである旨主張していると思われるが,本願商標が使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品・役務であることを認識することができるに至っているということはできない」旨,開示し,請求人に意見を求めたところ,請求人は,平成24年7月10日付け回答書(以下単に「回答書」という。)を提出した。 第4 当審の判断 当審は,本願商標がその指定商品中,第29類「鶏肉,卵,鶏肉製品,とり肉を主材とする惣菜,加工卵」に使用されるときは,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当することについて (1)「丹波」について 本願商標は,前記第1のとおり,「丹波黒どり」の文字を書してなるものであるところ,そのうち「丹波」の文字部分は,「旧国名。大部分は今の京都府,一部は兵庫県に属する」(「広辞苑 第六版」株式会社岩波書店)とされるものであり,この「丹波」地方で生産される食物や,「丹波」地方で飼育される鶏について,「丹波○○」(○○は食物の名称など。以下同様。)や「丹波の○○」,「丹波産○○」などと表している事実が,以下のように見受けられる。 ア 「丹波栗」の見出しで「丹波地方から産する栗」との記載(「広辞苑 第六版」株式会社岩波書店)。 イ 「荒木食品株式会社」に係るウェブサイト(http://arakifoods.com/) 「丹波米コシヒカリ」などが紹介されており,「丹波地方」の見出しで「丹波地方とは,兵庫県の中東部と京都府の北中部あたりのことをいいます。」との記載。 ウ 「丹波の黒太郎」のウェブサイト(http://kurotaro.co.jp/) 「丹波黒大豆とは?」の見出しで「丹波地方(兵庫と京都にまたがって広がる地域)を原産とする品種で,大粒で皮の薄いことが特徴です。」との記載。 エ 「たんばる」のウェブサイト(http://www.tambaru.com/) 「正真正銘の丹波産のみをあつかう『丹波ブランド商品』のオフィシャルサイトです。」,「丹波の有機野菜セット/丹波有機野菜セットをお届け。」「24年度産丹波米/年間予約受付中/丹波のお米(源流米・天日干し米・篠山米・有機米)の24年度産の年間予約を受け付け開始」,「丹波産天然蜂蜜/丹波の里山に咲く花の蜜を集めました。香り豊かな丹波の純天然はちみつ」との記載。 オ 「篠山市観光情報」のウェブサイト(http://tourism.sasayama.jp/2010/09/post-124.html) 「丹波産のお米は小多田屋 | 丹波産のお米を販売」「丹波の美味しいお米をお届けいたします。」との記載。 カ 「南丹すまいる」のウェブサイト(http://www.nantan-smile.co.jp/SHOP/kyoto-tanbakoshi-2-.html) 「京都丹波産 こしひかり 2等 玄米 30kg」「地元京都丹波のこしひかり! とても人気の高い品種で,ご飯の粒が白く,艶があり,かたちがよい。噛むとほどよい粘りがあり,かすかな甘みと香りがあり,冷めてもおいしく召し上がれます。」との記載。 キ 「丹波産松茸どっとこむ」のウェブサイト(http://fuji-masa.sakura.ne.jp/) 「丹波産松茸どっとこむでは,ふじまさ商店の店主 足立勝幸が 丹波の名産を皆様にお届けいたします。第一弾は 丹波の秋の味覚の王様 丹波産松茸です。」との記載。 ク 「とり安」のウェブサイト(http://toriyasu.net/cooking.html) 「とり安の水だきについて/白い鶏がらスープで召し上がって頂く水だきです。鶏は朝びきの特選京都丹波地鶏を使用。しっかりとした鶏なので煮込んでも煮崩れせず,深い味わいをお楽しみ頂けます。」「特選若鶏水だきコース/京都丹波産地鶏を使用した当店自慢の『水だき』をコースでご堪能下さい。」との記載。 ケ 有限会社鳥功に係るウェブサイト(http://www.torikoh.com/) 「自然が育てた丹波鶏を三大市場へ直ラインで」の見出しで「養鶏発祥の地と言われる丹波・但馬地方は今でも盛んに養鶏が行われています。」「自然が育てた丹波鶏は午前中に処理した新鮮な鶏肉を,立地条件のよさを最大限に生かし,その日の午後に販売・調理していただけるように,神戸・大阪・京都の三大消費市場へと届けられます。」との記載。 コ 「daiei」に係るウェブサイト(http://www.daiei.co.jp/brand/oishiku_tabetai/topics/0907/index.html) 「すこやか育ち 丹波地鶏」の見出しで「丹波地方(兵庫県及び京都府北部)の指定農場で,肉の旨みにこだわり,80日間じっくり育てました。」「丹波が位置する兵庫県は,戦後から養鶏がさかんな,いわば日本養鶏発祥の地。丹波地鶏は経験豊富な生産農家の広々とした鶏舎で自由にストレスも少なく健康に育った鶏です。80日の間,適度な運動をして成長した鶏は,ほどよい歯ごたえと鶏本来のコクのある味わいです。」との記載。 サ 「ひょうごっつくーる」のウェブサイト(http://hyo5296.jp/gourmet/tanba_ino_shika_cho.html) 「丹波地鶏を紹介します!/しっかりとした歯ごたえとコクを味わえる,丹波産の地鶏。素朴で奥深い美味をご堪能ください!」との記載。 シ 「ぐるなび 神奈川版」の「京だし,炙り かごの屋 川崎駅前大通店」のウェブサイト(http://r.gnavi.co.jp/b804910/custom2.html) 「“大自然で育った絶品の丹波地鶏” かごの屋のこだわり」「健康的な飼料で育てられ,広い運動場を走り回って育った丹波地鶏の肉の弾力とコク,脂の旨味は絶品です。丹波地鶏は,京の里山『丹波』の大自然の中で育ちました。」との記載。 ス 「黒門市場」のウェブサイト(http://www.kuromon.com/_shoku/r_tori.php) 「旬の食材 『鶏肉』」の見出しで,「【丹波地どり】 生産地:兵庫県丹波市 明るく風通しの良い開放鶏舎で1坪辺り32羽のゆったり飼育,長期飼育と適度な運動が程よい食感とコク,旨味を生んでいます。全期間,ワクチン以外無投薬で飼育していますから安全で安心してお使い頂けます。適度な歯ごたえと甘みがあり,鍋物や塩焼きに適しています。」との記載。 セ さらに,請求人自身のウェブサイト(http://www.yamamoto-corp.jp/kurodori)において,「地鶏 丹波黒どりが育む丹波・但馬地方」の見出しで,「丹波地方」と記載された写真を掲載し,「京都・兵庫両県にまたがる丹波山系のふもと,その自然豊かな亀岡,由良,篠山盆地では昔から山の幸・農作物に恵まれ,現在では丹波の黒豆,各種京野菜の栽培などが盛んに行われています。この自然の恵みが豊かな地で地鶏丹波黒どりは,のびのびと育っています。現在では,丹波地方の他に但馬地方でも生産しています。」との記載。 以上のアないしセからすると,食品の分野において,「丹波」の文字は,その食物・鶏が丹波地方で生産・飼育されたものであることを理解させる語として広く使用されているといえる。 また,上記ケ及びコからすると,丹波地方は,戦後から養鶏が盛んで,「養鶏発祥の地」と言われており,現在でも養鶏が盛んであることがうかがえる。 さらに,食物の名称(例えば○○)に「丹波」の文字を冠し,「丹波○○」という構成で,丹波地方産の食物が表されていることも多く(上記ア,イ,ウ,エ(丹波米)),「鶏」についても,丹波地方で飼育されるものが,請求人以外の者によって,「丹波地鶏」,「丹波鶏」及び「丹波地どり」というように同様の構成で表されていることが見受けられる(上記クないしス)。 (2)「黒どり」について 本願商標の構成中,「黒どり」の文字部分は,本願商標の指定商品及び指定役務との関係において,「黒鶏」を直ちに理解させるものであるところ,「黒鶏」は,「黒褐色の鶏」を表す語として,以下のように使用されている事実が見受けられる。 ア 「有限会社酒井フーズ」に係るウェブサイト(http://www.sakai-egg.jp/date_f.html) 「昔懐かしい 黒鶏」の見出しで,「昔懐かしい黒鶏は,昭和30年代初め頃に,日本各地でたくさん飼われていた黒褐色の鶏です。」との記載及び黒褐色の鶏の写真の掲載。 イ 「Kふぁーむ」と題するウェブサイト(http://asaka.sc/kodawari/nera.php) 「平飼い黒鶏 ネラの卵」の見出しで,「オランダ生まれの黒鶏 ネラとは?/『ネラ』とは,オランダ原産の良質な卵用種,黒鶏です。」との記載及び黒褐色の鶏の写真の掲載。 ウ 「有限会社水野谷鶏卵店」に係るウェブサイト(http://www.mizunoya-keiran.com/lnk9344/index.html) 「黒鶏を使っているお店」の記載と共に黒褐色の鶏の写真の掲載。「黒鶏の卵について」との記載。 エ 「株式会社三旺バイオテック」に係るウェブサイト(http://www.jatisystem.com/sunobiotech/poulet.html) 「プレノワールは国産の黒鶏です」との記載。 オ 「楽天市場」における「阪神酒販株式会社」に係るウェブサイト(http://item.rakuten.co.jp/kaisenshop/018-0249-106/) 「黒鶏のチキンカレー」の見出しで,「国産黒鶏を使用したレトルトカレーです。」との記載。 これらアないしオは,審尋において提示したものであるが,これら以外にも,以下のとおり見受けられる。 カ 「黒門市場」のウェブサイト(http://www.kuromon.com/_shoku/r_tori.php) 「【黒鶏(くろどり)】・・・ある時,味にこだわっているという但馬の人が来て,世界で一番美味しいとされる黒鶏をフランスで発見し,但馬で養鶏いているが絶対に自信があるから当店で扱ってほしいといわれ販売したところ,非常に好評でお客様も増えていき,今ではこの黒鶏の専門店が4?5店舗出来ました。この黒鶏の味はキジ肉とよく似た味で,もも肉は鍋物にはもちろん塩焼き・照り焼き・から揚げなど何に使っても美味しいのですが,少量のお酒を入れるのがさらに美味しく食すコツです。」との記載。 キ 「旬彩 香炉」のウェブサイト(http://www.wr-salt.com/kouro/home.html) 「黒鶏(プレノワール)のコース」「フランス原産の純黒鶏,プレノワールを使ったコース料理をご用意しております。鶏肉の世界基準と言われる,フランス農水省の『ラベル・ルージュ』認定鶏です。添加物を一切使わず天然資料で育てた,安全で非常に美味しい貴重な黒鶏を存分にお楽しみいただけるコース料理でお出ししております。」との記載及び黒褐色の鶏の写真の掲載。 ク 「朝日新聞」のウェブサイト(http://www.asahi.com/food/news/TKY200902190196.html) 「【山口】『やまぐち黒鶏』新ブランド狙え」との見出しの記事(2009年2月19日付け)において,「県農林総合技術センター畜産技術部(美祢市)は,日本農林規格(JAS)の基準を満たす県産地鶏「やまぐち黒鶏(くろどり)」の開発に初めて成功した。国の天然記念物,黒柏を品種改良した。歯ごたえが良くうまみもあるという。業界では商品化に向けた動きも起きている。」との記載及び黒褐色の鶏の写真の掲載。 以上のアないしクからすると,「黒鶏」の文字は,「黒褐色の鶏」を表す語として広く使用されているものといえる。 (3)丹波地方で飼育された黒鶏が,「丹波黒鶏」などと表されていることについて さらに,丹波地方で飼育された黒鶏が,「丹波黒鶏」,「丹波産黒鶏」及び「丹波産の黒鶏」と表されている事実が,以下のとおり見受けられる。 ア 「OLI(オリ)渋谷店」のウェブサイト(http://www.restaurant-oli.com/shibuya/info/000345.shtml) 「お料理の内容は当日の食材の入荷によりメニューを考案いたします,日替わりメニューとなっております。メニューの一例をご紹介いたしますと。・・・メインディッシュ(お肉又はお魚 どちらかをお選びください)お魚 メカジキのグリル カレー風味の様々なお野菜のソース/お肉 京都丹波産 黒鶏のロースト ブルーベリーソース」との記載。 イ 「袋町酒場 ねこまたぎ」のウェブサイト(http://gourmet.walkerplus.com/209461031210/) 「リピーター続出のお得な内容。飲み放題込で3500円! こだわりの無化調&手作りで,おいしさとリーズナブルさを両立。・・・大人気の手羽先は丹波産の黒鶏を使用。」との記載。 ウ 「女性のための厳選レストラン検索」のうちの「ブリーズ・オブ・トウキョウ」のウェブサイト(http://kirei.biglobe.ne.jp/gourmet/ikyu_restaurant/detail/100208/plan/10070430/) 「【丸ビル36階からの夜景とともに】食前酒付!世界三大珍味&オマール海老など贅沢食材を使った6皿ディナー」「〈メニュー〉丹波産黒鶏のいぶし焼とその赤ワイン煮込み」との記載。 (4)そうすると,本願商標「丹波黒どり」は,「丹波」の文字が丹波地方で生産・飼育された食物・鶏に広く使用され,また,「黒どり」に通ずる「黒鶏」の文字が黒褐色の鶏を表す語として広く使用されており,丹波地方で飼育された黒鶏が,「丹波黒鶏」,「丹波産黒鶏」及び「丹波産の黒鶏」と表されている事実を考慮すると,全体として「丹波地方で飼育された黒鶏(黒褐色の鶏)」程度を容易に理解させるものといわざるを得ない。 このことは,本願商標が,前記(1)アないしエ及びケないしスのように,食物の名称(黒どり)に,「丹波」の文字を冠した「丹波○○」という構成であることからも,いえるものである。 してみれば,本願商標は,これがその指定商品・指定役務中,第29類「鶏肉,卵,鶏肉製品,とり肉を主材とする惣菜,加工卵」に使用されるときは,これに接する取引者・需要者に,「丹波地方で飼育された黒鶏(黒褐色の鶏)」の肉・卵であること,「丹波地方で飼育された黒鶏(黒褐色の鶏)」を利用した商品であることを理解させるにとどまり,それ以上に,自他商品の識別標識として機能するとはいえないから,商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるといわなければならない。 したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。 2 請求人の主張について (1)請求人は,要するに,「丹波」は旧国名だけでなく,氏の一つとしても理解される上,旧国名と看取されたとしても,複数の府県にまたがる「丹波」は,現在の県名には置き換えられないから,産地を表すものとしては機能しない旨,主張する。 しかしながら,前記1(1)で示したとおり,食品の分野において,「丹波」の文字は,その食物・鶏が丹波地方で生産・飼育されたものであることを理解させる語として広く使用されている。 そうすると,「丹波」の文字が食物や鶏に使用されるときは,その食物・鶏が「丹波地方で生産・飼育されたものであること」を理解させるというのが自然であり,これを覆すに足る証拠を発見することができない。 そして,請求人は,そのウェブサイトにおいて,「丹波黒どりが育む丹波・但馬地方」,「この自然の恵みが豊かな地で地鶏丹波黒どりは,のびのびと育っています。現在では,丹波地方の他に但馬地方でも生産しています」と記載しており(前記1(1)セ),以上の記載からは,請求人自身さえもが,「丹波」の文字を,産地を表すものとして使用しているといわざるを得ない。 したがって,上記請求人の主張は,採用することができない。 (2)請求人は,要するに,本願商標の構成中「黒どり」の文字部分は,(「黒鶏」だとしても)一般的な国語辞典(例えば広辞苑)には掲載されておらず,また,「黒鶏」を「黒どり」と書するのは一般的には用いられていない旨,主張する。 しかしながら,前記1(2)で示したとおり,「黒鶏」は,「黒褐色の鶏」ほどを理解させるものとして,広く使用されている。 また,例えば「全国地鶏マップ」(http://www.jin.ne.jp/kita/map.htm)をみると,「津軽どり」「三河どり」「日南どり」「日向どり」「琉球どり」など,「地名」+「どり」の表記や,「上総赤どり」「安曇野赤どり」「甲州赤どり」「能登赤どり」「渥美赤どり」など,「地名」+「赤どり」の表記も多く見受けられ,さらに,「丹波地どり」の表記もあることからすると,本願商標の構成中「黒どり」の文字部分は,本願商標の指定商品・指定役務との関係において,「黒褐色の鶏」ほどを理解させるものといわなければならない。 したがって,上記請求人の主張は,採用することができない。 (3)請求人は,地鶏の場合,生産地域との関連性のある名称を付すケースが一般的であり,そのような名称がそれぞれ特定の地鶏を指すものとして機能してきているという実情がある。そして,58種類の地鶏の中で,「○○黒どり」と命名されているのは,本願商標「丹波黒どり」のみであるから,本願商標は,十分な識別力がある旨主張する。 しかしながら,本願商標が,「丹波地方で飼育された黒鶏」と認識され,「特定の地鶏を指すものとして機能」し,他の地鶏(例えば「但馬地どり」や「鳥取地どり」)と区別されて取引されていることのみでは,本願商標は,何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとはいえないから,出所表示として機能しているということはできない。 商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは,このような商標は,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠くものであることによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁)。 そして,丹波地方は,戦後から養鶏が盛んで,「養鶏発祥の地」と言われており,現在でも養鶏が盛んであることがうかがえるものであり,「黒鶏」は,黒褐色の鶏を理解させるものとして広く使用されており,さらに,「地鶏」や「赤鶏」を「地どり」「赤どり」と表記することも,広く行われている。 また,請求人によれば,地鶏の場合,生産地域との関連性のあるケースが一般的なのであり,現に,「丹波鶏」や「丹波地鶏」,「丹波地どり」といった表記が使用されていることも踏まえると,丹波地方で飼育される黒鶏に,「丹波黒どり」と表示することは,取引に際し必要適切であって,何人もその使用を欲するものであり,特定人による独占使用を認めるのは公益上適当でないというのが相当である。 したがって,上記請求人の主張は,採用することができない。 (4)請求人は,平成23年9月2日付けの審判請求書において,「本願商標『丹波黒どり』は,現に出願人の生産に係る鶏の標章として広く知られているから,本願指定商品中のいずれの商品に使用しても十分な識別力を有するものである」旨,述べている。 これは,仮に本願商標が商標法第3条1項3号に該当するものであったとしても,本願商標は,使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているから,商標法第3条第2項に基づき,商標登録を受けることができるものと判断すべきである,と主張しているようにも思われる。 前記第3で述べたとおり,当審は,審尋により,請求人に対し,「請求人は,本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものである旨主張していると思われるが,本願商標は,使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品・役務であることを認識することができるに至っているということはできない」旨,開示し,意見を求めたが,請求人は,回答書において,「本願商標は,商標法第3条第1項第3号には該当しないから登録すべきである」旨の主張をするのみで,本願商標が仮に同号に該当するとしても,同法第3条第2項により,登録すべきであるとする旨の主張は,していない。 しかしながら,念のため,この点について検討すると,商標登録出願された商標が,商標法第3条第2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの 業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するか否かは,出願に係る商標と外観において同一と見られる標章が指定商品とされる商品に使用されたことを前提として,その使用開始時期,使用期間,使用地域,使用態様,当該商品の数量又は売上高等及び当該商品又はこれに類似した商品に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきである(知的財産高等裁判所平成22年(行ケ)第10356号 平成23年3月24日判決言渡)。 そして,請求人から提出された平成22年10月25日付け手続補足書(以下「補足書」という。)における添付資料1は,2010年3月23日付け「鶏鳴新聞」の記事の写しであり,同記事には,本願商標と同一視し得る「丹波黒どり」の標章が見受けられるが,同新聞は,全国的な一般紙とはいい難いし,同日の記事以外に,報道等がされている様子はうかがえない。 また,補足書における添付資料2は,「国産銘柄鶏ガイドブック2007」の写しであり,同ガイドブックには,本願商標と同一視し得る「丹波黒どり」の標章が見受けられるが,同ガイドブックが,どの程度作成され,どの程度の範囲に配布されているのか,把握することができない。また,例えば,2008年や2009年のガイドブックにも継続して掲載されているのか否か,確認することができない。 これらの他,例えば,「丹波黒どり」のパンフレットの写し(添付資料3)や「コカコーラ社『爽健美茶』キャンペーンの商品パンフレット」の写し(添付資料5)も提出されているが,これらのパンフレットが,どの程度作成され,どの程度の範囲に配布されているのか,確認することができない。 そうすると,これらの証拠によっては,本願商標と同一視し得る商標が,例えば,長期間にわたって,全国的に,継続的に使用されていることを確認することができないから,本願商標は,使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品・役務であることを認識するに至っているということができない。 そして,これらの証拠のほかに,本願商標の使用開始時期,使用期間,使用地域,指定商品・指定役務の生産又は販売・取引の数量,並びに広告宣伝の方法及び回等を確認することはできない。 以上のことを総合考慮すると,本願商標は,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品・役務であることを認識することができるに至ったものということができないから,商標法第3条第2項の要件を具備しない。 3 結語 以上の次第であるから,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものとした審尋は,妥当であり,本願は,拒絶をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-09-27 |
結審通知日 | 2012-10-05 |
審決日 | 2012-10-18 |
出願番号 | 商願2010-21155(T2010-21155) |
審決分類 |
T
1
8・
13-
Z
(X293043)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松本 はるみ |
特許庁審判長 |
小林 由美子 |
特許庁審判官 |
小川 きみえ 守屋 友宏 |
商標の称呼 | タンバクロドリ、タンバドリ |
代理人 | 飯田 昭夫 |
代理人 | 上田 千織 |
代理人 | 村松 孝哉 |
代理人 | 江間 路子 |