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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) X03
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) X03
管理番号 1267122 
審判番号 無効2012-890010 
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-02-08 
確定日 2012-11-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第5366645号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5366645号の指定商品中、第3類「洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,せっけん類」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5366645号商標(以下「本件商標」という。)は、「ハミングナチュラル」の文字を標準文字で表してなり、平成22年6月7日に登録出願、第3類「かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,つけづめ,つけまつ毛」を指定商品として、同年9月28日に登録査定、同年11月5日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由として引用する登録商標は、以下のとおりであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4243520号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ハミング」の文字を標準文字で表してなり、平成9年7月7日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同11年2月26日に設定登録されたものである。
(2)登録第4832383号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおり、「HUMMING」の欧文字と「ハミング」の片仮名とを上下二段に横書きしてなり、平成16年5月11日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同17年1月14日に設定登録されたものである。
なお、上記引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、「引用商標」という。

3 請求人の主張の要点
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第66号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求の理由
(ア)引用商標の著名性について
請求人は、甲第4号証ないし甲第8号証に示す登録商標を商品「柔軟仕上剤(家庭用帯電防止剤、洗濯用柔軟剤)」(以下「請求人商品」という。)に使用していたが、これらの商標は、存続期間が満了し消滅している。これらの商標に代えて引用商標等を請求人商品に引き続き使用している。
請求人が、請求人商品を製造販売し始めたのは、1962年(昭和37年)である(甲第9号証、甲第13号証、甲第15号証)。
もともとは「花王ソフター」という名のもとに製造販売されていたが、1966年に、「ハミング」に改名したものである。
以来、請求人は、今日まで請求人商品の包装容器に「ハミング」の文字を表示し、製造販売を継続して行っている(甲第10号証ないし甲第13号証)。
そして、請求人は、主としてテレビを通して広告宣伝を行っている(甲第16号証ないし甲第41号証)。
その結果、「ハミング」の名は、本件商標の出願前から需要者、取引者の間に広く知られていた(甲第54号証)。なお、甲第54号証は、株式会社消費生活研究所/株式会社マーケティング・リサーチ・サービスが実施したベンチマーク調査についての2000年1月から2006年7月までの集計表であり、2006年を例にとると、首都30km圏の地域に在住する69才以下の主婦を対象として面接と留置を併用して行ったものである。
引用商標が著名であることについては、インターネット上のフリー百科事典「ウィキペディア」にもその名と国内メーカーの柔軟剤のシェアは2005年現在がトップになっていること等が掲載されている事実(甲第55号証及び甲第56号証)、あるいは、「日本有名商標集」にも掲載されている事実(甲第57号証)からしても疑う余地はない。
(イ)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、上記1のとおりであるから、その構成から「ハミングナチュラル」の称呼を生じるほか、「ハミング」の称呼も生じる。
すなわち、本件商標の構成は、全体として既成語ではなく、「ハミング」と「ナチュラル」の文字を結合した結合商標である。
本件商標は、前半部の「ハミング」は請求人の柔軟仕上剤、耐電防止剤に使用して、需要者や取引者の間に広く知られている「ハミング」と同じであり、後半部の「ナチュラル」は、古くから、識別力を有さない文字である(甲第59号証)。
このような、結合商標は、結合されている一つの語が、その指定商品との関係で需要者や取引者に広く知られていると、需要者や取引者は、その語を強く印象付けて記憶しているから、その結合は常に強固なものではなく、強い記憶の一つの語により取引を行う。
言い換えると、著名な商標は、強い指標力を有するために、結合商標の一構成部分であったとしても強い出所表示力で、独自の出所表示の機能を果たすから、需要者や取引者は、著名商標と同一の称呼部分をもって取引に及ぶのである(甲第60号証ないし甲第63号証)。
商標審査基準(改訂第9版、特許庁商標課編、甲第64号証)によれば、「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。」のである。
してみると、上記構成の本件商標は、請求人商品について使用され、需要者、取引者の間に広く知られている引用商標を含むものであり、これより、「ハミング」の称呼を生じることは疑う余地はない。
したがって、本件商標は、「ハミング」の称呼を生じる引用商標とは、称呼上類似する商標といわなければならない。
また、本件商標に係る指定商品は、引用商標1に係る指定商品中「せっけん類,化粧品,薫料,その他の香料類,つけづめ,つけまつ毛,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,歯磨き」と同一又は類似であり,かつ,引用商標2に係る指定商品中「かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,つけづめ,つけまつ毛」と同一又は類似の商品である。
してみると、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(ウ)商標法第4条第1項第15号について
前記のとおり、引用商標は、請求人商品の商標として古くから使用し、本件商標の出願前から現在に至るも請求人商品を示すものとして需要者や取引者に広く認識されている。
需要者や取引者の間に広く知られた商標は、強い指標力を有するため、本件商標のように商標の一部構成であったとしてもそれ自身の持つ強い出所表示力で独自の出所表示の機能を果す。
そのため、仮に本件商標が、引用商標に類似するものでないとしても、本件商標は、需要者や取引者の間に広く知られた「ハミング」の文字を有し、「ハミング」の称呼を含むが故に、需要者や取引者は、すでに馴染み親しんでいる引用商標と同一の文字及びその称呼の部分に注意が惹かれ、その指定商品との関係において、その出所を請求人又は請求人と何らかの関係のあるものと誤認し、混同をする。
してみると、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(3)むすび
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものであるから、無効とされるべきである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対し、何ら答弁をしていない。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、前記1のとおり、「ハミングナチュラル」の文字を標準文字で、同書、同大、等間隔でまとまりよく、一体に表したものと理解されるものである。また構成全体から生ずる「ハミングナチュラル」の称呼も冗長なものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものであって、殊更、これを「ハミング」と「ナチュラル」の文字部分とに分離して、称呼、観念しなければならないとする特段の事情が存在するとはいえない。
そして、本件商標中の「ハミング」が「口を閉じて声を鼻に抜いて旋律を歌うこと。」を、「ナチュラル」が「自然、天然」を意味する英単語又は外来語として一般に知られていることからして、本件商標は、これらの意味を有する二つの単語を並べて記載した造語とみることができる。
これに対して、引用商標は、別掲のとおり、「HUMMING」の欧文字と「ハミング」の片仮名とを二段に表してなるから、その構成文字に相応して「ハミング」の称呼及び「ハミング(口を閉じて声を鼻に抜いて旋律を歌うこと)」の観念を生じるものである。
してみれば、本件商標から生じる称呼「ハミングナチュラル」と引用商標から生じる「ハミング」の称呼とは、その音構成及び音数に明らかな差異を有するから、称呼上区別し得るものである。また、両者は、外観においても明らかな差異があり、観念においては比較できないものであるから、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 甲第9号証ないし甲第50号証を総合すると、以下の事実が認められる。
引用商標は、請求人の業務に係る商品「柔軟仕上剤(家庭用帯電防止剤、洗濯用柔軟剤)」(請求人商品)について、1966年(昭和41年)から本件商標の査定時(平成22年9月28日)以降も継続して使用され、かつ、請求人は、本件商標の登録出願前より、主としてテレビを通して請求人商品の宣伝広告活動を盛んに行ってきた結果、請求人商品を表示するためのものとして、本件商標の登録出願前より、洗濯用柔軟剤の商品分野において、その需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。
そして、その著名性は、本件商標の査定時(平成22年9月28日)においても継続していたものと認められる。
また、請求人は、1960年(昭和35年)から衣料用洗剤を、1964年(昭和39年)から合成洗濯糊を製造販売しているところである(甲第9号証ないし甲第11号証、甲第14号証、甲第15号証、甲第42号証、甲第47号証ないし甲第50号証)。
しかしながら、引用商標を構成する「ハミング」の文字は、「口を閉じて声を鼻に抜いて旋律を歌うこと。」(広辞苑第六版)を意味する語として、我が国において一般によく知られている平易な語であり、かつ、引用商標は、請求人の取り扱う多数の商品のうちの請求人商品について使用される、いわば個別的な商品を表示する商標であるから、その著名性の範囲も請求に係る指定商品すべてに及ぶものとは認め難く、請求人商品及びこれと用途、用法、生産者、取引系統、販売場所等を共通にする場合が多い「洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,せっけん類」の範囲に限られるというのが相当である。
イ してみると、本件商標は、前記アで認定したとおり、その構成中に、請求人商品について使用され、本件商標の登録出願前より、洗濯用剤の商品分野の需要者の間に広く認識されていた引用商標と同一の「ハミング」の文字を含むものであるから、本件商標は、その構成中に他人の著名商標を含むものというべきである。
そして、本件商標の指定商品中には、「家庭用帯電防止剤,洗濯用柔軟剤」と関連する「洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,せっけん類」が含まれているから、これをその指定商品中、「洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,せっけん類」について使用した場合、これに接する需要者は、その構成中の「ハミング」の文字部分に強く注意を惹かれ、引用商標を想起又は連想し、該商品が請求人又はこれと業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、その指定商品中「洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,せっけん類」については、商標法第4条第1項第15号に該当する。
次に、「洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,せっけん類」以外の指定商品に本件商標を使用した場合に、これらの商品と請求人商品との間に、出所の混同を生ずるおそれがあるか否かについてみるに、上記アで認定したとおり、引用商標の著名性が及ぶ範囲は、「洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,せっけん類」というのが相当であるから、これらの商品と用途、品質、生産者、取引系統等において大きく異なるその余の指定商品に本件商標を使用しても、その構成中の「ハミング」の文字部分のみが特に需要者の注意を強く惹くという特別の事情は見いだせない。
そうすると、本件商標を「洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,せっけん類」以外の指定商品について使用した場合は、これに接する需要者が直ちに引用商標を想起することはなく、該商品が請求人又はこれと業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、その指定商品中、「洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,せっけん類」以外の指定商品について、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはないから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、「結論掲記の商品」について、商標法第4条第1項第15号に該当するから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とし、その余の商品については、同法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものではないから、その登録を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(引用商標2)


審理終結日 2012-06-28 
結審通知日 2012-07-02 
審決日 2012-07-13 
出願番号 商願2010-45094(T2010-45094) 
審決分類 T 1 11・ 271- ZC (X03)
T 1 11・ 262- ZC (X03)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 前山 るり子 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 田中 亨子
瀬戸 俊晶
登録日 2010-11-05 
登録番号 商標登録第5366645号(T5366645) 
商標の称呼 ハミングナチュラル 
代理人 宇野 晴海 

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